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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ。


2011年5月31日


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むかしのネガをデジタルカメラで複写してみました。ベース部分も撮影し,これを減算に使ってホワイトバランスを補正し,さらにネガ処理,色あせの修正,カラーバランスの調整。これでできあがったのがきょうの画像です。あまり良い仕上がりではないですが,20年以上経過したネガも,簡単にデジタル画像として蘇ることが確認できました。こういった作業は本来プロに任せるに限りますが,このネガの一コマだけ使いたい,といったような場合はプロに頼むのは面倒です。自分でもできるに越したことはありません。きょうの画像は,記憶が確かであれば,カミソリマクロTokina AT-X M90 F2.5による作例です。フィルムはコニカGX100,カメラはニコンFGです。筆者は,フィルムは粒状性を第一に考えていたので,中学生の頃に発売されたフジカラーHRに感動してずっとそれを使っていました。しかしそれから数年後,肌色の再現にはどうしてもコニカが必要になり,色を記録したいときにはコニカ,引き延ばしたいときは富士フイルムを使っていました。いまとなってはずいぶん懐かしい話になりました。フィルムカメラに中望遠マクロの組合せで撮影した画像は,特有の浅い被写界深度にボケ味もそこそこ美しく,コンパクトデジカメにはない味わいがあります(画像/MWS)。






2011年5月30日


宮城・茨城沖 海底に放射性物質
5月29日 3時17分

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、新たに宮城県と茨城県の沖合の海底で採取した土からも、通常の濃度を大幅に上回る放射性セシウムが検出されました。専門家は「魚介類への影響がないか、広い範囲で監視を強めるべきだ」としています。

東京電力福島第一原発の事故で、文部科学省は、放射性物質による汚染の広がりを確かめるため、今月9日から14日にかけて、太平洋沿岸の南北300キロに及ぶ合わせて12ポイントで海底から土を採取し、分析しました。その結果、新たに調査を行った宮城県と茨城県の沖合の海底を含むすべての調査ポイントで、放射性物質を検出したということです。このうちセシウム137の濃度は、▽仙台市の沖合30キロの深さ45メートルの海底で、通常の100倍前後に当たる1キログラム当たり110ベクレル、▽水戸市の沖合10キロの深さ49メートルの海底で、通常の50倍に当たる1キログラム当たり50ベクレルを検出したとしています。これについて、海洋生物に詳しい東京海洋大学の石丸隆教授は「海流に乗って拡散した放射性物質を、水面近くでプランクトンなどが吸い込み、海底に堆積したとみられる。土は海水に比べ放射性物質の濃度が低下しにくく、海底の小さなエビやカニなどを食べる大型の魚に蓄積するおそれがあるので、魚介類への影響がないか広い範囲で監視を強めるべきだ」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110529/t10013176761000.html




海底の魚から基準超放射性物質
5月26日 22時44分

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、環境保護団体「グリーンピース」は、海底付近に生息するアイナメやナマコからも新たに基準を超える放射性物質を検出したとして、「より多くの生物を対象に調査を進めるべきだ」と訴えています。福島県は「漁は自粛されており、基準を超える海産物が市場に出ることはない」としています。

環境保護団体「グリーンピース」は、今月3日から9日にかけて、福島県の沿岸や沖合で採取した魚介類などに含まれる放射性物質について、フランスとベルギーの検査機関に分析を依頼し、26日、その結果を公表しました。それによりますと、放射性物質が国の暫定基準を超えていたのは11種類の魚介類や海藻で、このうち、いわき市の小名浜港で取れた「エゾイソアイナメ」からは基準の1.7倍に当たる放射性セシウムを検出したということです。また、同じくいわき市の久之浜港で取れた「マナマコ」から基準の2.6倍の放射性セシウムを検出したということです。福島県など行政による調査では、これまでアイナメやナマコから基準を超える放射性物質は検出されていません。アイナメもナマコも海底付近に生息することから、「グリーンピース」では「汚染の広がりが裏付けられた。より多くの生物を対象に調査を進めるべきだ」と訴えています。これについて福島県は、「漁は自粛されており、基準を超える海産物が市場に出ることはない」としています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110526/k10013140731000.html




海底泥のセシウム汚染やその経路については,すでに本欄5月5日付けの記事をはじめとして述べてきましたが,ようやく,少しずつ実態が判明してきたようです。仙台市の沖合でも100ベクレルレベルということは,事故現場から半径50〜100キロ圏内程度の範囲で,海底上が高濃度のセシウムで汚染されていることは確実でしょう。海底に生息する魚介類からも放射性セシウムが検出されており,今後のモニタリングが必要なことは確実です。

海洋生態系におけるセシウムの濃縮は,淡水生態系よりもやや低レベルとするデータがあります。それでも魚介類等で環境中(海水)の10-100倍程度になります。海底表面の底生生物を摂食する動物にどの程度のセシウムが蓄積するかは,筆者の手元にはデータがないのでわかりませんが,原発50キロメートル圏内では1000ベクレル程度の汚染はあり得るものとみた方がいいでしょう。

これだけ遠くの海域でも放射性セシウム汚染が確認されている現時点で,放射性物質の放出はまだ続いています。つまり,これら海底泥のセシウム含量は,これからも上昇する恐れがあるということです。

原発の東側はたまたま海だったので,その被害の大きさが実感されないかもしれません。しかしもし,東側にも陸地があったら,現在の福島県の被害域どころではない広範囲で,非常に強い放射能汚染が起きていることは間違いありません。

ところで,上の記事でも,泥の採取方法が示されていません。前にも述べたように,サンプリング方法によっては,放射性物質の濃度が低く出てしまいます。ほんとうは海底表面に降り積もっている粒子中の放射性物質の濃度を知ることが大切ですが,まだ,そのデータは報道されていないようです。

さてもう一本,



福島、山中の雪から放射性物質 市民団体発表
2011年5月29日 17時42分

 環境保護活動を行う福島市の市民団体「高山の原生林を守る会」は29日、福島第1原発事故後に福島県内の山中の雪から放射性セシウムが検出されたとする調査結果を発表した。
 同会によると、4〜5月に福島市と猪苗代町にまたがる箕輪山などで採取した雪を東大に依頼して分析。箕輪山の標高約1300メートルで雪1キログラム当たり約3千ベクレル、標高約1100メートルで約1760ベクレルのセシウムが検出された。
 同会は、国が山の水や土壌の調査を行う必要があると指摘。「登山者は川の水や山菜を採取しないで」と呼び掛けた。
(共同)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011052901000495.html



とても貴重な報告です。今回の原子力災害では,高濃度の放射性物質を含むプルームが内陸部に向かい,伊達市や福島市,二本松市などに高いレベルの汚染をもたらしました。この放射性のプルームが,安達太良山周辺にブロックされて,会津地方では相対的に低い汚染レベルで済みました。山が放射能の防波堤の役割を果たしたと考えられます。そしてこの山に放射性物質が降り積もり雪に固定されていたわけです。生物濃縮なしに,一キログラムあたり3000ベクレルの放射性セシウムというのは非常に高い値です。この雪が水系に流出し,植物や淡水生物に濃縮されるという過程が現在進行しているわけです。貴重な調査をした市民団体に敬意を表したいと思います(文責/MWS)。






2011年5月29日


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虹の写真は難しい。保育園の頃から虹が出ていたら消えるまで眺めているのが習慣だった筆者は,カメラを手にした中学生の頃に森永純の虹の写真に出会い,その表現力に魅了された想い出があります。虹の写真は何度となく挑戦していますが,手元にカメラがなかったり,フィルムがなかったりと,タイミングの問題で涙を飲んだことも少なくありません。きょうは新旧二つの虹を並べてみました。一つは1985年頃に八王子市で見られた虹です。エクタクローム64からの複写です。もう一つは2009年に函館市で見られた虹です。虹ウオッチングをしていて気が付くことは,下を向いて歩いている人の多いこと。虹に気が付いていないのです。筆者は,雨が上がって明るくなったら,どこかに虹が出ていないか探すのが習慣になっています。年に何回もないのですけど,たまに見つかるとトクした気分を味わえます(画像/MWS)。






2011年5月28日(2)


福島市のヤマメ 規制値超えで自粛要請
2011年05月27日 10時58分配信

福島市でとれたヤマメとウグイから国の暫定規制値を上回る放射性物質が検出され、県はこれらの魚を取らないよう呼びかけている。
県などが今月17日から行なった検査で、福島市の阿武隈川でとれたヤマメから、国の暫定規制値のおよそ2倍にあたる1キログラムあたり990ベクレルの放射性セシウムが検出された。
また福島市の摺上川で採れたウグイや、猪苗代町などにまたがる秋元湖のヤマメからも規制値を超える放射性セシウムが検出された。
このため県では地元の漁協を通じこれらの魚を取らないよう呼びかけている。
http://www.kfb.co.jp/news/index.cgi?n=201105274




セシウムの生物濃縮が確実に進行しています。裏磐梯方面では浜通りや中通り地方に比べれば,放射性物質の降下量は多くなかったのですが,水系を通じてセシウムが濃縮され,水産生物に影響が出ています。この報道から考えれば,福島県内のほとんどの地域で,天然の淡水魚類を利用することは難しいという結論にならざるを得ません。ヤマメは高級魚の部類に属し利用価値も高い魚です。塩焼きはもとより,ニラ味噌を挟んで竹皮で包み灰焼きにしたものは絶品なのですが。また貴重な食材が原子力災害により奪われました。

さて,もう一件,



原発周辺15万人、30年調査=放射線の影響追跡−福島県

 福島県は、福島第1原発の周辺住民約15万人を対象に、今後30年間にわたって放射線の影響を追跡調査する方針を固めた。27日に「県民健康管理調査検討委員会」を発足させ、健康調査の枠組みや住民への周知方法を決定する。
 県によると、低放射線量を長期間浴び続けた場合の影響については未解明の部分が多く、住民には不安の声が強い。県は追跡調査でデータを集め、適切な対応を取るため活用する。
 委員会は、県の放射線健康リスク管理アドバイザーで長崎大大学院の山下俊一教授ら8人で構成。委員長には山下教授が就任する見通し。(2011/05/26-22:40)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011052601020




本欄4月27日付けの記事で紹介したように,山下先生は,3月21日の段階で,

科学的に言うと、環境の汚染の濃度、マイクロシーベルトが、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、全く健康に影響及ぼしません。ですから、もう、 5とか、10とか、20とかいうレベルで外に出ていいかどうかということは明確です。昨日もいわき市で答えられました。「いま、いわき市で外で遊んでいいですか」「どんどん遊んでいい」と答えました。福島も同じです。心配することはありません。
このように言っていたわけです。ところが,この記事では,

低放射線量を長期間浴び続けた場合の影響については未解明の部分が多く

ということになっており,それを調べるために,「福島第1原発の周辺住民約15万人を対象に、今後30年間にわたって放射線の影響を追跡調査する方針を固めた。」となるわけです。そして,山下先生が委員長に就任するわけです。

つまり山下先生は(当然ですが)低線量被曝のリスク,恐ろしさについては十分に知っていて,それでいて急性障害は絶対に出ないことも知っていて,福島県民に向かって,放射線を浴びることを推奨したのです。そして福島県民の,低線量被曝による晩発性障害の疫学調査については,まずは自分で調べることにしたのです。福島県民は,いわば,放射線障害実験動物としてのモルモット扱いを受けたのです。

これが人間のすることだと思いますか?

(文責/MWS)。






2011年5月28日


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これは羽毛の位相差検鏡像です。衣類に使われている羽毛を一つとってアクリル系樹脂で封じています。羽毛は非常に保温性がよいわけですが,その秘密はこの細かい毛にあるようです。微細な毛がびっしりと,隙間を埋めるように分布しており,空気を抱え込みやすいのではないかと思います。きのう掲載した綿ぼこりの2.5倍の拡大率ですが,こちらの方がずっと細かいことがわかります(画像/MWS)。






2011年5月27日(2)


放射能濃度問題なく、アユ釣り解禁へ/神奈川
2011年5月26日

 6月1日のアユ釣り解禁を控え県は25日、県内のアユから基準値を超す放射性物質は検出されなかったと発表した。各河川の遡上(そじょう)量は例年以上に多く、酒匂川で懸念されていた昨秋の台風9号による濁水被害も軽減された。県は「上々の釣果を得られそう」と見込む。
 県が早川、相模川、酒匂川で、22〜23日に採取したアユの放射能濃度を調査したところ、早川のアユから1キロ当たり20ベクレル、相模川のアユから198ベクレルの放射性セシウムが検出された。いずれも暫定基準値(500ベクレル)を下回っており、県は「食べても健康には影響しない」としている。
 また、昨年9月に酒匂川流域などを襲った台風9号の濁水によるアユへの影響も深刻化を免れたようだ。餌となるコケの発育不足などが不安視されていたが、地元漁業協同組合が19日に実施した試し釣りの釣果は、昨年比1・6倍にあたる200匹。県の遡上量調査でも、多い日で7万匹を超すアユが確認された。
 県水産課は「どの河川のアユもやや小ぶりだが、釣りを楽しむには最高。安心して食べられます」と、多くの太公望の来県に期待を寄せている。シーズンは10月14日まで。 http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1105260003/




5月20日付けの本欄で,相模川のアユからも放射性セシウムが検出される可能性を指摘しましたが,やはり出ていました。浄水場の汚泥(乾燥)から計算して予想される濃度通りの結果となっています。両者の値に整合性がみられるので,たぶん,今後もこの汚染レベルで推移するのではないかと思います。アユは,この時期は主に水生昆虫などを食べ,夏にかけては藻類をよく食べます。これにともない生態学的栄養段階は一段階低くなりますが,セシウムの濃縮係数はあまり変化がないので,同じ程度の汚染レベルと考えておいたほうが良いでしょう。暫定基準値よりは低く,大量に毎日食べるものでもありませんし,市場に流通して集団的に摂取されるものでもありませんから,実害は皆無に近いと考えてよいと思います。しかし,こんな遠くの河川でも,あのおいしい天然アユにセシウムが入ってしまっているかと思うと,なんとも気分がよくありません(文責/MWS)。





2011年5月27日


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本棚の後ろ側,戸棚のわき,冷蔵庫の下など,手の届かない空間にもホコリは侵入します。長く放置すればふわふわと綿のように溜まってきます。これをそっと採取してマウントし,検鏡してみたのが上の画像です。肉眼では灰色の汚らしい綿ぼこりなのですが,顕微鏡で見るとかなり純粋な繊維質です。細かいチリなどの夾雑物がそれほどなく,袋にでも詰め込めば断熱材として再利用できそうなどと,貧乏性の筆者は考えてしまいます。ホコリは低倍率での検鏡対象としてけっこう使える素材です(画像/MWS)。






2011年5月26日(3)


