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ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
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『珪藻美術館』(福音館書店) 好評発売中!
 



『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』
(たくさんのふしぎ傑作集)

 奥 修 文・写真
 福音館書店,48ページ,1300円+税 
もらったら嬉しい気持ちになる科学絵本です。大人でも子どもでも楽しんでいただけます。プレゼントにも最適です。全国の書店やネット書店,amazonさん などでお買い求めいただけます。





2022年9月30日




こんどの土日(10月1日,2日)に行われる「博物フェスティバル」で当サービスの放散虫Jシリーズ5,6枚,ニセ散布スライド5枚を販売できることとなりました。出展ブースはC-6「放散虫」です。チリひとつなく密封したパッケージでの販売で,連れて帰れば完璧にマウントされたどこまでもクリアな放散虫世界を堪能できます。いつものようなwebでの争奪戦にはたぶんならないので,現地でパッケージを見比べて悩むこともできると思います。興味のある方はぜひどうぞ。店主・横山さんの放散虫への熱い想いを聞くこともできると思います。なお筆者は標本製作期間中により,現地への参加は致しませんのでご承知下さい(画像/MWS)。








2022年9月29日




こんな世界,個人的には飽きずに眺めていられます。感覚的には鉱物鑑賞のような感じがします。水晶の結晶構造を眺めているような,そんな感じです。放散虫はけっこう大きいので顕微鏡さえあれば手軽に鑑賞できます。多くの人に一度はご覧いただきたいふしぎな形の世界です。しかもこれがシリカでできているなんて(画像/MWS)。








2022年9月28日




きょうの画像はバルバドス放散虫を並べたJシリーズ。週末の「博物ふぇす」でRC_GEARさんのブースで販売できないかと思っているのですが,Jシリーズはきわめて繊細なもので,開封したらすぐにチリが付着して品物の価値が低下します。ので適当なパッケージを作らないといけません。手間ばかりかかります。でも多数のマニアが訪れる博物ふぇすに,たとえ売れなくても珍しいものが置いてある,というのはプロモーション的にも重要と思います。2,3枚は持ち込みできればと思っています。興味のある方はお財布に諭吉を数枚しのばせる必要があります。。この種のスライドは数千円でできるものではありません。一桁上になります(画像/MWS)。








2022年9月27日




きょうの画像はバルバドス放散虫のニセ散布スライドの全体像。こういった画像は顕微鏡写真よりもはるかに難しい感じがします。何しろホコリ1つないようにしないといけないのです。スライドは注意深く全体を清拭しないといけませんし,背景の植毛紙は掃除機や粘着テープを使ってゴミを除去しないといけません。ガラス表面には背景が映り込みますから背景にも植毛紙を配置して…といろいろやることがあります。

で,現在手持ちの在庫分のニセ散布スライドはきょうの画像のような感じです。広大な面積に敷き詰めていて大量の放散虫が拝めます。これまで供給してきたものよりも増量した最終ロットとなります。放散虫はカバーガラス面に接していて,カバーガラスの傾きが起こらないように平行をとっています。精度は高いです。在庫の5枚を今週末の「博物ふぇす」でRC_GEARさんのブースで販売できないか模索中で現在パッケージの作業です。価格は税込8,000円を予定しています(画像/MWS)。








2022年9月26日




きょうの画像はバルバドス放散虫のニセ散布スライドをトキナーのマクロで撮影したもの。AT-X M90mmF2.5にMacro Extender,年代物のレンズです。しかしひじょうに良く写ります。個々の放散虫が判別できます。平面性のよい5〜20mmの範囲を撮影するのに適している感じなので,プレパラートの全体像を得るには顕微鏡の低倍対物よりもむしろトキナーマクロの方がよさげです(画像/MWS)。








2022年9月25日




きょうの画像は岩手の南部どり。岩手県では「いわいどり」が一押しですが他にも試さないといけません。南部どりもあっさりしてなかなかよろしい味わいでした。こうやって比較すると,たとえブロイラーでも,どんなエサを食べているか奥深くに感じるのです。おおむかしのやっすい鶏肉は魚粉(イワシの粉)を感じて閉口したものでした。いまでは魚粉をダイレクトに感じるブロイラーは減っています。たった20年でもいろんなことは進むのだなあと思ったりもするのです(画像/MWS)。








2022年9月24日




さくねんもそうだった感じがするのだけれども,ことしも週末に限って雨。まぁ大地が雨で潤うのは良いことですが週末くらいは散歩日和にしてくれませんかね。。ここは1つ,太陽の名を冠された放散虫にお願いして,来週以降は週末が晴れるようにお祈りするのです(画像/MWS)。








2022年9月23日




きょうの画像は透過暗視野法と透過明視野法の比較。同じ物体をのぞいても光のあて方でここまで変わります。どちらが好みかは人それぞれですが筆者は暗視野がより好みです。没入感が違う感じがします。明視野には明視野の良さというものがありますが…。

珪藻あるいは珪藻アートを生まれて初めて見るという方には,筆者は必ず透過暗視野法でご覧頂いています。その理由はお分かりでしょうか?

