画像のご利用について





本日の画像

MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


【サイトトップ】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2008年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2009年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2010年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2011年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】 【6月】   【7月】   【8月】   【9月】 【10月】 【11月】 【12月】  【2012年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2013年1月】  【2月】  【3月】  【今月】


原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ(2011年9月再開)。

ユーザー様には海洋の放射能汚染に関するテキストを こちらで配布中です。
パスワード等を紛失した方は再請求してください。


2012年5月31日


ps

この半月,依頼品のひじょうに難易度の高いサンプルの処理を行っていました。多くの珪藻が溶解しており,位相差法でもほとんどコントラストを生じないくらいに薄くなった珪藻被殻をたくさん含む試料です。しかも試料量は4mlと少なく,遠沈管に移してもほとんど珪藻は見えない透明な液体です。恐らくこの4mlの中の珪藻をすべて回収してカバーグラスの上に載せないと,珪藻が少なすぎてまともな標本にならない感じです。珪藻が沈殿してくれないので脱塩そのものが困難で,有機物の処理も当然困難になります。このような試料の処理は恐ろしく手間がかかります。なぜなら,珪藻を沈殿させて上澄みを捨てるのが困難なので,上澄みを分取しては検鏡し,そこに珪藻がいないことを確かめてから捨てる,という作業が必要になるからです。きょうの画像はその試料中に入っていた珪藻被殻の一つを位相差法で撮影したものです。被殻が壊れて溶解の途中である形になっています。厚みもなくなり,非常に軽く,ほとんど沈みません(画像/MWS)。








2012年5月30日


ps

この画像は位相差法で珪藻(化石由来)を写したものです。先日の紫外線位相差よりは長めの波長(400nm)で撮影しています。開口数0.75の対物レンズに開口数が0.3付近の環状照明を施したとは思えない解像になっています。画像処理によりコントラストが自由に調節できる現代にあって,分解能を犠牲にしてまでもコントラストを高める位相差法の出番は,筆者にとっては少なくなっていたのですが,最近の検討でちょっとだけ気分が変わりつつあるような気がします(画像/MWS)。








2012年5月29日


ps

ps

きょうはタイミング良く虹をつかまえることができました。急にゴロゴロ雷が鳴り出して突風が吹き,早足で雨が駆け抜けるような天気のときにはどこかで虹が出ています。きょうの虹は主虹と副虹がなんとか見えましたので,主虹の構造をとらえようと撮影を試みました。虹は一見すると太陽光をプリズムでわけたようなスペクトルかと勘違いするのですが,よく眺めてみると主虹には細かい構造があって,全体としては単純にスペクトル順ではないことがわかります。上の画像は主虹の一部を撮影したものです(副虹は上の方向になります)。このままだと虹の構造がわかりにくいので画像処理をします。

1)背景色(空の色)を減算
2)コントラストを強調
3)ガウスぼかしでノイズを平均化
4)縮小

上記の処理を施して,それで得たのが二枚目の画像です。主虹の構造が現れています。いちばん色がはっきりしている部分が主虹,そこから円弧の内側に向かって第一過剰虹,第二過剰虹が見えて,第三過剰虹がかろうじて見えるような気がします。主虹の外側の空は暗くなっていますが,これはアレキサンダーの暗帯と呼ばれています。主虹と副虹にはさまれた空が暗く見える現象です。虹の光学は難しく,数学的取扱は手に余ります。専門家の解説にまかせることに致しましょう(画像/MWS)。








2012年5月28日


ps

ps

風景はデジタル素子にとってもっとも厳しい被写体かもしれません。砂粒や木の葉の詳細を記録するには画素数が足りないので拡大が必要です。パソコンのモニタで眺めたのでは,よほど壁一杯くらいのサイズで1万ピクセル以上のモニタでも使わないと,デテールと視界の広さが両立しません。この点はフィルムは優れていたなぁと思います。多くの分野でデジタルの優位性が確立して久しいですが,より本物に近い描写は,むかしのリバーサルフィルムでもすでに達成されていたことを思い出さずにはいられません。渓流の水の感じや緑の感じなどが,80年代くらいの釣り雑誌などを見ると,とてもよく写っているのです。画像は最近訪れた東京西部の渓流です。あたまのなかに蓄積したゴミを浄化する気分で渓谷に降り立ちましたが,ホント,何だか良い体験をしたような気分になって帰ってきました(画像/MWS)。








2012年5月27日


ps

ps

位相差法はコンデンサの環状絞りによって照明側開口数が制限されるので,明視野や偏斜照明で高NAの照明を施した場合と比較すれば分解能は低くなります。しかし位相差法の効果により,解像できている構造のコントラストは高くなります。筆者は分解能優先の検鏡をするので,位相差法の出番は少ないのですが,それでは機材を死蔵してしまうことにもなりかねませんので,時々引っ張り出しては思いついた検鏡法を試しています。

きょうの画像はその一例です。上の画像は550nm付近による照明です。対物レンズの開口数は0.75です。位相差法は緑色光で最高の効果が出るように設計されるのがふつうで,緑色光で検鏡するとハイコントラストの像が得られます。下の画像は365nmの照明によるものです。設計波長からはずれますが,それなりにコントラストのある,そして分解能の高まった像が得られています。位相差法は通常可視光に対して行われ,紫外線位相差法というのはあまり使われませんが,きょうの画像を見る限り,効果的なことは明らかです。興味深いのは,光源の波長を変えただけで,焦点深度が深くなっているように見えることです。レンズ一本でも,活用法はいろいろあります(画像/MWS)。



*1 大切なことは,このようなマニアックなテストを行うには,それに耐える標本が必要だということです。当サービスが提供しているDL-TESTやJシリーズは,こういった厳しいテストにも使える標本です。






2012年5月26日


ps

ps

これは当サービスの誇る珪藻プレパラートJシリーズの画像で,位相差顕微鏡による像を撮影したものです。Jシリーズは背景を完全透明として,位相差,暗視野,微分干渉など,あらゆる検鏡法に対してもクリアさを保つきわめて高い品質が自慢です。通常,天然に生息している珪藻類を採取して標本を作っても,ほとんどはゴミまみれの中に珪藻が見つかる,といった程度のものしかできません。そのような標本を探検して珪藻を探すのも楽しいのですが,やはり,美しさといった点では純度100%のクリアな標本にはかないません。鑑賞していると,心が落ち着きます。ちなみに,この珪藻は,能登半島の珪藻土を洗って取りだしたものです(画像/MWS)。



