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ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
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2022年1月31日




よい顕微鏡は置物としてもバランスのとれた優美な存在感があるような気がします。きょうの画像は筆者が研究員時代に使い倒していた頃を再現したもの。透過蛍光の鏡基でプランアポフルセットです。ポスドクで採用されたのはいいものの,まともな顕微鏡もない職場で機材集めに奔走した結果できた代物です。あのとき,理想的な職場ですぐに研究に没頭できたなら,たぶん違う人生があったのかと思います…。

何もない貧乏な研究室で過ごすと,研究自体よりも,よい機材を入手することや研究環境の構築に関心が向かいます。きょうの画像の顕微鏡も,自腹で購入してそこに消耗品の研究予算でレンズを継ぎ足して購入したもの(1本だけ),という感じです。

そして,よい機材が入手できた充足感は,よりよい機材を入手して最高のものを構築しようという間違った方向に進むこととなり,目出度く「研究よりも機材」という誰もが落下する落とし穴に吸い込まれるのかもしれません…(画像/MWS)。








2022年1月30日




その後もカミさんの職場では,管理職の無知によりもたらされた災害によって新型コロナの感染者が相次いで発生して手がつけられないような状況に突入しつつあります。ほんとうに馬鹿げたことですが,日本の教育システムでは,自発的に何でも学んでいく姿勢を持たない限り,自動的にバカが育成されるシステムになっているようにも見えるので,この馬鹿げた状況を修正する方法がありません。。

カミさんはその後ものどの痛みが完全には回復せず,定期的に謎のセキをしていて,これだけ長く続くことは過去20年なかったので,何らかの変調だと筆者は判断しています。もちろんオミクロンの軽症の可能性もかなりの確率でありそうです。何しろ職場で蔓延しているので。

ということで筆者は休日も顕微鏡デスクに引きこもり,あとは台所作業となります。イナダを塩で〆たあとに酢締めして,テナガダコを煮ダコにして,サヨリの中骨を除去して切りつけて,ホウボウを切りつけて,ご飯を炊いて寿司飯を作り,もずくをとりわけて,豚汁もとりわけて,モヤシキムチサラダを作り,海鮮丼定食をネットライフ中のカミさんに献上します。顕微鏡デスクでは納品を控えた標本撮影と,顕微鏡自体の撮影と,いろいろこまごまとしたことがあります。

きょうの画像は顕微鏡自体の撮影の例。筆者の運命を変えたかもしれない顕微鏡,フルオフォトです。バイオフォトの発展系ですが,バイオフォト・フルオフォトはとにかくランプハウスが素晴らしいです。鏡基がダメになってもランプハウスだけはなんとしても残します。何個も持っています。

ウチにあるのは3台で,2台はバックアップ用と部品とり用になっています。メインで使っているのは1982年生まれのものらしく,筆者が中学生の頃の製品です。そろそろ40歳ですが,人間だと,まじめに生きている人ならは,若気の至りが抜けてきて安定した魅力が出てくる頃ですね。この顕微鏡は筆者と暮らして20年ほどになりますが,各部を手入れして改造も施して有限系の顕微鏡としては究極に近いイメージングができるようになっています。最近では,円石藻の超高解像画像をこの鏡基で撮影しました。20年も使いこなした相棒は,ほかの顕微鏡ではできないことができるのです(画像/MWS)。



*1 ベース部分が革張りになっていますがこれは筆者が貼り付けたものです。空調を使わない顕微鏡部屋は冬場の室温が10〜16゚Cくらいですがが,このときに金属の鏡基のままだと手が冷えてまともな検鏡ができません。革張りにすれば手も冷えずに問題なく検鏡できます。ので,フルオフォトもバイオフォトもダイアフォトもオプチフォトも実体顕微鏡も革張りになっています。




2022年1月29日




きょうの画像はプレパラート(Jシリーズ)の何もないところを撮影したもの。何もないはずなのに,いろんなノイズがてんこ盛りです。これはいったい何なのかというと,コンデンサのフロントレンズの表面の荒れなのです。。

位相差法は光路差があればそれが明暗になってしまいますので,コンデンサのフロントレンズに傷や腐食があれば,それもコントラスト生成してしまうのです。このとき,もし対物レンズの開口全体で照明するようなインコヒーレント条件であれば,そのコントラストも薄まって消えてしまうでしょうが,位相差コンデンサの環状照明は細く絞られたコヒーレント的な照明になるので,物体から遠いコンデンサのフロントレンズの凹凸でもコントラストが像面に残ってしまうのです。

せっかくの物体像を汚すこの現象を回避するやり方はいくつかあります。ひとつは何もないところでこのノイズだけを撮影して物体像から減算する背景減算法。本ページではむかしから紹介してきた方法です。もう一つはコンデンサのフロントレンズを油浸する方法。油浸により傷が見えなくなりノイズが減ります。これと似た方法は,コンデンサのフロントレンズに油浸オイルを垂らして清浄なカバーガラスをのせる方法。これも「傷消し」の一種です。さらに別の方法はLWDの位相差コンデンサを使うこと。長作動によりフロントレンズと物体の距離が大きくなるのでフロントレンズの欠陥は拡散して消えます。

ここで書いた方法は表現上のマニアックな技法というわけでもありません。顕微鏡を使う現場では,位相差でさらにビデオエンハンスしたいような微弱なコントラストを追う場面もあります。そのようなときに光学素子上から発生する不要なノイズは可能な限り除去したいのです。ので,ここで記した方法は,顕微鏡上級者にはいつか出番がくるかもしれない実用的な技法でもあるのです。…といってもこのようなことを書いた教科書は見たこともなく,ここに書いたことは単なる筆者の経験則なのですが(画像/MWS)。








