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ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
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2015年2月28日(2)
むかしから,最高級の顕微鏡(対物レンズ)を持っているのは珪藻を覗く人たちだということで相場が決まっていました。珪藻には,光学顕微鏡では見えないレベルの微細構造もあるので,とにかく高分解能を追求した検鏡を行うのです。かつてアッベがツァイスと共同で顕微鏡を開発していたときも,レンズテストには珪藻を用いていたことが記録されています。ツァイス社が新型の最高解像度を誇る対物レンズを発表すると,まずは珪藻学者がそのレンズを使って分解能をテストしていました。
筆者も,珪藻類の限界的なイメージング技術を追求してきましたので,どうしても,対物レンズはよいものが必要になりました。一般検鏡で仕事をしておられる方々は,NA=1.25とNA=1.3の対物レンズ,どちらを使っても仕事に大きな差は生まれないことが多いと思います。珪藻でも大半の仕事ではその通りなのですが,一部のひじょうに繊細な構造を持つ種などを撮影すると,技術が上がってくるにつれて,NA=1.3とNA=1.25の違いがわかるようになります。さらに高度なレベルになると,NA=1.4の対物レンズを5本レボルバにつけて,それぞれの優劣がわかるようになってきます。
当サービスでは,RL-TESTの計測を業務として行っていますので,Amphipleura pellucidaの被殻上にある200nm付近の構造は楽に解像できなければなりません。この構造は詳細に見ると,180nmを切っている部分もあって,対物レンズの性能は可能な限りよいものが必要になります。こうしてレンズは増殖していき,同じ物が増えますが,それぞれに用途があって,勝負用,一般用,バックアップ用などとなっています。何を申し上げたいのかというと,掲載してきた対物レンズ群は,全部,必要があって入手したもので,レンズの収集が趣味ではないということです。集めたレンズ群は,これからも何十年と,働いてもらいます。
きょうの画像はNCF PlanApo 100x (1.40) 160/0.17で撮影した,DL-TESTとしてマウントされた珪藻。画像一枚目はディプロネイスの微細構造,二枚目はピンヌラリア,三枚目はニッチア,四枚目はスタウロネイス(ジュウジケイソウ)です。完璧とはいえませんが,レンズの性能が十分にひきだされているといってよいでしょう。もし,本ページの読者の方々で,その時代時代に作られた最高級の対物レンズをお持ちの方は,ぜひ,光学的に正しく作られた珪藻標本を検鏡してみてください。珪藻を覗く人たちが,なぜ,時代を通じて最高の機材を使ってきたかが,実感できるかもしれません(画像/MWS)。
2015年2月28日
ここのところのレンズシリーズをご覧になった一名の方から,どうやって照明してレンズを撮影しているのだろう思っていますという,ご感想を頂きました。自分で試したことのある人でなければ発生しない観点だと思います。まさにその通りで,机の上に並べた対物レンズを,机の上に置いたNikon1で撮影しているのですから,このような絵にはならないのが普通です。光り物の撮影は照明がキモです。金属面の刻印やプリントが読み取れるような,複雑な照明を施しているのです。当サービスのユーザーさんは,このように,レンズ画像を一目みただけで,筆者が何かをやっているということを読み取ってしまう,そんな感性の方々が多くいらっしゃいます。そういう方に「見られる」ことを念頭に置いた上で,毎日,画像をアップしているわけです。そこのところは真剣勝負で,脳みそが鍛えられるので,本当に有り難いことと思っています。論文でも,本でも,ホームページでも,画像でも,よりよいものにしようと思ったら,「レベルの高い人に見てもらう」以上の方法はないからです。
ところで,きょうの画像はオリンパスの有限鏡筒長(TL=160mm)の対物レンズ。オリンパスはUVでも使えるアポクロマートを多数揃えていて,蛍光画像の取得には優れた性能を発揮するものでした。もちろん一般検鏡でも高性能で,使いやすいレンズでした。迷光処理も丁寧で,劣化していないものならとてもよいコントラストで見えました。しかし中古流通しているものは,経年劣化が進んでいるものも多く,耐久性を第一に考える筆者とは相性がよろしくありません。たくさんのレンズを使ってみましたが,現在は,手持ちのオリンパス最高級レンズ群は無期限で水産系の研究機関に貸し出ししています。画像に写っているのは残された少数のレンズですが,とんがったスペックのものがいくつかあって,たまに出番があります(画像/MWS)。
2015年2月27日
当サービスの保有する業務用機材は,ほとんどがニコン製品です。MWS開業よりもはるか昔に,最初に手にした研究用機材がSFR-Keで,その古い顕微鏡にNCF PlanApoを付けて使い,その後にBIOPHOT,FLUOPHOT,DIAPHOTと増殖してきました。顕微鏡で研究や仕事をするとなると,どうしても必要なレンズが出てきて,それらのレンズを揃えていくうちに後戻りできなくなって,一つのメーカーさんの機材を揃えることになります。