地震直後、圧力容器破損か 福島第1原発1号機
2011年5月25日 23時59分

 東京電力福島第1原発事故で、東日本大震災の地震発生直後に1号機の原子炉圧力容器か付随する配管の一部が破損し、圧力容器を取り囲む原子炉格納容器に蒸気が漏れ出ていた可能性を示すデータが東電公表資料に含まれていることが25日、分かった。
 1号機への揺れは耐震設計の基準値を下回っていたとみられ、原子炉の閉じ込め機能の中枢である圧力容器が地震で破損したとすれば、全国の原発で耐震設計の見直しが迫られそうだ。
 格納容器の温度データを記録したグラフでは、3月11日の地震直後に1号機の格納容器で温度と圧力が瞬間的に急上昇していたことが見て取れる。1号機では温度上昇の直後に、格納容器と圧力容器を冷却するシステムが起動し、格納容器内に大量の水が注がれた。
 データを分析した元原発設計技師の田中三彦氏は「圧力容器か容器につながる配管の一部が破損し、格納容器に高温の蒸気が漏れたようだ」と語った。
 東電は「空調の停止に伴う温度上昇。破断による急上昇は認められない」としているが、田中氏は「空調の停止なら、もっと緩やかな上がり方をするはずだ」と指摘している。
(共同)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011052501001195.html



筆者は1号機の,地震直後の圧力容器の急激な圧力低下が注水によるものなのかLOCA(破断事故)によるものなのか,メディアの情報では判別がつかずに歯がゆい思いをしましたが,ようやく決定打が出てきました。地震直後に格納容器の温度と圧力が急上昇していたのなら,破断事故は確実に起きていたでしょう。まして田中三彦氏がデータを見ているのなら間違いないように思います。1号機は,地震により破断事故を起こしていたわけです。

それにしても,今回の原子力災害関係の重要な報道発表は,決まって夜半に行われています。保安員や東電の記者会見もずっと夜中にやっていました。社会が寝静まった頃にシビアアクシデントの発表をしたいのかもしれません。しかしメディアも東電も重要なことに気付いていません。2ちゃんねらを始めとするネット貼り付き型の方々は,めっぽう夜に強く,夜間に重要な情報をweb更新しようものなら,絶好の拡散タイミングであるのです(画像/MWS)。






2011年5月26日(2)


「子どもには年1ミリシーベルト適用を」山内神戸大教授

   福島第1原発事故で放射線が検出された福島県内の小中学校について、国が屋外活動制限の可否を判断する目安とした年間の積算放射線量20ミリシーベルト。「子どもが浴びる線量としては高すぎる」「放射線の専門家でもそこまでの被ばくは少ない」などの研究者の懸念に対し、国は暫定措置であることを理由に譲らない構えだ。「子どもには年1ミリシーベルトを適用すべき」と4度にわたって国に申し入れている神戸大大学院海事科学研究科の山内知也教授(放射線計測学)に聞いた。(黒川裕生)

 年20ミリシーベルトは国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する一般人の限度の20倍で、事故復旧時の「現存被ばく」の参考レベル上限値だ。

 ICRPは3月21日に公表した見解で「長期的な目標としての参考レベルは、年1ミリシーベルトに低減させることを視野に1〜20ミリシーベルトの範囲から選択することを勧告する」としている。1〜20ミリシーベルトの範囲なら、放射線感受性が大人より高い子どもには、厳しい基準である1ミリシーベルトを選択すべきだ。

 1ミリシーベルトが基準の場合、福島県内の大半の学校が対象になる。

 「学校の休校や疎開が必要になり、子どもが受けるストレスが大きい」と主張する専門家がいるが、この状況下では生命や健康を守ることを優先すべきだ。避難後の生活への不安からとどまっている人も多いだろう。「避難する人には補償する」と国がきちんと示す必要がある。補償の仕組みを明確にした上で、子育て世代を早急に県外に避難させた方がいい。


 現在の世界の放射線防護対策は、広島、長崎の被爆者の健康調査に基づく。

 例えば、100から200ミリシーベルト程度の比較的低線量の放射線を一度に浴びた場合、人体にどんな影響があるのか。「よく分からない」が研究者の共通認識だった。しかし米科学アカデミーが2005年の報告書で「たとえ低線量であっても安全といえない」と指摘している。それまでの概念を覆す内容だが、日本ではこのリポートはほとんど顧みられていない。

 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の影響を調べるため、スウェーデンの学者が同国北部の大規模な疫学調査をした。
 114万人を対象にした8年にわたる調査で、セシウム137の土壌汚染とがん発症率の間に関連がうかがえた。1平方メートル当たり100キロベクレルの汚染地帯では、がんの発症率が11%も高かった。

 国が5月6日に発表した福島県の汚染マップでは、1平方メートル当たり3000〜1万4700キロベクレルの汚染地帯が帯状に広がり、原発から60〜80キロ圏でもスウェーデン北部を上回る高濃度の汚染が確認できる。
現行の避難計画が適切だとは思えない。あらためて基準や計画の見直しを求めたい。

【セシウム137要注意 半減期は30年】

 山内教授によると、当初被ばく線量が懸念された放射性物質のうち、ヨウ素131は半減期が8日と短いため、2カ月が経過した今、注意すべきは半減期が30年と長いセシウム137になっている。

 校庭の土に付着したセシウム137から受ける1年目の影響が年20ミリシーベルトと仮定すると、積算で小学1年生は小学卒業までに113ミリシーベルト、中学卒業までに164ミリシーベルトを受けることになるという。164ミリシーベルトは、胸部CT検査ならば10数回分に相当する。

 全体の放射線量が減少傾向にある中、国は「今の値を超えない限り、健康被害はない」として除染を見送っており、モニタリング調査や屋外活動の時間制限を重視する。

 山内教授は子どもの健康の観点から「放射線を教える者として、感受性の高い子どもにこのレベルの線量の被ばくを認めるわけにはいかない」と批判している。

 (2011/05/24 10:15)
 http://www.kobe-np.co.jp/news/kurashi/0004098692.shtml




ひじょうに重要な記事が,地方紙の,「くらし欄」にひっそりと掲載されるというのは,いかに日本が異常な国かということを表しています。危ないから逃げろ,危険なものは避けろ,実際に危ないことは過去の研究でわかっている,といった,いわば当たり前のことが当たり前に報道されないという国に住んでいることは,日本国民として(脱力…)自覚しておいた方がいいでしょう。この記事をまだ読んでいなかった人は,繰り返し読んでみてください。現在進行していることがどのようなものなのか,判断材料になるかもしれません(画像/MWS)。






2011年5月26日


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筆者はこれまでいくつものトリプレットレンズのルーペを使ってきましたが,現在手元にあると認識しているのは3種類です。いずれもシュタインハイル型で,10倍,14倍,20倍のレンズです。倍率の間隔がちょうどいいですね。中学生の頃からポケットにはシュタインハイルルーペが入っていましたが,はやばやと壊し,高等学校時代は望遠鏡のアイピース,それ以降はカメラレンズを分解して取りだしたダブレットなどを持ち歩いていた記憶があります。中年にさしかかる頃からまたトリプレットに回帰し,顕微鏡を本格的に使い始めてからはシュタインハイルルーペを愛用しています。

このトリプレットは,二群三枚構成のルーペと比較しても収差補正がよく,適切なアイポイントを保持すれば鮮明で分解能の高い観察ができます。どちらかといえば高倍率ルーペ向きで,望遠鏡では惑星観測用アイピースとして有名です。宝石鑑定分野などでもおなじみのレンズです。東京ミネラルショーなどでは,販売員の方々が首にルーペをぶら下げておられますが,ほとんどがシュタインハイルルーペに見えました。それほど支持のあるレンズなのでしょう(画像/MWS)。






2011年5月25日(2)


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こんどはトリプレットのバル切れ修理です。シュタインハイル型の10倍レンズなのですが,バル切れが中央にあり,気になります。まずはエタノールに2日間漬け込んで剥がします。次に残存するバルサムを拭き取ります。このバルサム,カナダバルサムとは違う臭気です。モミの樹脂,メタセコイヤの樹脂に近い臭いがします。当時の貼り合わせにもいろいろな材料があったのでしょう。

さて次は貼付なのですが,三枚玉の軸をどうやって出すのか,まったく見当がつきません。ニュートンリングが出るようなレンズであれば,その位置がおおまかな目安になることもありますが,このレンズではそれも難しいようです。仕方なく,適当に封入剤を垂らして三枚とも密着し,金具に収めて仮止めします。つぎにベルクランプ法を真似て,机の上でレンズを転がしながら軸出しを試みます。。。が,仮止めが硬すぎて,軸出しがままならず,失敗しました。

それでもまぁまぁ軸がでているので観察してみると,そこそこよく見えます。同心球面なのでしょうか,軸ずれに鈍感な気がします。肉眼観察で拡大用途に使う分には,じゅうぶん実用になりそうです。助かった…(画像/MWS)。






2011年5月25日


非常用復水器停止は手動操作…手順書通りと東電

 福島第一原子力発電所1号機で、東日本大震災による津波襲来の前に緊急時の炉心を冷やす「非常用復水器」が一時停止したのは、作業員が手動で操作したためだったことが東京電力が23日、経済産業省原子力安全・保安院に提出した報告書で明らかになった。
 装置が正常に作動すれば、炉心溶融(メルトダウン)を遅らせることができた可能性も指摘されるが、東電は、手順書通りの妥当な操作としている。
 報告書によると、地震で外部電源は喪失したが、大きな配管破断などはなく、津波が押し寄せるまで、1〜3号機とも、非常用電源が起動していた。
 運転中の1号機は、3月11日午後2時46分の大震災直後、原子炉に制御棒が挿入されて緊急停止。6分後、「非常用復水器」が自動起動し、冷却が始まった。その11分後の午後3時3分に停止した。
 手順書では、原子炉の温度低下が1時間に55度を超えないよう冷却を調整することになっている。東電は、非常用復水器によって冷却が進み、100度以上温度が低下したため、作業員が停止操作を行ったとしている。
 この後、作業員が非常用復水器を再作動させたが、同日午後3時半過ぎ、津波によって「非常用復水器の配管破断」を検出する直流電源が失われた。電源喪失すると、自動的に配管破断を知らせる信号が出て、そのため非常用復水器の隔離弁が閉じ、再び停止した。
 作業員は、電源喪失の信号で、隔離弁が閉じた可能性があるとみて調べたところ、弁が閉じていたため、手動で弁を開けたとしている。
(2011年5月24日11時46分 読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110524-OYT1T00433.htm



非常用復水器の停止問題については,すでに5月18日付けの本欄で解説しましたが,上記の記事に見るように,手順書にしたがって1時間に55度以上の温度変化を与えないような配慮に基づいたものであったことが明らかになりました。この操作が妥当であったかどうかは判断が難しいところですが,地震後11分で手動停止をかけているということは,まだ全電源損失前で,運転員も,外部電源は数時間程度で回復すると思い込んでいたことでしょう。受電用の鉄塔が倒壊したとの情報は,まだ届いていないのではないかと推測します。そして当然,津波も来ていません。

この状況で,地震によるスクラム直後に,何らかの原因で急激な圧力低下により原子炉温度が急低下したわけで,圧力容器を保護するために非常用復水器を一時的に切ったのは,やむを得ないように筆者は思います。ただ,問題なのは,このあとで非常用復水器を再作動させるタイミングが良かったかどうかという点です。津波が押し寄せ,全電源が喪失し,現場は混乱の極みにあったと想像されますが,唯一,原子炉(1号機)を冷却できる装置が非常用復水器なわけですから,これの動作から目を離さないというのは基本中の基本だと思います。それが守られていたのか,そこは厳しく検証して欲しいところです。

いずれにせよ,炉の損傷,水素爆発は避けられなかったと筆者は考えていますが,それでも最適な運用がされたかどうかは,記録に残して今後の教訓にして欲しいと思います。

さて,もう一件



福島第一 水配管津波前に損傷
2011年5月24日 07時00分

 福島第一原発の事故で、大津波が到達する前に、1、2号機の原子炉冷却に使う水タンクの配管などが地震によって損傷していたことが、東京電力の公表資料から分かった。東電は事故の主な原因を津波としているが、今回判明した損傷などの評価によっては、耐震設計の見直しも迫られそうだ。
 公開された三月十一日の地震直後の運転日誌や中央制御室の白板の写しには、津波が到達する三十分ほど前の午後三時六分、1号機では「純水タンク フランジ部(腕3本)漏えい確認」の記述がある。このタンクは屋外にあり、必要に応じて原子炉や使用済み燃料プールに冷却水が送られる。地震で配管の継ぎ目から水漏れが発生したとみられる。
 2号機では同十六分に、「コアスプレー」と呼ばれる非常時に原子炉を冷やす注水系統に不具合が生じ、警報が鳴った。タンクからの冷却水が漏れたとみられる。
 いずれのケースも、後に津波に襲われたため、どこまで原発の安全性に影響があったのか判別は難しいが、少なくとも注水経路の切り替えが必要になるなど初期対応に影響した可能性はある。
 現行の原発耐震指針では、圧力容器や格納容器、制御棒などは安全設計上最も重要な設備の「Sクラス」に分類され、建築基準法の三倍の強度が求められる。しかし、純水タンクはその二つ下の「Cランク」で、一般の建築物と同等とされている。
 1号機では、非常時に原子炉を冷やすための非常用復水器が本震直後から約三時間、止まっていたことが分かっている。東電はマニュアルに従って手動停止した可能性を強調しているが、地震による損傷の影響についても「否定はできない」としている。
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011052490070012.html?ref=rank



地味な記事ですがかなり重要なことを述べています。まず,水タンクの配管,コアスプレーが地震で損傷したということです。3/11の本震では,ひじょうに大きな揺れが長い時間続き,言葉では表しにくいのですが,スロッシングを効率的に誘発するような波でした。筆者は,揺れの最中,スロッシングにより石油コンビナートで大火災が発生し,原発が損傷し,震源に近いところに高層ビルがあればポッキリ折れたのではないかと想像しながら顕微鏡デスクを押さえていました。実際スロッシングによる被害は見られたのですが,原子力発電所では報告がありませんでした。

この記事によれば,水タンクの配管の継ぎ目が壊れているわけですから,スロッシングの影響があったものと見てよいかと思います。3/11の本震では,学校のプールや,池など,地面にある水溜からも水が外部に飛び散りました。それほどのエネルギーがあったわけですが,水タンクなどは,水が外に飛び散ることはないかわりに,その運動エネルギーがタンクの片側にかかりますから,タンクが変形,あるいは歪むなどして,配管部などに応力集中すれば容易に破壊に結びついたことと想像されます。

さて,この記事のもう一つ重要な情報は,純水タンクの耐震基準が「Cランク」だったということです。筆者は,これは初めて知りました。原子力発電所が地震に耐えて正常に停止するためには,原子炉や格納容器はもちろんのこと,非常用電源,受電設備,ECCS系の水タンク,再循環ポンプ等の配管,二次冷却水取水設備…など,あらゆる設備の耐震基準がSランクであるべきでしょう。純水タンクは,言い換えれば,原子炉冷却材タンクですから,きわめて重要な設備です。

全国にある原子力発電所の純水タンクも,耐震基準Cランクで設計されているのでしょうか。これは見逃せない問題ではないでしょうか(文責/MWS)。






2011年5月24日


班目氏は「でたらめ委員長」…亀井氏が批判

 国民新党の亀井代表は23日、大阪市内で講演し、東京電力福島第一原子力発電所1号機への海水注入を巡り内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長が菅首相に対し「再臨界の可能性はゼロではない」との見解を示したことについて、「でたらめ委員長が修羅場であんなことを言っている」と厳しく批判した。
 「日本の危機を迎えたその場において、原子力安全委員会の責任者が、そういうことしか首相にアドバイスできない」とも語った。
 また、亀井氏は、菅政権の見通しについて、「今のところは、よたよたしながら続いていくが、そんなことでは震災対策でろくな政治ができない。小沢(一郎民主党)元代表を座敷牢(ろう)から出すべきだ。党内が結束しないで野党に協力を求めても乗るわけがない」と述べた。
 (2011年5月23日18時27分 読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110523-OYT1T00930.htm



