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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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2009年9月30日




今月は砥石特集となってしまいましたが,筆者にとってもよい経験となりました。知った気分になっているのと,ちゃんと見て確かめるのは大違いです。これは自戒の念を込めて言うのですが,最近は,インターネットの画像をみて満足する人が多く,生(なま)の光を見る機会が減りつつあるように思います。よくないことです。多くの方に珪藻プレパラートを配布してきた経験から言うと,顕微鏡で珪藻を見た方は,「画像も美しいが,実際に顕微鏡で見るともっと美しい」と異口同音に感想を述べられます。これは生の光の美しさを表現した言葉だと,筆者は思います。ミクロの姿を生で見るには顕微鏡が必要ですが,難しそうと考えることはありません。よくできた機種ならば,上の画像のような簡易な機種でも十分にミクロの世界を楽しめるからです。こんな簡易な設定でも,砥石表面の鉱物の状態,コノドントや炭素粒,巣や筋の具合がよくわかります。なおステージに載せられているのは丸尾山砥石,並砥です(撮影/MWS)






2009年9月29日




堆積岩を検鏡していると時々,黒い粒が見られることがあります。上の画像のような真っ黒な粒はほとんどが黒鉛で,純度の高い炭素分です。これの由来は堆積当時の数億年前に棲息していた生き物でしょう。体を構成していた有機物が堆積物中に保存され,地質作用により変成して炭素分となり,現在まで残ったものと考えられます。地球上はくまなく生物に覆われていて,生物の痕跡が見つからない場所を探す方が難しいといわれます。この丸尾山砥石(黄色巣板)も例外ではなく,過去の生命活動を教えてくれています(epiDF,撮影/MWS)






2009年9月28日






筆者が包丁研ぎを始めたきっかけは刺身にあります。何も知らなかった若かりし頃,アジの刺身を作ろうととりかかったのはいいのですが,三枚おろしはズタズタになり,できあがったものは刺身というより残骸のような盛り合わせで,ごまかしてタタキにしました。その汚さに衝撃を受けたことは忘れられません。軟らかいものはどんな切れ味の悪い包丁でも簡単に切れると思い込んでいたのが大間違いで,軟らかいものをきれいな切り口で切るには鋭く切れる刃物が必要だったわけです。使い慣れると柳刃というのは実によくできた刃物と思います。刺身包丁を使ってみたいが使ったことがない,という知人の声を聞くと,手頃なものに本刃付けしてプレゼントします。例外なく喜んでもらえます。みんなお刺身が大好きなんですね(撮影/MWS)






2009年9月27日


内曇り

敷内曇り

天上戸前色物

一本松戸前

丸尾山砥石にはよくコノドントが見られます。すでに9月11日付けの画像で黄色巣板のコノドント紹介していますが,筆者の所持している砥石とサンプルを検鏡した限りでは,巣板・内曇り系に多く含まれ,戸前系統には少ない感じです。きょうのコノドントは上から順に

・天上内曇り(蓮華)
・敷内曇り
・天上卵色巣板
・八枚

に含まれるものです。コノドントはヤツメウナギに似た動物の咀嚼器官の一部(骨)ではないかと想像されています。動物の骨ですからリン酸カルシウム主体の成分で保存性はよく化石として残りやすいものです。しかし丸尾山砥石で見られるコノドントの多くは,リン酸カルシウムの実質は見られず,空洞になっているものが多いようです。その空洞には炭素分のように見える黒色物質が付着していることがあり,かつて有機物が存在していたことを暗示しています。それにしても,海底に沈殿した軟らかい泥がカチカチの石になる地質的変化を経ても,よくコノドントは残っていたものだと思います(epiDF,撮影/MWS)






