本日の画像
ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。 日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します 【2016年】 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 2016年9月30日
きょうの画像はライツのふるい対物レンズ。同じレンズ設計のもので,どちらも100年は経過していそうです。分解して中身を見比べてみると,より古い方は,真鍮の削り出し? そのままなのですが,時代が進むと黒塗りしてあります。これはもちろん,内面反射によるフレアを減らすためでしょう。実際,両者を見比べると黒塗りのレンズの方がコントラストが高い感じがします。当時は反射防止コーティングのない時代ですから,レンズも貼り合わせを多くして空気面を減らし,なるべく透過率を稼ぐとともに表面反射によるフレアの低減をねらっていたに違いありません。当然,内面反射によるフレアの低減も行っていてよいはずなのですが,なぜか100年くらい前までは,内部の黒塗りが行われていません。塗料による経時変化でガラス面が曇るのを嫌ったのでしょうか…(画像/MWS)。 2016年9月29日
手持ちの試料はジュラ紀ということまではわかっていましたが,正確な年代がわからなかったので,きのう,一億年以上もむかし,一億年振りに,というあいまいな書き方をしたところ,早速専門家から指導!が入りました。このサンプルは1億6000万年〜1億8000万年前のものなのだそうです。試料はいろいろなところからの廃棄品などを利用させて頂いているので,出所などの詳細が不明なものがほとんどです。しかし専門家が見れば一目瞭然なのでしょう。有り難く指導を受けたのでした。きょうの画像も,きのうと同じ時代のもので丸っこいやつを整理している部分を撮影したものです(画像/MWS)。 2016年9月28日
珪藻の画像が続いたので,きょうは放散虫化石。一億年以上もむかしの放散虫らしいです。このくらい古いと生物ケイ酸はほとんど残存しないのですが,何らかの形で鉱物に取り込まれて保護されると,残っていたりします。この放散虫は炭酸マンガン系のノジュール中に保存されていたもの。炭酸マンガンを溶解除去できれば,一億年振りに姿を現します。ほとんどのものが壊れていますが,粉々というほどでもなく,もとの形が推測できそうです。 2016年9月27日
きょうの画像はライツの約120年前の顕微鏡対物レンズの修復過程。液浸対物レンズの先玉は,扱いが悪ければ汚れが付着したり,樹脂が固化したり,金枠が錆びたりして使用不能になります。このレンズも入手時は使用不能な状態で,その程度のひどさから,修理も不可能かと思われました。しかし筆者にとっては,レンズは飾っておくだけでは意味のないもので使うために入手しているわけですから,壊れてもいいので修理を試みます。失敗すれば万単位,ものによっては十万単位のお金を捨てることになりますが,でも引き替えに修理体験ができるわけで,全てが無駄になるわけではありません。 2016年9月26日
その後の調べで,ライツの約120年前の顕微鏡対物レンズの倍率色収差は,ツァイス有限補正系の接眼レンズで打ち消されることがわかりました。そこでツァイスの接眼レンズを投影レンズとして用いて撮影したのがきょうの画像。倍率色収差が消えているのがわかります。物体は東京湾表層水に入っていた浮遊珪藻,スケレトネマ(Skeletonema)の一種です。夏のスケレトネマは弱々しく細いものが多くて,液浸対物レンズでの高解像イメージングでも,この程度しか写りません。この細い糸のような構造も,シリカでできています。極細のガラスの糸です(画像/MWS)。 2016年9月25日
琵琶湖疏水が今月の画像とどんな関係にあるのかというと,学会講演に用いたアンティーク顕微鏡対物レンズが生まれた時代と一致しているのです…。120年以上前,京都にはやっと水のトンネルが開通し,それを使って水力発電がはじまり,電灯がともって市電が走り始めたのです。その頃の日本に顕微鏡製作会社はありませんでしたが,ヨーロッパでは,NA=1.3以上のアポクロマート油浸顕微鏡対物レンズが生産されていました。そんな時代的なつながりがあるのでございます。 2016年9月24日
秘技 「大事なものは画面の隅に」 を発動した結果。遠い国から京都まではるばる観光にきてくれたカップルのすてきな瞬間が(画像/MWS)。 2016年9月23日