きょうはつれづれ日記的にだらだらと書き流します。

筆者のお気に入りのブログでは5月1日に,「この分だと「まだらめ」さんではなく「でたらめ」さんと呼ばれるようになる日も近そうだ。」との見込が書かれていましたが,なるほど約3週間で予想が的中しています。

斑目氏は,その経歴とweb上でアクセス可能なペーパー類を見るところでは,熱工学分野が専門であって,原子炉工学,特に原子力発電所の運転特性や燃料集合体の熱特性については専門には見えません。彼は菅直人首相に向かって,原発は爆発しないとアドバイスしたそうですが,それからまもなく1号機が爆発,ほかの3機も大小の爆発を起こして放射能をまき散らしたのは皆が知るとおりです。

冷却が追いつかなければ,燃料被覆管のジルコニウムが水と反応して水素が発生し,爆発に至ることは筆者でも予想できたことですから,斑目氏がわからなかったというのは意外な気がします。いくら熱工学が専門とはいえ,知らなかったでは済まされないレベルの問題です。それとも,斑目氏は,即発臨界による圧力容器の爆発は起きない,という意味で言ったのでしょうか。あるいは他の意味があったのでしょうか。

再臨界の可能性にしても,このタイプの古い炉は,(再臨界防止という意味合いでの)本質安全設計になっていないので,燃料集合体が溶融して崩れ落ちた場合に,そこで中性子と燃料がどのように振る舞うかは誰にもわからない領域の話だと思います。確かに,決められた配置の時に臨界に達するように燃料集合体は設計されていて,これが崩れれば簡単に臨界しないということは理論的には言えます。しかしスクラム直後から,原子炉の中がどうなっているのか誰にもわからない状態が続いたわけで,再臨界が絶対に起こらないとは,なかなか言えるものではないと思います。

また,この時期に及んで,海水注入の一時中断が事態の悪化を招いたかのように報道されていますが,そもそも消防用ポンプで原子炉内に水を注入するというのは,すべての安全装置が不能になったあと仕方なくやっていることであり,これは原発事故の正式なリスク管理としての「対処」ではないのです。「消防用ポンプで原子炉内に海水を入れればメルトダウンが回避できる」ようには,誰も設計していないのです。もともと負け戦の状態になっていることこそがきわめて重大な問題なのであって,海水注入の一時中断などという敗戦処理の一つの判断ミスを政権への攻撃材料にするなど,勘違いも甚だしいと筆者は思います。

ところでこの斑目氏は,Wikipediaにも記載があるのですが,毎日見ているとちょこちょこ書き換えられているように見えます。昨日は一瞬だけ,こちらのように書かれていました。

事故が起きれば国家予算をも揺るがしかねない損害が発生し,大切な国土が失われ,人々はふるさとを失い,多くの人が被曝する。このような危険を持つ原子力の安全性を確保するには,原子力安全委員会が強力な権限を持ち,事故が起きないように不断の指導を行うべきだったでしょう。もちろん,委員は,原子炉工学はもとより,あらゆる工学の知識,気象学,生態学,海洋学,社会学,都市工学,基礎生物学,防災,医学などの知識を持つスタッフと,実際に原子炉を運転してきた経験者,原子炉を設計した技術者などもあわせて構成すべきでしょう。それでいてはじめてアドバイスもできるというものです。

こんかい斑目氏はでたらめ委員長と呼ばれてしまいましたが,原子力安全委員会自体が機能不全に見えている現状では,むしろでたらめ委員会と呼んだ方がいいのではないかと筆者は思います。原子力安全委員会にしろ,原子力安全保安院にしろ,チェルノブイリ級の事故も想定できない方々の集団ですから,でたらめなのは仕方がないのかもしれませんが。だいたい,委員を承認するのは国会なのです。国会もでたらめ国会なのです。

*1 まじめに事故を想定したら,その存在は許されるものではない,というのが原子力というものだと筆者は考えています。ついでに言うと,斑目氏が委員に選出されるときに日本共産党は反対しています。まともな見識です。斑目氏はけっこう前からいい加減なことを言うという指摘があって,日本共産党はきちんとその辺りを調べていたのでしょう。



ところで,きょう(23日)は参議院 行政監視委員会がありました。

こちら(1/2)

こちら(2/2)

でその内容を見ることができます。参考人は石橋克彦,小出裕章,後藤政志,孫正義の各氏です。筆者は,孫氏を除いた3人とは,10年くらい前からシンポジウムや懇親会などで何度かお会いしたことがあります。今回の原子力災害のようなものを起こしてはいけない,そういう思いから20年くらい(のらりくらりとではありますが)勉強してきたわけで,そうすると,この3人には必ずどこかでお会いすることになるのです。

志はみな同じです。こんな巨大災害を起こしてはならないのです。その信念を曲げることなく長年活動してきた方々の声が少しも届かず,国や電力は原発増設を進め,ついに甚大な災害を起こすことになりました。

すると今度は,原子力の危険性,原発震災の可能性,原子炉の耐震性に関して警鐘を鳴らしてきたこの3人が,参考人として参議院行政監視委員会に呼ばれ,委員の人たちは,この3人にレクチャーを受けて勉強することになるわけです。親切にレクチャーする参考人には心底,感心・尊敬しますが,その一方,もはや筆者のはらわたは限界まで煮えくりかえっています。

皆さん,おかしいと思いませんか。

これだけ問題のある原子力の危険性について,チェルノブイリを越える事故が起きてから,参議院の委員会でようやく勉強が始まるんですから。国会議員を始めとして,多くの国民が,この3人の意見に耳を傾けていれば,こんにちの事態は防げた可能性もじゅうぶんにあったわけです。それが,質問もきちんとできないほどに不勉強な議員が多いことは,上の動画を見れば一目瞭然です。

さて,これから起こるかも知れない原子力災害を想定して,国民の多くはこれから,この3人の意見に耳を傾けはじめるでしょうか(文責/MWS)。






2011年5月23日


ps


きのうの標本をそのままに,コンデンサ絞りをちょっとずらして偏斜照明にすれば,こんな感じに見えます。偏斜照明において,対物レンズの開口数を有効に使えば,そのレンズの解像限界付近のコントラストが向上しますので,珪藻の微細構造が見やすくなります。きのうの画像と比べればすぐにわかりますが,きのうの画像では見えないのに,きょうの画像では見える構造があります。これが照明の妙というやつで,顕微鏡では照明の仕方により像がさまざまに変化するのです。上の画像では,絞りを加減してちょっと暗視野光束も入れています。このようにすると珪藻のエッジが輝くようになって,ガラスの質感が表現しやすくなります。きのうの画像では背景よりも明るい部分がほとんどないのですが,きょうの画像では背景よりも明るい部分が生じています。暗視野光束の効果です(画像/MWS)。






2011年5月22日


ps


このコーナーで紹介している珪藻画像は,暗視野法や偏斜照明法のものが多く,もっとも一般的な透過明視野・中央絞り・ケーラー照明の画像が比較的少ないかもしれません。ということで,珪藻化石をふつうの明視野照明で撮影してみました。見慣れた絵ですが,素直な感じもして,なかなかいいじゃないか,とあらためて思います。微細構造を極限まで表現するにはどうしても照明開口数を大きくして一次回折光がレンズに入射しない程度の照明光はカットしたいので,中央に向かって絞り込むことはしません。でも,微細構造はほどほどでよければ,あるいは,照明を変えても微細構造が現れない構造であれば,普通に中央絞りで品のある画像になります(画像/MWS)。






2011年5月21日


ps


解剖顕微鏡のバル切れ(バルサム切れ)レンズはエタノールに漬け込んでおきましたが,約2日で無事にバルサムを溶かして剥がすことができました。分離できれば,あとは何とかなるかもしれません。まずは純エタノールで清拭して残存バルサムを拭き取り,水拭き,エタノール拭き,から拭きしてブロワで吹きします。バキュームピックでレンズを保持して封入剤を垂らし,相方のレンズをゆっくりと近づけて接合します。エアが入らないように注意し,なるべく軸が合うようにします。光軸は手作業で合わせる自信がないので,ホルダに収めることにより軸がでたことにしました。作業はそこそこ順調で,途中ハンドリングを誤って一個を失いましたが,バル切れレンズを3個救済することができました。実視テストでも問題なく,有効活用できそうです。上の画像はレンズを剥がして,これから清拭するところです。13ミリメートルほどのレンズで,ハンドリングが難しいこと…(画像/MWS)。






2011年5月20日(2)


神奈川の9浄水場汚泥から放射性物質 水道水は安全
2011.5.19 22:22

 神奈川県営水道寒川浄水場など県内9カ所の浄水場の汚泥から放射性物質のヨウ素とセシウムが検出されたことが19日、県などの発表で分かった。いずれの浄水場も水道水の検査では不検出が続いており、水道水の安全性に問題はないという。
 汚泥から放射性物質が検出された浄水場は寒川(県営水道)▽谷ケ原(同)▽西長沢(県内広域水道企業団)▽相模原(同)▽伊勢原(同)▽綾瀬(同)▽西谷(横浜市水道局)▽長沢(川崎市上下水道局)▽生田(同)−の9カ所。
 最も高い値が出たのは、セシウムは生田浄水場の1キロ当たり5250ベクレル、ヨウ素は綾瀬浄水場の同643ベクレルだった。県営水道の鳥屋と横須賀市上下水道局の有馬の両浄水場の汚泥からは、いずれも検出されなかった。
 検査は、県内の下水処理場の汚泥から放射性物質のヨウ素とセシウムが検出されたのを受けて実施された。福島県内の下水処理場の汚泥から放射性物質が検出された際、国は同県への通知で1キロ当たり10万ベクレルを超えた場合の保管を求めているが、浄水汚泥の基準はなく、県と横浜、川崎の両市は園芸用土などに再利用する汚泥の搬出を停止している。
 http://sankei.jp.msn.com/region/news/110519/kng11051922230003-n1.htm



これはかなり重要な情報です。まず内容を確認して欲しいのですが,この記事で「汚泥」と呼んでいるのは,浄水場 drinking water supply,つまり飲料水製造過程で出る沈殿物のことです。上の記事にある浄水場は,一施設の一部を除けば急速ろ過処理を採用しています。この処理法は,原水(ほとんど河川水と考えていいです)にポリ塩化アルミニウムなどの凝集沈殿剤を加えてかき混ぜ,その水を静置して微粒子を大きな沈殿物に成長させ,それを砂ろ過しています。砂は目づまりするので,ときどき逆から水を通して洗浄します。このとき出てくる汚れが「汚泥」です。この汚泥は焼却灰ではありません。脱水して固めた程度のもので,まだ水をかなり含んでいるものです。

この汚泥の成分は,もとの河川水に含まれていたもので,この記事の浄水場では,ほとんど相模川表流水を原水としています。現在の時期であれば,汚泥の主成分は微細な粘土鉱物,流下藻類,細菌類,原生生物などと考えられます。これらをかき集めれば放射性セシウムが一キログラム当たり5000ベクレルになる,と記事を解釈できます。

ダム放流データが手元にないので推測が入りますが,汚泥の中身は数割が生物体と考えてよいのではないかと思います。放射性セシウムは粘土鉱物にも生物にも含まれて移動しますが,今回の汚泥のデータは,生物体の汚染の目安になる可能性があります。相模川水系の藻類やバクテリアの放射性セシウム濃度が1キログラム当たり1000ベクレルを越えている可能性が出てきました。すると,相模川においても,アユなどの水産生物で放射性セシウムの汚染が確認されることになるかもしれません。モニタリングが必要です。

この記事では放射性ヨウ素も検出されています。すでに事故から二ヶ月以上を経過していますが,半減期8日の放射性ヨウ素がこれだけ残っているのが不気味です。3月下旬〜4月にはどのくらいの値だったのでしょうか。早い段階での測定が必要だったと思います(文責/MWS)。



5月20日23時03分追記: 汚泥は乾燥状態との報道もあります。寒川の値は乾燥汚泥と報道されています。そうだとすると,上の筆者の文章は,その数値を1/10〜1/5程度で解釈するとよいと思います。





2011年5月20日


ps


19日は大潮の終わりで,海にサンプリングに行くべきだったのですが,なぜか川に行きました。何だか英雄と戯れたくなったのです。川に潜んでいる英雄を捜し出し,あわよくば捕まえて連れ帰ろうと思っていました。河原に降りるとアユ釣りの解禁前で,なんと川に糸が張ってあり,釣りができないようにしてありました。なんとなく無粋なものを感じました。

英雄は草の根にも岩の割れ目にもおられなかったようで,筆者が川のせせらぎと戯れただけになりました。でもまぁ多少はリフレッシュし,お土産の甘露煮も買って帰路につきました。

寝不足だったのでゆっくり寝て帰ろうかと思っていたら,隣の方がすぐに船をこぎ始めました。よりかかられて,重かったのですが,ちょっと体調が悪そうに見えたので,筆者の秘密技N700-283型フルアクティブサスペンション制御で体が揺れないように協力して差し上げました。そのせいか,終点までよりかかって寝ておられました。さて降りようかと立ち上がろうとすると,隣の方にポンポンされました。振り返ると一礼されました。よっかかって済みません,ということらしい。いーのいーの,そんなこと。体調わるかったのでしょうに。

最近の若い人は,ホント,礼儀正しい人が増えた気がします。こういったことが,ここのところ,ぽつぽつあるのです。筆者は20年以上前に,毎日中央線に100km乗るというハードな生活を10年続けたことがあります。日常的に,疲れた方々に寄りかかられながら,それでも徹底的に読書してました。そのころの方々は,降車駅がくれば知らんぷりして降りたのです(画像/MWS)。



*1 寄っかかってくる人を,無理に押しのけるとこちらの姿勢が崩れ,それを繰り返すとかえって疲れることがわかりました。読書にも集中できません。また,途中で目を覚まされると,そのときに姿勢を直してしまい,こちらにかかる荷重がそのたびに変化して落ち着きません。なのであるときから,寄りかかられたら,そのまま寝てもらうように協力することにしました。ただ,体があまりにも傾いていると,こちらにかかる負担が半端ではなくなるので,そういうときはブレーキに合わせて肩の力を抜き,倒れ込んでもらいます。それで目を覚ましてくれるからです。過去に一度だけそれが失敗し,倒れ込んだまま寝ている強者がおられました。周囲の人が面白げに見ていて,筆者も面白かったのですが,何だか恥ずかしくて困りました。





2011年5月19日


ps


顕微鏡の整備を始めました。画像は解剖顕微鏡のレンズですが,おそらくは30年物です。この頃のレンズはカナダバルサムのような樹脂で貼り合わせているので,比較的剥離が生じやすいような印象があります。解剖顕微鏡のレンズは,種々のレンズの中でも,もっとも取り落としやすいものの一つと思います。そしてその衝撃で,レンズの貼り合わせが部分的に剥がれてしまうのです。エタノールに漬け込んでレンズを剥がし,再度貼り合わせを行いたいのですが,剥がれてくれるかどうかが問題です。ダブレットの貼り合わせは過去にも行ったことがありますが,センタリングの精度がわからず,雲をつかむような作業でした。はて,今回はできるのかしら(画像/MWS)。






