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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ(2011年9月再開)。


2011年10月31日


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29日,30日は原子力災害と環境経済の勉強会に出席してきました。会場となった東京大学(駒場)では,放射性物質の沈着は文京区や江戸川区などよりも少ない値とされていますが,空間線量(1m)は0.07μSv/h〜0.09μSv/h程度で,排水パイプの下は0.7μSv/h以上の数値を示しました。金網の上に積もった堆積物の薄い層が発するガンマ線にこれだけ反応しているのです。南関東や関西からの参加者に見せたところ驚いていました。放射性セシウムが降り注いだと知識では知っていても,測定器がないと,なかなか実感できないのです。

勉強会ではいろいろな報告がありました。福島の除染現場で指導してきた方からは,構造物に染みこんだ放射性セシウムは除去困難なこと,特に屋根に降った放射性セシウムが瓦やスレートに吸着してしまい除去できないことがなどが豊富な事例とともに紹介されました。時間の経過とともに汚染がひどくなっている場所もあるとの事例も報告されました。避難指示を出してくれないことに対して大きな不満を持っている村民や市民の感情についてもレポートがあり,報道で述べられていることと,現場で起きていることの違いを見せつけられるような講演もありました。ある支援グループの方は,関西で福島の子どもたちを受け入れ,短期間から中長期のキャンプ生活でありながら,子どもたちが放射能汚染のない土地で,泥だらけになり川に飛び込んで遊んでいる様子を紹介していただきました。たくさんの方が「見えない敵」と戦っています。本来なら他のことに使えるはずだった貴重な時間が,放射能が降り注いだがために,多くの人から奪われてしまったということに戦慄を感じずにはいられません(画像/MWS)。








2011年10月30日


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28日は八王子市西部の放射線を測定してきました(CsIシンチレーションカウンタ)。放射性セシウムの降下物は,当サービス所在地よりも少ないことが判明していますので,低めのガンマ線量を予想していました。実際,空が開けた土地の地表面は0.07〜0.1μSv/h程度のところがほとんどで,原子力災害前よりは高い値ですが,汚染レベルとしては低いものでした。室内のガンマ線量も,0.05〜0.06μSv/h程度で,筆者の作業空間(0.08〜0.09μSv/h)より若干高い程度でした。

ところが,雨樋下の測定結果は予想に反して高い値が出ていました。小さな車庫の屋根の雨樋下で0.2μSv/h程度を記録,一般家屋の雨樋下では0.6〜0.7μSv/h程度はふつうで,大きめの建築物の雨樋下では1.39μSv/hを記録しています。これは豊島区や文京区内の一般家屋の雨樋下で見られる値とほぼ同じです。都区内から西に50km離れた八王子市でも,確実に放射性セシウムの雨が降り,それが地面に固定されているのです。そして,屋根と雨樋により濃縮されれば,希薄に降ったはずの放射能も高いレベルになってしまうのです。

筆者は上の画像に見られるような夕焼けの里のふもとで育ちました。ここの空,空気,川,自然は師匠であり,現在,筆者がこのような活動を続けられるのは,ここの自然が筆者の背骨に筋金を入れてくれたからだと思っています。八王子の自然を味わい尽くしてきたからこそ,環境汚染の防止に心を砕く人生を送ることになったわけです。

それがこの現状です。

皆さんも考えてみて下さい。放射能まみれの世の中で,世間の大人たちが放射能放射能と騒ぐ世の中に育った子どもたちは,どうやって自然を味わいますか。どうやって郷土への愛着を培いますか。彼らに,無心になってヨシノボリを追いかけ,川エビと戯れ,採ってきたきのこを図鑑で調べて食べる経験をさせてあげられますか? (画像/MWS)。








2011年10月29日


ps

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 暗視野照明法は物体の検出能に優れていますが,ゼロ次の照明光が入射しないため,物体の正しい構造は再現しにくいとされています。実際,物体の輪郭はギラギラするのに,中身はよく見えないといった経験をした方もおられるかと思います。ところで,珪藻を検鏡する場合は,物体の輪郭が知りたいことも多いので,暗視野法はけっこう役立ちます。珪藻の表面にほんの小さな突起があるだけでも,暗視野法では輝度の違いとして確認することができます。きょうの画像は,明視野では確認がむずかしい,ニセコアミケイソウの粘液放出孔を暗視野法で撮影したものです。放出孔の突起だけでなく,突起の中央部に孔があいているのが確認できます。液浸系暗視野コンデンサに乾燥系対物レンズ(NA=0.95)での撮影です(画像/MWS)。








2011年10月28日


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 ここのところオリンパスが何かと世間を騒がせています。いろいろな評論を読んでみると,粉飾決算の繰り返しにより積み上がった資産を見せかけの買収によって帳消しにしようとしたようにも見えます。シロには見えず,筆者のような素人にも,真っ黒な感じがします。ホリエモンが投獄されて,オリンパスの幹部が見逃されるとしたら,いったい世の中とは何なのだという感じもします。そしてさらに,オリンパスには極めて優秀な光学技術者が多数在籍している,顕微鏡のリーディングカンパニーであるのに,幹部の不祥事で株価が乱高下して,経営が不安定になる恐れもあるかもしれないというこの現状,資本主義,株式会社というのは何なのだろうかと,しばしギョロメケイソウ(上の画像)のような表情をしながら?余計なことを考えてしまいます(画像/MWS)。








2011年10月27日


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 かつての顕微鏡には必ず偏斜装置付きのコンデンサが装着されていましたが,1980年代に入ると姿を消してしまいました。偏斜照明というのは顕微鏡照明でも基本技術の一つで,ヨーロッパなどでは1800年代中頃から,珪藻などの微細構造を見るために頻用されてきました。プランクトン研究者にとっても必須の技術と言って過言ではありません。それが(これまでにも何度も触れてきましたが)できなくなっているのです。

筆者は,偏斜照明ができない顕微鏡はプランクトン検鏡には利用価値がないと思っているので,何とかして,偏斜照明ができるようにしてしまいます。上の画像は,微分干渉用コンデンサからノマルスキープリズムを抜き取り,代わりに,いちばん口径の大きな開口に拡散板を仕込んでいるところです。このようにすれば,コンデンサの下から照明を遮ることで,その陰が拡散板に写り,そこが二次光源の働きをして,偏斜照明になるのです。いくらスペアとはいえ,高価な微分干渉用コンデンサを分解するのは無謀に思える人もいることでしょう。しかし筆者にとっては,それほどに偏斜照明というのは大切なテクニックなのです(画像/MWS)。








2011年10月26日(2)


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 顕微鏡の対物レンズは,あの小さなボディの中にうんと小さなレンズが組み込まれている精密機械です。数枚から十数枚のレンズが一つの光軸上に狂いなく配置されています。このレンズが一枚でもズレようものなら,巨大な収差が発生してまともな像ができなくなります。画像一枚目はその例です。ひじょうに高価な対物レンズですが,どこにもピントの位置がありません。ボケ像は画面下方向に流れ,レンズがずれていることを教えてくれます。画像二枚目は同じスペックの正常なレンズです。こちらはきれいに写っています。この軸ズレを起こした故障レンズは,外観上はどこにも問題は認められません。レンズ面もきれいです。しかし偏光(クロスニコル)で消光ぜず,大きな歪みが発生していることを表しています。バルサムに強い力がかかったか,あるいはレンズのどこかにヒビが入っているのかもしれません。恐らくは,机の上で倒したとか,わずか数センチほど落としたとか,外観上は無傷で済む小さな衝撃でレンズがやられてしまったものと思います。対物レンズの取扱は,当然ではありますが,慎重にやさしく行うことが求められます(画像/MWS)。








2011年10月26日


小中学生の体内から少量のセシウム 福島・南相馬で検出

 福島県南相馬市の市立総合病院は、9月下旬から検査した市内の小中学生の半数から少量の放射性セシウム137が検出されたことを明らかにした。事故直後に呼吸で取り込んだものか、事故後に飲食物を通じて取り続けたものか不明のため、病院の責任者は「定期的に調べて健康管理につなげたい」と話している。
 小中学生527人を最新の内部被曝(ひばく)測定装置で調べたところ、199人から体重1キロあたり10ベクレル未満、65人から同10〜20ベクレル未満、3人から同20〜30ベクレル未満、1人から同30〜35ベクレル未満のセシウム137を検出した。
 セシウム137が半分になるまでは約30年かかるが、体からは便などとともに排出されるため、大人で100日程度、新陳代謝が高い小学校低学年生で30日程度で半分が出ていく。
http://www.asahi.com/national/update/1024/TKY201110240656.html