暗視野法で見ると,観察者の網膜細胞の光受容体は「珪藻だけの光刺激」を受けることになります。珪藻以外の情報は一切含まれません。情報として純粋なものです。

これに対して明視野法で見ると,観察者の網膜細胞の光受容体は背景の明るさで全てが刺激され,そこに分布する光の強弱信号によって珪藻の情報を読み取る,ということになっています。光刺激の大部分は背景光です。

この違いは大きいです。明視野では,珪藻を見てもらっているつもりでも,生理学的には照明光を見せているのです。

人生最初の経験なのですから,なるべく印象に残った方がよろしいかもしれません。山の上で見た星空,雄大な花火の色彩,望遠鏡で見た月のクレーター。これらは皆,暗視野に浮かび上がる純粋な情報です。だからこそ鮮烈な記憶になって残るのかもしれません。

ところで,さっき望遠鏡に関するとても素敵な映像を見つけました。天文ファン,望遠鏡ファンなら目が離せない内容です。 こちら からぜひごらん下さい。すばらしい映像を作ってくれたスタッフの皆様に感謝です(画像/MWS)。








2022年9月22日




(再掲) たくさんのふしぎ『石は元素の案内人』xたくさんのふしぎ傑作集『珪藻美術館』のショーケース展示が東京駅近くの丸善本店,児童書コーナーで継続中です。9月いっぱいの展示なので残り一週間といったところです。ショーケースには,著者の田中さんのコレクション,筆者所有の顕微鏡と珪藻標本,道具類も展示されていて,これらの本を執筆した著者の息づかいを感じられる展示となっています。ガラス越しですが珪藻アート標本の雰囲気も感じられる展示になっているということです。

福音館書店さんからのアナウンスは こちら です。

丸善本店さんからのアナウンスは こちら です。

当方としては高崎,釧路,寄居の展示以来ひさしぶりの展示となります。ショーケースの小さな展示ですが,田中先生と筆者が日頃扱っている実物展示となっていますので,ご興味のある方はお立ち寄りいただくのもよいかもしれません。

顕微鏡展示は,電池駆動のものになっているので,お越しいただいたときには電池切れになっているかもしれません。そのときは売り場の誰かにお願いして「みてみたい」と伝えましょう。きっと電池交換してくれると思います。公開展示はなかなか機会がありませんので,お近くに用事の方はちらっと見てみるのもよいかもしれません(画像/MWS)。








2022年9月21日










あぶら揚げ1枚はもやしサイズにカットしてもやし一パックとともに電子レンジでチン。そのあと水をよく切っておきます。そこに「ゆん家のキムチ」をモヤシ状にカットしたものをのせ藻塩をふりかけてひたすら混ぜ混ぜします。この,なんていうこともない無名料理はあるバランスに追い込むとまことにおいしいのです。うちでは定番ですが宴会などで出すとすぐに売り切れます。誰もウマいとも何ともいいませんがすぐに空っぽになるので違和感のないおかずになっていることがわかります。

この一品を先月,お世話になっている編集者さんにも試してもらう機会がありました。直筆の大変丁寧な感想をいただきましたが,「そして一番身にしみわたったのがもやしキムチサラダ。気づいたら何度もおかわりしていたのがこちらです。ああ,この感動を書き切れません。」とのことでした。さすがは編集者さん,感情を言葉にするのがお上手です。そうなのです。筆者の料理は基本,「染み渡るのが最上」という考えで味を組み立てていて,身体にすーっと入ることを目指して味付けしています。そこのところを感じていただき嬉しく思います。

この料理,単純であるだけにごまかしがききません。もやしの鮮度が良いことは当然として,油揚げは風味的に使えるものが少ないです。群馬のメーカーと八王子のむつみで油の風味が合格なものを見つけています。キムチは市販のものはほぼ全滅に近いです。特に砂糖たっぷりのものは使えません。塩も精製塩だと露骨に味が低下します。単純な料理ながらじつは素材的にかなり追い込んだものとなっています。たまにカミさんが真似して作ると完全に同じ素材を使っているのに「別の料理」が出来上がることがあります。料理とは奥深いものです(画像/MWS)。








2022年9月20日








ひさーしぶりにいわいどりが入荷。岩手県一関市のブランド鶏で国産ノーブランド品と比較するとけっこうな価格です。…ということで台風で天気も悪いし自宅で焼き鳥です。。適当にカットしてネギと一緒に串を打ちグリルで焼けばまことにおいしい焼き鳥のできあがり。とても簡単な一品ですが案外やったことのない方が多いのではとも思います。スーパーのふつうの鶏肉でもじゅうぶん美味しいので食欲の秋にぜひ(画像/MWS)。








2022年9月19日




埼玉県立川の博物館で今春行われた企画展示『珪藻展』の内容が動画(スライドショー)にまとめられてyoutubeにアップされました( こちら )。『珪藻展』をみられなかった方々でも雰囲気がわかるようにまとめられていますし,珪藻を学ぶにも適した内容になっています。ぜひ多くの方々にご覧頂きたいので,SNS等をご利用の方は情報を拡散していただければ幸いです。よろしくお願いいたします(画像/MWS)。








2022年9月18日






チャタテムシの全体像を透過明視野で,触覚を微分干渉で撮影。触覚には刻印のような構造があり一定間隔で毛が出ています。この毛にも刻印模様がありますがひじょうに細かくNA=1は欲しい領域です。このほかにも珪藻に匹敵するいろいろな微細構造があり全部を観察するには相当な時間がかかりそうです(画像/MWS)。








2022年9月17日




ふるい本や雑誌の上を歩く小さな虫。「本の虫」で検索するとチャタテムシの仲間であることがわかります。この虫,どうも珪藻在庫とか標本製作用の資材に誘引されるような気がしていて死んでいるのを見かけます。この乾燥虫体を毛先でそっと拾って封入してみたのがきょうの画像。とてもちぎれやすく微細な毛や触覚を切らずに封入するのはそうとう難しいです。乾燥して反り返っているので封入剤を減らしてできるだけ平面になるようにしています。大きさがわかるように珪藻も入れてみましたが,何とか近くにとどまってくれました。こうしてみると,チャタテムシにとって珪藻は大きなものなんですね。暗視野で撮影するとなんとなく鳥獣戯画を連想させるような雰囲気になった気がしています(画像/MWS)。








