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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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原子力災害関係の記事だけを見たい人は こちら をどうぞ(2011年9月再開)。

ユーザー様には海洋の放射能汚染に関するテキストを こちらで配布中です。
パスワード等を紛失した方は再請求してください。


2012年2月29日


ps

プランクトンの検鏡ではいろいろな検鏡法が求められますが,明視野,暗視野,位相差,偏光,微分干渉,蛍光と機材をそろえるのは大変です。たいていは明視野止まりで,次は位相差というのがせいぜいかもしれません。筆者は貧乏研究室の所属学生でしたので,研究用顕微鏡は,まず,ホコリにまみれたニコンS型をメンテナンスするところから始まりました。ずっと長いこと明視野と手製の暗視野と偏斜で過ごしまして,数年後にやっと位相差の中古機材が手元にやってきた覚えがあります。しかしレンズが揃わなかったので,位相差コンデンサは主に低倍率の暗視野用と,簡易的な偏斜照明用に使っていました。やや照明の輝度が必要ですが,位相差コンデンサによる暗視野検鏡はそれなりに実用になったものでした(画像/MWS)。








2012年2月28日


ps

放射能は数値でわかった気になってはダメだと,いろいろなところで口を酸っぱくしつつ訴えています。東京でも0.07μSv/hなんだから,1.9μSv/hくらいなら住んでも問題ないだろうと思っても,それは数字をみて脳内に浮かぶイメージから導かれた結論で,別の感覚から脳内にイメージを作れば,違う結論に達するかもしれません。

1.9というのは,0.07の27倍です。もし昼間の明るさが27倍になれば,直射日光によって焼かれて死んでしまうでしょう。食事の量が27倍になれば,食べきれないでしょう。騒音が27倍になれば精神が破壊されるでしょう。27倍というのはそれほどインパクトがあります。

筆者は,理科系の話はアレルギー的に拒否している方々にも放射線の話をする機会があるのですが,そういう方々には,放射線というのは,うんと玉が小さいピストル(の玉)だと思って下さい。人を撃ち抜くのではなくて,遺伝子に対するピストルです。遺伝子が撃たれてもすぐに修復して何の問題もありません。これは小さな切り傷がすぐに治るようなものです。しかしたくさん遺伝子が撃たれれば健康を害する可能性があります。極度にたくさん撃たれれば人体の生理機能を維持できなくなり死にます,といような比喩で説明します。

その説明のあとで,放射線を音に変換して聞いてもらいます。たとえばこんな感じです。ピ音が出ますのでご注意下さい。

東京都内の放射線量(0.07μSv/h)

飯舘村の低めの放射線量(1.9μSv/h)



これは,大人の親指第一関節から先の部分だけに降り注ぐ放射線を音に変換したものです。全身に当たる放射線の量は,これの1〜2万倍です。この量の放射線が体を貫通し,細胞の分子レベルの損傷を引き起こしているのです。いくら遺伝子が二重らせんでエラーを修復する機能があるとはいえ,分裂中のDNAが2本まとめて切断されると,修復でエラーが起こる可能性が低いながらも生じて,晩発性障害を生み出すもととなります。そして子どもは細胞分裂が活発なので,二本鎖切断の可能性も増加します。

もちろん,放射線以外にも二本鎖切断は起きています。細胞内に発生するフリーラジカルで分子レベルの損傷は至るところで起きています。ですから放射線照射だけがDNAの二本鎖切断を引き起こすわけではありません。放射線が照射されれば,日常的に起きている二本鎖切断が,さらに上乗せして起こるということです。

ちなみに,自然放射線のレベルでも完全に無害というわけではなく,米国のガン発生の2%くらいはあるかもしれないという見積もりがあります。

こうした知識をもとに,上の「放射線の音」を聞いてみれば,0.07μSv/hと1.9μSv/hの違いが,また違ったイメージになるかもしれません(画像/MWS)。








2012年2月27日


福島第1原発:帰村か移住か、共同体に亀裂 飯舘

 東京電力福島第1原発事故で計画的避難区域に指定され、全村避難する福島県飯舘村。自然を生かし、助け合って暮らしてきた共同体に亀裂が入りつつある。村は除染を進めて5年後に希望者全員の帰村を目指すが、一部の住民からは「新村」への集団移住を望む声が上がり、「理想の山村」の再興に向けた道筋は見えないままだ。
 「約50戸の除染モデル事業で6億円かかる。無意味だ」「放射線量が下がらないかもしれないのにやるのか」
 1月末、福島市に避難する村役場の会議室に、村内20地区の区長らが顔をそろえた。厳しい質問を浴びた菅野典雄村長は「やってみないと分からない」と答えるだけだった。
 人口約6000人の飯舘村は独自の村づくりを進めてきた。創造的な田舎暮らしを楽しむ村民の表彰、肉牛のブランド化。03年からは、方言で「丁寧に」を意味する「までい」をキャッチフレーズに自然エネルギーを生かしたスローライフの村を掲げた。
 村は今後、約3200億円をかけて住宅は2年、農地は5年、森林は20年で除染する考え。帰村を望む住民も多いが、福島市の借り上げ住宅に避難する農業、菅野哲(ひろし)さん(63)の目には、村の形の維持にこだわり、村民の生活をないがしろにしていると映る。「限界の暮らしを強いられる村民を助けてほしい」
 約20年前から村に協力してきた糸長浩司・日本大教授は、2拠点居住構想を提案する。国や東電の費用で30〜50年暮らせる分村を設け、線量が下がったら戻るという内容。糸長教授は「国が避難区域を見直せば、村はまた分断される」と指摘する。だが、菅野村長は「国が移住の面倒をみる保証はない」と、構想に否定的だ。
 移住を望む村民らは「新天地を求める会」を結成し、昨年11月から署名活動を始めた。村は直後、村の施設に「(施設内で)政治活動および各種署名活動を一切禁止する」と掲示したが、署名は200人分集まっている。
 村は帰村を巡り、住民の意向調査をしていない。移転を望む住民との対立は解消しないままだ。【泉谷由梨子、北村和巳】
毎日新聞 2012年2月26日 13時58分(最終更新 2月26日 16時36分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120226k0000e040134000c.html