2011年5月18日(2)


ps


位相差で珪藻撮影を行いました。筆者は偏斜照明を好んでいますので位相差はあまり使わないのですが,作画の意図によっては必要になります。位相差では深く絞られた環状絞りによって被写界深度が深くなります。コントラストは強くなりますが分解能は低くなるので微細構造はあまり写りません。このような特徴は,大型で厚みのある珪藻や湾曲した形の珪藻などの全体像を示すのには好適です。そこで,そのような画像依頼が入れば,位相差法で撮影することになります。筆者は自分で珪藻を精選して並べてから撮影することができますので,形のよい珪藻がしっかりと正面を向き,背景にほとんどゴミのない画像を得ることができます。もし天然サンプルで同じことをするならば,膨大な時間を要しても,たぶんできあがらないでしょう。一見,何でもないような珪藻画像ですが,なかなか撮るのは難しいのです(画像/MWS)。






2011年5月18日


手動停止 圧力低下を避けたか
5月17日 12時21分

東京電力福島第一原子力発電所の1号機で、津波が到達する前に非常用の冷却装置が停止したのは、原子炉の急激な圧力の低下を避けようとした運転員が手動で装置を止めた可能性があるとみられています。

東京電力は、16日、3月11日に地震が発生してから津波が到達して電源を喪失するまでの福島第一原発の運転状況を示す記録を公表しました。このうち1号機では、地震で原子炉が自動停止したあと、午後2時52分に「非常用復水器」と呼ばれる冷却装置が起動しましたが、およそ10分後の午後3時ごろに停止し、津波が到達したあとの午後6時すぎまでおよそ3時間にわたって止まっていたことが明らかになりました。この原因について、東京電力は、原子炉の中の圧力が70気圧から45気圧まで急激に下がったため、運転員が原子炉の損傷を避けようとして手動で装置を停止させた可能性があるとしています。「非常用復水器」は、すべての外部電源が失われても原子炉を冷やすことができる装置でしたが、機能を十分に果たせていなかったことになります。東京電力は地震が起きたあと、翌日12日の午前0時半の発表まで、1号機の「非常用復水器」は作動していると発表していました。これについて、東京電力は「停止の判断は、原子炉を損傷させないための手順書に従って行った可能性もある。非常用復水器が動いていれば、炉心の溶融までの時間を稼ぐことはできたかもしれないが、止めるまでの経緯やその措置が正しかったかは、今後、調査したうえで評価したい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110517/t10015934421000.html



いろいろなメディアが,一号機の非常用復水器の手動停止についてとりあげて報道しています。確かにそのことも問題ですが,この記事にはもっといろいろな問題が潜んでいるように思います。

・非常用復水器は全電源喪失で作動させる最終手段なのでは?
・津波前なのでECCS系統がディーゼル電源で作動していてもよいのでは?
・急減圧は非常用復水器の注水によるものなのか?
・それとも急減圧は配管破断による冷却材/蒸気漏れが原因か?
・非常用復水器の水は圧力容器に入っていたのか?

などいろいろ問題があります。全電源喪失前に非常用復水器が働いていたということは,もうそれしか働かない状況に追い込まれていた可能性があります。また,非常用復水器を手動停止したことが正しいかどうかは,運用手順を参照しなければわかりません。原子炉の圧力容器は非常に肉厚で複雑な構造の金属塊です。運転中は非常に複雑な熱分布になり,また,中性子をつねに浴びていますので,金属が中性子脆性で劣化します。その結果,もろくなり,高い温度でも壊れやすくなります。

熱衝撃,加圧衝撃はもっとも危険なものの一つです。急な温度変化が炉の温度不均一をもたらし,その熱応力で炉が破壊する可能性があるからです。この危険を避けるため,原子炉は通常運転時の温度変化は1時間に55℃以内になるように決められています。ですから,1号機で見られた10分間で25気圧低下という変化率は,明らかに,1時間に55℃以上の変化率を超えますから,それ以上の温度変化を避けるために非常用復水器の手動停止が運転員の頭に浮かんでも不思議ではありません。

もちろん,緊急事態ですから,本来は注水すべきだと思います。しかし加圧熱衝撃は,原子炉の圧力容器の大規模破壊を引き起こす可能性のあるものとされていますので,注水による破局的事故を避けたいという判断が働いたのかもしれません。どちらがより重大な事故に進行するのか判断ができなかった可能性があります。また,非常用復水器が8時間程度動いたとしても,結局は全電源損失,バッテリー放電になり,冷却剤喪失事故となり,炉心溶融となることは避けられなかったと思われます。こうしたことを考慮すると,非常用復水器の手動停止を問題視する報道はまだ早いと感じます。何が起きていたのか,より詳細に時系列に示してもらわないことには,何がよくて何が悪かったのか,判断はむずかしいと思います(文責/MWS)。






2011年5月17日


ps


きょうは情報提供や教育という活動について,方向性もなく考えてみます。「本日の画像」コーナーは本来,きょうの画像のような美しい世界を紹介してゆくことがメインの目的です。それは業務の一環としての作業でもありますし,より広い見地からの啓蒙活動の一種でもあります。なぜ啓蒙が必要なのかといいますと,それは自然が美しいからです。あそこの紅葉はきれいだよ〜というのと,珪藻はきれいだよ〜というのは,筆者にとってはあまり違いはないのです。珪藻の美しさは,誰がみてもいいものだと思っています。

ところが3月中旬から,「本日の画像」コーナーは,まるで原子力災害に関する記事を書く場所のようになってしまいました。本来は美しい画像を掲載するこの場所が,原子力事故の報道を読み解き,筆者の考え方を書き記す場所に変化してしまいました。

きれいな画像を楽しみしていた方は,がっかりしていることと思います。筆者はそれを承知の上で,ひょっとするとお客様が呆れて離れることもじゅうぶんに予想・考慮した上で,それでも書くことにしたのです。

その理由を簡単に言えば,これは筆者なりの,震災に対する活動ということです。今回の大震災に対して,募金や,ボランティアや,物資支援などいろいろな活動が考えられることでしょう。筆者としては原発震災に対して,独自の観点から情報を整理して提供する活動を通して,少しでも多くの方々が何らかの知識を得ていただければ,筆者の目的は達せられたということになります。

このコーナーは少なくない数の教育関係者が見ておられると思います。筆者の周囲から得た情報では,3月までは放射線についての知識が実質ゼロだった先生方が,すでに4月からの授業で,子どもたちに放射線について教えているそうです。

日本ではむかしから,初等教育機関において,理科が専門ではない先生が理科を教えてもよいことになっています。実際,顕微鏡のピントも合わせられない先生方が顕微鏡の授業を行ったりしている例は筆者もよく知っています。池の水をビーカーに汲み,そのまま一滴垂らして顕微鏡をみて,「何も見えない」という授業をやっている先生もいます。

望遠鏡の赤道儀を理解できないのはむしろふつうで,望遠鏡の使い方の講師の先生(学校教員)が,実はオレよくわかんないんだといって適当に望遠鏡を振り回して終わったという笑えない教員研修会もありました。夜になるといつも月が出ていると思っている先生もいます。

亜鉛を塩酸に溶かしてできた塩(えん)を「しお」と読み間違えて,児童に量の制限なく舐めさせた授業を行った先生もいます。過酸化水素と二酸化マンガンで酸素を発生させるという授業の実演で,広口ガラスびんに粉末二酸化マンガンを入れ,30%過酸化水を直接注いで爆発寸前になった実演を行った先生もいます(これらはすべて筆者が直接見るか,教員から聞いた話です)。

理科を知らなくても授業をしてもいいのです。

しかしこの問題に対して先生が悪いのだとは,筆者は思いません。むかしから学校の先生はそうやって教育してきましたし,筆者もそのような教育を受けた一人です。

これはシステムの問題だと思います。理科のような専門性が高い科目は,専門外の教員が授業を行うことを禁止し,各学校に理科専科の先生を配置して,きちんとした授業を行えるように制度改正することが望ましいと筆者は考えます。それが不可能なのであれば,理科教育法などの科目をいくつか修得すれば理系の単位もとれたとこになり,初等教育の免状が得られるような現行制度は改めて,少なくとも教員に限っては,理系/文系の区別をなくして,修業年限を6年に増やし,理系も専門,文系も専門,といった人材を育成して,初等教育機関で教育に従事するというのが一つの方法ではないかと思います。

そうすれば,先月まで放射線については何も知らず,放射線は原子炉の中にしか存在しないと思っていたような人が,今月には,児童たちに放射線を測定させたり,放射壊変について教えたり,シーベルトの値を比較させたりといった授業を行うことを防げます。

もっとも,「本日の画像」に辿り着くほどに知識欲が旺盛な方々は,放射線など特に問題もなく授業ができることと思います。筆者はそう確信しています。だからあまり心配していません。問題なのは,いままで知識のなかった分野について一冊のテキストを仕入れてきて,それだけを読んで理解し,その内容を受け売り授業するようなことです。

ことごとく書を信ずればすなわち書無きに如かず *1

昔からそういわれていますよね。筆者は前にも書いたように,一冊読んだらそれを受け売りして博識を装うような,恥ずかしい知ったかぶり少年でしたので,この言葉の重みは耐えがたいほどにわかります。今でも人様に向けてこうして情報を書き散らしている恥ずかしい人間であることはある程度自覚しています。でも一冊のテキストで人に受け売りすることは不可能なほどに,臆病にはなりました。

人にものを教えることによって給与を得ている職業教育者であれば,人に1話すなら50の知識を仕入れてからにして欲しいと筆者は思います。

2ヶ月ほど書き続けた原子力災害関係記事については,メールで何通もご意見を頂戴しました。そのいずれもが,情報提供に対する感謝や記事の内容に賛同,これからも続けて欲しいといった意見が綴られており,筆者としては少し安堵しました。しかし筆者は,人々はネガティブな意見をわざわざ送らない,ということも知っているつもりです。苦々しい思いをさせてしまった方々もきっとおられることと想像するとき,これからどうやって情報のバランスをとればいいのだろうかと,課題を抱え込んだ気持ちになっています。なぜなら,原子力災害は,まだ始まったばかりだからです(画像/MWS)。

*1 自分の知らなかった分野について一冊の本やテキストを読んで勉強し,新しい知識が増えたことに感激し,その一冊の本の内容を信じ切って他者に教育活動を行うという定型パターンで筆者が真っ先に思いつくのは,宗教です。幸福の○学や○○○真理教など,有名な教団は真理を説くわかりやすいテキストを必ずといっていいほど持っています。それを信者が読んで感動し,信者はその内容を疑うことなく素晴らしいものだと思い,誰に頼まれなくても勝手に布教活動を始めます。宗教でなくても,このような定型パターンによる動きは,特定の商品販売や,教育活動など,様々な場面で見られます。ある活動が宗教的かどうかを判断するには,その活動を行っている人の使っている一冊のテキストを読み,批判してみることです。宗教的な人は,テキストに心酔しているので,その批判に対して感情的に反論します。

*2 宗教が悪いと言っているのではありません。宗教に入信して幸せな生活が送れるのならそれもまた人生です。

*3 しかし学校の先生は宗教的な定型パターンではいけません。なぜなら,そのようなパターンでは嘘でも平気で教えられるからです。ある小学校の校長先生は,朝礼での児童への訓話で,「水だってありがとうと声をかけて凍らせれば,素晴らしく美しい結晶になる。バカヤロウと声をかければ汚い塊になる。皆さんもありがとうの心を大切にしましょう」というような内容を述べたそうです。筆者はこれを聞いただけで,"水からの伝言" "サンマーク出版" "江本" "トンデモ本"といったキーワードが浮かびます。つまり,この校長先生は,「水からの伝言」という,「感謝の声をかけると素晴らしい氷の結晶ができる」という写真集を読んで感動し,その内容を確かめもせず真実と思いこみ,訓話として,嘘の話を全校児童に話しをしてしまったのです。

文系出身の教育者が,こういった単純な嘘も見抜けずに信じてしまうことはよくあることで,別に恥ずべきことではありません。しかしこの校長先生は,筆者が上で述べた「定型パターン」にはまりこんでいます。これは「教育」とは呼べないと筆者は考えます。自分が始めて知ったようなことを,一冊のテキストだけを頼りに授業をするなどということは,職業教育者が義務教育課程にある子どもに対して行うのは,望ましくないと筆者は考えています。新しいことを勉強したら,そこを出発点として,複数の資料を当たるなどして,自分なりに理解してイメージと根拠と自分の知識の不足を自覚した上で,人に情報提供するのが職業教育者の態度ではないかと思います。

だから,ことごとく書を信ずればすなわち書無きに如かず,なのです。一冊の本を信じ込んではいけないのです。

*4 もちろん,筆者は,「水からの伝言」を読んで,よくこんな金儲け方法が思いついたものだと感嘆しました。ページをめくるごとに,普段はあまり笑わない筆者も大笑いしました。あまりに面白かったので,水に「ばかやろう」と声をかけながら凍らせてみました(^^)。別にふつうの氷ができただけでした。特に乱れている部分は観察できませんでした。

*5 筆者の作る「製品」は,たった一枚覗いただけでも,布教活動していただいて大丈夫です(^_^)。ほかと比較しなくても,美しい珪藻プレパラートであることは疑いがありません。。







2011年5月16日


1号機、津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気

 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。
 1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
 第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。
 地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がっているが、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。
 関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。
 この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。
 さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった。
2011/05/15 02:02 【共同通信】
 http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051401000953.html



1号機16時間後にメルトダウン 短時間に温度上昇
2011年5月15日 21時22分

 東京電力は15日、福島第1原発1号機でメルトダウン(全炉心溶融)が起きたのは、地震発生から16時間後の3月12日午前6時50分ごろだったとの暫定評価を明らかにした。
 震災後、短時間で温度が急上昇して大部分の燃料が原子炉圧力容器の底に溶け落ちるという危機的状況を迎えていたことが分かった。東電が1号機の燃料の70%が損傷したと発表したのは3月16日だった。
 東電によると、地震直後の自動停止から3時間後の11日午後6時ごろには燃料の上部まで水位が下がり、温度が上昇し始めた。同日午後7時半ごろには、燃料損傷が始まり、12日午前6時50分ごろには大部分の燃料が落下したという。
(共同)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011051501000664.html?ref=rank



筆者がくりかえし事態はまだ何もわかっていない(ちゃんと報道されていない*1)と述べてきたのは,↑のようなことがこれからも小出しにされる可能性があるからです。電力会社は,これまでも,原発事故の情報を隠蔽する一方で,原発の安全キャンペーンや,原発の一定出力運転を利用したオール電化,深夜電力利用の普及は手抜きなく行ってきました。やばそうな情報はまず隠す,という習性が徹底して身に付いているように見えるので,今回もその習性が遺憾なく発揮されたものと思います。

今回の原子力災害は,事故のきっかけは地震によりもたらされましたが,震度6強程度の地震では,原子力損害賠償法の免責条件を満たさない可能性が高いので,地震により原子炉が故障したという情報は最後まで伏せる方針だったものと想像します。その代わりに,津波により壊れたことにすれば,うまくいけば,免責されると考えたに違いありません。

