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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します
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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ(2011年9月再開)。
ユーザー様には海洋の放射能汚染に関するテキストを こちらで配布中です。
パスワード等を紛失した方は再請求してください。
2012年3月31日
30日は『珪藻の生物学』シンポジウムでした。知人がコンビナーをつとめていましたので,非常に興味深い発表になりそうな予感がしていて楽しみだったのですが,じつに内容の濃いシンポジウムで参りました。系統進化や寄生生物,ウイルス,増殖特性,生活環など話題満載で,ここ20年ほどの成果がぎっしりと詰め込まれたシンポジウムとなりました。9時半から4時半まで一つもサボらずに漏らさず聞き続けました。いやー勉強になったー楽しかったー疲れた…と思うまもなく,懇親会に突入。あっちを見てもこっちを見ても知人知人で,お話が楽しく,旧知の仲間はもとより,昔は雲の上の存在だった大先生方ともいろいろお話でき,これはひょっとすると人生史上最高のシンポジウムだったのではと思うほどです。
もちろん,「携帯顕微鏡H型」によって珪藻プレパラートJシリーズを皆様にご覧頂き,珪藻の美しさも堪能いただきました。ある人にご覧頂いたとき,「この顕微鏡,数年前にたくさん出てきて,もうつかわねえよなと,数台捨てた。もう少し早く連絡もらっていたら,全部あげたのに」という衝撃的なお言葉も頂戴しました。。。
とても貴重な時間を作ってくれた津田さん桑田さん,発表者の皆様,参加者の皆様に心より御礼申し上げます。人生,生きていればこんなに楽しいこともあるんだ,ということを発見した一日でした(画像/MWS)。
2012年3月30日
珪藻を暗視野照明で見ると美しい干渉色が出る種がいることは,これまでも紹介してきました。じつは明視野でも干渉色が観察できる種がいます。きょうの画像がそれですが,ヒトツメケイソウ属の仲間です。上の画像は比較的低開口数の対物レンズ(NA=0.25)を用いて,NA=0.6の開口数で照明したものです。暗視野光束が入り込み,コヒーレンスも低く,珪藻が薄くかすんでいます。同じ対物レンズのまま,照明開口数をNA=0.2まで落としたのが下の画像です。珪藻にコントラストがつくだけでなく,色がついています。低開口数の光のときに干渉色が卓越するような微細構造があるのだと思いますが,それにしても不思議なものです(画像/MWS)。
2012年3月29日
お預かり品の出刃包丁の修正研ぎを行いましたので備忘録的に記します。よく使い込まれた出刃で,けっこう研ぎ減っています。これだけ使い込んだということは,その年月だけ,おいしい魚料理が生まれたことでしょうね。素敵なことです。
裏は研いだ形跡がなく,つまり裏押しされていません。表は切っ先付近の研ぎが不足していて,出刃本来の刃線のカーブをつぶしていくように,直線的な研ぎになっています。しのぎは不定に減っていて,波打っています。切刃は丸っ刃になっていて,それでも切れ味が出にくいので二段になっています。平と峰にはサビが多少出ています。使い込んだ出刃で形がきちんとしているのは珍しく,このような状態はむしろ普通かもしれません。板前さんでも,こんな格好になった出刃をお持ちの方もいます。この形の切っ先の変形は,料理人用語で『コンコルド』と呼ばれているそうです。切っ先が上げられず下がってきていることを指しているわけで,じつに秀逸なネーミングです。
さて,このくらいの研ぎ状態になると,叩き用途には使えますが,身下ろしはけっこう難しくなってくるので,大規模な修正を施して復活させるのがよさそうです。我流の方法ではありますが,出刃の修復は何度もやっていますので,なかなか凄そうですが,ま,どうにかなるでしょう。
まず最初に,刃線を決めます。荒砥がもったいないので,100円ショップに売っているガチガチに硬くて役にたたない砥石を使います。その砥石にGCや刃の黒幕やWAの#120〜#400を名倉のように擦り付けて使うのです。こうすると無駄に荒砥を消費することなく,平面性を維持しながら,そこそこの速度で作業を行うことができます。最初は大きく立てて研ぎ,切っ先をどんどん削って上げていきます。コンコルド部分の修正を行うわけです。
切っ先が上がったら,次に刃元の部分を峰と平行になるような力を込めて削ります。これは何をやっている作業かというと,切刃全体にアールをつけるためです。切っ先側と刃元側を大きく削り,中間部分を残しながら全体にアールをつけ,少しでもよい刃線に近づけていくわけです。ある程度,実用的な形が出るまでこの作業を続けます。ハガネ部分をゴリゴリ削るわけですので,力も必要で,このくらい大きな修正量の場合は手を傷めないように何日にもわけて作業します。
おおまかな刃線ができたら切刃をつけます。このときもガチガチ砥石に荒砥の名倉で,刃先側から肉を抜くように研いでいきます。大きく丸刃になっているときは,ぴったり砥石に刃をつけても点で研ぐことになりますので,手で点を感じながら刃に平面を作っていくように研いでいきます。途中から面を感じるようになったら,その面を広げていくように研ぎ進めます。この時点では,切刃の肉を抜くのが目的で刃先までは研ぎません。