飯舘村はチェルノブイリの強制避難地区と同等の汚染を受けているのですが,チェルノブイリでもできなかった『除染』を飯舘村村長はやろうとしています。200年待てば村には帰れます。それを2年で帰り,5年で農地を復活させ,20年で森林を除染するというのですから恐れ入ります。金さえかければ可能性がないとはいいません。しかし村民一人5千万円程度の予算でそんなことができるかどうかは,まだ,誰もわからないでしょう。3200億円という費用は,中型〜大型ダム1基の建設立案から完成までにかかる金額とほとんど同額です。

その程度の金で,住居をすべて除染し,表土をすべてはぎ取り,すべての森林を伐採して土壌ごと除去し,それの捨て場を作り,捨て,拡散しないような処置を施し,はぎ取った代わりの客土を施し,土壌を再生させ,山の土壌流出を防ぎ,植林を施し,村内のすべての地域で環境放射線を年間+1mSv以内に収める。これが3200億円とはとても信じられません。森林をすべてはぎ取るのなら,足尾のようなことになることを覚悟しなければなりません。飯舘村から森林はなくなり,はげ山の村になります。ゼネコンが大量の砂防ダムを作りに流れ込んでくるでしょう。砂防ダムが一基3億円とすれば,たった千基しか作れないのです。

放射性物質は消えないのです。もし除染と称して,放射性セシウムを除去して積み上げたら,その場所は大変高い空間線量を示すことになります。そして,風雨から遮断しなければ,拡散して環境汚染の源となります。山に置けばふもとが,谷に放り込めば下流が,海に投げ入れれば海洋が汚染されます。除染という言葉が一人歩きしていますが,それは恐ろしく困難なことなのです。

この村長は,村民を2年以内に帰村させようとしていることから,除染作業は村民にも負担させようとしている可能性があります。もし,そうだとするならば,「までいの心」どころではありません。住民の意向調査を拒否し,政治活動を禁止してまでも「村の形の維持」にこだわり,放射線作業従事者でも何でもない村民に,過剰な放射線を浴びせながら除染させるというのは,独裁者の雰囲気が漂います。放射線というものがどういうものなのかを実感したことがないのかもしれません。

村を残したいなら,やり方があるでしょう。移住を望む住民だって,村に対する愛着はあるでしょう。すべての村民の意向を聞いた上で,将来設計をしてもよいと思うのですが。アンケートが6000通あったとしても,それは一人が一ヶ月あれば読める分量です。急ぐことはないでしょうに(画像/MWS)。








2012年2月26日


ps

飯舘村の村長がニューヨークで講演したそうです。日刊スポーツの報道によれば,「いつまでかかるか不安だが、災害としっかり向き合い、必ずふるさとを取り戻したい」と話し「次の世代のためにいい国を造ろう、何度でも」と締めくくったらしのですが,不思議な話ですね。なぜ福島県飯舘村の村長がニューヨークで講演しなければならないのでしょうか。ニューヨークは放射能が少ないので,保養になるからでしょうか。

この村長は何が何でも村を守ることに固執して奔走しているように見えます。確かに,一生懸命努力して村民とともに築き上げてきた村がばらばらになっていくの見るのはつらいでしょう。しかし,放射能汚染の現実を見れば,無理だということもあるのです。「何が何でも」という考えはまずいのです。

マスコミは,この村長が国に対して戦いを挑むヒーローのように扱っているように感じられます。でも,実際に現地調査に入った方からは,村長が村民をがんじがらめにして,村を守るために村民に被曝を強要しているかのような,全然違った評価を聞くことができます。筆者には,村長よりも村民の方がはるかに放射能汚染の実態について深く理解しているように見えます。参考までにいくつかリンクをあげておきましょう。

こちら

こちら

こちら

こちら(きょうの画像)

こういったことをこのページで(お節介にも)述べるのは,報道だけをみてこの村長さんが立派だと思い込んでいる人が多数いるように感じられるからです。この村長を立派だと思うか,おかしいと思うかは,どちらでもいいです。しかしニュースをちらっとみて雑誌を少し読んだくらいでわかった気になるのはやめた方がいい,と老婆心を働かせたくなります。なぜなら,その程度の思考しかしないのであれば,それはかつて「原子力は絶対安全」を無条件に信じていた頃の思考方法と変わらないからです(画像/MWS)。








2012年2月25日


ps

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画像と資料とにらめっこという,つらい時間が続いています。珪藻の分類屋さんはたいてい専門が決まっていて,珪藻すべてがわかるわけではありません。何せ最低でも1万種を越えますから,とても覚えていられませんし,資料を揃えられませんし,頭に入れる時間もありません。一日一種を覚えても一万日かかります。。ところが,筆者の取り扱う珪藻は特定の属というわけにはいきませんので,種名などさっぱりわからないものが数多くあります。旧知の研究者から,分類に役立つようなヒントをつけてくれと言われると,たいへん困ります。 きょうの画像はコアミケイソウCoscinodiscus属のうち,東京湾で見られるものをいくつかピックアップしたものです。0.2-0.3μmの構造を再現できるように撮影していますが,では,この画像を使って同定できるかというと,そんな都合のよい図鑑がなかなかないのです(画像/MWS)。








2012年2月24日


ps

顕微鏡の中古品販売などでは,見えることの確認として顕微鏡写真が添えられていることがあります。ひじょうに多くのケースで,組織切片の染色標本が用いられていて,その画像が判断材料になっています。組織切片を用いると,ふだん染色物体を検鏡している人にはイメージしやすく,とても親切です。強く染色された物体は観察が容易ですし,レンズのアラも見えにくいので,たいていはよく見えます。しかし染色標本の画像は,無染色物体を検鏡する人にとっては,あまり参考にならないものでもあります。生きたプランクトンや,珪藻プレパラートを検鏡する方々にとっては,無染色の物体の画像でないと,見えが確認できません。たまに珪藻画像を添えて顕微鏡の品質をアピールしている例もありますが,そのような商品は信用に値するものが多いことでしょう。珪藻がちゃんと精密に写るような顕微鏡は,プランクトン屋さんにも,染色標本を検鏡する人にも,どちらからも合格をもらえるのです。もし,中古で顕微鏡を売却することを考えている方がおられましたら,珪藻プレパラートで品物の良さをアピールするとよいと思います(画像/MWS)。