しかしながら,全てのレンズを揃えたところで,そのメーカーさんが作っていないレンズが必要になることもあります。そのようなときは,メーカーの垣根を越えて,別のメーカーさんの機材を使うことになります。きょうの画像がその例で,有限鏡筒長(TL=160mm)の対物レンズで,カバーグラス水浸や,多重液浸レンズは国内のメーカーさんは作っていなかったので,ツァイスさんに頼ることになります。幸いなことに,ニコンとツァイスとでは,鏡筒長も同じですし,レンズのネジ径もRMS規格で同一ですので,問題なく取り付けることができます。しかし倍率色収差がニコンでは対物レンズ単独補正なのに対し,ツァイスではコンペンゼイション方式ですから,接眼レンズもツァイスの対応するものを用意する必要があります。組み合わせさえ正しければ,ニコンの鏡基にツァイスの対物レンズを取り付けても,素晴らしい像を結びます。
イメージングするときが問題ですが,この種の高度な検鏡を行うときは単色光を使うことがほとんどなので,倍率色収差は無視できます。カラーでの撮影が必要な場合は,マッチングのよいリレーレンズを探すか,そうでなければ,正しい組み合わせの接眼レンズを用いて,コリメート法で撮像することになります。
ちなみに,カバーグラス水浸とは,水で封入した物体に対して,水でイマージョンして対物レンズとカバーグラスを連結する方法です。通常の油浸対物レンズは,ガラスと同じ屈折率で封じられた物体に対して球面収差が補正されているので,水で封入した物体を検鏡すると巨大な球面収差が発生して,少しでも水に沈んでいれば像のコントラストは極端に低下します。カバーグラス水浸対物レンズは,水にマウントした物体に対して収差補正されているので,多少厚みのある水膜を通して検鏡してもよい像を結びます。
多重液浸レンズは,イマージョンオイル,グリセリン,水のどれで液浸にしても使用可能なレンズです。それぞれの浸液で球面収差が異なりますので,補正環で調節します。筆者がこれらの特殊液浸レンズを2本持っているのは,カバーグラス水浸で検鏡して,倍率を低くしたいときに水浸対物が必要なので,多重液浸レンズも揃えたというわけです。しかし困ったこともあって,ニコンのレボルバにこれらのレンズを並べて装着すると,バレルが太すぎて,あと一歩のところでねじ込めないことがあります。なので,とびとびに装着せざるを得ないこともあり,ちょっと美しくない気もします…。
これらの特殊なレンズは,無限遠補正系を各社が導入するようになってから,四大メーカー全てから販売されるようになっています。昨日の画像にもその一例を示してあります。中古の光学機器を入手するのは本当に骨が折れるので,新品で容易に入手できるのは有り難いことです。容易な価格ではありませんが…(画像/MWS)。
2015年2月26日
ここのところろレンズ紹介はニコンCF,NCF対物レンズを中心にお伝えしてきました。しかしこれらのレンズは90年代後半に製造が終了し,新しい別のシステムに代わってしまいました。それらがきょうの画像で,ニコンCFI60システムです。レンズ設計は有限鏡筒長(160mm)から無限遠補正になり,同焦点距離は45mmから60mmに変わり,レンズのねじ込み径も変更になっています。これにより,両者の互換性はなくなりました。1970年代半ばに同焦点距離33.6mmから45mmに変更して,二十数年後に再び45mmから60mmになりました。思い切ったことをやるものです。
無限遠補正系で同焦点距離が60mmになるということは,レンズ設計の自由度が増加するといって差し支えないものと思います。レンズを大型化することができれば,同じ設計でも相似的に大型化したほうが作動距離は大きくなります。作動距離が大きいレンズは,作動距離がコンマ何ミリという小さなレンズよりは使いやすいでしょう。また,レンズのバレルに仕込めるエレメントの数も増加しますので,プランアポクロマートで色収差補正域をh線まで広げ,かつUV蛍光対応といったような高度な収差補正には,小さなバレルよりも設計しやすいというメリットもあるかもしれません。
このCFI60光学系は,スペック的にはNCF光学系と大きく変わりはありません。しかしながら,特に低倍域において,NCFとCFIを見比べると,何かが違うような気がします。何が違うのかはまだわかりませんが,遠近感というか立体感というか,違いを感じます。筆者はふだん,有限鏡筒長のレンズを使用しているので,CFI60はオモチャとしての利用ばかりです。「違い」の中身を理解するにはまだ時間がかかりそうです。
CFI60にも欠点があります。一つは,コストの関係でレンズの刻印を廃止してプリントにしたこと。剥がれてしまえば,レンズマニア以外には,何だか判らないということになりかねません。二つめの問題は,大型化に伴う質量の増加。6レボにプランアポクロマートをフルセットで装着すると,相当な重さになります。これを鏡基(アーム)に装着するのにはかなりな力が必要な上に,極度の緊張を引き起こし,心臓によくありません…。扱いに慣れた筆者であっても,何度扱っても,ひじょうに緊張するのが顕微鏡対物レンズというものです(画像/MWS)。
