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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ。


2011年4月30日(2)


ps

年間20ミリシーベルトの被曝がきわめて危険であることを,筆者は早い段階(4月11日付け本欄)から主張してきました。しかし大手メディアはその危険性を正確・迅速に伝えることを放棄してきました。ことここに及んで,ようやく,それらしい記事が出てきました。しかしこの記事でも,見出しは,「参与の辞任」であって,政府の対応を非難するという内容になっています。

大切なのはそんなことではありません。

20ミリシーベルトの被曝というのは,この参与にとっては,「自分の子どもにそうすることはできない」,許容しがたいレベルであるということです。

しかしこの記事は,これでも甘すぎます。内部被曝に一切触れていないからです。平常時の原発労働者は,危険なところで働く人でも年間10〜20ミリシーベルトくらいの被曝です。しかしその作業員は,防護服を着て,マスクをして,そしてさらに大切なことは,汚染された食物は食べていないのです。

いま福島県などの汚染地帯に居住している方々は,汚染された空気を吸い,水を飲み,汚染された野菜を食べ,牛乳を飲み,さらに放射線を浴びながら暮らしているのです。その過酷な条件で,学校に通う子どもたちは,外部被曝だけでも「年間20ミリシーベルトは可」とされてしまったのです。

いいですか,よく聞いて下さい。子どもは放射線に対する感受性が大人の2倍はあると考えて差し支えありません。さらに,ご飯は大人の倍も食べます。水は大人の倍も飲みます。体重は大人の半分です。外で遊ぶ時間は大人よりもずっと多く,土に触れる時間は大人よりずっと多いのです。積算すると,どれほど危険だと思いますか。

大人の読者は,「少年の夏の日」を思い出すこともできるでしょう。堆肥の中のカブトムシの幼虫を掘り起こした経験をお持ちではありませんか? 腐った木を割ってクワガタを探しませんでしたか? 昆虫の幼虫は菌類を食べますので,セシウム137をたっぷり濃縮することになってしまうでしょう。

いま起きていることは非常事態です。リスクの高さは原発労働者どころではありません。どれほど危険で理不尽なことが行われているか,そういうことを正確に分析して分かり易く述べるのが新聞・メディアの役割なのですが,いちばん大切なことを書かないのでは,ケツ拭く紙にも使えません(文責/MWS)。



*1 筆者はここ十数年,テレビなし,新聞なしの生活を続けています。偏った情報を入力しても,費やした時間ほどの見返りがないと感じているからです。アイドルの名前はわかりませんし,流行にもついていけません。しかし,馬さん鹿さんになってしまうわけでもなく,こうして独自の記事が書ける程度のおつむは保たれているようです。もちろん,テレビを見て,新聞を読んで,それぞれのメディアの偏り方を楽しむという高等な趣味もあるでしょうが,そういった楽しみ方ができるのは,年間100冊程度の読書をこなすような碩学かと思っています。

*2 記事中の参与が,自分の子どもにそうすることはできない,といっているのは,福島県から避難させるか,安全なレベルまで除染させるかということを意味しています。そのように読まなければなりません。

*3 1〜10万ベクレル/kgのクワガタやカミキリムシが出てきても不思議ではありません。それを食べることはないにしても気分のよいものではありません。

*4 今月も原子力災害の特集みたいになってしまいました。すみません。読者が愛想を尽かさないことを願っています。





2011年4月30日


「さて原子力を潜在電力として考えると、まったくとてつもないものである。しかも石炭などの資源が今後、地球上から次第に少なくなっていくことを思えば、このエネルギーのもつ威力は人類生存に不可欠なものといってよいだろう。(中略)電気料は2000分の1になる。(中略)原子力発電には火力発電のように大工場を必要としない、大煙突も貯炭場もいらない。また毎日石炭を運びこみ、たきがらを捨てるための鉄道もトラックもいらない。密閉式のガスタービンが利用できれば、ボイラーの水すらいらないのである。もちろん山間へき地を選ぶこともない。ビルディングの地下室が発電所ということになる」(1954年7月2日、毎日東京新聞)

「三多摩の山中に新しい火が燃える。工場、家庭へどしどし送電。」(1955年12月31日、東京新聞)

(http://cnic.jp/files/070707koide.pdfから引用)



世の中にはおいしい話など,そうあるものではないのですが,エネルギーに関しては不思議なほど,おいしい話が消えません。現代の人が上の文章を読めば,さすがに,丸ごと信じることはないでしょう。でも,この文章は新聞に書かれて各家庭に配達されたのです。その時代には,ほとんど全ての人が信じたのではないでしょうか。

恐ろしいですね。

こういった,根拠のないおいしい話は,現代でもあります。1955年ジュネーブで開催された第1回原子力平和利用国際会議において,議長のH.J. Bhabhaが,「20年後には核融合によって制御された形でエネルギーを取り出すことができるだろう」と予言しました。有名な言葉なので知っている人も多いことでしょう。

この言葉から何年たったでしょうか。そして何ができたでしょうか。D-D反応はおろか,D-T反応の継続も難しく,投入以上のエネルギーを商用に取り出すなど,まだ想像すらできる段階ではありません。筆者は,技術的・材料学的・経済学的に見て,人間が製作した核融合炉が未来のエネルギー源になる可能性は,0%と考えています。もし実用化したら,あらゆる資材と資本を飲み込む怪物になるはずで,発電までこぎ着けても,負の経済性が生じるばかりでしょう。

もちろん,Bhabhaの言葉は単なる予言だったわけで,外れたのです。だから外れたことを認めればいいようなものですが,核融合が未来のエネルギー源だと信じている人は多くいます。将来実用化されると思っている人もいます。「エネルギー問題から解放される」という魅力的な文句に惹きつけられるのです。

ここが怖いところです。おいしい話は,なかなか消えないのです。皆さんは,なんとなくおいしい話を信じていませんか。それは正しいですか。

だいたい,人類がエネルギー問題から解放されたら,とんでもない世の中になるでしょう。未来のエネルギー源を信じている人は,その後の世界も想像してみましょう。

むかしの人が原子力発電を信じたらどういう世の中になりましたか。それは良い世の中でしたか? むかしの人の想像力はどうだったのでしょう。私たちも,未来のために,根拠ある想像をしなければならないのかもしれません(文責/MWS)。






2011年4月29日


千葉の牧草から放射性物質 初めて基準値超え

 千葉県は28日、県内2カ所の牧草から、それぞれ基準値を超える放射性ヨウ素と放射性セシウムを検出したと発表した。農林水産省によると、牧草から基準値を超える放射性物質が検出されたのは初めて。
 牧草の基準値はヨウ素が1キログラム当たり70ベクレルでセシウムが300ベクレル。県によると、市原市の施設の牧草からヨウ素230ベクレル、セシウム1110ベクレル、八街市の施設からヨウ素90ベクレル、セシウム350ベクレルが検出された。
 千葉県は3月下旬以降、県内の牧草を乳牛と肉牛に食べさせることを自粛している。原乳の2回の検査では、いずれも基準値を下回っている。
 (http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011042801001505.html)



筆者もさすがに,牧草の基準値までは知りませんでした。じつに勉強になる記事です。この記事が正しいとすると,いろいろなことを考えさせられます。

1)牧草の基準値は,人間に対する野菜の暫定基準よりもずっと低い(安全側)
2)にもかかわらず,さらに安全性を確保するために,乳牛と肉牛には県内の牧草を与えていない

牛さんは放射能の心配をすることなく,安心して食事ができることでしょう。

一方,人間には,2000ベクレル/Kg以内なら,ヨウ素131が入っていてもいいし,500ベクレル/Kg以内であれば,セシウム137,134が入っていても「安全」ということになっています。

牛と人間は食性も異なりますし,食べる量も違います。ヨウ素は母乳に集積されるという性質,そして牛乳や肉は人間の食品として利用されるということも考えれば,牛が汚染されないように,牧草の基準値が低く抑えられているということは,生態学的にはそれなりの意義があります。しかし人間の赤ん坊も人間の母乳を主食に暮らすのです。世の中には理解が難しいことがたくさんありますが,これもその一つですね。



さて,もう一件いきましょう。



根室沖カラフトマスからセシウム検出 基準値は下回る (04/28 10:05)

 道は26日、日本200カイリ内で操業中の小型サケ・マス漁で水揚げされたカラフトマスの放射能検査の結果、放射性ヨウ素は不検出、放射性セシウムは基準値を大幅に下回り「安全が確認された」と発表した。
 検出されたのはセシウム134が1キログラム当たり4・39ベクレル、セシウム137が同4・91ベクレル。合わせて同9・3ベクレルで、食品衛生法の暫定基準値500ベクレルの50分の1以下だった。
 検体は歯舞漁協所属の漁船が22日、根室市花咲港の南約45キロの太平洋で漁獲した5匹。18日に公表されたシロザケの検査では放射性ヨウ素は不検出、セシウム137は同0・45ベクレルだった。
 道によると文部科学省の委託検査では2007年以降、道周辺で採取したサケに含まれるセシウム137は同0・1ベクレル以下で推移している。
 道水産林務部は「今回は通常よりレベルが高いが、問題のない数値。福島第1原発事故との関連は分からない」としている。
 (http://www.hokkaido-np.co.jp/news/agriculture/289078.html)



これがどういうことか考えてみると,現時点では次のストーリーが浮かびます。

距離から考えて,この放射性セシウムは,福島第一原子力発電所から,南西の風にのって運ばれてきたものと考えられます。なぜなら,宗谷暖流,親潮,黒潮の関係を定性的に見れば,黒潮で北に運ばれても,この時間スケールで「根室市花咲港の南約45キロの太平洋」に到達することは難しいと想像できるからです。大気経由で運ばれた放射性物質がこの付近の海域に落ち,植物プランクトン→動物プランクトンや遊泳生物を経由して,カラフトマスの体内に取り込まれたものと考えます。

セシウムは重金属などと比較すると,生物にはあまり濃縮されない元素なので,放射性物質の放出が止まれば,現在程度の汚染で止まる可能性もあります。しかし,大気経由の汚染だけで,北海道東方沖でもセシウムが確認できるような状況(可能性がある)になっているということは大変なことです。より発生源に近い三陸沖,宮城沖でば,汚染濃度も高くなっている可能性があります。汚染水が放出された海域だけが汚染されているわけではありません。広範囲にわたってモニタリングを厳重に行う必要があります(文責/MWS)。