2009年9月26日


内曇り

敷内曇り

天上戸前色物

一本松戸前

天上卵色巣板

八枚

読者から撮影用の砥石のサンプルを頂戴しました。丸尾山砥石を中心とした構成です。すべて同一条件での撮影で上から順に

・天上内曇り(蓮華)
・敷内曇り
・天上戸前色物
・一本松戸前
・天上卵色巣板
・八枚
詳細はこちら

となります。画面横幅は1.4ミリメートルに相当します。こうして画像を並べると違いがよくわかります。天上内曇りと敷内曇りは全く異なる砥石層から産出するにもかかわらず,砥石表面の様子は非常によく似ています。巣の入り方が微妙に異なりますが,堆積粒子の色や密度がそっくりに見えます。天上戸前は緻密に見え,細かく研げることを示しています。表面は削られている途中にほぐれているような雰囲気が見られ,やや軟らかそうに思います。卵色巣板と八枚にはコノドントが多く見られました。八枚の表面は削られて平らにされた感じがあり,かなり硬度がありそうに見えます。砥石の地層に名前が書いてあるわけではないので,これらの砥石は採掘師が仕分けします。相当な経験と勘を必要とするものと思われます(epiDF,撮影/MWS)






2009年9月25日


ps

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ps

ps

コガネムシを舞台の上に載せてスポットライトを浴びせたのには訳があります。コガネムシの仲間には,その金属光沢を放つ光が円偏光になっているものがいるので,それを確認・撮影しようと思ったわけです。このコガネムシは典型的な円偏光タイプで,左円偏光板を通して見ると色彩に変化がないのに(上の画像),右円偏光板を通して見ると緑色の金属光沢が全てカットされて,焦げ茶色の虫になってしまいます(画像2枚目)。これは,このコガネムシの緑色が左巻きの円偏光であることを示しています。腹側も同様で,左円偏光板を通してみると,偏光板を使わない時と同様に銅色の光沢(画像3枚目)が見えますが,右円偏光板を通して見ると光沢は消えて茶色の虫になってしまいます。コガネムシは円偏光によって,誰に,何を知らせているのでしょうか(撮影/MWS)






2009年9月24日


ps

コガネムシが転がっていましたのでモデルになってもらいました(笑)。こういったキラキラ光る昆虫や物体は撮影が難しく,照明をあれこれ変えての撮影となります。色が奇麗に出て,表面反射が少なく,背景処理ができて,比較的均一に照明ができていると理想的なのですが,なかなかうまくいきません。上の画像は単に接写しただけに見えますが,照明スタンド下にジャッキ付きの舞台を設置し,カメラとジャッキの高さを調整しつつ撮影したものです。肉眼サイズの昆虫でも,ちょっとマクロ撮影するだけでたいへんな迫力になります。甲虫は金属光沢を持っているものが多くいますが,コガネムシ(黄金虫)は特に美しく,収集家もいるほどです。この金属光沢は金属を含んでいるわけではなく,光の干渉によります。シャボン玉に色がついているのと同じようなメカニズムで,鮮やかな緑色が作り出されているのです(撮影/MWS)






2009年9月23日


ps

ここのところ砥石ばっかしだーという読者の声が聞こえてくる気もしますので(笑),ちょっと一息つきに散歩に出ました。今年は涼しい日が多く,じつに過ごしやすい夏でしたが,きょうも快適な散歩日和でした。川沿いはコスモスがたくさん咲いていて奇麗でした(撮影/MWS)






2009年9月22日


ps

ps

岩石を研磨した標本では多少なりとも傷が残っていて,これが検鏡に大きな影響を与えます。研磨しなおしても良いのですが,手間がかかります。そこで光学的に傷を消してしまいましょう。岩石と似た屈折率の溶液を垂らしてカバーグラスをかければ,溶液と岩石の境界面での反射や散乱が起こりにくくなりますので,傷が目立たなくなります。上の画像は石灰岩の研磨面で,大きな傷が化石の上部を横切っています。下の画像はグリセリンを垂らしてカバーグラスをかけたもので,傷はほとんど目立たなくなっています。両者を見比べると,どの部分に凹みがあったり,傷があったりするのかがよくわかります(epiDF,撮影/MWS)