放射性セシウムは大気経由で大地を汚染し,生態系の流れに乗ってしまったので,福島県に限らず,多くの人の体内に取り込まれていることは疑いようがありません。もちろん,筆者の体内にも放射性セシウムは入り込んでいることでしょう。あの原子力災害からこれだけの時間が経過して,ようやく放射性セシウムによる体内被曝が明らかになってきました。上の記事の数値が正しければ,一人の体内に1000ベクレル程度の放射性セシウムが存在することになります。体内の放射性カリウムの存在量(6000-8000ベクレル)からみて,それほど多い量ではないので,健康上のリスクは個人の被曝としてはまず問題にはならないだろうと思います。

しかし南相馬の子どもさんたちは,皆,放射性セシウムを取り込まないように努力して生活していたはずです。それでも放射性セシウムが体内から検出されると言うことは,いかにこれらの物質の排除が難しいかを示しています。

もし事故直後に呼吸で取り込み,その後の取り込みがないとするならば,概算で,事故直後は一人の体内に1万〜10万ベクレルの放射性セシウムを含むという値になります。このときは放射性ヨウ素も多量に存在していましたから,数十万ベクレルもの放射性物質が体内に存在したことになります。事故直後の取り込みが少なく,主に毎日の食事などから入り込んだとするならば,毎日の摂取量は概算で数ベクレルから10ベクレル程度でしょう。その程度の摂取量でも,体内からの排出に時間がかかるので,多少は蓄積されてしまうのです。

今回のような調査が数多く行われ,放射性セシウムの体内への蓄積が明らかになれば,食品の放射性セシウム暫定基準値の見直しも行われる可能性があります。いまの子どもたちには,放射能にまみれた日本しか用意されていません。彼らの体内に入る放射性セシウムをできるだけ少なくするよう大人が行動しなければなりません(文責/MWS)。








2011年10月25日


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 油浸暗視野コンデンサはオイルの拭き取りが面倒です。ステージも汚しますし,スライドグラスもオイルで汚れます。拭き取りの手間が無視できないのです。しかし油浸でこそ本来の性能を発揮するので,性能限界付近の検鏡を行う人は油浸を面倒がらずに行うことが大事です。さて,この油浸暗視野コンデンサは,ほかの液体でも使うことができます。水でもグリセリンでもOKです。開口数0.95程度までの乾燥系対物レンズを用いて暗視野検鏡を行うのであれば,水でも大きな問題は起きません。上の画像がその例ですが(DDM-STDを使用),鮮明で品のある画像が得られています。拭き取りも楽で,とても便利です。照明開口数を上げたいときには濃グリセリンを使います。水(精製水)やグリセリンはドラッグストアで入手できます。水道水は蒸発したときに固着性のシミを残し,これを除去することは不可能です。コンデンサもスライドも傷めますので,水道水は使わない方がよいでしょう(画像/MWS)。








2011年10月24日(2)


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 (株)フジコーガクのサイトでハロゲンランプのオンライン販売が行われています。顕微鏡では,照明用ランプが像の品質を左右しますので正しいランプを選択することが大事です。しかし市販のランプはひじょうに多くの品種があり,また顕微鏡もいろいろな機種がありますので,どの機種にどのランプが光学的にベストなのかを知るのは,そう簡単なことではありません。専門家でも間違えて使っている場面を時折見かけるほどです。(株)フジコーガクのサイトではこのことに関して詳しい情報があるばかりでなく,会社の代表取締役も顕微鏡好きな方なので,顕微鏡のランプでお困りの方はぜひご利用をお薦めいたします。サイトはこちらです(画像/(株)フジコーガク様のスクリーンショット)。








2011年10月24日


千葉・柏の高線量、文科省「原発の影響の可能性強い」

 千葉県柏市の空き地から毎時57.5マイクロシーベルトの高い空間放射線量が測定された問題で、近くの側溝が破損し、そこから漏れ出た雨水が地中に浸透しているとみられることが文部科学省の23日の現地調査で分かった。雨水に含まれた放射性物質が地中に蓄積された可能性があり、同省の担当者は「東京電力福島第一原発事故の影響の可能性が強い」との見方を示した。
 柏市は22日、地中30センチの土壌から1キロあたり27万6千ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。文科省によると、側溝はコンクリート製で、破損部分の周辺の土壌から高い線量が測定された。採取された土壌の中のセシウム134と137の比率が福島第一原発事故で汚染された土壌のものと似ているという。
2011年10月23日17時29分
http://www.asahi.com/national/update/1023/TKY201110230180.html




これはなかなか説得力のある説明です。道路表面や屋根に落ちた放射性物質はその多くが側溝などを経由して下水に入ります。当然,側溝や下水管が破損していればそこから染みだした放射性物質により周囲が汚染されます。現在,関東周辺では地表面で測定して0.1μSv/h程度のところが多いですが,生活排水の流路では高濃度の汚染になっていて,それが地下であるために見えないだけです。この記事の説明が正しい場合,このような場所は他にも見つかる可能性があることになります。また面倒くさい現象の一つが明らかになったということでしょうか。 

上の記事の説明は放射性物質の濃縮については合理的に見えますが,57.5μSv/hという高線量の説明としては弱いように感じられます。まだほかの原因もあるかもしれませんので,事態の経過を見守りたいと思います(文責/MWS)。








2011年10月23日


柏市の市有地、地下土壌からも27万ベクレル

 千葉県柏市根戸の市有地で毎時57・5マイクロ・シーベルトの放射線量を検出した問題で、市は22日、地表から約30センチ下の土壌から、1キロ・グラムあたり最高で27万6000ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。
 市は「原発事故との関連は低いとみられるが、非常に高い数値なので国の指導の下で特別な対策を考える」とし、文部科学省と共に原因を解明する方針。
 土壌サンプルは地中30センチで2か所、地表面1か所で採取。最高値の内訳はセシウム134が12万4000ベクレル、セシウム137が15万2000ベクレルだった。地中の別の1か所は19万2000ベクレル、地表面は15万5300ベクレルだった。放射性ヨウ素などは検出されなかった。
 柏市の清掃工場では6月、焼却灰から7万800ベクレルのセシウムが検出されたが、今回はこれを上回る高濃度。国は、10万ベクレルを超す焼却灰を埋め立てる際、放射線遮蔽(しゃへい)のためのコンクリート壁の厚さを確保し、長期の安全性に配慮するよう都道府県などに通知している。
(2011年10月22日20時41分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111022-OYT1T00707.htm




今回の原子力災害により放出された放射性セシウムの同位体比は,セシウム134とセシウム137で1:1程度とされています。この比率は放出時のもので,セシウム134は半減期2年程度で,セシウム137は29年程度ですから,だんだん比率が変化していきます。ところで,上の記事の放射性セシウムの同位体比はほとんど「1」に近い値です。しかもγ線を放出する主要な核種はセシウムのみのようです。ということは,「原発事故との関連が濃厚」と見ることもできます。なぜこのようなことが起きるのかは推測の域を出ませんが,

・原発由来の放射能を含む物体を誰かが埋めた
・放射能を含む昆虫が飛来して30センチ潜った
・鳥が放射性セシウムを含むフンをした
・特別にセシウムを濃縮する生物が存在した

などが考えられます。もちろんどれも当たっていないかもしれません。今回のマイクロホットスポットは,これまで報道されているものよりも一桁高いレベルのものなので,もし原発由来のものであったなら,由々しき事態です。ぜひとも原因究明をしていただきたいと思います(文責/MWS)。



* アップ後にニュースを見てみると,原発との関係も疑われはじめたようです。当然です。(201110222350)






