画像のご利用について





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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ(2011年9月再開)。


2011年12月31日


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筆者のもとにはときどき,論文の別刷が届きます。別刷というのは,学会誌や,国際学術雑誌などに掲載された論文の抜き刷りのことです。プランクトン分野の方から頂戴することはもちろんですが,ほかの分野の方々からいただくこともあります。上の画像のように,菌類関係者から別刷が届いたりもします。この論文の著者らは,当サービスのお客様なのです。珪藻プレパラートを買い求め,それで検鏡の練習を積み,イメージングの機器調整の標本として利用し,確実な技術を会得されています。この技術を菌類の切片(水封)のような低コントラスト物体の検鏡に活かし,素晴らしい成果を上げておられます。天晴れです。



今年は商品よりも情報をお届けする一年になりました。東北の復興に何かできないかと頭も使いました。このような筆者の活動にも励ましや共感のお言葉を多数いただきました。関心を失わずにこのページをご覧頂きました皆様に心より感謝申し上げます。震災の年に,新しいことにチャレンジしようと珪藻プレパラートをお求めいただきましたお客様,本当に嬉しかったです。ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます(画像/MWS)。








2011年12月30日


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ひじょうに面白い本が出版されました。研ぎや砥石の本というのはなかなかないのですが,電動工具全盛の時代に,このような手研ぎの本が出ること自体,貴重です。砥石の鮮明な写真が多数掲載されており,むかしの中山や奥殿の合砥がどのようなものであったかを見ることができます。研ぎの技法も面白く,「これ一冊ですべてがわかる」は言い過ぎですが,達人の実用的な技が紹介されているので,この本を100回読んで,500回研ぎの練習をすれば,何かをつかむことができるかもしれません。個人的に嬉しかったのは,砥取家さんの特集が組まれていることです。昨年10月に原発震災の勉強会の帰りに訪問し,得難い経験をさせてもらった砥取家の土橋さんが,お元気そうにしています。ぜひこれからも素晴らしい砥石を供給頂きたいものです。画像二枚目は,この本の中程にあるエッセイですが,ある程度のレベルに達した研ぎの経験者であれば,息つく暇もなく読ませる,真のプロにしか書けない文章です。皆さんにもぜひご入手をお薦めいたします。1回読むだけの本として考えるとかなり高価ですが,100回読んで技術をつかむための教科書と考えれば,これほど安いものもないでしょう。砥石一個の価格で買えます(画像/MWS)。








2011年12月29日


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きれいな顕微鏡写真を撮るには光学的な知識が大切ですが,その知識がどのように作画と結びついているかを勉強することも大事です。エキスパートたちが撮影した顕微鏡写真を眺めて撮影法を推測することはとても良い訓練になると思います。筆者は,これまでも何度か紹介した,きょうの画像のサイトで訓練することがしばしばです。サムネイルの小さな画像を見て,その絵が暗視野なのか偏光なのか,コンフォーカルなのか,蛍光染色なのか自家蛍光なのか予想し,一つ一つ確かめていきます。当たることが多いですが,外れることもあります。外れた場合は,なぜ自分がそのように考えたのか,実際の絵ではどこを見るべきだったのか,色々考えます。あまり難しいことを考えなくても,達人の絵を見ることは良い経験になるので皆さんもご覧になってください(画像/リンク先のスクリーンショット)。








2011年12月28日


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蒸発残留物がどのような悪さをするかを示したのが,きょうの画像です。珪藻をガラス基板に移すときには溶液ごと載せて,溶液を乾燥させるわけですが,蒸発残留物があると画像のように珪藻を汚してしまいます。原因はすすぎに使う水だけではなく,いろいろなことが考えられるので厄介な問題です。きょうの画像のようになってしまったら,その部分の珪藻は美しさが損なわれるので使うことはできません。サンプリングに出向き,いるかどうかもわからない珪藻を採取し,泥だらけの試料を時間をかけて処理して,かなり苦労して珪藻を分離して,そして最後に乾燥させて,上の画像のようになってしまったときには,なんとも言葉にし難い気分になります(画像/MWS)。








2011年12月27日


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きのうの画像で紹介した市販品Aの蒸発残留物を位相差法で検鏡してみました。きのうの暗視野法ですと,急な段差があるような構造は非常に高い検出率なのですが,なだらかな厚さの変化などはほとんど検出できないので,念のための確認です。それが上の画像なのですが,きのうの画像の方が蒸発残留物の細部まで鮮明にとらえています。ということは,水の表面張力とガラスへの吸着力の関係で,連続的ではなく,段階的にぴょんぴょんと進んだ水の蒸発の縁で,蒸発残留物が生成しているように考えることができますかね。このシマシマ模様は,なんとなく,以前に撮影した天然サファイヤの表面を思い出します。しかしそれにしても,暗視野法の検出力は優れていることが画像からわかります。バクテリアなども簡単に見える優れた方法ですが,最近では,暗視野コンデンサを知らない人が増えすぎて,大学の生物系の先生でも暗視野法でバクテリアを見たことのない人が増えています(画像/MWS)。








2011年12月26日


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標本やガラス器具を水洗いするときには精製水を使いますが,これが悩みの種です。市販の精製水は何かしら不純物を含んでいて,標本を汚すのです。きょうの画像は,スライドグラスに水を一滴(0.03ml)落として,150℃のホットプレートで乾燥させたときにできるシミの比較です。いちばん上は市販品Aですが,水が乾くときに同心円状の固形物が残っているのがはっきりと見えます。画像二枚目は市販品Bですが,Aと同じ露出で撮影しています。こちらの方が画像のコントラストが弱く,不純物が市販品Aよりは少ないことを暗示しています。画像三枚目は水道水で,比較にならないほど多くの白い固形物が画面を覆い尽くしています。当然,水道水は標本の洗浄(仕上げ)には使えません。