上に紹介した記事を見ると,唯一初期注水が可能であったと推測される非常用復水器の動作については書かれていないので,コメントがしにくいのですが,早い段階で原子炉水位が低下して燃料溶融が起きていますので,地震により配管などが破断し冷却水損失事故(LOCA)が起きていたものと考えるのが合理的と思います。

これは非常に重大なことです。仮に電源喪失がなく,緊急炉心冷却装置ECCSがすべて正常に作動した場合でも,LOCAの程度によっては炉心溶融,水素爆発,放射性物質の大量放出が避けられないことになるからです。津波がなくても,地震による損傷だけで,一号機のような事故が起こる可能性があるのです。

事故の初期に東電内部で当然把握していたことが,なぜ今ごろ新聞発表されたのかというと,東京電力が,原子力損害賠償法の免責をあきらめるのに,2ヶ月かかったからだと,筆者は想像しています(文責/MWS)。

*1 部分的には報道されていますが正確ではありませんでした。たとえばNHKは4月8日に,核燃料が水から露出するのに一号機では18時間ほどだったと報道しています。今回の報道ではそれよりずっと早いことになっています。

*2 筆者が先月参加した原発震災の勉強会では,講演者の何人かが,一号機の事故はLOCAの可能性が高いと解析結果を発表していました。その通りであった可能性が高くなりました。

*3 津波で壊れてしまったが,この巨大地震でも原発がきちっと停止できたのは素晴らしいと発言した経済人が何人もいましたが,事実はそうではなかったわけです。これからも,「事実」がどんどん出てくることでしょう。






2011年5月15日(2)


福島 川魚3品目で放射性物質(5月14日 5:30更新)

 福島県内の川で取ったアユなど3品目の魚から、国の暫定基準値を超える量の放射性物質が新たに検出されたことが分かりました。  いずれも現在、漁が行われていないため、市場には出回っていないということです。
 厚生労働省によりますと、今月8日にいわき市の川で取ったアユから国の暫定基準値の「1キログラム当たり500ベクレル」を上回る720ベクレルの放射性セシウムが検出されたほか、今月10日に北塩原村の檜原湖で取ったワカサギからも870ベクレルの放射性セシウムが検出されたということです。
 川や湖に住む淡水魚から国の基準値を超える量の放射性物質が検出されたのは初めてですが、いずれも漁が禁止されている時期のため、市場には出回っていないということです。
 このほか、今月9日にいわき市沖の海で取ったシラスからも560ベクレルと850ベクレルの放射性セシウムが検出されたということですが、現在、福島県のすべての漁協が漁を行っていないため、市場には出回っていないということです。
 厚生労働省は「仮に食べたとしても直ちに健康に影響を及ぼす数値ではない」としていますが、引き続き調査を続けることにしています。
 http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110514/0530_kawazakana.html



放射性物質による汚染は生物種や栄養段階,生息環境などにより大きく異なります。放射性セシウムの生物による濃縮は1960年代頃にたくさん調べられ,ある程度の知見が蓄積されています。コロンビア川で調査された放射性セシウムの濃縮についてみると,

・水(3×10-6μc/ml)
・この水の中で増殖した藻類で水の1000倍
・その藻類を食べる植食性動物Aで水の3000倍
・植食性動物Aを食べる動物で水の9000倍

Pendleton, RC: Biological Problems in Water Pollution (3rd Seminer), 355, (1965)

同じコロンビアでの別の研究でも,環境水中と生物中の放射性セシウムは

・藻類(Stigeoclonium) 濃縮係数 1000-5000
・昆虫幼虫(Hydropsyche) 濃縮係数 1000
・魚類(Richardsonius) 濃縮係数 5000-10000

Foster, RF: The need for biological monitoring of radioactive waste streams. Sew. a. Industr. Wastes, Vol.31, No.12, p. 1409.

となっています。放射性セシウムは水から藻類に取り込まれる段階で最も濃縮(1000倍)され,それを食べる動物では,藻類の数倍程度まで蓄積されることが示されています。この調査結果は淡水生態系のものであり,海ではこの濃縮係数が適用できないことに留意して下さい。

Richardsoniusは国内には生息していないと思われますが,日本の淡水魚で近縁なものはウグイやアブラハヤなどが該当します。どこにでもいる魚です。関東圏であれば「ハヤ」といった方が通じるかもしれません。筆者の大切な遊び相手でした。これまでに釣ったり手づかみしたり飼育したりと,何百〜何千のハヤと遊んだことか…。ウグイは川魚料理としては比較的メジャーな存在で福島県内でも利用されています。

今回,魚から検出された数値から逆算してみると,環境水中の放射性セシウム平均濃度は1キログラム当たり約0.5ベクレル以下となります。これは上水道なら検出限界以下ということになります。水には放射性物質がはいっているようには見えないのに,生き物からは高いレベルの放射性セシウムが検出される。これが生物濃縮の恐ろしさです(文責/MWS)。



*1 文献は原典を示していますが,筆者が参考にしたのは次の本です。
 清水誠 海洋の汚染−生態学と地球化学の視点から− 築地書館 1972年






2011年5月15日


きょうは筆者が重要と考えるリンク先を2件紹介させていただきます。

こちら

こちら

です。リンク先は予告なく消えることがありますので早めにご参照ください(文責/MWS)。






2011年5月14日(2)


足柄茶、2町で基準値超える 神奈川、生葉から検出2011年5月13日 21時22分

 神奈川県産の「足柄茶」の生葉から相次いで暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題で、県は13日、新たに真鶴町と湯河原町の生葉から検出したと発表した。県内で基準値を超えたのは生葉を生産する16市町村中、6市町村に広がった。県は「ただちに健康に影響が出るレベルではない」としている。
 県によると、真鶴町では1キログラム当たり500ベクレルの暫定基準値を超える530ベクレル、湯河原町では680ベクレルを検出した。採取日はいずれも12日。
 地元農協は11日に南足柄市で検出後、すべての足柄茶の出荷を見合わせていたが、基準値を超えなかった10市町村については近く出荷を再開する。出荷量は全生産量の約半分になるという。
 生葉を蒸すなどした南足柄市産の荒茶からは1キログラム当たり3千ベクレルの放射性セシウムを検出したが、県農業振興課は「凝縮されて値が高くなったとみられる」としている。
 また、12日に南足柄市で採取したホウレンソウからは放射性物質は検出されなかった。同課は「葉物野菜と茶葉とは違うようだがメカニズムが分からない」としている。
(共同)
 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011051301001034.html




いくつかの知りたいことが明らかになってきました。まず南足柄町で先日検出された放射性セシウムは,近隣の市町村からも検出されたことから,福島第一原子力発電所からの放射性物質が,広くこの範囲に降下したことがわかります。地形を考慮すると,海沿いに南西に向かった放射性物質が,箱根の山にさしかかる手前付近で山にぶつかり,トラップされたものと想像されます。

次に,乾燥茶葉(荒茶)になった段階で,放射性セシウムの濃縮が起こることが示されました。これは筆者の予想通りですが,先日の新聞報道では,乾燥茶葉にする段階でセシウムがほとんど除去されるという記事もあったのです。事実は必ず明らかになるでしょうから,荒茶の段階での測定値が報道されるのを筆者は待っていました。キロあたり3000ベクレルともなれば,混ぜて薄めるのも面倒です。ブレンドされて出回ることがないように願いたいものです。

出回り始めた荒茶なら,地方によっては葉っぱを食べる人もおられるでしょうから,初期の段階で汚染食品の報道がなされたことは幸いだったと思います。

同じ南足柄市で採取したホウレンソウからは放射性セシウムが検出されなかったとのこと。これも重要な情報です。

想像で仮説を書きます。興味ある方は参考にしてください。

チャノキの根は菌根を形成しているものと考えられます。菌根とは,菌類の菌糸と樹木の根が何らかの形で結合することですが,物質のやり取りも行っています。チャノキであればアーバスキュラー菌根を形成し,付近の貧栄養な土壌から菌根が栄養分を吸収して樹木に渡していると考えられます。一方,菌根はチャノキから光合成産物を得ているでしょう。菌類の菌糸は,森林土壌を覆い尽くすように張り巡らされているのがふつうです。こうした樹木と菌類のネットワークにより,森林の物質循環は行われています。

ところで,菌根を形成する菌は菌根菌とよばれますが,これは"きのこ"(子実体)を形成するグループもあります。きのこがセシウムを非常に濃縮しやすいことはむかしから知られていることです。ならば,菌根菌がセシウム濃縮タイプの種で,これがチャノキと菌根を形成しているのであれば,降下したセシウムを高大な面積から速やかに濃縮し,チャノキの新芽に蓄積されたとしてもおかしくありません。

ホウレンソウなどの畑作の野菜は,じゅうぶんに水も栄養も与えることができるので,ふつうは菌根形成を行わず栽培します。したがって葉面からの吸収はありますが,根からの吸収は比較的遅く,また降下量が少なければ放射性セシウムが高い値にはなりにくい(*1)と考えられます(文責/MWS)。



*1 これを逆に解釈すると,畑の葉物野菜から,基準を超えるほどの放射性セシウムが見つかった場合,それは大量の放射性降下物があったことを意味します。

*2 セシウムの溶脱は,山などの荒れ地では早く,畑の土壌などでは吸着されて遅いと考えら得ます。これも放射性セシウムがチャノキで濃縮されやすくホウレンソウで低いことの一つの原因なっていると考えられます。

*3 菌類はセシウムを濃縮するものが多いので,シイタケなどは,福島県内でも放射性セシウムの検出が続いています。






2011年5月14日


ps


筆者のお気に入りのブログは,最近,絶好調のようで美麗な液晶の顕微鏡画像が次々とアップされています。それできょうも見てみたら,地球ゴマが掲載されていました。理系少年の基本アイテムの一つだそうです。筆者はきょうの画像で紹介した地球ゴマが4つめだったか…。最初は10歳になっていないとき,次は12歳頃,次は20代中頃,次は30過ぎだったと思います。一応,理系少年は合格でしょうか…。いまは理系中年で,笑えません。。

この地球ゴマには本物とニセモノがあって,ニセモノはこれよりも一回り小さく,作り込みが簡素になっています。でもニセモノも機能は同等なので,ニセモノ呼ばわりするのはかわいそうな気もします。筆者は両方持っていました。ニセモノは軸受けの精度が出にくいのが欠点でしたが,円盤部分が平坦で,空気抵抗が小さいという優れた点もありました。

筆者にとっての遊び方は,分解しては軸と軸受けを研磨し,何種類ものグリスを試し,可能な限り滑らかな回転を目指すことです(画像/MWS)。






2011年5月13日(2)


ps


きょうも一日撮影を行いました。200枚以上になりましたが,これが一日でこなせるのは有り難いですね。むかしはフィルム2本も撮影すれば,ずいぶんと贅沢した気分になったものです。真面目に追い込むと,染色標本などはフィルムの方がよく写りますが,珪藻ならばデジタルも悪くありません。画像処理,合成がしやすいのは大きなメリットです。きょうの画像は,きのうの珪藻を微分干渉法の明暗コントラストで撮影したものです。こちらの方が,品のある画像に見える気がします(画像/MWS)。






2011年5月13日


1号機燃料が一時全露出=圧力容器底部に溶融、漏出−福島第1原発・東電

 福島第1原発事故で、東京電力は12日、1号機原子炉の燃料が東日本大震災後、すべて露出していた時期があった可能性が高いと明らかにした。燃料は溶融して圧力容器底部にたまり、一部は圧力容器を覆う格納容器に漏れ出たとみられる。
 東電によると、圧力容器の底では、配管の溶接部分が溶融した燃料の熱で損傷。数センチレベルの穴が開き、溶融した燃料や注入した水がこの穴から格納容器に流出したとみられる。燃料が溶融した割合や程度は分からないという。
 適正な測定ができなかった圧力容器の水位計を調整したところ、水位は本来の燃料集合体の頂部から5メートルより下を示した。圧力容器の高さは約20メートルで、水面の高さは最高でも底から4メートル程度にとどまる。
 東電は現在、圧力容器に毎時8トンの水を注入しており、これまでの総量は1万トン以上に上る。圧力容器は360トン、格納容器は7600トンで満水になることから、蒸発分を差し引いても、相当量の水が漏れているという。
 今後、格納容器を水で満たす冠水(水棺)作業のため、注水量の増加を検討するとともに、冷却水の循環システム構築についても見直しを進める。(2011/05/12-20:48)
 (http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011051200959&j4)




この記事が事実を記載しているとすれば,ようやく,「何が起こったのか」が少しだけわかるような情報が出てきたといえるでしょう。この情報もあとからどのように訂正されたりするのかわかりませんが,事故から二週間程度の段階で,圧力容器も格納容器も破損しているだろうとの予想が出回っていましたので,たぶん今回は訂正されないのではないかと思います。

放射性物質は5重の壁に守られて環境中には出てこないから安全,というのが,原子力発電所のこれまでの説明だったのですが,まぁこの子どもだましのような説明は,原子力産業の方々も本気では信じていなかったでしょう。

・ウランは焼き固めてあり
・被覆管(ジルカロイ)で覆ってあり
・圧力容器に入っていて
・それが格納容器内に配置され
・コンクリートの原子炉建屋で守られている

これが5重の壁の説明ですが,ウランが焼き固めてあることを壁というのは詐欺的で,被覆管も放射線を防ぐためのものではありません。圧力容器は発電に必要なものですから,これを壁というのはちょっと変ですね。格納容器は設計思想から壁といってもいいでしょう。建屋についても同じです。

さて,今回の地震により福島第一原発に起きたことを5重の壁について見れば

・ウラン燃料が高熱を発し
・被覆管(ジルカロイ)が水と反応して水素を発生し
・圧力容器の破損部位または上部シリコン接続部または破断配管から漏れ
・格納容器内に水素が充満し
・格納容器または原子炉建屋内部で水素爆発が起きて
・建屋を吹き飛ばし
・破損した燃料からヨウ素,セシウムなどの放射性物質が放出された

と説明できるわけです。

壁のはずのウランペレットは発熱体ですから被覆管の「壁壊し機能」を持っています。被覆管のジルカロイは高熱で水と反応して水素を発生しますから「爆発性ガス生成機能」を持っています。この両者の協調作用により,(少なくとも福島タイプの炉は)原子炉は冷やすことができなければ,必ず壊れて爆発し,環境中に放射性物質をまき散らす「仕様」になっています。5重の壁という説明は,原子炉が正常に冷却できているときの話であって,冷却剤や電源が損失すれば,5重の壁は,必ず全部壊れる設計になっています。

この辺りの事情を知っている人は,水素爆発が起きて,その後に環境中から高い空間線量率が測定された段階で,燃料溶融・圧力容器・格納容器の破損を予想しただろうと思います。当然,東京電力は最初から,シナリオの一つとして予想していることと考えられます。それが記事として報道されるまでには,じつに二ヶ月を要しました。

実際には,まだ不明なことばかりだというのが筆者の認識です。事故についても,津波による電源損失前に,スロッシングによる破壊がどれだけあったのか,破断事故はあったのか, 隔離時冷却系はどのような動作をしたのか,燃料溶融はどの時点か(通常は冷却系が停止して24時間以内には溶融),ホウ素はどれだけ投入されたのか,海水はどのくらい入ったのか…,まだ情報がありません。汚染の実態についても,報道を見ているとわかった気になりますが,海・山・川の汚染状況や核種の情報,放射性物質の移動による濃縮や希釈について,まだほとんど何もわかっていないように筆者は感じています。事故の全体像が分かるまでには相当の時間がかかるだろうと思います(画像/MWS)。