2011年10月22日


河川・井戸水への影響小=放射能調査結果を公表−文科省

 東京電力福島第1原発事故で、文部科学省は20日、福島県内の河川や井戸水に含まれる放射性物質の濃度を調査した結果を公表した。検出濃度は、セシウム137で最大1キロ当たり2ベクレルで、同省は飲食物摂取制限の暫定規制値(同200ベクレル)と比べ非常に少ないとしている。
 文科省は、原発20キロ圏内を除く、放射性セシウムの蓄積量が比較的高い場所から、河川水50カ所、井戸水51カ所の採水場所を選定。梅雨を挟んだ6月下旬〜7月初旬と8月初旬の2回、同じ場所から水を採取し、放射性物質の濃度を調べた。
 その結果、河川では43カ所からセシウムが検出されたが、最大でセシウム134が1キロ当たり1.9ベクレル、同137は同2ベクレルだった。井戸水は6カ所で検出。セシウム137で同1.1ベクレル、同134で0.85ベクレルが最大だった。(2011/10/20-20:46)




このような調査報告が誰でもアクセスできるようになったのは評価できることです。また関係者の努力にも頭が下がります。さて,原発から20km以上80km以内の地点から採取された河川水,井戸水の汚染状況が上記の記事です。確かに,暫定基準値よりもずっと低く,これを毎日飲んだとしても,半年後の体内への蓄積は最大200〜500ベクレル程度でしょうから,放射能汚染としてはそれほど大きな値ではありません。それは記事が語る通りです。

しかし同じ土地に住む人が,地元の野菜などを食べて,毎日10ベクレル程度の放射性セシウムを取り込むとすると,これらの足し算で効いてきますので,体内への蓄積は1000〜2000ベクレル程度になる可能性があります。人体は放射性カリウムなどを元々もっていて,これが6000ベクレル程度はありますので,それから考えると危険性を議論できる値ではありませんが,体内の放射能レベルに対して有意な値の放射能を付加するのは,良いこととはいえません。

生物濃縮を考えるとさらに問題があります。1キロあたり1ベクレルの放射性セシウムを含む水であれば,すでに本欄の5/15の記事で述べたように,魚類には1000倍から10000倍に濃縮される恐れがあるのです。

確かに,水に含まれる放射性セシウムの値だけ見ればかなり低いのですが,放射能汚染が過ぎ去ったと考えるレベルからはほど遠いというのが筆者の認識です。なお,発表資料はこちらになります(文責/MWS)。








2011年10月21日


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 水封プレパラートの珪藻を透過明視野で検鏡すると,コントラストがほとんどなく,かすれたように見えます(画像1枚目)。デジタル画像では256階調のごく一部しか使っていません。しかし像はできていますので,低いコントラストを画像処理で修正すれば,高屈折率の封入剤で封じたような画像を得ることができます。画像2枚目がその例で,最初の画像をもとに,ヒストグラムを引き延ばしたものです。つまり白いところは白(255),黒いところは黒(0)にするようにしています。階調を広く使いますからコントラストがアップします。画像3枚目は直接ヒストグラムを操作してコントラスト強調を行ったものです。低コントラストの部分がさらに浮き出てきます。このように,デジタル時代にあっては,画像処理を併用すれば無染色の透明物体ですら,コントラストの高い画像として表現できるようになっています。銀塩時代でも,ミニコピーフィルムなどを用いればこのようなことは可能で,さらに質の高い絵が得られましたが,技術的にはそれほど簡単なものではありませんでした。現代では,それが,誰でも手軽に簡単に早く行えるようになりました。このことの意味はとても大きいと思います。画像中心に写っているのは,スケレトネマ属の珪藻です(画像/MWS)。








2011年10月20日


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 これは東京湾のプランクトン試料です。2009年1月に採集したものを水洗いしてエタノール中に保存しておいたものです。これを水で封入しています。標本の保存状態はよく,珪藻などもあまり破損せずに残っています。カイアシ類も形がよく保たれています。しかしエタノールでは脂溶性物質が抜けますので,葉緑体や,カイアシ類の油球のような脂質成分は消えてしまいます。植物も動物も無色の状態になっています。このような低コントラストの透明標本を詳細に検鏡するには,偏斜照明や,位相差法や微分干渉法,暗視野法などが適しています。きょうの画像は偏斜照明の一例です(画像/MWS)。








2011年10月19日


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 さいきん,筆者謹製のイクラしょうゆ漬けをお試しになった方から,イクラ丼の作り方を聞かれることが多くなりました。一般的な質問ではなく,筆者がつくっているものと同じ味にしたい,ということらしいので,きょうはその作り方を書いてみます。ちょっと顕微鏡の話題とはかけ離れ過ぎていますが。。

イクラ丼の原料は鮭のハラコです。生筋子,などと称して販売されています。都内などでは100gで398円〜598円程度が多いです。たまにそれが三割引とか,半額になっていてお買い得だったりもします。それを買い求めるわけですが,選び方はけっこう難しいかもしれません。いかにも新鮮そうな,鮮やかなオレンジ色で玉子が濁っているものが,良質なことが多いと思っています。これらの品物も放置するとだんだん透明になってきます。粒の大きさは好みですが,シーズン終わりの大粒のものは,皮が固いことがあります。この辺りをポイントにしつつ,お魚売り場を見渡して,新鮮な鮭の切り身がずらっと並んでいたら,並んでいるハラコもよいものだと判断できますので,買いです。せっかくつくるのでしたら,大きなハラコを2パックぐらい買いましょう。

ハラコは次の手順でほぐします。まず,50〜60℃くらいの湯を2リットルくらいつくります。水道水は使いません。最低でも浄水器を通して塩素を抜いた水,それが面倒なら市販のミネラル水を使いましょう。お湯ができたら塩を投入します。塩も精製塩は角が立ちますので不可で,天然塩を使います。塩分は適当ですが,少し塩気を感じる程度でよく,あまり濃すぎないようにしましょう。

お湯(塩水)を適量ボールに入れ,そこにハラコを入れます。温度は,ハラコ2パック分を入れてもなお40℃くらいあるのが好ましいです。ハラコの切れ目を指でなぞり,粒々を指の腹で撫でるようにしてかき出します。最初はなかなかほぐれませんが,途中から急にばらけるようになってきて,時間もかからずにほぐれます。卵を支持していた部分は一つの塊のようになりますので,卵が残っていないか触って確認して,捨てます。2パック分,この操作を行います。この間,お湯は取り替えません。

卵がほぐれたら,一緒に紛れているカスを取り除きます。水をかきまぜ,浮いてきたカスや破れた卵の皮などを茶こしを用いてすくい取ります。卵も時々混ぜて,付着している残渣をとります。あまり時間をかけずに,完璧を目指さずに,数分で終わらせます。すぐにザルにあけて一度水を切ります。これをボールに戻し,残ったお湯(塩水)を入れ,カスを茶こしですくい取ります。この作業は1分程度で終わらせ,すぐにザルにあけます。ザルは少し傾けた方が水が残りません。

漬け汁は次の手順でつくります。

日本酒(上等で新鮮なもの,料理酒不可)を小鍋に入れて昆布を放り込みます。30分以上放置します。分量は適当ですが,このくらいのハラコにこのくらいの昆布を入れれば,多少うまみが追加されるだろう,と思うくらい入れればいいです。昆布をもどしたら,しょうゆを入れます。しょうゆも上質なものを使うと良いです。これも分量は適当ですが,この段階でしょうゆの3〜4倍希釈という感じでしょうか。

しょうゆを入れたら小鍋を火にかけて沸かします。こんぶは浸かっていれば入れたままで構いません。沸いたら火をつけてアルコールを飛ばします。このとき,小鍋は火にかけたままにして,火加減で鍋から立ち上がる炎の大きさをコントロールします。徐々に火を強めていって,できるだけアルコールを飛ばして煮きります。鍋の炎が消えて燃えなくなったら加熱を止めて冷まします。

一時間程度水を切ったハラコを容器に移し,漬け汁を注ぎます。味の加減がわからないときは,少なめにします。これを冷蔵庫のチルド室に保存します。4〜5時間経過したら一度味見をします。最低でも10粒程度は口に含んで塩分を判定します。イクラ丼といっても,「玉子かけご飯(TKG)」ですから,TKGの塩加減でよいです。味の判定に自信がなければ,少量のご飯にイクラを載せてたべてみます。うま〜い,と思えればOK。もうちょっと味の追加,と思えば漬け汁を足します。これでイクラのしょうゆ漬けはできあがりです。半日漬ければたべられますが,一日から二日後くらいが,こなれた味でおいしいですね。