2022年1月28日




お魚だったらマダイ天然1kgで1,000円とか,ハマチ一匹で780円とか,わかりやすい値付けができるのだろうと想像するのですが,珪藻はそうはいきません。ディディモが1被殻で3,000円,フリッケアが1被殻で9,800円,ディプロネイス(海産)が1被殻で11,000円,アンフィテトラスが23,000円,小型のナビキュラのマウントが20,000円…なんて世の中はたぶん宇宙時間の中ではなさそうです。

でも,手間を考えると,漁に出て巻き網や底引きで漁獲があるようなものとは異なり,採集も大変ですし,そのあとの処理も簡単ではありません。この食べられない0.1mmくらいのガラスの殻に数千円,数万円の価値が見いだされても不思議ではないように思います。

こう書くとセールストークのように思われるかもしれません。それはひとつの了解形式です。でも専業で暮らしてきた筆者の観点からは。もし,完璧なフリッケアやフルスツリアの被殻を一個数千円で売ってくれたら,じぶんで材料を作るよりは楽だなーと思ってしまいます。そのくらい,一つ一つの手作業がマジ大変なのです(画像/MWS)。








2022年1月27日




カミさんの職場では新型コロナ感染者が増加中です。どんどん発熱患者が増えていきます。感染者が出ても何の対応もせずに,感染者を欠席させるだけなのです。。感染者が出た時点ですでに複数名の感染者がいるという発想ができないらしいので,この職場は新型コロナの培養液のような状態になっています。

このタイミングでカミさんがのどの痛みを訴え,セキもしているので,発熱はないにしてもオミクロンに感染していることを前提に全ての対応を決めなくてはいけないので大変です。居住スペースを分離して,食事なども全て別々に用意して,準備や片付けは全て筆者が行います。それでも狭いマンションの室内で空中浮遊物経由の感染を防ぐのは,一般的には至難の業です。

しかし幸いなことに筆者は空中浮遊物の状況が読める人間なのです。1μm程度の粒子がどんな風に漂うのか,3μmの粒子がどう挙動するのか,経験的に知っています。ので,カミさんから発生しているであろうウイルス含有微粒子の存在しないところに身を置けば感染症対策になります。幸いなことに,当室はこの22年間,エアコンの暖房というものを使ったことがないので,浮遊粒子の少ない部屋を作ることができます。風邪でもカミさんから筆者に咽頭経由で感染したことはないので,新型コロナでも防戦できる可能性は高いと考えています。

きょうの画像はそんな話題とはそれほど関係のないミズダコ。いつもはスーパーオオゼキのものが入荷しますが,加熱が甘く半生で水っぽく,何らかの方法で水抜きしないとだらしない味わいです。それに対して吉池のミズダコはしっかり加熱してあり,塩での締め加減も青森だけに強めで,噛めば噛むほどうまみが出てくる逸品になっていたのでした。

食品業界では,空気や水を売ると利益につながるので,食品に空気を混ぜたり水増ししたりということが行われることがあります。有名なのはアイスクリームとかチョコレートなどで,泡を含ませて1%でも空気を増量できれば社長賞がもらえるといった話を大学の講義で聴きました。その話はたぶんほんとうで,以後世の中を眺めていたら確かに空気を混ぜたチョコレートやアイスなどが次々と開発されていたのでした。世の中が不況になると水増しの豆腐が増えた感じもしています。

こんな話が30年以上前からあるわけで,ミズダコも,できれば水っぽいまま売ればグラム単価で稼げるのでしょう。でも筆者的には「味で勝負」の方が有り難いですね。しっかり水が抜けてうまみが詰まったミズダコはマダコとひけをとらないおいしさに思うので,「味で勝負」してマダコと同じグラム単価で勝負すればいいのです。そう思いますねぇ(画像/MWS)。








2022年1月26日




カミさんの職場で新型コロナ感染者が出たのが先週ですが,今週になって感染拡大が発覚し,ごく近い同僚が陽性者となり39゚Cの発熱。オミクロンの場合はほぼ空気感染(空中浮遊物経由の感染)なので,この一週間でカミさんが陽性者になる確率は相当高いことになっています。一瞬でも手を抜けば,空調により舞い上がった浮遊物を吸い込むことにより感染の可能性があります。例えば昼食時にマスクを外して食べただけでもそれはリスクになるでしょう。

デルタのときは夏でしたので換気も可能で,医療崩壊を起こしたためいろいろな職場で時短営業とか学校では午前授業とかリモート授業とか対策をとったのですが,オミクロンでは未だに緊急事態宣言は出ませんし,対策も会社や自治体で様々です。けっこう甘い対策のところが多いように感じています。

このような状況ですので,当面は感染症対策モード最優先で過ごすことにして,業務は二の次三の次で過ごします。バックオーダー二年待ちの方々もおられますが,さらに制作が遅れます。カミさんと筆者は時空間的に隔離して生活しなければならないので,筆者は顕微鏡の隙間に布団を敷いて寝ているので,小物以外は制作できませんし,じっさいのところは珪藻並べの仕事はする気がしません。お待ちのお客様にはお詫びのしようもありませんが,この二年間,何度も新型コロナがすぐ近くまでやってきては防戦の日々となっています。勤め人のカミさんがどこからか感染するのは仕方ないにしても,筆者も感染して夫婦共倒れだけは避けなければいけないので,個人事業主の特権として仕事をほっぽり投げても個人の健康維持,感染防止に努めます。