これ以上のレベルを求めるには,恐らく水道水を原水とするミリQ水(ミリポア社)でもだめで,パイレックスで蒸留した水を石英の非沸騰蒸留くらいやらないと,蒸発残渣が出るかと想像します。が,実際にこれをやるとなると,ブランデー並の価格の水になってしまっても困るので,いまのところは市販品で我慢しています(我慢の限界も近いですが…)。単にきれいな珪藻を手にしたいだけなのですが,真面目にやるとなると,化学実験の単位操作がきちんとできる知識と技術と経験が必要になってきます(画像/MWS)。








2011年12月25日


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きょうの画像は正立の生物顕微鏡用の長作動コンデンサに拡散板と偏光板を組み込んだものです。約5〜6年前くらい?(覚えていない。。)に作りました。なぜこのようなものが必要になったかというと,倒立顕微鏡の長作動コンデンサがNA=0.52までしかなく,すこしでも高NAのコンデンサを必要としていたからです。偏斜照明も必要です。そこで,NA=0.65の長作動コンデンサを入手し,開口絞りの直下に拡散板,その下に一部を切り取った偏光板を入れたものを作りました。

開口絞りもついているので,ふつうに絞り込み照明ができます。偏斜照明にするときは,コンデンサの下に偏光フィルタを入れてクロスニコルにすれば,コンデンサの偏光板がない高NAの部分から光が入射して偏斜照明になります。この方法だといつも同じ再現性のある照明ができます。もちろん,光路を遮って影をつくり拡散板に投影してもOKです。こうして,倒立顕微鏡ですこしでも分解能の高い像が得られるように工夫していたのでした。正立の生物顕微鏡でも,厚いスライドガラスなどで長作動が必要なときに出番があります。実際,なかなか効果があり,現在も使っています。このコンデンサの欠点は拡散板により暗くなることで,光源は輝度の高いものを使う必要があります(画像/MWS)。








2011年12月24日


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上の画像は近年まれに見る佳品で,筆者の脳みそ活性化に欠かせないものになっています。するめの頭です。これだけが何十枚も袋詰めになっているという,信じがたい夢の商品にめぐり合いました。これをカミカミしていると,脳血流が増し,目が覚め,体温が上がり,よいことばかりです。咀嚼(そしゃく,噛むこと)運動と知能の関係は近年よく知られるようになってきました。柔らかい炭水化物ばかり丸飲みしているような食生活をしていると,知能が劣化するらしいのです。逆にかたいものをカミカミすることが脳血流を増加させ,頭もよくなるようなのです(そういう研究結果があります)。実際,このするめの頭をカミカミしていると,集中力が増してくるのがわかります。レンズの分解修理がだいぶはかどることとなりました。

ところで,するめは乾燥が進むと白い粉が出てきます。これがタウリンやアミノ酸であることはよく知られているところですが,筆者はこの不思議な手触りに興味を持ちました。この白い粉が指先につくと,松脂でも塗ったかのように指先の摩擦係数が増す感じがします。指先が滑らなくなるのです。

こういう指先の感触は恐らく,微細な針状の結晶が指に突き刺さり動かなくなることからもたらされるのかもしれないと思い,さっそく顕微鏡観察することとしました。するとどうでしょう,筆者の予想は大当たりで,たいへん美しい針状結晶がてんこ盛りです。むかし,となりのトトロに『まっくろくろすけ』というのがいましたが,それの白色バージョンといった感じです。するめの白い粉は,太さが1/1000ミリメートルもないような,微細な針だったのでした。

とまぁ,筆者にとっては新しいことがわかって楽しい顕微鏡観察となったのでした。しかし本ページをご覧の方々は博識で経験豊富な方々が多いので,そーんなことは知っていた,という方もおられることでしょう。そこでもう一つ,ひょっとすると知らない人がいるかもしれないするめの秘密を一つ。

いちばんうえの画像をみてください。真ん中近くに孔があいているでしょう。これはするめの乾燥方法を暗示しています。きっとコレを使って乾燥させたに違いないのです(画像/MWS)。








2011年12月23日


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せっかく金属顕微鏡の機材が転がり込んできたので,落射照明観察をしなければもったいない。とゆーことで,ファーストライトはこの標本にしました。筆者は貧乏暮らしなのですが,この標本は金持ちらしいです。悲しいメロディーでありながら,金持ちであることが全日本に浸透しています。。落射明視野の偏光観察では画像一枚目のように不思議な構造が浮かび上がります。対物レンズの開口数(倍率)を上げれば,画像二枚目のように,画像が緑の色調になってきます。照明光を左円偏光(だったと思う)にすると,模様が消えてしまうという不思議な標本です。この標本の全体像は2009年9月24日付けの画像で見ることができます(画像/MWS)。








2011年12月22日


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きょうの画像は修復した油浸対物レンズで撮影した珪藻です。珠洲市の珪藻化石で,コスキノディスクス(コアミケイソウ)の化石種です。「コアミ」の網目模様の中にさらに細かい胞紋構造が見えています。同じ開口数のパーフェクトな対物レンズと比較すると,わずかにコントラストが低下している感じもありますが,照明に用いている光の波長(最短430nm)よりも細かな構造が見えていて,修復は成功といえるでしょう。あの津波に一度は沈んだ顕微鏡対物レンズが,こうして復活できたことを嬉しく思います。顕微鏡対物レンズは,光軸に狂いがなく,ガラスが腐食されていなければ修復の可能性があります。先玉が腐食されていても,油浸対物レンズならば実用可能な場合もあります。筆者が釜石に向かった一つの理由はここにあります。救済できる何かがあるかもしれない。ならば行って確かめたくなるじゃないですか(画像/MWS)。