あとは暖かいご飯に載せるだけでイクラ丼のできあがりです。炊きたてがおいしいですけど,再加熱でも問題ありません。炊きたては温度が高すぎるので,適当に風を通してから,焼き海苔をちぎって敷いてその上にイクラを載せれば上出来。ネギのみじん切りや,キュウリの千切りなども,さっぱりしてよいでしょう。これだけだと炭水化物の塊をかぶりつくことになって,健康上よくありませんので,ワカメの酢の物や,煮キャベツ,豆腐などのおかずも一緒にしましょう。

このイクラしょうゆ漬けは,チルド室で4〜5日程度は保存できますが,味が落ちますので,ハラコの購入時を起点として3日以内程度を目安に消費することをおすすめします。イクラだけを載せるのでは味が単調ですから,ほかのものもトッピングして,海鮮丼を楽しむのも一つの工夫です。おすすめの素材は,スルメイカ,ヤリイカの薄切り,メバチマグロのそぎ切り,ホタテ貝柱の薄切りをワサビじょうゆで味付けしたものです。このときは焼き海苔がよくあいます。ちょっと目先が変わったところでは,良質の,という条件付きですが,アジの干物を焼きほぐしたもの,塩鯖を焼きほぐしたものが抜群の相性です。サケのハラスやカマの部分も良いのですが,養殖物の脂まみれのものが多く,よいものにめぐり合う機会はそれほど多くない印象です。ささ,秋は足早に過ぎます。おいしいイクラ丼を味わいましょう(画像/MWS)。



*1 イクラをほぐす上で大事なことは,味が抜けないように配慮すること,具体的には手早くやること,水を使いすぎないことです。

*2 水道水は蛇口でも有効塩素が残るように塩素が添加されています。この塩素がデリケートな食品の風味を奪うので,塩素を含まない水を使うといいです。

*3 イクラをきれいにするために何度も水をかえると味が落ちることがあります。多少のクセをうまみに換えるのも料理のテクニックかもしれません。

*4 漬け汁は余っても使えますので,多めにつくってもいいでしょう。煮きり酒にこんぶとしょうゆですから,煮物にもOKですし,漬け物に少しかけてもおいしいのです。繊細な味の白身魚の刺身(コチなど)にもOKですね。

*5 漬け汁はみりんを加える作り方もありますが,ごはんの甘味を損なうように思いますし,イクラの風味が少し変化します。みりんを使う人は細やかな味見が必要かもしれません。

*6 日本酒を煮きらずに使う(直接注ぐ)方法もあります。この漬け汁でもおいしいのですが,酒の風味が勝り,イクラの味がわかりにくくなります。

*7 このイクラ丼に合うのがきのこのつくだ煮です。市販のなめたけも良いですが,自分でもつくれます。市販のエノキダケとヒラタケを適当に切り,浅い皿に並べて電子レンジをかけます。一パックにつき,900Wで2.5分程度です。これで人工香料が飛びます。チンしたきのこは深い鉢に入れ,酒としょうゆを入れてチンします。煮詰めてできあがりです。ひじょうにおいしいきのこ煮のできあがりです。これをイクラとともにトッピングすれば,秋らしい素敵な丼ものになります。

*8 ここに記した方法は,筆者がいろいろな情報を参考にしつつも,勝手に考えた,いい加減なものです。もっとおいしいイクラ丼を作れる人は,たぶん日本には一万人くらいはいると思います。筆者が足りないと思っていることはたくさんありますが,中でも不満が大きいのは,米の銘柄の吟味と,ご飯の炊き方,水の質です。良い米を良質な伏流水で炊いたご飯ならば,その美味しさは一桁アップします。

*9 筆者は6〜8歳の頃にNHK「きょうの料理」を二年分読破しましたので,料理を作るときはレシピを参考にしません。その料理の雰囲気をつかみ,作り方を読んだら,あとは本を閉じます。計量など一切抜きで,自分でつかんだ雰囲気を目指して料理をつくります。料理の先生からみたら怒られそうなやり方ですが,レシピ通りに忠実につくって,しかし味見をしない人よりは,まともなものができると思っています。

*10 イクラ丼など,料理と言っていいのかわからないほど単純なものですが,まじめにつくるとけっこう奥が深いものです。筆者は,顕微鏡標本をつくる注意深さと同じくらいの労力を投入して,ご飯をつくります。このイクラ丼の記事に職人魂を感じた方は,筆者製作の珪藻プレパラートの真価を理解していただけることと思います(^^)。

*11 おっと書き忘れました。このイクラ,冷凍できます。一ヶ月程度であれば風味の低下もそれほどではありません。海鮮丼の脇に添えるなど,使い途はいろいろあるでしょう。

*12 余って困った場合は,味噌汁の具にしましょう。得も言われぬコクのある卵の味が楽しめます。

*13 商売かえた方がいいんじゃないかって? それを言っちゃあおしめーよ(^^)。ワハハ。






2011年10月18日


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 17日の晩は月がすばるの近くできれいだったので,発作的に撮影したくなり,じつに10年振り?くらいに月を撮影しました。小中学生の頃は,かなりまじめに,赤道儀に屈折式天体望遠鏡を載せ,アイピースで投影した像を一眼レフで撮影していました。露出はもちろん筒先開閉です。この体験が筆者の顕微鏡写真撮影の基礎になっていることは言うまでもありません。あれからかなりの年月が経ち,いまは5インチアポを簡易三脚にのせ,コンパクトデジタルカメラでコリメート法,露出はオートでシャッターはセルフタイマーで切っています。かなり手抜きの画像で,ここで紹介するのはひじょうに恥ずかしく,天体写真の得意な方なら,おや下手くそだねぇと微笑んでくれるでしょう。たまには恥をさらします。

月はいつ覗いても面白く,いつでも想像を上回る刺激があります。数え切れないほど見たはずなのですが,飽きがこないのです。でも,画像にすると,ずっと眺めていられるほどの印象を受けません。きらめきと言うか空気感というか,何かが写っていないのです。生(なま)の光というのは,心に響く何かを持っているような気がします(画像/MWS)。








2011年10月17日


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 すでにご存じの方も多いことと思いますが,ニコンから新しいシリーズの対物レンズがリリースされています。今回のレンズは,CFIプランアポクロマートλシリーズという名称です。レンズの各エレメントに何面かはわかりませんが,ナノクリスタルコートを採用したという製品です。ナノクリスタルコートは反射光の波長依存性を小さくできますから,幅広い波長域において透過率の高いレンズができます。したがってフレアの少ない,高コントラストの像が得られるというわけです。油浸対物レンズの開口数も1.45まで拡張されています。こういう魅力的な製品を出されると,欲しくなるので,困ります(^^;。色収差補正はg線からのようで,この点は旧製品(NCFの時代)と同じようです。もし,これでi線からの収差補正だったら,なけなしの銭を叩いて衝動買いするかもしれず,危険です。顕微鏡の性能はすでに19世紀初頭には,ほぼ理論値に達していて,そのことを証明する写真も残っていますが,小さな進歩は絶えず続いていて,今回の新型対物レンズもその一つに数えてもいいでしょう。メーカーさんの努力に敬意を表する次第です。

上の画像はこの新型対物レンズのカタログの一部です。珪藻が写っています。仕事で顕微鏡を使う人で,珪藻を検鏡している人など,たぶん0.1%もいないと思います。にもかかわらず対物レンズのカタログに珪藻の画像が掲載されるのは,レンズの収差状況をみるのに,最適な標本だからです。低コントラストの細線が刻まれる珪藻を検鏡すれば,どんなに立派な能書きに粉飾されたレンズでも,その真価がばれてしまいます。ニコンでも,新型対物レンズの性能を確認するために,通常の多層膜コートの対物レンズとナノクリスタルコートのレンズを並べて,珪藻を比較検鏡したに違いありません(画像/MWS)。