切刃の形がよくなってきたら,こんどはカチカチの赤レンガ(砥石)にWA#400を名倉のように擦り付けて研ぎます。荒砥の深い傷を抜くとともに,切刃の形を修正していきます。この工程からしのぎを意識しながら研ぎます。しのぎと刃線のバランスを取りながら美しい形を目指して研いでいきます。だいたいの形が出たら一度砥石を洗い,平面性を確認した上で,ふたたびWA#400で研ぎます。こんどは力を抜いて,切刃全面を滑らかに慣らすように研いでいきます。刃線を頻繁にチェックして,多角形のように見えるところを研ぎ減らし,きれいなアールを描きながらも切刃に段がつかないように研ぎ進めます。
形ができあがったら研ぎ傷を小さくするために,天草砥に青砥を擦り付けたもので,切刃全体を研ぎます。これで傷はかなり小さくなるのですが,シャプトンオレンジと比較したところ,シャプトンの方がずっと効率がよかったので,以降はシャプトンで切刃を研ぎました。形を崩さないように,しのぎをきちんと立てるようにしながら,実際は微修正の連続です。
ここまでできたら,平を磨きます。耐水ペーパーの#1000を小さな砥石に貼り,平面性を維持しながらサビと傷を落としていきます。以降,耐水ペーパーの#2000,#5000と続き,鏡面化します。鏡面を嫌う人もいますが,家庭用の場合は,サビが出にくいという利点があるので光らせます。平が磨けたら,裏も磨きます。裏は耐水ペーパーとコルク,あるいは手磨きです。同様に,峰も軽く磨きます。
磨きが終われば裏押しします。刃裏がまったくないので,中砥(シャプトンオレンジ)から始めます。裏鋤きが波打っていて,切っ先手前に刃がつきません。長い長い時間研ぎ込んで,裏刃ができたと思い,#2000,#8000と研いでみると,#8000で裏ができません。#2000の粒度程度の波打が残っています。ふたたびシャプトンオレンジに戻り,切っ先を重点的に研いで裏をつくります。きちんと平面が出れば,最後は#8000で仕上げます。
裏ができたら本刃付けです。シャプトンオレンジ→グリーン,スエヒロ#8000と研ぎ,裏押しして刃をつけます。このとき,少し立て気味に研いでハマグリ刃にします。切れ味テストを行い,OKになればこんどは切刃の化粧研ぎです。天然仕上砥石で本霞仕上げにしたいところですが,サビを考えると人造の鏡面仕上げがよいので,スエヒロ#8000で刃線と平行に研いで研ぎ目を小さくして,ムラを少なくします。研ぎが終わったら,峰の刃裏側の角を白名倉で落とします。手を切らないようにするためです。
次は柄洗いです。永年使い込まれた包丁の柄は相応の年季が感じられますが,刃も一新して生まれ変わったわけですので,柄もきれいに洗って再生します。アクリルの布に化粧用石けんをつけて丁寧に磨くと,本来の木の色が浮かび上がってきます。柄の色が明るくなると,包丁の雰囲気も新しい感じになります。水ですすいで全体をきれいに流します。
最後はもう一度スエヒロ#8000で刃先を研ぎ,裏押しします。水洗いして乾燥させたあと,雑誌や新聞紙を使って刃先を撫でます。残っているかもしれない目に見えないカエリを取り除くためです。それから堅く折り返した厚い布で試し切りを1回だけ行い,切れ味合格なら全体を丁寧にぬぐって紙に巻き,箱に入れて作業はお仕舞いです。
さ,これでよーく切れる出刃の完成です。研ぎ減るまで,たくさんのおいしい魚料理を作れそうです(画像/MWS)。
2012年3月28日
27日は若い研究者(大学院博士課程)の訪問を受け,たのしい顕微鏡談義となりました。この研究者は鞭毛藻と貝毒関係のご専門で筆者とは分野が異なりますが,光学顕微鏡をよりよく使おうという点で一致しています。2010年に北国で行われた筆者の顕微鏡セミナに関西から自費で参加したという骨のある研究者で,「先生の講義を受けてから顕微鏡が楽しくなった」という便りをくれた,思い出深い人でもあります。そんなわけですから,高知の学会以来の再会となった今日は,またまた,おもちゃ箱をひっくり返しての顕微鏡談義になりました。滞在時間は12時間半を越え,話題も尽きなければ当然酒も時間もなくなり,夜も深まってお開きとなったのでした(画像/MWS)。
2012年3月27日
光学顕微鏡の解像限界は,きちんと使っていれば0.25μm程度まではなんとか見えます。0.22μmを切るような構造だと技術がきちんとしていないと観察困難で,0.20μmになれば,マグレで見えること言うことはありません。知識と技術のある人が,その構造を見ようとしてはじめて見えてくるものです。0.20μm以下の構造になると特殊技術が必要になってきて,特に光の波長制御が大切になってきます。0.18μmの領域になるとすべてのパラメータを適切にコントロールして,さらに画像処理も行う必要が出てきます。きょうの画像は胞紋内部に0.2μm以下の構造があるように見える珪藻の例です。ふつうに検鏡しているとただの穴に見えます。しかし0.2μm以下を見ようとすると,この胞紋内部に,回折縞とは異なる構造がうっすらと浮かび上がってきます(画像/MWS)。
*1 記事を上書きして消してしまったので,新たに書きました(4/2)。
2012年3月26日