*1 試料提供:日本ダイヤコム工業株式会社,株式会社鍵主工業




2012年5月25日


ps

ps

日食時に月の縁と太陽の縁が重なったときに,月面の山が光を遮り谷から光が漏れるのが見えます。ベイリービーズと呼ばれるこの現象は,国立天文台などが詳しく紹介したことにより全国区の知名度となったようです。天文少年だった筆者は,現象自体は知っていましたが,恥ずかしいことに名前を覚えていなくて,今回はじめて覚えることとなりました。もちろん画像を得ることを狙っていましたが,秒単位の勝負となるこの現象,途中から次々と雲が流れてきてまともな絵にならず,うまく行かなかったと思っていました。しかし気を取り直して画像を一つ一つ処理して見てみると,どうやら一枚はベイリービーズと言えそうな状況が写っていました。きょうの画像はその一枚で,東京都豊島区での撮影です。大きな画像はこちらに置いておきます。何だかほっとした気分です(画像/MWS)。








2012年5月25日(2)


ps

ps

先に掲載したベイリービーズは金環食の終了時のものですが,開始時の方も画像自体はとれています。しかし厚い雲が覆っていて,金環の形が遮られたうえに,その減光状況もまちまちなので,確実にこれがそうだと判断できる画像にはなっていません。ちょっと残念ですが,これも記録としてあげておきます。大きな画像はこちらです(画像/MWS)。








2012年5月24日


ps

日食もなかなか迫力のある現象でしたけど,こうやってみると珪藻もじつに鑑賞に堪える見事な構造体という気がします。このクモノスケイソウと呼ばれる美麗な珪藻は,沿岸域の海藻などに付着しています。コンマ数ミリ程度の大きさがあるので,顕微鏡で見る物体としては結構大きなものです。しかしその大きな珪藻の殻に,とても細かい模様が刻まれているので全体としてはまるで装飾をほどこされたかのように見えます。この珪藻,画像で見ても美しいわけですが,生の光で見るともっと美しいのです。それは日食と同じで,テレビモニタで見るのと,実際に自分で見たのでは,感動の度合い(というか感動の「質」でしょうか)が違うのです(画像/MWS)。



*1 日食特集は24日まで掲示の予定でしたが中止しました。というのは,金環日食に関することは,訪問者にとって興味のないものだったらしく,レスポンスはゼロ,画像のダウンロードもほとんどなく,アクセス数は1〜2割も低下したような感じです。筆者がうきうきと張り切ってやったことは,たいてい,こういう結果になります(^^; 。




2012年5月22-23日


月による日食は地球人の特権です。どうか,このページの情報を無断リンクして,どんどん地球人に広めてください。せっかくの大宇宙現象,みんなで楽しみましょう。よろしくお願いします。




ps

ps

ps

ps

ps

ps

ps

ps

日本中が興奮に沸いた金環日食。運良くごらんになれた方はまだ興奮冷めやらぬといった感じではないでしょうか。東京は朝から曇りで薄日が射す空模様でしたが,雲を通して何とか金環日食を見ることができました。実際に見ると,金環食の前後は太陽を月が覆い隠していく様子が手に汗握る面白さでした。ぜひ皆様も上の画像であの感動を思い出してください(画像/MWS)。



*1 金環食に入ったとき,あちこちから「見えたー」と明るい声が響いてきました。こーゆーのは,いいですねぇー。

*2 曇ると思っていましたので,曇天用の観測機器ばかり用意していて撮影機材をおろそかにしていました。食が始まっても曇らないので,手持ちのあり合わせのものであわてて撮影装置を組みました。それで食の開始が写せていません。

*3 画像に見えるシミのようなものは太陽黒点です。最後の画像はまだ食がおわっていません。ほんの少し欠けているのがおわかりでしょうか。

*4 画像はモノクロで,フィルタの組合せにより若干の可視光と近赤外線の撮影になっています。霞んでも少しでも写るようにとの願いが込められています。

*5 撮影は驚異的に難しいものでした。次々と雲が通過して激変する光強度。パソコンを見ながらゲインとブラックレベルと露出を制御し,カメラの絞りを頻繁に変え,太陽を追尾して,ほかの測定器を眺め,コンパクトデジカメでも撮影して,手足が三倍くらい欲しいと思いました。。

*6 [Data] May 21, 2012 07:00-09:02 (JST) / Toshima-ku TOKYO, JAPAN / Tokina SL300mmF5.6 F6.5-F22 / PO-1 + R-64 + ND32 / 1.3M 1/2inch CMOS camera / copyright (c) 2012 Osamu OKU (MicroWorldServices)









ps

ps

日食の朝,都内では曇り空でした。天気予報でも曇りでしたので,金環日食が見えない場合に備えて,測光で日食をとらえる準備をしていました。しかし一枚目の画像で示すように,何とか雲を通して日食を楽しむことができてほっとしました。測光データは金環日食による照度低下を明らかにとらえることができ,これに雲の通過によるノイズも加わった,貴重な記録となりました。さっそく資料として提供いたしますので,教育用資料や個人で楽しむ用途にご利用ください。大きな画像は こちら に置いてあります。213KBのtif画像です(画像/MWS)。



*1 一枚目の画像は金環日食中のものです。お日様が高いところで照っているのに,夕方のような明るさになり,少しだけ気温が下がってひんやりした感じがしました。何かおおきなことが起きているようで,心がざわざわしますね。








ps

東京で観察した金環日食の様子を皆様と共有したく,大きな画像にまとめましたのでご利用下さい。画像は こちら に置いてあります。3.2MBのtif画像です。もちろん著作権はありますが,教育用途や個人利用に制限はありません。画像に手を加えなければ再配布も自由です。このくらいのサイズですと,A4で写真用紙に高品質プリントしても,けっこうきれいに見ることができます。縦横比がA4ではないので,お気に召さない方は上下を少し切りつめてから印刷してください(画像/MWS)。



*1 写真用紙にプリントしたものを教育関係者に渡したところ,職員室でも教室でも大変好評だったとのことです。大人の反応は,「まぁー,きれいねー,すごいねー」が多数派で,子どもの反応は,「すごいすごい,誰が撮ったのー?」がメインだったとのことです。大人は写真を見て,天文台などのネットか何かから拾って印刷したものと思い込んでいて,その一方で,子どもは誰かが撮影した製作物だと思っているわけです。子どもの目は確かですね。その中の一人は,「写真とった人に,私がすごいって言ってたって伝えてくださーい」と言っていたそうです。この子は,9歳にして何か大切なものを持っていますね。(5/22追記)






2012年5月21日


ps

ここ数日パソコンとにらめっこのよくない日々が続いていましたので精神修養の時間が必要になりました。丸尾山の誇る名砥石,『敷内曇』を持ち出して,おのれの心を研ぎ澄ますことにしました。研ぎという動作は本当に不思議で,雑念がなくなるのです。正確に平面を出した砥面に,鉋刃をぴったり当てて,面を崩さぬようにして研ぎます。研いでいるときは,研いでいるという実感すらありません。ひたすら指先の感覚に集中し,どこが砥石に当たっているかを探っている,それだけの感じもします。