現在オミクロン変異体が流行中ですが,筆者は第6波は5波のように医療崩壊をもたらすようなひどいことにはならないと予想していました。その予想はひょっとすると外れるかもしれないところまできてしまいました。流行そのものは12月に始まると予想して,しかしGoToなどの流行を加速させるイベントがなければそんなにひどいことにならないと思っていました。実際は,12月終わりから感染拡大が始まり,PCR陽性者数で見るとかなりひどいことになってしまいました。

そうなった原因のひとつはオミクロン変異体の流入を阻止できなかったことです。デルタよりもR0が大きいことはわかっていたので,これが国内に入ってきて,感染拡大を起こすようなイベントがあれば,第5波のようなことになってしまいます。二つ目の原因はデルタが底を打ったタイミングでみんなが安心して,そこにオミクロンが入り,クリスマス,年末年始,成人式が重なったことです。「火だね」をばらまくにはこれ以上ない条件が重なってしまいました。そして三つ目は,「空調を使う時期」であったことです。ヒートポンプでもストーブでも,熱交換換気を施した室内以外では,換気は室温低下を招きますのでどうしても換気を避けがちになります。換気を避けていても一切の空調を使わないような室内であれば,1μm程度の微少な飛沫でも落下していくのですが,暖房を入れている室内だと長時間粒子が漂います。これを吸い込んで感染が確立するのです。

筆者の個人的な予想では,今週が感染のピークだと思っていたのですが,保育園,小学校などの子どもの多い施設での感染拡大が見えてきているので,何も手を打たなければ,感染拡大はもう少し続きそうです。現在は,年末年始,成人式などによる20代30代の大量感染から,周囲に感染が漏れ出しているところです。保育園,小学校低学年で感染が見られるのは親→子どもの経路かと思われます。これが継続すると,子ども→親の経路が出てきてしまい本来感染対策ができている家庭にまで感染が広がってしまいます。ので,できれば感染者発覚時点で学級閉鎖をすべきなのですが,対応は自治体任せで,完全に学級閉鎖にするところもあれば,リモート授業に移行するところ,感染者だけ休ませて平常授業をするところなど,科学はどこへ? という支離滅裂な状況です。

そんなわけで,適切な行動制限,介入をすればオミクロンでさえもピークアウトできる潜在能力を持った国民なのに,政府がそれを理解せず,じりじりと医療従事者が締め付けられていく状況を再び見ることになるわけです。保健所に対応させるボトルネックはそのまま。自宅療養もそのまま。国民に甘える姿勢もそのまま。それでも何とかなってしまうニッポンは,政治が機能しない代わりに市民が勝手に自分をコントロールする,足にも脳みそが存在するタコみたいな国家なんでしょうか(画像/MWS)。








2022年1月25日




きょうの画像は十数年前に相模湾で採取した珪藻。手元の文献やweb上の資料では思い当たるものがなく,10年以上も名前は不明のままです。独特の形態なので目につく資料に記載されていてもよさそうなものですが。。この珪藻,一度きりの出会いで,以後はどこのサンプルからも出てきません。たいていの沿岸性珪藻はいろんな水域にいて多かれ少なかれ出現するものなのですが,この珪藻は化石試料を含めてほかの試料からは一度も見たことがありません。かといって珍しい種かと言えば,開放性の強い相模湾沿岸にいるわけですので,少なくとも本州太平洋沿岸では分布が確認されてもおかしくありません。

筆者は珪藻や微化石をマウントして暮らしているわけですが,珪藻や微化石の分類は専門外です。ある程度のことはわかりますが全体像はまったくわかりません。珪藻だけでも最低数万種はいるはずで,放散虫も数千から万単位,一人で分類するのは不可能です。専門家に聞いた話では,一万種くらいまでなら脳みそが対応できるけれどもそれ以上は難しいとのこと。珪藻は外観がそっくりでも條線のピッチが違っただけで別の種になったりするので,見た目の記憶だけでなく数値的な記載もあわせて覚える必要があります。珪藻全体について覚えるなんて無理。

ということで,属レベルの分類はある程度わかりますが,細かな分類や希少種の分類などには時間を使うことはありません。「わかりません」にしておかないと,膨大な時間を費やした上に,「やっぱりわからない」といった結果が高い確率で待ち受けるからです。そんなわけで,きょうの画像の珪藻も,「何だろうなこれは〜」と思ってしばらくして思考停止して,ある日突然わかる日がやってくるのを受け身で待っているのです(画像/MWS)。








2022年1月24日




ちょっとむかし,北海道土産に鮭とばを買おうと函館をうろうろしたのだけれども,どこにも売っていない。売っているのは砂糖とかソルビットとかアミノ酸とか調味料が豊富に添加されて「味付け」してあるものばかり。本来の鮭とばは,原材料は「鮭,食塩」だけなのです。仕方なくあきらめて青森に移動して,青森駅前の こんな商店街 とか こんな施設 で探したのだけれども,みんな味付けされたニセ鮭とばばかりでした。

なんでこんなことになったのかよくわかりません。この種の乾物はちょっとばかり添加物を加えたところで賞味期限はそんなに変わらないし,砂糖やアミノ酸を加えたところで劇的にうまくなるものでもないように思います。たとえばスルメは現在でも塩干しが主な物で砂糖やアミノ酸を添加したスルメはみかけません。なのになぜ鮭とばは調味してしまうのでしょう。