丸い珪藻(中心目珪藻)では中央部の処理が見どころの一つです。放射状に広がる原点部分をどのようにデザインして模様が始まり,強度を確保しているのか,種によりいろいろです。画像はコスキノディスク属珪藻の中央部で,和名ではコアミケイソウ属と呼ばれています。この分類群は仕分けが難しく,珪藻の専門家でも尻込みする人がいるくらいです。たくさんの種類がいるのですが,それぞれ中心部の微細構造が異なります。残念なことは,このレベルの(光学)顕微鏡写真がほとんどないので,構造がわかってもなかなか種名にたどり着けないのです(画像/MWS)。
2012年3月25日
珪藻の殻には見どころがいろいろありますが,特に気に入っているのが殻の末端部です。いろいろな種で,この部分が面白いですが,筆者の特にお気に入りは,フルスツリアやアンフィプレウラの仲間の末端部です。これらの珪藻の殻には,ひじょうに細かい点紋列や格子構造が分布していますが,その分布を末端部ではどのように処理しているのかが見どころです。きょうの画像は,フルスツリア属の一種,Frustulia amphipleuroidesを紫外線検鏡法で撮影したものです。それまで整然と平行に刻まれていた点紋列が,この部分だけは放射状に広がっています(画像/MWS)。
2012年3月24日
震災から一年経ったので,今年は「震災の年」ではありません。地震も少なくなったし,今年は昨年分製作できなかった分,たくさんの標本を作れればと思っています。それでここのところ,珪藻在庫を増やすべく,珪藻の拾い出しをしていました。昨年の震災でも何とか珪藻の在庫と拾い出し用のサンプルは守ったのですが,使用頻度の少ない拾い出し用のサンプルはまとめてペンケースに入れたままでした。一年ぶりに開けてみてびっくり。さすがにあの震動に耐えることはできず,激しくシェイクされてぐちゃぐちゃです。うーむ。二枚組で保管しておいたものは無傷だったのに,5枚組でケースに入れたのはダメか…。正直言って大損失です。10回のサンプリングに試料処理…二年分の努力が粉となって飛んでいます。それ以上に気分的にも宜しくない。15年間大切にしてきた腕時計を紛失した気分といえばわかってもらえるでしょうか。まあ,あれだけの地震だったのですから,この程度の損害で済んでよかったと考えるべきなのかもしれません(画像/MWS)。
2012年3月23日
被災地の復興を進めるには,がれきの処分が重要なことはもちろんですが,もう一つ大事なのは人手を確保することです。ところが被災地では宿泊施設が限られていて,しかも週末以外は復興関係者で満室の状態が続いています。仙台などの大都市圏が近くにあれば,そこから通うことも可能でしょうが,岩手県沿岸などではそれも難しいところがたくさんあります。昨年末に釜石に出向いたときも,平日はどこの宿もとることができず,遠野から通うなら大丈夫かと思い聞いてみれば遠野市のビジネスホテルも満室でした。土日しか宿がとれないのです。現地でホテルのフロントに聞いてみれば,復興関係者の長期宿泊が多く,ネット予約枠までは確保できない,とのことでした。
この状況はどこも似ているようで,いわき市より北では,ビジネスホテルなどは復興関係者で一杯です。現地に宿泊できないようでは作業ができませんから,宿泊施設が不足していることが復興の妨げになる可能性はあると言わざるを得ません。小さな取り組みはあるようですが,まだ根本的な解決には至らないように見えます。それにしても,この被災地での宿泊問題,ぜんぜんニュースになりませんが,なぜなんでしょうか。大きな問題だと思うのですが(画像/MWS)。
*1 画像は昨年末の釜石市でみかけたがれきの山です。3階建ての建物くらいの高さは余裕であるように見えました。これでもごく一部で,これから壊さなければならない建築物が大量にあるので,さらにコンクリート破砕屑などのがれきが大量発生することになります。これを建設リサイクル法に準じて処理することは現実的に思えませんので,実質,解体クズは産廃扱いになるのでしょうか。もし,先日報道されていたように,鉄・コンクリート系の廃棄物を防潮林の土台材料として活用するなら,建設リサイクル法を拡大解釈して合理的に処理可能な気もします。非常時なので法を守ることばかり考えてはいけませんが,どの辺りで落とし前をつけるのかは,むずかしい問題ですね。
2012年3月22日
来週金曜日(3月30日)に,日本プランクトン学会春季シンポジウム『珪藻の生物学』が開催されます。近年明らかになった成果が盛りだくさんで発表されますので,珪藻の生物学,生態学に関心のある方にはとても勉強になりそうです。会員でなくても参加可能ですので,興味のある方はこちらを参考にしてみてください。場所は東京大学大気海洋研究所で,最寄り駅はつくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」になります(画像/MWS)。
2012年3月21日
春分の日の午前中は,偏光関係にお詳しい研究教育者の方をお招きして茶飲み話となりました。現代学生事情やら機材の話やらでとても楽しい時間となりました。いろいろなことに経験豊かな方とお話ししていると,特にテーマを設けることなく雑談に終始していても,その中に論理があり観察があり分析が施されていて,たいへん勉強になります。トシのせいか,若い頃は純粋な技術の話をえんえんとやることも面白かったのですが(いまでも面白いですが),だんだんと,誰がどうした,彼が何したといった人物に関する話題が増えてきたようにも思います。技術も知識も人に宿るわけで,だんだんと「人」の問題が気になってくるのかもしれません。
