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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ。
2011年6月30日
本ページをご覧の読者であれば,ぼうずこんにゃくの市場魚貝類図鑑をご存じかと思います。驚異的な情報量のサイトです。ぼうずこんにゃく氏は,最近,「からだにおいしい魚の便利帳」という本も出版しました。駅前の書店で平積みになっていて驚きました。この本は魚介類の写真が豊富で勉強になるので迷わず購入。お腹が空いたときに読むといっそう記憶に残ります。このような仕事をしてくれる方がいることに感謝したい気持ちです。
ところで,右側に写っている本は,筆者がこの分野で最高峰と思っている『海の幸』解説:山口昭彦,写真:木原 浩,料理:落合慎一(山と渓谷社)です。料理のレベルが非常に高く,写真の質もさすがはプロと唸らされます。1987年の出版ですから,この料理図鑑はすべてリバーサルフィルムで撮影されたはずです。ヤマケイの本ですから印刷も美しく,パラパラとめくっていても飽きの来ない素晴らしい本です。すでに絶版ですが,古書が安価に見つかることもあるので,お魚さん好きならぜひ手元におきたいところです(画像/MWS)。
2011年6月29日
原発収益は賠償額下回る可能性 立命大教授、単価も割高
2011年6月28日 09時44分
東京電力がこれまでに原発部門で得た事業報酬(収益)は4兆円弱で、原発事故の賠償額はこれと同レベルか、賠償額に足りない可能性があるとの試算結果を、立命館大の大島堅一教授が28日までにまとめた。
原発の電気は水力や火力発電より割高だとの試算結果も得られ、原発の根拠とされていた経済性への疑問が強まった形だ。
東電の有価証券報告書を基に、原子力部門全体の報酬を試算すると、1970〜2007年度の累計が3兆9953億円と推計。賠償額は最低でも数兆円とみられ、8兆〜11兆円との試算もあり、原発事業の収益総額を上回る可能性もある。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011062801000127.html?ref=rank
原子力発電が果たして推進に値する価値があるのかという議論は,1970年代の後半から始まりました。それまでは当然エネルギーを生み出しているだろうという,「見込み」で原子力発電所が建設されてきたと思われるフシがあります。1980年代に入ると投入エネルギーと産出エネルギーの比が詳しく議論されるようになりました。学者によっては,原子力発電所の建設や運転に投入されるエネルギーの方が,発電で得られるエネルギーよりも大きい場合があるのではないか,という試算もありました。当然,電力産業側は,発電で得られるエネルギーの方がはるかに大きく,エネルギー節約的だから,原子力を推進すべきだという論調でした。
産業側は,原子力に不利な試算結果に対して,「現実的でない仮定を採用しているのでそのような結果が出た」という立場を崩さず,そのうちに,原子力が有利というデータをどんどんだしていきました。
こういった過去がありますので,どれほど優れた学者が誠実に計算して得た結論でも,その結果が原子力に不利であれば,そのデータは信用されないもの,というレッテルを貼られる恐れがあるのです。
そこに着目した大島教授は,東京電力の有価証券報告書そのものを使って,経済合理性について検討してきました。これは東京電力の公式なデータですから,産業界も文句はいえません。その結果,大島教授の計算では(試算ではありません),原子力が割高な電力であることが示されました。これは原発事故以前から知られていたことです。
そこに今回の事故が発生し,具体的な被害金額が明らかになってきました。その金額を,過去の有価証券報告書と照合した結果,過去37年間の原子力発電が生み出してきた利益も吹き飛ばすことが明らかになりました。原子力発電は,東京電力の企業活動を一撃で破壊する,エネルギーをたっぷりと溜め込んだ,パワーステーションだったわけです(文責/MWS)。
*1 そんなことは,原子力発電の危険性を訴えてきた人々には,当たり前のことでした。推進側でさえ,ありえない事故(仮想事故)により放射性物質が放出されたときの被害見積を行っています。それがどれほどの規模になるのか,どれほど危険なのかは,知らなかったはずはないのです。しかし事故が起きないことにして,危険性,被害の大きさを考えることを止め,原子力発電所を運転し続けたのです。
だいたい,ありえない事故ならば,被害見積を行う必要はありません。ありえないんですから。にもかかわらず,推進側の彼らがありえない事故に対してシミュレーションを行ったのは,「現実に起こる」ことを予測していたからにほかなりません。
2011年6月28日
不要な紙ゴミは資源ゴミとして回収されるのがオチですが,燃料としてとっておくという手もあります。筆者はたぶん読まないであろう書籍も,一部は燃料用に保存していて,緊急時の炊事に使えると考えています。それでもあまりにも量が多くなるのもアレなので,きょうは文庫本3冊分ほどの不要な紙を熱に変換しました。変換した熱をただ海や大気に捨てるだけでは,原子力発電所と同じで下等な熱の使い方ですので,焼きそばと焼きうどんとタマゴスープの調理に有効利用してから熱を捨てることとしました。
熱効率にうるさい筆者のことですから,紙の燃焼熱はケリーケトルによって水に移転します。1.7リットルほどの水が,不要な紙を放り込むだけで5分ほどで沸騰します。ガス火と比較してもまったく遜色ない火力です。ケリーケトルの煙突効果により,じゅうぶんな吸気が行われ,強い火力が生まれます。吸気の確保を損なうと大量の煙が出ますが…(画像/MWS)。
2011年6月27日
研ぎファンには周知のことですが,いちばん消耗が激しいのが荒砥石です。筆者の主な研ぎ物は包丁なのですが,刃欠け修正や変形した包丁の整形もこなしますので,荒砥の出番がかなりあります。肥後守なども最初は荒砥からはじめます。上の画像は残り少なくなった荒砥の一部です。ほかにもなくなってしまった荒砥がいくつもあります。むかしの荒砥は柔らかいものが多く,出刃包丁などの修正などやろうものなら,砥石ばかり減って何をしているのかわからないほどでした。最近はシャプトンをはじめとして,研削力の大きな,硬い砥石もありますので,作業はかなりやりやすくなったように思います。
小さくなった荒砥は,砥石の面直しなどに使います。コンクリートブロックで擦って荒砥の粒子を出し,それでほかの砥石を研磨します。大村砥はそのままでも砥石の面直しに利用します。この砥石は非常に粗い粒子ですが,粒の角がまるく,深いを傷つけません。なのでシャプトン#1000の面直しには欠かせないものとなっています。ほかに丸尾山の砥石を購入し,最初に使うときに平面を付け直しますが,このときも大村砥からはじめます(画像/MWS)。
2011年6月26日(2)
福島第1原発:セシウム10万分の1以下に 淡水化も開始
東京電力は24日、福島第1原発にたまっている高濃度の放射性物質を含んだ汚染水の浄化システムの試運転で、放射性のセシウム134と同137の濃度がともに10万分の1以下になり、1立方センチ当たり100ベクレル以下にするとの目標を達成したと発表した。
また、濃度を低減した汚染水から塩分を除去する淡水化装置の運転も同日から開始。浄化した水は月内にも原子炉冷却のため注入し、事故収束に向けた当面の目標の一つ「循環注水冷却」を開始したいとしている。
東電によると、高濃度汚染水を米キュリオン、仏アレバ両社の放射性物質除去装置に通した結果、処理前は1立方センチ当たり200万ベクレル程度だったセシウム134、同137の濃度はそれぞれ18ベクレルほどに低下していた。
浄化システムをめぐっては、本格運転を始めた17日夜から約5時間後に想定より早く放射線量が基準値に達して運転を止めるなど、トラブルが続発。23日には汚染水が機器の一部を経由していなかったことが判明し、調整後に試運転を再開していた。
毎日新聞 2011年6月24日 18時49分(最終更新 6月24日 19時02分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110625k0000m040023000c.html
福島第1原発:放射性物質10万分の1に 淡水化も開始
東京電力は24日、福島第1原発の高濃度放射性汚染水浄化システムで、放射性物質の濃度が10万分の1程度になり、目標の処理能力を達成したと発表した。濃度を低減した汚染水から塩分を取り除く淡水化装置の試運転も同日開始した。月内にも処理水を原子炉に注水する循環システムの稼働を目指している。
東電によると、汚染水から油分を分離後、米キュリオン社の装置ではセシウムの除去があまり進まなかったものの、仏アレバ社の装置で予定を上回る除去ができたため、低減目標を達成できたという。
東電は同日、大量の高濃度汚染水がたまっている2号機原子炉建屋で、千葉工業大などが開発した緊急災害対応ロボット「クインス」を使って水位計の設置作業を始めた。国産ロボットが建屋内作業に投入されるのは初めて。だが、ケーブル操作の不具合などで、この日は作業を中断した。
また、東電は1号機の使用済み核燃料プールの水から、放射性セシウムとヨウ素を検出したと発表した。1立方センチあたりセシウム134が1万2000ベクレル、セシウム137が1万4000ベクレル、ヨウ素131は68ベクレル。松本純一原子力・立地本部長代理は「既に分析している2〜4号機のプールの水の濃度と同じレベル。水素爆発などで建屋に放出されたもので、燃料に損傷はない」との見方を示した。【杉埜水脈、徳野仁子】
毎日新聞 2011年6月24日 20時56分(最終更新 6月24日 21時04分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110625k0000m040085000c.html
今回の原子力災害に関しての報道は,めまぐるしくコロコロと変わり,トレースするだけでも相当な能力が必要な感じです。筆者もある程度は報道を読み解く訓練はしていますが,今回は,時間単位で記事が書き換えられたりしていますので,証拠を押さえるのがたいへんです。きょう紹介する記事は毎日新聞のサイトからの引用です。同じような記事が2つありますが,更新時間が異なり,内容も微妙に異なっています。こういった小細工が何を意味するのかわかりませんが,いろいろな報道関係のサイトで,アップされた記事がすぐに消えたり,書き直されたりといったことが起きています。