2015年2月25日
きょうの画像は長作動対物レンズの例。ロングワーキングディスタンスを略してLWDとも書かれます。超長作動はELWDと略記されることもあります。生物顕微鏡用の対物レンズは,通常は0.17mmのカバーグラスの裏側に貼り付いている物体に対して球面収差が補正されているので,カバーグラスの厚みが指定からずれると球面収差が出てきます。収差の度合いは低開口数レンズでは小さく,高開口数レンズでは非常に大きくなります。NA=0.25くらいの対物レンズであれば,1mmのガラスを通して検鏡しても,さしたる像の劣化は見られませんが,これがNA=0.4くらいになると無視できなくなります。倒立顕微鏡などでは,シャーレに入った物体をそのまま見たいケースもありますし,場合によっては三角フラスコの底を通して検鏡することもあります。
そのようなケースに対応するために長作動対物レンズがあって,対応するガラス厚さが決まっています。きょうの画像右側は20倍のELWDで対応NA=0.4,ガラス厚さは1.2mmです。だいたい,±0.3mmくらいなら良好な像を結びますので,シャーレの底を検鏡するにも好都合です。画像中央は40倍,NA=0.55で対応ガラス厚さは0〜2mmです。画像左は40倍,NA=0.7で対応ガラス厚さは0〜1.2mmです。補正環により対応ガラス厚さを変えられるので,いろいろな試料に対して正確な補正ができて,よい像を得やすいです。
この補正環付き長作動対物レンズは,本来の使いかたとは別に,水深1mmくらいの水を通して検鏡する際にも有効です。屈折率・分散が異なりますので完全な収差補正ではありませんが,この程度の開口数ですと比較的良好な像になります。また,補正環をゼロに合わせて,ノーカバー対物レンズとしても使えます。筆者のように,放散虫を乾燥状態で扱い,のちに封じるなどという日常の作業でも,一本の対物レンズで便利に使えたりします。
補正環付きレンズのよいことばかりを書いてきましたが,この種のレンズを使いこなすには,徹底的に練習することが大事です。ぱっと見て,補正する必要があるかどうかを見抜き,微少な補正を検鏡しながら素早く繰り返し,同じサンプルならいつも同じ補正量になる再現性を技術として身につけなければいけません(画像/MWS)。
2015年2月24日
きょうの画像は2光束干渉(ミロー型)のCF対物レンズです。このレンズの先端には半透鏡があって,半透鏡の内側にある第一レンズには小型の表面鏡が仕込んであって,照明光と物体から返ってきた光が干渉するような設計(ミローmirauの干渉計)になっています。金属顕微鏡に装着して,同軸落射の明視野観察モードで使います。白色光による干渉でも,単色光による干渉でも使えます。
この検鏡法により生じる干渉縞を見れば,物体表面の凹凸が定量的にわかります。単色光で縞のずれ具合を計測すれば,微少な高さを算出できるのです。実際に使ってみると,ひじょうに高感度で,振動などに影響されやすく,しっかりした据え付けの顕微鏡デスクでも,干渉縞がぷるぷると震えているのが判ると思います。振動には極度に敏感なので,一方向への可動部のある撮像システム(フォーカルプレーンシャッターやミラーなど)は,計測には使い物にならないだろうと思います。レンズをまともに使おうとすれば撮影システムまで見直す必要が出てきます。
二枚目の画像はこのレンズを用いて撮影した天然サファイヤ(奈良県産)の表面。見た目はきれいな平面のところを狙って写していますが,画像中心部を見ればわかるように,干渉縞が乱れていて,その部分に段差があることがわかります。台形に結晶成長が進んでいた様子もわかります。この段差は波長の数分の一程度と考えられるので,光学顕微鏡の分解能よりも小さな段差をとらえていることになります(画像/MWS)。
2015年2月23日
きょうの画像は生物顕微鏡用の位相差対物レンズの一例。レンズによる像は,透明物体なら透明な像が(理論的に)できます。透明なものを明暗のコントラストにできるなどとは,ふつうの人は考えないものですが,ゼルニケという人はこれを実現してしまいました。
レンズによる像は,物体により生じた回折光と,照明のゼロ次の光がレンズによって針路を曲げられ,再びであったところで干渉を起こして模様ができたもの,というような理解で定性的にはいいでしょう。このとき,透明な物体を通過したことにより生じた回折光は,ゼロ次の光と比べると,ほんの少し位相がずれています。しかし少々ずれたくらいでは明暗のコントラストにはなりません。位相のズレ量が小さいのと,回折光が全体の光に占める割合が小さすぎて,コントラスト効果がゼロ次光でかき消されてしまうからです。
この事情を理論的においつめたゼルニケは,ゼロ次光を,対物レンズの瞳面を部分的に通過するような光学配置(絞る)により弱め,さらに対物レンズのゼロ次光が通過する面に,位相が狙った通りにずれる膜を貼り付けました。この膜は光の吸収も行い,ゼロ次光と回折光の強度のバランスも調整しています。この工夫により,像面で出会うゼロ次光と回折光が,明暗のコントラストを生じるような位相関係になり,しかもそれぞれの光がある範囲でバランスしているので,高いコントラストを生成することになるのです。