画像はそんな話題とは何の関係もない,カタクチイワシの背中です。きれいな青緑を撮影しようとしたらこれが難しいこと。光の入射角によって反射光の明るさが大きく変わるので,魚を回しながら最適な位置を探って撮影したものです。たぶん,タンパク質の薄片の干渉で色が出ているんでしょうね(画像/MWS)。
2012年3月20日
本欄では,原発災害に関して,災害はまだ始まったばかりであり,まだほとんど何もわかっていないことを繰り返し述べてきましたが,そのスタンスはこれからも維持しようと思っています。きょうは上の記事を見つけましたので記録としてスクリーンショットを保存しました。一年前に何が起きていたのか,少しずつ,報道に出てきているように思います。本記事の出所はこちらです(文責/MWS)。
2012年3月20日(2)
被災地の復旧作業(それは主にがれきの除去,建築物の解体,電気,ガス,水道,下水道等の都市インフラ復旧などです)が震災後約10〜11ヶ月程度でどれだけ進んだのかが海外のサイトで報道されていました。部分は必ずしも全体を表しませんが,画像としてよくまとまっているのでリンク先を参照してみてください。
こちらです
日本では復興が遅れているといわんばかりの報道しか見かけませんが,国外からの目で見れば,これはほとんど信じられないレベルの仕事の速さであるのでしょう。実際,震災直後に自衛隊を10万人派遣して,主要幹線道路を直ちに通行可能にして,波打つ道路を驚異の早さで復旧した対応力は,非の打ち所がないと思います。床屋政談などを聞いていると,テレビだけ見て政府の対応に不満を溜め込んでいる人がいるように感じられますが,11日の記事でも書いたように,全体的には「みんなよくやっている」と筆者は感じています。作業員の方々には頭が下がります。現場では放水作業もできない中で解体作業をしなければならないところも数知れずあったことと思います。粉塵舞い散る中での作業は,放射線に劣らないリスクがあるので,作業従事者が体調を悪くしないことを祈るばかりです(文責/MWS)。
*1 本欄でマスコミや産業界に批判的な記事を書くときは,だいたい,背後に潜む不健全な思惑を指摘したいときです。原発であれ復興作業であれ,現場の方々は大変よくやっていると思います。たまに,とんでもないことをやっている例もあったりしますが。
2012年3月19日
このような報道がようやく出てきました。全国の自治体からがれきの受け入れ表明が始まると,今度は現地処理…,なんというか順番が逆のような気もしますが,いろいろ考えてみても,この記事のような方法はがれき処分としては納得のいくやり方ではないかと,個人的には思っています。それにしても細野環境大臣,やっていることの是非はともかくとして,恐ろしく忙しそうですね。前面に立って関係機関と調整する仕事ぶりはさすが政治家を思わせるものがありますが,そんなことばかりしていて,環境に関する基本的な勉強をする時間はあるのかと心配になります。大臣が役人の手先になってはいけませんから(文責/MWS)。
2012年3月18日
震災のがれき撤去問題に関して,放射線の側面からも考えなければならないことは確かです。関東広域に放射性セシウムが残存している現状では,人間が運べる程度のがれきによる汚染など多寡が知れているという立場もあるでしょう。そういった量的なことを押さえた上で,地域限定の議論をするなら聞くに値しますが,ここでは,原則論の大切さも今一度確認しておく必要がある,ということをあえて述べたいと思います。
こちら(週刊朝日 広瀬隆)
こちら(徳島県の見解)
低レベル放射性廃棄物は,たとえ低いレベルであっても,環境中への拡散を防ぐように注意を払われてきました。例えば,簡単に拡散希釈し,生物濃縮係数が低いと考えられるセシウム137でさえも,温排水の基準は1リットル当たり90ベクレルだったわけです。こういった伝統・経験による知識がありながら,事故が起こったからと,放射性物質を数千ベクレル/kg以上も含む恐れのある焼却灰が生じるような廃棄物を,一律に北海道から沖縄まで拡散させるというのは,環境上思慮の浅い方法と言わざるを得ません。
世の中には物分かりのよい人が大勢いて,事故以前は何も知らなかったのに,政府が安全と,専門家が低リスクと言ったなら,それを信じて,そのまま「自分の考えのように」吹聴する人がいます。そればかりか,放射能を心配してがれき受け入れを反対する人々を無知扱いする人までいます。確かに,福島県のがれきは外部に出しませんから,宮城や岩手のがれきの被曝リスクは高くないですし「そこだけ見れば」,がれき受け入れに賛成してもよいように感じてしまうのでしょう。だから「そこだけ見れば」多少の合理性がないとは言えません。でも,それは,相手のワナに引っかかる可能性があるのです。
もし,これで,全国の自治体が8000ベクレル/kgのがれきを引き受け,10万ベクレルの焼却灰を管理型処分場に仮置きすることを許容したら,全国の原発にあふれかえっている低レベル(〜数百ベクレル/kg)放射性廃棄物の管理はどうなるのでしょうか。いまのところは管轄する法律が違いますが,この大事故をきっかけに,「放射性物質のリスクは低いのだ」という世論形成に成功すれば,パンク寸前まで溜め込まれている低レベルの放射性廃棄物も,全国の放射性廃棄物を受け入れた自治体に流れていくことを否定できないでしょう。