青森の地下街でぐるぐる回ってみても,鮭とばはたくさん置いてある。でも表面の光沢と身の色を見れば調味品であることは一目瞭然。買わずにぐるぐる周回していたら「お兄さん,何か探してるの?」とおばちゃんに声をかけられました。鮭とば探してるのだけれども,味付けしてない塩だけのやつないですか? と聞けば,「ここにはないよ」と即答。むかしはどこにでもあったのにどうしてなんだろうね?と聞けば,よくわかんねえ,といった感じのお返事でした。

ところがですね,「鮭,食塩」だけの鮭とばは,東京にはあるのです。吉池にいけば,天下の佐藤水産の鮭とば(こちら)が入荷していることもありますし,きょうの画像のような吉池オリジナルの鮭とばが並んでいることもあります。スルメのように,砂糖やアミノ酸で汚染されていない,噛めば噛むほどじゅわっと染み出てくる鮭の味わいを感じるには,本来の鮭とばに限るのです(画像/MWS)。








2022年1月23日




ひろい出し用の毛先がダメになってしまったので交換しました。珪藻の大きさによって毛先の太さを変えていて,今回ダメになったのはいちばん細いものです。細胞幅0.01mm以下のものでも拾うことができる繊細な毛先(まつげ)だったのですが,ダメになるときは毛先が「折れる」のです。今回もポッキリと折れ目が入ってしまい,コシがなくなってしまったので残念ながら交換となりました。毛先は案外丈夫なもので10年は活躍してくれました。それだけに別れは惜しいものです。

多くの方は珪藻を「並べる」ことにばかり注目しますが,並べる材料をフリーハンドで拾うことの方が遙かに時間がかかりますし,0.04mm以下のサイズになると拾うにも困難が増します。材料があれば並べるのはどうにかできますが,拾う方はひたすら訓練による技術向上でも0.01mmのサイズになると限界です。「並べる」作業の陰には「拾う」作業があるわけで,そこの大変さを理解できるのは珪藻研究者だけかもしれません。

そして「拾う」作業を支えるのが「毛先」です。いろんな毛が使えますが筆者は自分のまつげを使っています。在庫は豊富にあって,細いもの,太いもの,曲がっているものなど様々です。珪藻に鉱物が付着しているときなどは,毛先で鉱物を突っついて剥がすこともよくやります。そのときに操作性の良い毛先が必須です。鉱物の大きさはせいぜい3μmとか5μmといった感じなので,そこにピンポイントで突っつける毛先が必要なのです(画像/MWS)。








2022年1月22日






もはや伝説的な存在になりつつある「九州らーめん桜島」。閉店からずいぶん時間が経ちましたが未だに「九ラー閉店」を嘆き悲しむ声がweb上に蓄積していっています。どこのラーメンとも全く似ていない存在だったのでファンの嘆き悲しみ苦しみはまだまだ続くのです。京王八王子店の跡地は銀だこになりましたが早々に潰れて,こんどは油そばの店になっています。覗いてみれば人が入っていません。ダメそうですね,これは。

ここに九州らーめん桜島があった頃は,客が入っていないなんてことはなかったのです。開店から閉店まで,一般の店では空いている14時〜17時の間でも必ず客は入っていました。東町店でも事情は似ていて,35年間で先客ゼロで入店したことは1回だけだったような気がします。筆者はタバコの煙がダメなので客がいない時間帯を狙ってラーメン屋に入るのですが,それでも必ず客がいたのです。

このお店は何でも最高だったのですが餃子と味噌わかめ(らーめん)が筆者のお気に入りでした。餃子は最近,近所の四川料理屋で満足するものを見つけたので九州らーめん桜島の喪失感は減りました。でもラーメンはどうにもなりません。

それでweb上を徘徊していると,きょうの画像の冷凍ラーメンが九州らーめん桜島に近いのでは?という書き込みを見つけました。それで試して見ると,どこをどう考えても同じではなく,書き込みした人の味覚はどうなってんだ?と思いましたが,一点肯けるところがありました。ウマイのです。この冷凍ラーメンに,加熱したもやしを130g投入してモヤシラーメンにして食すると,優しい味でするすると食べられます。体調が悪いときでも体がOKする感じの味で,スープが少ないので全部飲んでも食塩5g程度と問題のない値。実際,スープを残す気にならず全部飲みましたが,そのあとにのどが渇くこともありませんでした。

この冷凍ラーメンはそのまま鍋で火にかければできあがりという簡単なもので企業努力が感じられました。トッピングに工夫すればもっとおいしくできるでしょうね。九州らーめん桜島はなくなりましたが,その魂は筆者に,「強く生きろよ」と後押しをしてくれているかのようです(画像/MWS)。








2022年1月21日




きのうのフラスコの中身はこんな感じです。100倍対物レンズでもこの程度にしか写らない微少な緑藻類です。浮遊するためか細胞から糸が出ているのが見えます。クンショウモが駆逐されても,これはこれで面白いのでこのまま培養すべきか悩みます。藻類の分離培養では,粗培養段階では狙った種が増殖せずに全然別の種が沸いてきたりすることは結構あります。たまには珍しい種が分離できたりすることもあります。狙った種が分離できないという意味では失敗かもしれませんが,使えそうな有用な種が分離できたという意味では失敗ともいえず,結果オーライで仕事が進むこともあったりします。研究の面白いところです(画像/MWS)。