*1 ニコンの顕微鏡対物レンズは高い救済率を示しました。もちろん劣化はありましたが,レンズ内部に海水が入らなかったものも多く,組み上げ精度の高さを示しています。プランアポは一つとして,内部に海水は入っていなかった! ガラスの腐食も比較的少なく,腐食している場合でも,レンズのコバから進んでいました。これはコーティングの耐久性の高さと耐候性の高い硝材選択を示しています。これだけの津波災害に襲われてもなお,そこから復活できる顕微鏡対物レンズを製作したニコンは,信頼性ある製品を世に出したことを,大いに誇ってよいと思います。






2011年12月21日


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錆び付いて動かないレンズの曇った油浸対物レンズを眺めているうちに,部分的に破壊すれば光学系は修復できるような気がしてきて,ついつい手を出してしまいました。レンズを万力で挟んで固着した部分を動かすというのは,最もやりたくない作業の部類ですが,叩くよりはガラスに衝撃が加わらないのでマシです。何度か試みていると動くようになり,ネジの頭をもいで,本体から取り外すことができました。こうなればあとは研磨で対応できます。別のレンズも同じようにして錆び付きを修理します。

レンズは注意深く取り外して,キムワイプの上に落とします。このくらい小さなレンズは手では清拭できないので,紙や綿棒やシリコン板などを使いながら,拭き残しのないように汚れを取り除きます。塩類系の汚れは最優先で落とさねばならないので,最初は蒸留水で丁寧に清拭を繰り返します。必要に応じて溶剤も使います。筆者は無水エタノールをよく使います。エタノールは蒸発速度が比較的遅いので,シミを残さずに拭き上げるのに好都合です。もっとも,他の溶剤の方がうまくいくという方もたくさんおられます。

拭きができたらホコリに注意しながら組み込みます。組んでみてチリなどが気になる場合はやり直し。これを何度か繰り返します。許容できる程度になったら筒も元通りにして,外部を清掃し,テスト検鏡して修復終了です。画像の三本は錆びて潮まみれ,粉を吹いた状況からなんとか生き返りました。こういう作業で夜明けを迎えるのも悪くないものです(画像/MWS)。



*1 うまくいったときはよい気分で寝られますが,結局失敗して破壊したときは最悪の気分で寝ることになります(^^; そういうときは,筆者は,ほかの成功率の高い作業を一つこなして,気分を戻してから寝ることにしています。最悪の気分のままでは,寝られません。。





2011年12月20日


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福島第一原子力発電所事故について,すこしずつ,現場の声が見られるようになりました。筆者はマスコミ報道のいい加減さは,事故以前からさんざん味わってきましたので,マスコミを通じての情報はどのまま信じるものではないと思っています。このコーナーでも,報道に隠された意図を説明してきたつもりです。上の画像はきょう,こちらのリンクで見つけたものです。東京電力の経営体質を知る上で,かなり貴重な記録になっていると思います。オリンパスも幹部が腐敗していましたが,東電はその比ではありません(画像/Tech-Onのスクリーンショット)。








2011年12月19日


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手元に転がり込んできた落射暗視野用の対物レンズ,飾り輪は欠品で先玉の傷もひどく,通常の利用法はどうかしらと思うようなコンディションですが,筆者にはまったく問題ありません。これを手にした瞬間に,このレンズは透過明視野用のコンデンサに見えたからです。落射暗視野用の対物レンズは,先端レンズの外周から斜めの輪帯暗視野照明ができるようになっています。そういうわけなので,観察用のレンズ光路をふさいでしまい,外周部の照明光路を活かせば暗視野コンデンサになります。さっそくコンデンサホルダに(接眼目当てを利用して)はめ込んで,珪藻プレパラートを観察してみれば,下の画像の通りです。手持ちの乾燥系暗視野コンデンサと比較して遜色ないばかりか,それよりも美しい干渉色が出て,うれしい…(画像/MWS)。








2011年12月18日


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傷みがひどくて手のつけようがないレンズが手元に残りましたが,どうしてもゴミ箱に放り込む気にはなれません。分解さえできれば,白黒はっきりするのですが,どこかを壊さないと分解できない感じで,どうすべきかと悩んでいます。設計図が手元にあれば,壊しても問題ない部分がわかるのですが,分解してはじめて構造を理解するような場合は,いきなり叩き壊すのも躊躇します。でも,やっちゃいましょうかね。ゴミ箱には粉々になってから放り込むべきですよね(画像/MWS)。








2011年12月17日


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16日は大学教員の訪問を受けました。短い滞在時間ではありましたが,偏光などの光学にまつわる豊富な知識をお持ちの方で,単位時間あたりの情報交換量は相当なものになると思いました。現代的な問題についていろいろなご教示を頂きまして大変感謝しております。そのあとはさっさと撤収作業を行った後,ひたすら特注品の製作作業に追われました。かなり難しい作業で現在も続けていますが,明日には一段落できるといいなと思いつつ,いまは休憩中です。届いたばかりの上等なあられを口に放り込み,ちょっとだけ燗酒をひょいとやれば,疲れも和らぎます。鉢植えのブルーベリーも色づいた葉が落ち始め,冬の始まりを告げています。とても奇麗なので,筆者お気に入りのカエルちゃんと記念撮影し,本日の画像に登場してもらいましょう(画像/MWS)。








2011年12月16日


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大好評の『ずかんプランクトン』ですが,編著者の清水さんから,坂田明氏のブログに掲載されているとの連絡をいただきました。坂田明といえばサックス奏者として有名ですが,筆者などのプランクトン屋さんには,ミジンコ愛好家/研究家として有名です。さっそくアクセスしてみると,相変わらず? ぶっ飛んでいる感じで素敵です。書かれているコメントも,さすがは広島大学水畜産学部卒と思わせる?知性が滲み出たものとなっているような気がします。