2022年9月16日










お魚の南蛮漬けが食べたいと思っても,そこいらへんのお店では簡単に入手できません。自分で作ればいいけれども,揚げ物はハードル高いしちょうど良い魚が売ってない。そんな悩みをお抱えのご婦人は多いことかと思います。きょうの画像はその解決策の1つ。南蛮漬けは売ってなくても,お魚を揚げたものは結構みかけるのです。アジ,サバ,サンマ,イワシがメインです。これらはいずれも筆者特製ニセ南蛮漬けのよい素材です。

揚げたお魚が入手できればあとは簡単です。タマネギとニンジンを刻み,ビミサン(めんつゆで代用可能),醸造酢を加えてすこし放置したあとに電子レンジ加熱します。軽く火を通す感じなので長時間の必要はありません。

お魚には「すし酢」を振りかけてなじませます。そのあと七味唐辛子を振りかけます。一味でもいいですし,一味+サンショウでもよろしいかと思います。

あとは適当な容器にお魚を並べ,上から野菜を載せて,またお魚を載せて,野菜を敷いて…の繰り返しでOKです。この段階でしっかり調味できているので漬け汁は不要です。野菜の汁も加えません。入れても問題ないですが。あとは冷蔵庫で休ませて身が締まったらできあがりです。

要するに,市販の揚げ物に酢とダシつゆと野菜と唐辛子を加えればニセ(?)南蛮漬けになるというお話なのです。コツがあるとすれば砂糖やみりんを一切加えないこと。甘味を加えると塩分がキツくても食べられるようになり,料理が「調味料の味」に傾いていきます。それは調味料をウマいと錯覚して喰っているので,ウマいのは事実でも素材に対して失礼です。それに市販のダシつゆにはもれなく砂糖や果糖ブドウ糖溶液が添加されていますし,すし酢にも果糖ブドウ糖,砂糖は入っています。甘味料はその分量で充分です。

いまから30年ちかく前,極端に栄養が偏って暮らしていたことがあって,無性に野菜が食べたくなったり魚が食べたくなったりしていました。身体は足りないものがあるとそれを食べろと指令を出すのです。その指令に導かれてこのメニューは生まれたのです。大学院生の頃のお話です(画像/MWS)。



*1 油ものが苦手な方は,買ってきた揚げ物をキッチンペーパーで包み,電子レンジを弱くかけて,そのあとに上から重しをのせて余分な油を吸い取って下さい。南蛮漬けのおいしさは微量の脂分でじゅうぶんです。揚げ油を吸い取っても不味くはなりません。




2022年9月15日




わんこと暮らしたことのある方ならご存じでしょうが,わんこが,特に子犬のときにハアハアいいながら近づいて手をペロペロなめてくれると口の中に手を突っ込みたくなるのです。わんこが飼い主の手を舐めるのはいろんな理由があるらしいのだけれども,ネットも何もない情報のない時代から,人類はわんこの口に手を突っ込んできたのです。そうするとわんこは前歯で独特の周波数で甘噛みをします。この「くっくっくー」という感覚はたまらないんですよね。なんていうか,わんこの可愛さがブーストされるような効果があるのです。

そしてついに筆者は発見しました。なんとこの甘噛みを実装したぬいぐるみが市販されていることを。開発した人は天才ですね。製品をみるととても良心的な価格で万人にわんこの甘噛みを追体験させるものとなっています( こちら )。これは地球上で数億人の需要があるのではないかしら。

個人的には,これの高級版があればいいと思います。価格は10万円でも構いません。代表的な犬種の子犬をそろえて甘噛み機能と,AIを用いた本物のうれしょん機能を搭載すれば,ミルクモウモウを遙かに超える伝説の製品になるかもしれません(画像/MWS)。








2022年9月14日(2)






キハダマグロを手配いただいた技術研修員さんとお話ししていたら,やはり包丁自動増殖の法則により増殖中とのこと。和包丁5本に洋包丁,ほかに三徳などもあるでしょうから明らかな増殖の兆しです。などと思っていたら当室も新たに廃品回収経由で包丁が2本増殖。一本はパン切り包丁だったので洗浄してお仕舞い。もう一本の三徳はきょうの画像のような様子でした。シャープナーを使って刃を極端にダメにした,教科書にのせたくなるような刃線です。よくここまで我慢して使ってきたものだと思います。よしよし,筆者が直して差し上げましょう。

先日,凶悪な金属板のダマスカス包丁を修理しましたが,刃線を見る限りこちらの状態の方が桁違いにひどいです。ではどのくらいの修理時間がかかるのでしょう。筆者は刃物の状態をみて,30分以上45分以内と判断しました。凶悪な金属板修理の1/5もかからないと見込みました。

まずダイアモンドの荒砥で「立てて」研ぎ,一度刃を全部とってしまいます。そしてあるべき刃線の状態を想像しながら形を作っていきます。何しろ現在は刃線が凹型になっているのです。これを凸にもっていかなくてはいけません。刃元と切っ先を重点的に研ぎ,包丁の弧を描くようなカーブを作っていきます。まーこのくらいでいいかな,とここまで4分。

そこからダイアモンドの中砥二枚を使って刃をつけていきます。切刃ですが幅は1mmくらいです。これはこの包丁の形がよくできていて鋼材が薄いのでこれでいいのです。切刃がついたらシャプトンオレンジで仕上げていきます。この段階で刃線の善し悪しがわかります。結果はNGだったのでもう一度ダイアモンドで整形し直して,シャプトンオレンジにかけます。こんどはOK。あとはシャプトン#2000,#5000と研いで,丸尾山の「合さ」で刃先を仕上げました。刃は全体を#800,1500,2500の耐水ペーパーで磨き,柄は#2500の耐水ペーパーで磨き,アクリル布と石けんできれいに洗いました。

あとは雑用紙でカエリ取り,次に試し切りと画像撮影。それがきょうの画像の2枚目。全て手研ぎでかかった時間は36分間でした。素晴らしく切れる包丁になりました。刃線は菜切り寄りにしてあるので野菜を刻むのが楽しい包丁となっております。