この『敷内曇』は独特の滑走感のある研ぎ味で,アタリが柔らかく,それでいて研磨力があり,そしてあっさりとした内曇効果もあるという不思議な砥石です。大平山の内曇とは明らかに異なる,もっと緻密に曇る仕上がりです。刃先もちゃんと研磨するので,ふつうの仕上砥としても優秀です。手持ちのものは原石で,全周皮付きです。ですから耐久性はこの上ないでしょうし,中に筋が入ってきていません。研いでいても,宝物を扱っている気分です(画像/MWS)。








2012年5月20日


ps

ps

むかしの顕微鏡では標本押さえが固定できるものもありました。ニコンS型が代表的ですが,プレパラートをセットしてからネジを締めると,しっかりと固定できたのです。この機構は恐らく,コンデンサ油浸でもスライドグラスを動かせるように考えられたものかと思います。しかしその設計意図とは反して,プレパラートの着脱のときに便利なのです。世界に一枚しかない貴重なプレパラートを検鏡するとき,標本押さえのバネがきつくて,うっかり取扱を間違えるとスライドグラスの端を欠いてしまうことがあるのです。標本押さえが開いてから固定できるのなら,そのような事故も少なくできましょう。

そういうわけで手持ちの顕微鏡でも,自作のストッパをつけているものもあります。改造は簡単で,標本押さえの可動部に孔をあけてネジを切るだけです。ネジを締めればネジがステージを押さえつけて,開閉のストッパとなるわけです。ただ,ネジそのままですとステージに若干傷がつきますので,標本押さえの裏側には,両面テープを用いて薄いフィルムを貼ってあります。このフィルムはクリアファイルをカットしたものです。

これで超高級な標本の検鏡のときも,しっかり開いた標本押さえを確認し,両手で慎重に標本をセットし,ゆっくりと標本押さえを閉じて検鏡することができます。たとえ数千回に1回の事故でも,未然に防げるのならそれに越したことはありません。簡単な改造ながら,非常に役立っていると感じているものの一つです(画像/MWS)。








2012年5月19日


ps

ps

ps

ps

ps

ps

きのう紹介したメガネケイソウ属(プレウロシグマ)の仲間は,いろいろな種があって分類はとても難しいのです。当サービスでは高い分離技術をもって,各種のプレウロシグマを供給可能なのですが,名前をつけることができずに困っています。きょうの画像は保有しているプレウロシグマを簡易に(乾燥系対物レンズで)撮影したものです。どの種も格子が斜めに交差しているのは共通ですが,格子間隔や孔の形などは微妙に違いがあります。いずれも国内の汽水〜海で採取した珪藻です。撮影倍率はすべて同じです(画像/MWS)。








2012年5月18日


ps

ps

今月はなぜか珪藻よりもターャジスが多く登場するというとんでもないことになっていたことに気付きました。標本の原料を採取しに出掛けるとターャジスさんが現れるというだけのことだったのですが少し(少しだけですよ)反省しました。きょうの画像は東京湾で採取したメガネケイソウ属の仲間です。研究者にはプレウロシグマPleurosigmaの方が通りがよいですね。格子が斜めにクロスしているのが特徴で,干潟や海底など,底質に多くみられますが,表層付近をただよっているものもいます。きょうの画像に写っているプレウロシグマは,東京湾の表面海水をバケツで採取した中に入っていたものです(画像/MWS)。








2012年5月17日


ps

ps

そういうわけでランプハウスをあけて,この不良設計がなんとかならないかと眺めていたら,数分で解決策が浮かびました。このランプハウスはプリセンタと呼ばれる方式で,どこにも調整機構がありません。メーカーが供給するハロゲンランプを刺せば,そのままセンターが出るということになっています。しかし,それは大嘘です。犯罪級の大嘘です。

ランプを刺しても,センターなど出ないのです。センターは出ないのですが,わざと瞳面を覆わない設計にして,その分,標本面での光源像を大きくデフォーカスして(ピンぼけにして),そこに拡散板をかぶせて,初心者には均一な照明に見えるように,ユーザーを瞞した設計にしてあるのです。それが証拠に,この顕微鏡のディフューザーは,六角レンチを使わなければ着脱できないのです。ディフューザーを光路から外すと,ランプの芯が出ていないことが一目瞭然ですからね。

1)ランプの芯を出し
2)対物レンズ瞳面をランプフィラメントで覆う

という要請を満たすには,

1)ランプのXY方向の心出し
2)コレクタレンズに対するランプ位置の調整(フォーカス)

が絶対に必要です。その調整機構を欠いたランプハウスを「プリセンタ方式」と称するのは,詐称なのです。

さて,その詐称ランプを改造するには,ランプのxyzの移動が必要です。そこでランプハウスを眺めていて,どのように考えても,固定ネジが邪魔をすることが否定できませんでした。そこで,ランプソケットの台座である碍子部分のネジを外します。するとソケットの台座ごとがぶらぶらします。これでx方向は自由に動きますし,y方向はランプの微妙な抜き差しでOKです。あとはコレクタレンズに対して距離を調節できるように碍子を固定できれば,z方向の調整もできます。

適当な固定金具を作ってネジ止めすることも考えました。うーん,材質は何にするか。厚みはどれくらいにするか。でもネジ固定だと,熱がかかるので,できれば弾性固定にしたいなぁ。うーん。と,部品を眺めていて,それがちょうど書類ほどの厚さであることに気付き,これはクリップで十分ではないかしら,と思いました。それで留めてみたのがきょうの画像です。適当なものを選べばがっちり固定できます。z方向の調整もOKです。

問題は温度です。焼きが戻るような温度になれば,弾性を失います。ハロゲンランプの管球は少なくとも350℃にはなります。しかしそこからモリブデン泊を通じ,溶融石英を通じて,ソケットの台座が200℃を越えるかどうかは微妙なところでしょう。当面は様子見です。

このクリップ式にして珪藻プレパラートを検鏡すると,まだ,z軸の移動量が足りませんが,ハロゲンランプの足を曲げればなんとかOKです。コンデンサの調節も加味して,開口数を生かした像を作ることができます。z軸の移動量は10mmに近く,コレクタレンズの開口数が0.5を越えているであろうことを考慮すると,この意図的なデフォーカスは,油浸検鏡で分解能を追求する多くのユーザーに対して,『犯罪』といっても過言ではないことが,当サービスのユーザーにはご理解いただけることと思います(画像/MWS)。



*1 これでランプの心出し,フォーカスは調節できるようになりましたが,そのチューニングは専門家の領域かもしれません。まず信頼性の高い標本をセットして,ピントを合わせます。対物を高開口数のレンズにして,コンデンサ高さを調節してケーラー照明高さにします。この状態でコンデンサの心出しをします。つぎにランプの心出しをします。コンデンサを下げてランプフィラメントの全体像を見やすくします。電源を落とし,ランプが冷えたらxyzの微調整をします。調整したらランプの心出しとフォーカスの確認。これの繰り返しです。ここに書いてあることが実体験的に理解できない人には調整はけっこうむずかしい作業になってしまいます。