2022年1月20日




クンショウモを含む粗培養を窓際に放置しておいたらこんな具合になりました。プロならこれを見て何かを察知するでしょう。そう,これはクンショウモの色ではないのです。混在する微少な緑藻類が優占してしまった色なのです。この一見青汁のようにも見えるおいしそうな液体は,おびただしい数のバクテリア,消化に悪そうな緑藻,何を引き起こすか分からないアメーバ,少数のクンショウモを含む恐るべきものです。

藻類を分離培養するときに目的の藻類をマイクロピペットで吸い取って培地に移しますが,このとき,操作時には見えないほかの生物も吸い取っていることがよくあります。培養初期はいいのですが,あとから見えなかった生物が増えてきてまったく違った生物組成になってしまうことがあります。ので,単藻培養を目指すときは分離培養→分離培養→分離培養と多段階に操作を行うとか,目的の藻類を新鮮な培地で何回も洗うとか(こちらの方が有効),いろいろなテクニックが必要になります(画像/MWS)。








2022年1月19日




web上を検索してさまよっていると,たまにとてつもない情報に行き当たることがある。どうも5分前がその瞬間だったようで,高ぶる感情を抑えきれない気がします。その情報源が こちら ですが,本当に貴重な標本群のように思えます。できれば持ち主と連絡をとって,手に負えないのなら高値で買い取りたい気もします。。

あるいは持ち主の方にその価値をアドバイス差し上げて末永く愛用頂き,顕微鏡を趣味にして頂くのも良いことかと思います。SNSをやっている方,誰かアドバイスしてあげて下さい(^_^)  見る人がみればわかる価値ある標本群に見えます。どうか散逸したりしないように願いたいです。画像は都内公園の珪藻。話題とはあまり関係ありません(画像/MWS)。








2022年1月18日






きょうの画像一枚目はコンペン対物レンズでコンペンせずに撮影したもの。巨大な倍率色収差が残存しています。画像中央は色ズレをほとんど感じないのに中央から遠ざかるにつれて像が大きく色ズレしています。これが倍率色収差の特徴でもあります。この画像では赤が内側,青が外側に色ズレしています。

倍率色収差は色によって物体の大きさが異なるという現象ですので画像処理によって修正が可能です。もとの画像の複製を三枚作り,それぞれの画像を単色(R,G,B)にします。単色画像を倍率色収差の度合に従って大きさを変えます。最後はR,G,Bの画像を加算合成すればもとのカラー画像になり倍率色収差は修正されています。その例が二枚目の画像。もう少し追い込めるかもしれませんが,もとの画像とは比較にならないほど像品質は向上しています。

この手法を覚えると,ニコンCF対物レンズ以外の各社の有限系の対物レンズを直接焦点で使えるようになるので機材の活用範囲が広がります。きょうの作例もそのひとつで,ZEISS Plan-neofluar 25x/0.8 Imm 160/- というレンズをオプチフォトDICに取り付けてWIで使用したものです(画像/MWS)。








2022年1月17日




ねんまつ在庫処分セールからまもなく三週間ですが,遠隔地(海外)にも標本が届き納品が全て完了しています。当サービスは国内販売のみですが,1)日本語でやりとりできること,2)日本の銀行口座からネットバンキングできること,3)過去の取引実績があること,を満たせば海外発送が可能なケースがあります。安全に送付できるヨーロッパ方面などが主です。納品先からは暗視野像を大画面に写した検品画像が送られてきて制作者としてはほっとしました。小さなガラス板一枚が割れることもなく一万キロ以上離れた個人宅に届くって大変なことだと思うのです…。

さっそくセール品のイメージングに挑戦した方々もおられるようです。バルバドス産放散虫ニセ散布スライドの最上品を様々な角度からイメージングした例を こちら で見ることができます。すべての作例がひじょうに高い水準で,特に一枚目は特筆すべき技術と感じます。このような技術で撮影されてしまうと,制作時のちょっとしたアラが見えてしまうのでこれを作った本人としては冷や冷やする気もします。標本マウント面だけでなく,カバーガラス全面がなるべくきれいになるように制作してはいますが…。

ほかの作例も光の読みが的確で感心します。本ページをお手本にしているとのことですが,技量が優れた人は本ページの画像を見るだけでどんな照明を施しているのか見抜くのです。結晶写真を撮影する方々などもそうですが,放散虫や微結晶などの透明体はすこしの照明の変化で印象がかわります。それを経験から見抜いて照明に還元できる腕前を持つというのは並大抵のことではないように思います。そういうレベルの読者に恵まれているのは有り難いことです(画像/MWS)。








2022年1月16日




おととい一年半ぶりに布団の上で寝ました。新型コロナ体制になってから,出歩かない筆者と勤め人のカミさんを感染症的に分離する必要が出てきて別の部屋で寝ることになっていたわけです。といっても極限的に狭い当室ですので,別の部屋といっても筆者が顕微鏡の隙間で寝るしかありません。顕微鏡の隙間に布団を敷くなどというのは光学機材や珪藻標本の管理を思えば最もやりたくないことなので,布団に寝ることはあきらめて,この一年半のあいだ寝袋で過ごしていたのでした。

