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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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2008年7月31日


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珪藻はその幾何学模様が美しいだけでなく,顕微鏡対物レンズの性能試験や,照明法の検討などに利用できる実用性の高さがあります。MWSで取り扱っているいずれの珪藻も,工夫次第で様々なテストプレートになります。上の画像はリサーチグレード【ASK-01】に入っているギロシグマという珪藻を100倍の油浸対物レンズ(プランアクロマート,開口数1.25)と乾燥系コンデンサ(ハネノケアクロマート(開口数0.90)を用いて撮影したものです。縦横の条線が極めて精巧で,美しい姿が観察できます。この条線はそれぞれピッチが異なり,珪藻の長軸に直交する条線は40倍対物レンズ(開口数0.65)で何とかぎりぎり解像できます(画像2枚目)。しかし長軸に平行な条線は,その条件では見えません(画像3枚目)。このように,ピッチの違いを利用して解像限界を調べるテストチャートとして利用できます(BF,oblique, 撮影/MWS)。





2008年7月30日


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この画像はモモ(桃)果実の表皮を拡大したものです。桃の果皮には肉眼でもわかる細かい毛が生えていますが,顕微鏡でみるとびっしりと一面に毛が覆っている様子が観察できます。この毛をうまく撮影しようと試みたのですが,照明によっても浮かび上がらせるのはけっこう難しく,とりあえずLEDライトの落射照明で毛を浮かび上がらせ,果皮の後ろ側から透過照明で桃のピンクを表現してみました(上の画像)。このあと,試しに蛍光顕微鏡で観察すると,うまいぐあいに果皮の毛だけが比較的強い自家蛍光を発します。この性質を利用して,うまく毛だけを撮影することができました(下の画像)。上の画像では埋もれて判別しにくい短い毛も,下の蛍光画像だとはっきりと見ることができます(epiDF+BF,epiFL, 撮影/MWS)。





2008年7月29日


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小昆虫は検鏡して遊ぶのにとても良い素材です。この時期,蚊よけを多用する方も多いと思いますが,ピレスロイド系などの薬剤は多くの昆虫に効きますので,蚊はもちろん,小さなハエやウンカなどが落下してきます。見つけたら保存しておいてはいかがでしょうか。この画像は室内で見つかったハエの一種です。体長3ミリほどの小さな体ですが,顕微鏡で見ると脅威の迫力です。こうした厚い物体は透過照明では見えませんので,強力なライトで上から照らしましょう。蛍光灯は全光束は多いものの輝度が低く,小さな部分を明るく照らすことができません。顕微鏡観察用には,強力なLEDライトの利用が手軽です。上の画像もLEDライトで斜めから照明したものです。演色性はやや落ちますが,明るく照明できます(DF, 撮影/MWS)。





2008年7月28日


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珪藻は数万種もいるとされていますので,全種類をスライドグラス上に載せるのは相当に(ほとんど無理な)困難な作業と言えるでしょう。しかし入手できる限りの個体を一枚のスライドグラス上に並べている貴重な試料は歴史を通じて作られてきました。筆者がこれまでに(資料等を通じて)見た中でも,250種,512種,1142種の珪藻を並べたスライドがありました。このレベルになると珪藻個体の入手自体が困難なのですが,それを大きさ別に分けて並べられている試料を見ると,もはや人間業ではないように思います。上の画像は,MWSで現在保有している海の珪藻から適当な種をピックアップして60個体以上を並べたものです。この10倍並べる,という作業は,ちょっと想像できません(DF, 撮影/MWS)。





2008年7月27日


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個々の珪藻を原子に見立てれば分子模型が作れるはずです。そこでステファノディスクスを水素に,アラクノイディスクスを炭素として,n-ペンタンを作ってみましたがどうにもおかしいですね。個々の珪藻の大きさは微妙に異なる上に,表裏もあり,ガードルバンドの有無も影響します。傾きもマイクロメートルのレベルで正確に合わせる必要があり,簡単なようでいて,なかなか難しい課題のようです。まあ,本物の分子は電子の存在確率で表される存在ですから,それに不確定性原理も加味して,一瞬だけ,このような形態のn-ペンタンがあったかもしれない,ということにしておきましょう(oblique, 撮影/MWS)。





