本日の画像
MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。 日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します 【サイトトップ】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2008年1月】 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2009年1月】 【2月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2010年1月】 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】【2011年1月】 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2012年1月】 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2013年1月】 【2月】 【3月】 【今月】 2009年3月31日
今月は顕微鏡に関する話題を中心に述べてきました。最後は海の珪藻画像です。上の画像はコリメート法で撮影した画像をそのまま縮小したものです。下の画像は,物体を除去してピントをずらした背景画像を取得し,それを用いて上の画像に対して減算処理を行ったものです。ほかに,ガンマ補正,コントラスト補正,縮小,アンシャープマスク処理を施しています。上の画像で見られたホワイトバランスのズレ,フレアなどが解消されていて,微細構造も見やすくなっています。撮影にはプランアポクロマート40倍対物レンズを用い,補正環を最良の位置に合わせてあります。それに先立ち,カバーグラス下の水を吸い取り可能な限り薄くしてあります。また,白LEDによる照明を行い,輝度を高めて早いシャッターを切っています。一枚の画像には,いろいろなテクニックの組合せが使われているわけです(BF,撮影/MWS)。 2009年3月30日
デジタル画像は様々な処理が可能ですが,なかでも減算処理がいろいろな場面で使えます。先日掲載した,光学的・電気的なノイズの除去にも有効ですし,バックグラウンド光の除去にも使えます。上の画像は葉緑体の自家蛍光画像ですが,励起側の波長幅を広くしてバックグラウンドが青くなるように調整してあります。これが不要だと思う場合は,バックグラウンドと同じ色のプレーン画像(画像中段)を用意して,減算すれば除去できます(下の画像)。同じ原理で,軽度のホワイトバランスのズレも調整することができます(epiFL,撮影/MWS)。 2009年3月29日
上の画像は筆者が『本日の画像』や『珪藻の輝き』に用いている撮像機材です。どんな機材を使っているのかと興味をお持ちの方も多いようですが,ご期待に応えるような機材ではありません。デジタルカメラは2001年製で,高性能な最新型をお持ちの方からは,なんて古いカメラと言われそうです。モノクロCCDも安価なもので,わずか130万画素しかありません。デジタルカメラの方は手製のアダプタで三眼鏡筒に取り付けられるようになっています。アイピースをリレーレンズとして,コリメート法で撮影を行います。CCDの方も,ありあわせのパーツで組んだ自作の投影装置です。これには投影用のリレーレンズを入れて使います。もっと画素数の多い専用機材を導入すれば,さらに上質な画像になることは明白ですが,イメージング機材は非常に高価ですのでそう簡単には買い換えできません(撮影/MWS)。 2009年3月28日
ノイズ除去の実例です。上の画像は,デジタルカメラのレンズでアイピースを覗き込んで撮影するコリメート法により得たものですが,コントラスト強調を行うと同心円状の模様が浮かび出てきます。また斑点状のノイズもあります。これらはレンズの研磨痕や,段差や,ゴミ,傷などですが,目障りなものです。そこで,物体のない視野に移動して,からの画像を撮影しておきます。この画像には同じようにノイズが含まれますので,画像処理で減算を行うのに利用できます。減算結果が下の画像で,目障りなノイズがすっきりと除去されています。減算処理でノイズを消すときには,マニュアル露出で,両方の露出を揃えます。また,コンデンサ絞りも決して変えてはいけません。物体だけが除去され,あとの条件が変わらない画像を減算用に用いるのがポイントです。なおこの被写体はChaetoceros laciniosusという浮遊珪藻で,相模湾で採集したものです(BF,撮影/MWS)。 2009年3月27日
