画像のご利用について





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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ(2011年9月再開)。

ユーザー様には海洋の放射能汚染に関するテキストを こちらで配布中です。
パスワード等を紛失した方は再請求してください。


2012年4月30日


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29日は都内で打ち合わせの一日となりました。午前中はひとけのない大学研究室で手持ち測定機器の校正データをとらせていただき,研究室の機材も紹介いただきました。午後は機材関連の用件で顕微鏡に詳しい方のお宅を訪問し,顕微鏡の午後となりました。顕微鏡に詳しい大人三人が,多種類の専門的な標本とともに,機材をいじり回しました。大学院在学中の二人の若い方には,大人が高級なおもちゃで遊んでいる姿を研究用機材取扱法の何たるかを見て頂き,若い方との実のある会話も楽しく,筆者としては最高に楽しい春の午後だったのでした。お相手頂きました皆様,貴重な一日をありがとうございます(画像/MWS)。








2012年4月29日(2)


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集中して本が読みたくなり,電車に乗ることにしました。そのむかし,一日4時間の通学時間で山ほど本を読んだせいか,読書タイムは電車の中が最上です。どうしても,というときは大した用事がなくても車内で読書ということもあります。28日はせっかくのお天気でしたから,山手線でぐるぐるはやめて,フランスのタイヤ屋さんが三つも星をつけてしまったお山のふもとまで行くことにしました。先々週はまだ山も緑になる前の輝きだったのですが,きょうはすっかりと新緑になっていました。もみじで有名なところですから,春の芽吹きも美しいのです(画像/MWS)。



*1 むかし講義ノートを作っていた頃も,やはり電車の中がいちばんでした。学会発表のプレゼンのドラフトを作るときも,電車の中か自転車の上がいちばんでした。たまに論文査読を頼まれたときも,自著の校正をするときも,やはり電車の中がいちばんだったですね。印象深いのは10年くらいまえに本を出版したときのこと。著者校正の分厚い原稿を持って北国の学会に出席し,その帰路で,スーパーはつかりの車窓から錦秋に輝く北東北の秋を感じつつ,優雅に校正して帰りました。あれはよかった。

*2 そのような話をある大学のえらい先生としていたところ,その博識で有名な先生も同じだということでした。先生曰く,講義は板書がいちばんだけれども,講義ノートをつくるのがしんどい。長期で外国出張のときに講義ノートを作る必要があって,どうしてもホテルでは作業できず,地下鉄に乗りに行って講義ノートを作った,のだそうです。まったく同感でした。

*3 で,電車の読書で物事の理解が進んだかというと,それはまた別のはなし。干渉計と偏光の話は,基本的な知識が欠落していることと,ベクトルや微分方程式がトレースできないこと,原因はある程度わかっているんですが…。





2012年4月29日


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身のまわりにはいろいろ光を発するものがありますが,見た目は同じでも分光するとまるで異なるものも多いです。きょうは昼光色の蛍光灯(日立)と白色発光ダイオード(日亜化学)のスペクトルを示しました。両者とも見た目は同じ白ですが,分光したグラフは異なります。蛍光灯はRGB的にピークがあり,演色性を意識した製品のように思えます。白LEDの方は450nm(青)付近の鋭い立ち上がりで蛍光体を叩き,550nm付近をピークとする幅広の蛍光で,見た目に白い色を作り出しています。両方とも白色光ですが,紫や赤の成分に大きな違いがあるので,物体によっては色が違って見えたりします(画像/MWS)。








2012年4月28日(2)


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太陽光と蛍光灯では光の成分が異なりますので,ものの色彩が変わって見えることがあります。きょうの例では特殊なガラス二種を画像で示します。画像一枚目は曇天の自然光で見たネオジムガラス(右)とホルミウムガラス(左)です。ネオジムガラスはピンク色,ホルミウムガラスは黄色に見えています。このガラスを昼光色の蛍光灯の下で見ると,ネオジムガラスは緑色に,ホルミウムガラスはピンクっぽく見えます。ガラスの吸光特性と蛍光灯の波長特性(と目の感色性)によってこのようになります。ガラスの吸収特性を画像三枚目に示しましたが,じつに複雑なグラフになっています(画像/MWS)。



*1 分光屋さんとか,分析屋さんとかにとっては,なだらかなブロードの分光スペクトルよりも,山あり谷あり,鋭い剣山ありのスペクトルがうれしいですね。おおっ! という感じで,何だか沸き立つのです(^^;

*2 ネオジムガラスは何かの廃品に入っていたものでした。青板にしては色が濃すぎるし,何だろうと思いましたが,厚板ガラスならいつか使えるだろうと保存しておいたものです。あるとき手持ちのフィルタを片っ端から分光器にかけているときについでに測定して,バンザイ三唱したのでした。ちなみに,ネオジムを含有するカメラ用フィルタ,天体観察用フィルタは民生用がふつうに市販されています。