*2 なぜこのような『犯罪』のような設計が行われたかは設計者の本心を聞くよりほかありませんが,光学配置から想像するに,このY型の鏡基(ベース部分)を至上命題として,それでいて光学性能を「あれもこれも」欲張った結果が,『犯罪』を生み出したのではないかと思うに至りました。ベース部分のフィルタ,ディフューザーを収納する光路の狭さがすべての原因です。もし鏡基設計が先で光学設計が後ならば,両者は犬猿の仲になったはずです。社内で罵り合いが起こった様子が目に浮かぶようです。光学設計を理解しない鏡基設計は,クルマの入れない車庫を設計するに等しいのです。鏡基設計者は,「クルマの性能が犠牲になってもいいから車庫に入るクルマを作れ」と言っているのです。

*3 この鏡基の問題点はたくさんありますが,一つ大きな問題は超広視野対応にしたことです。超広視野では,広い範囲をムラなく照明することが求められます。それを小さな光源,小さなコレクタレンズで行うことは難しいのです。光学設計者は,このあまりにもひどい鏡基設計に絶句し,仕方なく,高開口数対物レンズの性能を犠牲にして,その分,デフォーカスした光源像で広い照明範囲を確保しつつ,あとはディフューザーでゴマカシの設計にしたことが窺い知れます。

*4 これほど劣悪な設計の顕微鏡は過去の歴史を見渡してみても,そうは見つかりません。そのような顕微鏡がこの時代に,気付かれずに利用されていているということは,現代が,いちばんキツイ時代であることを表しているのかもしれません。テクノロジーは進歩したので,私たちの生活は種々の面で格段に便利になり,有り難く生活できています。その一方で,コストを度外視しても性能を追求するような製品開発は過去の遺物となり,全ては採算性を考慮して製作されるようになり,飛び抜けた性能(価格も高い=売れない)は供給されない時代になったのかもしれません。

*5 1960-1980年代の製品の方が開口数の意味からはずっとまともな照明ができるように思います。それらよりも劣るものを設計製作して販売したという事実は,その企業にとっての汚点になるほどのものだと思います。勉強が足りません。





2012年5月16日


ps

21世紀になってから市販されていたとは思えない粗大ゴミ級の顕微鏡を,誰もが知っている有名メーカーが供給していた話は2011年の2月に特集しました。この顕微鏡の設計はほんとうにひどく,扱うたびにむかむかします。35年前の機種と比較しても著しく見劣りがして,高度なイメージングには一度も利用していません。こんなものに大枚叩くなら,毎月1回大間のマグロや淡路島の炭焼きアナゴでも食べて暮らした方が幸せな気もします。。

簡易な改造で一応は使えるようにしてありますが,外付けの機器は不便で操作性も悪く,何とかまともな照明系を組み込めないかと考えています。ランプハウスは昔の機種で上等なものがあるのですが,どうもこの粗大ゴミ顕微鏡とは相性が悪く,その原因を探るためにひっくり返して分解してみました。すると,この顕微鏡の照明系は瞳の伝送のためにリレーレンズを二枚使用しており,そのレンズの効果により,投影距離を伸ばすとともに,コレクタレンズを小口径にして,その下流側のフィルタも小型化していることが判明しました。道理で,大開口数・大口径のコレクタレンズで瞳が伝送できないわけでした。

画像を見ると,ランプ側の開口が小さいことがおわかりでしょう。これの外側にリレーレンズ1があり,そこからフィルタを通過してリレーレンズ2を通り,ディフューザーを通過してミラーで反射して,フィールドレンズに向かう,という光の経路になっています。要するに,この顕微鏡は従来のような広い台座を捨て去ってY型のボディとするために,組み込む光学素子の小型化が強いられる結果となった,そのように想像します。鏡基設計が先で,光学設計が後ですね。これは。

この設計では,大開口数・大口径レンズの優秀な照明装置も使うことができません。リレーレンズが邪魔をするのです。ではリレーレンズを外せばいいのかというと,それもだめです。照明側の鏡基の開口が小さすぎ,組み込まれているフィルタも小さすぎます。

すると,この顕微鏡でまともな照明をするには,大開口数・小口径レンズで,1)このリレーレンズに見合う配置(=投影距離)となるランプハウスを使うか,2)もとのランプハウスを使うかということになります。1)についてはすでに製作完了していることを本欄でも述べましたが,投影距離が長すぎて不便なのです。ランプの心出しをするにも,テナガザルになりたい心境なのです。するともうちょっとまともに使うには,もとのランプハウスを改造することを考えねばなりません(画像/MWS)。








2012年5月15日


ps

何千回もみたはずの夕焼けが心をとらえて止まないのはなぜでしょう。それは星の美しさ,渓流の美しさ,海辺のすがすがしさにも似ているような気がします。何かとてつもなく未知な,面白いことが潜んでいそうな予感が生じるのかもしれません。皆さん,機会がありましたら,できれば子どもさんを連れて,高い山の上で夕焼けを眺めて下さい。それは忘れられない映像となって焼き付くことと思います(画像/MWS)。








2012年5月14日


ps

サンプリングのときにはカメラに偏光フィルタをつけっぱなしです。水辺での作業が主ですから,水面からの反射をカットして撮影するために必要なのです。この偏光フィルタは,中学生の頃からの常用フィルタでもあります。水面反射を抑えるのをはじめとして,建築物のガラス反射のカット,太陽から90゜の位置の青空をより深い色で撮影するなど,日常撮影でも出番はどこにでもあります。このフィルタはただ装着していればいいというものではなく,カットしたい偏光が最小になるように回して使います。水面やガラスからの反射光をカットする場合にはカットできる最適な角度(Brewster's angle,水面の場合は水平面に対して約37゜)で構える必要があります。水面の光をカットする場合には,ほかにも,風の弱いときにシャッターを切るとか,入射光側が暗くなるように構図をとるとか,工夫すべきことが幾つかあります。上の画像はそのような注意をして撮影したもので,崖線からの湧水を升に溜めた洗い場に生えた藻類(恐らくスピロギラ)を撮影したものです(画像/MWS)。








2012年5月13日


ps

ここのところ知人研究者が使用予定の機材をメンテナンスしているのですが,その関係で,頭がメンテナンスモードに入ってしまいました。さういうときには(笑),自分の機材も勢いにまかせてメンテナンスします。ニコンS型一軸粗微動が真鍮ギアにより復活してしまったので,ニコンS型(二軸)にも復活の可能性がでてきました。そこで故障中だったステージをバラして組み上げたら生き返ってしまい,あとは,もう一つのステージ(固着している,ストッパのピンが折損)を修理すれば部品は揃ってしまいます。そこでさっそく修理作業となったのでした。