これはモノクロCCDで,プレパラート上の物体から大きくピントをずらして撮影した画像です。見やすいようにコントラスト強調しています。画面のざらつきはCCDの画素ごとの輝度のの違いで,全体の明るさの違いは照明ムラと迷光の影響が重なったもの,小さな黒い点はCCD上に存在する小さなゴミです。イメージングを行うと,どうしてもこのような光学的なノイズが生じます。しかしデジタルイメージングの良いところは,このようなノイズだけの画像を取得しておけば,この画像を用いて減算を行うことにより,ノイズの除去ができるということです。ローパスフィルタ上のゴミなどに悩んでいる人は,減算処理で消すのも一法です(BF,撮影/MWS)。 2009年3月26日
高開口数の乾燥系対物レンズでは,カバーガラスの厚さが異なることにより発生する球面収差を,レンズ群の移動により補正する機能をそなえたタイプがあります。標準カバーグラス厚さは0.17mmですが,No.1のカバーグラスを測定すると多くは0.15mm程度です。このくらい差があると昨日示した画像のように大きく像が劣化します。補正環付きの対物レンズでは,この像の劣化をリングを回すだけで補正できるようになっています。補正はけっこう微妙で,像を見ながら補正環を回して追い込んでいきますが,±0.05mm程度まで追い込まないとベストの像にはなりません。この補正環はカバーグラスの厚さによる収差を補正するだけでなく,珪藻プレパラートにおいて,封入剤に沈んでいて像が劣化している珪藻に対しても補正効果が見込めます。上はその作例で,昨日の1枚目の画像と比較すると,ずっとシャープになっていることがわかります(BF,撮影/MWS)。 2009年3月25日
珪藻が顕微鏡下でよく見えない原因として,高屈折率の封入剤で封入されていないことがよく指摘されますが,それは問題の一部に過ぎません。確かに水封ですと細部が見にくいということはあります。しかし実際問題としては,高屈折率の封入剤で封じられていても,よく見えないケースなど山ほどあります。それはなぜかというと,対物レンズが要求する位置に珪藻が存在していないからです。対物レンズは,その先端から,ある光学的厚さの距離にある物体に対して収差補正されています。開口数が小さな(約0.5以下と考えて下さい)対物レンズでは,この距離が多少異なっていてもそれなりの像を結びますが,開口数が大きな対物レンズでは深刻な影響を受けます。上の画像は開口数0.95のレンズに対して,珪藻が0.03ミリメートル,理想的な位置から封入剤に沈んでいるものを撮影したものです。コントラストが低く,回折縞が生じて質の低い像になっています。このような理想位置にない物体に対しては,開口数が低い対物レンズで検鏡すると影響が軽減します。下の画像は開口数が0.65の対物レンズで検鏡しなおしたものですが,コントラストとピント深さが向上しています。もちろん,その分,分解能が犠牲になっていますが,収差で微細構造が見えないくらいなら,いっそのこと低開口数レンズで上質な絵にした方がよいというわけです(BF,撮影/MWS)。 2009年3月24日
珪藻プレパラート(珪藻スライド)がふつうのプレパラートと違うことの一つに,その多様性があります。一枚のプレパラートに,多いときは数十種以上もの珪藻が含まれます。個体数も数百から数千にもなります。多くの生物プレパラートでは,一枚に一種の標本がマウントされているだけですので,多くの種を観察するには何十枚もの標本が必要になります。しかし珪藻プレパラートでは,多様な種を含んでいる一枚をステージに載せれば,数え切れないほどの個体と多くの種を観察することができるのです。つまり,珪藻プレパラート一枚は,他の生物標本プレパラート数十枚に匹敵するのです。上の画像は,AMM-01の一視野で全体の1%にもなりませんが,たくさんの珪藻が写っています。このような視野が何百倍も続くのです(BF,撮影/MWS)。 2009年3月23日