2012年4月28日


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方解石の蛍光(燐光)に関しては数名の方からコメントを頂戴しました。有り難いことです。むかしボスから,「コンタクトをとってきた人が1人いれば,興味を抱いているヤツは10人はいる」と言われましたので,きっと「本日の画像」の読者の中には,ほかにも方解石で遊ぼうと思っている方もおられることでしょう。そこで,方解石は持っているけど,ブラックライトも紫外線ランプも紫色レーザーも持っていない人のために,紫色LEDで方解石を光らせてみたのがきょうの画像です。LEDは通販や秋葉原店頭などで安価に販売されているもので,400nm程度の発光波長です。電流は20mA流していて,4灯を束ねています。ビームを収束させるためにプラスチックレンズを一枚入れています。方解石の赤色発光がはっきり見えることがわかります。もちろん,部屋は暗くします(画像/MWS)。








2012年4月27日


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こんどはF-TESTの製作です。この検査板は,耐久性の高い蓄光粒子をマウントしたもので,蛍光顕微鏡の調整などに使用するものです。紫外線から青色光の広い範囲で励起することができ,緑色の光を発します。マウントする粒子のサイズは幅を持たせており,これにより,観察者が必要な輝度の粒子を利用することができます。蓄光粒子は,大きなものは明るく輝き,小さなものは暗いという特性があります。紫外線励起などでまぶしいほどに輝く場合は,NDフィルタを入れるか,粒子の細かいところを検鏡することで対応できます。反対に,B励起で輝きが不足しているときは,粒子の大きなところを選んで覗けばいいわけです。

この検査板の利用法は様々で,蛍光顕微鏡の練習用標本としても使えます。照明の心出しにも重宝します。観察と同じ条件で心出しできるので,単に光軸を出すだけでなく,フォーカスも適当に調節できます。通常の利用では退色しないと考えて良いので,光軸確認用工具の代用になります。何より,これを照明の調節用に使うなら,レボルバに一本多く対物レンズを装着することができます。豪華な珪藻標本と比べると地味な検査板ですが,利用者からは高い評価を頂戴しています(画像/MWS)。








2012年4月26日


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干潟の泥とともに採取した付着珪藻はどのように処理しようか困っていたのですが,珪藻の生態を利用して濃縮してみることにしました。海水と泥の入った容器を振り混ぜて静置し,上面から白LEDの強い光を照射します。白LEDはエネルギー的には青色光の成分が多いのですが,珪藻は青色光の方に集まる性質があるので好都合です。しばらく放置すると灰色だった泥の表面が褐色になり,珪藻が表面を覆い尽くしていることがわかります。やがて光合成による酸素の泡が発生してきます。

上の画像はそのようにして濃縮した珪藻をスポイトで拾い集め,ビーカーに移したものです。最初はビーカの底一面を泥のように覆い尽くしているのですが,だんだんと集塊ができるようになって,不均一な分布になります。形が日々変わるので,微生物の集団であることは肉眼でもわかります。これが光合成生物であることを簡易に確かめるには,紫色レーザーを照射して蛍光の発生を見ます(画像2枚目)。この泥の塊が赤色蛍光を発したなら,光合成生物の塊であるとみて,まず間違いないでしょう(画像/MWS)。








2012年4月25日


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光生物学がご専門の方から,方解石の場合は蛍光よりも「燐光」のほうがいいかもしれませんと連絡をいただきました。0.1秒くらいのわずかな残光を認めたので筆者もそういう感触は持っていたのですが,調べないまま記事を書いてしまいました…。発光スペクトルの情報も教えていただきましたが,それによると(こちら),方解石の発光スペクトルはなかなか多様ですね。グラフを見ているだけで,各地の方解石を収集して紫外線を照射したくなります(笑)。

一枚目の画像を見て下さい。この画像は暗室での撮影です。方解石の下から紫外線ブラックライトで照らしています。方解石の形がきちんと見えていますが,これは外部からの照明で見えているのではなく,方解石自体が光っていて,それで形がわかるのです。左は赤,右は白っぽく写っています。下から紫外線を照射しているので,下側が明るく発光しています。

手持ちの方解石の発光スペクトルは以前にも測定したことがありますが暗すぎてうまくいきませんでした。今回は365nmブラックライト2本を使い,分光器のファイバーにも集光レンズをつけて,さらに積算時間を増やして何とかスペクトルをとることができました。赤く光る大型方解石は610-620nmのピークがはっきりしていて,半値幅も100nm程度と,典型的なMn2+による発光のようです。この大型方解石は,太陽光のもとではひじょうに薄いピンク色に見えますので,Mnの関与は予想通りでした。

小型の方解石は,見た目では薄い黄色のような水色のような感じですが,スペクトルがフラットです。UV365nmで叩いてこれほどフラットな白色光を発する物質ははじめて見ました。分光器の感度を上げて出てきたスペクトルを見たときは,ひっくり返るほど驚きました(ちょっと大げさですが)。何なんだこれはー,という感じです。この現象を調べて量子収率を数桁アップさせることに成功すれば,UV-LEDを用いた超高演色性照明光源ができるはずです。誰かやってくださいー(画像/MWS)。



*1 スペクトルの形は参考程度にご覧下さい。標準光源がないので,カンで輝度を調節したハロゲンでキャリブレーションしています。そんなにメチャクチャではないと思いますが。

*2 こちらの情報もあわせてご教示頂いたのですが,大変面白いので,皆様もどうぞご覧下さい。

*3 グラフの背景に使用しているグラデーションの色は,CD-Rを使った自作分光器で太陽光を分光してデジタルカメラで撮影したものです。スペクトル色なのでデジタルカメラでの色再現はひどいものです。ご勘弁を。なお,所々に見られる縦線(暗いすじ)はフラウンホーフェルの暗線です。