さて学会も仕事も無事に終わり,あとは帰るだけ。そしてここは京都。久しぶりの贅沢な時間だ。夏の京都は行くもんじゃない,という噂もあるが,運良く曇っていて暑さはそれほどでもない。そこでいつものように歩くこととなる。まずは五条から錦市場へ。ほとんど観光客相手なのだけれども,そして価格はべらぼうに高いのだけれども,置いてあるものは悪くない。魚と野菜を眺めながら三条方面へ。 役所を通って南禅寺方向に向かうも,元気がよすぎて行き過ぎた…。岡崎公園から平安神宮の前を通り,間違えたことに気づいて,いつもの道に戻る。この白壁を見ないと,京都に来た気がしないんです。とちゅうの道を間違えた原因をつらつら考えるに,たぶん5,6年はとおっていないからかも,ということになった。 そしてここに来るわけです。いつ来ても変わらないものがある。それは大切なことだ。若者に言いたい。いろんなところに出かけるのもいいが,定点観測をしろと。旅先で必ず立ち寄るところをつくれば,それを基準にじつに様々なものが見えてくる。過去の自分を振り返ることさえできるのだ。 いつみてもこれは大変なものだ。琵琶湖から水を引いているのだけれども,ここは京都。いったい誰がそんなことを考えたのかと感心する。何しろ100年以上むかしの話なのだ。 「現代社会で正気でいたければ、1日5分でいいから自然のものをじっと見つめることだ」 という言葉は本当だと思う。うまくいえないけど,落ち着くのです…。 沢筋の風でしばらくクールダウンして,再び錦市場方面へ。けれどもその前に立ち寄るところがある。それが古川町商店街。閉まっているお店も多いのだけれども,なかなか風情のあるところ。 3時間半歩いて汗だくになったので,駅の個室で丸裸になって全部着替え。出張中も毎日洗濯しているので,着替えは2セット以上あります。ひじょうにさっぱりとして,混んでいる新幹線を3本見送り,のぞみ230号で悠々と帰宅となったのでした。これで約一週間に及んだ夏期休業中の学会旅行は終わり。学会中はいわゆる「学会気分」になるので,急いで帰らず,時間をかけて学会気分を抜きながら自宅に戻るようにしています。そうすると,帰宅してから日常モードに入るのが早くなるのです(撮影/MWS)。 2016年9月22日
21日は帰省中の大学教員の訪問を受けました。いろいろなことにお詳しい先生ですが,たまにふらりと立ち寄られます。話題はいろいろあるのですが,年々,人間関係などの,誰がどうした,彼が何した系の話が増えてきているような気がします。どの分野でもそうでしょうが,人事問題は主要な話題です。座っているだけで関係業界の興味深い(=どろどろとした)情報がもたらされたりして有り難くも思うのでした。ウチに来たからにはそれらしい情報をお持ち帰りいただきたいところですが,ほとんど時間切れとなり,市販のおもちゃ顕微鏡の実情を紹介しておしまいとなりました。 2016年9月21日
これはProrocentrum minimum(たぶん)という渦鞭毛藻の一種。東京湾表層水に入っていたものです。内湾などにふつうに見られる種で,東京湾でもごくふつうかと思います。大きさは0.02〜0.03mmといったところで,かなり小さいのです。画像一枚目は細胞の断面,二枚目は表面にピントを合わせています。鞭毛がぷるぷるしているのですが,動きが止まったときをねらって撮影し,なんとか写りました。本種はときどき大発生して海の色を変えてしまい,いわゆる赤潮を形成することもあります。0.02mmの生物が海の色を変えるのですから,微生物の働きというのは大きいと言わざるをえません(画像/MWS)。 2016年9月20日
くまもとの学会を後にして新大阪泊。学会のはしごで,奈良の近畿大学で開催されたシンポジウム「水圏環境の変動に対する植物プランクトンの応答とその影響」に参加しました。新大阪朝0730発で,近畿大には無事に到着。近鉄で生駒山方面に向かう景色がよろしい感じがしました。シンポジウムは長期観測の結果を惜しみなく披露した講演の連続で,滅多に聴くことのできない貴重なもので,大変勉強になりました。旧知の方々が次々と登壇していましたが,その方々とお付き合いを重ねている時間の間にも,見上げるような立派な成果を積み重ねていることが理解され,何だか身のすくむような思いも感じました。 2016年9月19日