このコーナーや姉妹サイト『珪藻の輝き』で紹介している珪藻画像は,それなりに高い品質を維持しています。これはもちろん,機材や照明,画像処理などの技術が総合された結果であることは言うまでもありませんが,もう一つ大事なポイントがあります。それは標本が収差を生み出さない,ということです。どれほど技術レベルが高くても,光学系の補正範囲を超える収差が標本から発生しては対処のしようがないのです。当サービスが供給している珪藻プレパラートは,リサーチグレード/教育用を問わず,理想的な状態で封入された多くの珪藻が入っています。見える保証付き,と言っても過言ではありません。画像はHBL-01に入っていた珪藻です。本種などは,もし封入条件が悪ければ,微細構造はまったく見ることができないでしょう(撮影/MWS)。 2009年3月22日
きのうは技術者の方と都内某所で打ち合わせ&懇親の夕べだったのですが,昼の合間に川辺を歩いてみました。上の画像は河川に沈められたコンクリートブロックに付着した珪藻です。春になり水温が上がり,陽射しもほどよく,河川の付着珪藻が大増殖しています。ここは生活排水がかなり流れ込むところなのですが,珪藻が排水中の栄養分を使い盛んに増殖しています。見た目の汚なさとは裏腹に,これは,自然の浄化機構が働いて水が浄化されているところなのです(撮影/MWS)。 2009年3月21日
今回新しく加わったリサーチグレードのプレパラートには,湖の珪藻試料(HBL-01)もあります。上の画像はその観察例で,タベラリア(Tabellaria)属の珪藻です。わんこが遊ぶ骨のおもちゃのような形をしています。この珪藻にも見事な微細構造があり,検鏡/撮影はなかなかの難物です(oblique,撮影/MWS)。 2009年3月20日
3月16日付けの画像では,プランアポクロマートの性能を引き出せていない例をご覧いただきましたが,きょうは性能を引き出した例です。色収差の補正範囲を調べ,その範囲で最も短い波長に絞った単色光で照明してあります。3/16の画像と比較しても微細構造の描写が格段に優れていることがお分かりいただけることと思います。極限までの性能を追求するときは,現在販売されているレンズでは,アクロマートよりもプランアポクロマートの方が優れています。もし紫外線域で球面収差を補正したモノクロ専用レンズがあれば,もっと高分解能を期待できるのですが,そのようなレンズ(油浸)は現在は市販されていないようです。昔はあったのですが(oblique,撮影/MWS)。 2009年3月19日
すでにご注文をいただいておりますが,3月16日に珪藻プレパラート(リサーチグレード)の新しい試料が加わりました。今回の目玉(?)は南極の珪藻です。研究者でも入手困難な,南極海の海底に沈んでいた珪藻をプレパラートとしました。上の画像はそのプレパラートに含まれているAsterolampra属と思われる珪藻です。ほかにも,南極海に特徴的な種がみられ,しかも,なかなか他では見られない種構成となっています。今回加えた試料は南極以外にも,沿岸付着珪藻,浮遊珪藻,渓流の珪藻,湖沼の珪藻など盛りだくさんですので,こちらをチェックしてみて下さい。なお,いずれの試料も当面供給可能な量を確保しています。ゆっくりとお選びいただけます(oblique,撮影/MWS)。 2009年3月18日
昨日の画像で紹介したポイントから1リットルほどの海水を持ち帰り,沈殿物を検鏡してみました。その一部が上の画像です。濁りの大半は鉱物が有機物とともに凝集(ぎょうしゅう)した塊でした。そしてそこには少量の付着珪藻と浮遊珪藻が含まれていました。海水の乳青色の濁りは,激しい波により,海藻や岩に付着していた鉱物や有機物や珪藻が洗い出されて漂っていたもののようです(BF,撮影/MWS)。 2009年3月17日
15日の相模湾は穏やかな快晴だったにもかかわらず,海は大荒れでした。前日の降雨と風の影響が残り,またうねりも残っていたようで波が高く,海水は乳青色に濁り,異常に低い透明度でした。ヒジキが繁茂して,まさに春先の海でしたが,付着珪藻の採集条件としてはよくありませんでした。プランクトンネットを持参すべきだったと悔やんでも,後の祭りです(撮影/MWS)。 2009年3月16日