そればかりでなく,「がれきの広域処理容認」により,受け入れ処分地では,規模は小さいながらも,確実に(100%),放射性物質が付加されます。そして,焼却灰からの浸出は多少なりとも起こるので,相当の管理/処理をしなければ,ごく局地的ながらも,環境汚染を引き起こします。それは,全国から見れば小さな問題でも,小川で遊ぶ子どもから見れば,人生に影響を受けるほどの問題です。大人であれば,自分のアクアリウムにセシウム137を放り込まれた気分を想像すればよいでしょうか。
原子力利用に反対してきた人々が,60年を越えるその歴史の中で運動を継続できたのは,「理論的正しさ」が揺るがなかったからです。一方,原子力の産業的な利用が絶えなかったのは,「カネの流れ」が絶えなかったからです。
いま起きていることも同じです。放射性物質の受入を拒否している多くの人たちは,過去の法令もふまえて,「理論的・歴史的正しさ」で戦っています。対してがれきの拡散を進める人たちは,過去の決まりを変更してまで,「カネの流れ」を作ろうとしています(それだけではありませんが)。
・復興を急ぐ余り,放射性物質を拡散させた。
・放射性物質の拡散をコントロールしながら,復興政策を立案できた。
どちらが優れていると思いますか。
物事を考えるときは,目先だけではダメです。長い時間軸で,将来を見据えて,どんな方向に物事が進みそうなのか,「論理」をきちんと積み上げる必要があると思います(文責/MWS)。
*1 徳島県の見解は,その質問者の浅薄な思考に対しての返答としても秀逸です。事実を示して真摯に対応しながらも,独特のニュアンスを生成させる高等な受け答えは,行政の仕事としては出色です。仕事ってのは,こういうふうにするもんですね。徳島に遊びに行きたくなりました。
*2 放射性セシウムが降り注いだ地域で生じたがれきは,放射性セシウムが振り注いだ地域で処分する,という決まりを作るのが合理的なように,筆者は思います。合理的,といっても最低限の要請です。基本は現地処理で,現地の利益になる方法を考えるべきです。
*3 「復興の妨げになる」という意見は聞くに値しません。それは未来のこと言っているからです。その場所の,あのがれきを処理しなければ,この地域の復興はあり得ないという事実は聞いたことがありません。現在は,がれきの多くは公共用地などに積み上げられています。民間用地の多くは手つかずか,解体中か,更地になっているところという感じです。居住地の再生などまだまだ先になる段階で,がれきを復興の障害にこじつけるのは,かなり無理がある印象です。
*4 発生した2300万トンのがれきのうち,広域処分に供せられるものは400万トンとされています。そして福島のがれきは基本的に県内処分です。現在のがれき処分率は5%超程度だそうです。がれき処分の遅れが復興を妨げていて,400万トンを広域処分すれば復興が加速するとは,とても思えませんね。この数字からは。
*5 東北沿岸は度々津波に襲われていることは周知です(ほかの沿岸もそうですが)。そろそろ「学習」して,復興復興と土建作業を急ぐよりも,次回に同じことが起きても被害を最小限にするよう都市設計を考えるべきだと思います。「復興の妨げ」という言葉は要注意です。突貫工事による復興では,今回の教訓を生かせないかもしれません。
2012年3月17日
もし復興というものをまじめに考えるなら,がれきの処理などの目先の事象にとらわれず,徹底的に足腰を鍛えることが必要だと筆者は考えます。足腰を鍛えるとは,基礎的な知識を身に付けて,長い射程で力となるものの考え方を手に入れることです。そうしないと,復興という美名のもとに,東北沿岸は土建国家に食い物にされ,世界最高の美しさと防災能力を兼ね備えた農漁村再生のチャンスを失います。足腰を鍛えるには,「都市とは何か」を徹底的に考え抜くことです。そして先人に学ぶことです。防災の勉強も津波の勉強も全て後回しで,まず,人が住むとはどういうことかを考え,その基礎の上に防災を積み上げなければならないと考えます(画像/MWS)。
*1 オマエは何をわけ分からんことを言っているのだ,と思った方は,きょうの画像の本をすべて読んでみてください。得るところが大と思います。もちろん,土建/ゼネコンの方々にもお読み頂けると有り難いです。現場作業を担う方々にも読んで欲しいですね。与えられた仕事をこなすだけでなく,地域再生に対してグランドデザインを想像できるということが,大きな力になると思います。
2012年3月16日
震災のがれき撤去が進まないことが原因で,復興が妨げられている,という報道がえんえんと続いています。市民が放射能汚染の恐れのあるがれき受け入れを拒否しているので,自治体としても無条件で受け入れるわけにもいかず,ねばり強く市民に説明していく,という構図が一般的です。ちょっとこれを噛み砕いてみましょう。
・震災でがれきが大量発生した
・そのままでは処分に10〜20年かかる
・それでは復興の妨げになる
・自治体で分担して迅速に処理しよう
・しかし市民が放射能と騒いでいる
・政府の対応も後手後手である
・放射能汚染は測定値で安全を保証できるだろう
・データをもって市民を説得しよう
・市民が感情的になって受け入れてくれない
・だから市民が悪い
・がれき処分の仕組みを作らない政府も悪い
・復興を妨げているのは無能な政府と放射能アレルギーの市民である