これは東京湾表層水に入っていたコスキノディスクスの殻。これも121年前のライツ対物レンズで撮影したもの。色収差補正はアクロマートですが,現代の対物レンズと比較してもそれほどひどくはありません。ご覧頂いてわかるように,コスキノディスクスの殻の微細構造が見えています。開口数通りの分解能で,当時の研究者は,照明技術が高ければ,このような像を見ることができたと考えられます。現代でも,きちんと顕微鏡と標本を扱わなければ,こういった微細構造は見えません。我々も技量を高めなければ,19世紀のレベルを維持できないのです(画像/MWS)。 2016年9月18日
これは学会講演で用いた元画像をGチャンネルモノクロ処理したもの。対物レンズは121年前のライツのものですが,ちゃんと像を結ぶのです。もちろん,現代の同スペックレンズとは比較になりません。視野はせまく,像面湾曲は大きく,反射防止コーティングもありません。フレアのかかったゆがんだ像になります。しかし視野中心部だけは開口数から計算される分解能を持っています。むかしの研究者は視野中心の鋭い像を熱心に検鏡していたに違いありません(画像/MWS)。 2016年9月17日
ついに九州地区で ターャジス の捕獲に成功! (画像/MWS)。 2016年9月16日
昔から新幹線の窓際に似合うものといえば顕微鏡対物レンズと相場が決まっていますよねー。これは熊本の学会終了後に,別の学会シンポジウムに出席のため新幹線で移動中の風景。古い対物レンズを眺めながらひたすらに画像処理。新幹線の車内というのはどうしてこんなにもパソコン作業がはかどるのでしょうか… (画像/MWS)。 2016年9月15日
ついに本物がー やったー くまモンだー! (画像/MWS)。 2016年9月14日
お休み期間中に学会講演を一件片づけました。日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会in熊本県立大学です。熊本県はこの春の地震で打撃をうけたわけなので,ぜひとも参加して盛り上げたいと思っていました。しかし今年はすでに学会講演の重量級を2件こなして時間を消費している上に例年をはるかに上回る睡眠障害でしたので,聴講のみでの参加にしようと思っていました。参加〆切も近づいてきた頃,関連学会が同時開催になり,参加者が分散してしまったことが判明したので,筆者は熊本を盛り上げるために急遽,講演をすることにしました。『プランクトン・ベントス撮像におけるアンティーク対物レンズの解像限界』というタイトルですが,こんな酔狂なタイトルを思いつくのは世界でも少ないかと思います。 2016年9月13日
milsilほど新幹線に似合う雑誌はほかにない。 in 九州新幹線つばめ号博多行 (画像/MWS)。 2016年9月12日
新幹線の座席にmilsilが… in 東海道・山陽新幹線のぞみ号博多行 (画像/MWS)。 2016年9月11日
これは現在処理中の岩石試料から出てきた放散虫。歩留まりが極端に悪いのですが,何せ恐竜が歩いていたであろう時代のものなので仕方がありません。処理開始は約2年前で,そのときはほとんど出てこなかったので,専門家からハズレの試料と判定されたものです。その試料を時間をかけて漬け込んで,酸性条件下での風化を待ちました。その結果,2年前の100倍程度の収率にはなりそうだったので処理を開始したものです。脆弱で壊れやすく果たして乾燥試料に持ち込めるのかわかりませんが,恐竜時代の微化石は珍しいですから,やるだけのことはしてみたいと思っています。画像は水洗い中のものです。水に漬け込んだ中で,実体顕微鏡下で毛先でかき分けて放散虫を見つけ出して撮影したものです(画像/MWS)。 2016年9月10日
大船渡線で気仙沼に向かうと,車窓の北側にこんな山が現れます。じつに素晴らしいカーブを描く山で,調べてみれば室根山というそうです。中二病時代はワンゲル部でしたので,こんな山を見ると気になって仕方がありません。しかし交通の便がよいとはいえず,登るならどこに宿泊するかが問題になります。 2016年9月9日
これは初めて使った油浸対物レンズ。ニコンのPlan100x 1.30 160/- です。顕微鏡の情報が余りにも足りない現状で,図書館に何度も足を運び,古書店通いをして,珪藻を見るには油浸が大事らしいとの認識を得て,業者さんから油浸オイルを取り寄せて検鏡にこぎつけたのです。このときに覗いたのはコスキノディスクスで,乾燥系よりはるかによくみえたので驚いた覚えがあります。しかしその頃に「よくみえた」と思っていたのは不十分な認識で,そのレンズの性能について何もわかっていなかったですね…。ちゃんと使うとそんなものではない,ということが判明したのは,それから6年後くらいです。その間,もし顕微鏡のお勉強をやめていれば,そのレベルで終わってしまったわけで,いま振り返っても,解像限界を追求してきてよかったと思っています。 2016年9月8日