考え方がじつにすっきりしていてエレガントですし,実用上も高い効果があるので,位相差法は現在でも,コントラストの低い水で封じたプレパラートなどの検鏡によく使われています。位相差法でよく見える物体は,対物レンズの位相板(吸収膜)に合った特性の物体です。ふつうに利用されているDLタイプのものは,水で封じたバクテリアなどにちょうどよい感じです。水で封じた珪藻の被殻部分にも適当で,繊細な刺毛などがはっきりと見えます。鞭毛などもよく見えます。
その一方で,明視野でよく見える場合は,位相差でよく見えるようにはなりません。例えば当サービスのリサーチグレードなどは,明視野でもよく見えるので,位相差でさらによく見えるようにはなりません。位相差コンデンサの環状絞りによって,かえって分解能は低くなります。Jシリーズは,種によっては,位相差でよりコントラストがつくものがいます。標本の性質をよく見抜いて使用することが肝要と思います(画像/MWS)。
2015年2月22日
きょうの画像は金属顕微鏡用のCF対物レンズの一例。対物レンズのCF化は生物でも金属でも同時に進行していたようですが,同じ時期に,これまで販売していた全ての対物レンズの規格を捨て去り,新たな規格を導入するのは,社運をかけた一大プロジェクトだったろうと想像します。最低でも数十本のレンズ設計を一からやり直し,全て過去のものを超える品質をクリアするのは当然ですし,レンズだけでなく,金物や鏡基の設計も全部関係してきますから,想像しただけでくらくらするような大仕事です。その一大事業は結局のところ大成功で,方針が正しかったことは歴史が証明していますが,対物レンズのCF化に関しては,かの有名な脇本氏が「方針」を作ったと聞いたことがあります。慧眼というのはこういうことを言うのでしょうか。
ところで,きょうの画像は金属顕微鏡用のM PlanシリーズとBD Planシリーズ。前者は同軸落射で使い,後者は同軸落射と落射暗視野の両方に使えます。同軸落射による検鏡では,対物レンズが照明光の光路にもなるので,迷光処理は優れています。表面を検鏡するためのレンズなので,ノーカバーで使います。低倍率のものは,鏡筒長を調節できる適当な筒にセットして,野外に持ち出して生き物のミクロ・マクロ撮影的なレンズとしても使えます(画像/MWS)。
2015年2月21日
きょうの画像はニコンCF対物レンズシリーズの蛍光顕微鏡用レンズです。上は乾燥系と油浸系,下はグリセリン浸系です。CF,NCF対物レンズを用いて(同軸)落射蛍光観察を行うには,蛍光用の対物レンズが必要です。特に,紫外線蛍光の観察では「絶対に」必要といっていいでしょう。
通常の対物レンズと蛍光用対物レンズの違いはいろいろありますが,まず,紫外線透過率が異なり,紫外線に対する耐久性が異なります。そして同じ倍率なら開口数が大きいので微弱な蛍光を明るく観察できます。色収差補正域も,フルオール系ならアクロマート系よりも若干よく,アポクロマートよりも劣るという程度です。
励起光が,おおむね,紫程度(約400nm)よりも長ければ,プランアポクロマートも蛍光用に使えます。明るく高解像な絵が得られます。アクロマートでも使えないことはないですが,像は暗く,見劣りする場合があります。CF,NCF対物レンズでやってはいけないことは,プランアクロマートやプランアポクロマートの対物レンズで紫外線蛍光観察を行うことです。レンズの接着剤に使われている樹脂が劣化して黄変します。もちろん紫外線だけでなく可視光短波長の透過率も悪くなります。蛍光用対物レンズは,強い紫外線に晒されても,レンズが劣化しにくいようにできているのです。
こういった知識も,カタログや価格表,顕微鏡の本を読んでいる人には当たり前のことですが,大学の研究室などでは当たり前でないことがあったりします。本ページをご覧の方々には釈迦に説法状態なのですが,本ページに興味を持てない人々には,なかなかレンズの正しい使い方は浸透しないような気もしています(画像/MWS)。
*1 ある総合大学の水圏系研究室では,UV蛍光にプランアクロマートを使ってバクテリアのカウントをしていました。蛍光が暗くてよく見えないので,夜中に,電気を消して,段ボールをかぶってバクテリアのカウントをしているということでした。そこの大学院生2名からのSOSを受け,尋常な事態ではないので研究室を訪問して顕微鏡を見てみれば,確かにプランアクロマートがついており,外してみると内部が変色していました。これでは励起光は通過しません。こんな機材の扱いで論文を書いている研究室があるわけです。
その研究室にはUV蛍光に対応した対物レンズが一切なく,その顕微鏡を使って水圏のバクテリアを調べている修士課程の学生さんがあまりにかわいそうだったので,手持ちのUV対応プランアポを2本(乾燥系と油浸系)を差し上げました。紫外線蛍光の見えは,東京23区内からの星空と,富士山頂で見上げる星空くらいの違いは明らかにあったことでしょう。その研究室のボスからは,どうもというメールが一通あったのみで,研究機材の問題点は理解していないようでした。