2012年2月23日


ps

ニコンの黒い名機,S型顕微鏡はアマチュアの間でもよく使われている機種です。よく見え,スタイルもよくて,また塗装の質が極上です。しかしこれの一軸粗微動タイプは経年劣化が出やすく,デルリン樹脂製のギヤが割れて破損してしまうことがあります。最初はごろつきがある程度ですが,完全に破損すれば微動も粗動もきかなくなり,顕微鏡としての用を果たさなくなります。筆者のS型も10年以上前にギヤが破損しましたので,そのときに破損ギアを用いてシリコンで型取りし,その型にエポキシ樹脂を流し込んで硬化させ,ギアのコピーを作って修理しました。面倒な作業の割りには効果が芳しくなく,粗微動は機能するようになったものの,強度的に不安があり,油浸ではバックラッシュも気になります。

宜しくないなと思っていたら,S型顕微鏡のギア修理を個人でやっている方を見つけました。なんと真鍮ギアを特注しているとのこと。手頃な価格なのでお願いしてギアを3個作ってもらいました。きょうの画像はその真鍮ギアと,筆者がむかし作ったエポキシ製ギアです。樹脂製の部品を金属パーツで代替できるというのは,じつに嬉しい気分です。ひまができたらメカいじりをやりたいと思う今日この頃です(画像/MWS)。



*1 ギア破損問題はほかの機種でもみられます。バイオフォトの初期型,アポフォト,一部の倒立顕微鏡でもデルリン樹脂製のギアが使われています。




2012年2月23日(2)


青森の雪「被曝が不安」 那覇、避難者の電話で催し中止

 沖縄の子供たちに青森の雪を体験させてあげようと、那覇市が23日に企画していた恒例のイベントが中止になった。東日本大震災で被災して沖縄へ避難している人たちから「被曝(ひばく)を恐れて避難したのに、危険性のあるものを持ち込まないで」との訴えが寄せられたという。青森市内の21日の積雪は140センチ。「残念だ」と青森県の担当者は肩を落とす。 (後略) http://www.asahi.com/national/update/0221/SEB201202210017.html

青森の雪に「被曝が心配」…那覇でイベント中止

 那覇市は21日、海上自衛隊第5航空群(那覇市)が青森県から持ち帰った雪を使い、市内で23日に予定していた子ども向け雪遊びイベントの中止を決めた。
 東日本大震災で市内に避難している人から「放射性物質が含まれ、被曝(ひばく)する可能性がある」との声が相次いだためという。
 市などによると、雪は同県十和田市で集められた約630キロ。海自八戸航空基地(青森県)での寒冷地訓練に参加した隊員が16日、段ボール25個に詰めて哨戒機で運んだ。隊員が同機への搬入と搬出の際に放射線量を測定したが、いずれも問題ない値だった。
 那覇市は20日、市内の集会場で避難者に安全性を説明したが、「政府や自治体の説明は信用できない」といった意見が出て理解は得られなかった。イベントは今回が18回目の予定だった。
(2012年2月21日23時39分 読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120221-OYT1T01116.htm?from=main3

いろいろなことを考えずにはいられない記事ですね。

まず最初に指摘しなければいけないことは,2月16日現在の青森県内の雪は,心配は皆無だということです。いま青森県は雪深くなっていますが,環境放射能の水準は全国でも有数の低さとなっていて,その実測値を見れば,この雪が安全なことを否定のしようがありません。2ページ目を見れば,地面からの放射線をクリーンな雪が遮蔽しているように見えるデータです。このデータから放射性セシウムの含量を計算することはできませんが,ひじょうに高い汚染を仮定(10ベクレル/kg)を仮定しても,総量は6300ベクレルにしかなりません。雪を300グラム食べてもECRR基準内です。しかもこのイベントは通年やっているわけではないので,何も気にする必要がありません。実際は0.01ベクレル/kg以下の可能性が高く,一年かけてこの雪をすべて飲み込んだとしても被曝はできません。

では,被曝を心配した人たちがおかしいのでしょうか? それはイエスともいえますし,ノーとも言えます。被曝の不安を訴えた人たちは「被災者」なのです。読売も朝日も,どこから避難してきたのかは書いていません。しかしきっと被曝を恐れて避難してきた人たちなのでしょう。放射能が怖くて逃げたのです。目に見えない放射能をこわがるのは間違っていません。その意味では避難してきた人たちの感覚は普通です。けれども,安全確保のために測定した値を受け入れられないというのは,論理的・理性的ではありません。

その判断を「おかしい,間違っている」と指摘することは簡単です。でも,ふるさとを捨てて逃げてきた人たちなのかもしれません。もしそうならば,その苦しみは大変なもので,PTSD状態になっていても不思議ではありません。3.11原発災害を思い起こさせるものに対して,強い拒絶反応を引き起こしたとしても,誰がそれを責められるのでしょうか。避難した被災者への心理的ケアの必要性があるようにも思われます。

「政府や自治体の説明は信用できない」この言葉をもって,狂信的な原発アレルギーと結論するのは簡単です。しかし今まで「原発は絶対に安全」と信じ込まされていたことが覆され,ふるさとを汚されたことには疑いがありません。長い間,だまされ続けてきて,信用を失ったのですから,もう一度信用してもらうには心が落ち着いて情報を受け入れられるように,時間をかけた誠心誠意の取り組みが必要になるでしょう。誰でも,一度裏切られたら,その人を簡単には信用しませんよね?