2011年4月28日


ps

これまで何度も掲載してきたクモノスケイソウ(アラクノイディスクス,Arachnoidiscus)ですが,そういえば位相差で撮影した画像は出していなかったような気がします。大型の珪藻で,これを見ると大伽藍のような,自然物でありながら人工物のような,不思議な気持ちになります。検鏡法を変えればコントラストの付き方が変わりますので,見た目にも新鮮な感じがします。これも顕微鏡の楽しみ方の一つです(画像/MWS)。






2011年4月27日


世の中にはいろいろな人が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しています。原子力災害でも,いろいろな人が裏に表に大活躍です。今回は福島県放射線アドバイザーの山下俊一先生にご登場願いましょう。山下先生は県内各地で,放射線の人体影響について講演されています。福島市での講演録がこちらにアップされていました。この書き起こしは正確に思えますので,これを材料にみていきましょう。

この中で,山下先生は「我々日本人は年間約3.5ミリシーベルト被ばくしています。」と述べています。

しかし一般的には,日本人の年間被曝(自然放射線の外部被曝+内部被曝)は2.4ミリシーベルトと言われています(http://www.ccfhs.or.jp/newsrelease/20110319shokuhinkenshutu.html)。水増しせずに,正確に話をしてほしいものです。

山下先生は,別のところで,けっこう大事なことを言っています。

100ミリシーベルト浴びると、100人、その生涯ずーっと調査すると、100人の内1人ガンが起こるかどうかという頻度です。100人が、平均78歳としましょうか、生きて1人ガンが起こるかどうかという、そういう確率論的な問題です。でも、70も 80も生きれば1/3はガンで死んどる。33人はガンで死んどるうちの、1人は放射線のせいかわからんという量の、100ミリシーベルトでみんな議論しています。

この数字は,ICRPなどが言っている,外部被曝だけを与えたときのリスクです。さすがに専門家だけあって,この数字は頭に入っているようです。この数字は,確率だけで解釈してはいけません。放射線は災害で否応なしに浴びせられるのですから,一人が余分に死んだら,それは死ななくてすんだ命が放射線により奪われたと解釈すべきなのです。

そして,大事なことは,全体の人数を考えることです。100人に一人ということは,100万人に一万人の割合なのです。10ミリシーベルト浴びて1000人に一人が発がんでも,1000万人が浴びれば,一万人が,放射能が原因でがんになるのです。単に確率で考えず,災害の被害者がどれだけ発生するのかを見なければなりません。筆者がずっと原子力災害について述べてきたのは,東北関東大震災の死者を上回る被害者が,原子力災害によって生じる可能性があり,そして被害は適切な対策によって避けられるからなのです。

山下先生は別のところでこういいます。

事実は1ミリシーベルト浴びると1個の遺伝子に傷が付く、100ミリシーベルト浴びると100個付く。1回にですよ。じゃあ、今問題になっている10マイクロシーベルト、50マイクロシーベルトという値は、実は傷が付いたか付かないかわからん。付かんのです。ここがミソです。

「付かんのです」は事実に反します。自然レベルのひじょうに小さな放射線(μSv/h)レベルでも遺伝子に傷が付き染色体異常が発生することは40年前から知られていることです。勇み足ですねこれは。

科学的に言うと、環境の汚染の濃度、マイクロシーベルトが、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、全く健康に影響及ぼしません。ですから、もう、 5とか、10とか、20とかいうレベルで外に出ていいかどうかということは明確です。昨日もいわき市で答えられました。「いま、いわき市で外で遊んでいいですか」「どんどん遊んでいい」と答えました。福島も同じです。心配することはありません。

「どんどん遊んでいい」というのを,制限なしに遊んでいい,と解釈します。一日100マイクロシーベルト(20マイクロシーベルト×5時間)を一年間続ければ,36500μSvで,これは36.5ミリシーベルトです。しかも内部被曝を含みません。この値は,平均的な原発労働者の被曝量の2〜3倍に相当します。一年間にこれだけの放射線を浴びた労働者が,急性骨髄性白血病になった場合,まず労災認定されます(実例あり,年間5ミリシーベルト以上)。それだけの多量な放射線です。発症割合は低くても,発症すれば裁判所が因果関係を認定するのです。山下先生の言う「どんどん遊んでいい」「全く健康に影響を及ぼさない」ということの中身は,こういうことです。

言い換えれば,防護服も着ずに,マスクもせずに,原発敷地内で,原発労働者の2倍以上の時間存在してもいいと,山下先生は言っているのです。山下先生の発言が正しければ,全国の原子力産業に従事する方々は,防護服も必要ないし,マスクもしないで働いても,「全く健康に影響及ぼしません」ということになります。裁判所が労災認定したのは,裁判所の判断が完全に間違っていたことになります。

山下先生が最初に言った100ミリシーベルトの外部被曝で100人に一人ががんを過剰に発生という事実をもとに計算すれば,どんどん遊んで1年で36.5ミリシーベルトの放射線を浴びた子どもは,300人に一人が,そのことが原因でガンを発生することになります。

また,一般人の許容被曝レベルが年間+1ミリシーベルトであることについて,山下先生はひと言も触れていないのも気になります。

水道水は、問題になるのは放射性のヨウ素だけです。セシウムはフィルターで取られてゼロになりますので、たとえ少し汚染してもゼロになります。

山下先生はこう言うのですが,「少し汚染しても」という部分が巧妙ですね。たくさん汚染されれば出るよ,ということを排除していません。山下先生の言うフィルターというのが何を指すのかもわかりません。福島県の水道は東京都水道局のような一元的な組織とは違います。市町村単位で上水道の運営が行われていて,簡易水道が数多くあります。これらの簡易水道は伏流水水源,地下水源,表流水水源など様々で,無処理,簡易砂ろ過処理,緩速ろ過処理,急速ろ過処理など処理方法も多様です。しかもセシウムがフィルタで取れるというのは初耳です。実際にセシウムが各地の水道から検出されているのは皆さんご存じの通りです。

山下先生は続けます。

いま何故、乳製品にそれだけ高いかというと、大地に沢山降っているんです、放射性物質は。その雑草を食べた牛のお乳には、放射性ヨウ素が濃縮されるんです。これが1つの原因です。そのために原乳を測ると放射性ヨウ素が高く出る。

これに対して会場からのコメントが出ます。

福島市飯野で酪農をやっています。先程、牛乳に放射能が出てくるのは、降下物のせいだと仰った点でちょっと疑問だったのは、牛と人が共通しているのは空気と水。あと、えさがあると思うんですが、殆ど屋根のかかる所においてある牧草であるとか、配合飼料を食べます。ですから、大地に生えてる草を食べることは、今は全くないんです。ですから、降下物ということであれば、空気と水は人と同じなんですね。

つまり山下先生は,この時期(3月下旬)に,福島県で,牛が放牧されて野山の雑草を食べていると思っているわけです。この先生の頭の中には,まだ芽吹きも始まらない茶色の耕作地が,パステルカラーの緑豊かな牧草地に見えて,牛さんがのんびりと草を食べている情景が浮かんでいるのでしょうか…。

もちろん,酪農家の方の言うとおりなのです。1年前に収穫されて屋根の下に置いてある放射能を含まない牧草や,配合飼料を与えているのです。ですから,餌経由の放射線は牛の体内にあまり入ってこないはずなのです。にもかかわらず,乳牛からすぐにヨウ素131が検出されたのは,水と空気から来たということなのです。そして,その水と空気は,牛も人も同じものを吸ったり飲んだりしているのです。ですから,人体にも放射性物質がかなり取り込まれている可能性が高いのです。酪農家の指摘は非常に重要です。

とまあ,ツッコミどころがいろいろあって,なかなか大変な講演だ,というのが筆者の感想です。この人は,福島県では安全安全と言い続けたのですが,地元長崎に帰ると,態度を豹変させます。

"正しい怖がり方"を 放射性物質、九州に影響ない

 東日本大震災で発生した東京電力福島第1原発事故で「放射線健康リスク管理アドバイザー」として18日から22日まで福島県内で活動した長崎大医歯薬学総合研究科の山下俊一教授に24日、今後の事態の見通しについて語ってもらった。(聞き手は報道部・永野孝)

 −国が23日公表した放射性物質の飛散状況の試算によると、原発から北西方面と南方面に(政府が屋内退避を指示している)30キロを越えたところまで届いている。

 複数箇所から放出され、放出量が不明な上、拡散は風向きや地形などによるため、このような結果になった。予想していたが、恐るべきこと。子どもや妊婦を中心に避難させるべきだ。ただし理論値であり、誤差を検証しなければならない。

 −放射性物質は九州まで飛んでくるのか。

 高度によるが、飛んでも関東平野まで。チェルノブイリと違って日本は乾燥していないので、あまり遠くまでは飛ばない。心配はない。

 −事態はどう収束していくだろうか。

 まずは原発からの放射性物質の飛散を止めること。封じ込めが終わらないと見通しが立たない。その後は放射性物質の半減期や雨など気象条件による。

 −ヨウ素安定剤の効果は。

 甲状腺に放射性ヨウ素がたまらないよう、被ばくすると分かったら飲むもの。ヨウ素は取りすぎると、体がだるくなったり便秘になるなど副作用がある。日本人はヨウ素が含まれる海藻を食べる習慣があるので、過剰に摂取する必要はない。

 −一般人はどう対応したらよいか。

 放射線は測定できるから数値を信用し、解釈するという"正しい怖がり方"をすべきだ。何を信用したらよいのか分からず怖がるから、買い占めなどパニックになる。

 −被爆地長崎が手伝えることは。

 長崎から来たというだけで歓迎され、現地の人たちは安心する。長崎のノウハウを生かしたい。

(長崎新聞 http://www.nagasaki-np.co.jp/news/daisinsai/2011/03/25103728.shtml)



恐るべきこと。子どもや妊婦を中心に避難させるべきだ。」こう山下先生は言うわけですが,この30キロを超えたところの汚染は,現場測定した方に直接聞いたところ,約20マイクロシーベルト/h程度の場所が多かったそうです。山下先生の福島講演によれは,「どんどん遊んでいい」レベルのはずです。