2009年9月21日


ps

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砥石はモース硬度でいえば7強くらいでしょうか。HRC硬度では65程度の鋼材でも研ぐことができますので,かなり硬いものです。ですから刃物だけでなくいろいろなものが研磨できます。上の画像は石灰岩のタイルで,化石を含んでいるように見えたので購入しておいたものです。石灰岩は軟らかいので,砥石で研磨すれば化石が観察しやすくなります。今回はまず「大村砥」で平面にして「赤レンガ(キング砥石#1000)」で細かく研ぎ,シャプトン#2000でさらに細かく研いで,最後は耐水ペーパー#5000で仕上げたものです。予想通り,フズリナなどの化石が次々と浮かび上がってきて,素晴らしい眺めとなりました。上の画像は研磨したタイルの一部を2倍対物レンズを用いて撮影したものです。大きな化石は2〜3ミリメートル程度の大きさです(epiDF,撮影/MWS)






2009年9月20日


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これは拾った石ころの拡大像です。上が2倍対物レンズ,下が10倍対物レンズでの撮影で,下の画像は画面幅が0.57mmです。この石は東京都八王子市西部で拾ったもので,一見,砥石型珪質頁岩に見えます。採取場所は砥石採掘現場に似て,砥石型の層状の石が地層になっているのです。何でも試してみたい筆者は,その昔,この石を拾って平らにして,砥石を作ったのでした。いくつかの刃物を研いだところ,地鉄を曇らせながら鋼は光り,一応切れる刃がつきましたが,粒子は比較的粗く,刃物に細かい傷が残り,仕上砥石としては不十分なものでした。しかし実際に砥石になるということを知ったのはよい経験でした(epiDF撮影/MWS)。






2009年9月19日


ps

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今月は砥石特集の様相を呈してきましたので,きょうも丸尾山の砥石を検鏡してみました。上の画像は「白巣板巣なし」と呼ばれる灰色の砥石です。下の画像は「白巣板」です。どちらも同じ山の近い層から産出したもののはずですが,鉱物組成は全く異なります。上の画像は細かい粒子が堆積して降り積もった感じでふつうの合砥石に似ています。下の画像は鱗片状の鉱物が敷きつめられて積もっていったように見えます。あるいは鉱物が鱗片状に変質したのかもしれません。この雰囲気はアルカンサス砥石に似ています。砥石層が数十センチも離れれば数万年以上も堆積年代が異なりますから,同じ「巣板層」に出てくる砥石の組成が変わってきても不思議ではありませんが,これほど見事に異なると,どのような地質的変化があったのかと興味をそそられます(epiDF撮影/MWS)。






2009年9月18日


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包丁の刃が最も接触する相手は「まな板」です。まな板の材質と切れ味の持続は深い関係があります。ヒノキのまな板などが市販されていますが,硬く,刃持ちがよくありません。プラスチックのまな板も大半は硬くて手首が疲れます。筆者のお薦めはヤナギです。刃当たりが柔らかく,水にも強く,香りもなく,使いやすいです。量販店の材木コーナーで2千円ほどで見つけたものをまな板として使っています。木のまな板の良いところは,削ると新品に生き返ることです。上の画像はヤナギのまな板を鉋がけしているところです。ホームセンターで買った安価な鉋でも,よい天然砥石で仕上げればけっこう良く切れます。今回は神前産の巣板で仕上げた鉋刃を使っています(撮影/MWS)。

追記:まな板は出刃包丁などの刃欠けが刺さっていることがありますので,鉋を破損することがあります。御自分で使っている履歴が明らかなもの以外は,よく調べた上で削ることをお薦めします。また,鉋も包丁と同じで,節などを強引に削ると欠けることがあります。まな板は薄く削りながら気長に厚みを調整していった方が安全です。