放射性物質の除去装置については,トラブルの連続で,東電の見込の甘さを批判する記事も多く出ましたが,筆者は個人的な見解として,試運転段階でいろいろ文句をつけても仕方がないだろうと思っていました。何しろ,誰もやったことのない事故への対応で,それをかき集めた人材で,事故後まだ3ヶ月過ぎの段階で,数万トンの放射能汚染水を処理するプラントが動こうとしているのですから,上出来だと思います。一ヶ月も試運転してちゃんと動けば,化学プラントの突貫工事としては驚異的な早さではないでしょうか。
ところで,上の記事にはかなり重要なことが書かれています。もしこの記事が情報も日本語も正確なものだとすると,高濃度汚染水はセシウム2種について,1mLあたりで400万ベクレルとなります。1リットルで40億ベクレルです。1立方メートルで4兆ベクレルですね。
4兆ベクレル=4テラベクレル
汚染水の量は10万立方メートルなので,汚染水に含まれるセシウム2種の放射性物質の総量は,
40万テラベクレル
ということになります。これは,現在公式に発表されている,大気中への放射性物質の放出量の52%に相当します。この量が,大気に放出されて拡散されながら希釈されるのであればまだしも,何らかの事故により,直接に沿岸へ放出されれば,きわめて深刻な汚染が起こることは間違いありません。汚染水浄化システムが正常に機能して,放射性物質の拡散が起こらないことを願わずにはいられません。
しかし不安要素がいろいろあります。原子力発電所の地下に染みこんだ水は,どうしようもありません。浅層地下水に混入すれば,すぐに海に向かって出てくるでしょう。ですから,巨大なダムを作って封じるよりほか方法がないのですが,幅数百メートル規模,深さ数十メートル規模のコンクリートで囲むのであれば,これは大ダム工事並みですから,最低でも数千億円が必要になります。
仮に浄化システムが正常に機能しても,汚染水の濃度が予想通りとは限りません。今回の注水作業では,最初に海水,あとから淡水を入れています。そして津波の海水も建屋に入り込んでいるでしょう。そしてメルトスルーした核燃料が,注水で圧力容器から漏れた水の中のどこかに存在しています。炉の中にも核燃料が残っていて,現在はそこに淡水が注がれて,それが漏れ出ている状況です。すると何が起こるかというと,建屋地下には低温の海水が溜まっていて,そこに,圧力容器で温められた淡水が上に乗っかっていくのです。両者は簡単には混ざりませんから,高濃度汚染水の深い部分,塩分の高い部分には,どのくらいの放射性物質があるのか,まだわかっていないのです。
心配事はこれだけではありません。上の記事では,セシウムについてしか触れていません。しかし今回は発電中の核燃料が直ちに壊れたわけですので,少なく見積もっても,50種類以上の放射性核種が冷却水にぶちまかれたことは確実だと筆者は考えます。これらの核種についても,どれほど除去できているのか情報開示を求めたいところですが,東電は拒否していると伝えられています(文責/MWS)。
2011年6月26日
砥石は小さなかけらまで使えますから,捨てるところがありません。コッパを購入して,使いやすくするために石切り鋸で切断したりもしますが,その切れ端が有効利用できます。主な用途は,包丁のサビ取りで,タマネギなどを切ったときにできる変色を磨きとるのに重宝します。ほかに曲面の研ぎで,切刃を滑らかにする用途や,裏押しでカエリがとれたかどうかわからない場合に刃先をそっと撫でる用途にも使います。上の画像は手持ちのミニ砥石の一部で,新田巣板,丸尾山敷戸前,合さ,戸前,白巣板,カミソリ砥,浅黄の巣板などです。研磨力,硬さ,細かさ,研ぎ上がりの光沢など様々なので,用途により使い分けます。大きさがわかるように,ポケットアルカンを一緒に撮影しています(画像/MWS)。
2011年6月25日
ついに英雄(Au)さんが筆者の目の前に現れました。あまりの大きさに,遠方に置いて望遠鏡で撮影しました,というのはウソで,大きさは秘密です(笑)。でもまぁ,英雄さんを探しにいって見つけられたわけですから,よしとしましょう。珪藻だって,何もわからないところから,脚で稼いで見つけたのです(画像/MWS)。
2011年6月24日
かなり難しい作業でパソコンとにらめっこの日々が続き,この一週間で3回も眠れないまま朝を迎えてしまいました。いかんいかん,悪循環は断ち切らねば。ということで,英雄を探しに行くこととしました。寝不足の日は,寝不足でもできることをやるのが効率的です。暑い都心で無理に体を休めても,さらに疲れるだけでしょう。郊外の渓谷に降り立ち,せせらぎの音を聞きながら英雄さんを探していると,頭のなかのどんよりとした感じがなくなります。英雄さんは水のなかにいるかもしれないので,手も冷えますし,夏の遊びとしてはなかなかの楽しさです。まぁ筆者は山猿なので,山に行くだけで気分が良いんですがー(画像/MWS)。
2011年6月23日
先日掲載した肥後守(ひごのかみ)ですが,まだ仕上げ途中のでたらめ斑目が気になっていましたので,それなりの霞仕上げになるように研いでいました。それで気が付いたのですが,肥後守といえば安価な利器材を利用した最低限の加工だけを施した刃物という印象なのですが,画像真ん中に写っているヤツは,地金と鋼の部分が波打っています。ふつうは,その下に写っているように,地鉄と鋼のラインが直線なのです。うーむ,ひょっとすると,少しくらいは鍛造した刃物なのかしらと,少し嬉しい気分です。ちなみに,波打っている方が「割込登録肥後隆義別打」で,その下が「ハリマ肥後」です。
全国231人の研ぎファンのことも考えて解説すれば,肥後隆義の方は,各種荒砥・中砥で研磨したあと,#3000の工具用人造砥石,次に丸尾山黄色巣板で全体を整形し,形ができあがったら,新田巣板で切刃を滑らかにします。このまま終わりでもいいですが,今回は撮影用に,丸尾山合さで切刃を軽く研磨しています。丸尾山の合さは地鉄を曇らせ,サビさせるのも早いので,水を滴下して,2cm×1cmくらいの合さの薄片で全体を素早く研磨し,十数秒放置して酸化させ,すぐに水洗いして拭います。この工程の加減具合で地鉄をほどよく曇らせ,鋼とのメリハリがつくようにしています(画像/MWS)。
2011年6月22日
人気の星形珪藻の全焦点画像が発掘されたので紹介します。3年ほどまえに撮影したものです。ふつうに透過明視野で数枚撮影し,これをCZMで画像処理して全焦点画像を得ています。星形に内接する五角形が面白いですね。一つの平面だけにピントがあった画像も見栄えがしますが,全焦点画像は構造が把握しやすい気がします。両方見れば,パソコン上でも全体の形がイメージしやすいかもしれません。まぁ顕微鏡を覗くのが本筋ですが…(画像/MWS)。
2011年6月21日
珪藻と戯れていてもっとも困るのは,名前がわからない種がたくあんあることです。数万種もいるので全部を覚えるのは困難ですが,身近にいるものですらわからないものばかりというのではちょっと…。でもそういったケースは多いのです。上の画像は相模湾から拾ってきた珪藻ですが,よくわかりません。殻の微細構造からは,Isthmia(ダイガタケイソウ属)に見えますが,全体の形がわかる資料の持ち合わせがなく,決定打がありません。すべての珪藻の名前がわかる資料を集めるのは,すべての珪藻をあつめるくらい難しいでしょうから,まぁいつか分かるときがくるかも,くらいの気分でいることにしています(画像/MWS)。
2011年6月20日
先に発生した丸い珪藻は,たとえばこの珪藻が近い仲間です。コスキノディスクス属の珪藻で,東京湾から採取したものです。当サービスのプレパラートでも評価の高いCOS-01にたくさん入っていて,きょうの画像もそれを撮影しています。この仲間は2千万年前くらいの海の珪藻土を検鏡しても出てきます。人類がいないむかーしから,海で大量に増えては沈み,その殻が厚く堆積して残っているのです。国内では北秋田市や能登半島が産地として有名です。この珪藻は暗視野で検鏡すると,何となく宇宙を思わせるような雰囲気を感じ,迫力があります(画像/MWS)。
2011年6月19日
進化的には,丸い珪藻がどうも先に発生したらしいのです。現在の海でも,丸い珪藻はたくさんいます。はじめは円形で発生して,それが多様な形態をとるに至った理由を知りたいところです。はじめは水中で発生して,丸い方が都合がよかったのかもしれません。微小藻類には丸っこいのがたくさんいます。でも,現在の珪藻は,水中に浮いていても,丸くない種がいっぱいいます。なので,どうして丸から多様な形態が生まれたのか,不思議ですね。きょうの画像は日本沿岸でもふつうにみられる丸い珪藻で,相模湾から採取したヒトツメケイソウ属の仲間です。2時の位置に穴がありますが,これが「一つ目」なのでしょう。大きさは約0.1〜0.2ミリメートル。この珪藻は偏光性があり,上の画像のように微分干渉法の撮影では,明るく輝きます(画像/MWS)。
2011年6月18日(3)
ウグイも出荷制限…福島・真野川で規制値超
政府は17日、福島県南相馬市などを流れる真野川とその支流でとれたウグイ、ヤマメについて、県知事に採取を含む出荷制限を指示した。
ウグイの出荷制限は初めて。ヤマメは同県内の阿武隈川などでは既に制限されている。
厚生労働省によると、10日にとれたウグイから暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を上回る放射性セシウム2500ベクレル、ヤマメから2100ベクレルが検出された。
県や自治体、地元漁協は、釣りに必要な遊漁券の購入者らに釣りが制限されていることを通知し、釣り人も制限対象の魚が釣れた場合は持ち帰ることができない。
(2011年6月17日18時46分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110617-OYT1T00909.htm
かなり高いレベルの放射性セシウムが検出されるようになってきました。ウグイ,ヤマメともにこれまでの最高値かと思います。これが,この河川に固有の値となるのか,それとも,セシウム降灰地域では,これからも生物への蓄積が続いて濃度が上昇するのか,モニタリングを継続する必要があります。同時に,セシウム濃縮プロセスを明らかにするために,水,水生昆虫,藻類,原生生物などに含まれる放射性物質を測定することも望まれます。陸地に降り注いだ放射性物質は今後長い時間残ることは確定していますから,一度汚された大地を流れる河川についても,長期間のモニタリングを継続する必要があります(文責/MWS)。
2011年6月18日(2)