しかもこの「恐るべきこと」を「予想していた」のですから,さすがは専門家で天晴れと褒めてあげたいです。もう何が何だかわかりません。。

読者の皆さんはどう思いますか。山下先生は素晴らしいと思いましたか。

ところで,こいういった有り難い専門家の先生が安全安全と言ってくれているのに,それを信じない動きもあります。



郡山市、校庭28か所の表土除去へ

 福島県郡山市は25日、福島第一原発事故による放射線量の数値が高かった市内の小中学校と保育所の計28か所で校庭の表土を除去すると発表した。
 県教育庁によると、県内の教育機関で放射線対策の土壌改良を行うのは初めて。
 国の暫定基準では校庭の放射線量が毎時3・8マイクロ・シーベルト以上の場合、屋外活動を制限するとしており、県内13の小中学校、幼稚園などが該当していた。
 郡山市で基準以上だったのは小学校1校だけだったが、市は地表から1センチの高さの放射線量について、小中学校は毎時3・8マイクロ・シーベルト以上、保育所や幼稚園では同3・0マイクロ・シーベルト以上の場合は表土を除去するという独自の基準を設定。県の調査結果を基に、除去作業を進める学校、保育所を決めた。取り除く表土は厚さ1〜2センチを予定し、早ければ今週末から行う。除去した土は、市内の最終処分場に廃棄する。

 同市は「放射線が土壌に深く浸透する前に実施し、いち早く学習環境を整えたい」としている。
(2011年4月26日01時28分 読売新聞)
(http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110425-OYT1T01011.htm)



山下先生の福島講演を信じれば,郡山市の取り組みはまったく無駄であり,税金の無駄遣いであり,焼け太りの公共事業だと言うことになります。一方,一般人の過剰被曝は,年間+1マイクロシーベルトという,これまで長い間守られてきた基準を守り続けるならば,郡山市のような取り組みはいち早く行われるべきです。特に注目すべきは,郡山市が,空間線量率よりも,地表に降下したセシウムの除去を重要視していることです。

皆さんはどのように判断しますか。山下先生のことばを聞いて安心しますか? それとも,子どもたちにできるだけのことをしてあげたいと思いますか(文責/MWS)。






2011年4月26日


ps

さて,今回もよく行く旅行先でしたので,恒例の定点観測です。朝から雷が鳴って雨だったので,雨止みを待って五条烏丸を出発です。まずは四条を経由して新京極方面まで歩きます。この裏通りは,けっこうお気に入りだったのですがだいぶ変わっていました。



ps

この店は筆者に「石ころの店があるんだ」ということを教えてくれました。15年くらい前でしょうか。京都が本店ですが,さいきんは各地に店舗があり,都内の店にもたまに行くようになりました。きょうは残念ながらまだ開いていません。タカシマヤが開店する時間は過ぎているんですが。。



ps

このお店は,秋はマツタケ専門店なのですけど,春はタケノコ専門店になるようです。なるほど。



ps

またまた雨が降りそうな雰囲気ですが,筆者のいい加減な予想では,昼までは大丈夫な感じ。



ps

でもこの天気で川を写すとどんよりとなるのが不思議です。定点観察の南禅寺方面に向かいますが,ここから行った記憶がない。けど,まぁ山に向かえば何とかなるでしょう。大体の方向は合っているし。




ps

そう思って適当に進んでいくと,途中から見覚えのある道を歩いていました。ふしぎふしぎ。道の数は限られているから,以前通ったことのある道に行き着くのは全然不思議ではありません。その道に入ったとたん,「見覚え」が生まれてくるのが不思議なのです。いままで一度も思い出したことなどないのに。



ps

そしてお気に入りのきれいな道を進みます。秋もきれいなところなのですが,春もいいですねぇ。



ps

定点に到着です。ちょうど学生が集合写真を撮影中でした。柔らかい緑がいい雰囲気です。



ps

そしていつもの門です。昨年10月に来たばかりなのに,また来ることになるとは思っていませんでした。



ps

人生裏街道を進む筆者は,やっぱし人の少ない裏側から本堂に向かいます。緑がきれいだー。




ps

秋の紅葉も素晴らしいけど,春の新緑も格別です。春の方がなんだか元気が出るような気分になりますね。



ps

いつものように木組みに感心しながら本堂の裏を見上げ



ps

建築物の寿命を長くする秘密はすべてここにあるのでそれを撮影し



ps

またまたコレを撮影します。今の人の仕事もすごいんですが,むかしの人の仕事には魂が感じられます。



ps

上に行って水が流れているのを見ると安心し,やっぱしひとけのない方向に歩いていきます。人がいないからか,ルリビタキが3羽いました。珍しい。この道を歩くのは




ps

素晴らしい景色が待っているからです。でも,この水路わきが歩けるのを知らないのか,本当に人が来ない。観光客は多いのに。



ps

そして京都市内がちょろっと見える秘密の場所を通り



ps

京都に電気をもたらした貴重な水力発電所を見下ろします。昨年の画像と比較して,明るくていい感じですね。



ps

このパイプや次のレールなどの意味はこの説明を読んで頂きます…



ps

インクラインが歩けるようになっていました。半年ぶりに寄った甲斐がありました。記念に這いつくばって一枚パチリ。刀鍛冶が見たら外して持っていきそうな素晴らしい古鉄に見えます。。




ps

レールに沿って下まであるくとこんなものがあります。見たことのある人も多いでしょうね。



ps

もーいっか,という気分にならないので,永観堂に向かおうかと思いましたが,時間的に微妙だったので山沿いを駅方向に歩くことにしました。歩きやすそうな道を発見。ここは琵琶湖疎水の水が流れているので,栄養があまりなく,珪藻がほとんど生えていませんでした。本当は京都市内でサンプリングの予定だったのに,昨日,今日の雷雨でサンプリングはできませんでした…。



ps

でも代わりに散歩ができたわけで,全然オッケーです。知恩院,むかしここで弁当を食べたなぁ〜。クラスのアイドル女の子三人を連れて。全然口もきけなかったあのころ。戻りたくない(^^;



ps

今の筆者が欲しいものはお守りではありません。このコーナーの読者にはお分かりですよね…



ps

やっぱし人生裏街道の筆者は,三十三間堂も裏街道で歩きます。。




ps

いつも通る場所にあるこのラーメン屋は,いつも人が並んでいます。きっとうまいのだろうなぁ。



ps

といううちに京都駅につき,のぞみを待ってさささと乗り込みます。何と雨が降ってきました。ラッキーでした。



ps

雨は,この山が見える頃には止んできて



ps

発作的にこんなものを撮影したくなってみたりして…



ps

忙しく風景をチェックしている間に日本一の山が見えてきました



ps

まもなく旅も終わりです。サンプリングが散歩になってしまいましたが,いつもの定点観察をたのしく歩けました。勉強もできたし,大安の漬け物も買ったし,めでたしめでたし(画像/MWS)




2011年4月24-25日


ps

原子力災害に関係した勉強会に参加してきました。筆者はここで原子力問題に関する情報を流しているわけですので,勉強を怠るわけにはいかないと考えているからです。そこいらへんのおっさんの一人である筆者でも,民主主義社会の一人ですから,日本社会が進むべき方向性について勉強し,隠されている情報は暴き出し,偏っている情報は考え直し,いろいろ考えなければならない…のかもしれません。今回参加した勉強会は各分野の専門家が自由に議論する道場のようなところで,筆者は20年ほど続けています。どこかに道場がないと,筆者のような怠け者は,お勉強が続かないという理由もあるんですけどー。今回は原子力災害が実際に起きたということで関心も高く,多くの人が聴講に来ていました。2日間トイレ休憩もないという詰まったスケジュールの中で,専門家の解析について聞けたのは収穫でした。筆者がこれまで流してきた情報に関して,大きく修正を要するようなこともないようで,勉強の方向性も再確認できました(画像/MWS)。






2011年4月23日


ps

 一度浅間の爆発を実見したいと思っていた念願がこれで偶然に遂げられたわけである。浅間観測所の水上理学士に聞いたところでは,この日の爆発は四月二十日の大爆発以来起こった多数の小爆発の中でその強度の等級にしてまず十番目くらいのものだそうである。そのくらいの小爆発であったせいでもあろうが,自分のこの現象に対する感じはむしろ単純な機械的なものであって神秘的とか驚異的とかいった気持ちは割合に少なかった。人間が爆発物で岩山を破壊しているあの仕事の少し大仕掛けのものだという印象であった。しかし,これは火口から七キロメートルを隔てた安全地帯から見たからのことであって,万一火口の近くにでもいたら直径一メートルもあるようなまっかに焼けた石が落下して来て数分以内に生命をうしなったことは確実であろう。

 十時過ぎの汽車で帰京しようとして沓掛駅で待ち合わせていたら,今浅間からおりて来たらしい学生をつかまえて駅員が爆発当時の模様を聞き取っていた。爆発当時その学生はもう小浅間のふもとまでおりていたからなんのことはなかったそうである。その時別に四人連れの登山者が登山道を上りかけていたが,爆発しても平気で登っていったそうである。「なになんでもないですよ,大丈夫ですよ」と学生がさも請け合ったように言ったのに対して,駅員は急におごそなか表情をして,静かに首を左右にふりながら「いや,そうでないです。そうでないです。−いやどうもありがとう」と言いながら何か書き留めていた手帳をかくしに収めた。

 ものをこわがらな過ぎたり,こわがり過ぎたりするのはやさしいが,正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。○○の○○○○に対するものでも△△の△△△△△に対するものでも,やはりそんな気がする。

(『小爆発二件』 昭和十年十一月,文学; 引用は『寺田寅彦随筆集』 第五巻 小宮豊隆編 岩波文庫 1984年[第44刷],p.257-p.258)



正しい知識を学んで,放射能を正当に怖がりましょうという言葉があちこちで聞かれます。この言葉の出所は,科学者で文学者でもあった寺田寅彦の随筆で,上の画像と文章で紹介した通りです。むかしから原子力関係者の間で使われてきた言葉です。本を持っている人なら,この言葉は火山の爆発に関して書かれたものであって放射能とは何の関係もないことを知っています。その言葉が,大科学者の有り難いお言葉として,放射能と関連づけられて一人歩きしているのです。あるいは,意図的に一人歩きさせられているのです。

放射能は大半の人が怖がっていますから,「正しく怖がる」ということは,「怖がりすぎるな」というベクトルを持っています。それ自体,かなりゴマカシ的な言葉の使い方ですが,大科学者の権威のもとにそれが隠されるという構図になっています。

今回の原子力災害では,報道されている限りでは,急性症状が出るような高線量の被曝はなかったようなので,「すぐ死ぬかも…」という想像は「こわがり過ぎ」であると言えます。その一方で,広範囲に低線量の外部被曝が起こり,食品を通じて,ひじょうに低い線量であれど内部被曝も起こる状況では,少なくとも数万人から数十万人に一人は,ならなくて済んだはずのがんが発生する可能性が否定できない状況です。これは宝くじで高額当選者になるような確率ですから,宝くじを買うような方は,気になる確率かもしれませんし,買わない人にとっては無視できるものかもしれません。