お休み期間中でも情報提供くらいは…とも思ってしまいます。そこで皆様にぜひとも詳しく読んで頂きたい重要情報を。 2016年9月7日
プリンタが故障してしまい業務が停止しました。プリンタというのは,大事なものを印刷するときに故障するという特性を持っているわけです。筆者にしては珍しく対物レンズのテスト画像を写真品質で印刷していたらB200なるエラーを吐き出し,プリンタ故障特性の本領が発揮されました(笑)。仕方がありませんので,プリンタはすぐにキヤノンの修理受付に持ち込みました。14日以降に受け取れるとのことでしたので,それまで夏期休業といたします。研究関連の仕事もたくさんあるので順次片づけます…。 2016年9月6日
対物レンズをよい状態に保つために,先玉の様子はよくチェックして,汚れているようならブロアでホコリを飛ばし,毛先で粒子をどかしてみて,それでも付着物があるようならレンズペーパーに精製水の組み合わせで拭いてみて,油性の汚れが残っているなら溶剤拭きで仕上げます。後端レンズの場合は引っ込んでいることが多く,このようなことを行うとかえって汚したり,傷をつけたりすることもあるので,ほどほどのところでやめておくのが無難です。この『ほどほど』がどの辺りなのかはレンズによっても,作業する人のレベルによっても異なりますが,参考になるのが昭和8年のツァイス社の解説書にある記述です。 2016年9月5日
こんな看板がみられるのは一関市くらいかもしれません…。喫茶店でもどこでも,『餅』が食べられるのです。餅専門店なるものもあるようで,いろんな味付けの餅セットをメニューにしているお店もちらほら見ました。そこいらへんのスーパーでも餅がふつうに転がっています。だいたい,丸餅で,つきたてのような柔らかさです。 2016年9月4日
対物レンズは先玉を上に向けるのが正しい置き方です。うしろのレンズにゴミが入り込むと,これをきれいにとるのは至難の業だからです。ところが,むかしの真鍮ケースの対物レンズは,先玉を下に向けて収納するようになっていました。保管時にレンズ内部の塗装やサビが剥がれて後端レンズを汚すことが認識されていなかったのかもしれません。そう思っていましたら,昭和8年のツァイス社の解説書に,このことに関する記述がありました。 2016年9月3日
これはレンズテスト中の様子。対物レンズの分解能テストは高度な技術が必要で,単に写せばいいというものではありません。無収差の標本。どんなコントラスト法を用いるか,それに対する最適な操作,照明の光量調節とCMOSのS/Nのバランスなど,考えつくあらゆるパラメータを調節して解像限界を確かめます。撮影枚数も数十から数百枚に及ぶこともあります。そうやって得た画像を,こんどはいろいろな方法で画像処理を施し,そのレンズの限界を見極めます。そうしてやっと,そのレンズの性能を出し切った像が得られ,その限界的な像を比較してレンズのランクを見るのです(画像/MWS)。 2016年9月2日
過ぎゆく夏のおもひで… 東京・高尾山にて (画像/MWS)。 2016年9月1日
東京湾海水にはこんな珪藻も入っていました。画像真ん中を斜めに横切っているのはプセウドニッチア(Pseudo-Nitzschia)属の珪藻です。いくつかの細胞がつながって群体を形成しています。このグループの一部の種の中の一部の株は,記憶喪失性の毒(ドウモイ酸)をつくることで有名です。そのような毒を持った群体の発生はかなり希ですが,たまに起きると,それが貝類に蓄積されて,それを食べた人間が中毒を起こすこともあります。珪藻は最低でも数万種もいるのに毒を作る種はほとんどいないのですが,これは陸上植物などと比較するとどのくらい特異なことかわかるかと思います。本種は例外中の例外のようなものですが,ニュースなどでは悪者扱いされ,さらに珪藻がニュースになるのはこういった毒の問題などに限られるので,珪藻のことをまったく知らない人がニュースを見れば,珪藻=毒,と覚えてしまうかもしれません。 Copyright (C) 2015 MWS MicroWorldServices All rights reserved. (無断複製・利用を禁じます) 本ページへの無断リンクは歓迎しています(^_^)/ トップに戻る |