6月14日の未明に福島第一原子力発電所の4号機付近で爆発があったのではないかという推測がネット上で出回っています。ライブカメラの動画を見ると,2:00付近から急に煙が立ち上っているのが判別できます。仔細に見ても霧の発生だけで説明できるような気がしません。そこで茨城県の放射能モニターを見てみると,6月14日の朝方に二つのピークが見えます。最初のピークはおおむね北風のとき,次のピークは東風のときです。ピークの形状は降雨のパターンとは違うように見えます。
このような状況証拠から判断すると,現場で大きな放射性物質の放出があったことは,間違いないように思われます。放射性物質はいったん海に出ながらも岸沿いを南下し,数十キロメートルも離れた地点の放射線レベルを上昇させました。これは隠してはならないことで,何が起きたのか説明が必要ですが,筆者の知る限りまったくニュースになっていません。小規模の放出だからと隠すつもりなのでしょうか(文責/MWS))。
2011年6月18日
きのうはわかりやすい形の珪藻を紹介したので,きょうは,わかりにくい形の珪藻を上の画像で紹介しました。名前はよくわかりません。海にいて,浅い砂地の表面にいます。でも,どこにでもいるのかどうかはわかりません。筆者はいまのところ,相模湾東部で見つけています。殻はくびれ,微妙にひねりがあり,湾曲したり反り返ったりしています。同じ種を拾い出して並べてみると,けっこう形が揃っています。何の必要性があって,このような歪んだ形になるのか不思議です。珪藻というと,整った形態の生物というイメージが強いのですが,こういったわけのわからない形の種もけっこういます(画像/MWS))。
2011年6月17日
きょうは,三角,四角,五角形の珪藻を並べてみました。約0.1ミリメートルくらいの珪藻たちです。どれもミツカドケイソウ属の仲間です。筆者が相模湾のあちこちをあるいて三カ所から採取したものです。珪藻はアモルファスケイ酸でできていますから,その観点からは,どのような形でも作ることができるように思います。しかし水中で生きていくためには,強度も必要ですし,材料を無駄に使うこともできませんから,最適な形態が決まってきてもよいように思います。にもかかわらず,数万種の珪藻がいて,その形態も様々だということは,いろんな形でも生きていけるほど,環境というのはけっこう余裕があるものだ,ということを意味しているのかもしれません。
それにしても,どうしてこう,人間にとってわかりやすすぎる形になるんですかね。形というのは人間がその規則性をそう認識しているから形なので,自然界はそのときそのときの条件に応じて,ある平衡条件のもとである構造が保たれているに過ぎないのでしょうか。土星にも六角形があったりするわけですし(画像/MWS))。
2011年6月16日(2)
福島市、子どもに線量計を配布へ
東京電力・福島第一原発の事故を受け、福島市は幼稚園から中学校までのすべての子どもに放射線の線量計を配布することにしました。
福島市が線量計を配布するのは、市内のすべての幼稚園児・保育園児と小・中学生のあわせて3万4000人です。
「待ってられませんので、やはり独自でできる範囲で、計測器の入手もなかなか難しいんですが、これをやっていかなければならない」(福島市・瀬戸孝則市長)
福島市によりますと、夏休み明けの9月から3か月間、子どもたちに線量計を身につけてもらい、放射線の影響を研究機関に分析してもらうとともに、今後の対策にいかすということです。(14日11:37)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4750683.html
筆者は4月11日付けの本欄で,もし子どもたちに最大20mSv/年を許容するなら,
1)内部被曝を可能な限り低くする施設を全校に配備
(シャワー,活性炭マスク,ゴーグル,防護服,着替えなど)
2)児童や生徒には線量計装着を法律で義務づけ。放射線管理手帳を交付
3)累積線量を国が管理し,子どもが平均寿命に達するまで国が健康管理を無料で行う
4)児童・生徒には放射線作業従事者の手当として1人あたり年間300万円(非課税)を支給
5)以上の財源は現在の年金受給額を削減することにより捻出
例えばこのような対策をすべきで,しかしこの対策よりも,放射線を浴びせないことが望ましいことを主張しました。現状では,行政の対処としては,土壌の天地返し以外はまだ何も行われてない状況です。そのような中,福島県伊達市,福島市が子どもに線量計を配布することを決めました。子どもの行動パターンは一人一人違いますので,個人に線量計を配布して被曝量を管理することには意義があると考えられます。
しかしこの記事の内容は,筆者の主張する2)とは異なっているような気もします。夏休み明けから冬休み前までの期間に被曝線量を測定してもらう,という内容になっていて,子どもたちの放射線防護に対して何ら前向きの内容となっていません。ただ,データを集めるだけということです。すでに年間数ミリSvの被曝が避けられない条件では,そんな呑気なことよりも,いかに被曝量を低く抑えるかを考えるのが重要でしょう。
いま現地で被曝量を低減しようと動いているのは一般の方々です。小学校などは こんな工夫 も見られます。涙ぐましい努力です。でも,子どもたちに,こんな思いをさせちゃいけませんよ。
2011年6月16日
『はやぶさ』プレパラートは,投入珪藻数からみれば,それほど多いものではありません。これまでにも,200個〜400個クラスの珪藻プレパラートを製作してきましたから,それらから見ればスカスカに見えたことでしょう。でも,宇宙はスカスカですから,空間を大きくとらねばなりません。だから,がらーんとしているのが,いいのです。
ところで,このスカスカなプレパラートでも,作るのはけっこう大変です。きょうの画像は『はやぶさ』の珪藻配置図ですが,あちこちを這いずり回って集めた珪藻を使って組み上げていることがお分かりかと思います。一枚作るにも,いろーんなことを考えながら,まとめあげないといけません。でもホンネを告白すれば,珪藻を拾い上げてストックする作業,並べる作業の二つは,仕事自体がストレス解消効果をもっています。何時間やっても平気です(^^;
ちなみに,この『はやぶさ』。すでに手元にはありませんので詳細はわかりませんが,はやぶさの横幅は0.3mm〜0.4mm程度だと思います。自然物を用いて形を構成したものとしては,たぶん,世界でいちばん小さな『はやぶさ』かもしれませんね(画像/MWS))。
2011年6月15日
筆者は『のぞみ』時代から日本の惑星探査に注目していましたので,当然,『はやぶさ』も当初から応援していました。ふだん筆者はスクリーンセーバーなるものは使わないのですが,ほとんど唯一ダウンロードして,密かに眺めているのがJAXA製作の『はやぶさスクリーンセーバー』です。寝る前に,部屋の電気を消して,このスクリーンセーバーを眺めながらはやぶさを応援していたわけです。非常勤で講義をしていた頃は,パソコンを使う日に,これをセットしておいて,それとなく学生に見せたりしていました(^^)/~
いま見てみたら,まだ こちら にあるようなので,皆さんもどうぞ!(画像:JAXAクラブのスクリーンショット)。
2011年6月14日
珪藻プレパラート『はやぶさ』をご覧頂いた方々は,いろいろと興味を感じたようです。天文関係の支援グループの方々からは,有り難いことにコメントも頂戴しました。どのようなご質問でも迅速詳細に返答することで定評のある(^^; 筆者が,さっそくおこたえいたしましょう。
・星型の珪藻はかわいいけれど、星は星形ではない。
うむむ。これの答えはたくさんあるので難しい…。
一個目の答え。はい。おっしゃる通りでございます。5歳のときから天文少年だった筆者は,星が星形ではないことは小学校に上がる前には知っていました。でも,珪藻スライドの美しさと分かりやすさを考えて,あえて星形の珪藻を恒星としてチョイスしました。ちなみに,視野の外側左上に太陽が配置してあり,それは大きな円形です。
二個目の答え。太陽を除けば,肉眼で恒星の形を円形と判別した人はいないと思われます。光学的には点であって,肉眼の内部にエアリーディスクとジフラクションリングがあるはずですが,それも肉眼では見えないと考えられます。遠方の星は面積無限小の点であって,この光は大気の揺らぎによって光路が微妙にふらついていて,瞬いているようにみえます。また,人間の目に存在する涙やまつげなどによって,見る瞬間瞬間ごとに恒星の点のイメージは変化します。これらの現象も原因として,恐らく,人類の間では星形は星を意味するようになったのだと筆者は想像します。つまり,星は星形ではありませんが,星形は星なのです。
三個目の答え。じつは,円形の恒星で星や星座を作ったことは何度もあります。でも,スペースと恒星の大きさの関係で納得いくデザインにならず,すべて捨てています。今回も円形の恒星が使えないか検討しましたが,はやぶさのイメージに合わなかったので却下しました。
四個目の答え。星形の珪藻は貴重品なので,今後,星座などを製作するときには,円形の珪藻を使うことになるかもしれません。。しかし珪藻は表面に微細な穴があり,それが恒星表面の対流セル(粒状斑)に似ていないこともないですが,でも似ていません(^^;。。
・星形の珪藻があるなんてすごい!どんどん出すべき(上のコメントとは別の人です。半分以上は出すべき派でした)
すごいですね。筆者も,星形の珪藻を採取できたときは小躍りして喜びました。どんどん出したいのですけど,コレ,けっこう数が少ないのです。集めるのがたいへんで,10粒も並んでいたら,大変な高級品です。
・星形珪藻などを使って、星座などを書いてほしい。書いてもらえるなら、下地になる画像はいつでも提供します。
・12星座を作ってほしい
ありがとうございます。今後の検討課題とさせていただきます。上にも書きましたが,過去にも製作を試みており,でも,納得いかない気分があります。星座であるからには,ある程度の気品が必要で,「いもっぽい」ダサイ感じでは,なんとなく製作者として興が乗らないのです。。でもがんばります。。
・ハヤブサ以外にも作れるなら、どんどん作ってほしい
『販売品目』のページから『Jシリーズ』のところを辿ってご覧下さい。各種のデザインがございます。デザインは自由にできるわけではなくて,珪藻の形や,技術上の問題によって,かなり制約があります。その中で構成をどう考えていくか,ということになります。これからも作ってみたいデザインはいろいろありますので,気長にお待ち頂ければと思います。
・3Dってできる?
手前と奥に配置することはできますが,封入に失敗する確率が上がるのでやっていません。一つ一つの珪藻は,とても貴重な宝物なので,製作に失敗することは大変な損失になるのです。
・星形の珪藻の名前は? どこで取れるの?