つまり「科学」の問題ではなく「感情」の問題が大きいのです。そしてこの「感情」の問題を抜きに,避難者の言動を「おかしい」と決めつけてしまえば,正しい理解に導く道筋を断ち切ることになってしまいます。まず「聞く耳」をもってもらうために,感情的なわだかまりを解きほぐし,長い時間をかけて理解してもらうほかないように思います。



*1 それにしても不思議なイベントが行われているのですね。雪が体験できないのが沖縄の良いところなんですから,わざわざ青森の雪を運ばなくてもいいと思いますが。沖縄の温かさを青森の方々に運ぶことはできませんしー。

*2 「何が何でも放射能はダメ!」と思っている人は,被災者以外にも,かなりいらっしゃいます。でも,「ダメ!」と叫ぶだけでは,頭がよくなりませんので,「どうダメなのか」を勉強するのがよいかもしれません。単純に反対するよりもはるかに知識がついて,その知識は単に原子力に反対するだけでなく,事故の場合の自衛や,ほかの環境汚染を未然に防ぐために使えるかもしれません。

*3 被災者の方々も,PTSDの症状から解放されたら,「安全なものを安全」と受け入れられるようになって欲しいものです。安全なものも危険に見えてしまうようでは,正しい判断ができません。原発がイヤならきちんと反対した方が力になります。放射能は何が何でもダメ,と連呼するよりも,30ベクレル/kgのお魚を「安全」と理性的に判断しつつも,様々な根拠をあげて堂々と,「原発はダメだ」と言った方が遙かに説得力があるというものです。






2012年2月22日


ps

なごや環境大学での講演では多治見市の市議会議員さんにもお世話になったのですが,講演終了後に,画像のようなコーヒーカップを頂戴しました。多治見焼きという陶磁器らしいのですが,調べてみると名のある方の作品のようです。品のある絵柄がいい感じで,中西利雄画伯の風景画を背景にしても,自然に溶け込むように見えます。こういう,出しゃばらない,それでいで存在感のあるデザインって難しいですよね。カップを眺めては市議会議員さんの心遣いを感じ,むかし,多治見駅近くの大正時代の建物の旅館に宿泊したことを思い出し,いいお土産をもらったと喜んでいます(画像/MWS)。




2012年2月21日


ps

なごや環境大学での講演に用いた資料『福島第一原子力発電所事故 放射性物質の海洋への広がりを読む』を情報コーナーの購入者向けテキスト(限定配布)にアップしました。海の放射能汚染,水産物の汚染などについてたくさんの情報を集約しましたので,ぜひご覧下さい。当サービスのお客様はお手持ちのログイン番号とパスワードで,各自でダウンロードしてご利用下さい。今回のテキストは教育用配布物の位置づけで,お客様=受講者の考えにより配布するものです。二次配布は固くお断りします。ログイン番号とパスワードを紛失した方はメールで請求して下さい。その際は,お名前と購入製品を明記して下さるようお願い申し上げます。また資料をお読みになりまして,ご意見,ご感想などがありましたらお寄せ頂ければ嬉しく思います(画像/MWS)。




2012年2月20日


ps

ps

都区内に居住していると,名古屋は時間的に近すぎて日帰り圏内になってしまいます。次々と新幹線が来ますから,待ち時間からすると昼間の山手線的な感覚で便利なことこの上ありません。朝には真っ白な富士山を横目で流し見しつつN700系でパソコンカチャカチャやっていると(注:車内ではキータッチ音をほとんど発生させませんが),浜名湖に気付かずにすぐに名古屋についてしまいます。それで適当に雑談でもしつつ時間をつぶし,お昼を食べて,午後はひたすら講演でストレス解消し,それが終われば居酒屋で議論の続きです。さてお開き,となってもまだ東京に帰れます。ホームに上がれば『のぞみ』が発車したばかり。なのに,すぐに『ひかり』が入ってきて体を冷やすことなく暖かい車内へ。『ひかり』は筆者がカモノハシと呼んでいる700系で,何度乗ってもこちらの方が疲れません。Radiで東海地区の空間線量が低いことを確かめつつ流れゆく夜景を楽しめば,あららという間に東京です。新幹線が走る前は300kmも離れていれば一泊が当たり前で,そのころは流通も発達していませんでしたから,地元の食材を珍しげに頂戴し,想い出の一夜となったことでしょうが,現在はすべてが効率よく処理されてしまい,ちょっと味気ない気もします(画像/MWS)。




2012年2月19日


ps

18日は『なごや環境大学』の共育講座の講師として,海洋の放射能汚染について講演をしてきました。講演依頼は6月中旬にいただきましたが,この時点では,海洋汚染の動向について全く先が読めない状態でしたので頭を抱えました。しかしこの分野でまとまった話ができる人材は限られていますし,じゃぁ筆者が逃げたら一体誰が,原子力災害に関する広範な情報を集約して,海洋汚染の状況を概観できるのか?という問題もありましたので,話ができるかどうかは考えずに,講演依頼を引き受けました。

とにかく,災害の全体像を把握するのが容易でなく,専門家でも今回の災害をきちんとトレースできた人は少ないと思います。情報が断片的にばらまかれ,その量が膨大だったからです。筆者も日々,目まぐるしく変わる情報を前に,何が真実なのか判らなくなり振り回された日々もありました。それなりに勉強をしてきた人間でこの有様ですから,今回の災害で原子力というものに関心を持った方々は,何が何だかわからない状態に追い込まれた方々も多いのではないかと思います。

講演資料は,我慢して,一月までは手をつけないようにしました。さきにストーリーを作ってしまうと,どうしてもそれに引きずられるからです。かといって,先延ばしにしていると,講演に十分な情報を提供できなくなってしまいます。そのバランスをどうするべきかに,だいぶ悩みました。結局のところ,年明けからしばらくウオッチングしても,水産生物の放射性セシウム汚染が収まる気配がない,ということがはっきりした時点で,半年間の情報収集と勉強成果をまとめ,海洋の放射能汚染として,全体を概観できるような話にまとめました。スライドは130枚ほどになりました。

参加自由,定員45名の講座に対してどのくらいの受講者が来るのか不安でしたが,話をはじめる頃には満席になり,多くの方々が海洋の放射能汚染に関心を持っていることがわかりました。これは本当に嬉しいことでした。ついつい力が入り,休憩なしの120分講演になってしまいましたが,皆さんとても熱心に聴いて下さいました。休憩を挟んでの質疑応答の時間も,60分間途切れることなく質問が続き,筆者も知恵を絞って答えました。参加者の皆様に少しでも根拠ある安心,根拠あるリスク,そういった判断に役立つ情報提供ができたのなら幸いです(画像/MWS)。