勉強しない学生さんも問題ですが,機材のことを全く理解していないボスというのはもっと問題です。不幸にしてそのようなボスのもとに配属されてしまった学生さんは,自分で勉強して正しい知識を身につけざるを得ないという,問題解決能力的にはよい環境です。しかし,正しい知識に到達して,それでボスにリクエストして,正しい機材(この場合は蛍光用対物レンズ2本,約30万円)を購入させる頃には,修士課程や博士課程でも相当の時間が過ぎ去っていることでしょう。その研究の命運を左右するデータは,どんな機器から出ているのか,その機器が正しく作動しているのか,そういう観点が欠落しているボスは,研究室の効率的な運用の妨げになっている可能性があり,要注意です。
*2 蛍光用対物レンズでもUVで劣化しないわけではありません。あるメーカーさんの蛍光対応レンズは,万能に使えて,色収差補正もよく,とても便利でよく見えるのですが,UV蛍光を常用しているとかなり劣化が進みます。出先でそのレンズがついている顕微鏡を見ることも多いので,外してみて,すかしてみると,レンズが褐色に変化しているケースをけっこう見かけます。別のメーカーさんのレンズでは,そのようなケースを見た覚えがなく,メーカーによって考え方が違うものだなぁと思わされます。
*3 画像二枚目のグリセリン浸対物レンズは,設計がやや古いこともあって,盛大な像面湾曲があります。平坦な物体に対しては,視野中心部しか使い物になりません。しかしその像特性を知っていれば,今でも出番があります。当サービスのリサーチグレードの紹介画像では,一部のものに,このグリセリン浸対物レンズで撮影したものがあります。ウチのプレパラートは,最高級のレンズでなくてもよく見えるよ,ということをさりげなく示していたりします。(^^;
*4 グリセリン浸対物レンズの40倍だけ,背丈が高いことに気づかれたでしょうか。これは「落とし込み絞り」のためです。レンズのリヤ側に絞りがねじ込めるようになっていて,それでNA=1.3からNA=0.8にできます。これを知らずにそのまま使うと,NA=1.3と思いこみながら,実はNA=0.8のレンズを使っていたという微笑ましいことになりますのでご注意を。なお,これで絞り込むと像面湾曲は少し改善し,40倍NA=0.8の液浸レンズとして,そこそこ使える気もします。
*5 ここのところレンズ画像を掲載しているのは,仕事上の都合でCF,NCF対物レンズの画像が必要だったからです。レンズ並べをしてニマニマしているのでは,けっしてありません。。
2015年2月20日
きのう紹介したCF対物レンズは大きく分けて2つのタイプがあります。一つは初期の「CF」で,もう一つは後期の「NCF」です。NはNewの略だと思いますが確かめていません。きょうの画像で両方のタイプを示していますが,一枚目がCFプランアポクロマートで二枚目がNCFプランアポクロマートです。画像三枚目は,当時のカタログで,CFとNCFが両方記載されているところを写しています。
なぜこのようなことを書くのかというと,5,6年前くらいから,レンズの好きな方と話をしていると,NCFのことをCFNと言う(書く)人にたびたび遭遇するからです。正確な情報をお届けしている本ページでは,少なくとも国内では,NCFが正式名称であることをお知らせしたく思うのです。
ではなぜCFNという呼び方が生まれたかというと,たぶんそれは海外の資料だけをご覧になっているからと推測します。ニコンは不思議なことに,海外ではNCFをCF N(スペースを一つ入れる)と略記しました。英語的には,CFで意味がきちんと通用しているところで,NCFにしてしまうと,新しい収差補正方式と思われても困るとの解釈があったのかもしれません。それでNewのNはスペース一つおいて,CF Nとなったのかと。
ニコン生物顕微鏡のカタログは研究機関等にしか存在しないのがふつうなので,一般の方の目に触れることがほとんどありません。それでPDFファイルなどを探すと,海外のカタログが見つかったりして,そこにはCF Nと書かれています。またebayなどでもCF Nと書かれているものが多数あるので,これを見た人が,CFN(スペースなし)と略記するようになったものと想像します。
どうでもいいことのようですが,カメラなどでも,機種名はひじょうに重要でしょう。レンズでも,メーカーがカタログに記載しているとおりに呼んだ方がよいと思うのです。以前,先端的な顕微鏡収集家とお話ししたことがありますが,その方々でCFNという用語を使っている人はいませんでした。
ところで,このCFとNCFの対物レンズ。新設計の方が優れているのは当然かもしれませんが,実際に使ってみると,像質も使いやすさも異なっていて,全て新設計でOKという感じでもありません。旧設計で良いと思うのもあって,20,40,60倍のプランアポは像質も優れてじつに使いよいです。最近のプランアポは20倍でNA=0.75というのが多いですが,この開口数は標本によっては球面収差が目立ちやすいので,NA=0.65に抑えられている旧設計の方がトータルとして像質がよいと感じられる場面もあります。この辺りは,レンズの開口数と倍率のバランスという奴で,メーカーによっていろいろな組み合わせがあります。
このバランスは結構重要で,珪藻を撮影するときはNA至上主義でもいいけれども,放散虫を撮影するときにはむしろNAを落として撮影することも多く,同じ倍率でも開口数の異なるレンズを使う場面も出てくるのです。レンズが増殖してしまう一つの要因です(画像/MWS)。