2011年10月16日


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 15日は震災と海に関するシンポジウムに参加しました。本コーナーで情報を流している者としましては,新しい情報を専門家から聞いて,頭の中をいつも校正(キャリブレーション)しておくことが大事と考えています。シンポジウムでは,地震と津波に関する概要,津波の沿岸生態系の影響,原子力災害による放射性物質の拡散状況,海洋おける放射性物質の生物への移行などが話題提供されました。特段に目新しい情報はありませんでしたが,多数の仕事がよく集約されている印象があって,時間の過ぎるのも忘れて講演を聴きました。非常に有意義であったと感じました。会場は母校であり,数年前に非常勤で通っていたところでもありましたので,知人と十数年ぶりに話しができたり,筆者の講義を受講したという学生さんが,筆者が講じた分野に進んで立派な大学院生になっている姿も見ることができ,嬉しい思いをしました(画像/MWS)。








2011年10月15日


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 スイスFONTAX社のピンセットは精密な作業に欠かせない道具です。筆者はこれのNo.3,taxalを常用しています。鋭い刃先,カッチリと合う使い心地,そして何より,コシの強さが絶妙です。2,3本が机の上に転がっていて,種々の用途に使います。磁化しないので砂鉄のようなものもピックアップできますし,刃先の精度がいいので,カバーグラスに落下したホコリを取り除くのにも使えます。一本一本形が違いますが,使った調子はほとんど同じことに感心します。

このピンセットを供給するFONTAX社が生産休止するという話しが何年か前に流れましたが,現在も入手できるのか気になり,アズワンのカタログをみてみました(上の画像)。たぶんこれがFONTAX社のピンセットだろうというページには辿り着きましたが,どこを見てもFONTAX社のピンセットという明確な表示がありません。taxal製との表示はあるので,FONTAX社のものに違いはないだろうと思います。web上を漁ってみると,FONTAX社のピンセットを扱う会社は,ほとんど販売休止か在庫販売のみとなっており,そこから考えるとアズワンのカタログも在庫販売分をメーカー名なしで記載しているのかもしれません。

このピンセットを使うものとしては,供給先がなくなることはたいへん困ります。あと数本欲しい気もしますが…うーむ。このメーカーの主要ピンセットを揃えるだけでも大変な金額になります。額縁に入れて飾るために買うと考えればいいのか…。

この話を電子工学の専門家にしたところ,やはり彼もFONTAX社のNo.3を愛用していました。FONTAX社の職人がほかのメーカーに移って同じピンセットを供給してくれるだろうか,と疑問を投げかけたところ,彼は次のように答えてくれました。「たぶん,このピンセットはどこかの段階で金型を使っていると思う。その金型をほかのメーカーに持ち出せるかどうかがポイントになるだろう」と。なるほど,そのように考えるのかと感心しました。

もし彼の言うとおりなら,再生産は厳しいだろうと予想できます。でも4本の持ち合わせがあるので研ぎ直して使っても100年は大丈夫な気もします。でも床に落として刃先を損傷したら一巻の終わりです。ふーむ。カタログとのにらめっこがしばらく続きそうな予感です。このピンセットをまだ使ったことのない方は,早めに入手しておいたほうがいいかもしれませんね(画像/MWS)。








2011年10月14日(2)


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 いまオジサン世代以降の方々は,ハンダゴテを握ったことのある人も多いことかと思います。きょうの画像は,そんな方々のバイブルの一つです。工作というのは材料と設計図があればできあがるというのは希で,いろいろな道具を上手に使いこなしたり,ちょっとしたテクニックで困難を乗り切ったりして,目的地に辿り着くものです。ところが,世の中には道具の使い方について述べた本は少なく,ちょっとしたテクニックやノウハウを知ることが結構難しいのです。そこに目をつけて書かれたこの本は,当時の方々には大いに役立ったに違いありません。筆者は電子工学の専門家から10年ほど前に教えてもらい読みましたが,ぜひとも学生時代以前に知っておきたかったと思いました。電子工学の専門家の人は,学生時代に先輩から教わったとのことです(画像/MWS)。



*1 この本,先日のプランクトン学会の懇親会でご一緒した,M大学の大学院生に紹介したくてここに載せました。見ておられるでしょうか。その院生の方は,鞭毛藻の研究をしておられ,機械の分解が大好きで,筆者のJシリーズを見て「つくってみたい」と思ったそうです。誰か,その院生に,「本日の画像を見ろー」とひとこと言ってやってください。

*2 当時は電子工作など,けっこうポピュラーな趣味でした。ちょっとしたトランジスタ回路などをつくってみて楽しんだものでした。中学3年の技術科の時間にも,インタホンの製作があって,日頃の成果をいかして完成一番乗りを競ったものでした。手持ちのラジオが壊れると分解してみて,接点不良を見つけ,はんだ付けで修理したり,メーターを載せ替えたり,電球をLEDに交換したりしたものです。いまは部品が小さくなってしまって集積度も進み,ゴミを分解したり手元のものを修理するなどの遊びで電子回路を学ぶのは,かなり難しくなってしまいました。





2011年10月14日


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 都内近県各地で"高放射線量"の場所が見つかったとニュースが騒いでいますが,これは当然のことです。筆者もすでに八月下旬に,文京区内の民家で画像のような値を得ています。道路脇などの地面上では,0.5μSv/h程度の値は,100メートル圏内でもどこでも見つかります。小学校に面した道路でさえ,高い値が見つかります。小さな面積であれば,関東以北にはこのようなホットスポットはどこにでもあると思った方がよいでしょう。

今回の原子力災害以前における東京の放射線量は,0.036μSv/h程度です。現在は,筆者の身近なところ(文京区内)で,空の開いている,放射能の集まらないところの地上の値を測定すると,0.15μSv/h程度がふつうの値です。すると,大雑把にみて,筆者の周囲では0.11μSv/h程度の放射能が新たに降ったことになります。もし屋根に放射能が振り,これが雨樋に集められ,一ヶ所に溜まるようなことがあれば,当然,その場所の放射線量は高くなります。

たとえば,100平方メートルの屋根に降った雨が,4本の雨樋で排水されるとして,それぞれが一平方メートルの土に染みこむとすれば,放射能が100%輸送されるとして,濃縮率は25倍です。筆者の周辺の値で計算すれば,0.11μSv/h×25=2.75μSv/hということになります。不思議でもなんでもありません。

関東の大都市圏はコンクリートや屋根が多く,放射性セシウムが雨に流されやすいといえます。土に直接固定される放射性セシウムは,郊外よりは少なかったと思います。しかし雨に流された放射性物質の行き先が問題です。都区内では雨樋の多くが下水管に接続されています。下水管は放射能の通り道になっています。下水処理場には高濃度の放射性物質が集積することになりますし,放流先の水系にも,洪水時には放射性物質がたれ流しになります。

現在,福島第一原子力発電所からの放射性物質の放出はかなり少なくなっていて,周辺地域に大きな影響を及ぼす量ではありません。しかし汚染を受けた地域では,放射性物質の再移動,拡散,濃縮など複雑な現象が起きており,今後も新たな汚染地域が発見され続けることになります。長期間にわたるモニタリングが必要です(画像/MWS)。



*1 世田谷区の放射線騒ぎは,その発生源の一つが民家に保管されていたラジウムのようです。放射線騒ぎを聞いたとき,地表よりも空間線量が高いとのことだったので,これは原発以外の線源だろうと思いました。雨水を大量に集め,その沈殿物を地上から離れたところに集積するような構造がないと,今回の騒ぎのようなことにはなりにくいからです。原子力災害以降,国内では,放射線源を隠すことは難しくなりました。過去のいい加減な管理により放置されている線源は,これからも見つかることと思います。





2011年10月13日


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 入手した切り出しはこんな感じです。薄い全鋼製の板に,丸っ刃がついており,裏は一度平面研ぎしたあとに,糸裏をつけるべく直線的に掘られています。そうです。廃品利用の手作りの切り出しなのです。鋼材はかなり大型の金属切断用のノコギリだと思います。かろうじてKOBE STEELの文字が見えますので,神戸製鋼のむかしの特殊鋼ではないかと思います。ハイスの切り出しが欲しかったので,なんとも最高の素材を手にした気分です。刃のつけ方や裏の作り方などを見ると,製作者の刃物に対する考え方がわかるようで,じつに興味深いです。研ぎはそれほどぴしっとはしていませんが,刃はついており,竹を削ってみたところ実用上問題のない切れ味を示しました。これをつくった人は,刃物に対してこだわりのある,腕の良い職人さんだったに違いありません(画像/MWS)。