固着しているステージはたいていグリスが固くなっているだけなので,きれいに拭き取ってグリス交換すれば問題ありません。今回は固さを残しておきたかったので,ややいい加減に拭き取ってから新しいグリスを塗布しました。これで好みの固さになりました。さて問題はネジ穴の中に留まっているピンですが,少し削ってみると真鍮製のM2のようです。そこでダイヤモンドで注意深く中央を掘り,そこに1.5mmのドリルを突っ込んで掘り下げます。時々ダイヤモンドで中央を掘り,またドリルに変えます。最後はゆっくりとドリルを貫通させ,穴に残っていた真鍮ピンを中空にします。次にM2のタップをたててゆっくりとねじ込みます。真鍮のクズがたくさん出てきます。行きつ戻りつしながら,最後はねじ込みます。これで折損したピンの除去はおしまいです。あとは適当な長さのネジとワッシャとナットでピンの代用とします。わーい。直った。

後は組み立てです。ベースに鏡基を取り付け,鏡筒を取り付け,ミラーをつけて,コンデンサをはめ込み,対物レンズをつけて,接眼レンズを入れれば作業はおしまいです。かわいらしいミラー採光式のS型がよみがえりました(画像/MWS)。



*1 右側が新たに組み立てたS型です。両者でステージのストッパのピンが異なることがお判りかと思います。左側は真鍮にクロムメッキ。右側はM2の黒色ネジにナットの組合せです。

*2 ニコンS型を使い始めて20年になりますが,出会ったときがいちばん状態が悪くて,とても使えるものではありませんでした。そこから顕微鏡の勉強をはじめて,メンテナンスも行うようになり,S型は年々,状態がよくなっていきました。そしていま現在が,ここ20年で最良のコンディションです。道具というのはこうでなきゃいけません。








2012年5月12日


ps

ps

繰り返し同じものをみていると,覚えようとしなくても,そのイメージは頭に残っています。なので,何かを覚えたいときには,覚えようとするのではなく,繰り返し見るのが良いのだと思っています。『なにがなんでも!きのこが好き(小林路子さん)』という本の中に,きのこ目3年という話が出てきます。最初は森に入っても何にもわかりませんが,きのこを探し続けて3年もたてば,急にいろいろなものが見えてくるようになる,というお話です。この『お話』は,たぶんほとんどの人に当てはまるのではないかと思っています。

筆者の経験でも,きのこ図鑑を毎日眺めて,ひまがあれば裏山に入っていた頃,だんだんと目が利くようになるのを体験しました。視力はよくないのですが,遠くにある塊状の物体を一目見ただけで,あれはナラタケモドキだ,あれはヒラタケだ,あれはハツの仲間だ,などとわかるようになるのです。この症状が進行してくると,自転車で走っていても道ばたのきのこが見えるようになり,さらにバスに乗っていても,鉄道に乗っていても車窓からきのこを発見できるようになります(笑)。

まったく同じことが珪藻でも言えます。最初は,アミバリケイソウ(Amphipleura pellucida)を探すのに,一枚のプレパラートを長時間検鏡して四苦八苦しました。しかしあるときから,勝手に視野に飛び込んでくるようになりました。いまでは見た瞬間にわかるので,探すのに苦労することはありません。大量の珪藻が載っていて視野が珪藻だらけのときでも,特徴のある種であれば,ポンポン目に飛び込んできます。繰り返し見る,というのは自然観察や研究にとって非常に大切なことだとわかります(画像/MWS)。



*1 むかし珪藻がぜんぜんわからなかった頃,Chaetoceros属の絵をコピーしてカバンに入れ,毎日持ち歩いていました。移動の車中や宿泊先や,とにかくヒマがあれば見ていました。そんな日々がかなり長く続いたあと,相模湾の海水を検鏡してみると,あらあら,見覚えのある珪藻がたくさん…。そうやって名前が多少はわかるようになっていったのでした。

*2 そういうわけで? ターャジスが遠くからでも見えるようになり,記録できるようになってきましたー。

*3 そういえば,対物レンズも同じですね。大学院生の頃,ニコンS型・明視野しか手元になかった時代に,CF対物レンズ・アポクロマートが欲しいなぁと,ニコン生物顕微鏡の総合カタログを隅々まで眺め,すっかり頭に入ってしまいました。いまでは遠くから対物レンズをチラ見するだけで,何だかわかってしまったりします(^^;





2012年5月11日


ps

これは対物レンズ内部に生じたガラスの劣化です。コノスコープ観察の要領でピントを前後させて各エレメントの状態を探ります。上の画像はコントラスト強調したものですが,表面で結晶が析出している様子がわかります。光学ガラスには非常に多くの種類があり,その耐候性もまたいろいろです。雨に曝されてもBK7などけっこう丈夫ですが,フリントガラスでは腐食が進みやすいものもあります。フローライトが濁るのもよく知られた現象です。顕微鏡対物レンズにもいろいろな光学ガラスが採用されており,中には耐候性のかなり低いものもあって,経年的に劣化しやすい製品もあります。これらの劣化は一種の腐食(サビ)のようなものであって,拭き取って落ちるものではありません。ユーザーにとっては頭の痛い問題です。

個人的な経験の範囲からは,この辺りのことはメーカーの姿勢も関係してくるように思っています。デラックスなガラスを採用して抜群の収差補正を狙いながらも,20年も経過すると多くが白濁するような製品を供給しているメーカーさん。30年経過してもまったく濁らない対物レンズを供給しているメーカーさん。いろいろです。レンズを長持ちさせるコツは,たぶん,湿気の少ないところに保管することが第一でしょう。ガラス表面の酸塩基反応には水が関与していますから,乾燥していたほうがいいのです。それに加えて,ガラス表面に酸が接触しないような環境も有効かと思います。たとえば,二酸化炭素は酸として働きます。室内で燃焼ガスを発生させるような条件(ストーブを使うなど)も,長期的には望ましくないかもしれません。レンズの管理にはこれといった決め手がないような気もするので,想像を働かせて対処しなければなりません(画像/MWS)。








2012年5月10日


ps

ps

ps

ps

ps

いろいろな作業の合間に顕微鏡の修理を行いましたので備忘録的に記します。修理したのはニコンS型です。この機種は本格的に顕微鏡の勉強をはじめた1992年頃に使っていたもので,思い出深い顕微鏡でもあります。これの一軸粗微動タイプは,偏心ギヤにデルリン樹脂製のものが使われており,これが経年劣化で割れて使用不可能になります。手持ちのS型もそのような運命を辿りましたので,壊れたギアを使ってギアのコピーを作って(エポキシ)使っていた話は2012年2月23日の記事に書きました。しかしながら,手製のギアは少量のバックラッシュがあり,フィーリングも今ひとつで具合がよくなかったのです。それで2軸粗微動のアームを載せ替えて使っていました。ここのところ暖かい日が続いて作業がやりやすく,サンプリングの合間に工作の時間ができたので,ふるいギアを除去して新しい真鍮ギアの載せ替えとなりました。以下は備忘録です。