坂田明氏には,2003年のプランクトン学会で貴重な講演と演奏を聴かせていただいた想い出があります。ふだんは遠い存在のミュージシャンが,目の前でミジンコについて述べているのは何だか夢物語のようでした。懇親会では素敵なサックス演奏も聴くことができて,それだけでも大満足でしたのに,その後の二次会で品川駅前で呑んでいたら,隣の席が坂田明氏だったのでした。帰り際に筆者が,「きょうの演奏,Aka-Tombowは素晴らしかった」と礼をいうと,「キミはどこに住んでいるのかね」と聞かれ,手を差し出されました。がっちりと握手した彼の手は,自信に満ちあふれているように感じられ,かっこええと思いました。

やっぱし人間たるもの,生命の炎を赤々と燃やす瞬間がなければいけません。かっこええんですから(画像/坂田明氏ブログのスクリーンショット)。








2011年12月15日


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これは燻煙塩(スモークソルト)の顕微鏡写真です。燻煙塩とは,燻煙の香りがついた塩のことで,パラパラと振りかけるだけでおいしい薫製っぽい料理ができてしまうという調味料です。燻煙成分のほかに旨味調味料(アミノ酸)も入っているので,多少は複雑な味になってけっこう美味しく食べられます。上の画像は燻煙塩を落射暗視野で撮影したもの。とてもきれいな形の塩の結晶が見えます。ほかにアミノ酸と思われる針状結晶も見えます(グルタミン酸ナトリウムでしょうね)。下の画像は偏光顕微鏡写真で,塩の表面に細かい何かの成分が多数付着しているのがわかります。これが燻煙成分でしょう。針状結晶は偏光性があり輝いて見えます。

さて,ここまでは前置きで,最近,筆者特製のなんちゃってスモークトリレバーをお試しになった方から,作り方をぜひぜひ知りたい,とのリクエストが来ましたので,張り切って?書いてみましょう。

トリレバーは2パック(6個)用意します。もちろん鮮度のいいもので,味を確かめてあるものが良いです。鶏は餌の香りが身に移るので,質の低い餌を食べている鶏のレバーは風味も今ひとつな感じがすることがあります。レバーは1個を4〜5等分するくらいの一口サイズに切りそろえます。このとき不要な筋や脂などは取り除いておきます。この段階で,軽く,味が付かない程度に塩をしておいても良いですが,何もしなくても構いません。

小鍋にお湯を沸かします。約1リットル程度でOKです。水は塩素を抜いた物が良いです。水道水の場合は数分以上沸騰させてから使って下さい。月桂樹の葉を3枚用意します。月桂樹の葉は,中心の葉脈を越えないように注意しながら,葉の両側からハサミで細かく切り込みを入れます。効率よく香りを抽出するためです。

沸騰したお湯に月桂樹の葉を入れ,すぐにレバーを一気に入れてよくかきまぜ,フタをします。ガラス製のフタが中がよく見えて好都合です。そのまま火にかけて,再沸騰する直前で火を止めます。このまま10分間湯せんします。10分たったら,レバーをザルにあけます。月桂樹の葉は取り除きます。次に,すぐに,鍋がまだ熱いうちに鍋の水分をキッチンペーパーで拭き取ります。鍋を洗ってはいけません。そのまま軽く水分だけ拭くのです。

そうしたら,その熱い鍋に,水を切ったレバーを戻します。あまり長く水を切るとレバーが冷えるので,手早くやります。長くてもザルにあけてから2分以内には鍋に戻しましょう。そしていよいよ「燻煙塩」を振りかけます。量はお好みでOKです。プリンについてくる小さなポリスチレンのスプーンで軽く2杯くらいでちょうどよい塩加減になります。塩を振りかけたら,鍋を振ってレバーを転がし,余熱で水分を飛ばします。何度も何度もレバーを転がして丁寧に水分を飛ばします。最初は塩により水分が出てきますが,レバーを転がしていれば,やがてねっとりした感じで水分が飛びます。かなり時間がかかります。あら熱が取れても何度もレバーを転がして水分を飛ばします。水気が残らない程度になったら,粒コショウを粗挽き加えます。またレバーを転がします。

常温になったら保存容器に移します。さらにこのまま,キッチンペーパーなどをかぶせて2時間程度放置します。熱はまだ内部に残っていて,保存容器ごと冷蔵庫に入れると結露するからです。水が出ると保存性が悪くなり,味も低下します。じゅうぶんに冷えたら,保存容器を密閉して(ラップなどでもよい)冷蔵庫のチルド室に保存します。一日後から食べられ,賞味期間は三日間程度です。インチキな割りには,けっこうおいしいと評価が高いスモークトリレバーです。酒のつまみにもなりますし,クラッカーにのせたり,薄切りにしてボイルした鶏と合わせてもイケます。

ささ,これを読んだらまず「燻煙塩」をグーグルして,行きつけのスーパーの鶏コーナーをチェックですよー(画像/MWS)。



*1 この料理は筆者のオリジナルです。貧血で困っている人がレバーを食べられない人だったので,その人でもおいしく食べられるレシピを種々開発し,その中で生き残ったものの一つです。もちろん,その人の貧血も改善しました(^o^)v

*2 でも簡単ですし誰でも思いつく類の料理なので,きっと世界には同じことをしている人が5000人くらいはいるのでしょうね(^^;