2011年10月12日


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 全国の研ぎファンには周知のように,秋はなにしろ研ぎの季節でありますので,せっせと研ぎ物に精を出さねばなりません。そのためには材料調達が大事ですので,骨董市をのぞいてきました。たまに行くと多少は品物の入れ替わりがあって,たのしい時間を過ごせます。骨董市の面白さは,なんといっても道具箱の中身をひっくりかえしながらあれこれ探すことにあります。何が出てくるかわからない,新しいものに出会える,そんな理由かもしれませんがよくわかりません。でも,手を黒くしながら金物をゴソゴソと見定めるのはじつに集中できる時間です。今回は,切り出しが一本みつかりましたので,お持ち帰りとなりました。値札がないので,それとなくジャンク品であることを匂わしながら店主と交渉。タクシー初乗り運賃くらいまでは覚悟していましたが,その半額でいいという。かみ殺した笑いは,自転車に乗りながらフンフンと発散して,お魚と海藻をたくさん買って,ますます気分がよくなって帰宅しました。秋らしい素敵な休日でした(画像/MWS)。








2011年10月11日


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 今回の原子力災害で降り注いだ放射性物質は,その多くが降雨と一緒に落ちるレインフォールアウトの経路をとったようです。このことは各自治体が発表している放射性降下物のデータをみてもわかりますが,身のまわりの放射線を測定してみてもわかります。画像一枚目は,室内の観葉植物(ベンジャミン)の植木鉢が発するガンマ線量ですが,10月9日時点でバックグラウンドと全く区別のつかない0.08μSv/h程度の値を示します。画像二枚目は,ベランダ南側で雨のかからないところに置いてあるキンカンの植木鉢が発するガンマ線量ですが,これもバックグラウンドと区別がつかない値を示します。画像三枚目は,雨があたる北東方向のベランダに置いてあるユズ(ハナユ)の植木鉢が発するガンマ線量で,こちらは有意に高い値になっています。画像四枚目は,同じく雨があたる北東方向のベランダに置いてあるサルナシの植木鉢が発するガンマ線量で,こちらも有意に高い値になっています。外に置いてある植木鉢のうち,雨に曝されたものだけが放射性セシウムに汚染されています。

放射能汚染を受けてしまった植木鉢は,5000ベクレル程度の放射性セシウムを含むであろうと思われます。これの10パーセントが植物体(樹木全体)に移行したとしても,500ベクレル程度なので,仮にその1%の重量のユズの実を丸ごと食べても,危険となるような放射線量にはならないだろうと判断することはできます。実際には植物体にはあまり吸収されず,鉱物に吸着されたままになると予想されますので,まず気にすることはないと思います。しかし,都内でも,植木鉢に雨があたっただけで,この程度の放射性セシウムで汚染されてしまうというのは,じつに不愉快な出来事と言わざるを得ません(画像/MWS)。








2011年10月10日


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上の画像は筆者が育てているアロエの根が発するガンマ線を測定しているところです。このアロエは雨水の有効利用の一環として,雨水の排水パイプを水源として育てていたものです。排水パイプの水が植木鉢の皿に入るように置いて数年経過したところ,アロエの根が鉢からはみ出てきて,直接排水パイプの近くに絡んできました。その部分を切り取って測定してみたのです。土は少しだけ付着しています。

測定結果はご覧の通り恐るべきもので,0.488μSv/hもあります。当室(東京都豊島区南大塚)のバックグラウンド値は0.08程度なので,アロエの根が発しているガンマ線は0.408μSv/hということになります。0.007μSv/hが500ベクレルに相当するという,かなり大雑把な換算係数がありますので,これを適用して計算してみると,この泥付きのアロエ根は2万9千ベクレルということになります。

じつに驚異的な値ですが,これが放射能汚染の現実です。残念なことに,放射能の雨が降ったところでは,雨を集めれば,それは放射能を集めることになってしまうのです。雨水を集めたり溜めたりして,散水に利用している人も多いことでしょう。家庭菜園に使っている人もおられるかと思います。心配な人は,土の放射線量を測定したほうがよいと思います(画像/MWS)。



*1 このアロエは時々食べていましたが,今回の原子力災害後は利用していません。よかった…。多少の放射性セシウムの蓄積はあるだろうと甘い見込でいましたが,実際測ってみて卒倒しそうになりました。これが土ならセシウムを吸着しやすいので驚かないのですが,植物本体からガンマ線が出ているのが計測できているので,とんでもないことです。

*2 この記事はアロエなので大したことがないと思っている人もいるかもしれません。しかしこの200グラム程度の根からこれだけの放射線が出ているということを重く見て下さい。この200グラムがイモだったら,ぺろりと食べてしまうでしょう。じっさい,このアロエの横では,雨水栽培でヤマノイモを育てていますが,200グラム以上の収穫になります。収穫して食べたこともあります。もしそれに3万ベクレルの放射性セシウムが入っていたらと思うとぞっとします。これだけの強力な放射能になると,測定器を当てただけで,いまお腹のどこに放射性セシウムがあるかわかるほどのものです。筆者が500ベクレル/kgを越える放射能人間になってしまいます。シャレになりません。この10年間の努力と楽しみは,放射能によってすべてゴミとなりました。





2011年10月9日(2)


乾燥シイタケ、再検査も基準超す 静岡産、セシウム検出

2011年10月9日0時49分

 静岡県伊豆市内で収穫、加工された乾燥シイタケから、業者の自主検査で国の基準を超える放射性セシウムが検出された問題で、静岡県は8日、登録機関による再検査を行い、基準値を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。230キログラムが同県東部、横浜市などの神奈川県、東京都の小売店などに出荷され、一部が消費されたという。

 基準値は1キロ当たり500ベクレルで、検出されたのは599ベクレル。静岡県によると、乾燥シイタケから基準を超える放射性セシウムが検出されたのは全国で初めて。県は伊豆市内で3月11日以降に収穫、加工された乾燥シイタケの出荷自粛、自主回収を関係者に要請した。

http://www.asahi.com/food/news/TKY201110080669.html





きのこが放射性セシウムを濃縮しやすいことは本欄で繰り返し述べてきたことです。当然,上の記事のようなことも起こりうるのです。ただし,注意して欲しいのは,この記事の値は乾燥重量あたりということです。これまでの,きのこの放射性セシウム蓄積の記事では,ほとんどが,質重量あたりなので,直接比較してはいけません。上の記事のシイタケは,もしも,生シイタケなら,一キログラムあたり数十ベクレルで,出荷可能なものです。乾燥すると濃縮するので,高い値に見えるだけです。

もちろん,今回の原子力災害以前でも,チェルノブイリ原子力発電所事故のときに決められた暫定輸入基準値(370Bq/kg)というものがあり,これを越えた乾燥きのこは輸入禁止になったのです。ですから,現在の暫定基準値(500Bq/kg)を超えた干しシイタケを流通させないのは,当然の措置です。

不幸にしてこのシイタケを食べてしまった方は,どのように考えればよいのでしょうか。筆者は,次のように考えればよいと考えます。まず,干しシイタケをそのまま囓って食べるのが大好きな人で,干しシイタケを一週間に一キログラムも食べてしまうような人は(そんな人は見たことありません),あまり良いこととは思えませんので,もうちょっと控えましょう。ふつうに,干しシイタケ数個を水に戻して,きのこと戻し汁を煮物に使ったような人は,暫定基準値よりもはるかに低いシイタケを食べたと解釈し直してください。水に戻すというのは,湿重量の測定状態にもどすということです。シイタケなら,収穫時の状態よりも重くなります。干しシイタケ数個は数十グラムで,そこに含まれる放射性セシウムは,数十ベクレル以下です。体調を損ねるのでは?という意味では,筆者は,まったく気にするレベルではないと思います。