2009年9月17日


ps

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刃先ができあがったかどうかを調べるには切れ味試験が必要です。試し切りというやつです。包丁の場合,筆者は厚く重ねた布で試し切りを行っています。特にお薦めなのは,木綿製のズボンなどに使われている厚手の生地です。これを折り畳んで固く丸めて試し切りの素材とします。どの部分が切れないか,食い込みがよい部分悪い部分などがすぐにわかります。同じ包丁で次々と砥石を変えて試せば,鋼材と砥石の相性も判明します。

上の画像は,ズボンのベルト部分の特厚生地を丸めたもので試し切りを行った例です(一回引き切り)。包丁はステンレス製菜切り(日本製,980円)で,刃先の仕上げは丸尾山砥石(戸前)です。厚手の布がすっぱりと切れているのがわかると思います。切断面を顕微鏡でみたものが下の画像で,多数の繊維が光ファイバーのように見えています。毛羽も出ていません。このくらい切れますと,小さなサクなら刺身も美しく引くことができます(撮影/MWS)。






2009年9月16日


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刃物や砥石の画像を多く載せていると,砥石収集家や刃物マニアと勘違いされるかもしれません。しかし筆者にそのような趣味はありません。包丁は安価なものがほとんどです。例えば9寸の柳が4500円といえばわかっていただけるでしょうか。砥石が増えたのも単に刃物との相性を求めた結果に過ぎません。実用本位で求めているので,永らく人造砥石を使っており,天然砥石はコッパのセール品ばかり試していました。最近は本ページの読者で砥石の専門家から,中山・大平・梅ヶ畑・神前・新田・丸尾山といった砥石の良さを教えて頂き,目下勉強中です。どの砥石も素晴らしいのですが,包丁用には丸尾山砥石が優れているように感じています。

包丁(あるいは刃物)の切れ味は研ぎで決まります。国産メーカーの刃物鋼であれば,安価な包丁でも家庭用として実用十分な切れ味を出せると思います。上の画像は9寸柳刃で切った鳥取産イナダ(ちょっとくたびれてますね),下の画像は全鋼製牛刀で切った鳥はむです。きちんと切れ味が出ていれば,とても楽に作業ができます。好みの厚さに切るのが楽なのです。刺身など,ペラペラに切ったものとヨウカンのように厚切りにしたものでは,食感がまったく違いますからね(撮影/MWS)。






2009年9月15日


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上の画像は9寸柳刃合わせ(刺身包丁)の刃線(刃裏側)です。この包丁は片刃なので,表を研いでカエリをあげたら裏はぴったりと平面に研ぎカエリを落とします。しかし裏をぴったりと砥石に密着させて奇麗にカエリが取れるかというと,様々です。高級な包丁は刃裏の平面がきちんと出ており,裏研ぎでカエリが取れるものも多いです。一方,安価な和包丁は狂いのあるものが多く,刃線が反り返っているものなどもふつうにみられます。こういったものは裏押しでもカエリが取れず,切れ味が出てきません。反り・ゆがみを矯正して平面を出すには限界があり,あとは研ぎ方でカバーしなければなりません。

上の画像を見ると,刃線から7/1000ミリメートルほどの幅で鋸刃が付けられているのがわかります。これは表から仕上砥石(丸尾山・天上戸前)で糸刃をつけてカエリをあげてから,裏側から砥石(丸尾山・黄色巣板)でカエリを取ったときに付けた鋸刃です。裏押しはせず,手に持った砥石でわずかな角度をつけカエリをはぎ取るように研ぎます。力はほとんど入れません。鋸歯はついていますが,裏をつぶしているようなことはなく,二段にはなっていません。表側は見えないくらいの糸刃で二段になっています。この処理により安価な和包丁でも理想的な刃先ができ鋼材の性能が発揮されます(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月14日