2012年4月24日


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透明方解石の中には蛍光を発するものがあります。紫外線(365nm)でも励起できますし,405nmのレーザー(取扱注意)でもOKです。後者だとはっきりと鮮やかに発光します(きょうの画像)。発光波長は産地によって異なるようで,ブラジル産の透明方解石(画像の左側)は青緑とも黄緑とも判別できないような色で光ります。マダガスカル産の透明方解石は赤い蛍光を発します。出所の分からない方解石でも,蛍光スペクトルを見れば産地が判別できそうです。手持ちの方解石はこの他にもあるのですが,1cmくらいの小粒の3個はブラジル産と同じ色の蛍光で,3cmくらいの,かはくショップで購入した透明方解石はマダガスカル産と同じ色の蛍光でした。ところで,「蛍光」という言葉で説明してきましたが,実際はどのような現象か迷っている部分もあります。マダガスカル産の方解石で定性的に調べると,発光開始までに数十ミリ秒くらいかかるようで,残光も数十ミリ秒くらいはあるのです(画像/MWS)。








2012年4月23日


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いつ透明になるかわからないはずだった方解石が,ちょっと気晴らしにと磨いていたら,あらあら,透明になってしまいました。面はきちんと出しましたが,キズ取りはかなり適当にやったので小キズがたくさん残っていますが,実用には十分です。といいますか,わざといい加減に磨いている感もあります。一点の曇りもなく仕上げてしまったら(そんな時間はありませんが),触ることもできず,ガラスケースを作って入れておくことくらいしかできなくなってしまいます。いろいろな人に触れてもらい方解石の面白さを体験してもらうには,多少のキズが残っているくらいでいいのです。

方解石は柔らかく,研磨に時間をかけないで済むのがありがたいですね。面積的にはかなり広く研磨する必要がありますが,コンコルド出刃包丁の修正研磨などと比べると格段に楽な気がします。上の画像は透明感をやや強調した照明によるもの。下の画像は複屈折の例です。このくらい大きくなると光線の分離量が大きく,眺めていると頭が痛くなりそうな像の重なり具合です(画像/MWS)。








2012年4月22日


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ロバートフックが『細胞』を『発見』したとされるコルクの絵はWikipediaにのっています。それを何気なくみていたら,コルク材を2方向から切って切片を得ていることに気付きました。たぶん木口面と板目面だろうと思い,自分でもやってみました。すると,なるほど,フックと同じように長方形の細胞壁と円形の細胞壁と,見え方の異なる切片となりました。さて,生物の教材としてはどちらがいいのかしら…。両方を使った授業の展開というのもありそうですが…(画像/MWS)。








2012年4月21日


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DL-TESTが終わると今度はコルクの薄片です。ロバートフックが『細胞』を『発見』したとされる材料ですから,教育的な価値の認められやすい標本となります。コルクはどこにでもありますから,ワインの栓などを薄く切れば,それだけで観察できます。と,書くといかにも簡単そうですが,コルクの薄片をつくるのは意外にむずかしいのです。

カミソリならうまく切れるかもしれませんが,刃先がぐらつくと薄片になりません。またコルクは固形物を巻き込んでいることが多く,そこを刃が通過すれば一発で刃こぼれします。コルクの弾力は刃先に抵抗し,少しでもナマクラな刃先なら薄切りはできません。これらの事情から,筆者は切り出しでハンドセクション(徒手切片法)で薄片を作っています。切り出しは数本準備して,巻き込んだ固形物をえぐり取るもの,表面を整形するもの,薄切りに使うもの,と使い分けます。

切片用の切り出しは最高の切れ味が求められます。今回は「春光」と銘のある,近所の骨董市で購入したものを使いました。尾崎の合砥をかけ,GC#30000の革砥で仕上げています。ひじょうに鋭く繊細な刃先に仕上げ,堅い物は切れませんが,柔らかいものには驚異的な切れ味を発揮します。

このような諸準備を終えてからコルクをスカスカ切ると爽快です。数百枚も切れば,数十枚の使える薄片が得られます。ロバートフックのスケッチを見ると,とても薄く切れいているコルクなので,彼も,カミソリで何枚ものコルクをカットしたのだと,そんなふうに想像しています(画像/MWS)。








2012年4月20日


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RL-TESTが終われば今度はDL-TESTです。この検査板はJシリーズの技術を用いて珪藻を一列に並べたものです。Jシリーズと同じものともいえますが,珪藻の選別には特別な注意を払っており,また対物レンズの品質判定に使いやすそうな珪藻を選んでいることろが異なります。散布スライドの形態でも検査板として使えますが,封入剤に沈んでいたり,傾いているものは不適当なので,よい珪藻を探すのに時間がかかります。

その点,DL-TESTは抜群の使いやすさです。きれいに並んでいるので珪藻を探す必要がありません。ピント面が揃っているので油浸でもほとんどピントがずれません。しかも珪藻は収差が発生しない位置にマウントされているので対物レンズのテストには最適なものとなっています。たとえば,同じスペックの対物レンズをレボルバに装着して,DL-TESTを比較検鏡すれば,両方のレンズの差についてはっきりと観察することができ,また画像として記録することもできるでしょう。