*1 筆者は,何らかの形での爆発は避けられないと思っていましたので,HDDレコーダの録画をスタンバイして,爆発の瞬間を記録できるように待っていました。実際その通りになり,1号機,3号機の爆発は録画できました。NHKは,火山の爆発的噴火は素晴らしい映像を流すにもかかわらず,原発の爆発はその瞬間を流さず,爆発前と爆発後の建屋を比較して見せただけでした。節操なく何度も爆発映像を垂れ流す民放の方が,映像情報としてはまともでした。






2011年5月12日(2)


ps

ps


久しぶりに微分干渉法で撮影を行いました。まずは練習と,カラーコントラストで撮影してみましたが,これが難しいこと…。どうやっても目で見たとおりには写りません。画像処理をしても印象が違います。おそらくはラチチュードがもっと広くないと,キラキラした感じが出ないのでしょう。色再現も悪いのです。と,技術の未熟を棚に上げてデジタルのせいにしておきます。生の光で見ると,もっときらびやかなイメージなのです(画像/MWS)。






2011年5月12日


神奈川の「足柄茶」が基準値超え 県内産の農産物で初

 神奈川県は11日、同県南足柄市で9日に採取した「足柄茶」の生葉から、暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。同県産の農産物が暫定基準値を超えたのは初めて。
 県は南足柄市などに対し、今年産の茶の出荷自粛と自主回収を呼び掛けた。県によると、足柄茶の生葉は県内17市町村で生産しており、他市町村の生葉の検査も早急に進める。
 県によると、南足柄市の生茶から1キログラム当たり550〜570ベクレル(基準値同500ベクレル)の放射性セシウムを検出。放射性ヨウ素は検出されなかった。今年収穫された足柄茶は、6日に出荷が始まったばかりだった。
2011/05/11 17:07 【共同通信】
(http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051101000625.html)




筆者はこの記事を最初にみたときに,乾燥茶葉1キログラムから放射性セシウム550ベクレルと勘違いしました。お茶は,ごはんのように大量に食べるものでもないので,そのくらいは許してあげましょうと一瞬は思いました。

しかしよく見ると,生茶1キログラムなんですね。これが乾燥茶葉になると,約10倍に濃縮されますから,1キログラムあたり5500ベクレルになります。お茶が好きな人は,一日10グラムくらいの茶葉を消費するでしょうから,55ベクレルです。一ヶ月で1500ベクレル以上…。もし放射性セシウムの摂取が他になく,このお茶だけから体内に入るのであれば,これは許容範囲でしょう。しかし実際は種々の食材にも,量は少ないながらも,放射性セシウムは入ってきますから,神奈川県の判断は妥当だということになります。

それにしても,福島県浜通りから遠く離れた神奈川県西部でも,こうした農産物汚染が進行している…。リスク的には低いにせよ,農産物の食べる価値が奪われてしまう。原子力災害とは,とてつもなく規模の大きい不利益をもたらすということを,再認識させる事件です(画像/MWS)。








2011年5月11日


ps


JFおもえのわかめが売っていたので買い込みました。このわかめは,数ある製品の中でもトップクラスの品質で,筆者の第一指定銘柄なのでした。昨年のチリ地震津波のときにも,東北支援で買い込みましょうと本欄で紹介したので覚えておられる方も多いと思います。最近はさすがに見かけなかったのであきらめていましたが,幸運でした。でも,次の再会は難しいでしょうね。本当に残念です。製造年月日を見ると涙が出そうになります。自然を恨んでも仕方ないのですが,津波は人から奪う一方で,何かの恵みをもたらしてはくれません(画像/MWS)。






2011年5月10日


ps


きょうは珪藻画像,顕微鏡取扱法に関する打ち合わせでした。よい機会でしたので,ついでに包丁研ぎ講習も行いました。筆者は仕事や研究,実習でお越し頂いた方でも,関係なく?,研ぎ講習を押し売りしたりします(笑)。いずれの話も密度濃く,たのしい時間を過ごすことができました。またまた珪藻のお陰で筆者が幸せになったわけです。読者の皆さんも,当方の標本を多くの方に見せて下さいませ。きっと何かの楽しい関係が広がります。

さて,お客様を見送り,きょうもけっこう忙しかったーと,荷物発送の準備などをしていると,はるばる来たぜの北国から,植物標本が届きました。この標本はそのままアルデヒドで架橋反応を起こさせて固定することもできますが,みそ漬けにして脱水反応を起こさせて長期保存することもできます。しかし標本というものは,まずは保管の価値があるかどうかを調べることが重要です。そこで今回は,希薄大豆発酵溶液処理,油添加加熱処理,アルミニウム箔利用による赤外線加熱処理,大型ミクロトーム処理などを経て標本の価値を判定しました。

その結果,標本はなくなってしまいました…(画像/MWS)。






2011年5月9日


ps


連休も終わりになりましたので,このあたりで珪藻でも見て,あたまをクールダウンさせ,明日への活力を補おうと思います。3号機の昇温が気になりますし,浜岡が本当に止まるか気がかりですが,今週は原子力災害関係記事をあまり書かなくて済むような,平穏な一週間であることを祈ります。画像は相模湾から採取したカザグルマケイソウ属の一種で,撮影時に軽微な色収差を発生させて,豪華な感じに表現してみたものです(画像/MWS)。






2011年5月8日
原子力災害の情報に関連して,情報発信者の素性がわかることが大事ではないか,という問い合わせを複数いただきましたので考えてみます。

結論から言えば,情報発信者の経歴は,あまり参考にならないと思います。筆者は大学で海洋環境学を専攻し,海洋化学で学部,海洋生産学で修士と博士課程を修了しています。ですから,海洋についてはそれなりに専門家の素地は,ないとは言えません。しかし筆者がかつて私立大学で講じていた科目は「地域生態システム」といって,非常に幅広い環境分野を統合して講じるものです。原子力エネルギーも含まれます。ふつうなら,数人の教員がオムニバス形式で講じる科目ですが,筆者は一人でできますので,一人でやっていました。なぜ一人でできるのかというと,独学で十数年ずっと勉強していたからです。これとは別に,国立大学で「生物地球化学」とか「海洋生態環境学特論」などの講義を受け持ったこともあります。後者は顕微鏡の講義です,

これらの講義で,筆者の専攻分野の知識がどのくらい使われたかといえば,数パーセントがせいぜいでしょう。専門家が,専門の話を延々と続けることなど,ふつうはできるものでもないのです。

だいたい,「専門家」という言葉の定義をしっかりしないと,とても危険です。

勉強量と経験から言って,筆者は,顕微鏡の専門家といえなくはないでしょう。しかし,もっと厳密にいうと,「透過明視野で珪藻を覗く専門家」です。「蛍光染色で病理組織を覗く専門家」では決してありません。

専門家という言葉は,そのくらい狭い,一般人の理解しがたい言葉です。

ですから,原子力災害についても,「原子力の専門家」という言葉は,それほど大きな意味がないと考えていいでしょう。世の中には,反対派を装った推進派,中立派を装った推進派など,いろいろな人が跋扈していることは歴史が教えるとおりです。「専門家」についても然りです。

web情報を読む読者にとって大事なことは,情報発信者の履歴や素性ではなく,書かれた文章の一貫性,論理性,根拠,出典です。そしてそれを調べ直して,自分なりに解釈して構築する姿勢です。書いた人の素性など,どうでも良いことだと筆者は思っています。権威が書いたから信じる,専門家だからより安心できる,そういう情報の信じ方は,あまり推奨できるものではありません。筆者は,この「本日の画像」で情報提供しているわけですが,信じてもらうために流しているわけではありません。鵜呑みにしてほしくありません。用語を注意深く選択し,根拠はきちんとしていますから,読者は必要なら筆者の言うことの真偽を調べられるはずです。ぜひ,「本日の画像」を疑いの目で検証頂き,あら探しをしてもらえば嬉しいです(画像/MWS)。

*1 ついでにいうならば,独学ほど強いものはありません。ある人が,ある分野で10年間独学を続けていたならば,ぜひ話を聞いてみましょう。そこにはスゴイ世界が広がっていることでしょう。独学とは,リスク−ベネフィットを越えた人が営む,真理探究の求道ともいえます。





2011年5月7日(2)


浜岡原発停止要請、地元・御前崎市長が反発

 菅首相が6日夜、浜岡原発のすべての原子炉停止を中部電力に要請したことに対し、静岡県内の関係者の間で歓迎や戸惑いの声が交錯した。
 川勝知事や周辺市からは「英断だ」と首相の決断を前向きに受け止める声が相次いだのに対し、原発が立地する御前崎市は「首相の選挙対策だ」と痛烈に批判した。一方、産業界からは、早くも夏場の電力不足を心配する意見が挙がっている。
 川勝知事は6日、「福島第一原発の事故を受け、安全性確保に対する地元の要望を最優先した菅首相と海江田経済産業相の英断に敬意を表する」と、国の決定を評価するコメントを出した。その上で、「国は地元経済への影響についても適切に対応していただかねばならない」と、交付金が減少する地元自治体への財政支援について注文を付けた。
 浜岡原発の運転再開などを了承する立場の「地元4市」の一つ、牧之原市の西原茂樹市長も、「原発の運転は、国が判断すべきことだと思っていた。画期的な判断だ」と手放しの喜びよう。菊川市の太田順一市長も「原発事故で高まった市民の不安を受け止めての判断と思う。現時点では適切と考える」とコメントした。掛川市の松井三郎市長も、「判断は妥当。原発停止は要請ではなく国の責任と意志において命令で行うべきだ」とコメントした。
 浜岡原発から30キロ圏内に位置する藤枝市の北村正平市長は、「誰もが非常に不安に思っており、いったん原発を止めたうえで安全対策を施すべきだと思っていた。国の停止要請で肩の荷が下りた」と安堵(あんど)した。
 これに対し、原発が立地する御前崎市の石原茂雄市長は、「突然の話で、驚いている。言葉もない。5日に浜岡原発を視察に訪れた海江田経産相の『結論は急ぐな』という発言は、何だったんだろうか」と憤まんやるかたない様子。さらに「4、5号機を止めるなら、日本の全原発を止めなくてはならない。日本の原子力行政すべてを見直してほしい。東海地震は、初めから想定されていた。なぜ、この時期に安全でないと止めるのか、分からない。電力不足の問題もある」と批判は止まらない。最後は「菅首相の選挙対策だ。日本の全体を考えてほしい。国は地元の話を聞いてほしい」と切り捨てた。
 浜岡原発から約600メートルの場所に住む御前崎市原子力対策特別委員会委員長の柳沢重夫市議も「1967年から、地域住民の意見を集約して建設を進めてきた。地元は粛々と原子力行政を受け入れてきたのに、信じられない。今まで地元、地元と言ってきたのは何だったのか」と不信感をあらわにした。さらに、「これで交付金も減るし、市の財政も大変な状況になる。地元で約1200人が働いているが、雇用にも影響が出る。国が止めると言ったのだから、当然それなりの対策を講じてもらいたい。一気にこういうことになると、市の存亡にかかわる。それだけ大きい」とまくし立てた。
 県の小林佐登志危機管理監は、来週初めにも原子力安全・保安院に説明を求める考えを示した。その上で、「交付金の減少が見込まれる周辺自治体の予算については、国に対応を求めていく」と話している。
(2011年5月7日09時54分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110507-OYT1T00229.htm?from=navr



筆者は当然,首相の浜岡原子力発電所の停止要請を評価します。法的な根拠はないものの,首相は国民の代表でもありますから,国民の不安を取り除くために,権限がなくても国民一人一人に成り代わってお願いをするという姿勢は,政治家として考えられたものだと感じます。選挙対策,支持率対策という声も聞こえてきますが,まぁ,それは当然でしょう。原子力発電所を作るときも選挙の道具に利用されてきたわけで,時代が変わったら,停止要請が政治の道具に使えるようになっただけのことです。停止要請が選挙対策になるのなら,国民の多くが原発の停止を願っていると言うことです。

政府内で十分に検討された形跡はなく、支持率低迷に苦しむ政権が反転攻勢のために繰り出した苦肉の策との見方(読売)

という意見もありますが,浜岡の危険性については様々な学者が検討し尽くしてきた経緯があり,頭を悩ますほどの問題とは筆者には思えません。

地元は一斉に反発しています。その理由は,

こちら

こちら

こちら

こちら

などを読むと想像できるかもしれません。放射能よりカネなのです。今回の原子力災害を目の当たりにして,土地も生活もすべて奪われた方々を見てもなお,彼らにとっては事故は起きないものであり,カネは振ってくるものなのです(文責/MWS)。






2011年5月7日


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この謎の構造物はいまの季節がいちばん顕微鏡観察に適しているような気がします。固い組織で,切片をつくるのがたいへんなのです。でもいまの時期なら,それほど固くもないので,がんばれば薄い切片をつくれないこともない…かもしれません。これを見てピンと来た人は,かなりの観察家か,当サイトをすみずみまで見ている方なのかもしれません(画像/MWS)。






2011年5月6日(2)


海底の土から高濃度の放射性物質 福島第一原発の港湾内
2011年5月5日22時56分

 東京電力は5日、福島第一原発の港湾内の海底の土から、通常の約3万8千倍に当たる濃度の放射性物質セシウム137が検出されたと発表した。
 東電によると、検出されたのはセシウム137(1キロ当たり8万7千ベクレル)のほか、セシウム134(同9万ベクレル)とヨウ素131(同5万2千ベクレル)。
 海底の土は、1号機と5号機の間に面した海の底から4月29日に採取した。東電は、海に流出した高濃度汚染水に含まれていた放射性物質が、海底の土に吸着とみている。
 東電は「最終的には回収するつもりだが、現時点では未定」としている。
 http://www.asahi.com/national/update/0505/TKY201105050196.html




5月5日付けの本欄(5月4日深夜更新)で,汚染源に近いところでは非常に高濃度の(1000倍の)汚染が起きている可能性を指摘しましたが,早くも汚染源付近のデータが報道されました。先日の汚染の約100倍ですが,このサンプリングについても種々の問題がありますので,単純比較が難しいところです。ひじょうに高いレベルの汚染であることは間違いありませんが,陸地である飯館村で20日に採取した土から,土1キロ当たりヨウ素117万ベクレル,セシウム16万3千ベクレルが検出されていることを考慮すれば,サンプル採取に伴う希釈がおこなわれている可能性も否定できません。

汚染のメカニズムについては,この場所では爆発による降下物がありましたので,汚染水による吸着のみと考えるのは無理があるかもしれません。しかし汚染経路の一つであることは,先日も述べたように,間違いありません。これから放射性核種に関する詳細な分析データ,サンプリング方法,降下物のフラックスなどが公表されることを望みます(文責/MWS)。

*1 筆者は,東電が原発至近距離の底泥の分析結果を発表するとは思いませんでした。これを評価すべきなのか,注視すべきなのかは,歴史が教えてくれるところです。






2011年5月6日


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5日は,天狗と紅葉で有名な散歩コースを歩きました。筆者はこの近くに20年くらい住んでいたので,ほとんど庭同然のコースなのです。でも,フランスのタイヤ屋さんが星を三つつけてしまったので,それを見た日本人が大挙して押し寄せ,休日のたびに激しく混雑するようになってしまいました。まぁ,原子力発電がなければ電気が足りなくなる,などという噂を聞けば,そのまま信じてしまうような国民ですから,フランスのタイヤ屋さんが星を三つつけたら,安心してすべてを信じていることでしょう。