中空糸などを用いた寝袋はホコリの発生が少ないです。羽毛でもチリの発生はある程度抑えられるように思います。ので,4つの寝袋を敷き布団にしたり掛け布団にしたりして過ごしてきたのでした。しかしどうも今年は例年よりもすこし冷え込む感じもして,このところの体調不良もあって,たまにはちゃんと布団に寝ようと思ったのでした。顕微鏡ラボに布団を敷くのですから当然,仕事は当面お休みです。顕微鏡にはカバーをかけてありますが筆者的にはそれでも相当に気分が悪い感じです。

敷き布団を敷いてもその上に人造繊維の寝袋を布団カバーにしていますのでいちおうはチリの発生は減っているとは思います。掛け布団も寝袋主体で化繊の毛布が一枚です。一般的な布団と比較すればホコリ,チリの発生は約1/10くらいにはなっていると思いますが,それでも筆者的にはゴミが振ってくる空間で暮らしているような気分になります。

もっとも,布団ばかり気にしていても仕方ありません。もう一つの粒子発生源は筆者です。人体は絶えず角質の微細な破片を放出しています。常に同じ部屋で作業しているわけですので,これが無視できない量となります。冬場は乾燥するので角質が舞上がりやすく落下物になりやすいのです。頭皮などの脂分を含んでいるものは重くてすぐに落下するのでまだいいのですが,乾燥肌の部分を摩擦すると細かい角質が舞い上がってしまいます。

現在の室温は12゚C程度ですが,冬場は環境温度に対して人体が熱源になっているので,皮膚の角質に限らず,衣服の繊維やチリ,ホコリ,なんでも体温の上昇気流で舞い上がってしまいます。この上昇気流は窓際の冷やされた空気の下降気流とセットで循環流になっているのでぐるぐる回ります。一年半ぶりに潜り込んだ布団ですやすや眠りたいところですが,布団に潜るにも特別のイモムシ動作でチリの発生を最低限にして,潜ったあともレーザーをつけてみて空気中の粒子の多さに閉口し,まぁ仕方がないよなと思いつつ寝たふりをするということになっています。職業病,とまではいいませんが,でも,このくらい考えるのが当たり前になっても,まだまだだよなぁと思う自分がどこかにいます(画像/MWS)。








2022年1月15日




なやんだ末に一ノ倉を三杯半。明け方に頭痛。この日本酒では頭痛にならないはずなのに頭痛が発生したのはまともに栄養がとれていないところに飲んだからでしょう。0430頃葛根湯で様子を見ましたが効かないので0650頃に頭痛薬を飲み一眠り。学生時代に戻ったような夢をたくさん見て目が覚めれば,病み上がりの感じもすっかり抜けて復調。酒を飲んでも胃腸に問題はなかったので普通食もOKです(笑)。今回の胃痛は原因が不明で困りましたが,無味無臭の毒物が食材に紛れ込んでいた感じです。そこからの回復が遅れました。症状としては劣化した干物を食べたときの胃痛に似ているのですが,干物は食べていないし,食べ物には相当に注意しているのでほとんど絞り込みができませんでした。可能性があるとすれば「厚揚げ」ですが,経験的にはこんな症状を引き起こすものにあたったことはありません。

それにしても劣化した食べ物は恐ろしいです。何の問題もない健康そのものの胃を,わずか数時間でダメにしてしまいもだえ苦しむことになるのですから。皆様もお気をつけ下さい(画像/MWS)。








2022年1月14日




まだ低空飛行中。胃腸薬は不要になり問題はなくなりましたし,まあまあ寝ることもできたのですがなんとなく病み上がりの感じがしてふらふらします。こういったときはただひたすらだらだらしてもよいことにしています。きょうのエネルギー入力はこれまで500キロカロリーくらいかな。これじゃ体が熱を発しません。室温13゚Cくらいだとけっこう厳しい。やっぱし酒で500キロカロリーくらい追加して温まって寝たほうが元気になるような気がします。うーん悩む悩む(画像/MWS)。








2022年1月13日




あいかわらず低空飛行中。2,3日前よりは格段に復活してきましたがカロリーがとれないので体が温まりません。きのうは300キロカロリー,きょうは600キロカロリーといった感じ。かといって太った体重がほとんど減らないのが謎ですが…。あと数日この調子で暮らせば二年ぶりに60kgを切り「人間」への仲間入りができそうなのですが…。画像は淡水珪藻のクラチキュラ。初めてみたのは20年くらい前だったかな。まじめに顕微鏡を使わないとよく見えない格子構造を飽きもせずずっと眺めていたものです(画像/MWS)。








2022年1月12日




すこし前に酒をやめてから徐々に寝不足になって胃腸の調子がおかしくなり低空飛行中…。復調するまでは静養することとします。いつも酒をやめると体調が低下するんだよなぁ〜(画像/MWS)。








2022年1月11日




同じスライド中に現れたヒポドンタを高解像で(画像/MWS)。








2022年1月10日




メロシラ,ナビキュラ,ニッチア,キクロテラ(旧分類)の出会い。わずか0.1mm以下の空間での接近です(画像/MWS)。








2022年1月9日










きょうの画像は相模湾を浮遊していた小型のChaetocerosです。n=1.52で封入していますのでコントラストが低く,黙って渡したらふつうの人は何も入っていない標本だと思うかもしれません。物体が見つけられなければどこがピント面かもわからず,何も見えないままです。

画像一枚目は透過明視野です。何も写っていません。コントラスト強調しても何も出てきません。画像二枚目は微分干渉法。薄く見えていますが視認性は低いです。画像三枚目は位相差法(DL)です。明らかに微分干渉法よりも見やすく検出に優れています。最後の画像は暗視野法。黒バックに物体が浮き出るので視認性は良くなりますが高輝度光源を使わないと像は暗くなります。