2015年2月19日
日本光学(株)は1970年代半ばに,対物レンズ単独で,倍率色収差を取り除いた「CF対物レンズ」を世界ではじめて完成させました。きょうの画像がその一例を示していますが,従来の,接眼レンズと合わせて倍率色収差を補正する(コンペンゼイション方式)必要がなく,対物レンズ単独で結像させても使い物になります。とうぜん,接眼レンズも単独で倍率色収差は補正してあるものをペアで使います。
同時期の他社製品はみな,コンペンゼイション方式だったので,対物レンズには倍率色収差を残してあり,接眼レンズに逆の倍率色収差をもたせて,打ち消していました。しかも,倍率色収差の残し具合は各社で異なるので,対物レンズと接眼レンズは必ず同じメーカーの指定の組み合わせにする必要がありました。
こういったことは必ず説明書に書いてあり,光学顕微鏡をつかうものとして基本中の基本知識といって差し支えないほどのものですが,なぜか,研究機関や教育機関に出向くと,一つの鏡基に各社のレンズがごちゃごちゃと混ぜて装着してあり,接眼レンズはそれらの対物レンズの一部にしか対応しないものがついていたりしました。たまにならいいのですが,相当な確率で出会うので,基本中の基本も,ほとんど守られていないというのが現状なのかもしれません。
なぜ基本が守られていないのかは,何となく想像がつきます。その組み合わせが正しいか否かは,光学的に正しい標本を検鏡して調べる必要があるのです。日々の業務で覗くような,組織切片や,色々なものが含まれた試料などを覗いても,視野の中に大量の物体が存在していて,それらのピント深さもまちまちまので,多少の収差は気づくことなく見過ごされるでしょう。たぶん,そんなことが起きているのではないかと思うのです。もし,珪藻プレパラートや,方眼の対物ミクロメータなどを検鏡すれば,観察眼のある人なら「何かがおかしい」ことに気づく可能性も高いと思います(画像/MWS)。
*1 それ以前に,「説明書くらい読めよ…」という話ではあるんですが。。
*2 大学院生の頃,往復の中央線の中で,説明書とかカタログとか読んでいたものです。ふしぎなことに,光学製品のパンフレットなどは没頭して読むことができて,超混雑の車内でも時間を苦にしないことが多かったように思います。
*3 わざと正しくない組み合わせを使用することもあります。筆者は携帯顕微鏡H型にCFW10xを付けて供覧顕微鏡的に使うこともよくありました。これは倍率色収差補正からは正しくないですが,それよりも,目レンズの大きさとハイアイを優先したためです。分かっていて使う分にはOKです。
2015年2月18日
筆者お気に入りの郵便局は,地下鉄の駅のそばにあります。最寄りはJRの駅の方に歩くのですけど,そっちは,同じことを頼んでも時間がかかり,面白くないので数回行ってやめました。地下鉄そばの郵便局は,局員の方々がいつもニコニコ,てきぱきと仕事をされていて,1回行っただけでファンになりました。それから数年,筆者はうわきはしないのです。
「はい,どうぞ」
「レターパックプラスを,にじゅう下さい」
「にじゅうね。一万二千円になります」
「しばらく振りじゃない?」
「えーと年末に一回来た」
「今年に入って初めてよね?」
「アベノミクスの恩恵を受けていないんですよ(笑)」
「はい,それじゃ先にお品ものと…」
「アメノミクスの恩恵と,レシートね(笑)」
「おおっ,これはすごい。どうもー」
「ありがとうございますー」
本当に素敵な局員さんで,いつも一枚上手で話し上手なのですが,きょうの30秒一本勝負もストレート負けでしたー。頭の回転がすばらしくて,プロの極めた仕事は大したものだと敬服するのです (画像/MWS)。
2015年2月17日
たぶん気のせいだと思うのですが,当サービスのお客様や,本ページの読者の方々の中には,珪藻や放散虫などよりも,光学機器そのものを愛好する方々おられるような気もするのです。なんでそんなことを思うのかというと,それはわかりませんけど…レンズを並べると嬉しさが発生するのは子どもの頃に発見しましたー (画像/MWS)。
2015年2月16日
これは波長850nmで撮影した放散虫。対物レンズはNA=0.65のプランアクロマート40倍。色収差補正域からはずいぶん外れますが,単色光によるイメージングなので問題になりません。問題となるのは球面収差ですが,この程度の波長ならそれほどは悪化しません。経験的には近赤外のイメージングは,近紫外のイメージングよりも素性がよい感じがしています。この画像で見るべきところは,まともな顕微鏡照明を施した像になっていること。パワーLEDとはいっても,発光部は小さいのです。その小さな結晶の発光部で対物レンズ瞳面を充足した照明が施されているからこそ,まともな絵になっているわけです。画像だけ見ればただの放散虫かもしれませんが,そこにはいろんな技術が込められています(画像/MWS)。
2015年2月15日
国立科学博物館の『ヒカリ展』も残すところ一週間となりました。きょうの画像に示しましたように,何だかワケの分からない,しかし凄そうな装置が展示されていたりするので,わけのわからなさを楽しみたい方など,このチャンスを有効活用しましょう。出張で都心に用事のある方は,仕事で時間があまったら科博,そんな時間の使い方もよいかもしれません(画像/MWS)。