まずエポキシのギアを外します。ニッパーでパチンと切れば簡単です。すると真鍮のリングが残りますので,これを除去します。このリングは焼き嵌めだろうとの教示を得ていましたが,半信半疑でした。しかしどうみても接着の形跡がないので,100℃程度に加熱して外そうとしましたが無理でした。それでヤスリで切断して外してみれば,やっぱり焼き嵌めだったのでした。このリングは,ステンレス製のベアリングの外枠にはめてあるのです。製作工程で高精度研磨をしないと焼き嵌めは無理です。こういうところがむかしの日本光学だなぁと,驚嘆したのでした。でもそれなら,樹脂の経年劣化にも気がついてほしかったですが…。

ギアの付け替えは簡単です。接着面をエタノールで清拭し,接着剤を極薄く塗布します。直ちにギアをはめ込み,作動上問題のない位置まで移動して固定します。ギアが動かなくなったら鏡基に組み込みます。組み込みが完了すれば,鏡基の載せ替えです。2軸のアームを外し,一軸粗微動のアームに付け替えます。このとき,光軸がずれますので,フィールドレンズを外した状態で光軸合わせをします。

調整が済んだらテスト検鏡します。もちろんこのときは,低開口数(NA=0.1)から高開口数対物レンズ(NA=0.7以上)を使います。視野範囲の確認と,分解能の確認が重要です。物体は珪藻プレパラート(DL-TESTなど)を使います。凹凸があり微細構造で覆われている珪藻被殻は,これ以上ないテスト標本だからです。

結果は満足いくものでした。右側(ギアのない側)の粗動にコンマ数ミリのがたつきがありますが,これは最初からあったような気もします。左で粗動を操作するとまったくガタはありません。そして右でも左でも,微動のバックラッシュは皆無です。NA=0.8レベルで繰り返し検鏡しましたがまったく感じることができません。これなら油浸も何ら問題ないです。素晴らしいとしかいいようがありません。

これまで使っていた2軸粗微動の鏡基は4レボだったのです。多種類の対物レンズを頻用する場合には不便で困っていたのです。一軸粗微動の鏡基は5レボでしたが,微動の不具合で眠っていたのでした。それが,奇跡の復活を遂げ,5本の対物レンズが装着され,いまここに蘇りました(画像/MWS)。



*1 S型の微動不具合で困っている方は,この真鍮ギアに交換すれば幸せになれる可能性があります。推奨する次第です。ギア交換修理がときどきヤフオクに出ています。

*2 ギヤだけ入手して自分で交換するのはよい子のすることではありません。専門家に依頼しましょう。






2012年5月9日


ps

ps

ps

ps

8日もサンプリングでした。A快特でゆうぜんと三浦半島に向かい,京急ストアでできたてのお弁当を購入すればバスは目の前。しばし揺られて下車すれば,目前にはひとけのない浦賀水道。きょうは底質の珪藻採取ですので,干潟になっているところでまずサンプリング(画像一枚目)。砂質のところでも採取したかったのでさんざん歩き回ってポイントを探しました(二枚目)。海藻にもたくさんの珪藻が付着していますが,海底にたくさんいる種もあるので,同じ海域でも何度も通って実態を探ります。海底の泥の上には,プレウロシグマ(メガネケイソウ属),ギロシグマ(エスガタケイソウ属)などがうろうろしていて,よい試料を採取できれば一攫千珪藻なのです。

何とか試料をとることもでき,辺りを見渡せば,タイドプールに取り残されたカタクチイワシの多いこと。すでに干物になっているものもたくさんありました。お昼ご飯に少し頂戴しようかしらと思いましたが,海水だけの味付けだと,ちょっと物足りないんですよね。しょうゆくらい持ち歩くべきでした…。などと反省しながら穏やかな天気のもとでお弁当をほおばり,湧水で手をあらって,ちょっとさんぽしてからバス停に向かいました。予定通りにA快特に乗ってゆうぜんと三浦半島を後にしました。連休から作業続きでそのままサンプリングに突入して,じつに楽しく気分転換になるつらくてくるしい二日間でした(^^; (画像/MWS)。








2012年5月8日


ps

ps

今年はなぜかスーパームーンの話題がニュースになっていて不思議ですね。毎年あることなんですけど。。というわけで,スーパームーンなら,大潮なので,7日はサンプリングです。前日の大嵐でどのくらい底荒れしているのか気がかりでしたが,荒れている時間帯は満潮に近かったので水面下1メートル以上です。そんなに荒れずに済んだところもあったようで,少なくとも,紅藻類が残っているところはありました。助かりました。いつものように紅藻に付着している珪藻を振り出しして,オニギリを食べながら沈殿させ,お持ち帰りになります。紅藻類は再び海に戻します。このような濁り水を採集しながら何を考えているのかというと,えーと,この辺りでうまくいけば,クリスマスツリーの枝と,飾りが取れるなーとか,そんな感じです。感覚は材料の仕入れなんです(画像/MWS)。








2012年5月7日


ps

ps

ps

連休ももう終わりですね。楽しく遊びをかましつつも,結局は作業に追われた日々でした。学生の頃に気付いたのですが,ゴールデンウイークの後半は,都内でも空がきれいになるんですね。都区内の空は,きれいになったとはいえ,ふだんはスモッグに沈んでいるのです。それが,このときだけは空が青さを取り戻すのです。限界はありますけどね。午後4時を過ぎてもこのくらいの青さを見ることができるのは,よほど冬型の気圧配置でもなければ,珍しいのです(画像一枚目)。そういうわけで,連休中にも部品の仕入れも,晴れ晴れとした気分で出歩くことができます。ターャジスさんも連休中でもお仕事のようです。おつかれさまです(画像/MWS)。








2012年5月6日


ps

ps

ps

ps

顕微鏡は見る道具でもありますが,検出/測定する機器でもあります。大きさを測定することはもちろん,蛍光を測ったり,染色性により化学的な情報を得たりもします。光の干渉を利用すれば物体の凹凸を測定することもできます。きょうの画像がその一例です。画像一枚目は凸レンズの表面に現れる干渉縞を見ているところです(ニュートンリングみたいなものです)。この縞の間隔を測定すればレンズの曲率が算出できるはずです。画像二枚目は方解石の薄板を切り出して研磨したものです。肉眼では透明ですが,顕微鏡的には劈開のキズがたくさん残っていることがわかります。しかしこの画像からでは,表面が平面か曲面かはわかりません。

そこで同じ視野に対して干渉法を用いて表面の凹凸を可視化したのが三枚目の画像です。白色光なので,縞の間隔を正確には決めにくいですが,その代わりにきれいな虹が現れています。この絵の教えるところでは,この方解石は平面には磨けていない,ということです。別の方解石薄片の縁では(四枚目),明らかな縁ダレが起きていることが画像からわかります(画像/MWS)。