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筆者が刃物(包丁)の鋸刃理論を支持する理由の一つに,研ぎ目と切れ味の関係があります。引くときに歯が刺さるような鋸刃にすると,引き切りでよく切れる(食い込む)刃物になります。押すときに歯が食い込むような鋸刃にすると,押し切りでよく切れる刃物になります。このことは同じ刃物で,鋸刃のつけ方を変え,厚い布で試し切りをするとよくわかります。だから,刃物はノコギリだ,と思うわけです。こうした理由で,引き切りする包丁(柳刃など)には引鋸のように,引くときに歯が刺さるように鋸刃をつける研ぎ方をします。ゴボウやニンジンをたくさん刻むときは押すときに食い込んで欲しいので,そういう刃付けをします。押しでも引きでも均等に切れ味が欲しいときには刃線に垂直な鋸目をつけます。上の画像は鋼(鋼材不明,たぶんスウェーデン鋼)の包丁で,垂直研ぎによる刃先処理の例です。丸尾山砥石(合さ)を使っていますが,やはり1/1000ミリメートルのレベルで鋸になっていることがわかります(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月13日


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刃物がなぜ切れるのかについては諸説あるようですが,よく知られているのが鋸刃理論です。どれほど細かく研いで鏡面にしても,刃先にはギザギザの鋸刃ができており,これが材料にたいして引っかかり食い込むきっかけを与えるというものです。筆者はこの鋸刃理論を支持します。上の画像は包丁(一竿子忠綱,白二鋼)を丸尾山砥石(白巣板巣なし)で研ぎあげた刃先を拡大したものですが,細かい鋸刃になっています。0.01ミリメートルのスケール辺りに7〜10個の刻みが見えますので,1/1000ミリメートル(1マイクロメートル)のノコギリになっているわけです(epiDF,撮影/MWS)。

読者の方から「説明が科学的でなないと思われる」とのご指摘をいただきました。その概要はカミソリなど刃先を刃線方向に走らせなくても切れる刃物があるから,鋸歯理論だけで切れる原理を説明できない,ということのようです。

そこで言い訳を追加しておきます。確かにご指摘の通りなのですが,筆者が鋸歯理論について言及しているのは「包丁」についてです。刃物一般が鋸歯理論で説明できるとはどこにも書いていません。切り出しやカミソリが鋸歯理論で切れるとも書いていません。豆腐を包丁で切るときに押し切りで切れることは誰でも知っているでしょうし,刃物に詳しい人ならば刃先近くのカーブにクサビの役割があることをご存じでしょう。切れる理由はいろいろあります。筆者が言及しているのは包丁で食材を切る場合のいくつかのケース(部分)です。部分と全体は違いますので,筆者の説明を一般化しないことをお薦めします。ついでに言えば,「本日の画像」コーナーは,論理整合性に関しては注意していい加減なことを書かないように心がけていますが,データをもとに「科学的な」記事ばかりを書いているわけではありません。あしからず(2010.4.12追記)






2009年9月12日


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海底に沈殿した鉱物や生物が積み重なって形成した岩石は一般に堆積岩と呼ばれます。堆積岩は堆積方向に縞々が見えることがよくあります。砥石も例外ではなく,木目にならって,板目/柾目などとよばれます。ふつうの砥石は板目で使いますが,青砥は柾目で使うのが相場となっています。この堆積方向の縞々は,緻密な砥石(堆積岩)などでは肉眼で判別できないものもあります。しかし顕微鏡で見ると,堆積した粒子が一定の方向を向いているので判別できます。きょうの画像も丸尾山砥石で,上が「白巣板」,下が「合さ」です。黒い線状の物質が一方向を向いていることがわかります(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月11日


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丸尾山砥石は陸から遠く離れている海底に降り積もった鉱物や生物の遺骸が起源です。陸から遠いので大きな鉱物は供給されず,目の細かい粒子が積み上がっていきます。同時に,海洋生物の遺骸が沈積していきます。きょうの画像は,丸尾山砥石(黄色巣板)に含まれている微化石です。顕微鏡ではじめて確認できるサイズの化石を微化石といいますが,砥石には微化石が含まれていることがあります。7枚の画像はいずれもコノドント(conodont)と呼ばれる微化石で,我々の遠い祖先の咀嚼器官であろうと言われています。コノドントの形状は時代により異なるので,この微化石を古生物学の専門家が検鏡して仕分けすれば,黄色巣板の形成年代が推測できます。なお,上の画像のコノドントはいずれも1ミリメートル以下で0.1ミリメートル以上の大きさです。肉眼で認めるのは難しく,15倍程度の高倍率ルーペでもまだ観察しにくいです。しかし顕微鏡であれば4倍あるいは10倍対物レンズを用いて容易に観察できます(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月10日