*3 ポイントはいくつかあります。一つはレバーを細かくしないこと。トリレバーはある程度の塊をやさしく湯せんすると,固くならずに,ねっとりとした舌触りが楽しめます。湯せんの時間も重要で,長すぎると固くなっておいしくありません。季節によっても変わります。好みの加減を見つけてください。

*4 燻煙塩を後から入れるのは,その方が香りがよく残るからです。先に燻煙塩に漬け込んでから湯せんするという方法もあるでしょうが,風味的には後から振りかけた方がよいと思います。

*5 余熱で水気を飛ばし,さらに塩により内部から出てくる水分も飛ばすのがコツです。けっこう原始的な調理法という気もしますが,それぞれの操作にはきちんと意味が込められています。どうしても余熱で水をとばせない場合は,鍋を加温してもいいですが,熱くなるほどには加熱しない方がよいでしょう。

*6 この料理,残念ながら見た目が今ひとつです。トリレバーがごろごろ…。苦手な人は見るだけでダメかもしれません。。それでも挑戦してくれる方には,電子レンジで柔らかくしたキャベツにくるんで見るのもいいかもしれません。





2011年12月14日


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被災品の修復も進み,あとは,分解すらできないレンズと幾らかの部品を残すのみとなりました。この種の修復作業は,一本でも大変なのに,何十本と連続して作業したので,なんとなく調子が出てきてしまい(笑),作業を終えるのが惜しくなりつつあります。そこで手持ちの機材で,修理が面倒で放っておいたものに手をつけることにしました。昭和初期の顕微鏡で,千代田光学のMKQというのが筆者の愛用品なのですが,各部のグリス交換が面倒でそのまま使っていました。また,この顕微鏡の油浸対物レンズは,人工オイル以前の時代のものなので,セダー油(杉油)で使われていたのですが,その油がレンズ内部に染みこんでしまい,失透して覗くことができませんでした。乾燥系で気軽に覗いている限りは,これらの不具合も大したことはないので放置してあったのです。

そこで大修理月間の仕上げとして,この顕微鏡の鏡基部分のオーバーホールを行い,接眼レンズ,乾燥系対物レンズ,油浸対物レンズの分解清掃も行いました。昭和初期〜中期の顕微鏡は分解が簡単で,メンテナンスが楽です。古い固まったグリスを拭き取り,ぴかぴかの研磨面を出したところに新しいグリスを薄く塗り,そっと組み付けると摺動面が滑らかに動いて快適です。曇って向こうが見えなかった油浸対物レンズもすっきりと透明になりました。70歳を越えるかもしれない顕微鏡ですが,じつに滑らかに動く即戦力といった感じです。津波で砂だらけのレンズを扱ったあとの口直しとしては,けっこう良かった感じもします。

なお,油浸対物レンズの分解修理については,よい子はぜったいに真似してはいけません(笑)。上の画像のように分解するだけでも大変ですが,もし少しでもハンドリングを誤れば,まず,もとには戻りません(画像/MWS)。








2011年12月13日


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12日は特注品用のサンプリングでした。約一週間前にもサンプリングしていますが,試料の状態が悪く,また処理を誤って,植物プランクトンがほとんど消えてしまいましたので,再調査となったわけです。海で植物プランクトンが増えるには,栄養も大事ですが,何よりも日射が重要です。ここのところ晴れが続いたので,曇る前にサンプリングということにしました。現場では若干,珪藻が増えている水の色でしたが,まだまだ薄い感じで,さて,どうなることやらという感じです。植物プランクトンが少ないサンプルを生のまま持ち帰ると,一緒に入っている動物プランクトンが植物を食べ尽くしてしまい,数時間から一日で植物プランクトンが消えてしまうことがあります。試料採取のタイミングも難しいのですが,採取したあとの処理もいろいろ考えることがあります(画像/MWS)。








2011年12月12日


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レンズの修復作業は検品を行うことで完了となります。レンズ本来の性能が出ているかどうかを調べるには,光学的な方法もあれば,経験に頼る方法もあるでしょう。レンズの性能を調べるために珪藻を検鏡するという方法は,1800年代中頃に始まって以来,現在でも用いられています。実用試験としては優れている方法で,なれている人であれば,珪藻を検鏡しただけでレンズの性能が判別できます。筆者もここのところの作業で,外観上不具合がないのに球面収差が残存していて調整できないレンズや,組み立て時にバレルを逆に入れてしまい開口数に変化が生じたレンズ,先玉のヤケが像に悪影響を及ぼしているレンズなどを判別しています。

珪藻の見え具合を知っていれば,レンズの組み立て時にも役立ちます。長作動の20倍対物レンズを分解したときにハンドリングを誤り,レンズがバラバラと出てきてしまいました。組み上げる順番がわからなくなったのですが,珪藻を覗きながら組む順番を変えていき,正しい組み方に到達しました。

このように,当サービスで供給している珪藻プレパラートは,それを日々検鏡していれば,対物レンズの状態判定に非常に役立ちます。皆様もお手持ちの珪藻をできるだけ検鏡する習慣をつけて,レンズを判定する目を養うようにしてください。上の画像は泥まみれで分解が難航したアクロマート4倍対物レンズ(修復後)による画像です。十分実用可能です。下の画像は,再生不能だった10倍対物と,同じく再生できなかった10倍位相差対物から部品を取りだし,2個から1つの対物レンズを再生したものです。劣化はかなりありますが,位相差検鏡で使うには問題のない像を結びます(画像/MWS)。








2011年12月11日


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ここのところ休みなくレンズ類の修復作業が続いていて,体内からいちじるしい量のミネラルが奪われている気がしていました。10日も朝から接眼レンズの分解清掃などを続けていましたが,夕方になり,近所までミネラル補給にでかけることにしました。詳しくはこちらをごらんください。とても素敵なイベントです。