2012年5月5日


ps

ps

ps

ps

むかしのフィルム時代には,マクロ撮影の専用レンズのうち,顕微鏡の対物レンズと同じマウント(RMS)のものがありました。なぜ顕微鏡の対物レンズと互換のマウントなのか謎ですが,たぶん,顕微鏡に装着して,接眼レンズ側には一眼レフをつけて,直接焦点法で撮影に使うことを想定したかなと想像しています。各社がそのようなレンズを出していたのですが,最近,観音カメラ製(^^;の20mmF3.5のRMSマクロレンズが試用品として転がり込んできましたので,顕微鏡にくっつけて手持ちのサンプルを検鏡してみました。

画像一枚目は一昨日出演してくれたコガネムシ君です。強いLED照明を施していますが緑色が鮮やかですね。細かい構造が見えてきています。円偏光板を挿入すると緑色が消えてしまいます(二枚目)。このレンズは装着方法にもよりますが,開口数0.1程度の10倍対物レンズ絞り付き,といった感じで使えます。一眼レフのマクロ用とはいえ,性能はなかなかのもので,3μm程度は解像できるのではないかと思います。顕微鏡に装着した場合は,倍率に対する開口数の比が小さいので,10倍接眼レンズでは無効拡大になります。5倍接眼レンズだと美しく見えます。

このレンズ,開口数が低いことを利用して,暗視野検鏡にも使えます。市販の暗視野コンデンサを利用して観察すると,微細構造を持つ珪藻が色とりどりに輝いて美しいのです(画像/MWS)。








2012年5月4日


ps

ps

ps

ps

ps

ps

ps

ps

きょうの画像を眺めてニヤリとした方は相当なマニアかもしれません。連休企画の第二弾は筆者が13年前に発見して温存していた大型ネタ(^^),鋭敏色観察用ニセλ(ラムダ)板の製作です。偏光顕微鏡分野では鋭敏色観察というのがあって,偏光消光時に専用の検板を挿入すると,背景が紫色になり,偏光性の物体はその性質に応じて鮮やかに着色します。顕微鏡メーカのカタログを見ると,痛風検査用と書いてあることがあり,尿酸結晶が見やすくなるようです。

で,こういうカラフルなものは当然,欲しくなるわけですが,偏光顕微鏡一式なんて,そうそう買えるものではありません。当時の手持ちは学習用のものが一台と,S-Keが一台,それだけだったのです。そこで何でも試す筆者は,簡易偏光観察は,手持ちの偏光フィルタをS-Keに装着することで実現していました。鋭敏色検板が欲しくても買えませんので,どうにかならんかなと思っていたときに,何となく発見したのが今回の方法です。

まず,ワイシャツの袋を用意します。新しいワイシャツを買ったときには,包装用の袋を保存しておきましょう。この袋はPVA(ポリビニルアルコール)でできていて,今回の実験に都合がよいのです。ふつうの厚手の(0.4〜0.8mm)新品ポリ袋でも使えますが,柔らかすぎて作業は難しくなります。ま,でも,あり合わせのいろいろな素材で試してみるのがいいでしょう。

袋を用意したらこれを適当な長さにカットします。4cm×10cmくらいがいいでしょうか。適当で構いません。たくさん作りましょう。次にカットしたビニールを,両端を持って均一な力をかけつつ引っ張って伸ばします。PVAの場合はかなり力が必要です。ゆーっくり引っ張って,びろろーんと伸ばします。

伸ばしたものを偏光(クロスニコル)で観察します(もちろん,観察しながら伸ばせればその方が面白いし,コツもつかめます)。パソコンの液晶画面を白い状態にすれば偏光光源になりますので,偏光フィルタを用意して,クロスニコルで観察できるようにします。その状態でびろろーんと伸ばした袋(フィルム)を観察すると,色がついて見えます。フィルムに強い力がかかって,繊維が一定の方向に配向し,偏光性が生じたわけです。このとき,鋭敏色検板と同じものを作るには,フィルムが均一に『紫色』になっていることが大事です。たくさん袋を引っ張って,紫色の面積が広いフィルムを作りましょう。色は観察のときの置き方によって変化しますので,クロスニコルの配置で,フィルムをいろいろな方向に回しながら見るのがいいです。

どうしても紫色ができないのなら,二枚重ねにしてみるのも手です。紫色以外で試してみても構いません。

望み通りのフィルムができたら,その部分だけをカットします。そしてハネノケコンデンサに載せてしまいます。このフィルムの置き場所はポラライザから標本直下までのどこでもいいのですが(もっと正確に言えば,完全な平行平面無色透明ならポラライザからアナライザまでのどこか),ここに載せると小さくて済むし,像質に影響を与えません。置き方には方向性があります。なるべく紫色がきれいに出るように置きましょう。

さて,観察してみましょう。ヤナギの切片を封入剤で封じると,コントラストがあまりない,無色の像になります。これを偏光観察(クロスニコル)にすると,暗い背景に輝くようにセルロースの繊維が浮かび上がります。この段階でも多少は着色しています。

そこに今回製作したニセλ板を挿入するとあら不思議,赤色〜赤紫のバックにカラフルに浮かび上がる繊維構造。ステージを回転させると鮮やかに変化する色彩。まさに鋭敏色観察です。医療検査などに使ってはいけませんが,趣味の顕微鏡観察にはじゅうぶん使えると思います。そしてニセλ板のいいところは,背景色を選べるというところです。歴史的に鋭敏色検板は紫色のバックが選ばれてきましたが,この紫色も,100年前の製品と最近の製品では微妙に異なりますし,光源の色温度調整によっても変化します。ですからメーカーの製品を使っても,いつも一定というわけではないのですが,自作のニセλ板なら,背景を青にでも黄色にでもできるのです。そういうフィルムを作ればいいのですから(画像/MWS)。



*1 このニセλ板による検鏡画像が初登場するのは,2007年9月27日です。正規のλ板と比べると背景の色が微妙に異なるので,鋭い観察眼をお持ちの方なら,すでに気付いていたかもしれません。

*2 光学に詳しい方ならばこのような遊びは当たり前かもしれません。なので,この記事でオリジナリティーを主張する気はありません。ただ,こういった現象は,いろいろ遊んでいて,自分で発見した瞬間が感動的なのです。筆者は幸運にも,その楽しさを味わう機会に恵まれたということです。ほっほーと感心しながら,複屈折体を探しては検鏡していました。





2012年5月3日


ps

ps

ps

皆様に連休後半の遊びネタを提供するために(笑),コガネムシ照明装置を2台製作しました。と,書くと大げさな装置の気もしますが,転がっていたLEDライトに円偏光フィルムをはめ込んだだけのものです。円偏光フィルムはネットで市販品がありますが,そういったものをハサミでチョキチョキして,LEDライトの前面プラスチックと交換すればできあがりです。製作時間は約5分。