珪藻をきれいに並べるには細心の注意と高度な技術が必要です。人間の目は角度の変化に敏感なので,DL-TESTのように一列に整然と並べるのはむずかしいのです。この標本の製作にはそれ以外にもひじょうに高度な知識と経験と技術が必要です。しかしこの過剰な高度さがウリなんですから,えいやっと気合いで乗り切ります。やっぱし必要なのは気合いですよ,気合い(笑) (画像/MWS)。



*1 この検査板もアマチュアの方に好評です。標準品(珪藻8種)で5000円という手軽な価格,使いやすさ,検鏡したときの新鮮な驚きが好まれている理由かもしれません。夾雑物が少なく大変クリアな標本なので,対物レンズの検査はもちろん,顕微鏡のセットアップ,特に照明系の調整などにも重宝するかと思います。微分干渉顕微鏡の見えを最高に調整するなどの用途にも適していますし,位相差の効果を明視野との比較で確認するのにも好適です。製品寿命は長く,半永久的に使えます。




2012年4月19日


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特注が終われば今度は検査板です。画像はRL-TESTで,Amphipleura pellucidaの270nm,200nmの構造を用いた検査板です。この検査板は散布スライドの形態で,珪藻がばらばらに分布しています。その中から本種を探し出し,検査板として使える品質の被殻にダイヤモンドカッターでマークが入れられます。この段階のものはRL-TEST(データなし)として取り扱っていて,販売価格は5000円です。マークをつけた被殻の測定データをつけることもできます。この珪藻の構造を高分解能イメージング技術により解像し(上の画像),条線間隔を計測します。その測定値と画像をデータとして,検査板と一緒に納品します。こちらは9000円です。

Amphipleura pellucidaは古くから対物レンズの限界性能を調べる珪藻として用いられてきましたが,巷で出回っているものには使えるものと使えないものがあります。筆者が製作するものは,すべで検査板として使えることを確認しているので安心してレンズテストに用いることができます。別の表現をすれば,検査板が悪いために,本当は良いレンズを悪いと評価してしまうことを防げます。

このような検査板の製作は細心の注意と高度な技術が必要で,データ入り検査板の製作はJシリーズを作るよりも気分的に重労働だったりします。しかしこの専門性がウリなんですから,えいやっと気合いで乗り切ります。必要なのは気合いですよ,気合い(笑) (画像/MWS)。



*1 この検査板はアマチュアの方にも好評です。多くの方が縦条線の解像(200nm)に挑戦しています。数名の方が解像に成功しているようです。このレベルが見えるようになると,ほかの珪藻でも,これまで何もないと思っていたところに構造が存在しているのを見ることができます。見えなかったものが見えるようになる。これほど楽しいこともありません。挑戦する価値はあります。




2012年4月18日


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特注の依頼を受けていた品物をようやく納品でき,これでずいぶんと気が楽になりました。昨年は震災関連で多くの時間を使い果たしてしまい,珪藻を拾い集めることができませんでしたので,飾りの珪藻が不足してツリーの製作ができない状態が続いていました。ようやく平常モード(に近い)の落ち着きを取り戻しつつあり,指先の感覚を思い出しながらコトを進めている次第です。最近は来客も多くさばくメールの量も増えてきて,時間管理が課題になりつつあります。それにしても,自分で製作したものでありながら,珪藻ツリーはなんと美しいこと。見惚れます。宝石よりも見飽きない感じがします(画像/MWS)。








2012年4月17日


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最近のハトさんは,むかしよりも人を恐れない感じがするのですが,これって遺伝するのでしょうか。それとも,ハトさんネットワークで,人間はあんまりこわくないよ,と伝えあっているのでしょうか。不思議です。このハトさんもコンパクトデジカメを構えて,前方数十センチのところにいるのです。ときどき,おっとっと,という感じで距離をとるのですが,それも結構面倒くさそうな感じです。恐怖心を感じているようにはみえません(画像/MWS)。








2012年4月16日


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15日はこころのふるさとへ出向きました。東京西部の筆者が育ったところです。この町は隅々まで走り回り,季節ごとにどこがどうなっているか,だいたい予想がつくのです。今ごろは芽吹きの美しさが最高だろうと行ってみると,±2日以内という好みの状態でした。


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やや遅咲きの桜が満開ですばらしい樹勢でした。この繊細な美しさはカメラに収まりません。


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そのまま額縁の中に放り込みたいような春の景色となる一瞬です。タイミングがよくないとこういう絵になりませんね。


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芽吹きの明るい雑木林を歩く気分はこの上ない幸せです。


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ヤマボウシも葉を広げはじめています。


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クマシデの芽吹きはひときわ美しいのです。小学校に上がる前,裏山のシデの芽吹きを時間を忘れて眺めていた記憶があります。


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林床ではボケがあちこちで咲いています。日本的な地味な鮮やかさとでもいいましょうか。


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逆光に透ける芽吹きはいつまでも眺めていたい美しさです。


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野原に出ると名も知らぬ花が咲き,


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ちょっと陰るとハナダイコンの群落が一斉開花で地面の色を変えています。


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シバザクラはせいいっぱいに花びらを広げて,


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菜の花は開花したばかりという感じです。


昨年の今ごろは災害に気をとられて新緑どころではありませんでしたが,そのせいか,エネルギーが足りない一年という感じがしました。白髪もどっと増えたのです。やっぱし人間たるもの,美しいものを鑑賞して心のけがれを洗い流し,大自然のエネルギーで心身充電しないといけません。久々にふるさとの公園に来て,つくづくそう思ったのでした(撮影/MWS)。