上の画像は珪藻の微細構造に対して,プランアポクロマートを使用し,白LED光源による透過照明を用いてノーフィルターでCCD撮像したものです。続く下の画像は,最も安価なアクロマート対物レンズを使用して同じ光源でグリーン干渉フィルタを入れて撮影したものです。比較すればすぐにわかるように,安価な対物レンズで撮影した画像のほうが,開口数では不利にもかかわらず,ハイコントラストで微細構造が見やすくなっています。油浸で高解像な撮影を行うのであれば,どんな対物レンズを用いようとも,フィルターワークを初めとして,照明技法の追求が必須です。最高級のレンズを入手できても,すぐによい絵が得られるわけではありません。そのレンズでなければ撮れない画像を得るための照明を行うことは,それほど容易なことではないからです(oblique,撮影/MWS)。 2009年3月15日
最高級の色補正・平坦性を誇るプランアポクロマートと,最も安価なアクロマートでは,およそ6倍もの価格差があります。油浸の場合,アクロマートが5万円ならプランアポクロマートが30万円といった具合です。では,最高級のレンズを使うと6倍もよく見えるかというと,そうではありません。性能は開口数で規定されていますので,色収差の補正範囲であれば,性能は同じです。きょうの画像はプランアポクロマート(開口数1.35)とアクロマート(開口数1.30)の比較ですが,緑色付近の波長(546nm)では,分解能はほぼ同じです。珪藻の微細構造を使い,波長を制御して撮像するとそのことがよくわかります。珪藻などのモノクロ撮影を行う物体に対しては,極限までの性能を求めない限りにおいて,アクロマート油浸対物レンズを用い,緑色の照明で撮像するのが良い方法だと思います(oblique,撮影/MWS)。 2009年3月14日
検鏡技術を維持/向上するために有効なトレーニング法は,決まったプレパラートを何度も検鏡するということだと思います。何度も検鏡すると,それまで見えていなかったものが見えてくることがあります。それまでいないと思っていた種が,そのプレパラートの中に見つかることもあります。工夫を重ねて何度も検鏡することが,技術の維持につながることは確かです。上の画像は5年前に製作したプレパラートですが,きょう久しぶりに検鏡してみると,当時見えなかった種(Navicula placenta)が簡単に見つかるではないですか。毎日珪藻を検鏡していて,観察眼が磨かれたとしか思えません(oblique,撮影/MWS)。 2009年3月13日
395nmの紫色(近紫外)LEDはワット級のものが市販されており,これは顕微鏡光源に利用できます。波長が短いので,通常のプランアポクロマートでも収差補正の範囲外になってしまいますが,大抵はそこそこ良好な結像です。しかしこのLEDは透過明視野よりも落射蛍光用として価値があります。395-410nmにかけて強力な光が出ていますので,この波長で励起される多くの蛍光物質に対して有用です。上の画像はこのLEDを用いた照明器とそれにより落射蛍光を行ったF-TESTの画像です。蛍光顕微鏡用光源として十分に使えることがわかります。なお,LEDに興味のある方は「AUDIO-Q」「マルカ電機工業」「千石電商」「秋月電子通商」「共立エレショップ」などのホームページを覗いてみてください(撮影/MWS)。 2009年3月12日
現在入手できる主な可視LEDの波長特性を示したのが上の図です。400〜700nmの範囲で選択できるLEDがいくつもあります。これらを入手して照明装置を製作すれば,顕微鏡の可能性が広がります。高輝度の光源にフィルターを利用しても同じ波長特性の光を得ることができますが,LEDのよいところは,省電力で高輝度が得られるところです。数ワット程度の入力があれば,単波長で高輝度の光が入手できるのです(作図/MWS)。 2009年3月11日
照明光の波長を制御するには,フィルターワークだけでなく,光源の選択も重要です。上に掲げた2枚の画像は6年ほど前に製作した青LED照明装置です。まだパワーLEDが一個5千円以上もしていたのですが,LEDは長寿命ですし,単色光という特徴がありますから,干渉フィルタを買うことと比べれば,たいへん安い買い物と考えたわけです。上の青LEDは470nmにピークがあり,アクロマートでも,アポクロマートでも利用可能です。波長が短いので分解能が上がり,ほかの光をほとんど含まないのでフィルタは不要になり,熱を持たず,いいことばかりです。そして今でもまったく問題なく動作しています。LEDの駆動にはちょっとした知識と工作技術が必要ですが,中学校の技術科レベルですので,手先が器用な方は苦もなく製作できることと思います。フィルタを買う代わりにLEDを買う,これもまた一つの方法です(撮影/MWS)。 2009年3月10日