1* きちんとした情報提供を行うと,受講者から次々と質問が出てきてとても有意義なディスカッションとなるのです。皆さん心の中にはいろいろな不安や疑問をお持ちなのです。それに対してやさしく答えてくれそうな講師がいれば,いろんな質問が飛び出して,その情報が参加者全員で共有できるのです。そこでつくづく思うことは,原発災害のような大切な議論は,国民みんなが参加すべきだということです。みんな心配だったんでしょ?みんな怖かったんでしょ? だったら話し合いましょうよ,ということです。





2012年2月18日


ps

珪藻のよい画像を得ようと追求をはじめると,検討すべき項目は山のようになり,一つの種類を撮影するのに一日などということになることもあります。研究の場合はそれでもいいのですが,通常は時間的な制約の中で作業を行わなければなりません。時間をかけられないときは,限られた時間の中で最高の絵が得られるような最適化が必要になります。上の画像がその一つの例ですが,封入試料を比較的高分解能で撮影する,という目的を設定して,油浸対物,乾燥系コンデンサ,照明波長410nmで撮影しています。この条件では,油浸対物,油浸コンデンサ,照明波長緑色(550nm)と比較しても分解能の高い絵となっています。このような,手抜きしつつも良質の絵を得るといった作業には,機材の特性をよく把握しておくことが必要です(画像/MWS)。




2012年2月17日


ps

これは発酵性飲料に入っていた酵母です。とても小さく,対物レンズは60倍(NA=0.95)を使用しています。このような小さな物体を撮影するときは,昨日の話とは逆で,可能な限り薄くマウントして,指定厚さのカバーグラスを使用します。カバーグラスと酵母の間に水の層があると像が劣化するので,水封の厚みは極限まで薄くします。さらに,NA=0.95ともなると,カバーグラスの厚みが50μm違っていただけでも像質が劣化します。このため,NA=0.95クラスの乾燥系レンズにはカバーグラスの厚み誤差を補正する補正環という装置が内蔵されています。像質を確かめながら補正環を回しますが,数十秒程度の時間でベストのポイントをきちっと出すにはかなりの熟練が必要です。補正環の操作の訓練には珪藻プレパラートが役に立ちます。微細構造のコントラストを見ながら追い込むのです(画像/MWS)。




2012年2月16日


ps

プランクトンを生のまま検鏡するときは,チャンバーと呼ばれる小さな池にサンプルを入れます。上の画像では,厚さ1mmのステンレス枠で作った池に海水を入れ,大型のカバーグラス(約0.17mm)でフタをしています。こうすると海水が動くことなく検鏡できます。池の深さは1mmで,これにカバーグラスがかかっているので,対物レンズからは1.2mmほどの深さになります。ここに沈んでいるプランクトンを検鏡するわけですから,厚いガラスを通してみるのと同じで,ふつうの対物レンズでは像が著しく劣化します。10倍(NA=0.25〜0.3)ではそれほどの劣化は感じませんが,20倍(NA=0.4)になるとかなり像が悪化します。40倍(NA=0.65)ではそもそもピントが合いません。

このような試料を検鏡するときは,長作動対物レンズを使うのが正しいのです。生物顕微鏡用の長作動対物レンズは,シャーレの底を覗けるように,ガラス厚さ1.2mm指定のものがあります(Plan20x 0.4 160/1.2 ELWDなど)。あるいは,補正環がついていて,0mm〜2mmの範囲でガラス厚さを変えられるものもあります。このようなレンズを用いて,水深に応じて補正環を調節すれば正しい像が得られ,40倍(NA=0.55〜NA=0.7)の領域でも観察できるようになります。

このようなことは,本ページの読者には何の疑問もないことと思います。しかしながら専門家になると話は別で,筆者が直接見たところでも,深さ1mmのチャンバに0.17mmガラス厚さ指定の対物レンズを使用して検鏡している例が,日本中どこでも見られます。税金で機材が買えると,それは自腹ではないので,カタログをパラパラと見て目的に合わない顕微鏡を購入し,それと気付かずに仕事をすることになるのかもしれません。昔から,顕微鏡はアマチュアの方がうまい,と言われてきました。きっとこれは自前の機材を自腹で買うからでしょうね(画像/MWS)。



*1 もちろんプロの中には達人もいます。ある国立機関にいらっしゃる先生は,顕微鏡に大改造を施して素晴らしい切れ味の画像を得ていました。別の先生は,職場も自宅も顕微鏡でたくさんでした。こういった方々に共通しているのは,メカに関する知識があるということです。




2012年2月15日


ps

油浸オイルは拭き取りにくくて何とかならないかという相談がときどき舞い込みます。そのときはQ&Aコーナーを読んで下さいとお答えしているのですが,まぁ,コツはゆっくりと拭くことです。さっさと拭くと,油を伸ばしているだけになります。溶剤を用いた場合は逆に,さっと拭き取ります。このときは溶剤で溶かして取り除いているわけなので,逆流する時間を与えると汚れるのです。何度かやればコツを覚えますが,じゃぁ簡単に完璧に拭けるのかというと,ハイとは答えられませんね。清拭は奥が深いのです。ということで,油浸の拭き取りに嫌気がさした人は,拭き残したオイルを検鏡してみてはいかがでしょう。きょうの画像のように,落射照明で見れば干渉色が美しく,これがあのイヤな油か,と思うほどです(画像/MWS)。




2012年2月14日


ps

位相差法は環状絞りによってコンデンサの高NAの光が絞られてしまうので高分解能は望めません。その代わりに被写界深度は大きくなります。この特性を利用すれば,厚みのある大きな構造を表現することも可能になります。きょうの画像はカンピロディスクスという,ポテトチップスのような形をした珪藻ですが,適当な倍率の位相差対物レンズを使用したことにより,少しのボケを残して湾曲を表現しつつ,大部分の構造が理解できるような絵になっています(画像/MWS)。