2008年7月26日


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仮説実験授業・夏の全国大会(京都・宮津)7/30〜8/1に小さなお店を出しますので,現在はその準備をしています。約200枚ほどのプレパラートを展示販売する予定です。主にエデュケーショングレードの特別調整品と,いくつかの一品もの,Jシリーズ,お薦め組み合わせセットなどが並びます。簡易顕微鏡も持ち込みますので,その場で検鏡することも可能です。関係者の方がおられましたら,ぜひお立ち寄り下さい。関係者以外の方が入れるかどうかはわからないのですが,事情を話せばお店に案内してくれることと思います。その場でお買いあげ・お持ち帰りを前提に,お薦めセット以外はすべて割引で販売いたします。お得になりますので,関係者で出席者がおられましたら,まとめて購入するのも一案かと思います。なお,筆者は出向きませんので,珪藻プレパラートに関する質問などは,メールでお願い致します(撮影/MWS)。





2008年7月25日


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チリ紙と比較すべきはレンズペーパーよりも「キムワイプ」だろーという言葉が聞こえてきそうなので,きょうはキムワイプの画像です。この製品は科学器機の拭き取りによく使われるもので,特にウエットなラボ(分析化学系の実験施設など)には欠かすことのできないものになりつつあります。筆者がこの製品を初めて見たのは,東京都環境科学研究所を訪問したときで,二十数年前になります。毛羽の出にくい専用の拭き取り紙があることを知って感心したものでした。検鏡画像では,ちょうどレンズペーパーとチリ紙の中間的な性質に見えます。チリ紙よりも繊維成分はよく揃っており,導管や師管の部分が見えません。夾雑物も少ない印象です。圧縮密度が周期的に変化していて,これが表面を波立たせて拭き取り性を高めているようです。キムワイプはチリ紙よりもずっと硬い手触りですが,レンズに対しては,チリ紙よりもずっと優しく傷つけにくい印象です。接眼レンズや対物レンズの清掃に使用して問題を生じないことが多いです(もちろん使い方によります)。これの上手な使い方(の一つ)は,きれいにこよりを作り,蒸留水を垂らして湿らせ,それで円を描くように拭くのです(Pol,撮影/MWS)。





2008年7月24日


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レンズやプリズムなどの光学面をきれいにするためには清拭が有効ですが,単純に拭くという動作でも非常に奥深い世界があります。一説には「拭き3年」という言葉がありますが,知人のメンテナンス屋さんに聞いても満足できる拭きができる日は滅多にないといいます。特に像面と共役の位置にあるレンズの拭きは難しく,筆者も拭きと組み込みチェックを繰り返しながら,一面を完全に拭くのに半日を要したことがあります。顕微鏡対物レンズ先端やCCDなどの極端にチリを嫌う素子は専用のレンズペーパーを用いますが,これは上の画像のように,繊維が揃っており不純物も少なく,正しく扱えば微少なチリを一度にワイピングで取り除くことができます。レンズペーパーがどのくらい特殊かというのは,チリ紙と比較するとよくわかります(下の画像)。ふつうのチリ紙とレンズペーパーを目視でみてもあまり変わりませんが,顕微鏡で覗くと一目瞭然,どちらの紙からダストが発生しやすいかは言うまでもないことでしょう。もっとも,レンズペーパーはチリ紙の100倍以上の価格ですから,その点で特殊な紙であることは自明ですが(Pol,撮影/MWS)。





2008年7月23日


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これは毛先(まつげ)の画像です。7月21日付けの画像と同じ倍率で撮影しています(10倍対物レンズ,NA=0.45)。チリ・ホコリのサイズと毛先の太さがちょうど同じくらいだということがわかると思います。動物の毛先は意外に細く,また先端が丸いものが多く,タンパク質でできており,適度なコシがある一方で,硬度は柔らかです。この特性を利用して,光学器機の清掃に利用されることがあります。高級な撮像器機などでは,CCDをハウジングに納めたあとでも,多くの部品を組み込む工程があります。その過程で,いかにクリーンルームを使用しても,わずかながらチリや金属片,ダストが撮像素子に付着することがあります。これを画質に欠陥が出ないように注意深く清掃するわけです。実体顕微鏡を覗きながら,毛先で注意深くチリをつり上げる作業は,きっと熟練の技が必要なことでしょう。おそらく,使う毛の部位や質などにノウハウがあるに違いありません(BF,撮影/MWS)。