星形の珪藻に関して標準和名がついているのを見たことがありません。属としては,ミツカドケイソウ属となります。属の基準種は三角形なので,ミツカドケイソウ属という名前になっているのだと思います。学名では,この星形の珪藻は,Triceratium pentacrinus (Ehrenberg) Wallichに該当する可能性が高いと筆者は考えています。この珪藻は世界中の沿岸に分布しますが,筆者は相模湾で見つけました。相模湾では,西部でも東部でも見つかります。岩場の方がよいようです。大潮の干潮時に,岩場の砂の上や,石の上の堆積物,海藻に付着している珪藻などを集めてきて探します。存在確率は1万分の1くらいなので,珪藻を100万粒かきわけて探しても100粒くらいしか得られません。ですから,少しの珪藻を採取しても,「いない」と思ってしまうことがほとんどです。
・どうやって作るの?
まず,海に川に池に行きます。何とかして珪藻を採取します。珪藻は泥の上にいたり,石に貼り付いていたり,海藻にくっついていたり,砂浜の砂に潜っていたり,水中を漂っていたりしますので,あらゆる手段を駆使して採取します。とってきた珪藻は,ガラス質の殻だけにする必要がありますので,薬品や電磁波などを使って,あの手この手で処理を行います。還元処理,酸化処理,光酸化,キレート剤処理,酸処理など,化学的センスが必要な作業となります。有機物などの不純物が分解できたら,鉱物粒子と珪藻を分離します。これも気長な,えんえんと続く作業です。分離ができたら,珪藻をすすぎます。純水で何度も何度も洗って,きれいな殻にします。そうしないと,乾燥させたときに,珪藻のお団子ができてしまい,全ての試料がゴミになってしまいます。乾燥させた珪藻は毛先でつついてほぐします。たいへん難しい操作です。ていねいにほぐしていくと,壊れていない珪藻の殻が見つかります。壊れていないとは言っても,それは実体顕微鏡でそう見えるだけで,本当に壊れていないかどうかはわかりません。だから,心眼で見抜くのです。そういった心眼的無傷の殻を毛先の静電気でくっつけて拾い上げ,きれいなガラス基板上に保管します。筆者はこれを珪藻在庫と呼んでいます。100種以上の珪藻が数千個を越えたとき,標本製作に入ります。これも毛先で一つ一つ拾い上げ,毛先の弾力で珪藻を押して運びながら,のぞみのデザインに並べていきます。組み方に方向性があるので,決まったルールにしたがって並べて行きます。並んだら珪藻を動かないように固定し,封入剤を浸透させ,スライドグラスにセットして硬化を待ちます。このとき珪藻が動いてしまったら,すべての努力は水の泡です。なお,並べたり拾ったりする操作は顕微鏡下で行います。珪藻を汚さないように,空調は半日以上停止したあとに作業を行います。風の強い日は空気がきたないので作業ができません。室内には空気の対流があるので,温度変化が大きな冬場などは,日が射しただけで作業ができなくなることもあります。それから,作業に使用する毛先などの道具は,すべて自分で作ります。人のまつげが具合がいいので,顔を拭いたタオルなどについている,形のよいまつげを何本も保存しておき,これを脱脂してから作業に使います。一つ一つの作業は,誰でもできるのではないかと思います。でも,「珪藻を並べる」という目的地に向かって,すべての作業を思いついて,高いレベルで維持し,実際に製作完了する,となると,そう簡単なことではないと思います。筆者は,「珪藻を並べる」というのは,「技術」というよりもむしろ,「生き方」ではないかと最近思います。
皆様,珪藻に関してコメントしてくれました。有り難いことです。「はやぶさのエンジンの向きが違うぞー」などというツッコミが来たらどうしようかと思っていました(正しい配置にすると顕微鏡では見えなくなってしまうのであのように配置したのです)。今回の,サイエンスキャラバン311の大槌町訪問によって,また,「珪藻をみた人」が増えました。皆が興味を示してくれたのは,『はやぶさ』の偉業があったからにほかなりません。ホント,素敵なチャンスをいただきました(画像/MWS)。
2011年6月13日(3)
6月13日は『はやぶさ』記念日です。昨年のきょう,はやぶさは見事に帰ってきました。『本日の画像』でもはやぶさを取り上げました。あっさりと書いていましたが,じつのところ,祝い酒をたくさん用意してネット中継に貼り付いていました。翌日がつらかったこと…。。
珪藻プレパラートJ149『はやぶさ』は,サイエンスキャラバン311スタッフの大槌町訪問で,特製の暗視野顕微鏡とともに皆様に披露されました。スタッフの谷内様からの連絡では,初日は,「感嘆の声ばかりだった」,二日目でも「今日の観察でも「うわ〜」「ほぉ〜」などの感嘆が多くありました。」とのことでした。(^^)/~
きっといろいろな方々が顕微鏡を覗かれたのだと思います。被災された方,被災地支援の方,教育関係者,行政の方など。現場はいろいろな方々がたいへんな状況で活動しておられます。そんな中,ほんのひとときでも,『はやぶさ』を見て,「うわ〜」と思ってもらえたのなら,筆者としてはこれに勝る喜びはありません。
ご協力頂いているサイエンスキャラバン311関係者の方々,顕微鏡を覗いてくれた現地の方々に心より感謝申し上げます。
『はやぶさ』を見事に運用し尽くしたJAXAをはじめとする関係者の方々にも敬意を表します。
はやぶさ! スイング・バイ! 次いくぞ!(画像/MWS)。
2011年6月13日(2)
当サービスの技術が光るプレパラート,J149『はやぶさ』は,被災地におられる方々を応援するため,キセノンガスを噴射しつつ全力で岩手県・大槌町への飛行を続けていました。サイエンスキャラバン311スタッフの助力を得て,現地で『はやぶさ』の勇姿を見せるためです。
筆者の個人的な気分としては,J149は多少の瑕疵こそあれど,これまで製作したものではストーリー性や配置・構成,その社会的背景からみて,最高傑作だと思っています。特にはやぶさの構造は,珪藻を二段重ねにしてその下側に支柱を通すという離れ業が必要で,封入剤の浸透も考えればその難易度は半端ではありません。
そして命の帰還カプセル。これはChaetoceros(ツノケイソウ属)のresting spore(休眠胞子)という特別な細胞のケイ酸被殻を使っています。筆者はresting sporeの研究で学位取得しましたので,特別の思い入れがあります。『はやぶさ』の帰還カプセルに珪藻の休眠胞子を思いつき,実際に製作できる発想と技術を持っているのは,宇宙でオレだけだ!という自負があります。
その作品に,被災地支援という最高の舞台が与えられました。がんばれはやぶさ! みんな待ってろよ!(画像/MWS)。
2011年6月13日
砥石のページに若干の画像を追加しましたので,全国の研ぎファンの方,よろしければのぞいてみてくださいませ(画像/MWS)。
2011年6月12日
切刃を細かく研ぐと光を反射するようになり,鏡面と呼ばれているような状態になります。しかし筆者はこの分野に関してはあまり詳しくないので,どのくらい鏡に近ければ鏡面と呼ぶのかを知りません。研ぎが粗くても,切刃すれすれに光を入射すれば反射しますし,垂直に入射すれば拡散してぼけてしまいます。たぶん,研ぎにおける鏡面という言葉は,人それぞれの解釈のような気もします。でもまあ,鏡面の度合いを比較することならできそうなので,反射させる物体を決め,照明とカメラを固定し,同じように刃物を置いて撮影してみましたが…。これがまた,たいへんに難しい。ちょっとした角度や写し込む文字によって印象が変わります。ほとんどの仕上砥石では文字が写りにくいので,入射角を浅めにとる必要があります。
そんな中の一枚が上の画像です。京都・尾崎産の合砥で仕上げたもので,これなら鏡面と言ってよさそうです(画像/MWS)。
2011年6月11日
大学時代の同期が仕事のついでに立ち寄ってくれました(立ち寄ったついでに仕事にいきました?)。木星が太陽の周りを1.5周するくらい久しぶりでしたが,なんだか3日振りに会ったような感覚で,近況報告に話がはずみました。この同期(と,ほかの数人)とは,朝7時半頃から講義が始まるまでの時間に,いかにじぶんの大学がダメなところか,大学教員の授業が下手で時間が無駄になるかといった話題から始まって,環境論や原発,環境保全論,水質汚濁などについて何年間も語り尽くした間柄です。徹底的に言いたいことを言ってきたからか,ホント,数年ぶりという感じがまったくしませんでした。
とうぜん,筆者は「珪藻をみた人」を増やすために標本を覗いてもらいましたが,彼のお気に入りは今日の画像の珪藻だったようです。この珪藻,どこでも人気があるのですけど,大きくて繊細でゴージャスな感じがいいのかもしれませんね。当サービスでは,この珪藻はいつでも安定供給できる主力の製品です。散布スライドでも,並べることも,どちらでもOKです。皆さんもどうぞ(画像/MWS)。
*1 当時の国立大学はまだ専任教員が授業を「雑用」だと思い込んでいる人が多かった牧歌的時代の終わり頃でした。講義内容を理解していない教員,視力の弱い学生が最前列で一生懸命見ようとしても読み取れないような板書を改善しようとしない化学の教員,朝から酒を飲んで「キミ,ここ訳して」で授業が終わる語学の教員,紙コップを灰皿代わりに「君らも吸っていいんだぞ」といいながら授業を進める何人もの教員,一度も授業に出席せず,テストにも出なかった学生が,「先生,単位出ているでしょうか? 試験は7割方できたとおもうのですが…」と教官研究室を訪問し,「キミ,まぁまぁできてるよ。ところでキミ,学籍番号何番だっけ」「510XXです」 これで単位が出てしまう授業。
まぁ,いま思い返してもひどいものでした。筆者は,大学は勉強,学問をするところだと勘違いしていたので,卒業単位140のところを,170以上の単位を取得した覚えがあります。いろいろ学びたかったのです。しかし…。やっぱし筆者の脳みそはおかしかった。大まかな傾向から全体を予想できなかった。。
筆者は,講義内容要旨に書かれた内容と,授業内容のあまりの違いに愕然として,講義内容要旨というのは体裁だけ整えた官僚的な作文であることを理解しました。そこで,授業を受けた上で,シラバスを独自に書き直して,知人に配布したりしていました。それはかなり批判的に,おもしろおかしく揶揄して書いたものですが,ある教官に読まれてしまい,「参考になったよ(笑)」と声をかけられるという背筋の凍る思いもしました。その教官は某大学の学長さんです。お世話になりました。。