だいたい,このようにまとめられるかと思います。ここまでわかりやすく書けば,読者の皆さんも,報道の背後に潜む土建/産廃業界や電力産業を想像できるかと思います。結局のところ,利権と業界保護の論理で動いているだけですね。マスコミがそろってがれき問題を採り上げているということは,がれきを全国の処分地に運んで問題を解決することが何より重要だ,と国民を洗脳しにかかっているのです(*2)。いまの国民は,「復興」という言葉をちらつかせれば,すぐにだますことができる,そうマスコミは思っているのでしょう。「電気の安定供給=停電の恐怖」をちらつかせ,「安全安心でクリーンな原子力」を信じ込ませた手法と何も変わらないですね。
実際にがれき処分を遅らせているのは市民でも政府の仕事の遅さでもなく,役人の頭の硬さですね
こちら
こちら
読売新聞に至っては,
このような,子どもを利用した(取材までしている),お涙頂戴型の記事をわざわざ掲載して,まるで被災地全体ががれき問題で不潔な環境に苦しめられているかのような印象操作まで行っています。さすがにほかの新聞社では,ここまで下品な記事は流していないようですが。
復興復興と,中身も詰めずに急ぐのは愚の骨頂です。積み上げたがれきを現地で活用し,可燃物については白河ウッドパワー発電所のような設備を建設して運用してもよいでしょう。中長期的には,がれき燃焼終了後に,地域のバイオマス発電を担うようにデザインして,被災者の雇用や新たな産業の育成に結びつけてもよいでしょう。金属リサイクルにしても,一時的な中間処理施設を急造して,被災地の雇用に結びつくように配慮してもよいでしょう。そうすれば,エネルギーのロスを最小限にがれきの処分が可能で,地元に長い期間,仕事が生じることにもなり,環境汚染の広域化も防げます。
一方,大量のがれきをダンプカーで運べば,それだけエネルギーをロスすることになります。東北で発生するはずの仕事も,全国の土建資本に飲み込まれて行くことになるでしょう。
そのことはすでにこちらで述べられています。一読に値する意見だと思います(文責/MWS)。
*1 画像一枚目は産廃Gメンとして有名な石渡氏の著作です。産廃問題はこの著作群を読まずに語れません…,というのは言い過ぎかもしれませんが,彼の著作を読めば,市民が拒否しているから,がれきの受入が滞っている,などという微笑ましい問題ではないということが直ちに理解されるでしょう。今回の震災では発生したがれきがかなり多かったので,大手建設/リサイクル企業が合法的に利権の奪い合いを行うことになるわけです。なお石渡氏の文章はこちらで読むことができます。
*2 もちろんがれき処理は必要です。筆者も現場で見てきましたので,大きな問題であることは理解しています。迅速に行えればそれに越したことはありません。しかし報道されているのは,いかにがれきを全国に拡散させるか,引受先をどれだけ作るか,ということばかりです。東北沿岸の復興に最もふさわしい処理方法はどのようなものか,といった観点からの報道がありません。
2012年3月15日
魚のウロコは乾燥すると反ってしまい,きれいにマウントできません。かといって封入剤で封入すると,屈折率差が小さいので模様がよく見えなくなってしまいます。封入標本でも高級機を持っていれば観察は容易ですが,学校教育の現場では,まず教員が観察する段階で躓きそうです。またカタクチイワシのウロコはひじょうに薄く,ピンセットでつまみ上げても,巻いてクチャクチャになってしまい,平たく成形するのが面倒です…。などといういろいろの特性をふまえてマウント方法を考えるわけですが,今回は濡れたままウロコを成形し,乾く前にカバーグラスでサンドイッチして乾燥させるドライマウントの手法をとることにしました。こうすれば変形は少なく,ウロコ全体を被写界深度内で観察できます。ドライマウントですから,コントラストもいいのです(画像/MWS)。
2012年3月14日
『タモリ倶楽部』に出演しました。上の顕微鏡が(笑)。
夜に大至急顕微鏡を貸して欲しいと某社から連絡が入り,明日にでも取りに行くという勢いで,何を観察するのかもわからないという依頼でした。そこで当サービス自慢の「よくみえる改造」を施したデモ用顕微鏡に高級レンズを装着し,各種接眼レンズに専用照明装置,標本製作セットをひとまとめにして梱包して宅急便送付しました。このセットであれば,勉強も練習も必要なく,視野を明るく調整できれば最低でも性能の60%は出るようにしてあるので,どんな目的にも対応できるでしょう。
東京方面では 2012年3月16日(金) 24時20分〜24時50分 の放送予定だそうです(詳細はこちら)。本ページの読者の方々は,タモリ倶楽部をひと味違った方面からご覧になってはいかがでしょうか。
筆者はテレビを持っていませんし,地デジチューナーも持ち合わせがありませんので,この番組をみることはできなさそうです。代わりに読者の方々にみてもらうことにいたしますー(画像/MWS)。
*1 以前はテレビの受信できるラジオで音声だけでも聞けたのですが,アナログ放送終了で,それもできなくなりました。
*2 顕微鏡のテレビ出演で思い出しましたが,そういえば以前に所有していたニコンS型は映画『日本沈没』に出演していたのでした。どんな役が与えられたのかというと,田所博士の愛用の品,という設定でした。このS型は,年末恒例大忘年会のときに,後輩にあげてしまいました。南極授業で有名になった酒井先生です。筆者は身辺にものが増えるとポンポン人にあげてしまう悪いクセがあります。いい加減なおさねばー。