そもそも,正しくこわがるというのはどのようなことでしょう。

そこが明らかにされないと,ちゃんとした議論も難しいように思います。飛行機事故や自動車事故が怖くて,なるべくこれらに乗らない人がいます。これを「こわがり過ぎ」と思う人も多いことでしょう。しかしこのような「こわがり過ぎ」の人は,飛行機や自動車で死ぬリスクは確実に低下しています。その一方で,飛行機や自動車を大丈夫なものと思っていて,ある日突然,生命が失われた方々もおられます。数値的にとても小さな死亡リスクを前に,どのように「こわがる」のが正しいのでしょうか。

東日本の方々は,いま現在,震度2〜3の地震がきても,なんとかやり過ごすことができるでしょう。しかし何十年に一度しか地震が起きない国の方々の中には,震度2〜3程度の地震に遭遇したら,顔面蒼白て外に飛び出してぶるぶる震え出すような方もいることでしょう。「こわがる」というのは地域によっても国によっても変わります。

今回の原子力災害では,一方的に,農産物や水産物に放射性物質が振りかけられました。これを喜ぶ人は皆無でしょう。万人が嫌悪感を抱くことに対して,正しくこわがるということはとても難しいことです。

日頃から,無農薬・添加物なしの食品を利用し,それにも飽きたらずに小さな畑で野菜を作っている方々もおられます。そのような方々に,「絶対安全だ,信じないのは非科学的だ」と言ったところで,農薬がたっぷりかかった生産物を食べてもらうことはできないでしょう。まして,放射能を帯びている食品など,どれほど安全と言われても,口にしたくないでしょう。

科学だけで決められる問題ではないのです。

しかも今回の原子力災害では,どのくらいの汚染状況なのか,全体像はいまだにわかりません。個人がどのくらい被曝する可能性があるのかもわかりません。ですから,個人個人のリスクを算出することなど不可能に近い状況です。そのリスクが高いものではないにせよ,将来,がんや白血病になったときに因果関係が証明できないようでは困ります。

福島県の一部では,地面から1cmの計測値で,外部被曝だけでも年間10〜50ミリシーベルトにもなってしまうところがあります。原子力産業で働いていて,この線量を浴び,後ほど白血病になったら,労災認定される可能性がじゅうぶんにあります。福島県の方々は,これに加えて内部被曝の恐れもありますから,リスク管理をしっかりする必要があります。本欄でもすでに述べましたが,居住者(特に子どもに重点的に)放射線管理手帳を交付して,つねに被曝線量をモニタ・管理し,内部被曝防止措置を施し,健康診断を欠かさず行い,医療費は当然負担するくらいのことはしなければなりません。これをした上ではじめて正しくこわがることに近づくのかもしれないと筆者は想像します。

汚染の詳細もわからず,内部被曝の程度も不明で,核種の情報は限定的,地面には放射性物質が降り積もっており,半減期の長い核種があり,事故は収束せず,それでいて住民は原発労働者なみの線量を無防備に浴びせられる可能性が高い。この状況で「正しくこわがる」などという言葉を使うのは,ふざけるにもほどがあります(画像/MWS)。






2011年4月22日


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ひたすらガラス拭き拭きの日というのがあります。カバーグラスやスライドグラスは,そのままでもけっこうキレイですが,珪藻のクリアな美しさをお届けするには不十分と筆者は考えています。そこで高品質な資材を調達して,さらにそれを拭き拭きします。洗浄→乾燥という方法もあるのですが,手間がかかる割には成績がよくないと感じていて,面倒でも,ガラスの一枚一枚を手拭きしています。この手拭き作業,一日に100〜200枚くらいのカバーグラスを手拭きすると,ガラスの角で手の皮を掘ってしまい,その日の作業が終了となります。カバーグラスは「縁磨き」のものがないので,しょうがないのですけど,作業効率が上がらないのはちょっと不満です。スライドグラスは縁磨きもありますし,手袋も使えますので,たくさん拭くことができます。カバーグラスについてはから拭き,スライドグラスについては精製水による水拭きがメインです(画像/MWS)。






2011年4月21日


福島沖のコウナゴ、出荷停止・摂食制限を指示 魚介類初
2011年4月20日11時27分

 菅直人首相は20日、基準を超える放射性物質が検出された福島県沖のコウナゴ(イカナゴの稚魚)について、原子力災害対策特別措置法に基づき、出荷停止と摂取制限を同県知事に指示した。魚介類での指示は初めて。枝野幸男官房長官が同日発表した。

 これまで指示が出された野菜や原乳(搾ったままの牛の乳)と違い、泳ぎ回る魚介類の場合は範囲の指定が課題となった。農林水産省は福島県沖のほか茨城、千葉、東京、神奈川の各都県沖の海域で検査を実施しているが、まず福島県沖で制限し、茨城県沖について検査を続ける。

 コウナゴをめぐっては、茨城県北茨城市沖で捕獲した検体から4日、1キロあたり4080ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。政府は翌5日、同ヨウ素について同2千ベクレルとする魚介類の基準を新たに決め、農水省が検査を強化。茨城県の全漁協はコウナゴ漁を中止した。

 その後も基準を上回る検出は続き、13日には福島県いわき市沖の検体から基準(同500ベクレル)の25倍となる同1万2500ベクレルの放射性セシウムが出た。同市沖では18日採取の検体で29倍となった。

 魚介類での前例がないうえ、コウナゴが実質的に漁獲されていないため、政府は出荷停止の必要性を慎重に検討していたが、基準を大きく超える検出が続いたため決断した。東京電力と政府で漁業者の損害分を補償する。

 コウナゴは「浮き魚」と呼ばれ、水面近くを群れで泳ぐ。農水省は茨城、千葉両県沖などでサバやイワシ、ヒラメなど海中〜海底を泳ぐ魚やアサリなどの貝類、ヒジキなどの海藻も検査したが、これまでコウナゴ以外に基準を超える検体は見つかっていない。

 農水省などは放射性物質は海中で拡散されるとみていた。コウナゴでの相次ぐ検出を受けて同省が専門家に尋ねたところ、福島第一原発から出た放射能汚染水が、海水とあまり混ざりあわないまま海面近くを海流に乗って南下していった可能性が指摘されたという。
(http://www.asahi.com/national/update/0420/TKY201104200131.html)



多くの専門家が「海産物は基本的に問題ない」と連呼したにもかかわらず,残念ながら,筆者が4月10日付けの本欄で書いたようなことが起きているようです。一キロあたり12500ベクレルのセシウム137というのはかなり高い値で,コウナゴの乾物に換算すれば一キロあたりで10万ベクレルにもなります。とても食べられるものではありません。この濃度でセシウムを含有する魚群が相当な規模で存在することは確実で,こうなると,コウナゴを食べる魚やイカなど,より高次の大型海産生物に放射性物質が移行していきます。セシウムの蓄積性は高くありませんが,蓄積性が高くより危険なストロンチウム90も共存しているものと考えておかしくありません。厳重なモニタリングが求められるところです。

それにしても,日本の自称専門家はどうしてしまったのでしょうか。ちょっと冗談めいた動画ですが,2分ほどお時間のある方はこちらを見てみるのも一興かもしれません。リンク先が消える前にどうぞ(文責/MWS)



*1 この動画に登場する先生に,「海藻って海の中のどの辺に生えているんですか」と質問してみたいですねぇ。知らないんじゃないかな。

*2 「魚が海藻などを食べて…」,ほとんど絶句ですねこれは。まぁそのような魚が一部いることは確かですが,この海域では漁獲されて流通するほど存在しないでしょうに。

*3 「拡散する…」,ひどい。ひどすぎる。大気中の放射性物質だって拡散せずに60km遠方に届いたわけですよ。こいつは風呂もかき混ぜたことがないのかも。。学者さんなんでしょうから,ちょっとは脳みそを使ったらどうですかね。

*4 「魚は海藻などを食べているからヨウ素が豊富…」,メチャクチャですね。これほど短いコメントで,これほどのツッコミどころを作るのは並大抵のことではできません。ある種の才能を感じます。






2011年4月20日


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北国からAllium victorialis subsp. platyphyllum が届きました。送り主は顕微鏡講習会の受講者で優秀なる若い研究者です。なんと嬉しいことでしょう。この試料はいろいろな利用ができるわけですが,薄皮をマウントして検鏡してみたのがきょうの画像です。アントシアニンを思わせる紫色が美しく,大きな細胞は非常にみやすいコントラストです。全体的に(近縁なだけのことはあって),ネギの細胞にそっくりです。この試料は半分ほどが,到着から20分後に人体実験に利用され,大きな満足感をもたらすことが明らかにされています(^^; 春の北国はいいですね(画像/MWS)。






2011年4月19日


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上の画像はHasleaという珪藻で,相模湾の表層を漂っていたものです(『珪藻の輝き』で掲載しているものと同じ珪藻細胞です)。上の画像だけでも経験があればHasleaだと判別できますが,より適切な根拠を探すとすれば,珪藻被殻の条線を見なければなりません。でも,あいにく封入標本は作っていません(かなり難しいのです)。そこで,上の画像に種々の処理を施してみたのが下の画像です。Hasleaに特徴的な条線が見えています。この例でわかるように,デジタル画像は,加工によりさらに情報が抽出できる場合がありますので,撮影したらその画像に何が記録されているのか,しつこくほじくりかえして見ることが大切です。上の画像は6年以上前のものですが,こうして新たな情報が見つかると嬉しいですし,画像の価値を再確認することにもなります(画像/MWS)。






2011年4月18日


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珪藻は上の画像のように,わんきょく(湾曲)した形のものもいます。このような形の珪藻は,一部分にしかピントが合いません。それがかえって湾曲していること表していますが,一枚の画像から全体の形態を正確に推測することは難しいです。何枚も撮影して全焦点画像にしてしまえば,珪藻の全体像を表現できますが,今度は遠近感が微妙にわからなくなってしまいます。三次元の物体を二次元で表すのはけっこうむずかしいものです(画像/MWS)。






2011年4月17日


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4月23日〜25日にかけてお休みをいただきます。メールは受け付けていますが発送対応はできませんのでご了承下さい。このほかにも4月〜5月は不定期に休むことがありますので予めご了解いただけますと幸いです(画像/MWS)。






2011年4月16日


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撮影画像の選別を行っていますが,けっこうな数があるので手間取っています。結局は時系列で保存して記憶を頼りに探すのが一番早い気がしていますが,過去数年分のプランクトン画像ともなると,探すのにかなりの時間を要することもあります。生体試料あり,標本画像あり,特殊検鏡あり,研究用テスト画像ありの状態では,筆者の足りない頭で下手に整理すると何が何だかわからなくなる恐れがあります。かといって,時間順で放置プレイですと,記憶はいつまで途切れないのでしょうか…。何とかしないとと考えて,いつも何もしていないというのが現状です。