2015年2月14日
珪藻や放散虫の在庫の中には,どうしても壊れたものや,品質の低いものなどが混じっています。封入作業中にそういった欠点をなるべく見つけて,A品に混入しないように分けて取り出したりもしています。しかしここに来るまでにも,かなり手間がかかっているので,何となく捨てるのはもったいない気もして,こういった材料を使ってデザインの検討などを行うこともあります。きょうの画像がそれで,放散虫と珪藻の相性を調べてみたものです。操作時の課題とか,できあがったもののコントラストの状態とか,実際に作らなければわからないことがあるので,こういったテスト封入は大事な仕事です。失敗しても問題のない材料を使うと,多少は気楽にできるので,品質の低いものにもちゃんと役割があるんだなぁと思ったりもします(画像/MWS)。
2015年2月13日
赤色が得意なリコーCaplio GX8で850nmのLEDを撮影してみました。ホワイトバランスは曇天ですが,やはり紫色に写ります。RGBのBが近赤外の光を透過している模様です…。それで思い出したのですが,今から10年前に,同じカメラで赤外透過フィルタで蛍光灯を撮影したのです。そのときに紫色に写ったので,近赤外は紫に写るものという認識はあったはずなのです。画像二枚目がそれで,10年前のものです。このときにも紫色に写る理屈を考えて納得していたはずなのですが,全く思い出せません。明らかに脳みその劣化で,うなだれるより他はありません。。
画像二枚目をよくみれば,明らかに,フィラメントの加熱部が明るく写っていて,近赤外の像となっていることを暗示しています。使用したフィルタは紫外部や青を完全にカットしますから,紫色に写る理由は,RGBのBが近赤外を透過したこと以外には考えにくいと思います。さらに筆者は,この体験と同じ頃,市販の青セロハンなど染料系の青色の透過特性を測定していて,市販の青セロハンは近赤外を透過することは知っていました。赤セロハンも近赤外を透過するので,両方重ねると,実用性はさておき,近赤外用フィルタのような透過特性になることも確かめていました。
こうした経験/知識があったにもかかわらず,脳みその中で離散的に処理され,しかも一部は揮発している有様で,これはまずいですね。日々勉強して,「バカにならない」ためのささやかな抵抗を試みるしかありません(画像/MWS)。
2015年2月12日
昨日,赤色に光るLEDがすみれ色に写ってしまうことを書きましたら,読者から指摘のメールをいただきました。それによると,
LEDではなく炭の炎が紫に写るというのは結構話題になっていて、近赤のせいだろうという話になっていると思います。青色透過のフィルターに何を使うかですが、有機系の色素で青く見えるものは、近赤を透過してしまいますので、その手のものを使っている場合には強い近赤は感じてしまうだろうと思います。(一部,筆者編集)
ということだそうです。昨日は明示しませんでしたが,昨日の画像に写っているパワーLEDのピーク波長は850nmなのです。まさに近赤外が紫に見える現象です。なるほどそれならば,RGBのRとBに少しずつ感度があるために紫になったものかと納得です。全く気づかなかったことで,読者の深い学識に脱帽です。このように,「本日の画像」には恐るべき鋭眼をお持ちの読者がおられまして,それこそが,筆者がもっとも有り難いと感じることでもあります。
で,きょうの画像はリコーCaplio GX8によるツリー。昨日と同じ被写体で同じ日に写しています。明らかに赤と黄色の色再現がまともです。2005年に入手したお散歩カメラですが,この絵を見ると,まだまだ現役にしたほうが良いような気もします。最近はNikon1がお出かけカメラになることも多かったのですが,GX8の巻き返しが始まった感じです(画像/MWS)。
2015年2月11日
画像一枚目のLED,左側は通電していないので光っていませんが,右側は赤に光っているのです。どういう赤かというと,まぶたを閉じたまま太陽の方角を向いたときのような色です。ところが,Nikon1で撮影すると,画像のように,すみれ色に写ってしまいます。謎な現象です…。
赤の再現性がわるいということには以前から気づいていて,それは昨年11月23日に撮影した画像二枚目に示されています。この画像で写っている奥の方の赤いツリーは,ふかーい赤色なのです。それがどのようにしても再現されません。もちろん,オートホワイトなど使いません。色々な設定で写してみても,赤の再現だけはよろしくないのです。本ページの読者であれば,新宿駅南口にあったこのツリーを,思わず撮影してしまった方も多いことと思います。見比べて見ればよくわかるかと思います。
たぶん,Nikon1は,画像処理エンジンと,ローパスに仕込まれている赤外カットの関係で,赤色単色光の長波長側が可視領域にもかかわらずカットされているのではないかと想像します。ほかのカメラでも見てみましたが,そのときの手持ちカメラで,再現という点では,カシオ(2010年)>リコー(2005年)>ニコン(2012年)でした。カメラは新しければいいというものでは,ありません。なお,Nikon1でも単色光でなければ色再現は良好です。例えば,紅葉などの赤はよく再現されています(画像/MWS)。