2012年4月15日


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方解石は柔らかいので整形は難しくありません。砥石でゴリゴリやればどんどん削れていきます。劈開面に沿ってぴったりと研磨していけば,そのままの形を保持しつつ面だしができます。ただ,表面の傷を浅くするにはコツがいるようです。筆者は手持ちの材料で何とかしようとあがくのが通例ですので,今回もそんな感じで,刃物研磨用の砥石で最適な組合せを探します。方解石の研磨はこれまでも何度もやってきたのですが,そこから得た結論,というかコツは,

1)硬いものでこすらない
2)劈開方向に研磨すると傷が残りやすい
3)角から剥離した結晶が研磨面に入り込んで大きな傷となる
4)それを防ぐために角を丸める
5)平面だしが必要なときは硬い砥石+遊離砥粒で研磨する
6)透明化には耐水ペーパーや革砥が有効
7)ラッピングフィルムは不可
8)セーム革+WAが好結果
9)GCも有効

といったところでしょうか。簡単なようですが,ここまで到達するにも経験/観察が必要です。今回は巨大な方解石なので平面出しが問題です。そこで硬い荒砥でゴリゴリ削って盛大な傷をつけながら整形します。次にシャプトンオレンジにWA#400をたっぷり擦り付けて,遊離砥粒による研磨を行います。ここでは,研ぎません。遊離砥粒の上を滑らせるのです。これを繰り返して深い傷を消していきます。さらに,シャプトンオレンジに大村砥を擦り付けた遊離砥粒を作り,この砥粒を赤レンガ(スエヒロの赤い鎌砥石)で小さくして,それの上を転がします。それでさらに傷を浅くしていきます。さらに今度はシャプトングリーンに赤レンガを擦り付け,その遊離砥粒の上で方解石を転がします。この作業を6面やれば,方解石の形状で平面だしができるというわけです。

あとはこれをさらに目の細かいペーパーや革砥で研磨すれば研磨面は再び透明になるはずです。が,果たして,これが再び透明になる日はくるのだろうか…

以上,方解石の研磨を考えておられる全国3人くらいのハイパー研磨マニアに些細な情報をお伝えしましたー(画像/MWS)。








2012年4月14日


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ここのところずっと寝不足が続いていて体調が今ひとつです。そういうときは集中力が途切れるので細かい作業にはなるべく手をつけないようにしています。13日の金曜日は,低気圧が近づいているせいか,頭が晴れません。そこで懸案であった巨大方解石の研磨に手をつけることにしました。8400円もしたこの巨大方解石は豆腐2パック分くらいの容積があります。劈開面はきれいに出ているところと,大きな段差があるところがあって,観察/観賞用には少し不便でした。そこで,凸凹部分からは光学素子用の薄片を製作することとして,全体を方解石の劈開の形に整形することとしました。

小さいものなら幾つも割ったことがありますが,さすがにキログラム級の結晶を叩いたことはありません。まぁでも材料用に買ったのですから,割って粉々になっても,それが材料の運命というものでしょう。ノミと玄翁を準備して,ええい,バキっ。それがきょうの画像一枚目。それなりに整形することができますね。

しかし薄片の方はよろしくありません。細かくなってしまい,大きな面積がとれそうもありません。均一性も悪く,これを研磨しても徒労に終わりそうです。それが画像の2枚目です。

そこで方針を変え,大型結晶を一度研磨して面だししました。それから,薄く割れそうなクラックを探しました。適当なところがあったので,そのクラックに沿って溝を掘りました。溝が結晶を一周したら,溝を,面取りするように成型して予期せぬ大破壊が起きないようにしました。それから溝に菜切り包丁を入れ,玄翁でコンコンと軽くたたいてクラックを成長させました。

作業はけっこう難しいものでしたが,厚さ3.5mmの方解石の薄板を採取できました。これを研磨して透明化すればビームスプリッタができるはずです(画像/MWS)。








2012年4月13日


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12日は,東北から若い珪藻研究者,関西から光合成の最先端の研究者の訪問を受けまして,朝から晩まで大勉強会でした。思い出したことをかいつまんで紹介するのも難しいくらい,レベルの高い議論が続き,脳内がスゴイことになって寝付きが悪そうです(笑)。藻類の生殖過程や光合成研究,分類のお話など,学ぶことが多く,それ以上に,理解が追いつかなかったことが多く,勉強になり,反省もした一日でした。最先端を突っ走って研究しておられる方にも,ちょっとだけJシリーズをご覧いただけたことは幸いでした。一枚だけご覧に入れるときには,偏斜透過落射同時暗視野法により,珪藻を干渉光で輝かせるのです(画像/MWS)。








2012年4月12日


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ついにやりました。サンプリングの帰りにながねんの懸案であったターャジスの撮影に成功しました。しかも右面後方からで,そのパースペクティブによりターャジス感がアップしています。このクルマは学生時代から気になっていたのです。まったく予想していないときに突然現れるので油断ならない存在です。そしてまた左面だけが見えることも多く,右面をすかさず撮影するのはけっこうな難易度です(笑)。このターャジスは各クルマに番号が振ってあって,この画像では5391です。ようやくターャジス愛好家の仲間入りを果たしたような気がします…。