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天然砥石は自然石を切り出したものです。したがって研ぐ面は,人工的に平面を作って使います。市販の天然砥石は表面の状態がまちまちです。上の画像は丸尾山砥石(黄色巣板)の購入時の表面を拡大したものです。画面の幅は0.57ミリメートルです。見た目にはきれいな平面なのですが,荒く研磨されていることがよくわかります。これを同じ丸尾山砥石(天上戸前)で摺り合わせて馴らしたのが下の画像です(撮影倍率は同じです)。すっきりと平面になっていることがわかります。仕上砥石は表面に凹凸があると本来の機能を発揮しません。買ったばかりの天然砥石でそのまま刃物を研ぎ,よい刃がつかないと勘違いすることがあります。硬い砥石などは要注意です(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月9日


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丸尾山砥石の顕微鏡画像を掲載して欲しいという,ひじょうに具体的なリクエストがありましたので撮影してみました。丸尾山砥石はたくさんの種類がありますが,用いたのは黄色巣板と呼ばれるものです。上の画像をみるとわかるように,この砥石には全体にまんべんなく,小さな小穴(1/100ミリ以下)があいています。これはひょっとすると目づまり防止の役割を果たすのでしょうか。下の画像のように,たまに筋が入っています。この筋は当たるものと当たらないものがありますが,丸尾山砥石は良心的にも,選別後に出荷していて,正規品で刃物に当たるものはないようです。この山から産出する砥石の研ぎ味は独特で,青砥を細かくしたものと大平産の内曇りを足して半分にしたような感触です。研ぎ出しは早く,刃に適当な荒さが残り(といっても細かいですが),噛み付くような切れ味が出ます。包丁用砥石として優秀だと筆者は思います(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月8日


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これは蝶(カラスアゲハ)の鱗粉です。鱗粉とは毛が変化してできたものと説明されていますが,とても毛とは思えない形状をしています。色も様々で,カラスアゲハの場合でも深いブルーやエメラルドグリーン,紫色に黒などが観察できます。この色は干渉色といって,CDやDVDの裏面が虹色に光るのと同じような原理で特定の色が出るようになっています。しかしいつも不思議なのですが,なぜ昆虫は反射・屈折・干渉・散乱といった光の諸性質を知り尽くしたかのようなデザインなのでしょう。

干渉色はデジタルカメラにとっては厄介な代物です。特定の干渉色はなかなかうまく表現できないからです。色の再現については,自然光にフィルムカメラの組合せが一枚上だと思います。デジタル画像はパソコンのモニタなどで見るわけですが,バックライトの演色性によっても表現できる色にはずいぶん差がでてきます。きょうの鱗粉も,目で見た美しさとはかけ離れたものとなっています(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月7日


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天然仕上砥石で研ぎ物をしていると,たまにガリッとした手応えがあって刃物に傷をつけることがあります。原因は幾つかありますが,よくあるのが砥石に大きな鉱物粒子が潜んでいたというものです。上の画像がその例で,この部分を刃物が通過するとガリガリとした感触があります。こういった部分には鉛筆で印をつけ(画像中段),グラインダーで浅く削り取ってやります。少しでも掘れば刃物と接触することがなくなり,傷を付けずに研ぐことができます。このような作業は肉眼でもできますが,ルーペや顕微鏡を使うと原因を特定でき,たいへん便利です(epiDF,撮影/MWS)。