学生時代に,きちんと整って実用的な知識が得られ,しかも,聴く気にさせる(ここが重要)優れた講義は数えるほどしかありませんでした。中でもすぐれていたのが非常勤講師の授業で,このときの講義ノートは,イメージと論理を伝えるための手法として,筆者のお手本となっています。間のとり方と絵の描き方が素晴らしく,「その人」の顔を見ているだけで良い体験をしているような気分になりました。あとは教養の授業で,中谷宇吉郎先生の弟子の方が素晴らしかった。内容的には筆者ごときがすべてトレースできるようなレベルではなかったのですが,それでも食らい付いていこうと思わせる何かが,「その人」にはありました。
どうも,講義というのは,「その人」がどういう人なのかによって,受講者の心理的な態度が微妙に変化し,結果に影響を及ぼすようです。簡単にいえば「熱意」ということなのでしょうが,「熱意」にもいろいろな種類があります。うまくは言えないのですが,筆者が尊敬して受講できるような先生は,自分できちんと理解したことを,自分で構成したストーリーに沿って話をしているようです。情報だけならどこにでも転がっていますが,それを拾っても力になりません。ストーリーテラーが構成してくれてはじめて役に立ちます。web時代になって情報はいくらでも拾えるようになりましたが,ストーリーをもって語ることは,少しも簡単にはなっていません。教育というのは難しいものだなあと考えさせられます。
2011年6月10日
形のできあがった鉋などをサラサラと研ぐのも楽しいのですが,ボロボロに錆びた古い刃物の再生はもっと面白いのです。使えないものが使えるようになる過程も良い気分ですし,ぴかぴかの金属光沢が出てくるのが精神衛生上たいへんよろしい。。ということで,疲れたときなど,ががーっと研ぎ物をしたくなるときがあります。筆者は子どもの頃から,ぼーっとするというのが苦手で,それがどういうことなのかが今でもよくわかっていません。脳みそが勝手に何かを考え続けてしまうのです。ですから幼少の頃から,布団に入っても2,3時間も寝られないなどという日々を過ごし,それが普通になってしまいました。今でもその名残が残っていますが,研ぎを覚えてからは,1時間以内には寝られることが多くなってきたような気がします。筆者の脳みそは,研ぎをしているときに休息しているのかも,と思ったりもしています。画像は,骨董市から連れて帰った肥後守です。まだ最終仕上げ前ですが,ここまで形を作っておけば,あとは楽チンです。ボロボロの刃物がここまできれいになるのに,10種類くらいの研磨用具・砥石を使いますが,脳みそはほとんど使っていない気がします…(画像/MWS)。
*1 子どものころからむずむず脚症候群の重症患者でもあったので,春から秋にかけての入眠困難はそこにも大きな原因があります。むずむず脚症候群も脳の病気とされていますので,やっぱし筆者の脳がおかしいという結論は変わりません…(^^;
2011年6月9日(2)
ひじょうに目の細かい砥石で鉋を研ぐと,鋼は鏡のようにピカピカに光り輝き,地鉄は折り畳んだ模様が美しく浮かび上がります。これが楽しくて,筆者は観賞用の鉋を一枚持っていて,暇があれば砥石を変えて研いでいます。研ぎ上がりは砥石の種類や研ぎ方,水の量,水分の拭き取り方などによって様々に変化します。とても研ぎにくくて,コツが見つからない砥石があると思えば,サラサラと楽に研げて素晴らしく美しい研ぎ上がりになる砥石もあります。
きょうの画像は,手持ちの砥石でもっとも細かいと思われる,産地不明(中山かも…)の古い(手挽き)砥石で研いだ鉋と,丸尾山の名品『合さ』で仕上げた鉋です。古い砥石の方は,カッチリと合わせるのが難しい,硬い砥石です。ひじょうに食い付きも強く,地もひきやすく,扱いの難しい石ですが,上の画像に示した通り地鉄の模様がくっきりと浮かび上がってきます。『合さ』は滑らかで柔らかいのに硬さもあり,粗い研ぎ感なのに細かさもあり,泥っぽさが多少あるのに粘りすぎないという,まことに不思議な砥石です。じつに気分良く研ぐことができ,簡単に良い刃がつきます。仕上がりは,下の画像にように,しっとりとした感じの地鉄に仕上がり,鋼とのメリハリが出てきます。全国227人の研ぎファンのことも考えつつ,こんな違いを筆者は楽しんでいるのです(画像/MWS)。
2011年6月9日
都下水処理施設内で高放射線量…避難区域に匹敵
東京都大田区の下水処理施設内の空気中から、毎時約2・7マイクロ・シーベルトの放射線量が検出されていたことが、都の調査で分かった。
計画的避難区域の福島県飯舘村の放射線量と同程度で、文部科学省によると、都内でこれほどの放射線量が検出されたのは初めて。放射性物質を含む汚泥の影響とみられるが、都は「検出場所は屋内。敷地の境界では問題なく、誤解を招く恐れがある」とし、調査結果を公表していなかった。
都によると、この施設は都下水道局の「南部スラッジプラント」で、都内2か所の下水処理場で発生した汚泥を集めて焼却し、灰を東京湾に埋め立てるなどしている。都の5月の調査では、この施設の焼却灰から1キロ・グラム当たり1万540ベクレルの放射性セシウムを検出していた。
(2011年6月8日14時33分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110608-OYT1T00603.htm
こういったデータは,いち早く公表されなければならないのです。都内にも放射性物質が降り注いだのは事実ですし,吹きだまりなどがホットスポットになることも皆に知られつつあります。水道水からは一過性ではありましたが放射性物質が出てきました。水生生物からは放射性セシウムの検出が続いています。このような状況で,何が「誤解を招く」のでしょうか。理解できません。
下水処理施設は全国にあります。汚泥を焼却灰にする処理も各地でふつうです。もちろん放射性物質が降り注いだ東北〜関東でも下水汚泥の焼却はふつうです。ですから都内以外でも,下水処理施設内での空間線量がひじょうに高いレベルになっているという可能性が高いのです。いち早くデータを公表し,下水処理施設で働く人々の放射線防護に関して対策を講じ,施設外部への汚染の広がりを防止しなければなりません。
と,ここまで書いておいたら,夜になって下のニュースが飛び込んできました。
都の汚泥処理施設 付近の土から放射性物質
2011年6月8日
江東区の保護者でつくる「江東こども守る会」は七日、都庁で記者会見し、都の汚泥処理施設「東部スラッジプラント」(同区新砂三)近くのグラウンドの土から高濃度の放射性セシウムを検出したとする独自調査の結果を発表した。
調査は、同会が神戸大大学院の山内知也教授(放射線計測学)と実施。検出されたセシウムは一平方メートル当たり二三万ベクレルで、放射線障害防止法で、放射線管理区域からの持ち出しが制限される汚染基準の約六倍という。また、プラント周辺と同区の荒川、旧中川沿いでは、放射線量が毎時〇・二マイクロシーベルトを超える地点が多くあった。山内教授は「値が高い地域の位置と風向きを考慮すると、下水を通じてプラントに集まった放射性物質が処理過程で再び大気中に放出されている可能性が高い」と主張。同会は同日、プラントの稼働停止と調査などを求め、都に要望書を提出した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110608/CK2011060802000025.html?ref=rank
山内教授の主張通りなら,汚泥処理施設が放射性物質の放出装置になっていて,その周辺に,二次的なホットスポットが形成されているというわけです。これは,これまであまり報告されていない種類の放射能汚染かと思われます。放射性物質は,現代にあっては隠すことができないのです。測定すればわかるのです。だから,どのような調査結果でも公表すべきなのです(文責/MWS)。
2011年6月8日
こちらのブログより引用
アーニー・ガンダーセン氏: 私はこれまで、今回の福島の事故はチェルノブイリよりひどいと言い続けてきましたし、その考えは今後も変わりません。事故後の2、3週間で膨大な量の放射性物質が放出されました。もしも風が内陸に向かって吹いていたら、日本は滅びていたかもしれません。それくらい大量の放射性物質が出たわけですが、幸運にも太平洋のほうに流れていきました。もしも日本を横断する形に流れていたら、日本はふたつに分断されていたでしょう。ですが、今では風向きが変わって南に向かっています。東京の方角です。今私が心配しているのは大きな余震が起きて4号機が倒れること。もしそうなったら、日本の友人の皆さん、逃げなさい。そんな事態になったらこれまでの科学はいっさい通用しません。核燃料が地面に落ちて放射能を出している状態など、誰も分析したことはないのです。
風が内陸に向かっていたなら日本は滅びていたかもしれません…,これは筆者の認識とまったく同じです。筆者は震災当日に,電源喪失が報じられた時点で,燃料溶融は避けられないものと覚悟し,周囲の知人には放射線防護について連絡をしています(*1)。そのときに,最悪の場合は福島周辺の東北地方太平洋側は今後,人が住めず農作物も海産物も利用できなくなる可能性を付記しました。実際は,放射性物質が大量に放出されているときに,強い北西〜西の寒気が連続して流れ込み,放射性物質の大半を海に運びました。しかし,3/12の水素爆発時前後と,3/15の風,3/21の降雨により,放射性物質は内陸にも運ばれて汚染を残すこととなりました。
現時点でも,放射性物質の放出量については不確定要素が多いのですが,陸に落ちた量は海に向かった量の1/100程度ではないかと筆者は推測しています。現在,陸上がこの程度の汚染で済んでいるのは,大量放出時に西風が吹いたという偶然によるもので,事故の規模が小さかったということではないということは,決して忘れてはならないことだと筆者は思います。
そして,このわずかな量の汚染でさえ,福島県は全域で避難してもおかしくないレベルの放射線量になっており,またプリュームの内部被曝も相当なレベルになってしまいました。事故現場周辺では,非常に高い汚染レベルが続き,これは放射性セシウムの半減期を考えれば,100年単位で居住や農業などが制限されることになります。放射能汚染の残酷なところは,見た目には何も変化がないのに,危険性を物理的に測定することができ,しかもその危険性の持続時間が長期に及ぶことまでもがわかってしまうことです。
東日本大震災:警戒区域「人も家畜もすめないところ」 農水省職員、説明会で発言
◇住民抗議「夢を壊すな」
福島県郡山市の避難所となっているイベント会場「ビッグパレットふくしま」で2日、同県富岡町の家畜処分の説明会が開かれ、農林水産省の男性職員が福島第1原発から半径20キロの警戒区域を「現状では人も家畜もすめないようなところ」と発言、参加者から抗議を受けていた。同省職員はその場で謝罪した。
農水省などによると、説明会には同町の畜産農家約50人が出席。職員の発言は、家畜の処分方法や補償内容を説明後、質疑応答であった。参加者から「(区域内で)家畜の世話ができないか」などの意見が出たのに対し「20キロ圏内での世話は人の健康を考えると非常に困難。現状では人も家畜もすめないところ」と発言したという。