世の中には,驚異的な取り組みをする方がいるもので,こちらなどはその代表格でしょう。凄すぎます。そしてメールアドレスとURLが素敵です(画像/MWS)。



*1 お前はアホか!と感じた方は,「ターャジス」でgoogle画像検索をしてみましょう。アホがたくさんみつかることでしょう…




2012年4月11日


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11日も大潮ですので,サンプリングとなるわけであります。こんどは三浦半島方面から浦賀水道側を攻めに行きます。3日間も連続で海辺での作業になりますので,とても楽しいつらくて苦しい日々となるわけです。

きょうの場所は比較的穏かで,海が荒れても海藻類がけっこう残っているようなところです。画像を見るとお分かりいただけるかと思いますが,なかなか風光明媚な感じのあるところです。ここでの珪藻サンプリングは何度か行っているのですが,まともな試料は底質で1回,海藻の付着珪藻で1回,といった感じで,景色のよさとは裏腹になかなか手強い場所でもあるのです。今回は十分な試料を確保することにより,何か新しい発見はないかと期待することにしました。

相変わらずトンビがオニギリとから揚げを狙ってくるので,リュックにおかずを隠しながらの怪しい昼飯となりました。きょうは必殺にゃーおん光線☆は温存することができました(^^)。

サンプリングも済むと新緑を眺めながら,バスを待つ間にキャベツ畑を見て回り,放射線量が0.05μSv/h程度のまったく問題ないことを確認し,駅に着いたらA快特が滑り込んできて駆け込みました。この3日間,じつに充実して楽しいつらくて苦しいサンプリングでした(画像/MWS)。



三浦半島では浦賀水道側と相模湾側で放射線量が異なるのかもしれません。まったく問題にならないような低い線量ですが,放射性プリュームが飛んできた方角の方が高線量で,風下の山陰で低線量だったのは,データってのは正直だなと思わせるような出来事でした。(但し1回のみの測定なので信頼性はありません。問題の所在を予感させるという程度です)




2012年4月10日


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9日も大潮ですからサンプリングとなるわけです。こんどは三浦半島方面から相模湾を攻めに行きます。この時期は冬の間に育った海藻類がたくさんあって,その海藻に付着している珪藻を採取する好機です。ここで材料(種数)をたくさん集めておかないと,Jシリーズを製作するときに四苦八苦することになるので,楽しいピクニックのように見えながら(たのしいですが…),真剣勝負でもあります。

9日は汗ばむほどの陽気で,浜辺で食べるお弁当がことのほかおいしく,トンビが遠くからオニギリを狙って直線的に飛んできましたが,必殺技のにゃ〜おん光線で睨み付けて撃退しました。昼食時間は,サンプルの沈殿時間でもあります。上澄みを捨てて質量を減らして持ち帰ります。ほんとうは海藻ごと持ち帰りたいのですが,漁業権を持ち出されて細かいことを言われるのが精神衛生上よろしくないので,現場海水ですすいで珪藻を振り落として持ち帰るのです。

浜辺は非常に低い放射線レベルで,最低値は0.015μSv/hとなりました。汚染の痕跡は認められない,といった感じですので,思いっきり昼寝をしても水遊びをしても,いいですね。近くではキャベツが育っていて壮観でしたが,ここも0.028μSv/hと,まったく問題のない値でした。

行きは一本早い特急に乗ってしまいA快特に乗り損ねたことが不満でしたが,帰りはタイミングよくA快特が入ってきました。よしよし(画像/MWS)。








2012年4月9日


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8日は大潮でしたのでサンプリングとなりました。まずは手始めに葛西臨海公園で干潟の珪藻を採取です。先日の大嵐でかなり場荒れしている予感もあったので,今回は付着珪藻で活発に移動する種を狙っての採集としました。公園内は花見客や行楽客であふれかえっていて,イベントも行われていました。誰も放射線量を気にすることなく遊んでいるように見受けられましたが,この公園では濃淡が激しく,けっこう線量が高いところもありました。皆が寝ころんでいる芝生の上で0.18μSv/h程度のところが多く,石畳などの道路の上では0.23μSv/hと高く,その一方で渚周辺の砂浜上では0.05〜0.03μSv/hと低い値を示しました。河川が放射性セシウムを運び込んで堆積しているような場所ですが,放射線量は石やコンクリートに付着したセシウムから発せられるものが多い印象です。

サンプリングが済んで戻れば,こんどは技術士さんとの情報交換です。技術士の資格は一つでも大変なものなのに,それを幾つも持っておられるスーパー技術士さんです。時折お会いして主に水圏のケイ酸に関することで話し合いをする,という感じの情報交換が続いています。今回は緩速ろ過法の排水三次処理への応用についての構想をご披露頂き,幾つか意見交換(と近況報告)を行いました。毎回のことですが,大変に勉強になり,眠っていた脳みそを起こしてくれる有り難い機会と感じています(画像/MWS)。








2012年4月8日


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都内では桜が満開になってきました。ちょっと日陰気味のところではこれからで,ここ数日は楽しめそうです。きょうは寒くて,花見の宴会も大変そうでした。筆者も連れ回され,ベンチで缶ビール一本だけ空けましたが,真冬を思わせるさむさむ風に閉口しました。こういうときは早く帰宅して暖かいラーメンでも食べ,熱燗で一杯やるに限ります(画像/MWS)。