今年は上の画像に見られる結晶を連れて帰りました。知らない人はいない,水溶性の,赤外線をよく通す,しょっぱい味がする結晶です。これが,大間のマグロ(トロ)と同じような価格で販売されていました。ええ,パクつきましたとも(^^)。このイベント,月曜日までです。中学生以下は無料で,子どもへの教育的配慮が感じられます。世界中の美しい石ころや化石が見られるので,一度ためしにご覧になってはいかがでしょうか(画像/MWS)。








2011年12月11日(2)


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10日の晩は皆既月食でしたが皆様はご覧になりましたでしょうか。23時頃から皆既という好条件の上によい天気で,素晴らしいショーが楽しめました。月食は小学校の頃から何度も見ていますが,これほど奇麗に見えた記憶はありません。皆既に入る瞬間は,月の表面に広がる光のグラデーションが,何ともいえない味わいを生み出していました。皆既中の月の色は,大気の状態に左右されますが,今回はセオリー通りの赤銅色といったところでした。20年近く前の,ピナツボ火山が噴火したあとの月食は,皆既中の月が見づらいほどに暗くなって,あまり赤くならなかったのです。あのときの驚きを久しぶりに思い出したことでした。画像は都内で撮影したもので,23時05分,皆既に入る瞬間です。月が暗くなっていて,星が一緒に写っているのがわかります(画像/MWS)。








2011年12月10日


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まぁ無理だろうと思いつつも取りかかった対物レンズの修復ですが,結構使えるようになるものもありました。中には,完全破壊してお終いになったものもありましたが,レンズの清拭と筒の洗浄で生き返るもの,レンズの研磨が必要なもの,レンズは使えないが筒は使えるものなどがあり,組合せを考えつつ修復作業を続けています。接眼レンズの分解清掃も続けていて,こちらは対物レンズよりははるかに簡単です。修復作業が終わったレンズは一つ一つ検品して,ホコリよけの袋に入れます。チャック付きビニール袋は最近どこでも入手できますが,レンズの保管にはたいへん便利な優れものです(画像/MWS)。








2011年12月9日


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対物レンズの修復は難関がいくつもあるのですが,いちばんの問題は分解ができないということです。今回のように海水で錆び付いているものは最悪で,レンズスパナで力任せにねじっても,噛み付いていてまったく動きません。そのうちに穴をナメてしまい,お終いになります。実際,ここ数日で,何本ものレンズのリングネジをナメてしまいました。捨てるつもりで放っておいたのですが,ハタとひらめきました。ナメてしまったら穴を掘ればいいじゃないですか。

思い立ったら吉日? さっそく各サイズのドリルを取りだしてもういちど穴を掘ります。せっかくなので,レンズスパナががっちりとはまるように同じ大きさと形状に掘り下げます。そして対物レンズを万力に固定してレンズスパナをプライヤーで挟みながら慎重に回します。するとどうでしょう,錆を噴き出しながらゆっくりとネジが回るではありませんか。とりあえず第一関門は突破です。もっとも,ここまで腐食したレンズの場合は救えないことが多いのですが…(画像/MWS)。








2011年12月8日


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修復作業はまだまだ続きます。後回しになっていた難しそうなレンズ類が待ち受けています。泥だらけにサビだらけ。ふつうならごみ箱行きですが,何せ数が多いので修復可能性を探らねばなりません。補正予算が通過しても,被災地では失われたものがあまりにも多すぎるので,顕微鏡の購入まで予算が回らないからです。現在は,研究者等がボランティア的に,顕微鏡関係の協力をしているのが現状です。

それにしても対物レンズのメンテナンスは大変です。単なる経年劣化ならいいのですが,泥まみれでしかも乾固していますから,よく考えて作業しないと一発で壊します。すべての作業が計画通りにできても,海水でガラスが溶かされていれば元には戻りません。ひどく時間がかかる作業ですが,歩留まりが悪く,四苦八苦の戦いとなっています。しかし勉強としては,なかなか充実しています(画像/MWS)。








2011年12月7日


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津波の海水は泥水なので,被災品を分解すると砂が出てきます。もちろん腐食も進行しています。接眼レンズの金枠も緑青を噴き出し,内部には塩の結晶,隙間には砂が詰まっていて,これまでいろいろメンテナンスしてきた光学製品の中でも相当にひどい部類です。しかし修復できる可能性があるのなら,やってみる価値があるでしょう。上の画像はオリンパスのWHK接眼レンズを分解しているところです。すべてバラさないと微細な砂が残ってしまうので,部品一つ一つにバラして,超音波洗浄により鉱物などを除去します。錆びた金枠などは#2000〜#5000程度の耐水ペーパーで磨きます。レンズは汚れの状態を見極め,それに応じた洗浄法を適用します。

画像二枚目はこうして洗浄したレンズを組んでいるところです。こうして筒の上で組んで,接眼レンズの外枠をそっとかぶせるとうまくいきます。レンズを外枠に落とし込んではいけません。画像三枚目は修復が終了したレンズです。いずれも実用可能ですが,仔細に見れば不満もあり,5本中3本がまともといえる状態でした。

こうして,たった11本の接眼レンズをメンテナンスするのに,丸一日かかります。なかなか大変な作業なのですが,これは非常に良い練習機会でもあります。ダメ元のガラクタを,ダメでもいいから分解修理する,これは光学製品の構造を勉強するのにとても良い方法です。技術を身に付けるには「やってみる」しかありませんから(画像/MWS)。



*1 よい子の皆さんはマネしてはいけません。コンデンサを絞り込んだときに視野に一点のゴミもないように接眼レンズの分解組み立てができれば大したものです。大抵は失敗します。まずレンズをきれいに拭けるように練習しましょう。「拭き三年」という言葉があるそうですが,筆者など,「拭き一生」なのではないかと思うくらいです。