2008年7月22日


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空気中に漂うチリ・ホコリが光学系に対する大敵であることは周知ですが,実際にどのような影響を与えるのかは調べないとわかりません。この画像はCCDカメラの受光部に付着したチリの検出を試みた例で,コントラスト強調を行っています。黒い,ややぼけたスポット一つ一つがチリです。受光部に付着したチリが,細く絞られた光によって投影され,影となって写っています。このクラスになるとチリの大きさは0.01ミリあるいはそれ以下の桁になりますので,除去は非常に困難になります。上質なレンズペーパーに専用のクリーニング液を適量浸して拭くことが多いですが,下手に拭くとかえって汚します。光学面を完全に拭き上げるのはほとんど困難で,程度のよい面を得るにも熟練の技が必要になってきます。したがって光学面の重要な部分にはチリを付着させないことが大切です(BF,撮影/MWS)。





2008年7月21日


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空気中にはたくさんのチリ・ホコリが舞っていますので,清浄なガラス面も,すぐにホコリまみれになってしまいます。光学製品を扱っていて最も悩ましい問題の一つです。発生源の追求はなかなか困難ですが,検鏡によりある程度の情報が得られます。上の画像は数日間放置したスライドグラス上に積もったチリです。これだけ見ると何なのかわからないのですが,繊維の破片のように見えます。これを蛍光顕微鏡で見ると,一部のチリが鮮明な蛍光を発している様子を観察できます(下の画像)。この蛍光は,同時に観察される衣類の繊維から発せられる蛍光の色と全く同じで,肉眼では区別がつきません。とすると,この発光しているチリは蛍光増白剤により染色されているものが発生源と考えられます。該当する物はいろいろあるのですが,衣類(特に下着類),タオル類,上白紙,などが候補として浮かびます(BF,撮影/MWS)。





2008年7月20日


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30年物の望遠鏡対物レンズが発掘されましたので,再生させるべくレンズを取り出しましたが,表面にはところどころカビが生えているように見えます。さっそく検鏡してみるとまぎれもなくカビです。レンズはきれいに拭き上げて保管しているのですが,表面にはわずかな脂気が残ることが普通ですし,ホコリやチリも着地します。そういった痕跡量の栄養をもとにカビが菌糸を伸ばしていきます。困ったことにレンズカビは乾燥に強く,培養するには飽和食塩水が必要な種もいるとのことです。ふつうの生物細胞は浸透圧差でしわくちゃに縮んでしまうような乾燥条件が,このカビにはちょうどよいというわけです。この検鏡画像である程度わかるように,カビは表面に止まっています。通常のクラウンガラス(BK7)やフリントガラス(F2)といったガラスに生えたカビは拭き取りが可能なことが多く,このレンズもきれいに清掃できました(BF,撮影/MWS)。





2008年7月19日


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蚊の口器(口吻)も撮影してみました。厚みがあって封入が難しい部分ですが,カバーグラス上からかなり力を加えて押しつぶしています。複眼などはかなり破損するのですが,不思議と口器や触覚はそのまま保たれることが多いです。この画像では吸血管にピントを合わせていますが,周囲の触覚や鱗粉もよく見えています(oblique,撮影/MWS)。





2008年7月18日


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現在,イベント用に蚊のプレパラートを製作中なので,きょうも蚊を検鏡しました。先日,蚊の口器(口吻)を撮影しましたが,今回も口器です。9枚作成したうちの一枚を検鏡すると,先端の一部が破損して中から細い針が飛び出ていました。どうもこれが蚊の,吸血用の針のようです。web上で調べてみると,口器先端のハサミ?(下の画像)で皮膚を切開したあとに,針(上の画像)を刺して毛細血管に到達し,吸血するようですね。捕らえた蚊を封じて口器先端を観察しても,針が見えない場合がほとんどで,針の先端は初めて見ました。一度観察したことのある物体でも,幾度となく見ることの重要性を痛感します(oblique,撮影/MWS)。