この包丁,印字が薄れてほぼ読めませんでしたがGermanyがかすれて見えたのでドイツ製品,ゾーリンゲン関係のようでした。刃物の作りとしてはよく追い込まれていて鋼材も炭素が多めのステンレス鋼といった感じ。刃厚が薄く食い込みがよく刃先近くの刃肉も薄いので修正研ぎが簡単です。画像1枚目をみれば,どうしようもない,拾う価値すらない最悪の包丁に見えたでしょう。でも刃物がわかる人が見ると,見た目がダマスカスで素敵な金属板よりも,「おっこれならすぐに直せるな」「形もよくできてる」ということになるのです。

この包丁を使っていた人も,もとはとてもよくて手になじんでいたからこそ,ここまで使い潰したものと思います。柄は比較的きれいで,包丁をこまめに洗っていた方でした。

ということで何が言いたいかというと,金属板を売るメーカーさんはひどいよ,ということと,シャープナーを使うと包丁を壊すよ,ということです。どちらも重修理が必要となります。修理という概念のない方は,包丁を廃棄,ということになってしまいます。自分で平砥石で研げとまではいいません。研ぎ屋に出せば済むことです。シャープナーは砥石で研ぐ本刃付けの代用にはならないことは,メーカーさんが公式に言っていることです( こちら )。

当サービスを開業する前に最後まで悩んだのは,庖丁研ぎ師として暮らしていこうかななぁという誘惑があったからなのでした。珪藻と顕微鏡と戯れる作業も魅力ですが,人様の包丁を預かって理想的な状態にして戻す,というのもやりがいのありそうな作業です。結局のところはもと研究員ということもあって培ってきた技術や経験を活かして現在があるわけですが,庖丁研ぎ師を選択していたらどんな人生になっていたのかなあと,人生の分かれ道の不思議さを感じたりもしています。そんなわけで本ページは初期から定期的に研ぎの話が出てくるのです(画像/MWS)。








2022年9月14日




まさかこんなメールにダマされる人はいないと思いますが,何を目的にこんな稚拙なものをばらまいているのでしょう。不思議です(画像/MWS)。








2022年9月13日






3日連続でキハダマグロ丼を食べてしまった。人生初の経験。しかしまったく飽きることなく食べるたびに感動的な味わい。結果,1.4kgのキハダもあっさりと消失しました。きょうの画像はマグロハムと味噌叩き焼き。血合い部分はミョウガの味噌漬け,ネギ,ショウガと細かく叩き皿に薄く敷きラップをかけます。これを電子レンジ200Wで5分チン。取り出したらラップを外してバーナーで表面を炙ります。香ばしく,肉団子みたいな感じでいただけます。マグロハムは一ノ倉のお供としていただきました。冷凍品で作るよりもぷりぷり感があって美味しゅうございました(画像/MWS)。








2022年9月12日






いままでのキハダは何だったんだ,と思うような体験をしてしまうとこれからはキハダマグロが気になる人生を送ることになります。マグロはメバチの赤身が好みだったのだけれどもこれからは生のキハダの魚屋さんへの入荷状況を注視しようかと思います。きょうの画像はキハダの赤みを使ったマグロハム。すこし多めの藻塩を振りコショウをまんべんなくまとわせます。ローリエはハサミで切り込みを入れて香りを出します。これをラップに包んでチルド室で1〜2日保管。ねっとりしたマグロハムのできあがりです。そのまま切っておつまみでもいいですし,野菜とオリーブオイルでカルパッチョ風にしてもよろしいです。これは冷凍の安価なキハダをおいしく食べるために考案したものですが,生の最高級品を使うとどんな味になるのかと明日の夜が楽しみです(画像/MWS)。








2022年9月11日
























ウチにはたまにとんでもないものが舞い込んだりするのですが10日がその日だったようです。クロネコさんが運んできたクール宅急便の中身は,1.4kgほどのキハダマグロのブロックでした。しかも釣りもの。経過日数は2日。氷冷保存でウロコはすき取り済みでキッチンペーパーに巻いてあるもの。この処理は寿司屋さんとかの魚介和食専門系の標準です。血抜きもしてあり,釣りものなので傷みがなく身割れもないという最上級の代物です。秋のキハダはウマいと言われますし実際,地方の民宿などでいただく生のキハダはとてもおいしいのですが,ここまで完璧な上物を手にしたことがなく腕が鳴ります。今回は25.5kgのものだそうです。当室の技術研修員さんのお父上様の釣果とのことです。

ちょうど週末ですし最高のコンディションです。昼飯は果物と味噌汁くらいにして,お腹を空かせながら楽しくマグロをさばきました。きょうの画像のブロックは750gくらいのちょうど良いサイズです。まずは血合いを取って,赤身(皮と反対側の三角形)を外し,皮をひきます。マグロとしては小型の個体なので通常の柵取りはせずに適当に分割して脂身のおおい部分とほかに分けました。ハモニカ部分も外して仕込み完了です。

皮は湯引きして,残っている鱗を水洗いして,表面のぬめりを包丁でこそげとり,細切りにして白髪ネギを添えポン酢でまことに優れた一品。これのコラーゲンと脂,ネギの調和は数あるポン酢料理の中でも際立っているもののように思われます。カミさんの評価では最高級とのことでした。

血合いは臭みがあると避ける人もおおいのですが栄養豊富で滋養に富む味わいのある部分です。今回は釣りもので鮮度もひじょうによかったので生でいただくことにしました。ミョウガの味噌漬け,ショウガ,大葉と叩いてなめろう風の薬味・味噌たたきとしました。血合いそのものをそのまま味見すれば確かに臭みもクセもありますが,この一品となったことにより,クセが深みのあるうまみに変換され酒のつまみとして極上のものとなったのでした。カミさんの評価も「つまみになる」というものでした。ちなみに酒は一ノ倉です。