ところで,話は変わりますが,南国で顕微鏡集中講義を行ってから一ヶ月以上が過ぎました。そろそろ研究室も新年度の計画に従って動き始めていることでしょう。研究の道具たる顕微鏡は単純な機器ではありますが,性能を引き出せば驚くほどのパワーを発揮します。はるばる来たぜの北国で担当した顕微鏡講習会からも半年以上になりますが,受講者の中から凄腕の若手が発生しているとも聞きます。南でも北でも,受講者の技量がアップして,これまでにないプランクトンの世界を見せてくれるとすれば,筆者にとってはこれに勝る喜びはありません(画像/MWS)。






2011年4月15日


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テスト送信。画像は海の珪藻です。

(画像/MWS)。






2011年4月14日(2)


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上の画像は郡山市が発表した放射線量の測定値です。地上1mと1cmを測定しているのは,行政としてはなかなか良心的です。この測定値を見ると,保育園や幼稚園児の被曝量がかなり高い値になるのがわかります。いちばん高い値を使って計算すると次のようになります。

測定値 1cm高さ 6μSv/h

6μSv/h = 0.006mSv/h

一日は24時間なので

0.006×24 = 0.144mSv/日

1年は約365.2422日なので

0.144×365.2422 = 52.6 mSv/年

そこに2年通うとして

52.6×2 = 105mSv/2年

日本の法律で一年間に過剰に浴びて良い放射線の総量は1mSv/年

これは,かなり厳しい値と思います。100mSvの外部被曝でも1%の発がん可能性があるかもしれないのです(ないかもしれない)。1年に胸部X線撮影を800回行うような数字になります。原子力発電所で働いている方々であれば,身のすくむような数字だと思います。

これだけの外部被曝を与えられ,ケースによっては,さらに内部被曝が加算される状況では,「安全」という言葉は使いにくいように思います(*1)。

ちなみに,医療被曝も発がんなどの原因と考えられていて,40歳未満の医療被曝はあまりメリットがないという認識が1990年代以降広く知られることとなりました。かつては小学校や中学校でおなじみだった胸部X線検診も,時代が進むにつれて不必要と認識され,最近は行われなくなりました。筆者は1992年以降,自分の不定愁訴がないときの胸部X線検査は不要なものと認識し,健康診断時にも受けずに済ませてきました。

今回の原子力災害に伴う,年間50mSvの被曝は発がんリスクが1%上昇したとしても不思議のない数字です。1%という数字が小さいとお考えの方は次の想像をしてみてください。

貴方が小学校に通っていたとき,その6年間を通して,誰が死にましたか?

筆者は,小学校は3校経験(総児童数約は約2500名)しましたが,死亡者0でした。もしも原子力災害で白血病などの早期に影響が出る死者がある場合,1000人規模の教育機関なら,数年に一人,白血病で命を失う人が出るかもしれないという確率になります。これは,児童には小さな数字,学校教員には驚く数字になることと想像します。

晩発性の疾病は,実際にどれほどの影響が出るのかは,数十年後にしかわからないでしょう。ですから,集団で人が働くような職業にお勤めの方は,ぜひとも,発がんや白血病の発生頻度に注意していただきたいと思います(画像/郡山市/文章;MWS)。

*1 この見積が過剰だと感じた方もおられるかもしれません。そのような方は,御自分の子ども時代を思い出せますでしょうか。筆者は,雨が降れば喜んで外に出て,長靴の中に水を入れて,その感触を楽しんだものでした。大雨が降れば水槽の魚を庭の水たまりに放し,背中を出しながら泳ぐ魚の姿を見て,楽しくて仕方がなかったものです。いずれも,4〜6歳の頃の想い出です。小学校に入るともっとひどくなります。裏山で防空壕に入ったり泥だらけになって遊んでいたのです。





2011年4月14日


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13日は顕微鏡のメンテナンスを行っていました。小学校で使われるような簡易顕微鏡です。コンデンサはなく,迷光処理も不完全で,付属のミラーで正しい照明を行い良質な像を得るには光学に関する専門的な知識を必要とします。実際には専門的な知識だけでは不十分で,珪藻プレパラートの高度な観察経験と,顕微鏡改造の技量も必要になります。正しくない像でよければ,何もせずにそのまま覗けばOKです。物体によっては,何の問題もなく観察できる場合もあります。

という説明からも察して頂けますように,顕微鏡というのはなかなか奥の深い,使いこなすのが楽しい機器なのです。何も考えずに覗いてもOK。じゅうぶんにチューニングして最高の像を追求するのもまた良し。技量に応じて像が変化するので,それを鋭く見抜く眼力がある人には,いつまでも楽しい光学機器なのです(画像/MWS)。






2011年4月13日


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きょうも朝からよく揺れた一日でした。上の画像は3月1日から4月12日までの地震発生の様子ですが(こちら),関東から東北の広範囲にわたって多数の地震が起きていることが一目瞭然です。プレート境界付近できわめて大きな逆断層型の地震が発生して,その結果として内陸や沿岸近くでは張力がかかるようになり,正断層型の地震が起きているようです。3月11日の地震では岩手県沖から茨城県沖までのプレートが動いたとされています。こうなると,関東から東北のどこで断層が動いても,あるいは断層と見なされていなかったところが震源となっても,不思議ではないような気がしてきます(画像:防災科研)。






2011年4月12日


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11日は珪藻に関する打ち合わせでした。分野の異なるお二人の方とひじょうに楽しい時間を過ごすことができました。珪藻が取り結ぶ縁,とでも言えばよいのでしょうか。筆者は近年,珪藻を取り扱っているお陰で,いろいろな面白い方々と知り合うことができています。皆さん喜んで珪藻をご覧になります。芥子粒よりも小さな生き物の精密な構造は,何でも珍しくない世の中に残された最後の楽園なのかもしれません。

そーんな楽しいひとときも終わり,顕微鏡を収納しようとしていたときです。来ました。ゆさゆさゆさ。かなり大きな揺れで,先月11日を思い起こさせるようです。明らかに北東方向からの揺れで,本棚を押さえながら,ひたすらマグニチュードが小さいことを祈りました。地震対応は強化してあるものの,震度4を越え,本棚やライトが大きく揺れると本当に怖いものです(撮影/MWS)。






2011年4月11日(2)


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やっぱし日本人なら花見ですねぇ〜。

神戸のときもそうでした。

花を咲かそうよ♪〜。

(画像/MWS)。








2011年4月11日


校庭活動に放射線基準…文科省、福島県に提示へ

文部科学省は、校庭など、幼稚園や学校の屋外で子供が活動する際の放射線量の基準を近く福島県に示す方針を固めた。
 同県内では、一部の学校で比較的高い濃度の放射線量や放射性物質が検出されており、体育など屋外活動の実施可否について早期に基準を示す必要があると判断した。
 同省などによると、基準は、児童生徒の年間被曝(ひばく)許容量を20ミリ・シーベルト(2万マイクロ・シーベルト)として、一般的な校庭の使用時間などを勘案して算定する方針。原子力安全委員会の助言を得た上で、大気中の線量基準などを同県に示す。基準を超えた場合、校庭を使用禁止にし、授業を屋内だけに限るなどの措置をとる案も出ている。
(2011年4月10日03時19分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110409-OYT1T00912.htm

詳細が報告されていないのでコメントがしにくいですが,もし仮に,上の記事が外部被曝だけに基づいたもので,内容もこの通りなら,これはとんでもないことですね。国際世論が許さずに,取り下げになることもあるかもしれません。

これは壮大な人体実験になる可能性があります。もし,上の記事通りに事を進めるのなら,筆者は次の追加対策が必要と考えます。

1)内部被曝を可能な限り低くする施設を全校に配備
 (シャワー,活性炭マスク,ゴーグル,防護服,着替えなど)
2)児童や生徒には線量計装着を法律で義務づけ。放射線管理手帳を交付
3)累積線量を国が管理し,子どもが平均寿命に達するまで国が健康管理を無料で行う
4)児童・生徒には放射線作業従事者の手当として1人あたり年間300万円(非課税)を支給
5)以上の財源は現在の年金受給額を削減することにより捻出

子どもが学校に通うというのは,大人が仕事をするのと同じことです。その役割をこなすのに,浴びたくもない放射線を,原子力産業に従事する労働者と同等レベルに浴びせられるわけです。しかも,読売の記事によれば内部被曝については一切触れていません。本当にそんな馬鹿げたことを許すなら,健康管理も賃金も必要なのは当たり前に思います。上の1)〜5)くらいは行って当然だと考えますがいかがでしょうか(MWS)。



*1 放射線源は微粒子ですから外部被曝あるところに内部被曝ありと考えて間違いありません。学校自体を放射線管理区域として運営しないと「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律 」に対して違反になります。

*2 かなりの高線量被曝になりますので,管理は当然です。

*3 原子炉建屋内部で作業するような,原子力産業で働く人々でも,平均年間10ミリSv〜20ミリSv程度以下です。これらの方々は,放射線被曝量を少なくするために,高線量の下では,一日の実質作業労働時間が一時間にも満たないことがあります。それでも当然,一日分の賃金が全額支給されます。これらの方々と同じ量だけ放射線を浴びせられるわけですから,学業という形で放射線を浴びたことによる補償が必要と考えます。

*4 財源は,日本を原子力発電所だらけにした,ご年輩の方々から少し頂戴するのが世代間不公平を緩和するやり方だと考えます。年金受給額を減らす方法もありますし,相続税から強制的に吸い上げる方法も考えられます

*5 こういった対策を取るよりももっと優れた方法は,最大でも,年間+1ミリSv程度の被曝で住むような環境のもとで学校を運営することです。可能ならば,年間+0ミリSvがベストであることは,言うまでもありません。






2011年4月10日


原乳の放射性物質、基準値下回る 福島

2011.4.9 00:01
 福島県は8日夜、福島第1原発事故を受けて、7日に実施した原乳の緊急時モニタリング検査(4回目)で、放射性ヨウ素、セシウムが暫定基準値を上回った検体はなかったと発表した。
 県によると、今回から検査方法を改め、前回(3月29日)に暫定基準値を下回った市町村の原乳は戸別検査をせず、県内10の乳業メーカーなどが、他の市町村産と混ぜた後の原乳で測定した。
 県は、約1週間後に予定する次回検査で、基準値を上回らなければ、国と調整して出荷制限を解除していく構えだ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110409/dst11040900040000-n1.htm