*2 悪い子の皆さんはマネしましょう(笑)。自腹を切って機材を購入するアマチュアの方々は,「顕微鏡は自分のもの」です。設計のよい顕微鏡を丁寧に扱い,たまに適切なメンテナンスを行えば,何十年でもすばらしい観察像を結ぶことでしょう。

*3 これらの修復品は釜石の水産技術センターに返送しましたので,再び,赤潮/貝毒モニタリング等に活用され,岩手県水産物の食品安全に貢献することでしょう。





2011年12月6日


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5日は東京湾で,特注品製作依頼のサンプリングでした。この場所は2009年1月にもサンプリングを行っています。前回よりも2ヶ月近く早いサンプリングなので,プランクトン群集組成にも違いが見込まれます。2日にサンプリングを考えましたが天候の関係で中止し,晴れを待ってのサンプリングとなりました。一日以上快晴が続くと,現場の植物プランクトンの活性が上がり,活発に分裂中のイキの良い細胞を入手できる可能性が増します。護岸から採水とネット鉛直引きを繰り返していたら,栗林商船(マル七マーク)の神瑞丸(12,000トンクラス)が目前を悠々と過ぎ去って行きました(画像/MWS)。








2011年12月5日


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絞り羽根が取り去られたアッベコンデンサには,絞りの位置に拡散板を仕込んでしまいます。こうすると,ここが二次光源の働きをします。たとえば,このコンデンサの下に遮光板を入れて光を遮ると,その影が拡散板に投影されます。すると拡散板があたかも影の形の絞りがあるかのように機能します。絞りの位置を直接触ることができなくても,コンデンサ絞り面の形を制御可能というわけです。これで偏斜照明も自由自在です。ふつうに中央絞りにしたいときは,コンデンサを下げるか,コンデンサ高さはそのままに,光源とコレクタレンズの距離を調節して,投影される光源のサイズを小さくすればOKです。海水にやられたコンデンサでも,照明に関する知識と経験があれば,利用方法は見つかるものです(画像/MWS)。








2011年12月4日


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顕微鏡が海水に浸かると,ハガネを用いた部品が真っ先に錆びてボロボロになります。ハガネが使われている主な場所は,対物レンズのスプリング,コンデンサの絞り羽根,レボルバのクリックストップ,ステージのベアリング押さえバネなどです。海水と接触してからすぐに分解して水洗いすれば救済の可能性もありますが,時間がたてば,きょうの画像のようになってしまいます。とうぜん,これでは正常なコンデンサの役目を果たしません。

このコンデンサは津波の被災品ですが,日常の検鏡でもこのようなことは起きます。海水試料をステージにこぼして,いい加減な拭き取りで放置すれば,ステージ下の部品に海水が回り込んで腐食します。倒立顕微鏡なら対物レンズに海水がかかり,レボルバに染みこんで錆び付き,取れなくなります。多くの研究機関で,そのような顕微鏡が見られます。

海水試料を検鏡したら,蒸留水を含ませたキムワイプなどで拭き取り,乾燥させてからホコリよけカバーをかけておけば,顕微鏡はいつまでも美しい姿を保ちます。道具は愛情を持って接し,使うたびに満足感を味わうような状態にしておくのがよいと筆者は考えています(画像/MWS)。








2011年12月3日


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東北新幹線での移動を利用して放射能汚染状況を調べました。測定器は60秒の平均値を表示しているので,上の画像に示す数値は,駅周辺数キロのγ線量の平均値と見なしてください。また,新幹線車両による多少の遮蔽や,トンネル通過によるγ線の遮蔽,高架橋を走ることにより汚染源からの距離が生じるなどの効果により,測定値は「その土地」の値を意味しません。そこを通過する新幹線車内にもこれだけの放射線が降り注いでいる,ということを意味するに過ぎません。

それでもこの測定から傾向がはっきりと読み取れます。東京を出発してからしばらくは線量が低いのですが,那須連山を左手に望むようになると線量がぐんぐん上昇します。高線量のところもあればやや低いところもあり,線量計は安定しません。しかし平均値表示でありながら,鋭く立ち上がるように反応するところもあって,そのような場所では,表示された数値よりもずっと高レベルのホットスポットとなっていると想像されます。

郡山から福島の辺りは非常に高レベルの汚染で,特に福島駅手前にある長大なトンネルの入り口付近では0.7μSv/hの値を示しました。これは自然放射能の20倍で,1歳の子どもが一年間で,成人するまでに浴びる線量を受けてしまうということになります。少なくとも,子どもは避難/疎開させたいと思うレベルです。この場所で新幹線の高架から降りて周辺をサーベイすれば,はるかに高い線量の場所がたくさん見つかることと思います。当然,林産物などは利用できませんし,農業も,とても推奨できません。

仙台に入ると一気に線量が低くなります。しかし北上すると線量はやや上昇し,一ノ関の手前で小さなピークがあります。これはずっと前に報道されていたので既知の場所ではありますが,実際に測定してみても,なるほど一ノ関付近で放射性セシウムの降下があったのだとわかります。この一ノ関付近の放射線量は,屋根のあるプラットホーム付近では低く,雨のあたるところでは高いという傾向がはっきりしていることから,レインフォールアウトがあったものと思います。

さらに北上すると放射線レベルは下がり,花巻辺りでは,原子力災害以前のバックグラウンドに近いと思われるところもありました。しかし海沿いでは再び線量が増加して,釜石市では0.07〜0.09μSv/hの値を示しました。これは都内と似たような値で,決して少ないとはいえない降下量です。東北沿岸の水産物にも低レベルながら影響を与えることも懸念されます。