ヒールで登山道に挑戦するお姉ちゃん,過剰な運動で興奮状態なチワワ君,メイン通りはタバコの煙害で歩く気が失せます。軟体動物に見立てた杉の木は,観光客から保護するために金網越しにしか見られないようになり,代わりに撫でるための置物まで用意してありました。とまぁ困ったことも増えたのですが,お土産やさんが増えて便利になりましたし,十一丁目茶屋の,むかしはまずかったおやきが,おいしい野沢菜おやきに変身していて,フランスのタイヤ屋さんってのは凄いなぁと感心したのでした。画像は道ばたに生えていたシャガです。もうこんな季節なんですね(画像/MWS)。

*1 獅子口屋のわさび漬けが,何と言っても第一級のお土産です。海沿いや中部山岳地帯のものと違って,甘ったるい味,調味料の味がしないのです。酒粕,塩,わさびで作られた素朴な味は,ごはんにも,酒にも,最高のお供です。天狗と紅葉の散歩道まで行けない方は,こちら で買うこともできます。ここのお店の商品は,どれもわざとらしい味がしないのが特長です。






2011年5月5日(2)


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4日は,液状化現象の調査(二回目)でした。浦安の埋め立て地では,幅広く噴砂が認められましたが,わずかな距離の違いで噴砂の様子や地盤沈下の大きさが異なっていました。上の画像は海に面した公園ですが,一部から大量に噴砂して,植えてある芝に厚く堆積しています。噴砂の規模は幅数メートル,長さ数十メートルほどで細長く分布しています(画像/MWS)。





2011年5月5日


原発沖、海底の土から放射性物質 通常の百〜千倍

 福島第1原発事故で東京電力は3日、原発近郊の深さ20〜30メートルの海底の土から、通常の100〜千倍の濃度の放射性物質を検出したと発表した。東電が海底の土を分析したのは事故後初めてで「高い濃度だ。環境への影響は、魚介類を採取して分析、評価したい」としている。
 土を採取したのは、第1原発の北約15キロの福島県南相馬市と、南約20キロの同県楢葉町の沖合3キロで、4月29日に実施。放射性ヨウ素が1キログラム当たり98〜190ベクレル、セシウムは1キログラム当たり1200〜1400ベクレルだった。通常はいずれも1キログラム当たり数ベクレルか、検出限界以下。
 東電は、放射性物質は空気中に放出されたものが海に落ちたか、汚染水として流れて海底に沈んだとみている。今後、濃度が上昇しないか監視するとしている。
 一方、文部科学省は第1原発の南約50キロ地点の沖合約10キロ、深さ117メートルの海底から4月29日に土を採取して分析。放射性物質は検出されなかったと発表した。
2011年05月03日火曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/05/2011050301000837.htm



この周辺の海域は比較的潮流があり,平均的には砂地のはずです。深さが20〜30メートルなので,比較的,上層から下層まで,混合が起きやすい条件ではあります。原発からの位置関係は次の図のようになります。



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この図に書き込んだ赤い部分は,筆者が,非常に大量の放射性物質が落下したと考えている海域です。根拠は,デジタルグローブ社の次の画像です。



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災害情報につき無断転載しています。この画像は,3号機が大きく爆発してから3分後の画像です。大量の粉塵が上空700メートルまで噴き上げたとされていますが,見事なまでに,すべて海に運ばれています。これが陸上に落ちていたら,災害規模は比較にならないほど大きくなったことは自明で,本当に運がよかったと思います。ところで,この海域で調査をしている船は,ある情報によれば,



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三管の「きぬがさ」のようです。画像出典は
http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/equip/images/kinugasa_l.jpg

この船は放射線監視業務を行いますが,トン数も小さく,ウインチも海洋観測用CTDがぶらさげられるようなものが付属しているように見えません。そうすると,海底の土は,おそらく,エクマンバージ採泥器で採集したのではないかと想像します。

ところで,海底に降り積もったセシウムは,海底の泥に均一に分布しているわけではありません。海底へのセシウム供給は,

1)濃度の濃い水と触れる
2)セシウムを含むフォールアウト粒子が沈んで到達
3)生物がセシウムを濃縮し,その糞(ふん)などが海底に沈降

といった経路があります。いずれも,海底の表面のみをセシウムで汚染することになります。

この観測船「きぬがさ」がエクマンバージ採泥器で海底の試料を採取したとすると,海底の表面のみをうまく採取することは,かなり難しくなります。下層の砂と表層の砂が混ざりやすいのです。薄められてしまいます。すると,記事中に書かれている,「セシウムは1キログラム当たり1200〜1400ベクレルだった」という測定値は,海底の表層に限れば,この数倍になっていても何らおかしくありません。

できるなら,スミスマッキンタイヤーがた採泥器や,コアサンプラー,あるいはダイバーによるサンプル採取を行い,表層1cmの汚染状況を調べなければなりません。

さらに,筆者が予想している高濃度汚染の海域では,まだ,海底汚染の状況はわかりません。現在発表されている海洋汚染の状況は,いずれも,原子力発電所からかなり離れた場所のデータです。汚染源に近い海域の海底表層では,この新聞記事の1000倍の汚染が見つかっても不思議ではないと筆者は予想します。



ところで,新聞記事は地方新聞ほど良い記事を書き,大衆紙がまともなことを書かないのはむかしからですが,以下にその例として朝日新聞の記事を貼り付けておきます。上の河北新報社の記事と比較すると,まるで役にたたないばかりか,ニュアンス的な誤読を誘因するような工夫まで見らるように,筆者には感じられます。



海底に放射性物質 福島第一沖合15キロと20キロ
 2011年5月3日23時1分

 東京電力は3日、福島第一原発から15キロと20キロ離れた海底の土から、初めて放射性物質を検出したと発表した。土は4月29日に採取したもので、北側15キロの地点では1キロあたり、放射性ヨウ素131が190ベクレル、セシウム134は1300ベクレル、セシウム137は1400ベクレル、それぞれ検出された。海底の土の基準はない。単純比較はできないが、イネの作付け禁止の目安は、土1キロあたり放射性セシウムが5千ベクレル。今後、魚介類への影響を調べる。  また、高濃度の放射能汚染水が漏れ出ていた2号機の取水口付近で、2日採取した海水の放射能の値が再び上昇、流出防止フェンスの外側で、今月1日に比べて7倍に増えた。新たな漏れは確認されていないが、監視を続ける。  一方、文部科学省は福島第一原発から南約63キロ沖合、水深117メートルの海底の土を4月29日に採取、測定したが、放射性ヨウ素、セシウムとも検出されなかった。 http://www.asahi.com/national/update/0503/TKY201105030415.html








2011年5月4日


ps

筆者は本欄で原子力災害に関する情報を流し続けており,原子力発電所なるものは,その存在を肯定できないという立場で発言しているわけですが,核アレルギーというわけではありません。放射性物質というものが存在するのも自然の摂理であって,それを一つの物理現象として,安全な範囲で,勉強したり研究するのは有意義なことと考えています。それで手持ちの秋月電子の簡易ガイガーカウンターは,講義で原子力や放射性同位体の挙動などについて話をするときに,適当な線源と一緒に使っていました(*1)。線源は世の中にいろいろあるのですが,筆者はトリウムガラスを用いたレンズを使っています。かなり強い放射線を発する線源です。

上の画像は,文部科学省で貸出している「はかるくん」で,筆者のトリウムガラスレンズを計測した結果で,学校教員数名が「はかるくん」で放射線を測定・体験するという集まりを企画していましたので,放射線源として貸出したときのものです。

ガンマ線だけでの値で5.68μSv/hは,かなり強い放射線で,自然界バックグラウンドの150倍になります。環境放射線がこのレベルになって長く続くようなら,筆者なら,60歳以上は自己判断,それ以下の年齢の人は早めの退去を進言します。今回の原子力災害では,これを越える値のところが,福島県内でかなりの面積に達しました。ガンマ線だけで見れば,このトリウムレンズの上に住んでいるような放射線量なのです(画像/MWS)。



*1 自分が生きている間に,間違いなく原子力災害は起きてしまうだろうとの予測から,秋月のガイガーカウンターキットを購入したのです。政府はまともな情報を流さないだろうから,これを頼りに逃げるかどうか判断しようと思っていました。約20年前です。当時入手できる一番安価なものでしたが,一万円弱したような気がします(よく覚えていない…)。ふだんは2〜5cpm程度だったのが,3/15には,室内でもその十倍以上も鳴り響き,原子力災害の影響が東京にまで及んだことを実感しました。政府は予想通りに,放射線量に関してまともな情報を流しませんでしたが,20年前とは異なり,インターネットが普及していてかなり正確な情報が入手できました。現代では,ガイガーカウンターを持つよりは,webサイトが覗けるパソコンを持つ方が有利だと思います。

*2 福島県田村市の教員から聞いた話では,3/15に,校舎の室内で5μSv/hに達したそうです。より放出源に近いところでは,猛烈に濃い放射性物質を含む大気が通過したことは間違いなく,この大気による内部被曝がどれほどのものになるのか,とても心配です。





2011年5月3日


ps

上の画像は,CCDカメラが放射線を捉えたところです。画像右側に輝点がありますが,その部分を放射線,恐らくはγ線(ガンマ線)が通過しています。一部のCCDカメラが放射線の可視化に利用できることは昔から知られていましたが,そういえば筆者は(ガイガーカウンタを20年前から持っていたので)確かめたことがありませんでした。シリコンCCDの場合,検出できるγ線のエネルギー範囲も広くないようで,ガイガーカウンターなどよりは,はるかに検出率が落ちますが,画像にできるという強みがあります。上の画像は,

・Watec WAT120N
・ゲイン最大
・露出8秒(チップ積算)
・バックグラウンドノイズ減算
・トリウム232線源(約1μSv/h程度の強度)

という条件のもとで撮像しました。露出が数分程度かけられて,画像上に放射線の飛跡が10以上見られるのであれば,やや定量的に放射線量を数値化することもできるように思います。『本日の画像』をごらんになっているほどの方々であれば,放射線の可視化自体は難しくないことと思います。

高感度CCDカメラでは,動画に撮るともっと簡単です。WAT120を使った動画の例を示します。線源はトリウム232で,ガンマ線のみの計測で約5μSv/hの強度で撮影しています。画像処理装置(浜松ホトニクス,Argus-20)でバックグラウンド減算を施して,このカメラの固有ノイズを除去しています。フレームレートが通常の動画と同じにすると,一瞬光っただけで消えてしまい,ほとんど視認できませんので,フレーム蓄積(1秒程度)したものを動画にしています。ゆっくり光っているように見えるのはそのためです。

放射線の可視化1(30秒,低画質5MB,mpg形式)
放射線の可視化2(30秒,中画質8MB,mpg形式)

お手持ちの動画再生ソフトでみてください。見づらい場合は動画ソフトの「明るさ」をアップするとよいかもしれません(画像・動画/MWS)。






2011年5月2日(3)


枝野官房長官会見(1)小佐古元参与に反論「飲料水の基準のときは…」(1日午後4時過ぎ) 2011.5.1 17:46

 枝野幸男官房長官が1日午後4時過ぎから首相官邸で行った記者会見の詳細は以下の通り。

【原乳の出荷制限一部解除】

 「まず私から1点報告する。出荷制限の解除。本日、原子力災害対策特別措置法20条3項の規定に基づき、出荷制限を指示していた福島県川俣町および南相馬市の一部地域で産出された原乳について、出荷制限を解除することとし、福島県知事に指示した。詳しくは厚生労働省および農林水産省にお聞きいただきたいと思うが、原乳については今、避難の指示をしている区域および緊急時避難準備区域、および計画的避難区域を除いて、原乳についての出荷制限は解除されたということになる。私からは以上だ」

【「東電による人災」指摘】

 −−今日の参院予算委員会で森裕子議員が、東京電力が外部電源喪失を経験しながら対策をしなかったのは人災ではないか、と指摘した。どう考えるか

「人災という言葉の定義はなかなか難しいところがあろうかと思っているが、最終的には、場合によっては司法の場で問われるような話かもしれないわけなので、それについて直接お答えするのはなかなか難しいかなという風には思う。ただ、今回の事故によって、被害、影響を受けられた皆さんの損害の補償については、一義的には東京電力がしっかりと補償を行い、なおかつ国が、その補償がしっかりと行われるように、その責任を果たしていくということで、しっかりとその責任を負っているということについては、これははっきりしていることだという風に思う」

 −−刑事責任を問われることも

「これについても、もちろん事故発生以降のある部分については、政府の原災本部の一員として一定の認識はあるが、そもそも事故がなぜ発生したのか、そこに刑事責任を問われるような経緯があったのかどうかということについては、まさにこれからの検証に待たなければいけないという風に思っている」

【子供の被曝線量限度】

 −−委員会で森議員が子供の被(ひ)曝(ばく)限度について、年間20ミリシーベルトとしている現行の基準の見直しを求めた。与党議員からこういう見直しの声が出ていることをどう考えるか

 「これ、繰り返し過日も申し上げたが、被曝限度を20ミリシーベルトとするということで指示をしたのではないと。1つの基準、指針としてグランドレベルの、法定の平均した放射線量が毎時3・8マイクロシーベルトだと思うが、これは単純に通常の他の場所、つまり飯舘村などのように1日6時間、その屋外にいて、1日中6時間、木造建物にいるという想定で、年間の累積被曝量がどれぐらいになるかというと、毎年20ミリシーベルトとなるという、同じ考え方に立つわけだが、今回の学校などについて問題になっている地域は飯舘村などと違って、地域全体がエリアとして、そうした地域にあるわけではなくて、周辺地域はむしろ、それよりずっと低い放射線量であると。例えば学校の敷地の中については、それぞれ問題のある地域、具体的に調べており、屋外であってもアスファルトなどのところについてはおおむね半分程度であると。それから学校の場合、屋内についてもしっかりと調べて、ここは10分の1程度であるということ。なおかつ、その基準を超えているところについては、校庭の利用を1日1時間程度に抑えてくださいというようなことも併せてお願いしている」

 「つまり到底、年間20ミリシーベルトに達するような状況ではないということが、まず大前提にある。なおかつそれについては、実際の実績としての放射線量を、教師の方に線量計を付けてもらうなどしてしっかりと把握し、なおかつ今後、放射線量は原発のプラントの状況が悪化しない限りはこの間も暫時、減っていっているし、今後も一定程度、減っていくことが見込まれているので、そうしたことをトータルすれば、到底、20ミリシーベルトには達しないと、大きく達しないということを前提に、安全性の観点から問題ないという指針を出しているということだ。そこについては十分な説明がしきれていない、説明が理解を得られていないということについては、さらに努力をしなければいけないという風に思っているが、決して、20ミリシーベルトまでの被曝を認めているわけでも、それに近いような高いレベルの被曝が予想されるわけでもないということは、ご理解をいただきたいと思っている」