筆者が懸念していたことが早速起きていることが明らかになりました。4月3日の本欄で指摘したように,セシウム137やヨウ素131が基準を超過していても,基準以内にするには薄めればよいわけです。これは法で決められた基準を守る行為ともいえますが,より安全な食品のリスクを高めてしまう恐れがあるという意味では不誠実な行為です。こういったことを行うようでは,消費者はますます,福島県やその周辺地域で生産された食品に疑念を持ってしまうでしょう。

このような,危険なものを薄めてしまう行為は,チェルノブイリ原子力発電所事故のときに広く知られることとなりました。ですから,筆者は別段,予言したのではなく,チェルノブイリで起きたことは当然,日本でも起きると考えたまでのことです。なぜなら経済行為に関しては,人間は地球上のどこでも,不思議なほど同じ行動をとるからです。

食品汚染はこれからも長期間続きます。福島ブランドを守るならば,まずは出荷をすべてストップし,政府や東京電力がすべての食品の放射線量をチェックできる体制を作ることが先決です。次に,JAなどとも協力して,すべての農地と農産物の放射線量の関係をマッピングして,出荷可能な農地と不可能な農地を確定することです。出荷不可能な農地については,除染か食用以外の作物を生産するなどして農地の維持に努めます。これは福島第一原子力発電所の事故を収束させるよりもはるかに簡単で,予算もかからないことです。

読者の方々がどのくらいのセシウム137やヨウ素131を許容するかは,個人の考え方によると思います。筆者は,個人的には,コメ以外は100ベクレル/kg以下であれば何の心配もいらないと考えています(*1)。それよりもっと低い値であることが理想的なのはもちろんです。しかしチェルノブイリ原子力発電所事故で日本が決めた暫定基準値は370ベクレル/kgでした。これ以下の値であれば,今回の事故以前にもふつうに流通しており,それを心配している人は,よほど極端な例外を除けば,いなかっただろうと思うからです。そこで安全を見込んで100ベクレル/kg程度ならば,これまで通り,何も考えずに食べても良いだろうと思うわけです。

*1 ちょっと誤解を招きそうな記述なので補足します(2011年4月13日)。100ベクレル/kgなら心配いらないという意味は,日々摂取するいろいろな食品の数品目に100ベクレル/Kgのものが入っていても,危険視して直ちに廃棄する必要はないのではないかという個人的意見です。「毎日食べるすべての食品が100ベクレル/kgの放射性物質を含有していてもよい」という意味ではありません。大量に摂取するコメや水に安全が確保され,一日に数十〜数百グラム摂取するほかの食品の中に入っている野菜や乳製品の一部に,100ベクレル/Kgのものが入っていても心配することはないだろうというニュアンスです。したがって,福島県や茨城県内で生活して,地元の食材を日々食べるようなケースでは,いろいろなところから放射性物質を摂取しますし,呼吸で空気からも取り込まれますので,もう少し厳しい基準(たとえば10ベクレル/Kg)を適用したほうが現実的だと考えます。



海産物については,多くの専門家が,海水による希釈効果が大きく,それほど深刻な事態にならないだろうと述べています。にわか専門家だけでなく,海洋生態学の専門家も同じ意見です。筆者も海洋生態学が専門とも言えますので,これら専門家の言うことも,ある程度の妥当性があることを認めます。

しかし指摘しておかねばならないことがあります。何よりも真っ先に言わねばならないことは,今回の原子力発電所事故において,放出された放射性物質のほとんど全部は,海に落下したであろうということです。データのない現時点では,陸上に落ちた10〜1000倍の放射性物質が海上にばらまかれたと考えてもおかしくありません。希釈されるとはいえ,あまりにも多量に放射性物質が落下すれば,その分,安全なレベルになるまでに時間がかかります。

そして海水は専門家が言うほど早くは混ざりません。海で数キロも泳いだことのある人なら知っていると思いますが,海の中には,何本もの川が走っています。河口から沖に数キロ離れていても,そこを泳いで通過すれば,一瞬にして温度が下がり,河川の影響が残っていることがわかります。海水の密度と異なる水は,混ざるのに時間がかかるのです。そういった水に放射性物質が含まれていれば,濃いままに海洋を漂います。原子炉の冷却に真水が使われれば,それが海に入り,完全に拡散希釈するまでには,ある程度の時間を要するのです。数日とか,数週間とかの時間を要します。

そしてもう一つ,放射性物質が粒子として海洋に供給された場合です。たとえば3号機の爆発では大量の粉塵が発生して海に落下しました。これらの粉塵は一様に希釈されて拡散するものではありません。潮目・潮境という部分に濃縮されていきます。船乗りなら,広い海に突然,濁った海域が直線上に続いているところがあるのを知っています。そういった潮目には,浮遊物や沈殿物などが集まっているのです。そしてそこには,沈殿物などを餌として魚が集まってきます。

つまり潮目には粒子状の放射性物質が集まりやすく,そこに魚が集団で泳いでくるのです。漁船は魚がたくさんいることろを探して操業しますから,表層域の浮魚を漁獲する場合は潮目の近くで網をひくことが多くなります。その結果,放射性物質に汚染された魚を漁獲することになるわけです。

コウナゴなどから多量の放射性物質が確認されたのは,上述のようなことが起きていると考えておかしくありません。海水の動きや魚の動きは決して一様なものではなく,かなり不均一なのです。放射性物質の放出量や様態も様々です。現場で何が起きているかなんて,簡単にわかるものではありません。ですから,事故が収束しない限りは,海産物に関しても放射性物質について厳しくモニタリングを継続する必要があります。

その意味で,今回,魚にも放射性物質に関する暫定基準が設けられたのは評価してよいと筆者は考えます。大切なことは,上に述べたように,すべての海産物について放射線量をチェックできる体制をつくるということです。

こういったことで安心を得るためには,何よりも,信頼できる測定値が必要です。原子力発電所の事故が完全に処理されるまでには,数百年を要する可能性も残されています。それと比較すれば放射線量を測定し,食品の安全性を確かめる体制づくりは,はるかに短い時間で対処可能です。必要なことは,暫定基準値を引き上げることでも,放射線量を基準値以下に薄めることでもありません。迅速に正しい測定値が得られる体制を構築することです。

このような対策は,現在の消費者の安心に結びつくだけでなく,将来起こる原子力災害への予行練習にもなります。六ヶ所村の再処理工場が本格稼働すれば,大量の放射性物質が毎日放出されます。確実に起こると言われている,東海大地震や東南海大地震で,浜岡原子力発電所が大規模な放射能漏れ事故を起こす可能性も,ないとはいえません。日本は国策として数十年かけて,国内を原子炉だらけにすることを選んできました。日本各地に原子炉があるのですから,日本各地の農水産物取扱施設に放射線測定器があっても,何ら不思議なことではなく,むしろ緊急に配備が必要なものと言えましょう(MWS)。








2011年4月9日(2)


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8日はあまりの強風が吹き荒れたために視察は中止しました。これだけの風が吹くと,海岸にはまず,近づくことができません。大潮の時に強風が吹くと底荒れしてしまい,海藻なども流されてしまいますので,今後がひじょうに心配です。よくない結果になると予想しています。

きょうの画像は砂の上にいた珪藻です。砂浜の砂上に這い出てくる珪藻はこれまでも採集していますが,今回採集したものはひじょうに小型で,Jシリーズには使えそうもない感じです。はて,どうしたものか,しばらく対処を考えてみましょう(といいつつ,放っておく)。

付着珪藻が大量に這い出てきたりしているところでは,画像のように,高純度な珪藻が採集できます。本ページをご覧の皆様も,採集と検鏡に挑戦してみてはいかがでしょうか。珪藻だらけの試料というのは,あたまでは分かっていても,見てみるとうーむすごいなと驚かされます(画像/MWS)。








2011年4月9日


4月6日付けでレポートした浦安の液状化現象ですが,筆者が撮影したコンビニエンスストア前で撮影された貴重な動画がyoutubeでシェアされていましたので紹介します。地震動から液状化が始まるまでのたいへん貴重な映像です。

こちら



また,東京都江東区で撮影された地震動の様子がありましたのでこちらも紹介させて頂きます。筆者のところと揺れの大きさや傾向が良く似ていて,都区内の比較的揺れの大きかったところの参考になるかと思います。

こちら

この画像で説明すると,筆者は1:20から1:40にかけて,高さ1.2mの棚から,安全フックを外し,10kgクラスの顕微鏡2台を下ろしています。そのあと1:42付近から揺れが収まるまで,顕微鏡デスクと珪藻在庫,倒立顕微鏡を押さえ続けました。その段階で,液晶モニタは倒れ,顕微鏡書籍も多数落下していました。揺れは後半が特にひどく,30kgの顕微鏡を片手で止めることができず,じりじりと押されました。リンク先の画像は途中で終わっていますが,このあとも揺れが続きました。

いま振り返ってみても,なぜタイミング良く動作ができたのかまったくわかりません。もし少しでも動作が遅れていたら多大な損失が出ていたことに疑いはなく,とても不思議な気分です(MWS)。








2011年4月8日


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7日は相模湾西部を中心にサンプリング先の状況を見て回りました。画像はいつものサンプリングサイトですが,漂流物の様子からみて,大潮の満潮時より少し上まで津波がきたように見えました。しかし海藻の付着状況などからみて,大きな変化はないように思いました。台風通過よりもずっと穏やかな感じです。

この場所は紅藻類などに付着する珪藻を採取するのに都合がよかったのですが,今年は紅藻類が激減していました。原因はわかりません。その代わりに,ワカメが大量に繁茂していました。不思議です。今まではそれほどワカメはなかったのです。また,フクロノリが例年以上に大発生していました。浅くなった潮だまりを見ていたら,体を海水で膨らませてジェット水流を起こして進む,不思議なウミウシ君?をみかけました。仕方なく,砂上の珪藻を採取することとしました。

潮位予想からはあまり引かないと思っていたのですが,出向いてみると予想よりも10-20cm引いていて驚きました(画像2枚目)。ここ数年の経験からは,潮位予測からは絶対にあり得ない引き具合で,まさか海岸が隆起したわけではあるまいとぞっとしました。帰宅して小田原の潮位観測情報を見ると,アノマリー(潮位偏差;天文潮位と実測値の差)が-15cmもあります。気圧配置のせいでしょう。なるほどこのせいで潮が過剰に引いたのだと理解しました(画像/MWS)。