ハモニカ部分は加熱した方がおいしいので,ショウガの皮,ネギを加えてしょう油をすこし滴下。電子レンジで200Wで60秒。まことにおいしい煮魚のできあがりです。部位が少なすぎて食べるのがもったいないような美味な味わいでした。評価するまでもなく,「うまーい」で終わってしまいました。。

赤身部分は脂の少ない部分でしたのでカルパッチョ風にしてみました。冷凍庫で冷やした皿に切り身を並べ,藻塩,コショウ,タマネギスライス,オリーブオイルです。これが明るい味わいで,東洋と西洋の違いを感じさせる味わいでもありました。刺身=しょうゆと思っている方にはぜひ一度,食べてみて欲しい味わいです。

本命のお刺身部分は,鉄火丼用と刺身用にわけて切りつけました。鉄火丼は酢飯ではない白飯で,わさびを溶かしたしょう油でいただきましたが最高の味わいでした。個人的には本マグロはそんなに最高とは思っていなくて,メバチマグロが好みなのですが,今回のキハダマグロは脂の香り,重すぎない脂の乗り,酸味の薄い味わい,なめらかなテクスチャ,鉄火丼用には最高の相性なのでは?と思うほどでした。

あとはお刺身で一ノ倉をちびちびやりながら,皮目のひっかき部分,筋の多い部分をたたきにしたものを海苔にのせてわさびをつけてしょう油を4滴垂らしてつまみにしたりしていました。突然の入荷でしたが本当に幸せなひとときを過ごさせてもらいました。お心遣いいただきました技術研修員さん,大海原でキハダと格闘したお父上様,マグロの解体や梱包,発送その他でお手間をいただいたご家族様,皆様に心より感謝と御礼を申し上げます(画像/MWS)。








2022年9月10日




きのう9月8日の話をしたら,エリザベス女王の命日にもなってしまいました。お隠れになってしまったことはとても残念ですが,でも記念日を共有することになったことは,何かの運を感じる気もします。毎年この日はエリザベス女王のことも思い出すことになるでしょう。会ったことこそありませんが,メディアを通じてでもお姿を拝見すれば気分が明るくなるそんなオーラをお持ちでした。人生の最後の最後まで,あんなに綺麗で,愛嬌があって,チャーミングで,純粋な目をしていて…,「素敵な人だったなー」と振り返ることでしょう。

さてきょうの画像はNikon1の手持ちの一部。本ページでは以前より顕微鏡自動増殖の法則を紹介したり,最近では包丁自動増殖の法則について述べたりしましたが,カメラも自動増殖します。現在手持ちのNikon1はJ1(3台),J2(2台),J3,J5(2台),V3です。このうちJ3とV3が最近増殖したものです。お世話になっている先生が機材見直し&整理をした結果,当室に利用を任されたものです。当室ではNikon1系の運用はまだ続く予定ですので大変有り難く頂戴しました。

タイミングも最良でした。J5の一般撮影用の方がダイアル不調でたびたびシャッターが押せなくなるのです。大事な出番では使えないなとJ2を使ったこともありました。そこにJ3とV3ですから,おさんぽカメラにどちらを割り当ててもいいし,V3は顕微鏡カメラのバックアップにも好適です。

Nikon1系は全て生産中止で今後も再開見込みはないものと想像します。現在ではこれを利用する人も少なく中古で処分するくらいなら壊れるまで手元に置いておこうかと思います。クセのあるカメラではありますが,良い設定や機材とのマッチングをみつければ強力なカメラでもあります。本ページの2011年秋以降の画像はほぼNikon1系によるものですし,『珪藻美術館(福音館書店)』で使用した画像の多くはNikon1系で撮影しています(画像/MWS)。








2022年9月9日




まいとし9月8日はカミさんのお母様より果物が届くのです。有り難いことです。ことしはなんと巨大なシャインマスカットでした。さっそく夕食後にいただきました。この上ない贅沢ですね。カミさんのお母様のご健康が続くことを願わずにはいられません。

9月8日生まれの有名人は,そーですね松本人志さんとか本仮屋ユイカちゃん辺りが有名ですね。知人ではウチのお客様にもいらっしゃいますし,学生時代お世話になった自転車屋さんのおかみさんがそうでした。グーグルで9月8日生まれと検索すると,トップに

9月8日生れの人の特徴は哲学者や芸術家のような思想家です。 頭が良く、その回転の速さには目を見張るものがあります。 ただ、思い込みが激しくなったり、頑固な考えから柔軟性が欠けたりすると、古いタイプの人間になってしまい、一気に忘れ去られた存在になります。
なのだそうです。思い込みが激しく頑固な考えから柔軟性が欠けている…,これ,筆者の特性そのものではないですか(笑)。しかも一気に忘れ去られても痛くもかゆくもないと本人は思っている。こりゃああ救いようのない状態にあるということですね。わはは(画像/MWS)。








2022年9月8日




さきにご案内しましたように『石は元素の案内人』×『珪藻美術館』のショーケース展示が,東京駅ちかくの丸善本店,児童書コーナーで開催中です。書籍内容からのパネル展示に加えて,著者の持ち物も一緒に展示されています。田中さんの鉱物コレクションや,筆者の顕微鏡や作業道具が並んでいます。

古い顕微鏡などはときおり展示されることがあり,近年では国立科学博物館で大規模な顕微鏡展示がありました。

筆者が顕微鏡を展示するときには,それが直接観察できないショーケース展示であったとしても,実際の観察条件で展示することが大事だと思っています。パーフェクトな観察像を生み出す設定,それこそが顕微鏡の正しい姿なのです。その「正しい姿」はプロからみるとまことに合理的でこうあるべきだよなーと一瞬でわかります。