2008年7月17日


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これは蚊の複眼です。実体顕微鏡下で蚊の頭部を切断し,これをカバーグラスでつぶして封入しています(ですから部分的に割れたり,破損しています)。観察は蛍光顕微鏡モードで,光源は紫外線LEDです(励起波長約400nm)。昆虫の複眼は紫外線で蛍光を発するものが多く,この性質を利用して観察すると,まるでこの世のものとは思えない光景が広がります。昆虫の複眼は多数のレンズと網膜細胞からなり,CCD上にマイクロレンズを多数配置した雰囲気に似ているといえるでしょうか。光の方向性をとらえるのに優れ,偏光も感じることができ,紫外線も見える種もいます。この複眼の集合体から来る信号がどのように脳で処理され,人体の血を吸いやすい場所を見つけるのか,興味は尽きません(epiFL,撮影/MWS)。





2008年7月16日


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これはクサカゲロウの羽で,先端部分を撮影しています。クサカゲロウというと,その卵が「うどんげの花」と呼ばれることで有名です。ヒラヒラと飛び,羽は透き通って繊細です。画像では骨格と剛毛が写っていますが,透明な羽の部分は見えていません。屈折率1.5程度の封入剤で封じていますが,暗視野照明でも,偏光顕微鏡でも,蛍光顕微鏡でも見えませんでした。きっとこの羽は,屈折率がガラス付近で,偏光性がなく,きわめて薄いのでしょう。このクサカゲロウには不思議な思い出があります。10年くらい前,夏になるとマタタビの実を採集しては部屋で乾燥していました。するとクサカゲロウがどこからともなく集まるのです。どこから現れたのか,網戸一杯に,数百匹のクサカゲロウが止まっては舞う姿は,何とも幻想的なものでした(BF,撮影/MWS)。





2008年7月15日


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夏はシャワーだけで風呂に浸からない人も多いと思いますが,残り湯を貯めっぱなしにすると,やがて底にふわふわした綿のようなものができてきます。この「ふわふわ」は服やタオルなどの繊維が皮膚の角質やその他のチリなどを絡めて集まったところに,繁殖したバクテリアが糊の役割となって全体が形成されているようです。偏光顕微鏡で見ると繊維が白く輝いて見えます(上の画像)。高倍率で見ると皮膚の角質のように見える破片や,バクテリアを観察することができます。風呂の水といえども,地球上の生態系と切り離して考えることはできません。水の栄養分を利用してすぐにバクテリアが発生し,それを食べる原生生物や小型のアメーバなどが発生してきて,微生物を中心とした生態系ができあがるのです(Pol/oblique,撮影/MWS)。





2008年7月14日


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これはコガタアカイエカの口器です。注射針とは異なり,鋭利な針先という感じはしませんね。このような複雑な(キタナイ)口器で刺されると思うと気分が悪いですが,同時にどうやって差し込むのだろうとの疑問も沸きます。きっと叩き込むのでしょうが,なぜ,さっさと刺せる鋭利な刃物のように進化しなかったのでしょうか。刺さりにくく抜けにくいことに意義があるのでしょうか。なお,この画像は赤色光〜近赤外光で撮影しています。厚みがあって不透明な口器が,いくぶん見やすくなります(BF,撮影/MWS)。





2008年7月13日


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昨日載せた胞子の発芽画像だけではあまりにも部分的情報ですので,どんなきのこなのかを掲載します。千葉県松戸付近で採集されたきのこで,ウッドチップが撒かれた付近に大量発生していたものです。図鑑等では該当種が見当たらないように思い,全体の写真の他,検鏡写真を含め多角的に20カット程度の画像を撮影しました。それをもとに,菌類に詳しい研究家に打診しているところです(画像は全体と,ヒダの切片と,発芽前の胞子です)。日本で発生するきのこの種類は全部で幾つになるのか,未だに不明です。一説では,現在,国内の図鑑に収録されている種の方が少なくて,和名もついていない種の方がおおいのではないかという話もあります。そういったきのこを同定する作業は大変で,検鏡写真を欠かすことはできません(BF/oblique,撮影/MWS)。





2008年7月12日


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きのう水封で検鏡した正体不明のきのこの胞子を放置しておいたところ,封入に用いた水がすっかり乾燥して干からびていました。念のためもう一度検鏡してみると,一部の胞子はすでに発芽していました。マウントしてから30時間程度ですが,菌糸が少し伸びているものもあって,生物の逞しさを感じさせます(oblique,撮影/MWS)。