2012年4月7日


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この珪藻は海にいるニッチア属の一種ですが太さは1μmを切る程度のたいへん細い姿となっています。このくらい細いと並べるときも祈るような気持ちで取り扱います。ひじょうに細いケイ酸の殻は,ポキポキ折れてしまうようなものと,しなやかに自在に曲がるものとがあります。この珪藻の場合は後者なので,ひじょうに弱い力でゆっくりと操作すれば,何とか並べることができます。プランクトン性の珪藻では触れただけで破壊してしまうものもあって,そのような種は未だにJシリーズの技術で並べることには成功していません。もっとも,並べる以前に,乾燥試料を作る段階で壊れてしまうのですが…(画像/MWS)。








2012年4月6日


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土佐土産といえば土佐刃物と相場が決まっています。なので昨年9月の学会では,台風で足止めになったのをよいことに,ひろめの市場近くの刃物屋をはしごしてお土産を買い漁りました。もっとも,お土産といっても人にあげたのは一本で,あとは全部自分用です。何が欲しかったのかというと,ほんとうは船行包丁の良いヤツなんですが,これは何十本みてもピンとくるものがなかったので次回に持ち越しとなりました。あと,ミニ包丁は常に探しているので,黒打ちの和包丁で小さなものを探し求めて歩きました。

上の画像がその成果ですが,上から105mm,80mm,65mm,50mm程度の刃長の黒打ち和包丁です。両刃ですが,右利き用に6:4の刃がついていて,鋭い切れ味を大切にしたつくりになっています。上から2本は船行包丁と同じ形。3本目は銚子の鍛冶屋で作った包丁に似たものがあったように記憶している,不思議な形です。4本目は船行の形を切りつめればこうなるだろうという形です。

で,いずれの包丁も購入時は,機械研ぎで切刃がつけられ,刃先にほんの少し糸刃が入れてあるだけの簡素なものでした。値段を考えれば当然です(5本買っても日本酒2升くらい)。そしてそれでも十分に切れましたが,切刃の研ぎ目が粗すぎるので,食い込みが悪く,小魚をおろしていても切刃のざらつきが骨に当たってひっかかります。一匹二匹ならそれでも気にしませんが,たくさんおろすときは作業効率も仕上がりも悪いので,やはりきちんと研ぎ直した方がよいのです。そんなわけで,全国219人の研ぎファンを意識しつつも,お土産の土佐黒打は本刃付けされたのでした。

機械研ぎの跡はひじょうに粗く,まずこれを落とす必要があるので,カチカチの赤レンガにWA#400を擦り付けて研ぎます。地鉄の部分は極軟鉄を使うのがふつうと思いますが,このミニ包丁の地鉄は少し硬い感じがします。小さく薄いので強度を保たせているのかもしれません。機械研ぎの跡目を消すとしのぎがあがってしまいますが,黒打ちの鍛えた刃物はしのぎが波打っていますので,細かいことは気にならず気軽に研げます。機械研ぎの研磨痕が見えなくなったら次の研ぎに移ります。

刃長の大きな2本はシャプトンオレンジで研磨痕を小さくします。このとき切刃全体が滑らかに,しのぎがきちんと出るように注意しつつ整形します。小さな2本は五十嵐砥(という名の備水砥)に赤レンガを名倉にしたもので切刃の研磨痕を小さくして整形していきます。この作業が終われば,スエヒロの工具用#3000で切刃を丁寧に研ぎ,最後はスエヒロの化学仕上砥石#8000で研ぎあげます。ピカピカの鏡面仕上げになります。このとき,刃線も決めてしまい,刃付けも行います。もちろんハマグリ刃にします。

水洗いして乾燥し,試し切りを行います。厚手の布地を幾重にも折って丸めたもの(2cm厚程度)を一発で切断できれば合格です。いずれの包丁も問題なく切れましたので,次の工程に移ります。大平の内曇で切刃を研ぎ,本霞仕上げを行います。このとき,切刃が滑らかにできあがっていないと,いつまで研いでも全体に均一な霞をつけることができません。ですので,中砥から仕上砥まで,段差をつけないように滑らかな均一な研ぎが要求されます。内曇で研ぐときにはまず全体に霞をつけて,それからムラを消すように,刃線に平行に研いでいき全体に均一な霞をつけます。特別にこだわるときは,小さな砥石の破片で切刃をなぞるようにして均一な霞をつけますが,今回は自家用で普段使いなので適当なところで切り上げます。

霞仕上げで刃をつぶしている可能性もあるので,もう一度スエヒロ#8000で刃先を研ぎます。そのあと雑誌をつかってカエリをとりのぞき,試し切りをして,OKならば洗って乾燥して作業はお仕舞いです。

そうやって仕上げた土佐土産がきょうの画像なわけですが,この包丁,さすが本場の黒打ちです。何が凄いってハガネの感じが最高です。砥石に当てたとき,白紙二号を水焼入れしたような感じの硬さを感じるのですが,実際の白二水焼き入れよりも刃先に粘りが残っており絶妙の焼き加減です。まさか青二ということはないと思いますが。切れ味は何と表現したらよいでしょうか。魚の小骨で切れ味を判別できる人なら,きっと納得してもらえる,そんな感じです。あと10本買えばよかったー(画像/MWS)。