2012年2月13日


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電気自動車が「走る原発」であると最初に表現したのは上岡直見氏と記憶しています。90年〜92年頃の話です。昼間は走行して夜に充電するのが普通の使い方ですから,原発の夜間電力を使用することが想定されるわけです。しかもエネルギーコストを計算すると,ガソリン車よりも悪くなる可能性もあって,少しもエコでもなければ,クリーンでもないという代物です。電気で走るというとクリーンな気がしますが,電気はクリーンな水力発電以外にも火力発電や原子力発電で作っているわけですので,全体としてみれば少しもクリーンではないわけです。直接ガソリン(エネルギー)を運ぶ代わりに,電線で電力エネルギーを運んで,蓄電池に化学エネルギーに変えているだけです。

本ページをご覧の方々は環境に関する意識も高く物理方面にも豊富な知識をお持ちの方々が多いので,こんなことは当たり前かと思います。しかし世の中はそうではないようで,電気自動車を推進すると,それは原子力発電所で生じた余剰電気エネルギーを揚水発電所にエネルギーを吸収させる代わりに,電気自動車に吸収(蓄電)させることを推進していることになってしまうことに気がついていない人もたくさんいます。そりゃ,国の原子力安全神話を信じてきたような市民が多かったわけですから,誰かが電気自動車はエコだというと,調べもせずに信じてしまう人がいても不思議ではありません。やっぱし大事なのはお勉強なのです(画像/MWS)。



*1 上岡さんのセミナには学生の頃に何回か参加しました。シャープな分析力を持つ方で,エネルギー論から見た鉄道の優位性を語らせたら,この方の右に出るものはいないでしょう。環境論のお勉強では,エネルギー論はほとんど中心に位置するものですが,上岡さんから学んだ視点はひじょうに役に立つものでした。環境論の講義などでは大いに活用させてもらいました。

*2 上の画像は『交通のエコロジー』(学陽書房)を撮影したものです。92年11月の出版です。図に示されているガソリン車と電気自動車の比較は実測データに基づいています。

*3 電気自動車はエコではありませんが,ガソリン車もなかなかひどいものです。エネルギー効率からいえば,空気輸送の赤字ローカル線でも,自動車よりはマシだと言われています。移動手段の選択肢がたくさんあるときに,鉄道を選ぶと言うことは,それだけでエネルギーを節約しているということになります。ですので(?),筆者は熊本でも高知でも厚岸でも函館でも釜石でも,列車で出没します。

*4 上でエコと書きましたが,エコの語源はラテン語ギリシャ語のオイコスから来ていて,そこから派生した二つの言葉があります。一つはエコロジーで,もう一つはエコノミーです。ホテルのユニットバスに「ECOにご協力ください」と水を入れるラインが低く書いてあったとするならば,そのECOは事業者にとってはエコノミー,宿泊者にとってはエコロジーの協力お願いという意味になります。支配人は頭がいいです。  注)ついついラテン語と書いてしまいました。生物屋さんの悪癖です。ラテン語が語源のわけがあるはずないでしょう!!と自分でツッコミを入れておきます。

*5 電気自動車がエコではないと書きましたが,価値を否定しているのではないことに留意して下さい。ただ,いまのクルマと同じような方向で使うのなら,確実にエネルギー浪費,環境破壊型の利用になってしまうので,将来的に方向性は変える必要があります。電動自転車や山村で使われているようなタウンカートは,方向性のよい例です。

*6 上岡さんは最近はJanJanでご活躍です。根拠ある議論を展開されていますので,興味ある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。






2012年2月12日


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これはプロトペリディニウムの仲間,鞭毛藻の一種です。昨年の8月4日には頭の部分にピントが合った画像を紹介していますので,今回はお尻?の部分です。鞭毛藻ですから鞭毛を持っていて,これをぶるぶるさせながら泳いで行きます。写真にはなかなか写らないので,高輝度照明で高速シャッターを切っています。泳いでいるので,フレーミングもピント合わせもなかなか大変です。しかしこの鞭毛藻の生きている姿は美しく,ずっと追いかけていても飽きません。顕微鏡で見る微生物では,珪藻が抜群の美しさを誇るとは思いますが,アメーバも鞭毛藻も繊毛虫も,それぞれに,したたかに生き抜いてきた生物のスタイルを確立しており,構造の意味を考えながら検鏡していると,あっというまに時間が過ぎ去ります(画像/MWS)。




2012年2月11日


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デジタル時代になって便利になったことは多く,顕微鏡写真などはその恩恵をいちばん受けていると言ってもよいかもしれません。その場で撮り直しがきき,画像処理ができ,撮影の成功率も格段に上昇しました。もはやフィルム時代に戻ることはできません。「本日の画像」など運営できなくなってしまいます。しかしデジタル自体になってフィルムよりも退化したのでは?と思う部分もあって,今後の展開を楽しみにしていることもあります。一つは粒状性で,むかしのミニコピーHR-Uなど,全紙判に伸ばせたのですが,いまは同じことをやろうとすると,画像処理にも機材にも,当時よりも費用がかかってしまいます。もう一つの課題は色再現です。画像処理で補えて,ホワイトバランスも気にしなくてよいようになったのは大きな進歩ですが,スペクトル色や干渉色の再現はまだ問題が残されていると思います。きょうの画像はステッドラー社の水彩色鉛筆です。学生時代に衝動買いしたものですが,本来の用途よりも,カラーチャート代わりに使っていました。使ったことのないフィルムを入手すると,デーライトやストロボでコレを撮影したのです。デジカメで撮影すると(パソコンモニタで鑑賞すると),色合いの味気ないこと。微妙な色彩の差が,まったく表現できていません(画像/MWS)。