2009年9月6日


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新田産の巣板には,筋がたくさんみられます(8/30, 8/31の画像参照)。この筋には,刃物に傷を付けてしまうものとそうでないものがあります。上の画像は8/30のプレパラート画像で左側の太い筋です。筋の中に割れ目があって,鉱物の結晶が中を埋めています。この結晶は周囲の砥粒と比較して格段に大きいこともわかると思います。実際,この筋は刃物に細かい傷を付けます。下の画像はもっと細い毛筋です。こちらは酸化鉄(硫化鉄?)が沈着しているようですが非常に細かく,刃物に肉眼レベルの傷を付けることはありません。なお本日の画像は偏光法(λ板併用)によるもので,鉱物の偏光を見ることによって,筋の中の鉱物を際だたせようとしたものです(Pol,撮影/MWS)。






2009年9月5日


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こんどは,昨日と同じ視野を微分干渉法で撮影しています。微分干渉法では,透明な封入剤でマウントされている透明物体でも,わずかな厚みの差などの微細構造があれば,それを可視化できます。また偏光性物質も確認できます。上の画像を見るとわかるように,明視野とも位相差とも偏光法とも異なる視野になります。よく観察すると,偏光法で見えている部分と明視野で見えている部分も混在しています(DIC,撮影/MWS)。

9/4記:いつのまにか,日付が一日進んでいました。深夜に当日分の画像を準備して,それを忘れてその夜にもう一度画像を準備して,2つ同時にアップしたようです。この夏は『むずむず脚症候群』が絶好調で,まともに寝ていない日が多く,タダでさえ冴えない頭がさらにぼんやりしているようです。





2009年9月4日


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きょうの画像は,新田産巣板(仕上げ砥石)の昨日と同じ視野を,偏光法で撮影したものです。偏光法では,透明な封入剤でマウントされている透明物体でも,偏光特性があれば可視化できます。見ているものは偏光ですから,明視野とは全く異なる視野になります。上の画像を見ると,白い輝きとしてたくさんの鉱物が見えます。そのうちの一部は,他の検鏡法では見えなかったものです。屈折率が1.55-1.57付近で,強い偏光性を持ち,無色透明で,明視野や位相差方ではよく見えないこの鉱物は,いったい何でしょうか(Pol,撮影/MWS)。





2009年9月3日


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今度は,新田産巣板(仕上げ砥石)の昨日と同じ視野を,位相差法で撮影してみました。位相差法では,透明な封入剤でマウントされている透明物体でも,ちょっとした屈折率の差によって光の進み具合に変化があれば,それを明暗のコントラストとして可視化できます。上の画像をよく見ると,画面全体に,明視野法や暗視野法では確認しにくかった斑点模様が見えてきています。この砥石は,小さな砥粒の他にも何かを含んでいそうです(Ph,撮影/MWS)。





2009年9月2日


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この画像は昨日の画像と同じ部分を暗視野法で撮影したものです。かなり強力な照明を用いている関係で,粒子が視認しやすくなっています。つまり,コントラストがアップしているというわけです。しかし詳細に見ると,明視野法で見えなかった粒子が暗視野法で可視化されているケースは少ないようです。この試料の場合,暗視野法は,見えているものをより見やすくする,という働きを持つようです(DF,撮影/MWS)。





2009年9月1日


ps

砥石薄片のもっとも薄い部分を高倍率で検鏡してみました。プレパラートの出来が今ひとつなので,開口数0.55で,補正環を回しながらの撮影です。薄片にして透過照明で観察すると,微粒子の粒径がわかりやすくなります。下にスケール(一目盛り10マイクロメートル=0.01mm))を入れてありますので比較ができます。大きくても2〜3マイクロメートル,小さいものでは1マイクロメートル以下の微粒子が含まれていることがわかります。これが研磨粒子とすると,研磨される刃物に付く傷のサイズ(幅)はこの粒子よりも小さくなるでしょうから,傷は光の波長に近くなります。すると研磨面は鏡面に近くなるわけですね(BF,撮影/MWS)。





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