 「なお関連して、小佐古(敏荘)先生がいろんなご意見をおっしゃっている。今回の学校の校庭については、非常に厳しい水準にするべきではないかというご意見で、それが受け入れられなかったというご主張のようだが、逆に、この間には、例えば3月28日には乳幼児を含む牛乳や飲料水などの基準値を『むしろ3000ベクレル、ヨウ素の場合で3000ベクレルでいいんだ』というご提言をいただいた。これは安全委員会などの判断で『いや、300ベクレルが基準だということで、より低い、つまり、特に乳幼児をはじめとして、より低い線でやるべきなんだ』ということで、『より高くていいんだ、緩やかでいいんだ』という申し入れを、逆に全体としての判断として、安全委員会などがより低い判断をしているところがある。専門家の皆さんのご意見も、こういった意味ではいろいろある。ただ、そうした中で安全性を優先しながら、それぞれ判断しているということはご理解をいただきたい」

 −−ただ、前提となったのは年間20ミリシーベルトで、その結果、毎時3・8マイクロシーベルトとなっているが、20ミリシーベルトに達するかは別として、20は放射線管理区域の年間基準の5ミリシーベルトの4倍に達している。高いのではないか。

 「だから、逆に、20ミリシーベルトを超えそうなエリアとして、つまり、そのエリアに住んでいる、日常的に生活していると超える可能性の高いと思われる飯舘村の皆さんにはご無理をお願いして、計画的避難区域ということで、当該地域から生活の拠点を移していただくということをお願いしているわけだ」

 「特に乳幼児や妊婦はできるだけ先に、出ていただきたいということをお願いしている。ここだって、先程の判断、1日8時間外にいてということが前提だから、おそらく20ミリまで達しないと思うが、そうした前提を置いた場合、20ミリに達しそうな地域については、こういうことを無理にお願いしている。今回、学校の校庭について、お願いしている地域については、生活をしている全体の地域としては、それを大幅に下回っている地域だ。20ミリまでが良いからこういう線を引いたということではないとご理解頂きたい」

 −−3000ベクレルの提言をしたのは小佐古先生から…。

 「小佐古先生が、はい。食品および飲料水について、緊急時、早期においてはヨウ素の飲料水は牛乳についての基準値は乳幼児を含めて3000ベクレル・パー・キログラムでいいというご提言をいただいているが、そういうご提言を含めて最終的には安全委員会ではよ300ベクレル・パー・キログラムという10分の1の基準で、今、実際に飲料水や原乳などについて判断している」

 −−関連だが、昨日厚労省が福島、茨城など1都4県の女性からの母乳を検査した結果、7人から微量の放射性物質を検出したと発表しているが、母乳についても基準値を設ける考えはあるのか。設けないとしたら牛乳乳製品の暫定基準値に準じた扱いをするのか

 「まさに母乳ではなくて、粉ミルクをお使いの方の場合は水を使って、粉ミルクを作られて、溶かして乳児に飲ませるわけなので、基本的には同じ安全性の考えだ。もちろん、お母さんの体を通じてなので、一定の考慮が必要なのかもしれないが、大幅にいずれにせよ下回っているので、お子さんに影響を与えることはない。むしろそのことがストレスになる方が心配される状況であると、専門家からも説明を受けている」

 −−3000ベクレル、300ベクレルの話だが、欧米諸国などでは相当低い数字、1ベクレルとか10ベクレルとかに設定しているところもあって、そもそも300という数字が適切なのかという議論も逆にある。この値についてはどのように見ているか

 「専門的には専門家の皆さんの説明を直接お聞きを頂かないと、専門家ではない私が、説明の仕方に若干間違いがあって、そのことで誤解を招いてはいけないと思っているが、かなりの安全性にゆとりを持った形で、こうした基準を作っているということの説明はその都度、具体的にも含めて説明を受けているので、そうした意味では、もちろん放射性を受けるとか、それについては低ければ低いほど安心感は高まるが、かなりの安全性にゆとりを持った中で、こうした基準を作っていただいている」

 −−小佐古さんの300ベクレル、3000ベクレルという指摘の部分だが、校庭の場合の提言に比べて、政府としては小佐古さんの理論構成の中では一貫しているものがあるとみているのか。それとも、整合性がとれていないとみているのか

 「専門家の皆さんの専門的な意見なので、こうしたご提言も安全委員会を含めた専門家の皆さんに、そうした提言があると、ご参考にとか、ということで専門家レベルでいろいろご協議を、評価をいただく中でやっているので、政府としてなにか政治の立場から申しあげるべきではない」

 −−その提言は小佐古さんから安全委員会に直接話しているのか。官邸を通じてか

 「食品および飲料水の基準に関する提言は、総理と内閣府の食品安全委員長宛てで出ている。写しは私や福山副長官のところに来ているという提言書だ」

【刑事責任】

 −−先ほど刑事責任に値するものがあるかどうかを検証すると言ったが、今日も首相が第三者委員会で検証すると言ったが、その場で並行して議論されるのか

 「正確に申しあげると、そういったことの、一般的な意味でのこの事故については検証を当然しなければならないと。その検証の結果として、そうした可能性が出てくるのかというのは初めて、あの、いろいろ出てくるんでしょうということを申しあげたので、そのことを目的として検証委員会を開くという意味ではない」

【子供の被曝線量限度】

 −−校庭の土の問題に戻る。郡山市などでは独自に除去したものの、その土を処分する方法に困っているという事例も出ている。地元の方で土の処分方法について国で基準を決めてほしいという声も上がっている。そもそも政府として校庭の土は除去する必要があるのかと。また、もし必要があるとしたら、土の処分方法などについて基準を示す考えはあるのか

「まず必要ということでは、今回文部科学省が示した指針に基づいて対応いただければ除去する必要はない。ただ、より安全性を高めたいというお気持ちでそれぞれの自治体がされたと思う。一方で、原発以外のところで発生する放射性廃棄物になるので、それについての処理については、率直に申しあげて今、どういう枠組みで、どういうふうに対応するかということについては、これは簡単に答えの出る問題ではない」

 「受け入れてくれるところがなければそれの処理ができないので、少なくとも今後、20キロ圏内のがれきの処理を含めて、今後さまざまな問題になってくる。ある程度、原発の状況が落ち着けば、農地などの土壌の改良のことも出てくる。そうしたことに向けて国としては若干時間がかかると思うが、原発の外で生じた放射性廃棄物についての対応について、検討を進めていかなければいけないと思っている」

【女性社員の健康状態】

 −−福島原発で女性社員が国の定めた被曝線量の基準値の限度を超えたとのことだが、女性の健康状態や安全対策について

 「まず、女性については妊娠の可能性ということで圧倒的に低い基準値になっているので、特にこの事故以降、3月23日以降、女性職員が勤務しない運用を東京電力が行い、それが継続しているという状況だ。健康状態については特段の問題についての指摘は受けていない。妊娠をしている場合でなければ、男性と基本的には同じ基準値でいいわけであるが、そこから先の話については当該の方のプライバシーとも関わる問題なので、ここまでにとどめた方がいいかなと思う」

【東電の賠償問題】

 −−東電の賠償についての進捗状況を

 「賠償については東京電力が直接行っていただくものなので順次、第一次指針も出ているから、第一次指針に基づいて賠償して頂くものだと思っている」

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110501/plc11050117480008-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110501/plc11050118340009-n1.htm



筆者は4月30日(2)付けの記事で,子どもの被曝上限として年間20ミリシーベルト被曝することの危険性を,メディアが報じ始めたと書きました。その記事は,日本経済新聞(web)からの引用で,小佐古参与の辞任に関するものでした。その記事中で筆者が非常に違和感を感じたのが,小佐古参与が述べた,

「容認したと言われたら学者生命が終わりだ」

という部分です。もしほんとうに子どもたちの命を守るために働くのなら,学者生命などどうでもよく,首相の胸ぐらをつかんでも説得させるべきなのです。容認したと思われたくないから辞任するというのは甘えでしかありません。筆者は,この人が緊急に参与に任命されたときに経歴を調べましたので,その段階で,どうしてこいういう"専門家"を任命したのだろうかと思っていました。ですから,抗議の辞任は,パフォーマンスだろうと想像していました。

だいたい,どれほどの学者でも,自分から,「学者生命が終わり」などという表現を使うことはないのです。ものすごい違和感です。

そう思っていたら,嫌いな産経新聞の記事に,珍しく良い記事が出ていました(上の全文)。なるほど,この小佐古参与は,水や牛乳経由の内部被曝については,現在よりも高い暫定基準を提案していたわけですね。

推測で書きます。

この人は保健物理屋さんで,外部被曝が専門の人なのでしょう。それで,労働者被曝などの問題を専門的に研究し,原子力産業の外部被曝基準値についても影響力のある人なのだと思います。その立場から言えば,「年間20ミリシーベルトの放射線に子どもをさらす」ことは,専門の労働者被曝の見地から言えば,「学者生命が終わる」のでしょう。

しかし内部被曝に関しては専門ではないし,だいたい,労働者は内部被曝を起こさないように管理されていますので,飲料水のヨウ素131を3000ベクレル/kgでも問題ない,ということになるのでしょう。専門外のことでは,「学者生命が終わる」ことはありません。

しかし皮肉なことに,枝野官房長官が,小佐古参与の「飲料水ヨウ素131を3000ベクレル/KgまでOK発言」を公にしたことにより,この参与の学者生命は,せっかく辞任したにもかかわらず,かなり厳しく追い込まれることになったと筆者は思います。ヨウ素131が3000ベクレル/kgも水道水に入ってくるような環境では,空気中のヨウ素131も大量に存在しているはずで,その高濃度の大気で呼吸するだけでも大きな内部被曝になります。それに加えて水から入ってきたら追い打ちです。小佐古氏の提案は,筆者には現実的には思えません。しかもヨウ素の大量放出は,通常の原子力災害では,初期の10日間以内が勝負で,その高濃度の汚染は避けることができるのです。

この参与の発言がすべて正しいとしても,筆者には,子どものことを考えているようには見えません。たぶん,「学者生命」をいかに維持するかを考えているのでしょう。

もし子どものことを考えているならば,年間20ミリシーベルトを許容しないことはもちろん,水道水基準ももっと厳しく提案し,大気のことも心配し,辞任などしなかったことでしょう。

政府も可哀想です。この非常事態にいっしょうけんめい専門家を探しても,ごろつきヤクザみたいなのしか見つからないんですから(文責/MWS)。






2011年5月2日(2)


福島の汚泥から高濃度セシウム 郡山市の下水処理場

 福島県は1日、同県郡山市の下水処理場「県中浄化センター」で、汚泥と汚泥を焼却処理した溶融スラグから高濃度の放射性セシウムを検出したと発表した。県は、降雨により地表の放射性物質が混入したとみている。
 県によると、汚泥からセシウムを1キログラム当たり2万6400ベクレル、溶融スラグから同じく33万4千ベクレルを検出した。原発事故前の溶融スラグは同246ベクレルだった。
 1日に80トン出る汚泥のうち、70トンは溶融炉で処理し、10トンは県外のセメント会社が再利用している。溶融スラグは1日に2トン発生する。
 県は1日からセメント会社への搬出を停止したが、事故以降に500トンが運び出された。溶融スラグも道路の砂利などとして利用しているが、同センターは事故以来出荷していなかった。
 県の担当者は「溶融スラグの濃度が高いのは、焼却などの下水処理の過程で濃縮されたためとみられる」と話した。
2011/05/01 18:50 【共同通信】
(http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011050101000577.html)



この記事からいろいろなことがわかります。まず一つは,水系を通じてセシウムが動いているということです。主に降雨により,地表面が洗い流され,その水に含まれていたセシウムが下水管を通って浄化センターまで届いたということです。

浄化センターでは,まず粗い金網で粗大ゴミを除いた後,数十秒から1分くらいの滞留時間で砂を沈めます(沈砂といいます)。次にこの下水を巨大なプールに送り,圧搾空気を送ります(ばっきといいます)。空気を吹き込まれた下水中では,原生生物が汚物を食べて大増殖します。バクテリアなども増えます。ある程度生物を増やしたら,こんどは沈殿池に移し,増殖した生物を沈殿させます。生物はふわふわした塊(フロックといいます)になって底に沈みます。

この沈殿させた生物を「汚泥」と呼びます。実際にはこれの水を絞った「汚泥ケーキ」も汚泥と呼ばれます。この汚泥は生物の塊なので燃やすことができ,その灰の溶融物がスラグ(溶融スラグ)と呼ばれます。

汚泥ケーキの含水率は70-80%程度で,炭水化物も含みますので,溶融スラグにすると,放射能強度が10倍になるのは自然なことです。

さて,上の説明でおわかりいただけたと思いますが,セシウムが濃縮されたのは汚泥部分です。これは,今回の原子力災害によりばらまかれたセシウムが

1)雨で流れ
2)沈砂では取り除かれず
3)汚泥の沈殿とともに移動する

という性質を持つことを示しています。したがって,池,沼地,側溝,農業用調整池,水田などにセシウムが集積する可能性を指摘できます。流れ込む川や水路があるため池や沼の,泥の部分にセシウムが溜まるといえます。水辺の植物や生物,淡水魚にも汚染が広がる可能性があります。

こういった場所は,魚釣り,ザリガニ釣りやドジョウ採りなどにも良い場所ですが,放射性物質が集まっていることも十分考慮し,外部被曝,内部被曝を起こさないようにモニタリングを強化する必要があると考えます。

なお,上の記事をもとに計算すると,一日に6億ベクレルの放射性セシウム入り溶融スラグが,この浄化センターから出てくるわけです。これは中越沖地震で柏崎原発から漏れ出た放射能(3億ベクレル)の2倍に当たります。今回の事故の規模がどれだけのものかがわかるかと思います。

この記事で取り上げたのは福島県内の話ですが,セシウムは南東北から関東まで広く降下していますし,ホットスポットの詳細はまだわかりませんので,降下域の人は十分注意して下さい(文責/MWS)。






2011年5月2日


放射線の人体影響について勉強したい方は,

こちら(PDF 1MB)

を推奨します。すでにユーストリームなどでご覧頂いている方々も多いかと思われますが,文章としてまとまっていると,ずっと理解しやすいことと思います。説明に省略がなく,情報量も豊富で,今回の原子力災害を受けて講演しているということもあり,一つのテキストとしてはもっとも優れたものに仕上がっているといえます(文責/MWS)。






2011年5月1日


ps

上の画像は,文部科学省(当時の科技庁)が貸し出ししている放射線測定器「はかるくん」により測定された,各都道府県の放射線量の値です。平成2-10年度の平均値を示していて,当然のことながら,今回の原子力災害の影響は受けていません。ガイガー管による検出で,およそ150keV〜3MeVのγ線の数値という限られた情報ですが,いまとなっては,貴重なバックグラウンドの参考数値となります。ガイガーカウンタをお持ちの方は,上の画像に示されている数値を参考にして,汚染の度合いを判断することができるでしょう。

現在は,福島第一原子力発電所の災害により,広範囲に放射性物質が降下しましたので,この数値よりも高い値を示す地域が増えていることはすでに報じられている通りです。放射性物質は非常に小さな粒子として降下していますので,それらが集積する場所,たとえばホコリの吹きだまり,道路の側溝,排水口の周囲などでは,平均的な測定値の10倍にもなるところもあります。放射性物質は,大部分がすでに地面に落ちていますので,地面の値を調べることが大事です(撮影/MWS,出典:はかるくんの説明書)。






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