*1 そうは言っても,たくさんの中から選別して買ったので,いいものはあと5本くらいしかなかった…。

*2 こんな素晴らしい刃物が,喫茶店でコーヒー一杯くらいの値段で買えてしまう。土佐の国,恐るべし。

*3 こういういろいろな形の包丁が店先にあること自体が貴重です。きっと土佐の国は都から遠く,しかし海は目の前で山はすぐ裏手ですから,海仕事山仕事に刃物は欠かすことができなかったでしょう。それで野鍛冶が注文に応じていろんな刃物を自由自在に作ったのだと思います。その伝統が今に息づいているとすれば,歴史のなんと有り難いことでしょうか。

*4 105mm,80mmのミニ船行包丁はアジやイワシなど小魚をおろすときに便利なこと。小さな魚をおろすときに大きな包丁を使うと危ないし,微妙な動きができません。その昔,えんぴつサヨリをおろそうとしてまともな包丁がなく,切り出しでおろして刺身を作ったことを思い出しました。ウナギやアナゴに専用包丁があるように,小魚専用包丁があると便利です。






2012年4月5日


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珪藻が濁るのはまったく原因不明なのですが,じつに気分の悪い現象ですから,どうにかしなければなりません。これまでも種々検討してきましたが決定打がありません。濁る珪藻を使わないことが根本的な解決なのですが,そうすると大きくて美麗な種を失うことになり,それはまた残念なのです。試行錯誤的に濁らない方法を見つけようとしていますが,全て同じ材料を用いても濁ったり濁らなかったりするケースがあって,良い方法が見つかりません。被殻の水分含量や,その日の湿度,温度など,考えられるパラメータはいろいろあるのですが,どれも制御が簡単ではなく,途方にくれる日々です。きょうの画像は検討実験中のテストピース二種を撮影したもの。全て同じ材料を用いているのに,濁っていたり,濁らなかったりしています(画像/MWS)。








2012年4月4日


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Jシリーズの製作技術は常に改変を加えていて,いつになったら技術的に満足するか,見当もつかないほどです。課題は山積みで,しかし一つを解決するにも思考,実験,いろいろと大変です。当初から悩みの種は,一部の種に封入剤が浸透しないこと。これは珪藻の殻の電子顕微鏡的な構造に問題があることと,珪藻の洗浄過程に問題があることの二つが原因なのではないかと考えていますが,解決の見通しが立ちません。また,封入剤が固まると同時に,珪藻が濁ってしまうという現象もあって,これも原因不明です。テストピースで実験を繰り返しますが,未知の要因があるようで,解決への道は遠い感じがします。そんなわけで,全てにおいて完璧な製品,というのはいつになってもできないような気もします。。

まあでも,そうは言っても,当サービスが製作するJシリーズやDL-TESTなどの製品は,歴史的に見れば,光学製品という意味においてはこれ以上のものは存在しないと考えています。常に最良のものをお届けできるように努力しています(画像/MWS)。








2012年4月3日


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珪藻が生活史の一時期に作る特別に薄い殻を使うと,ひじょうにコントラストの低い標本ができます。明視野では発見が困難なほどで,検鏡のよい訓練になります。また,位相差法や微分干渉法の効果確認,イメージングの練習にも役立ちます。きょうの画像はクモノスケイソウの薄膜を用いた標本ですが,まだ微細構造ができる前の骨格構造が,かすかなコントラストとなって見えています。このような標本も多少は供給できるように,ここのところ薄膜を探す毎日です(画像/MWS)。








2012年4月2日


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一年前の災害当初から,自治体が発表している環境放射線データには偏りがあるのではないかと言われてきました。東京でも高いところはたくさんあるのに,かなり低いバイアスがかかっているデータが「公式」なものとなっています。上の記事が正しいとすると,飯舘村では,非常に低い値が意図的に報じられているようです。

放射線は低い値であるほどよいので,自分の住んでいるところが低い線量であって欲しい,との希望は理解できます。が,実際は高いのに,わざと低いところを報じるのは理解に苦しみます。「低いと思って来てみたら実際は高かった」というのと,「高いと思って来てみたらそれほどでもなかった」というのと,「報じられている値が正確だった」というのを比べると,意図的に低く改ざんした値を報じることがいちばん信用を無くす方法だと,筆者には感じられます。

自治体には心理学の専門家はいないのでしょうか。

それとも,すでに世界中で飯舘村の放射能汚染の酷さが知れ渡っているのに,大本営発表を続けて,現地に来るまでは(あるいは環境省のデータを見るまでは)正確な値がわからないように,情報を混乱させているのでしょうか。飯舘村の村長さんなら「までいの心」をお持ちなのでしょうから,ぜひ,このような欺瞞的なこと即刻取りやめ,正確な情報を流して欲しいものです(画像/MWS)。








2012年4月1日


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先日掲載したヒトツメケイソウは10倍対物でしたが,こんどは20倍対物(NA=0.4)による画像です。照明開口数をNA=0.2まで絞り込むと美しい色が出ます。絞りをNA=0.6まで開くと暗視野光束が入り,珪藻がかすんで,色も消えてしまいます。うーむ不思議だ(画像/MWS)。








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