2012年2月10日


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海の中には種々のプランクトンがいて,濃縮サンプルなどを検鏡すると賑やかでじつに楽しいものです。いろいろな形の,いろいろな生物が詰まっていて,海というのはすごいと思わずにはいられません。そういった素晴らしさをうまく画像にしたいのですけど,なかなか難しいですね。拡大して一つの群体や細胞をきれいに写すのは練習次第でどうにかなるのですけど,低倍率で賑やかなプランクトン群集をシャープに写すとなると別の難しさが発生してうまくいきません。よい試料が入手できたら一度じっくりと取り組んでみたいと思っている課題です。顕微鏡というのはほんとうにやることが一杯あります。画像は東京湾の表層水に入っていたプランクトンで,ペットボトル水を持ち帰り,プランクトンネットで濃縮したものを携帯顕微鏡を用いて撮影しています。たくさんの多様な珪藻が見えています(画像/MWS)。




2012年2月9日


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時代が進むと不要になってしまう道具があって,でも捨てられなくて,「想い出の品々」となってダンボールの肥やしとなっていきます。製図用品など,高校生の頃から関心があって,お金もないのに,雲形定規やトレーシングペーパーなどを買って,グラフなどを描いていたものです。印刷用の原板も自分で書けるようにと,大学の頃はロットリングなども使いました。コンパスもよいものが欲しくて,ウチダのカタログを眺めては,その価格をみて嘆き悲しんだものでした。

そして時代は進み,KD-TYPEの製図セットも買えるかも…,という頃になると,すでに製図用品は時代の遺物となり,電子ファイルでの原稿提出を求められるようになっていたのでした。きょうの画像はそんな想い出の品です。コンパスは,偉い人が捨てようとしていたので,取りあえずもらったものですが,まだ使う機会がありません。研ぎ直しも必要です。文鎮も,これでトレペを押さえることはなくなりました。でも,まだ時々出番があるだけマシかもしれません。。この文鎮は,学生の頃,鉛を溶かして自作したのです。釣具屋で大きなおもりをたくさん買ってきて,小さな缶に入れて溶解して固め,まだ熱いうちに水冷して缶から外します。それにセーム革を伸ばしながらG17ボンドで接着してできあがりです。安価ながら使い勝手がいいのです(画像/MWS)。



*1 鉛を溶かしたのは小学生の頃が初めてで,最初はAというバッジを作って釣り仲間に配って遊んでいました。鉛のメダルも作りました。手作りチョコレートを作れる人なら,ヤケドに注意すれば,同じくらいの簡単さでできるでしょう。金属溶かして遊ぶというのもなかなか面白いので,やってみるのも一興かと。

*2 グラフはパソコン時代であっても,手書きすべきだと個人的には思っています。数値を読み取ってプロットする作業が,データの意味を理解する上で重要な気がします。散布図の背後に潜む意味を探り出すには,パソコンでグラフを描くよりも,グラフ用紙に手でプロットがよいと思います。昭和の人間の戯言ですかね。。確か宇井純も同じことを言っていたと思いますがー。



2012年2月8日


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忙しいときには決まって邪魔が入り,さらに忙しくなるのが常で,きょうも物書きのためのお勉強をしていたら,特急のお願いが舞い込んでしまいました。まぁ,舞い込んだのですから引き受けますけど,こういうときに大事なのは,まず穏やかな気分を作ることですね。さっさと片づけようと取りかかると,気持ちの整理がつかず,ポカミスをやらかします。まずは,あったかスリッパでも眺めて気持ちを落ち着け,お急ぎの依頼を解析して,確実な準備をしなければりません(画像/MWS)。



*1 ここでいう「邪魔」とは,発注などの本来の業務とはまったく関係のない作業が舞い込むことをいいます。まぁ,こういう作業をきちんとこなすことが,対応力を広げるのですよね。ある意味ありがたいことです。


2012年2月7日


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6日も若い研究者と顕微鏡談義に暮れました。機種固有の問題を解決したあとに,45年以上むかしの機種で照明の訓練を行い,偏斜照明の理論と実際,物体構造と回折光の関係などを実習しました。さらに拡散板による照明や,遮光板による簡易偏斜照明,解像限界のコントラスト,などを体験いただき,長作動補正環付き対物レンズと長作動コンデンサによるプランクトン観察,長作動コンデンサによる偏斜照明などを経験いただきました。またまた,おもちゃ箱をひっくり返してしまいましたが,機材が揃っている環境でしかできない経験というものがあるので,時間の許す限り機材と戯れました。課題もたくさん残りましたが,将来,経験が活かされるときがくればいいなと思っています(画像/MWS)。




2012年2月6日


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オリンパスのCAMEDIA C3030というデジタルカメラを,アダプタC3040-ADLを介して顕微鏡に接続したいのだけれども,何かが足りませんという相談が持ち込まれました。この組合せは手持ちがないので,筆者にもわかりません。誰かお判りになる方,おられませんでしょうか。アダプタの顕微鏡側のネジはCマウントのようです。

1)この組合せでJIS規格鏡筒に接続する方法
2)この組合せでBH-2三眼部に接続する方法
3)ほかの顕微鏡への接続例
4)作例

など,実戦で活用しておられる方からご意見を頂ければありがたく思います。どなたか,mws@micro.sakura.ne.jpまで,メールをいただけませんでしょうか(画像/MWS)。



追記(2/6夜):さっそく北海道の方から解決法の一つをご教示いただきました(MTV-3を使う方法)。記して感謝申し上げます。引き続き,独自の解決法も含めて情報提供を頂けますと幸いです。

追記(2/7深夜)関西の方からも情報提供を頂きました。耳学問ならぬ目学問?になって,とても有り難く思っています。






2012年2月5日


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現物を示して説明するのが重要なのは,何も書籍だけに限りません。百聞は一見に如かず,という言葉通り,現物を見せれば直ちに納得してもらえるものが多くあります。技術習熟や教育においても,現物を示して説明することが大事です。方解石の複屈折を言葉で説明するほど,ばからしいことはないでしょう。大きな方解石を渡して,さらに偏光板を一枚渡して,遊んでもらった方が100倍も有用な気がします。そういうわけなので,筆者と顕微鏡などの話をすると,次から次と光学材料や分光計やレンズ,プリズム,回折格子,顕微鏡…が登場してきます。イメージだけでも覚えてもらうことが大事ですからね。