釜石からの帰宅時にも放射線量を測定しましたが,傾向は似ていました。数値が若干異なりますが,これは新幹線の進行方向が異なることにより,違った場所の平均値となるためです。全体的には,使用した測定器は,非常に安定した値を出すように思いました(画像/MWS)。








2011年12月2日


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1日は若い研究者(大学院生)の訪問を受けました。久しぶりの珪藻研究者であることもあって,ひじょうに話が楽しく,あれこれ資料を紹介し,顕微鏡を覗いていたら,あっというまに夕方になってしまいました。学会で知り合った若い方々の訪問を受けるのは,筆者にとって,それはそれは嬉しいのです。しかもきょう訪れた方は,NAで話が通じ,筆者の論文も読んで理解していて,筆者の顕微鏡を安心して任せられる技量をお持ちです。顕微鏡に対して愛があるのです。多くの大学で,先生方がNAも知らずに顕微鏡を扱うようになって久しいですが,こんな優秀で素敵な若い研究者が育ちつつあることを知って,雲間から射す光を見ているような,希望が湧いてくる気持ちになりました(画像/MWS)。








2011年12月1日


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 釜石への出発は土曜日でした。とうぜん下りの新幹線は混雑しますので,一番前に並んで特等席を確保します。


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天気もよく,久しぶりの東北方面で車窓の風景も懐かしい。宇都宮近くでは日光連山の山並みが見えています。


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新白河を過ぎたところです。この川には懐かしい想い出があるのです。19歳になる少し前,自分の脚力を試したくて,ロードレーサーに乗って当時の八王子市の自宅から東北に向かったのです。朝早く出て,その日の夕方にはここに辿り着きました。そしてこの川原で一人用テントの中で寝たのです。朝めざめたら,テントの周りでラジオ体操をやっていて,恥ずかしくて寝たふりをしました…


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ただでさえ風景を見ていると筆者の頭はぐるぐると回転して忙しいのに,さらに忙しくなるようなことが起きたのでたいへんです。混雑した車内で測定器を膝の下に隠しながら数値をチェックします。


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仙台も錦秋の街並みといったところでしょうか。筆者がひときわ好きな街です。やさしくておいしくて心温まる,素敵なところです。


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新花巻で釜石線に乗り換えると,乗り替え回数が1回なのですが,そんなことをすると大変面倒なことになるのは目に見えています。なので筆者は新幹線を北上で下車して,東北本線で花巻駅に向かいます。そして花巻始発の普通列車釜石行きにのります。快速列車はあえて避け,始発の普通列車を選ぶのです。そうすればどれほど混雑しても,座れます。じっさい,発車時にすでに満員で,新花巻ではさらに混雑しました。すべては予想通りです。


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釜石線は一度乗りたかったのです。なぜなら,そこに広がる農村風景が,古き良き日本,昭和の香りをそこはかとなく漂わせているように想像していたからです。もう夕方なのにこれほど澄んだ空気は,関東地方ではお目にかかれません。見るものすべてが美しく,空の青さを見ているだけで何だか胸か一杯になり困りました


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釜石に到着です。少し空気が冷たく感じました。駅前でポットのお茶を飲み,歩いてホテルに向かいました。ホテルはすぐに見つかりましたが,そのまま通過して,周囲の様子を感じながら歩きました。真っ暗で街灯もなく,それどころか電気もきていないので,LEDライトの光が頼りです


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ホテルの窓が南東方向だったので,窓から望遠鏡を出して覗いてみました。案の定,素晴らしい星空です。小さな携帯望遠鏡にもかかわらず,オリオン大星雲は翼を広げた鳥のように見えます。散開星団も球状星団も次々と視野に飛び込み,時を忘れて星空散策ができました。部屋は暖かい上に防寒着を着ているので,この上ない極楽観望です。


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津波の破壊力は凄まじいものです。これは釜石警察署と沿岸運転免許センターです。googleマップの航空写真で見ると,この建物の真ん中の凹みの上に,自動車が一台乗っかっているのが確認できます。釜石では800人もの人命が失われたとのことです。これから次の時代は,津波を忘れることなく伝え,被害を最小限にできるよう努めなければなりません。津波がいつかは来ることは,間違いないのですから。


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陸に乗り上げた水は,海水面が下がれば,もの凄い勢いで海に向かいます。本来,水は低いところを流れ,それが川なのですが,津波の場合は川にも山にも水が乗り上げてきますから,水が引くときの力がものすごいのです。もちろん,押し波もすごいのですが。



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作業が済めば,顕微鏡たちともお別れです。破損状態がひどく回復できませんでしたが,使える部品は保守用に活かします。無駄にはしません。


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東京に帰れる最終列車に乗り込みます。「遠野」ここは1回来てみたかったところです。そう思ってから20年以上の歳月が経ちましたが,とうとう通過することができました。とおの,何ともよい響きの地名です。ここから被災地で活動するボランティアさんが乗車してきました。筆者も含めれば少なくとも3名のボランティアが被災地で活動して,この列車で帰るようでした。


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夜の新花巻。お弁当屋さんはしまっていた…。まぁ筆者には,十勝バタースティックという非常食があるからいいや。。


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何しろ新幹線の車内では忙しいのです。。


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3時間も乗車していた気がしませんね。上野に到着です。


津波の被害にはただただ言葉もありませんが,今回の旅は,不思議と悪い印象はどこにもありませんでした。それどころか,また釜石に行きたいなぁと思わせる何かがあったような気がしています。それが何なのかはよくわかりませんが,東北地方ならどこにでもある,不思議な魅力に共通したもののような気もします(撮影/MWS)。



*被災地での筆者の作業については11月30日のレポートをご覧下さい。







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