2012年3月13日
12日は依頼品のためのサンプリングでした。この7ヶ月で20回もサンプリングに失敗していて,時間が無駄になりすぎていたので一発で決めなければと相模湾沿岸まで出向きました。画像一枚目は依頼品の入荷確率が高そうな,御用達のお店です。しかし,せっかく都内から足を伸ばしたのに見つからず,がっくりです。あっちを歩きこっちを覗き探し回ること一時間半,ようやく求めていた品物を見つけました。KINOKUNIYAさん,えらい! それが画像二枚目。
クタクタになって帰宅ですが,標本の劣化が早いので,さっそく作業に取りかかります。新品の歯ブラシで丁寧にブラシがけして顕微鏡標本になる部分(ウロコ)を採取します。ひじょうに面倒で,歩留まりも最悪です。水揚げ時にウロコはほとんどすべてはがれてしまうからです。70匹の試料を処理して何とかなったような気もしますが,あまりの効率の悪さに言葉もありません。余った試料は可食部位ですから廃棄することもできず,こんどは70匹の魚をおろして食べられるようにしなければなりません。開いて骨をとってショウガとネギと叩いてからすり鉢でゴロゴロ。その間に出汁を作って大根を煮て…ということで,画像三枚目は,標本の余りで作った夕食,カタクチイワシの摘み入れ汁です。やたらに作業量だけが多い一日でした(画像/MWS)。
2012年3月12日
ギョロメケイソウ(Auliscus属)の目を紫外線検鏡法で狙ってみました。DApo100UV(オリンパス)を用いて,グリセリン浸での撮影です。コンデンサはAAコンで,こちらもグリセリン浸で使っています。照明波長は365nm付近で,輪帯板を使って偏斜にしています。写っている点紋は180nmよりも小さな間隔です。対物レンズやコンデンサは油浸用なので,グリセリン浸は正しくない使い方です。しかしグリセリンは自家蛍光が非常に少ないのでフレア発生を抑えられます。また,この対物レンズは可視域での収差補正なので紫外線では球面収差に悩まされることになります。浸液の屈折率を指定条件から外すことにより,逆の球面収差を発生させることができれば,キャンセルされてよりよい像になる可能性もあるかもしれません。極限性能を発揮させるイメージングでは,指定条件を厳密に守った基本から出発して,さらによい条件を探ることも重要になってきます(画像/MWS)。
2012年3月11日
あの震災から一年。 みんな,よくやったと思います。 これからもよくやっていきましょう(画像/MWS)。
2012年3月10日
では逆に,暗視野法の画像を明暗逆転して明視野の画像にしてみるとどうなるかということをやってみれば,きょうの画像のようになります。珪藻は,能登半島の珪藻土から取りだしたものです。暗視野では背景が真っ暗なので,ネガにすれば真っ白に飛んでしまいます。珪藻の構造も,輪郭や段差がはっきりしている部分がくっきりと見えるような描写になっています。背景が白飛びしているので,まるで切り抜いたような絵になっていますが,これはこれでアリだなぁという気もします。暗視野法によるこの絵を覚えておけば,珪藻の絵を切り抜きたいときに重宝するかもしれません(画像/MWS)。
2012年3月9日
これはお馴染みのクモノスケイソウの画像です。暗視野法での撮影です,と言いたいところですが,実は明視野法での撮影です。これをデジタルで明暗反転して,ヒストグラムを引き延ばしたものです。暗視野法は物体の検出や輪郭を輝かせるのには向いていますが,微細構造の再現には適していません。なので,微細構造を表現した暗視野画像を作るには,明視野法で撮影して反転させた方がよいのです(画像/MWS)。
2012年3月8日
今年も確定申告の時期に入っていますのでさっさと計算して手続きを終わらさなければならないのですが,何というか,頭が言うことをききません。どうしても昨年の震災を思い出してしまうせいか,得も言われぬ鬱々とした気分になってしまい,まったくやる気が起こりません。原発が次々と爆発する中で計算していた昨年よりはマシなはずなのですがどうしたことでしょう。たぶんこのような,災害の心理的影響というのは今後も続くのでしょうから,いまのうちに回復をはかるようにしなければいけませんね。ワォーンと遠吠えでもしたい気分です(画像/MWS)。
2012年3月7日
所属学会のレター誌をぱらぱらと見ていたら,『はやぶさ』が。
かっこええー
(画像/MWS)。
*1 『はやぶさ』はPCのモニタで見ていましたが,高品質のカラー印刷では(たぶん)始めてです。色がぜんぜん違いますね。鮮明だ。
2012年3月6日
もひとつ紫外線検鏡法の画像。液浸系で対物NAは1.3,コンデンサNAは0.6程度です。クチビルケイソウの仲間(Cymbella属)です。この絵を見ると,珪藻の輪郭が黒っぽく強いコントラストがついていて,内部の微細構造はそれよりも弱いコントラストになっています。空間周波数に応じたコントラストのつきかたが,透過明視野で中央に向けて絞り込んだときの典型的な像になっています。顕微鏡観察の熟練者であれば,この絵をみただけで照明法を見抜くことでしょう(画像/MWS)。
2012年3月5日