その後、参加者の男性から「帰ることを前提としているのに、否定的で夢を壊すようなことを言わないでほしい」との抗議を受けた。男性職員は「言葉が不適切で申し訳ありません」と謝罪したという。【蓬田正志】
毎日新聞 2011年6月4日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110604ddm041040155000c.html
20キロ圏内でも汚染の強弱はありますので,厳密に議論することは難しいのですけど,この農水省職員の説明は正しいのです。とても住めないから住民を避難させ,家畜を処分しなければならないのです。現状では。放射性物質による汚染は,住めるか住めないか,結論を出すことができてしまうのです。
参加者の男性は,抗議先を間違えています。否定的で夢を壊す放射性毒物をまき散らしたのは原子力発電所です。これを運転してきたのは東京電力です。原子力開発を推進し,補助金制度を生み出して自治体を補助金漬けにして,御用学者をたくさん育ててきたのは主に自民党です。夢を壊したのは彼らなのではないでしょうか。
この参加者の男性は,突然に住居も,大切な家畜も失い,ほんとうに可哀想です。恨みの気持ちを農水省職員に向けずに,何があっても絶対安全だ,放射能が漏れるのは隕石が落ちるようなものだ,という原子力関係者に向けていただければと思います。絶対安全が裏切られたのですから,口を開けば安全とのたまった原発推進学者や自民党員の玄関を一つ一つ叩き,降りかかった放射能で故郷も住居も家畜も一度に失った悲しさを,夜を徹して聞いてもらいましょう。大切なのは避難や補償だけではありません。正当な怒りのやり場を準備しなければなりません。多くの国民は安全とだまされていたのですから(文責/MWS)。
*1 「本日の画像」では3月12日の深夜更新分で,「念のため防災の備えをしておきましょう。原子力災害では初期の内部・外部被曝を低く抑えることが大事です。放射性物質の拡散が起きても対応できるように,居場所を確保し,飲料水,食糧を確保しておけば安心できます。」と書いています。原発事故では,壊変熱が多い最初の数日で爆発的な量の放射性物質が放出されます。そのため,最初の汚染で大規模な内部被曝,外部被曝量が起きます。「居場所を確保し」というのは,放射能が降りかからないところ,目張りができるところに避難できるようにということを意味します。「飲料水,食糧を確保し」というのは,高濃度の放射性物質が降り注いでいる状況では外出できませんし,水も汚染されて飲めなくなるので,その前に確保しましょうということです。
放射性物質の放出タイミングと風向きによっては,たとえば東京が現在の福島県内と同じレベルの汚染状況になる可能性はあったわけです。実際のところ,東京やその周辺では,放射線管理区域になる手前付近のレベルですが,場所によってはホットスポットもあり,放射線防護の備えをした人としなかった人では,リスクの議論は別にしても,被曝量には明らかな差が出たと思います。
2011年6月7日
筆者の最初の研ぎ物は,たぶん中学生のときに腕時計を分解しようとして,精密ドライバーを細くしたのが最初だったかな,というのは以前にも書いた気がします。ではそれから数年後に何を研いでいたのかというと,きょうの画像の品物です。筆者は学生の頃に80386SXを使い始めた程度の中年オヤジなのですが,それでも,同年代で,この品物を何だか知っている人は相当に少ない印象です。以前,年末恒例大忘年会で披露したら,ほとんどの人が知りませんでした。この道具を,耐水ペーパーで研いで使っていました。
筆者がなんでこれを知っていたのかというと,高校生の頃,内田洋行のカタログがどこかに転がっていて,それの製図用品のページを何度も眺めていたからです。セット品などは,最高級の一眼レフカメラが買えるようなお値段で,カタログでみるのがやっとでしたが,デザイナーでもトレース屋でもないのに,何故か欲しくてたまりませんでした。今にして思うに,道具というものに興味があったんですね。そういえば中学校の頃にも,まともなピンセットが欲しくて,全財産を叩いて?HOZANのP-88(だったと思う)というピンセットを買った覚えがあります。これは実に使いやすくて,良い道具とはこういうものかというお勉強になりました。
それで結局,このカラスの口に似た道具は,ステッドラーやロットリングやPIGMAの細線が引けるペンよりも実用性が劣ると気づき,時代の遺物として保存されることになりました。いったいどのくらい役に立ったのかと思うと心許ない気もしますが,そのうちに思いもよらぬ新しい利用法を思いついて生まれ変わるのを待つことに(^^;しています(撮影/MWS)。
2011年6月6日
海底土壌から9271ベクレル いわき沖漁場
福島県は3日、いわき市沖の漁場9地点の海底土壌に含まれる放射性物質量を初めて調べた結果、最高で1キロ当たり9271ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。県の1973年以降の調査では、海底沈積物の放射性物質の最高値は4ベクレルで、2000倍以上を検出した。
県によると、5月26日に採取した海底の土壌を調査した。いわき市四倉沖1.7キロの深さ20メートル地点の土壌から、9271ベクレルの放射性セシウムが検出された。
海底土壌の安全基準は定められていないため、県は「国に評価を求めるとともに、土壌と海底魚介類のモニタリングを続けて継続的に監視したい」と話している。
いわき、相馬市と新地町で5月16〜30日に採取した海水も調査。海水については、法令が定める周辺監視区域境界外の水中の放射性物質の濃度限界を下回った。県と国は、漁港や海岸から近い沖合などの海水と海底土壌の検査を今後も継続的に行う。
2011年06月04日土曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/06/20110604t63024.htm
放射能はただでさえ目に見えないのに,海の中のことはさらに目に見えませんので,地道に調べた結果を少しでも表に出して,記憶に留めていかねばなりません。福島第一原子力発電所から放出された放射性物質は,その大半が海洋に向かったと筆者は想像しています。当然,事故現場は非常に強い汚染を受けているわけですが,汚染の影響は徐々に南下して四倉沖の海底でも高濃度の汚染が検出されるに至りました。放射性物質が海洋中で三次元的に拡散してもなお,このレベルの汚染というのは恐ろしいことです。底魚などの魚介類もとうぜん要注意ということになります。海底の調査はサンプリングが大変で,時間もかかり,空間的に細かい情報を得にくいのですが,できる限りの努力をしてほしいと思います。
福島市などの雑草から高濃度放射能 原発事故直後
政府の原子力災害現地対策本部と福島県災害対策本部は3日、福島第1原発事故が発生した直後の3月15日に、福島市など4カ所で採取した雑草から1キログラム当たり30万〜135万ベクレルと非常に高い放射能を検出しながら、発表していなかったことを明らかにした。事故で放出された放射性物質が付着したためとみられる。
食品衛生法による野菜の暫定基準値は放射性ヨウ素が2000ベクレル、セシウムが500ベクレル(いずれも1キロ当たり)。付近で栽培された野菜を食べたり農作業を行っていたりすれば、放射性物質を摂取した危険性もあり、政府や県の情報公開の姿勢が問われそうだ。
最も高かったのは、福島市立子山でヨウ素119万ベクレル、セシウム16万9000ベクレルの計135万9000ベクレル。さらに川俣町役場近くでヨウ素123万ベクレル、セシウム10万9000ベクレルの計133万9000ベクレル。田村市船引町新舘でヨウ素86万2000ベクレル、セシウム10万6000ベクレルの計96万8000ベクレル、同市の阿武隈高原サービスエリアでヨウ素27万7000ベクレル、セシウム3万1100ベクレルの30万8100ベクレルを検出した。
政府と県によると、測定は県原子力センター福島支所が実施。データを政府の原子力災害対策本部に集約し公表するはずだったが、事故直後の混乱でデータが紛れるなどしたという。
県原子力安全対策課の小山吉弘課長は「公表されるべきだったが、結果的に抜け落ち、未公表自体にも気付かなかった。大変申し訳ない」と話している。
2011年06月04日土曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/06/20110604t61018.htm
政府や行政は人々の安全を守るために存在しているはずなのですが,こと原子力に関しては,できるだけ人々が危険に曝されるように情報を隠し,人の噂も75日経った頃に隠蔽された情報が出てきます。このレベルの汚染があったということは,何をさておいても優先順位一位で公表するべきデータです。公表する手段など,いくらでもあったでしょう。政府に集約しなくても,自分の首をかけて独自に公表したって良いでしょう。緊急事態なんですから。
福島県原子力安全対策課
福島県原子力センター福島支所
これを見ると,こういった部署は何のために存在しているのか,不思議に思わずにはいられません。公表すべきデータを隠蔽した責任は限りなく重いと,筆者は思います。可能な限りデータを早く公表し,自家消費も含む全ての農作物の摂取を禁止し,学校や会社を非常時休業として,可能な限り屋内待避を指示すれば,内部被曝を少しでも低くすることは可能だったと思うからです。筆者がいちばん驚くのは,こういったデータを公表しないで平気でいられる人間の存在です。何をどのように考えると,このデータが未公表であることに気付かないことができるのか,まったく想像できません(文責/MWS)。
2011年6月5日(2)
筆者の研ぎ歴は,おおよそ10年くらいで,天然砥石の使用歴もそのくらいです。でも,天然砥石の良さ,というのが今ひとつ分からずに長い時間を過ごしました。研ぎそのものはできましたし,切れる刃も付きましたが,天然砥石の良さ,というものが実感されなかったのです。ですから,硬い砥石を使ってみても,使いにくいなぁという印象でしたし,柔らかめの砥石でごまかして研いでいたという感じもしていました。
それが,あるきっかけで こちら の先生から,優れた天然砥石の現物を示してもらい,筆者の目から大量のウロコがはがれ落ち,天然砥石に開眼しました。
どういうことかというと,「これは優れたものなんだ」と信じて研ぐことにより,その砥石の性能を引き出して使うことができたということです。筆者に必要だったのは,その「ひとこと」だったのです。