この例でわかるように,何もいないと思っていた標本にはじつはコントラストの低い何かが入っているかもしれません。透過明視野で見づらいものはいろいろあります。いろんな方法を併用して最適な手法がすぐに思いつくようにしたいものです(画像/MWS)。








2022年1月8日




あらたな新型コロナ変異体が増加中です。入国者管理の甘さで帰国者や米軍経由で感染者が流入して,そのタイミングがデルタ変異体の底を打ったところだったので,多くの人が一安心していて忘年会や年末年始で感染機会が増えたことがおおまかな原因と考えられます。12月はどこの飲み屋も盛況でした。ですのでいまは年末年始の感染拡大とそれに続く家庭内感染,院内感染,施設内感染が数字になっている時期でしょう。

オミクロン変異体は何か特別なもののように報道されていますが,広島県のまとめによれば,感染経路等はこれまで全く変わりません( こちら )。要するに,活動度の高い若い世代を中心に会食,飲食,職場等でマスクを外していて飛沫感染,空中浮遊物感染により広がっているだけのことです。ですから,この感染症は依然として個々人の対策で防ぐことができます。

デルタのときもそうだったのですが,海外でR0=9などという数値が報告されて恐れられていましたが,これはあくまで海外での値です。これまでの全ての変異体で,日本国内では再生産数はひくく抑えられています。オミクロンでもそうなるでしょう。個々人がこれまでと同等の感染症対策をとったならば,オミクロン変異体でも約2ヶ月で感染者のリンク構造が切れて沈静化に向かうものと筆者はみています。

筆者の見解は本ページ2021年10月10日で記していますが以後も見解は変わりません。

困ったことは,広島県のように個々の感染事例を調べて公開しているところが少ないことです。「いま,どんな人が感染しているのか」という情報がリアルタイムに共有されれば個々人が自衛するのに大いに役立つのですが。日本政府は,もう二年も経過するのにこの感染症にまともに(科学的に)向き合っていないようにも思えてしまいます。和歌山県や,寝屋川市や,墨田区のようにまともな自治体があるのだから国がそれをお手本として「仕組み作り」のお手伝いをしてもいいと思うのですが(画像/MWS)。








2022年1月7日




そうやって苦労して呻吟して制作したものも販売すればすぐに売れてしまうので手元には残りません。。本当は「売りたくない」「全部持っていたい」という感じなのですがそれでは商売にはなりません。ほかの定職を持ち趣味で作ればよかったのかもしれませんが,,お客様から見れば筆者が専業でポイポイと売ってしまう気前の良さ?投げやり?なところが歓迎されるわけです。

すると手元に残るのは研究用,展示用,B品のどれかになってきます。研究用はテスト封入のものが大部分でデザインはほとんど考慮されていません。展示用は取材案件などで必要なものです。B品は,封入時にトラブルが起きて珪藻が潰れてしまったり,剥離したり,ヒビが入ってしまったり,封入剤の浸透が悪かったりしたものです。

きょうの画像はB品の例。多種多様な珪藻を並べて豪華なスライドに挑戦しましたが,剥離のトラブル発生。それをどうにかするために顕微鏡手術を行いましたが修復痕が残りました。樹脂の固化状況もまずく幾つかの珪藻はひび割れしています。最初からヒビがあるものもあるのですが,樹脂のヤセに伴ってひび割れるものもあるように感じます。こうして豪華なのだけれどもB品,というものが手元に残されています。

珪藻標本は何しろ顕微鏡で一個一個の被殻を観察するものなので,100個並べたら100個の殻が無傷な方がいいのです。が,それを達成するのは容易なことではありません…(画像/MWS)。








2022年1月6日




このようなものを制作するにはとうぜん,簡単な設計図が頭の中にあって,照明でどのように色が出せるのかも想像できていて,材料が揃っていることもわかっていて,段取りをどうすればいいのかも理解しています。つまり,作ろうと思ったものを実現しているのです。

しかし…,出来上がったものを数年たってから客観的?に眺めてみると,これはほとんど超人技で真似ができる気がしません。いや,実際は真似ができるし,これ以上のものも作れるんだけれども,画像を眺めて作ることを考えると困難と恐怖ばかりが浮かんできて,作れることはわかっているのに作れる気がしないような不思議な感覚になります。

これはたぶん「モード」の違いなんだろうと想像します。

パソコン画面を眺めているときにゆるゆるな自分では全く役に立たないぐでんぐでんな状態なのでしょう。一方,全ての準備が整い,作業着を着て顕微鏡デスクの実体顕微鏡を覗いているときは臨戦態勢になっていて「違う人間」になっているのでしょう。

この「モード」の問題はけっこう厄介で,「きょうは制作できる日」「きょうはダメな日」というのが気分でわかります。いろんな条件が整っていて仕事がしやすそうな日でも,「きょうはダメな日」という信号が出たときには珪藻を並べることはできません。ので,年間制作日数はどんどん少なくなっていきます。ただ,「きょうはダメ」なときでも,ニセ散布スライドならOKとか,別の作業は全然問題なくできるので,その辺りでバランスをとることはできます。