生物顕微鏡のステージ下面にはコンデンサと呼ばれるレンズがあります。このレンズは対物レンズの分解能を引き出すうえで極めて重要な役割を担っています。コンデンサというと,集光レンズと理解されることが多いのですが,コンデンサの役割は集光よりもむしろ対物レンズに送り込む光の角度(開口数)を制御することにあります。したがって呼び名は(照明)開口数制御器とでもしたほうが良さそうです。コンデンサは検鏡法によりたくさんの種類があります。一本の対物レンズでも,コンデンサの操作次第で種々の検鏡ができます。顕微鏡はコンデンサに始まりコンデンサに終わる,筆者はそう考えています(撮影/MWS)。 2009年3月9日
昨日までは光の波長について述べてきましたが,きょうは波長をかえて撮影するとどうなるかの実例です。対物レンズはプランアクロマート40倍で,開口数0.65の,どこにでもある対物レンズです。上の画像はアクロマート対物レンズの収差が最もよく補正された550nmの緑色光でモノクロ撮影したもの,下の画像は対物レンズの設計範囲外の400nmの紫色光でモノクロ撮影した例です。どちらも同じようにコントラスト強調してあります。一目でわかるように,緑色光の画像が鮮明です。紫色光では大きな球面収差が発生し,物体から発した光が一点に戻らないので,全体にぼけたような霞んだような画像になります。よい画像を選るには,レンズや光に関する知識が大切なことがわかります。なお,このようなテストを行うには,珪藻プレパラートが最もよい物体になります。特に,可視光の広い範囲で透明なJシリーズやテストプレパラートがお薦めです(BF,撮影/MWS)。 2009年3月8日
CD-Rで製作した分光器を用いて蛍光灯の光を撮影した例が上の画像です。分光器の波長分解能をあげるには,いかに細くて正確なスリットを作れるかにかかっています。いろいろな方法がありますが,筆者が推奨するのは,カバーグラスにアルミテープを貼り付けてスリットを作る方法です。直線に切ったアルミテープを,わずかなすきまを空けて貼り付けます。何度でも作り直してよい物を目指します。さて,この自作分光器によって分光された光をデジタルカメラで撮影すれば,半定量的な測定器になります。蛍光灯のスペクトルは,その輝線を見れば絶対値が与えられますので,あとはデジタルカメラのピクセル値を読めば大まかな波長は読むことができます。明るさは輝度を見ればいいわけです。フィルタの吸収特性を調べたいときには,フィルタありとなしの画像を比較すれば分光特性がわかります(撮影/MWS)。 2009年3月7日
光を波長ごとに分けるには分光器が必要ですが,本格的な機材は安くても数十万円もします。しかし単に分光するだけなら,身近にあるもので安価に分光器が作れます。上の画像はCD-Rのアルミ面を(ガムテープを用いて)剥がしたものを透過回折格子として利用している例です。CD-Rの基板には細かいピッチで正確に線が刻まれており,これが透過回折格子の役割をするのです。下の画像は,LEDライトにスリットを配置して,このCD-Rに光を通したものですが,LEDライトの光が波長ごとに分光されていることがわかります。このCD-R分光器の性能は侮れないものがあります。上手にスリットを作って,うまく配置すると,光を1nmごとに分光することも可能です。昨日の画像で示した太陽光と蛍光灯のスペクトルは,実はこのCD-R分光器を用いて撮影したものです。太陽光ではフラウンホーフェルの暗線が,蛍光灯では水銀放電による輝線スペクトルと蛍光体の幅広ピークが明瞭に見えています(撮影/MWS)。 2009年3月6日
照明法を学ぶには,まず光について知る必要があります。我々が光として認識できる電磁波は,その波長がおよそ400ナノメートルから,700ナノメートルまでの部分です。この範囲の電磁波は特別に可視光という名前がついています。可視光の中央付近は約550nmで,この辺りが肉眼で感度の高い部分で,色感は緑です。肉眼で観察する対物レンズは,緑付近を基準に設計されますが,これはちょうど可視光の中央付近であることとも関係しています。上のグラフの背景は太陽光で,ほぼ連続光からなっています。グラフと背景上部には蛍光灯の光組成を示していますが,特定の輝線からなる,飛び飛びの光からなっていることがわかります。一口に光といっても,無数の種類があります(作図/MWS)。 2009年3月5日