その言葉のおかげで,手持ちの石も優れた天然砥石であることが明らかになりました。職人の「これはいいものだよ」という何気ないひと言に秘められた,経験の積み重ねに気付かされた出来事でした。
上の画像は,7,8年くらい前に購入したセール品のコッパです。硬くて使いこなせず,切り出しを研いでも傷だらけにしてしまい,よくない砥石と思っていましたが,地鉄の柔らかい鉋を研ぐと,非常に目の細かい素晴らしい仕上がりになります。使いこなせるようになるのに時間がかかりすぎましたが,いまでは宝物です(撮影/MWS)。
2011年6月5日
原子炉建屋で4000ミリシーベルト
2011年6月4日 夕刊
福島第一原発の事故で、東京電力は四日、1号機原子炉建屋一階の放射線量をロボットで調べた結果、南東部で局所的に最大毎時四〇〇〇ミリシーベルトの放射線量を計測したと発表した。
大震災発生時、運転中だった1〜3号機の原子炉建屋内で計測された放射線量の最高値。ロボットが撮影したビデオ映像によると、この地点には地下一階の圧力抑制室につながる管があり、管と床の接合部分から湯気が立ち上っているのが確認された。
東電は「圧力抑制室内の水の温度は約五〇度あり、原子炉から漏れた高濃度の放射能汚染水がたまっている。この汚染水から湯気が発生して、床と配管の接合部の劣化部分から立ち上っている」と説明し、湯気に高い放射線量が含まれているとの見方を示した。
同じ地点を五月十三日にロボットが測定した際は、毎時二〇〇〇ミリシーベルトを計測したため、今回、東電が詳しく調査した。
東電によると、この地点は、今後計画されている原子炉の循環冷却に向けた作業では立ち入らない場所で、作業に直接的な影響はないという。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011060402000174.html
一時間あたり4000ミリシーベルトの放射線ということは,2時間で人が死ぬに十分な線量です。致死量まで2時間もの余裕があるのですから,こーんな低線量は願ってもない有り難さで,さっさと片づけてしまわなければなりません。もし,これをさっさと片づけられないとすれば,将来,たいへんなことになりますよ…。
未来の子どもたちが扱うことになるだろう,高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の放射線量は,1500000ミリシーベルトにもなります。人が密着すれば20秒で致死線量を超えます。一本500キログラムの,放射能溶融ガラスの缶詰で,内臓放射線量は2万テラベクレルとされています。これが2030年に7万本にもなるほどの,放射性廃棄物が溜まってきています。
詳しくは こちら を見てみましょう。
このガラス固化体が,ウラン鉱石と同等付近の放射能レベルに低下するには,数万年を要します。数万年の間には,何回地震があるでしょう。それとも,数万年後には,人類は滅亡しているはずだから,管理の必要はないのでしょうか。
いずれにしても,上の記事に書かれている放射線量は,高レベル放射性廃棄物の400分の1です。これに手こずっているようでは,使用済み核燃料の処理処分など,ほんとうにできるのだろうかと,誰しも疑問を抱くでしょう。
「もんじゅ」みたいに,吊り上げたガラス固化体を落としてしまったらどうするんです? 1500Sv/hのガラスが飛び散ったらどうするんです? 7万本,すべてパーフェクトに処理できるんですか?
東京大学のえらーい先生方は,放射能が漏れることは考えられない,隕石が落ちてくるようなものだ,プルトニウムは飲んでも平気だ,と言いそうですが(文責/MWS)。
2011年6月4日(2)
福島の23河川、放射性物質検出されず
福島第一原発の事故を受け、環境省は3日、福島県中通りと浜通り地方の23河川29地点で実施した水質と川底の放射性物質濃度の調査結果を発表した。
川の水は、全地点で放射性物質が検出されなかった。
調査は5月24〜29日に、原発の半径20キロ圏外で実施された。川底の土からは、通常は含まれない放射性セシウム137が全地点で検出され、1キロ・グラムあたり1万6000〜51ベクレルだった。最も高かったのは同県南相馬市の新田川・木戸内橋。水田の場合にコメの作付け制限の基準としている5000ベクレル超だったところも5地点あった。
同省水環境課では「濃度はすべての地点で周辺の土壌とほぼ同じレベル。今のところ、川の中で濃縮はされていない」としている。
(2011年6月3日20時51分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110603-OYT1T00903.htm
あまりにもいい加減な記事です。原子力=安全というデマを流し続けた,まともな記事を書く能力のない読売新聞を相手にしても仕方がありませんが,この記事を信じてもらっては困ります。筆者が書き直しましょう。
福島の23河川から放射性物質を検出
福島第一原発の事故を受け、環境省は3日、福島県中通りと浜通り地方の23河川29地点で実施した水質と川底の放射性物質濃度の調査結果を発表した。
調査は5月24〜29日に、原発の半径20キロ圏外で実施された。川底の土からは、通常は含まれない放射性セシウム137が全地点で検出され、1キロ・グラムあたり1万6000〜51ベクレルだった。最も高かったのは同県南相馬市の新田川・木戸内橋。水田の場合にコメの作付け制限の基準としている5000ベクレル超だったところも5地点あった。
川の水は、全地点で放射性物質が検出限界以下であった。微量とみられる。
水環境に詳しいミクロワールドサービスによると,「河川では放射性セシウムが生物に移行しやすく,濃縮率も高い。多くの放射性セシウムが藻類や水生昆虫に移行しているとみられる。この時期,河川の底質は藻類やバクテリアなどのバイオフィルムで覆われており,川底の土で放射性セシウムの値が高いのは,生物に含まれる分も同時に測定しているからだろう。河川水中の濃度が低くても,生物からは高濃度で検出されることがあり得るので,生物中の放射性セシウム濃度を測定することが重要だ」としている。
(2011年6月4日1時20分 MWS 本日の画像)
それにしても,周辺の土壌と河川の底質を比較するとは,この環境省水環境課の役人さんは,どこの大学の出身でしょうか。
「濃度はすべての地点で周辺の土壌とほぼ同じレベル。今のところ、川の中で濃縮はされていない」
今回の原子力災害では,放射性セシウムなどの降下物は,主にガス態,微粒子として落下したのです。セシウムが200km以上の遠方まで運ばれたことを考えれば,微粒子の粒径は1μmクラスでしょう。大きくても10μmのオーダーでしょう。こんな粒子は河川に入ればすぐに流されてしまうのです。もちろん,そのまますぐに海に運ばれるわけではなく,さまざまな物理的,生物的,化学的なプロセスを経て,河川から海までのどこかに分配されて行くのです。
溶存態になれば海にまで容易に辿り着きます。日本の河川水は平均的に見て,海まで一週間もかからずに到達します。粒子態の場合は,凝集,生物による取り込み,流線上に存在する障害物への付着など,さまざまな過程でトラップされます。
連続した流れによって洗われているのに,周辺土壌と同じ濃度の放射性セシウムが残存しているのなら,それは濃縮されているのです。その濃縮は,底質への吸着かもしれませんし,生物への取り込みかもしれません。あるいは物理的に「吹きだまり」になっているのかもしれません。
数年魚のヤマメがこの2ヶ月間に食べた餌だけで,900ベクレル/kgもの値になったことからわかるように,餌にはかなりの量の放射性セシウムが濃縮されています。
「濃度はすべての地点で周辺の土壌とほぼ同じレベル。今のところ、土壌よりも高い値になったところはない」
と書くのなら,学問的にも正確に近づくのですが。大衆紙はこういった不正確な記事の積み重ねて,読者を少しずつ,だまして行くのです(文責/MWS)。
2011年6月4日 よろしくお願いしまぁす U^ェ^U
きょうは津波被災地への支援活動についてのご紹介です。上の画像は こちらのwebサイト のものです。サイエンスキャラバン311というプロジェクトで,
サイエンスキャラバン311プロジェクトは,東日本大震災によって被害を受けた,子どもたちの「遊びの場」と「学びの場」の復興を,科学教育やサイエンスコミュニケーションの立場から,支援していくために組織されたプロジェクトです。
ということです。被災地はほんとうにたいへんな状況で,ふつうの生活がふつうにできるまでに,まだ時間がかかるというのが現状です。でも,ホントに小さなことからでも,日常を一つずつ取り戻していけば,いつか振り返ったときに,復興を実感できることになるはずです。このような中,科学教育のエキスパートたちが,震災地に出向いて,子どもたちや大人たちにサイエンス体験を出前するというのは,とても有意義だと思います。復興というものの中身には,文化的豊かさ,というのも当然含まれる大事なものだからです。
有り難いことに,当サービスには先月,関係者から支援のお願いの連絡が入りました。心より賛同し,被災地の方々にもミクロワールドをサービスするために,
・解剖顕微鏡(10×,20×,オリンパス)8台
・単眼生物顕微鏡(エリザ初級モデル,MWSによる「よくみえる改造」実施済み)2台
・単眼生物顕微鏡(エリザ中級モデル,NA=0.85対物付き,MWSによる「よくみえる改造」実施済み)1台
・単眼生物顕微鏡(オリンパスHS,MWSによる暗視野改造済み)1台
・各種標本(珪藻,ホコリ,羽毛,蚊,印刷物,鉋屑など)95枚
*いずれも整備済み。開梱してすぐに使用可能。
などをサイエンスキャラバン311に参加しているスタッフの方に託させていただきました。数量的にはわずかなものですが,被災地の文化的支援物資として少しでも役立てば,当サービスの活動方針から考えても,これに勝る幸せはありません。
本ページをご覧の方々は,科学教育についても造詣が深いと拝察します。ぜひ,このサイエンスキャラバン311プロジェクトを応援していただけませんでしょうか。
サイエンスキャラバン311のホームページに詳細が書かれていますので参考にして下さい。支援には金銭的支援と物質的支援と情報的支援があります。まずは金銭的支援が簡単で,効果の高いものと思います。スタッフは皆,自費で動いており,被災地への移動だけでも大変な状況ですから,金銭的支援は即効性があります。
次に物質的支援ですが,「本日の画像」の読者であれば,技術レベルも高く,学校教育用顕微鏡や,みて面白い標本,勉強に役立つ標本などを被災地に寄付することができるのではないかと思います。もし,そのようなことができるのであれば,スタッフに連絡の上,寄付を申し込んで下さい。