2011年4月7日


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6日は相模湾東部を中心にサンプリング先の状況を見て回りました。相模湾の東側は東北からの津波が回り込む地形になっていることと,津波のエネルギーが集中しにくい湾の形状であることもあって,潮位の変化は小さかったようです。筆者が見てまわったところでは,大潮時の満潮程度のピークではないかと感じました。

サンプリングサイトへの影響がどの程度あったのかはよくわかりませんが,海藻や底生藻類の付着状況からみて,それほど大きな変化はない印象です。きょうは泥上の珪藻と,砂上の珪藻を採取してみました。砂浜は一見すると珪藻がいないようにも見えますが,砂を海水ですすいでみると,けっこう珪藻が出てきます。ほとんどが付着珪藻で運動能力を持つ種類が多く採集できます(画像/MWS)。








2011年4月6日


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5日はサンプリング先の状況を見て回りました。まずは東京湾岸ですが,きょうはその中で浦安地区の状況について掲載します。新浦安駅から海側に向かう明海地区では,地震に伴う液状化現象がひどく,大きな被害が出ています。浦安市はTDLからの税金収入が多く予算が贅沢で,街並みはかなり整備されているところで有名です。しかし3月11日の地震で美しい街並みは,かなり破壊されました。

歩道のあちこちから泥が噴出し,それが乾燥してホコリっぽくなっています。泥は街路樹の植え込みに積み上げられています。大型量販店は数十センチメートルほど浮き上がり,入り口には新たに階段を作らないと店内に入れないほどです。何度も利用したコンビニエンスストアは傾いて沈み込んでいました。

海岸沿いの歩道は無惨に崩れた場所や,地割れによって2メートル幅の割れ目ができた場所(ベンチが落ちています),護岸の巨大なコンクリートが25センチも動いている場所などがあり,被害の大きさを物語っています。数十センチメートルほど浮き上がりつつも営業中のお店があり,一方では,駅のエレベータは基礎から破壊して使い物になりません。

特に被害の大きかったところは,比較的新しい埋め立て地のように見えました。この辺りは埋め立てにヘドロも使われたという噂があり,実際にこの周辺を数十センチも掘り下げれば無酸素の真っ黒な泥が出てくるところもありました。数キロしか離れていない埋め立て地では被害が小さいことから,この液状化現象は埋め立て手法の違いがもたらした災害の疑いが濃いように感じられました(画像/MWS)。








2011年4月5日(2)


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3月28日には上の画像のようにつぼみも堅かったソメイヨシノが,4月4日にはこんなに素敵な花を咲かせます。自然というのは本当に素晴らしく,それを巧みに採り入れて,日々の彩りを考案してきた江戸時代の方々には,「有り難い」という言葉以外に浮かびません。先人達が残してくれた素晴らしい遺産の恩恵は,思う存分浴するのが幸せというものです。

ですから,筆者はお花見を推奨します。都知事さんが大震災の事態を勘案してお花見イベントを中止しましたが,もったいないですね。

今年の染井吉野は,いましか見ることができません。

それは,忘れ得ぬ,生涯最高の桜かもしれないのです。

震災の春に咲いたソメイヨシノの美しさを心に留め,その儚さ,生きている偶然,どんちゃん騒ぎができる幸せを噛みしめ,大自然に翻弄されつつも自然を愛でることを止めなかった,DNAに刻まれた日本人のアイデンティティーを己の内側に感じ,それを復興へのパワーとする人もおられると信じます。

筆者は知っています。日本人,特に市井の人(*1)はスゲェ人々の集団であることを(画像/MWS)。



*1 官公庁にも優れた人はたくさんおられます。しかしかれらは法規に縛られてしまいます。市井の人の凄さは,超法規的に勝手に動いて様々な奇跡を起こすことです。そしてその活動の姿は,報道で語られることはほとんどないのです。

*2 もちろん官公庁の方々も素晴らしい仕事をしていることは周知です。自衛隊(*3)の方々はもとより,海保の方々(*4)の仕事ぶりには,筆者は,昔から感心しています。今回も,犬がいるなら人間もいるかもしれないと,気仙沼沖でワンコ「バン」を助け出し,しかも飼い主との再会まで見届けた仕事は,一つの命を救った以上の価値があるように感じています。

*3 自衛隊の方々の凄さを感じたのは,日航123便墜落事故のときです。筆者は12歳の頃から毎年ペルセウス座流星群の観望を続けているのですが,16歳のとき,軽井沢に自転車で行って観望しようと計画しました。バンガローを8月13日に予約して出発を待つだけの前日に123便が消息不明になりました。8/13日朝05:21に八王子を出発し,自転車で軽井沢に向かいました。韮崎を過ぎて八ヶ岳に向かい,途中,清里付近で落雷に遭いながらも佐久を目指して走行しました。やがて自衛隊の車両が次々と走ってきて(14時頃),現在の墜落地点とされる方向に向かって行きました。その車両に乗っていた自衛隊員の「ものものしさ」は,筆者は忘れることはないでしょう。阪神淡路大震災でも,自衛隊の方々が言語に尽くせぬ仕事をしたことは人々の記憶に深く刻まれています。

*4 海上保安庁の船舶には,船首にPL(数字)があります。筆者もむかし海上でPL番号を見るとほっとしていたものですが,知人の海自隊員も,日本の沿岸に帰還してPL番号を見るとほっとする,と言っていました。皆さんも見て下さい。白い船舶に船首部のPL番号。凛々しくも頼れる海のプロフェッショナルです。






2011年4月5日


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筆者のところでは居住をはじめた段階から,不必要な電気利用がないようにいろいろ工夫してきました。しかし電気は何だかんだ使ってしまうもので,ある程度以上の節約は難しい面もあります。恥ずかしいのを我慢して筆者のここ11年間の電力消費量を上の画像に掲載します。世帯人数は2名で,東京電力管内,契約は30Aです。

ほかの世帯と比較したことがないので,これが多いのか少ないのかはよくわかりません。しかし飛び抜けて多いことはないのではないかと想像しています。普段から,カットできるものはすべてカットしています(*1)。

この表を見るといろいろな傾向が見えます。気温のちょうどよい4〜6月と10-11月は電力消費が少なく,冬と夏に多くなることがわかります。筆者のところでは,暖房はとくに使うことはなく,家人がコタツと電気ストーブを短い時間つける程度です。ただ,冬場はふとん乾燥器を使うので,それが1〜3月のピークに現れています。だんだん歳をとってきて,発熱量が低下しているということもあるかもしれません。若い頃より寒さが堪えるようになりました。

夏のピークは言うまでもなく冷房です。都区内のヒートアイランド地獄は厳しいものですが,日中は,筆者は冷房がなくても死なない程度の健康を保っています。しかし夜になると,隣家の冷房室外機の排熱が窓から直接入ってくるという過酷な環境になり,かえって室温が上昇したりするので,夜間は家人の要請により冷房を入れています。それだけでも,電気使用量は跳ね上がります。特に昨年の夏は信じられないほどの暑さで夏の電気使用量を更新しました。

ここ数年,電力消費量が若干多めなのは,筆者の業務用電力消費が上乗せされたためです。パソコン,顕微鏡,珪藻処理の電気ヒーターなどが主なものですが,多少なりとも電気を使います。また平成22年は来客が比較的多く,それによっても電力消費量が増加しました。

節約しているとはいいつつも,結構使ってしまっています。。。

上の表を見ると,より節電を求められた場合,冬場のふとん乾燥器カット,夏場の冷房カットをすればいいことは明らかです。やることははっきりしているというのは,いいことですね(画像/MWS)。



*1 環境リテラシーの向上を目的として,たった5,6年程度でも大学で環境論を講義してきた身としては,エネルギーや資源をどのように有効活用できるか,ということも日々の生活で実践しなければなりません。口先だけの学者はたくさんおられますので,筆者は経験重視型で攻めの人生を送っています(^^;

*2 原子力を推進する方々の中には,「原子力に賛成できないなら電気を使うな」というご意見をお持ちの方もおられます。これはその意見が論理的でなく,おかしいのですが,それにまともに対応するのも面倒なので,日々の節約分を考慮して,「原子力発電相当分は使っていません」と答えられる準備はしています。

*3 顕微鏡は意外に電気を消費します。特殊検鏡では12V 100Wハロゲンランプをフルパワーで使うことも珍しくありません。蛍光顕微鏡では100Wの超高圧水銀灯を使用します。これらの電力消費は無視できない上に,必要ない波長の光や熱まで発するランプを使うことへの疑問もあり,筆者の顕微鏡は紫外線蛍光も含めてすべてLED化しています。消費電力を90%カット可能です。






2011年4月4日


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故・宇井純が指摘したように,公害問題で専門家が出てきたら事態が複雑になり,何が何だかわからなくなったという例がたくさんあります。水俣病などはその代表例で,原因究明に奔走する熊本大学をヘッポコ大学呼ばわりした専門業界紙まで出現しました。有機水銀説が濃厚になりはじめてからも,数々の奇妙な説が「専門家」から提出され,いい加減な意見が出され,問題を複雑にしました。

今回の原子力災害でも,「専門家」がマスコミを中心にゴソゴソと蠢いています。核化学の人が食品について語ったり,原子炉に詳しい人が外部被曝の安全性について話したり,ツイッターで「大丈夫大丈夫」と連呼して,あとでこっそりと削除したりしているのを見ると,「専門家」の生態が垣間見えて筆者には興味深いものがあります。

これらの自称専門家の方々は,筆者の目から見れば,自分の専門と関係ない分野について,かなり適当なことを安全側(=業界擁護側)に振って話をしているので,話に具体性がありません(*1)。こんな方々の出演するTV番組をどれほど見ても情報は得られないでしょう。

そう思っていたら,床屋さんから「私たちは素人だからテレビをどれだけみても何もわからないの。専門用語ばかりで何にもわからないの。どのくらい放射能は危ないんでしょうか。冬の電気を溜めておいて夏に使えるんでしょうか? かくかくしかじか〜」と告白されましたので,床屋政談となりました。原子力開発の歴史から,なぜ国民に原子力に関する知識がないのか,数値の意味,WHOの基準,暫定基準値とその前までの基準値。水は安全なのか,野菜はどうしたらいいのか,買い占めはどう考えたらいいのか,電気は溜められるのか,再処理,原賠法,電気事業法,投資,電力会社と下請け,DNAと放射線と生命の歴史などをお話ししてきました。約1時間のお話です。ほかに客はなく,店主と奥様が揃ってお見えになりました。