さて,この記事はもう一つ重要なことを暗示しています。伊豆半島で,シイタケの湿重量あたり(つまり生シイタケと同じ)で数十ベクレル/kgのレベルの汚染が確認されたということです。筆者は以前から,福島や北関東以外でも,暫定基準値を超えるようなきのこが生えているだろうということを主張してきました。この記事から推測すれば,伊豆半島のシイタケ汚染レベルは,たとえば茨城県鉾田市や千葉県我孫子市と比較して,数十分の一程度だと考えられます。放射性セシウムの含有量がゼロとまではいきませんが,伊豆エリアまでいけば,現時点での腐生菌の汚染レベルは低いようです。菌根菌のデータが欲しいですね(文責/MWS)。








2011年10月9日


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きょうは電子工学の専門家をお招きして放射線宴会会議(第二回)となりました。GMカウンタやPDガンマ線検出器を自作してしまうような方と,放射性セシウムによる環境汚染に憤りが収まらない筆者の組合せですから,酒が足りるわけがなく話が尽きることなく,お開きまで技術関係の話で盛り上がりました。今回の事故により放出された放射性物質を線源として利用したいとのことで依頼を頂戴していましたので,段階的に濃度を変えた放射線源を調製し,無事に引き渡しもできました。帰宅時には,駅までお送りするついでに,都内でも0.5μSv/h程度の放射能汚染がどこにでも見られることを,実演しながら歩きました。CsIシンチレータでは激しく反応するのに,GM管が鈍くしか反応しないこともわかり,検出器の特性の違いと,その解釈の難しさを知ることができました。画像は引き渡しした放射性セシウムを含有する土です。このような危険物は,しっかりとしたラベルを貼るべきです。瓶の中身がわからず,それが放射能だったなどということは,絶対に避けなければなりません(画像/MWS)。








2011年10月8日


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『本日の画像』コーナーは開設以来,FTPが利用可能な日は必ず更新するという日々が続いています。もちろんこの努力は一種の営業ですから当然なのですが,読者層は多岐に渡り,ほんとうに営業になっているかどうかは心許ないところです。エンターテイメントを無料供給しているだけの,徒労の気もしないわけではありません。ホームページは,課金すれば見向きもされなくなるので,タダで情報提供するのが基本です。筆者も,タダでいろいろなページを見ていて,開設者の方々にはとても感謝しています。ここまでは,双方,サービスの交換という点で問題はないのです。でも,ちょっと不満なのが,この過程で,プロバイダも,サーバー運営者も,電力会社も,しっかりとカネを取っているんですよね。それでいて,情報提供者は集金できるようなビジネスモデルはなかなか成立しない。むずかしいもんですね。きょうの画像は,東京湾にいたプロトペリディニウムという鞭毛藻の一種です。こういう専門機材を駆使して得られた画像が,ほいほいと毎日アップされるというのは,ホントはとんでもないことなんですよ…(画像/MWS)。








2011年10月7日


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筆者が利用しているデジタル機器は民生品の安価なものばかりです。『本日の画像』でスナップ写真に用いているカメラも,2005年頃に購入したものをそのまま使い続けています。このカメラ,800万画素で広角側マクロ2cm,フィルタ装着可能,顕微鏡接続可能,インターバルタイマー可能というスペックで,ひょっとしたら顕微鏡写真につかえるかも,と思って入手したのでした。しかし実際は,まったく使い物にならず,ニコンのクールピクス9xx系の基本性能の高さを再確認するだけになりました。画素は8メガでも粒状性があらく,実質200万画素という感じです。入射瞳が引っ込んでいて,コリメート法は難儀します。広角のマクロは寄れますが望遠側がぜんぜん寄れません…。ただ,このカメラは,単三アルカリ乾電池で使えるので,その点はたいへん優れています。デジタルカメラはフィルムの代わりに電池を使う機器なのです。フィルム時代は旅先でもフィルムが入手できました。電池も同じでなければなりません,というのが筆者の個人的な考えです。上の画像は,そのカメラで6年前に旅先で撮影したものです。こういった低画質のカメラの画像をそれなりに見せるには,画像処理で最適な縮小方法を探し,適度な引き締めを行うことです。そうすれば,web掲載程度なら問題ありません(画像/MWS)。








2011年10月6日


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若手の研究者などから,学会に参加すると緊張して…といわれることがよくあります。学会は楽しい場でもありますが,確かに自分自身の学生時代を思い返してみても,現在ほどは楽しめなかった気がします。まぁ,こういったことは場数を踏めば自然になんでもなくなっていくのかもしれません。積極的な解決法は,質問をたくさんすることでしょうか。ポスター発表や懇親会などの時間を利用して,気になる講演をしていた人のもとに行き,具体的な質問をして議論をすれば,皆さんやさしく楽しく答えてくれることと思います。知り合いも増えるし,周囲の人とも話ができるので,良い方法ではないかと思います。もう一つは,ちょっと意外かもしれませんが,たくさん勉強することが良い方法かもしれません。関連分野のいろいろな知識が身に付いていれば,議論の幅も広くなり,ほかの研究者との接点も見つけやすくなるのです。

筆者と仲良くなるというのも良い方法です U^ェ^U 。やさしい筆者のことですから,何でも聞かれれば懇切丁寧に答えます。携帯顕微鏡H型と珪藻プレパラートで緊張を解きほぐして差し上げます。楽しい時間を過ごせます。学会からお帰りになったあとは,メールを頂戴できれば,いつでもフォローもいたします。MWSは全国の若者の味方です。

とまぁ,そうこうしているうちに,学会に参加すれば,「おー久しぶりー」「元気してるー」といった会話を交わす面々が増え,会場に入って人の顔を見るだけで何やら楽しい気分になってきたりします。まぁ5年も参加していれば,そんな具合になるんじゃないでしょうか。そうすれば,学会帰りの車窓の風景も,すがすがしい体験を終えてまた日常に戻るための,ちょっとした寂しさと安堵のある味わいの時間として過ごせるかもしれません(画像/MWS)。



*1 きょうの画像は学会帰りの車窓の風景です。この病院の院長先生は,ひらがなの持つ柔らかさを熟知していますね。漢字で看板をつくらないところに姿勢が現れていて,きっとスタッフの質もいいんだろうなぁと思いました。

*2 筆者も学生時代は何となく緊張しましたし,仲間も少なかったので,学会では必ず一番前の辺りに座り,真面目に聴講して,重要な疑問があったら必ず挙手して質問・議論することを自らに課してきました。これを20年続けた結果,知人は増え,仲間も増え,色々な人と議論ができるようになり,緊張でコチコチになるようなこともなくなり,学生でも大先生でも自由に議論ができるようになりました。が,最近は,「いつも前のほうで鋭い質問を次々と飛ばす人」と噂されるようになり,「怖い人」と思われるという事態に発展しているかもしれないと,風の噂が伝わってきました。筆者ほど優しい人も珍しい(^^;と思っているのですが… 何事もやりすぎはアカンということでしょうか。。当分止める気はないんですが(^^;。





2011年10月5日


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その砂浜の砂をあれこれ眺めていると,インクルージョンのある鉱物が見えました。結晶の形から見て,サファイヤではなさそうな感じがしますが,では何なのかというと,さっぱり分かりません。この鉱物,中に金属が閉じこめられているようで,結晶内部に金属光沢が見えます。うーむ何だろうか。子どもの頃からピカピカ光り物に目のない筆者は,こういう金属光沢を見ると,それが何なのかひどく気になります。元素だろうか化合物だろうかー。硫化物系かそれとも合金かー。うーむうーむと出ない結論を知りつつ悩みます。拾い集めて割って中身を取り出したくもなりますが,でも,そのことに時間を割り当てるわけにもいかないので,グッと我慢です(画像/MWS)。








2011年10月4日


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砂浜の砂はけっこう細かく,大半が茶こしの網目をくぐりぬけ,数パーセント程度が網の上に残ります。砂の正体は半分くらいの鉱物と,半分くらいの生物がつくる鉱物粒子(バイオミネラル)です。貝殻の破片やサンゴの破片に見えるもの,ウニのトゲのように見えるもの,真珠のような輝きをもつ破片など様々で美しい眺めです。20〜50倍程度の低倍率で観察する試料としては,なかなか面白いものではないかと思います(画像/MWS)。