そんなわけでライツのうんと古い顕微鏡も,その時代の古い対物レンズを装着して,それに合った接眼レンズを入れて,対物レンズが要求する鏡筒長(TL=170mm)にあわせて,パーフェクトな標本を載せて,ミラー採光で完璧な像を出す条件にして,設置担当者に全てを確認いただき,そのままの設定で持ち込んでいるのです。

ショーケースをチラ見した方々は,正しく設定された顕微鏡の姿を目撃するのです。そのことにほとんど意味はありませんが,分野外のスタイル,というものを目撃する機会にはなっていると思います。鋭い人ならば,無造作に置かれた顕微鏡と,いままさにシャープな像を叩き出す顕微鏡の違いがわかるかもしれません(画像/MWS)。








2022年9月7日




まいにち料理を作ってカミさんの帰宅を待つ兼業主夫としては,特に忙しいときには,いかに手抜きをするかが大事ということが身に染みます。そこのところを重点的に取り扱った『やりすごしごはん』という大変参考になる本があるのだけれども( こちら ),ほんと,そうだよなーと思います。料理の作業時間は個人的には楽しい時間ですが,栄養摂取とは関係のない労働時間なので,それが創造的で脳の劣化を防ぐという観点を抜きにすれば,食材があってスイッチぽんで目的のメニューができあがるに超したことはないのです。

かといって,冷凍食品をレンジでチンの生活を毎日続けることもできません。最近の冷凍食品は本当によくできていてむかしのように油焼けするようなものも減っていますし何より味がよくなっています。でも毎日5,6品を食べるようなご家庭では出費が大変ですしメニューも限られます。冷凍庫が巨大でないとそもそも保管できません。栄養面でも好きなだけ野菜を刻んで海藻ときのこを食べてお魚もというように自在にはいきません。塩分や砂糖も多く細かい調整がききません。やはり健康的な生活には身体に合った食べ物を自炊するのがいちばんです。

きょうの画像はそんな時短発想をちょこっと採り入れたもの。冷蔵庫にピーマンとタマネギと豚肉があったわけですが,ピーマンの肉詰めを作る時間もないし分量的にも釣り合いません。そこで全部刻んでそのままフライパンに入れてフタをして弱火で加熱,塩コショウで味を調えて味が決まったら片栗粉をフリフリして弱火で加熱。ピーマンの肉詰めないの完成です(笑)。

驚くほど簡単な一品ですが味はピーマンの肉詰めと同じです。ピーマンにかじりつく楽しさはなくなりますが,その一方でこちらはごはんにかけて丼ものにできるフレキシビリティがあります。じっさい,「ピーマンの肉詰めない丼」は驚きのおいしさで,野菜が苦手なお子様などには向いているんじゃないかと思ったりもしました。コロナ対策の関係で別室で食事をしているカミさんからも,ふすま越しに,「肉詰めないウマーい!」と吠えが聞こえてきました。合格のようです(画像/MWS)。



*1 手抜きというのは想定された料理に対する工程短縮のことを言うのであって,その結果できあがった料理が広く浸透したのならば,それは手抜きではなく新料理ということになります。ぶたやまライスが新料理として認知されつつあります( こちら )。こういった,人類のリソースを有効活用してなおかつ健康的な食生活に貢献する技術はぜひとも広まってほしいですね。




2022年9月6日






テレビを自発的に見ることがなくなって25年以上が経過しました。最後にみたテレビ番組は何だったんだろうかと想像してもよく思い出せませんが,「料理の鉄人」という優れて面白い番組があってそれは楽しみだった記憶があります。あの番組に出ていた道場六三郎先生も陳建一先生もムッシュ坂井先生もご健在でいまでもご活躍です。

時代はテレビからyoutubeになり,テレビを持っていない筆者でもyoutubeはときおり見ています。筆者は情報を一方的に喰わされるメディアが嫌いだったわけで自分から情報を取りに行くメディアは好きでも嫌いでもありません。

きょうの画像はオクラの切り方。昨年の中頃まではオクラはヘタの部分を切り落として食べていました。なぜそうしていたのかは「なんとなく」としかいいようがありません。ところがある日,道場六三郎先生のyoutubeチャンネル( こちら )を見ていると,オクラは本日の画像2枚目のように下ごしらえしているのです。なんと,オクラは純粋に可食部だけが販売されていたのです。それを知らずに切り落として捨てていたとは,自分の観察能力のなさと先入観に束縛されていたことを認めざるを得ません。

「鉄人」はほんとうに鉄人なんだなーと,このチャンネルをみているとよくわかります。家庭料理に応用できるヒントも満載で本ページの読者の方々にもお勧めする次第です(画像/MWS)。








2022年9月5日




せんじつ大規模改修して生まれ変わった包丁は無事に持ち主のもとに戻り即戦力となっているようです。購入してからはじめてまともな刃物になった包丁の切れ味を楽しんでいただけたらと願わずにはいられません。何しろ筆者の手がダメになるほどの大規模な研ぎだったので。

家庭用包丁の多くはプレス品で,だいたい形が作ってあるところに,ちょっとした小刃をつけてごまかしているものがほとんどです。刃厚がなければそれでも結構切れますがダマスカスなどの厚みのある包丁ではとたんに食い込みが悪くなります。切刃をきちっとつくって本刃付けした包丁とは比較にならない切れ味の悪さです。

99.99%くらいのご家庭では,購入した包丁の本刃付けなどということはしないので,小刃だけをちょちょい研いでどんどん刃が鈍角になっていき,刃物からクサビになり,最後は金属板状態になります。

こうならないためには,専門店で包丁を購入して,購入時に本刃付けをしてもらい,包丁の講習を受けるとよいのですが,そこまでやってくれるお店はとても少ないのが実際のところです。