言葉による説明は,筆者の脳みそ内部の怪しいイメージ→言語化→正しい保証もない言葉→相手の耳→相手の経験と知識による理解→相手の脳内にイメージ形成,という流れになるわけで,こんな複雑なプロセスがエラーなく進むのが不思議というものです。やっぱし現物は大事です。教材という名の現物を買い込む先生は,きっと優れた教育者なのだと思っています(画像/MWS)。



*1 モノを持っている人は,モノについて語れます。モノを持たない人は,モノについて語れません。当たり前のことですが,この差は大きいのです。研ぎをいくら勉強しても,研ぎについて語ることは不可能です。でも刃物研ぎの経験があれば,研ぎの勉強など一度もしなくても,研ぎについて語れます。モノというのは経験をさせてくれるんですね。

*2 調子に乗ってあれこれ取りだしていると,おもちゃ箱をひっくり返したようになってしまい,片づけの面倒なこと。トシはとっても人間は変わらないなぁと苦笑いをしつつ,しかし変わる必要もないかと,おもちゃ箱を整理します。。





2012年2月4日


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コレは重要だと思う本は,2冊以上手元に置いておく習性があります。最初にそういうことをしたのは大学生の頃で,『武蔵野物語』という写真集の出来映えが信じがたいレベルであったので2冊買い,一冊は亡きバァ様に進呈した覚えがあります。この写真集は仲間にも紹介して好評でした。以後,主に専門書などで,入手しにくい良書があると買っておくという習性が身に付きました。

研究などで『あの本,ひじょうによいから見てみるといいよ』と話題にした場合,その相手が紹介された本を手にとって確かめる確率は,10%もないというのが実感です。言葉だけでは良さは伝わらないのです。しかし,目の前で,『この本はひじょうによいよ』と差し出すと,100%,内容を見てもらえますし,50%くらいの確率で,『これ,買うわ』となります。つまり,現物を直接見せることで,相手が本当は欲しい情報なのに気付かずに捨ててしまう,ということを防げるわけです。同時にそのことは,情報を紹介した立場からすれば,紹介した努力が無駄にならなかったということでもあります。

人生などというのは,何も伝えられないうちにどんどん時間が過ぎて,そのうちに三途の川が見えてきてきれいなお花畑で遊びたくなるに決まっています。ですので,筆者は,現世では(笑),伝えたいことがあるときには,できるだけ現物を示し,きちんと説明して,自分の努力が無駄にならないように,相手の時間が無駄にならないように,努力しています。そのためには,時に本を2冊買うことが必要になってくるのです(画像/MWS)。



*1 とゆーような話をしたら,やはり同じような考え方で書籍を2冊購入している人に何人か巡り会いました。みんな凄い学者だったりしました。うーむ恥ずかしい感じもします…。ま,いいか。いいやねー。





2012年2月3日


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やっぱし知らないことはちょっとでもお勉強…ということで,神保町をふらふらして,偏光顕微鏡に関する文献を見つけてきました。検鏡例などから,少しでも知識が得られればいいやと買い込んだものの,ざっと眺めているだけでもサイン,コサイン…,ニャムニャム(-_-;Zzz おおっと,筆者の脳みそがセーフモードに入ろうとしています。道のりは長そうです。

ところで,どうしてそんな役に立ちそうもない本を買ったのかと疑問をお持ちの方もおられるかもしれません。自分でもちょっと不思議な気もするのですが,本というのは,読んで全てが理解できたら,その本はあまり役に立たなかったような気がするのです。むしろ,知らないこと,わからないことが山ほど書かれていて,ほうほう言いながら何度も読んで,その本から一つでも有用な知識が得られたら,その本は役に立った気がするのです。なので,その本は理解できそうもないけれど,貴重な知識が一つは得られると確信したら,その本は買う価値があると判断しています(画像/MWS)。



*1 その話をしたら,やはり同じような考え方で書籍を購入している人に何人か巡り会いました。みんな凄い学者だったりしました。何だか恥ずかしい感じもします…。ま,いいか。





2012年2月2日


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きょうも若い研究者とのお話でした。偏光顕微鏡にはじまって,画像処理やら何やら,いやーまたまた360分くらい喋ったかしら〜。どうして顕微鏡というのはこんなにもお話することがあるんでしょうねーというくらい,筆者が口を開けば止まりません。だんだんエスカレートして方解石が出てきたり海の幸の本を紹介したりと,何でもあり状態になってしまいました…。でも,それで,いいのです。知識というのは,筆者の理解では。一本の鎖のようなものではありません。一人の個人の体験や記憶に沿って,そこにぶら下げられていくのではないかと思っています。だから,情報だけを仕入れようとするとたいてい,個人の経験にぶらさがることが難しくなり,情報が揮発します。いろいろな体験−それは勉強内容と関係ないことも含む−が共存していれば,それの体験や記憶を通して,知識が身に付きます。飲み屋での情報交換が素晴らしく役立ったなんてことは,誰しも一つや二つ,覚えがありますよね(画像/MWS)。



*1 それにしても偏光について話をしていると,自分が偏光に関して知っていることがあまりに少ないのに愕然とします。やっぱりMaxwell方程式くらいはわからないとダメなのかしら。ポアンカレ球くらい理解できないとダメなのかしらと悲観しつつも,まぁ,その道の専門家に任せるという手もあるさと開き直っています…。





2012年2月1日


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若い研究者とお話ししていましたら,珪藻の資料を紹介していただきました。国内では出回っていない珪藻図鑑で,沿岸の珪藻が掲載されているという,ひじょうに魅力的なものでした。珪藻の図鑑はマイナーで,聞いたこともないような国から現地語で出版されているものもあったりして,あるいは,どこかの国の大学院生の博士論文が図鑑になっていたりして,現物を見ることがなかなか難しいのです。いろいろな研究者とお話ししていると,思いがけなく貴重な資料を教えてもらったりして,永年の課題が一気に氷解することもあります。有り難いことです。画像は東京湾の干潟で採取したヒトツメケイソウ属の仲間ですが,こういったわかりやすそうな珪藻でも,種名に辿り着くのはけっこう難しいのです(画像/MWS)。








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