2011年10月3日


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微分干渉顕微鏡はだいぶ一般的になってきましたが,これを導入していない研究室も多くあります。ネックは価格で,新品なら150万円程度はしますので,備品取得のできる研究費を獲得しないことには,なかなか買えないところも多いと思います。しかし,特殊な分野はさておき,微分干渉顕微鏡でなければ検鏡できない物体というのはそれほど多くありません。工夫次第で,明視野法の変法でコントラストの高い画像を得られることも多いのです。上の画像は東京湾表層水を泳いでいたカイアシ類ですが,拡散板を用いて暗視野光束を多めに,明視野光速を少なめにした偏斜照明にしています。光は2時の方角から照射しています。微分干渉法に類似した,エッジの光った,透明体にコントラストのついた絵になっています。この画像はサンプリングの出先で撮影したもので,顕微鏡は「携帯顕微鏡H型」を使用しています(画像/MWS)。








2011年10月2日


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ごく弱いコントラストしか生じないような透明に近い物体(プランクトンの大半はそんな感じです)を検鏡するには,微分干渉法が有効です。透過明視野の顕微鏡に,微分干渉装置という特殊な機器を取り付けたものです。この顕微鏡によれば,水中の珪藻被殻などを,比較的高いコントラストで観察することができ,コントラストも可変です。きょうの画像は微分干渉法による作例で,上は干潟にいた大型のニッチアです。細胞内の構造がよくわかり,核もはっきりと見えています。下の画像は淡水産のディアトマですが,被殻の構造と細胞内の色素と油滴が同じようなコントラストで表現できています。微分干渉法で撮像するときのコツは,物体の性質やマウント状況により異なりますが,分解能を低下させないようにコンデンサを開くこと,コントラストをつけすぎないことだと,筆者は考えています(画像/MWS)。








2011年10月1日(3)


福島第1原発:注水38時間停止で核燃料再溶融…東電試算

余震などで東京電力福島第1原発への注水が38時間止まると、核燃料が再溶融するとの推計結果を、東電が1日、発表した。東電は「現在の注水系はバックアップ機能を備え、単一トラブルの場合は30分程度で注水を再開できる」と説明し、万が一の有事対応のための分析としている。
 分析では、注水停止1時間当たりで炉心温度は50度上がると推計。18〜19時間後に炉心温度は約1200度に達し、水素爆発が起こりやすくなるという。その結果、放射性物質が漏れ、原発から退避する目安線量(毎時10ミリシーベルト)を超えるとした。
 さらに、38時間後には約2200度となり、再び核燃料が溶融して圧力容器が損傷し、格納容器に落下する恐れが出てくる。
 松本純一原子力・立地本部長代理は「現在の核燃料は崩壊熱が低く、格納容器内で冷えて固まるだろう。燃料が地下に向けて溶ける『チャイナシンドローム』はない」と述べた。【中西拓司】

毎日新聞 2011年10月1日 20時29分(最終更新 10月1日 20時37分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111002k0000m040087000c.html




核燃料の現在の状況を推測して対策に役立てるという意味では,このような発表は意味のあることだと思います。具体的な数字が出てくれば,危機の状況についても,ある程度は想像可能なものになってくるでしょう。この報道発表では,核燃料は,あの事故から半年経過しても,注水が停止すれば50℃/時で昇温する発熱量があるということです。すでに圧力容器は破損しているでしょうから,上記の記事は若干おかしな点がありますが,まあそれはいいでしょう。大切なことは,現在でも,冷却を止めれば,崩壊熱を除去できず水素爆発さえも起こりうる状況だということです。そこに人間が存在できなくなるほどの放射能汚染が,2日間冷却を停止しただけで,これからも起こりうる状況なのです。

そしてさらに,この記事には書いてありませんが,部分的な臨界も全く起きていないと仮定して,現時点での崩壊熱のかなり多くの部分が,放射性セシウムと放射性ストロンチウムだろうということです。これが何を意味するのかというと,あと10年間冷やし続けても,発熱量はせいぜい半分程度にしかならないだろうということです(正確な計算は専門家にお任せします)。つまり,10年間,完璧な冷却ができて,その間に圧力容器や格納容器に一切の腐蝕(劣化)が起こらないという理想的な条件のもとでも,10年後には,4日間冷却を停止しただけで燃料溶融が起こり,水素爆発の可能性があるというわけです。こんなものを,誰が取り出せるのでしょうか(文責/MWS)。



*1 要するに,未だに大事故の途中ということです。筆者が以前に「事故はまだ始まったばかり」と書いたのは,原子炉の撤去などそう簡単にはできないことを予想したからです。管理ができているときには危険性がなくても,管理できなくなったら甚大な危険が生じるのが原子力の特徴です。これは,今回の事故に限ったことではありません。国内のどこの原子炉も,使用済み燃料プールも,再処理工場も,冷却を停止したならば大災害となる危険があるのです。





2011年10月1日(2)


臨界事故12年 茨城・東海村長「金のために魂を売ってはならぬ」

2011.9.30 13:52

 茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」の臨界事故から12年となる30日、同村の村上達也村長は職員に向けた臨時朝礼で「原子力に向き合う以上は姿勢をただし、金のために魂を売ってはならぬ。このことを改めて思った」と話し、“脱原発”の姿勢を鮮明にした。
 村上村長は東京電力福島第1原発事故への国の対応の不備について「人に冷たく、かつ無能な国では原発を持つべきでない。その資格はないと考えるに至った」と痛烈に批判。「村民と東海村の将来を思うと、曖昧な妥協は許されない。日本初の住民避難を引き起こしたJCO臨界事故を体験したものとしての今の心情だ」と述べた。
 ただ、村上村長は「原子力全てをノーと言っているわけではない。21世紀型の科学技術研究に力点を置いた新しい原子力センターを目指す構想は原発事故を経験してますます重要であると考えている」として、原子力に関する学術研究は推進していく姿勢を示した。
 臨界事故は平成11年9月30日に発生。作業員2人が死亡し、住民ら約660人が被曝(ひばく)した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110930/dst11093013550014-n1.htm




臨界事故から12年 再稼働は厳しい姿勢で(茨城県)

 作業員2人が死亡した「ジェー・シー・オー(JCO)」臨界被ばく事故から、30日で12年となった。事故があった茨城・東海村の村上達也村長は、「日本原子力発電」東海第二原子力発電所の運転再開には厳しい姿勢で臨む方針を強調した。 村上村長は30日の朝礼で「原発による数十年の経済的繁栄は、一炊の夢と終わったのであり、その結果は全てを失うということを福島原発事故は証明した」と述べ、福島第一原発事故への政府の対応を批判した。その上で、停止中の東海第二原発の運転再開には厳しい姿勢で臨む方針を示した。 村上村長は、原発の運転再開には技術的な安全対策だけではなく、政府が周辺住民の生活を保障する必要があると話している。
[ 9/30 12:53 NEWS24]
http://news24.jp/nnn/news89022413.html




報道というのは,起こった事象という「全体」から,「部分」を切り取って周知するという作業といえます。この「部分」の切り取り方によって,報道記事の「印象」を操作することができます。部分が全体を表すことはありえず,切り取られた「部分」が「全体」と同じニュアンスを正確に表現することはまれです。きょうはそのことを示すために,同じ事象を扱った二つの記事を並べてみました。上の記事の方が長くて,ていねいに説明している印象がありますが,下の記事の方が,「部分」の切り取り方が適切に思えます。読者の皆さんはどのように感じられるでしょうか(文責/MWS)。








2011年10月1日


ps

これは砂浜の波打ち際です。こまかい砂に小石や貝殻が見えています。そして小石や貝殻の周囲が黒っぽくなっていますが,これは砂鉄です。波が引くときに,小石や貝殻の流れの陰の部分は流速が落ちるので,比重の大きい砂鉄は,そこに素早く沈んでしまいます。それで流れの緩いところに黒く溜まって見えます。ですから,この黒い模様は,流速分布も示していることになります。砂浜を歩いていると,このような感じで砂鉄が濃縮されているところがあります。そのようなところを上手にすくうと,磁石を用いることなく,容積比で50%程度の砂鉄を含む砂を採取することができます(画像/MWS)。








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