顕微鏡の鏡筒部にはめ込んで使っている時計の電池が切れたので秋葉原に向かいました。SR621SWが337円,ヒロセテクニカルはいつも頼りになる工具屋さんです。これでまた二年くらい正確に時を刻んでくれれば,一日0.5円くらいですね。有り難いことです。裏蓋を外して電池を交換していたら,ふと中学生の頃を思い出しました。そういえば,必要にせまられて研ぎを行った最初の出来事は,自動巻の腕時計の裏蓋あけでした。精密ドライバーを研いで薄くして,それをすき間に差し込んでドライバーをコンコンと叩くと,裏蓋を外すことができたわけです。失敗すると手に突き刺して血がぽたぽた…になるんですよね。懐かしいような,教訓になるような想い出です(画像/MWS)。
*1 時計の電池交換はお店でも1000円程度でやってくれるので,お店に頼んだ方が安くつくことが多いでしょう。すでに工具を持っていて,電池を買いに行くのに交通費もかからなくて,技術もある方でしたら自分で交換した方が安いことは確かですが…。でも自分でやる人は,安いからやるんじゃないんですよね。やりたくなっちゃうんですよね。それがすんごく高くつくことになろうとも(^^;
2012年3月4日
きのうと同じ紫外線検鏡法で,液浸系を用いて撮影してみました。対物NAは1.3,コンデンサNAは0.6程度です。きのうとは違う珪藻です。プレウロシグマ属(メガネケイソウ)の一種で,干潟の泥上などにいるものです。低倍率でも被殻がざらざらした様子がわかりますが,分解能の高い絵で見ると,精密な模様が見事です(画像/MWS)。
2012年3月3日
DL-TESTはぎりぎり紫外線(i線,365nm)を通しますので,蛍光でコントラストは落ちますが,紫外線検鏡ができます。上がその一例で,きのうの画像と同じ珪藻です。対物レンズはNA0.7,コンデンサNA0.4,いずれも乾燥系を用いています。ケーラー照明で視野絞りはかなり絞り込んでいます。短波長の威力で,絞り込みでも点紋の分解が完全で,ピント深度も大きく,透過明視野中央絞りでかなり絞り込んだにもかかわらず,解像感の高い絵になっています(画像/MWS)。
2012年3月2日
カラーカメラでモノクロモードに設定できるデジタルカメラがありますが,モノクロ撮影を行うとRGBの画素をそれぞれモノクロに使うことができて,風景写真などでは解像感の高い絵になります。ところが顕微鏡写真で同じことを行うと,よろしくありません。顕微鏡写真でコントラストと分解能のよい画像を得るには,照明光を単色にする必要がありますが,そうすると,RGBの画素のどれかが無効になってしまいます。たとえば,Gで照明すれば,RとBがつぶれてしまい,ざらつきのある絵になってしまいます。
解決法はモノクロCCD/CMOSを使うことなのですが,高画素で安価なものが見当たりません。そこで,次善の策として,カラーカメラで,RGB照明を行い,このときのRとBの量を少なくしてコントラストを上げます。具体的には,Y48にPO0フィルタを使います。撮影画像はノイズを減らすために3枚で平均を取り,さらに輪郭以外をぼかしてから縮小して引き締めます。そうすればある程度ざらつきを押さえながら解像感のあるモノクロ画像になります。きょうの画像がそれで,珪藻はDL-TESTにマウントされてているLyrella属の珪藻で,対物NAは0.7,拡散板を用いた偏斜照明での撮影です(画像/MWS)。
2012年3月1日
2号機5階「人の作業困難」=最大220ミリシーベルト−福島第1
東京電力福島第1原発事故で、東電は28日、2号機の原子炉建屋に無人走行ロボットが入って放射線量の測定をした結果、5階オペレーティングフロアで最大1時間当たり220ミリシーベルトを記録したと発表した。同社は「生易しい環境ではなく、人が作業するのは困難」としている。
東電によると、ロボットは27日に建屋へ入り、調査を実施。1〜4階の階段や踊り場は1時間当たり11〜30ミリシーベルトだった。
5階では、主に西側部分を調査。格納容器に近い中央部付近で同127〜220ミリシーベルトと比較的高い線量が測定された。格納容器から放射性物質を含む水蒸気が漏れ出して線量が高くなっている可能性があるという。(2012/02/28-20:55)
(http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012022800972)
福島第1第原発の2号機は建屋の損傷が少ないので,使用済み核燃料の抜き取りは1号機,3号機,4号機よりはやりやすいはずなのですが,放射性物質に阻まれて,現時点では作業にはとても着手できないようですね。220ミリシーベルト/時はさすがに厳しく,貴重な人材をそこで作業させるわけにはいかないでしょう。かといって,放置しても線量が簡単に下がるわけではなく,この数値だと50年後でも厳しいと予想されます。
しかしこの記事を見れば,4階までは30ミリシーベルト/時程度で済んでいるということで,汚染が局所的なこともわかります。これが本当なら,建屋内部を徹底的に除染して,全域を10ミリシーベルト毎時程度まで押さえ込めば,人間が作業できる可能性も出てきます。福島県再生の一歩は,原発事故の収束でしょう。いちばん簡単なはずの2号機で,使用済み核燃料の抜きとりを無事に終えて,「できるんだ」という希望をぜひとも示してもらいたいものです。現場の方々は本当に大変なことと思います。ぜひ健康を維持しつつ無理のない範囲で作業に従事していただきたいものです(画像/MWS)。
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