金銭的支援はキツイし,機材の持ち合わせもない,という方は情報的支援ができます。科学教育などに熱心な方々に,この情報をお知らせ下さい。単純にメール一本,電話1回のことかもしれませんが,これは強力な支援方法です。支援先で賛同者が増え,そこで金銭的・物質的支援が行われたのなら,それは情報を知らせた貴方のお手柄なのです。
さて,物質的支援を行って下さる方々に,筆者からのお願いがあります。個人的見解ですが,次の点にはぜひとも留意してください。
1)すぐに使える完全整備済みの機材や標本にすること
2)寄付先での用途に注文を付けないこと
3)元払いで発送すること
被災地はたいへんな状態で,工具一個でも,手元になければ手足が出ません。ですから完全整備済みで,すぐに使える機材を寄付することがぜひとも大事です。可能な限り,被災地での負担を減らす想像力を働かせないと,寄付したつもりが,かえって迷惑をかけたということになりかねません。この点は留意の上で支援協力することをお願いいたします。
また,機材はサイエンスキャラバンスタッフが利用する場合や,被災地の公共施設や教育機関に寄贈する場合などが考えられます。あるいは避難所に設置するケース,個人の手に渡るケースも想像されます。どのような活用方法でも,被災地で利用される限りは有効利用と解釈しましょう。
当サービスでは,「本日の画像の熱心な読者」「当サービスのユーザー」に限り,機材整備と現地への発送を代行します(内容によりお断りするケースもあります)。機材はあるけれど筆者を経由して被災地に届けたいとお考えの方は,機材の画像を添付の上,まずはメールでご連絡ください。
E-MAIL: mws@micro.sakura.ne.jp
ちょっと堅苦しく書きましたが,被災地の子どもたちにアレを見せてあげたい,というようなお考えがあれば,実行のチャンスだと言うことです。筆者も「珪藻を見た人」が,これでまた増えることになると,喜んでいます(2011.6.4 文責/MWS)。
2011年6月3日(2)
福島第1原発:福島市などのウメの出荷停止を指示 政府
政府は2日、食品衛生法の暫定規制値を超える放射性セシウムを検出したとして、新たに福島県の福島市、伊達市、桑折(こおり)町で生産するウメの出荷停止を指示した。果実の出荷停止措置は全国で初めて。【佐々木洋】
毎日新聞 2011年6月2日 20時58分
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110603k0000m040076000c.html
読者の方から,ウメとお茶、どちらも菌根を作る樹種です。筆者の仮説が当たっているかも分かりませんね,というメールを頂戴しました。福島に限らず,神奈川やほかの地域でも,ウメの実から放射性セシウムが検出されています。そしてこのウメ,上の画像の菌類と菌根を形成するのです。上の画像は一般にハルシメジと言われているきのこで,春,桜が咲いてからしばらくたったころにウメの樹下に出てきます。ちょっとクセがありますが歯ごたえもよいきのこで,ベーコン炒めなどお薦めです。
もし筆者の仮説が正しいとするならば,このきのこの菌根がセシウムを周囲から集めて,ウメの木に渡しているということになります。それで特定の樹種に放射性セシウムが見つかるということになります。もっとも,自然林では多くの樹種が菌根を形成しているので,特定の樹種にセシウムが濃縮するということが見られる可能性は高くないでしょう。
しかし人間が利用する植物に限ってみれば,菌根形成するものもあればしないものもあり,放射性セシウムの濃縮に種特異性が見られるという結果になるのではないかと想像します。メールをくれた方によれば,秋には「栗」から放射性セシウムが検出されるかもしれませんね,とのことでした。栗はあまり密集して植えませんし,当然菌根も形成しているでしょうから,広い範囲から放射性セシウムを濃縮する可能性がありますね。さて,どうなるでしょうか(撮影/MWS)。
*1 秋には放射性のマツタケが見つかるんだろうなぁ。いやだなぁ。
2011年6月3日
きのうは,日本の原子力産業が糞詰まり状態であるのに,それでも地下原発を作ろうと考える議員さんたちは物事の深刻さをわかっていないということを,大変上品な表現によって指摘しました(^^)。これ,ゲヒンと思われた方もおられるかもしれませんがとんでもない,凄いことになっているのです。どれだけ厳しいことになっているか,ちゃんとわかっている議員さんもいますので,その方に登場してもらいましょうか。
こちら
こちら
滅茶苦茶なのです。もし,原発運転ゲームなるものがあったとすれば,GAME OVER寸前なのです。捨てる方法も確立できず,処理の目処も立っていない。核燃サイクルは実現不可能。原子炉は事故を起こすわ放射能は漏れるわ,使用済み燃料は敷地にあふれるばかり溜まり,燃料以外の廃棄物も蓄積される一方。どうにもなりません。すべて未来の子どもたちに押しつけて,電気料金を市民から巻き上げて,原子力産業は収益をあげています。
今回の原子力災害でガスとなって日本中を汚染した放射性ヨウ素とセシウムの総量は,たぶん100グラムから1000グラム程度だと想像しています。そんな微量の放射性物質でもこれだけの汚染が起きます。
でも,溜まり続けている使用済み燃料は,一万トンを越えるのです。放射能の塊が一万トンというのは想像できる量ではありません。まき散らせば,日本どころか世界がお終いになります。これの管理を未来の子どもたちに,丸投げするわけですね。
そして原子力産業が経済を支えるものならまだしも,一撃で日本経済を壊滅させてしまったわけです。特に福島県の経済に与えた影響は,計り知れないものがあるでしょう。
原子力発電所が「発電」していると思い込んでいる人も多いと思いますが,あれは正確には,「発電・放射性物質増加機能付き海洋加熱装置」です。7割の熱を海に捨てて残りの3割を電気にしているのです。そして運転停止後の一定期間は,「自動水素爆発,放射能放出機能付き電力吸収装置」です。冷却のためにたくさんの電気を使う電力消費箱なのです。この箱は,もし無電源で放置すれば「自動」で加熱して水素爆発して放射能を放出してくれる大変便利な装置なのです。
そして発電所でも,再処理工場でも,原子力産業というのは「地元に雇用をもたらす」という美名のもとに,被曝者を増やし続けてしまうのです。
使用済み燃料を処理してようやくガラス固化体にできたとしても,さらにそれを30年〜50年も冷やし続けなければなりません。MOX燃料のガラス固化体ならば100年でも足りないでしょう。そうしないと地層処分でさえ,不可能なのです。ワインなら地下倉庫に置いておくだけでもいいでしょう。でもガラス固化体は貴重な電力を使用して冷やし続けなければならないのです。雨の日も,風の日も,地震の日も,津波の日も,くるかもしれない戦争の日も。
廃炉もたいへんです。商用原子炉ならば10万トン級の廃棄物が出ますが,放射化した原子炉や周辺設備の解体,処分などは,まだ未知の領域です。これも未来の子どもたちへ丸投げです。
こういう現状があるのに,使用済み燃料の処分検討会ならまだしも,地下原発などという集まりを開く年寄り連中は,未来のことなどどうでもいい無責任な連中なのでしょう。まぁ彼らは技術屋でもないので,5歳児がお医者さんごっこをするレベルを越える議論はできないと想像します。自分たちの利権構造を守りたい連中ですから,地下原発といいながら,産業構造の維持を狙っているのでしょう。そして彼らのような老獪な連中が,原子力産業を見通しのないままに推進し,核のゴミを未来の子どもたちに丸投げする構造を作ったのです。
日本(に限らないのかもしれませんが)はこの種の年寄りが多くて困ります。若い人たちは礼儀正しく,頭の良い,利権にとらわれない立派な人が増えてきているように思うのですが(文責/MWS)
*1 もちろん,老獪な年寄りにだまされて,彼らに投票した有権者にも責任があります。今回の事故以前でも,原子力の問題点に関する情報は豊富にありましたので,それらを知らなかったとすれば,安全信仰にだまされていたか,無関心だったということです。未来の子どもたちに核燃廃棄物のない世界を受け継いでもらうことは,もう不可能になってしまいました。しかし少しでも彼らの負担を減らすために,今後どのように行動すべきか,有権者として考えなければなりません。
2011年6月2日
地下原発議連:第1回勉強会に20人参加
超党派の「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」(地下原発議連)が31日、国会内で第1回勉強会を開催し、自民党の森喜朗元首相や民主党の石井一選対委員長ら約20人の国会議員が参加した。会長の平沼赳夫たちあがれ日本代表は、東京電力福島第1原発事故を踏まえ「日本には大きな空洞を作る技術が確立している。(地下原発は)安全性からいって非常に意義がある」と述べた。
地下原発は三木内閣当時に検討が始まり、91年に自民党内に「地下原発研究議員懇談会」が発足したが、その後下火になっていた。今回の議連は自民党の懇談会を超党派に拡大したもので、顧問には民主党の鳩山由紀夫前首相や国民新党の亀井静香代表も加わっている。
毎日新聞 2011年5月31日 22時30分
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110601k0000m010134000c.html
まだ福島の原子力災害もほとんど手つかずの状態なのに,このようなお遊戯会が行われるのですから言葉もありません。でも言わせていただきましょうか。使用済み燃料の処分方法も確立していないのに,何をやっているんだお前らは,と。この老人どもはまとめて,どこかの名医に肛門が行き止まりになるように縫合してもらい,毒物が捨てられない,ということがどれほど深刻なことなのかを体験してもらいましょう。
きょうはあまりにも取り上げたい記事が多すぎて,逆に書けなくなってしまいました。。リンクを一つ紹介して(こちら)お終いにします(文責/MWS)
2011年6月1日
珪藻プレパラートは製作時にも検品していて,出荷時にも検品しています。筆者なりの品質保証をしようと努めています。きょうはリサーチグレードの検品でしたが,なかなか美しく,検品と言うよりは鑑賞の時間になってしまいました。リサーチグレードの珪藻プレパラートは,いわゆる散布スライドというもので,珪藻がランダムにばらまかれています。Jシリーズのような整った感じはありませんし,鉱物なども多少は残存しているので,雰囲気で敬遠されておられる方もいるかもしれません。しかし種類は豊富で,珪藻の向きもさまざま,見ていて飽きない多様性があります。寝る前のひとときに,Jシリーズを覗くのもよし,散布スライドを散歩するのもいいと思ってます(撮影/MWS)。
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