円偏光板を通してコガネムシを観察すると劇的に色が変化することは比較的知られていて,ネットでも多くの情報があります。試しに「コガネムシは円偏光」で検索してみると,そのままのタイトルのページがヒットします。世の中にはサイフに偏光板を入れて持ち歩いている人がいて,コガネムシの円偏光をその場で確かめたりしています。確かに,高価なコガネムシを購入するときなど,円偏光板を通すとどんな具合に見えるのか,確認した方が後悔が少なくて済みそうです。

さて,円偏光板を通してコガネムシを撮影する時はレンズにつける円偏光板が必要になります。しかしレンズの数だけ円偏光板ばかり増やすのも面倒なので,いっそのこと照明を円偏光にしてしまおうという発想に至りました。画像一枚目は円偏光照明装置1号による照明ですが,光が効率よくコガネムシの光沢に活かされています。上手に照らすと鮮やかな緑色になりますし,角度によっては金属光沢を帯びてきます。画像二枚目は円偏光照明装置2号による照明で,円偏光のらせんの向きは1号と反対になっています。この光はコガネムシによりカットされてしまい,コガネムシの金属光沢が完全に消えてしまいます。

両方の画像共に,変な色で照明しているわけではないことを示すために,背景をカラー印刷の本の表紙としています。その色彩を見れば,照明光はどちらも同じ白色光であることがわかるかと思います。画像三枚目はコガネムシ照明装置2台を点灯して,中央にコガネムシを置いた様子です。左側と右側で色が異なります(画像/MWS)。



*1 一般的には,コガネムシから出てくる円偏光は左で,右円偏光板でカットされて金属光沢を失うと言われています。この現象を使えば円偏光板の種類を見分けられます。しかし本日の記事では,円偏光板が左か右かについて,物理的手法で確認したわけではないので,念のため円偏光の向きについての言及を避けています。

*2 筆者は子どもの頃から広島東洋カープのファンで,中日もロッテもファンになったことはないのですが,落合ファンです(^^)。この人の言っていることは実によく考えられているのです。youtubeのインタビューなどは繰り返し何度も見ています。きょうの画像の背景に利用した本も,なんというか,落合氏の透徹した人柄や思考が,「ほんの少しだけ」見えていて,じつに興味深いのです。

*3 偏光板・円偏光板をサイフに入れて持ち歩いている人は,これまで宇宙に2人ほどいることを確認しています(当サービス調べ)。さあ,貴方も仲間入りしましょう(^^)。

*4 きょうモデルになってくれたコガネムシは,詳しい人の見解によればアオドウガネということです。都内でも,集合住宅の廊下とか,ベランダとか,道路脇などに落ちているのを見かけます。そういうものを拾ってくればよい観察材料になります。






2012年5月2日


ps

東京都区内はどこも開発され尽くしていて,自然など,どこにも見当たりません。季節の移ろいを感じるのは庭木や街路樹がせいぜいのところです。うぐいすやカッコウの声も聞こえてこないのです。そんなコンクリートジャングルの中でも毎年律儀に顔を出してくれるのがアミガサタケです。ちょっと気晴らしに5分も歩けば見つかります。理由はよくわかりませんが,ツツジの植え込みによく出るのです。そして根拠のない感想を述べれば,近くにはサクラとイチョウがあることが多いような気がします。ところでこのきのこ,食べることができます。それほどおいしい,というものではありませんが,季節を感じる食材ともいえます。湯通ししてから干せば弾力も出て,煮込みなどにも使えます(画像/MWS)。








2012年5月1日


ps

ps

朝からつらつらとターャジス問題について考えていて,午後には機材整備用のメンテナンス用品を買いに出掛けましたら,突如として目の前にターャジスの右面が出現しました。広い交差点で撮影が難しく,100人ほどが信号待ちの状況でなんとか証拠写真を得られました。5903号,宇都宮ナンバー,なのに,「くらいめ京東」です。ううむ。謎は深まるばかりです。さいきんネットで知ったのですが,スジャータの東京本部はウチから歩いてすぐのところにあったのでした。そして驚くべきことに,看板には,社名も電話番号もありません。会社事務所の案内看板でありながら,社名は一切なく,製品名だけが記された,いわば広告になっているのでした。この会社の姿勢を表しているのかもしれません。恐るべし。うーむ。

どーして朝からターャジス問題について考えたのかというと,(株)トーノメバツ問題というのが こちら で紹介されていて,ふーむと思ったからなのでした。(株)トーノメバツ問題は,どう考えても,自動ドアがしまるときに「ツバメノート」とテロップが流れるようにしたかったというのが本当のところだろうと思います。しかしこの会社は,ネットで調べるに,昭和11年頃にはあったらしいので,そのころは,横書きは,「(株)トーノメバツ」でもおかしくないのです。

それで朝からうーーと思っていたのでした。


ps

ちなみに,ツバメノートは誰でも知っていると思いますが,筆者も大学後半で愛用しました。前半は罫線間隔が気に入っていたアピカのノートを使っていました。が,このノートは,パイロットの万年筆インクとの相性が今ひとつで,シャープな輪郭が出ないのぼやけた文字になるのが気になっていました。それでインクとの相性がよい中性紙で,なるべく密度の高いものを探したらツバメノートの製品に行き当たったのでした。この会社のこの頃の製品には透かしが入っていて(上の画像),けっこう凝った作りなのです。

ps

さて話を戻しまして,ターャジススジャータが製品として誕生したのが昭和51年とされていますので,この頃は,日本語の横書きでも,左から右です。しかし上の画像の右側に記すように,昭和2年の「湖沼巡礼」の横書きは,右から左です。左側の,昭和16年の「湖沼の科学」の横書きは左から右です。つまり,スジャータが誕生した頃,50〜60代以上の世代にとっては,「ターャジス」も「くらいめ京東」も,見覚えのある,正確に読むこともできる,ある種のノスタルジーを伴う表現だった可能性もあります。

そんなことを,連休に入り脳みそがふやけ気味のスビーサドルーワロクミがお伝えしました(撮影/MWS)



*1 「湖沼巡礼」「湖沼の科学」「湖沼学」「湖沼調査法」といった本は,日本の湖沼学史を語る上で外すことのできない著作でしょう。今では,ぼうずこんにゃく氏の表現を借りれば,「これを知っていたら学者」という骨董的な本になってしまいましたが,名著です。日本の湖沼はどこも水質汚濁が進んでいて,汚濁以前の湖沼の姿を知るには,このようなふるい文献をひもとくのがいいのです。

*2 常識的に考えれば,ターャジスも,表記の方向をクルマの進行方向に揃えただけのことでしょう。でもダンナ,クルマはバックもするんですぜ。それに数字は左から右なのです。この会社には,どこか遊び心があるような気がしてなりません。









Copyright (C) 2012 MWS MicroWorldServices All rights reserved.
(無断複製・利用を禁じます)
本ページへの無断リンクは歓迎しています(^_^)/


トップに戻る



.