2008年7月11日


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デジタルカメラによる顕微鏡写真撮影は,10年前頃には珍しいものでしたが,現在ではもはや当たり前になりました。デジタル写真の良いところは,画像処理が自由自在なところです。きょうは名称不明のきのこが持ち込まれ,あれこれ調べたり検鏡したりしていました。その途中で胞子の撮影も行いましたが,きのこの胞子はそのサイズ情報が重要です。デジタル画像であれば,同じ倍率で撮影した対物ミクロメータを画像処理で重ねてしまうこともできますから,概略の大きさを伝えるには便利かもしれません。この画像もそうやって作成したもので,コントラストが付きすぎないようにエンボス処理をしています(格子間隔は10μmです)。この画像をじっと見ていれば胞子の大体の大きさがわかります(BF,撮影/MWS)。





2008年7月10日


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珪藻を並べて作る珪藻アレンジスライドはヨーロッパに源を発します。すでに1800年代にはこのようなスライドが製作されていたのですから驚きですが,しかしよく考えてみると,当時はテレビもインターネットもない代わりに,顕微鏡はあったわけですから,現在よりもずっと作業に没頭できたのかもしれません。しかし並べるテクニックがあったとしても,材料を揃えなければなりません。こればかりは,かき集めるしかないのです。この画像は数ヶ月前に製作した試作品ですが,星形のトリケラチウムが先端,四角形のトリケラチウム,四角形のトリゴニウムで土台,細長い三角のクリマコスフェニアで樹木の幹,S字型のプレウロシグマ,同じくS字型のギロシグマで樹形をデザインしています。これらの珪藻をどこかで探し,処理を行い,傷や割れ,欠けの少ない個体を集めるのは,並べる以上に難しい作業かもしれません(DF,撮影/MWS)。





2008年7月9日


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この画像は珪藻プレパラート(ASK-01)を油浸対物レンズで撮影したものです。光学顕微鏡では,光波の回折限界で決まる最大倍率(解像限界)があります。100倍対物レンズを用いると,その限界にほぼ到達します。すると視野にはこのような光景が広がるわけです。ここに写っている最小構造は0.0003ミリメートルです。検鏡時の眼視倍率は1000倍です。「千倍」と聞くと,大きな数字が世をにぎわせている今日この頃では,大したことがないように感じるかもしれません。しかし1000倍というのは大きな数字なのです。新幹線のぞみ号の長さを千倍にするならば,東京から名古屋を超えてしまうのです。この画像の珪藻はそれほどまでに拡大されているのです(oblique,撮影/MWS)。





2008年7月8日


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先日採集してきたヨコエビの巣をほぐして検鏡してみました。ヨコエビの巣は場所により素材が違います。砂地の場所ではほとんど砂粒ですが,岩場などで砂が少ないところでは他の様々なものが材料となります。今回のヨコエビの巣は岩場のタイドプールで採集したものですが,砂は比較的少なく,しかしながら珪藻も少ないものでした。海綿骨針が多く,他に放散虫とサンゴのかけらが見られました。珪藻プレパラート用の試料としてはプアな感じです。次回に期待しましょう(DF,撮影/MWS)。





2008年7月7日


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ヒザラガイは海辺の岩場に行けばどこにでもいます。この貝は岩の表面に生える藻類をかじりとって食べています。そのため強力な歯舌(しぜつ)を持っています(上の画像)。歯舌はすでに6月8日にマツバガイを採り上げていますが,ヒザラガイのものはまた構造が違います。特筆すべき点は,何層も並んでいる歯のうち,黒い歯は磁鉄鉱でできているということです。磁鉄鉱,すなわちマグネタイトは非常に丈夫な鉄材であるとともに磁性体でもあります。ですからヒザラガイの歯舌はそのままで磁石に吸い付くのです(下の画像)。人間は丈夫な物質を探して鉄器を発明しましたが,ヒザラガイも石にかじりついて生きるために鉄器を選んできたのです(DF,撮影/MWS)。





2008年7月6日


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大潮の度にあちこちサンプリングに出向くのにはわけがあります。それはできるだけ多くの,面白い形態の珪藻を集めたいからです。いっしょうけんめいに探すと,こんなカッコイイ珪藻が採取できたりするのです。このような美しい珪藻をぜひ多くの方に見て欲しいのです。現代はインターネットで「画像だけなら」何でも見ることのできる時代です。だからこそ,現物を見て得られる感動を忘れないようにしなければなりません。NASAのサイトで見る土星も美しいですが,小望遠鏡で豆粒のように見える土星も,宇宙のスケールが感じられてまた格別です。それと同じように,プレパラートの中のある微細な粉が,視野中に精巧なガラス細工として浮かび上がって見えるこの感覚は,また格別なのです。なお,この画像の珪藻はまだ数が少なく,数十粒しか確保できていませんが,並べスライド(Jシリーズ)であれば供給可能です。興味のある方はメールでご連絡下さい(DF,撮影/MWS)。