筆者はかなり以前から顕微鏡写真をパソコンの壁紙にしています。研究者と打ち合わせをするときなど,お世辞もあるでしょうが,なかなか好評です。皆様もご利用になってみてはいかがでしょうか。画像をお持ちでない方には,筆者撮影のサンプル画像(LZH, 1.4MB)がご利用頂けます。誰でも自由にダウンロードできますのでこちらをクリックしてみてください(撮影/MWS)。 2009年3月4日
顕微鏡対物レンズにはたくさんの種類があります。まず倍率。ふつう4, 10, 20, 40, 100倍の対物レンズ揃えますが,これだけでも5本です。これをプランアクロマートとすると,ほかに位相差用,長作動,微分干渉用,偏光用,プランアポクロマート,蛍光用などの種類があります(細かく分けるともっとあります)。それぞれの用途のレンズを各倍率について揃えると,すぐに数十本になってしまいます。最近では,微分干渉・蛍光観察対応のプランレンズなども出ていますので,それらを導入すればある程度数を減らすことができます。しかしそれでも,対物レンズは高価で,好きなものを自由に購入するわけにはいなかいのが悩みどころです(撮影/MWS)。 2009年3月3日
物体の性質をよく考え,適切な照明を施して対物レンズの性能を引き出す。このためには,ぜひともフィルタを揃えたいところです。上の画像は筆者が所持するフィルタのごく一部ですが,各種のバンドパスフィルタ,ショートパス,ロングパスを揃えています。ショートパスは分解能を高めたいときにプランアポクロマートと併用します。ロングパスは生物標本などで深いところを検鏡する場合などに用います。緑〜青系のラインバンドは高いコントラストでモノクロ撮影を行いたいときに用います。イメージングを行う方は,ぜひともフィルタを揃えることをお薦めいたします。まずは,色温度補正用の青系,次にモノクロ撮影用の緑フィルタを入手するのがよいでしょう(撮影/MWS)。 2009年3月2日
顕微鏡メーカからは,位相差やモノクロ用として専用のグリーン干渉フィルタ(GIF)が供給されています。干渉フィルタはシャープな立ち上がりと高い透過率が特徴です。上の画像で青のラインははGIFの分光透過率を示していますが,立ち上がりが鋭く,ピークはレンズの設計波長であるe線(546nm)付近にあります。これなら良好な照明ができます。一方,写真用品店にはPO1という緑色のフィルタが昔からおなじみです(上のグラフ緑線)。このフィルタは吸収フィルタですので,立ち上がりはなだらかでピークの透過率も高くありません。しかしグラフをみればわかるように,特殊用途でなければじゅうぶんにGIFフィルタの代用になります。このように,フィルタ類の分光透過率データは照明を理解する上で有用です。限定配布テキストのコーナーにデータ集を掲載しましたので,IDとパスワードをお持ちのお客様はダウンロードしてご利用下さい。テキストデータですので,ご自身でグラフを作製して理解を深めるこができます(作図/MWS)。 2009年3月1日
光学顕微鏡は「光」を照射して物体からの情報を得て,「光の干渉」により像を形成させる道具です。したがって,どのような種類の「光」を照射するかが重要です。光の波長をコントロールするにはフィルターが使用されますが,照明用途で用いる場合は光学研磨されたものでなくても利用可能です。上の画像は市販の色つきセロハンの透過率を測定してグラフにしたものです。青は青セロハン,緑は緑セロハン,赤は赤セロハンを表しています。緑セロハンは510-520nmで透過率最大になり,バンドパスフィルタとして利用できます。アクロマート系の対物レンズは緑色を設計上の波長としていますから,緑フィルタを用いてモノクロ撮影を行うと,コントラストが上がり収差の少ない像になります。セロハンは近赤外線を通しますが,顕微鏡やデジタルカメラには赤外カットフィルタが内蔵されていることが多いので,赤外光によるコントラスト低下は問題にならないことが多いと思います(作図/MWS)。 Copyright (C) 2009 MWS MicroWorldServices All rights reserved. (無断複製・利用を禁じます) トップに戻る |