筆者は外科医ではありませんが,たとえていうならば,大型の放散虫を扱うのは河川土木工事の感覚で,小型の珪藻を扱うのは脳神経外科手術や硝子体手術の感覚です。作業に要求される精度から見れば実際にはもっと難しいと思います。その作業ができる特別な体調(=モード)が必要なのかもしれません。

「モード」をよくするには体調や仕事の管理しかありません。とにかくよく寝て,体に合うものを食べて,ストレスはなるべくため込まないようにして,負担になる余計な仕事は断って,気になる情報は遮断して…となるのですが,この5年は書籍出版,取材攻勢,取引上のトラブル,委託案件,新型コロナなどいろいろあって脳みその「モード」をコントロールするのが難しくなっています。マネジメントが下手なんですかね(画像/MWS)。








2022年1月5日








カラスミはほんとうに素晴らしい保存食品なのだけれどもあまりにも高価で常食するわけにはいきません。でもなぜか当室にはカラスミが転がり込んでくることがあるのです。少し前には長崎の上物が転がり込んできて,ちょっと前にはなんと台湾産の特上品を(お世話になっている先生から)頂いたのでした。

画像一枚目は,すでに半分食べられてしまったカラスミ。この大きさは一メートル級のボラの上物のものです。そして処理の具合が素晴らしく,締めも,塩抜きも,乾燥も,全ての工程がきちんと管理されていて驚くべき高品質の品物なのでした。塩味の違いはありますが,この完成度は国産と遜色ありませんし,それ以上と言っても良いくらいです。マジ特上品で素晴らしいものに出会うことができました。

カラスミは当室自慢の包丁や切り出しで薄く削ってバーナーで炙りそのままつまみにするのが常でしたが,先生によると薄切りの大根などと合わせるとよいとのこと。宴席などの場ではそんな洒落たものを食べたこともありますが,そんなに合うとは思っていませんでした。

しかし目の前には大量のカラスミがあるので,正月でもあるし当室自慢のなますを炙ったカラスミに載せて食してみました。これが異次元融合の大正解な感じがしました。それがきょうの画像です。甘酸苦辛といった和食の要素を満たしているような酒飲みの脳天を痺れさせるような調和した味です。濃いのではありません。バランスの問題です。すばらしい。

カラスミは高級食材としてイタリア料理などでも使われるようになりましたが正統的な和食での味わい方も強力なものだと思いました。カラスミと合わせたなますは当店オリジナルのもので,作り方は本ページの2020年1月3日をごらん下さい。この方法で作ったなますを炙ったカラスミにのせて食すと,穏やかながらも腹の底から感動する調和が理解されるかもしれません…(画像/MWS)。








2022年1月4日






このきれいな飾りは以前から気になっていたのだけれども,まじまじと近くで見たことがありませんでした。つい先日この飾りの前を通りがかったので撮影。適当な印刷物か何かかなと思っていたのですが,よくみると金属板です。そして塗装の感じがしません。…とするとこれはひょっとして酸化膜の色なのかしら。そして耐久性のある色のきれいな酸化膜というと,この金属板はチタンなのかしら? などと思ってしまいました。色もチタンカラーの感じがします(こちら)。

うーんこういうのを見るとチタン板を入手して電気流して酸化膜を作りたくなりますね…。高校生の頃,銅板を研磨したものをガス火であぶって酸化膜のグラデーションを作ったりしていたことをふと思い出しました。あの頃はまだおバカだったのであの色が薄膜干渉だとは知らずに酸化物の色彩だと思っていました。

ま,でも筆者には珪藻のシリカの薄膜があります。これは薄膜干渉とは別の構造色ではありますがけっこう鮮明なものもあります。そちらで遊ぶことにしましょう(画像/MWS)。








2022年1月3日




きょうの画像は1月2日現在の河川の様子。東京・八王子の南浅川です。このところ天気もよく極度に乾燥した日々が続いていて南関東の河川は渇水期に入っています。冬場で日照がまいにち続くという点では光合成生物であり低温に強い珪藻には適した増殖条件といえますが,さすがの珪藻も水がなくては生きていられません。干上がってしまえば強烈な日光に焼かれて「光漂白」という現象が起きて細胞内容物が脱色し,ガラスの殻の白っぽい色が目立つようになります。

きょうの画像に写っている白っぽい部分はほぼ珪藻の殻です。ものすごい量で,全部集めれば珪藻土バスマットが何枚か作れるくらいあるかもしれません。そして水の流れている暗色の部分はこれもほぼ珪藻です。西高東低の関東地方では冬場は珪藻が大増殖(蓄積)する季節でもあるのです(画像/MWS)。








2022年1月2日




ギロシグマ(淡水産)を落射明視野で。珪藻のもつ周期構造や構造の対称性がよくわかる一枚になっています(画像/MWS)。








2022年1月1日




クンショウモやミドリムシをどうやって拾うのかというと,きょうの画像のようなガラス管で吸い取るのです。ガラス管をバーナーで赤熱してから引き伸ばしてキャピラリーを作ります。これをアンプルカッターで傷を入れて適当な太さのところで折ります。このガラス管をオートピペットのチップに溶着します。火で炙るだけでできます。このチップをギルソンに装着して実体顕微鏡で拾いものをします。

これは何かのテキストに書いてあった方法ではありません。30年前に孤独な大学院生だった頃にChaetocerosを単離培養する必要に迫られ,満足なテキストもないままに自分で考えた手法です。でもこのやり方は結構よい感じです。いろんな珪藻を分離培養してそれなりの結果を出しました。いまでも必要なときはこの方法をつかっています(画像/MWS)。









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