本刃付けをした包丁は,きっちり切刃を研いでしのぎをあげて,刃先を研いで刃をつけるという基本を守れば形を崩すこともなく食い込みも悪化せず,かえって包丁の寿命が延びるだろうと思います。

きょうの画像は返送した包丁のダマスカス模様部分。内曇砥という砥石で研ぐとこの模様が浮かび上がるのです。主に刀剣用の砥石ですが,合わせの和包丁の仕上にも使えます。地金部分が曇り,鋼部分は光ったままなのでメリハリのある模様になります。今回使ったのは大平の内曇で20年前くらいに東急ハンズ池袋店で買ったものです。天然砥石は見かけたら即買いしないといけません。次回いつ出会えるかはわからないのです。実際,そのときからいままで見かけた覚えがありません。

内曇をかけるときは,筆者はセオリー通りにはやらず,一度切刃を鏡面化してしまいます。高番手から低番手に戻る研ぎをするわけです。この方があっさりと均一な地金模様が浮き出ると思っています。

現在,大平の内曇は入手困難ですが,内曇効果のある砥石は他にもあります。たいていの天然砥石の仕上砥で柔らかめのものは内曇効果がありますし,特に有名なのは丸尾山の銘柄のもので敷内曇の名称でたまに採掘,販売されています。刀剣研ぎでの評価も問題ないとのことです。筆者はもちろん持っていますが,大平の方があっさりとした感じで,丸尾山の方は地金がややくっきり浮かぶという印象があります。

持ち込まれた製造不良っぽい包丁のダメさを一瞬で見抜き,仕方なさそうにそれをひきうけて,実のところはちょっと腕が鳴っていたいたりして,何時間もかけてごりごりとダイヤモンドやGCで金属の塊を削り,包丁本来の刃線と刃先をもとめて整形し,完璧な研ぎを施した上に刀剣用砥石で装飾も施してしまう。いずれの作業も頼まれてすらいません。「包丁もってこい」と言ったのは筆者なのです。

職人というのは興が乗ればこういったことを勝手にやってハッハッハと笑って自己満足しているような人種なのです(笑)。研いでもらった人がどんなことをしてもらったのか理解できなくてもそんなことはお構いなしですし,ご自身で研ぎができないのですから理解できるはずはありません。でも本ページの読者の方々は,たぶん270人くらいの研ぎファンがおられると思うので,記事を読んで一緒に笑ってくれるだろうとも思います。ダメな包丁をみると,ムラムラして,これをまともな刃物に直してあげたい!と思うのが研ぎファンの心理だからです。なーんか,休日の午後になると,よーしきょうはコイツを一丁仕上げてみるか!となったりするのです。わはは(画像/MWS)。








2022年9月4日




たくさんのふしぎ『石は元素の案内人』xたくさんのふしぎ傑作集『珪藻美術館』のショーケース展示が東京駅近くの丸善本店,児童書コーナーではじまりました。9月いっぱいの展示です。ショーケースには,著者の田中さんのコレクション,筆者所有の顕微鏡と珪藻標本,道具類も展示されていて,これらの本を執筆した著者の息づかいを感じられる展示となっています。ガラス越しですが珪藻アート標本の雰囲気も感じられる展示になっているということです。

福音館書店さんからのアナウンスは こちら です。

丸善本店さんからのアナウンスは こちら です。

当方としては高崎,釧路,寄居の展示以来ひさしぶりの展示となります。ショーケースの小さな展示ですが,田中先生と筆者が日頃扱っている実物展示となっていますので,ご興味のある方はお立ち寄りいただくのもよいかもしれません。

顕微鏡展示は,電池駆動のものになっているので,お越しいただいたときには電池切れになっているかもしれません。そのときは売り場の誰かにお願いして「みてみたい」と伝えましょう。きっと電池交換してくれると思います(画像/MWS)。








2022年9月3日




ひさしぶりに包丁修理を行いました。修理というよりは包丁を作った,とでも言う感じです。入荷したダマスカス模様の包丁は,筆者の20年を超える研ぎ歴でもトップ3にはいるひどい刃先のものでした。刃物に詳しい方ならわかると思いますが,金属板に刃先だけ鈍角の糸刃(といっても刃幅1.5mmあります)がついているという凶悪な代物です。刃先角は出刃包丁どころではなく,「たがね」の刃先と同じくらいの鈍角で,もはやこれは刃物ではなく「くさび」といっていいものでした。

持ち込んだ人も「三徳包丁の正しい刃が知りたい」とのことでしたが,もはやこれは正しいとかそんなレベルではなく,出荷したメーカーがひじょうにいい加減な,「刃先だけ刃付けした金属板」を高価格で販売していたもののようでした。買った人は不運ですね。形をみてもわかるように,これは三徳ではありません。牛刀といって良い刃線です。

使用者がここまでひどい金属板にすることは希なので,これはメーカーが悪い気がします。どこの業者か知りませんが,包丁専門の老舗が作ったものとはまったく思えません。包丁のほんらいの機能を知らない人が作った机上の包丁という感じです。料理人ならこの包丁を1分,早い人なら15秒使って放り投げるでしょうね。

要するにこれは刃のない金属板,といっても差し支えのないようなひどいものでしたので,まずは切刃を作りしのぎを立てて刃先を研いでと,まさに包丁を作るような作業となります。ダイヤモンド砥石でひたすら研磨,効率がそれほどよくないのでGC180を赤レンガにすりつけて研磨,とにかくしのぎから刃先までの平面を作ります。手がダメになりますので,二日にわけての作業となります。ダマスカスのステンレスは粘りもありちぎれにくいので研磨抵抗性が大きく手研ぎの作業は苦行に近いものがあります。が,コロナで運動不足の筆者には久々の良い運動になった側面もあります。