2008年7月5日


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4日の相模湾は朝からの雨も上がり干潮時には快晴でした。しかしとても風が強く,波しぶきが飛んできて水際に近づくことは困難でした。今年は5月前半の大潮までは天候も順調でしたが,後半から大潮の度に海が荒れるのはどうしたことでしょう。きょうのサンプリングもヨコエビの巣を探すこととなりました。タイドプールでわずかに一握りのヨコエビの巣を慎重に採集していると,まるであざ笑うかのようにタコが現れ,ご丁寧にも墨を吐いて泳いでいきました(撮影/MWS)。





2008年7月4日


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プレパラートを整理していたら昔つくった石の薄片がでてきたので検鏡しました。この石は堆積岩でひじょうに崩れやすく,耐水ペーパーと砥石で薄片にできた記憶があります。非常に細かい鉱物の集合体のようで,花崗岩などの大きな結晶を持つ岩石とは全く異なる風景です。微化石が入っているのではないかと期待しましたが筆者の目には見つけられませんでした。上の画像は10倍対物レンズを用いて簡易偏光観察を行ったものです。簡易偏光とは普通の生物顕微鏡に偏光フィルタを装着した場合の呼称で,普通はコンデンサ下と,対物レンズ上にそれぞれ直線偏光フィルタを置き,消光します。この画像ではさらに市販のラムダ板をコンデンサの直下,偏光フィルタの上に置いて鋭敏色検鏡ができるようにしています。フィルタ類を揃えれば,ふつうの生物顕微鏡でもこのような観察ができます(Pol,撮影/MWS)。





2008年7月3日


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この珪藻はイワシの糞に入っていたものですが,40倍対物レンズ(開口数0.95)に対して限界付近の微細構造を持っています。ふつうの明視野照明法で肉眼観察すると,ベストに調整できた場合,かすかに中央部の胞紋がわかります。その状態で照明光を単色(青色)にして撮影したのが上の画像です。下の画像は同じ物体,同じ対物レンズに同じ照明波長に対して,照明の中央部分を遮光して開口数の高い照明光のみを送り込んで撮影した画像です(輪帯照明)。照明条件をわずかに変えただけで劇的にコントラストが向上することがわかります。このように顕微鏡観察では照明技法が極めて重要です。そしてその技法を磨くためには珪藻プレパラートがよい試料になります(annular,撮影/MWS)。





2008年7月2日


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対物レンズに照明光が直接入らないような照明法を暗視野照明と呼びます。低倍率の対物レンズも使用して,斜め上,あるいは斜め下から照明して,物体が明るく背景が暗ければ暗視野照明となっています。暗視野照明法では散乱光や,物体の構造によって生じた回折光を拾います。そのため,細かい構造を持つ物体は無色であっても回折光により着色して見えることがあります。この着色の度合いは,照明の角度や物体の構造により種々変化します。画像は上から順に,光軸に対してだんだんに角度を大きくして暗視野照明にした例です。低い開口数の暗視野照明だと珪藻の回折光による着色があまりありませんが,大きな角度で照明すると色がついてくることがわかります。このため,暗視野照明で撮影を行うときには,最適な開口数を調べてみることも大切になってきます(DF,撮影/MWS)。





2008年7月1日


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微分干渉法(DIC)は透明体の構造に対しても高コントラストが期待できますので,細胞内部の観察に有用です。明視野法ではコントラストを上げるためにはコンデンサの絞り込みが必要になりますが,DICでは絞りは開放で使えます。このため非常に浅い被写界深度となり,ピントの合っているわずかな厚みの部分だけが鮮明に見えます。これを光学的切片効果と呼ぶこともあります。画像はその一例で,淡水産付着珪藻(ニッチア属)の一種です。核,葉緑体,その他の細胞内器官と珪藻被殻の竜骨が見えています(DIC,撮影/MWS)。






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