まぁ30年も通っている床屋さんですから,お世辞もあったでしょうが,「ものすごいわかりやすかった」とのお言葉を笑顔とともにいただきました(*4)。まぁテレビを1時間見ても,ほとんど必要な情報は得られないでしょうから,そういう評価になったのでしょう。テレビできちんとした講義をすればいいのに,そういうことはやらない。放送局はスポンサーの電力会社に気を遣っているのかもしれませんが,カネがもらえなくなるから正しい教育をしない,とするならば,レゾンデートルを問われます。もっとも,筆者はテレビが不要だと思っているので,持っていないんですが…(撮影/MWS)。



*1 きちんと根拠を述べていればいいのですが,何故かそのようにはしない。「安全」を力説するあまり,その根拠を述べないのでは,「不安」が増幅してしまいます。

*2 きょうの画像は富田八郎の『水俣病』です。著者の名前は「とんだやろう」と読みます。とんでもない奴,という意味です。これは故・宇井純のペンネームです。あの宇井純ですら,当時は実名で記事を連載することにためらいを感じ,ペンネームを使用したのです。この資料は水俣病を調べる上で第一級のものです(非売品)。現在この本を所持している人はかなり少ないと想像します。筆者は学生の頃,水環境問題を中心に集中的に勉強していたとき,ある古本屋でこれを見つけ,少ない小遣いを叩いて買いました。恐るべき資料でした。水俣病の研究する人は,これを読まなければなりません。詳細な時系列経過と医学論文,それに「専門家」がいかに問題の解決を妨害したかが収録されています。

*3 画像に写っているコピーは,「水」昭和35年5月号です。業界紙は,業界擁護のためなら何でも掲載するという見本のようなものです。

*4 きっとあのお客さんは詳しいんだろうねと,来店を待っていたとのことでした。。筆者もさっぱりして,頭髪に付着したセシウム137を落としやすくなりました(^^)

*5 床屋の主人も奥様も,パソコンなど持っていません。今回の災害に関しての情報源はテレビとラジオしかないのです。そういう方々は少なくないと思います。

*6 床屋というのは情報が集まるところです。筆者もふだんは店主や奥様から,地元の一ヶ月分の事件や情報などを頂戴しています。組合加入の床屋では調髪料金がかなり高額なのですが,情報料金も含まれていると考えれば,けっこうお得です。

*7 専門家ではない人が,根拠を示した上で話をしている場合は,専門家の放言よりもずっと参考になります。根拠となる情報を丹念に調べれば,真偽の判断がつく場合もありますし,少なくともうのみにする危険は回避できるからです。専門家が「私の言うことを信じなさい」と言った場合は,その内容は聞くに値しないと判断してもよいかと筆者は考えます。ほんとうの専門家は,「自分の言うことを信じろ」なんて乱暴なことは言わないものです。





2011年4月3日(2)


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福島県の農産物はこれから放射線量をチェックされて,暫定基準以下になったときに出荷が始まることでしょう。行政としては,できることはそれほど多くなく,県民に受け継がれてきた暮らしの知恵までは踏み込むことができないでしょう。

東北はどこでもそうなのですが,福島県もきのこの名産地であって,春から晩秋まで,県内各地できのこ採取がおこなわれます。たくさん採取する人は専用の冷凍庫を持っていたり,干しきのこを作る人もいて,その消費量は,きのこに関心のない方々には想像できないほどのものです。一人年間数キロ〜数十キログラム(湿重量)くらいの消費は珍しくもないことでしょう。

きのこに詳しい人ならご存じかと思いますが,きのこはセシウムを濃縮しやすい傾向があり,今回の事故で放出されたセシウム137も同じように濃縮されます。チェルノブイリ原子力発電所事故のときも,ヨーロッパのきのこから,高い放射線レベルが検出され続きました(画像4枚目)。当時は国外の事故でしたので,暫定基準値は370ベクレル/kgと定められ,それ以上のものは輸入禁止の措置がとられていました。画像4枚目の表は,当時の暫定基準値を超えたため,返送された食品の一部です。

今回の事故により,チェルノブイリ原子力発電所事故で定められた370ベクレル/kgの基準は破棄され,これよりもはるかに高い暫定基準値が採用されます。これまでは輸入さえ認められなかった食品が,何の問題もないことになって食卓に上がるのです。基準を超えた農産物でも,基準を超えなかった農産物で薄められれば「基準内」にすることが可能で,市場に出回ることも懸念されます。

これだけでも小さくない問題なのですが,福島県でごく普通に営まれてきた山菜採りやきのこ狩りなどには,規制の目が及ばないことも十分に考えられます。自家消費分なら,ノーチェックになります。

原子力発電所から50km以上離れた中通り地方で,すでに3万ベクレル/kgを越えるセシウム137を含有する野菜が見つかっています。さらに濃縮率が高くなる恐れのある天然きのこなどは,いったいどのような値になるのかと思うと,本当に恐ろしく思います。乾燥重量当たりでは,10万〜100万ベクレル/kgになる可能性もあります。

放射線は目に見えません。10万ベクレル/sのセシウム137を含んでいても,何ら形態に変化はないことでしょう。"いつものシロ"に出掛けて,いつも通りにハタケシメジ,ヤマドリタケモドキ,アンズタケ,マイタケ,ホンシメジやコウタケやハツタケやマツタケなどが出ていたら,採取して食べる人は必ず出てくることでしょう。

政府の対応がそこまで及ぶとは想像できませんが,机上の規程だけでなく,その地域に住んでいる方々の暮らしを知り,文化を知り,くらしの実態にまで踏み込んだ対策を求めたいものです。食品に規制をかけるのであれば,せめて,『日本の食生活全集(農山漁村文化協会刊行)』(*1)くらいは読むべきだと考えます(撮影/MWS)。



*1 『日本の食生活全集』は都道県別に出版されています。すべて聞き書きで,昭和初期頃に実際に郷土料理をこしらえていた方々に直接取材した話をもとに構成されています。筆者は,滅び行く日本の伝統を聞き書きという形で残そうとする試みに感嘆し,図書館から一冊ずつ借りて全巻に目を通しました。全巻揃えたかったのですが,貧乏学生ゆえに金銭的な余裕がなく,古本屋で買い求めて現在1/4ほどが手元にあります。食材の扱いについては情報の宝庫ともいうべきで,この本からは胡桃の割り方やゆべしの作り方など,いろいろ学び続けています。






2011年4月3日


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この本には阪神淡路大震災に巻き込まれた方々の貴重な経験が詰まっています。精神科医として働く多くの方々が,ご自身の体験談をリアルタイム的に記したもので,災害が襲ったときの状況や,各個人の対処法,心理的な打撃やそれへの処置など,ほんとうに多くを学ばされました。この本は1995年の夏頃に,いつも通っていた本屋の社会学コーナーで見かけ,中井久夫氏の「災害がほんとうに襲った時」の一部を読んでみて,これはたいへんな教科書だと即買いしたものです。筆者の地震に対する心構えのようなものは,この本から生じているのかもしれません。

 以後二日間は,一見平静,むしろアパシー的であった。私は電話の合間に校正と読書を行ったが,本は自分の文章しか読めなかった。以後,書籍は購入しても,視線が紙の上を滑るだけで内容が入ってこなくなった。これに反して文章を書くことはできた。すべての危機にあっては,手持ちの知識と経験と知恵だけで勝負しなければならないこと,試験場と同じなのであろう。 −中井久夫

 電話すると,すぐFAXで事情を伝える文章が送られてきた。中井教授の「災害がほんとうに襲った時」は地震直後からの精神科医の活動が詳細にしかも体験に即して述べられてあって参考になったし,神戸大学に到達する交通手段の概念図も添えられてあった。こういう実用的なやり取りにはFAXが実に役立った。私は寝袋を持って出掛ける決心をした。すると病棟に泊まれるし毛布はあるから寝袋は不要。そのかわり生花を持ってきてきれないかという通信があった。私は一人で持てるだけの花を持っていく決心をし,近所の花屋に相談したら,出発の朝新鮮な花を届けてくれることになった。 −加賀乙彦


筆者が何度も読み返した一節です。考えさせられます(撮影/MWS)。






2011年4月2日


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地震後,本当に久しぶりに実体顕微鏡を覗きました。デスクに戻して,珪藻在庫を確認しました。ゴム板の上に保管していたのがよかったのか,質量が小さいのがよかったのか,分離保管していた珪藻に被害はないようです。サファイヤとガーネットの在庫は,分離しておいたものが震動で混ざっていましたが,損失はありませんでした。珪藻のピックアップツールは何本かが,落下により壊れました。ほかは百数十kgのデスクが少々動いたことと,CDが数枚割れたことくらいが実損でしょうか。珪藻在庫が生きていて助かりました。天然仕上砥石もたくさん落下しましたが,どれも割れずに済んでいます。

これで原子力災害さえなければ,東北復興にむけて明るい希望と力も湧くのですが,福島第一原子力発電所の様子は悪化するばかりで,有効な手だてがないまま時間が過ぎています。汚染の拡大が食い止められることを祈りますが,現実問題としては難しいでしょう。原子炉に,本当に海水が入っているとすると,腐蝕が進むことは避けられません。SA533B,SUS304,SUS304L,SUS316Lといった原子炉に使われている材料は,海水に対する耐食性がよくありません。海水と接触すると部分的に急激に進行するようなタイプの腐蝕が起こります。大規模な圧力容器の破壊がなくとも,腐蝕により,さらに放射性物質が漏れ出る可能性も時間とともに高くなります。かといって,真水に変更して冷却しても一年〜数年は冷えないでしょう。いったん海水を入れたら,腐蝕はすでに起きているものと考えなければなりません。まず塩化物イオン濃度を下げ,酸素濃度を下げることが必要ですが,そう簡単に作業が進むとも思えません。あらゆる分野の知見を総合しても,有効な沈静化手段を見つけることが難しく,途方に暮れるという言葉は,こういうときのためにあるのかと思わされています(撮影/MWS)。






2011年4月1日


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ようやく余震も減ってきましたので荷物整理をしています。顕微鏡デスク周りもガラクタの山状態でしたので,少しずつお片付けです。珪藻を取り扱う作業も再開したいところですが,どこに何を置くべきか悩んでいます。30kgもある顕微鏡が放り出されるように動いた場面が忘れられませんが,机に載せないと使えませんので,落下防止のフックをつけることにしました。珪藻在庫は動かないようにするのが難しいのですが,ストッパのようなものがないかと考え中です。ま,ぼちぼち,ちょっとずつやりましょか。画像は相模湾西部で採取した珪藻です。まだ数が集められていない種なのですが,今年,見つけられるでしょうか…(撮影/MWS)。






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