ものすごいひどい作業でしたが何とか切刃の平面が出たので,シャプトンオレンジ,ブルー,紫と研ぎ,丸尾山の「合さ」で刃先を整えました。鋼材の粘りが独特で,刃先がややポロ欠けしそうな感じがあって,これはV金10号かな,などと思いながら研いでいました。全体を洗浄して一応の作業を終えました。試し切りをして合格。外観検査の結果,まだ不十分だったので#8000で研ぎなおし。

お詳しい方々はご存じのように,ダマスカスをそこいらへんの人造砥石で研ぐと鏡面化してしまい模様は消えてしまいます。本当はその状態の方が摩擦係数が低下して切れるのですが,ダマスカスの包丁を買った人は,切れ味よりも見栄えを優先する判断をしているわけですので,ダマスカス模様を再現した方がよさそうです。当室には各種砥石がありますし,内曇も在庫していますから,一度鏡面化したあとにていねいに大平の内曇をかけてダマスカス模様も再現しておきました。

これでいちおうは見た目も切れ味も両立した包丁になりました。が,それにしても大変な作業でした。何が大変って,どうやれば良くなるかは一目で分かっていて,その大変さも一目でわかるわけです。大規模土砂崩れの現場をスコップで作業する,そんな気分でしょうかね。メーカーさんは,刃先だけのごまかし包丁はほんとやめて欲しいです。100円ショップのものなら許しますが(画像/MWS)。








2022年9月2日






1日はもの作りの職人さんと国立大学の先生をお迎えして3人で顕微鏡の午後でした。遠方から都心に出て当室に時間を使っていただけるのですから,こちらとしても意義ある時間になるようにしなければなりません。そこでいろいろメニューを考えて,

・まずは久々の情報交換
・最高チューンの顕微鏡で珪藻Jシリーズ鑑賞
・実体顕微鏡で放散虫在庫観察
・放散虫拾い体験
・バイオミネラル自家蛍光の観察
・落射照明による珪藻被殻観察
・放散虫試料処理法に関する議論
・コリメート法の要点アドバイス
・刃物研ぎ実習

という高密度な時間となりました。つきあいも長く自由に話ができる間柄なのでストレスのない楽しい時間を過ごすことができましたし,何よりリモートではなくリアルですから情報の量も質も違います。脳みそが喜んでいるのがリアルタイムでわかりました。

コロナの時代になって良いことのひとつは,皆さんマスクをしておられるので,微妙な試料でも観察できること。むかし,鼻息で珪藻を吹き飛ばしたお客様がいらっしゃいましたが,そういうことは起こらないのです(笑)。ので,当室の最高機密に近い部分までご覧頂きました。あっという間に時間切れとなりまたねーとなりましたが,こういった時間の感覚が消えるようなひとときって貴重ですよね。職人さんと先生には感謝感謝です(画像/MWS)。








2022年9月1日




2020年からの感染症騒ぎで東北地区農水産物調査ができていないのですが,なんと昨日,気仙沼古町のスーパー片浜屋が閉店していることを発見。この悲しさを何にたとえたらいいのだろうかと思うほどです。ひどい,ひどすぎる。明日からどうやって生きていけばいいんだ…。ううっ。

片浜屋さんは地元密着のスーパーで,けっこうな歴史がありました。こじんまりとしたスーパーですが,チェーン系のお店とは違い地元の食材を大事にしていて,朝どれの魚介などがふつうにパックして並んでいてピカピカに光ったお魚を手軽に購入できるお店でした。アジフライ用に開いたアジが売っていたのですが極度に鮮度がいいので連れて帰り骨抜きして刺身にして食べたら都内では実現不可能な史上最高の味わいでした。

マンボウもこのお店で勉強したし東北のおばちゃんが作ったようなおそうざいが最高でした。から揚げもおいしかったし,春雨サラダも定番でした。

開店と同時にお買い物をして昼飯を買って,そのまますぐ近くの安波山に登り,山の幸と戯れて,お昼ご飯は片浜屋定食刺身付き。山から下りてきたら,「お魚いちば」を経由して帰り道は片浜屋へ。定番のメカジキの刺身を買って,次に横田魚店に寄ってパックごはん,至高の夕飯と宴会。

片浜屋の買い物では,翌朝のカップスープとかすぐ食べるカットすいか。豆腐がおいしそうだなー,納豆も食べてみたいなー。気仙沼ホルモンおいしそうだなー,この地酒は飲んでみるかなーとか,こんな贅沢な楽しいことができるところは滅多になかったのです。気仙沼から帰るときには片浜屋に寄って売り場にある笹かまとか地元のおいしそうなものを買ってお土産にしていたのです。

いやーほんとに残念。気仙沼に行く楽しさが削減。片浜屋を買収して潰した企業はたぶん収益しか考えていません。最悪です。気仙沼に限りませんが,東北の農山村は日々の買い物だけでも大変なのです。利用者はご高齢。買い物のタクシー往復は当たり前。その中で近隣の店舗がなくなることは死活問題なのです。片浜屋さんはそのことをわかった上で地元密着の経営をしてきたのです。立派としかいいようがありません。

収益だけを考える経営者それは悪夢の悪魔です。一極集中を促し地方を破壊する金の亡者です。個人的には,スーパーやコンビニは「インフラ」と考えています。人は水と食べ物がなければ死んでしまいます。高温でも低温でも死んでしまいます。ならば,食べ物を供給し,水を供給し,エネルギーを提供するのがまともな経営者の役割と思うのですが。

古町周辺の皆さんはこれからどうするんだろうか。デイリーポート新鮮館は遠すぎるし,クリエミウラも遠すぎます。クルマがあればまだ何とかなりますが,買い物は週一回に限定して5kgとか10kgの買い物をするんだろうか。ネットが使えないご高齢の方々はどうするんだろうか…(画像/MWS)。









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