2015年2月10日
たのしい電子工作が完了しても,それが使い物にならなければ意味がありません。顕微鏡のランプをLED化してくれる業者は世の中にたくさん存在しますが,それらの業者さんのどのくらいが,顕微鏡光学の知識を持っているかは不明です。ホームページを見る限りでは,高分解能の顕微鏡照明を満足するような知識・精度でLED化の改造をしてくれると読み取れるところは見つけていません。実際には技術も知識もあるのかもしれませんが,その証拠となるイメージング技術を開示してくれないと,信用するわけにはいきません。
当サービスは最高レベルの標本製作技術・イメージング技術を誇りますので,たのしい電子工作の結果も,きちんと検証することができます。きょうの画像はその一例で,倒立顕微鏡の光源をLED化したものです。LEDは各種の波長に交換可能となっており,光学的に理想的な照明ができるように設計されています。画面に映し出されている放散虫は,近赤外によるイメージング例で,可視ではまったく見えません。可視波長を超えると,顕微鏡対物レンズの球面収差も大きくなりますし,フィルタ類もマッチングを考慮しないとまともな像が見えなくなってしまうので,無収差像を熟知した上でチューニング的な追い込みができる技術が必要です。筆者は,こうした改造をするときには,技術的にそれが可能なことを分かった上で仕事に取りかかっているわけですが,それでも,モニタに予想通りの像が映し出されると,ほっとします(画像/MWS)。
2015年2月9日
これは,希少な放散虫を拾い出すための元試料。珪藻化石を薬品に漬けて処理しているところです。容器は500mlのペットボトル。恐るべき量で,果たしてこれの処理が完了する日がくるのか?と,想像したくない気分です。しかし昨年末に販売した放散虫スライドの希少種や新種報告間もない種などは,このような,誰もが嫌がるような作業を完遂して多数確保が可能になったものです。安定供給のためには,一度は力業でえいやと重労働をこなすことも必要になってきます(画像/MWS)。
2015年2月8日
電子工作というのは,論理的な製作物ですので,正しい設計を行い,必要な材料をもれなく集めて,理屈のとおりに組み立てれば,作りたかったモノができあがります。そういった意味では,まことに精神衛生的に良い作業という感じもします。きょうの画像は25Wまで対応するLEDの調光つき低電流電源。予定通りに動作するとじつにうれしく,筆者が幼少の頃にこういった工作をしていたなら,今頃は電気関係で働いていたかもしれません。。
標本製作も理屈の上では論理的な製作物のはずです。しかし珪藻を扱っていると,論理を超越した原因不明の現象に次々と出くわし,考えた通りに全ての作業が完了することなど,まずあり得ません。トラブルの度に修正を繰り返し,対処方法を考えて前に進む感じもします。将棋が,あれだけたくさんの対戦がなされていても,未知の領域に進むように,珪藻を並べるという作業も,無限の組み合わせからできているのでしょう。
そう考えると,定期的に電子工作や分光器いじりをやりたくなるのは,脳みそがリラックスモードを求めているからなのかもしれません(画像/MWS)。
2015年2月7日
えーと筆者はプレパラートを製作するマウンターのはずなのですが,机の上はほとんど電気屋さん状態です…。顕微鏡のイメージングを深く追求すると,必然的に光の制御が必要となってくるので,LEDの工作とか,電源回路の製作とか,そんなことも必要になってくるのです。イメージングを追求していなくても,珪藻の処理や拾い出しに適当な光源を探すと,やはりLEDに行き着いて,電子工作をする羽目になります。光源関係の工作では,当然,ランプハウスの加工なども必要になりますし,LEDや電源回路の放熱も考えなければいけませんから,金属工作も少しくらいはやらないといけません。
こういった作業は大変ですが,それなりにやり甲斐もありますし,結果も出るので,技術や知識を身につけておいて損なことはないと思います。ただ困ったことは,何でもできるようになると,何でもやりたくなってしまうので,最終的には「時間」をどう配分するかが問題になってきます。筆者は,プレパラートを製作するマウンターのはずなのです…(画像/MWS)。
2015年2月6日
これはヨーロッパのどこかで,約100年くらいまえに流通していたであろうプレパラートを撮影したもの。典型的な珪藻化石の標本で,海産珪藻と海綿骨針がたくさん入っています。珪藻はほとんどが壊れていますし,破片や鉱物なども多いのですが,珪藻の不可思議さを伝えるには十分で,当時でも人気があったのだろうと想像しています。いや,当時の方が人気があったのかもしれません。
20年前に珪藻の勉強をしようと思えば,図書館に行ってもまともな本はほとんど存在しないという状況でした。むかしはさらに情報が少なかったわけで,珪藻を顕微鏡で覗いたときの驚きは今よりも大きかったかもしれません。また,現代はweb上に珪藻の情報があふれていますが,それ以上に,種々雑多な情報が氾濫します。それらの雑多な情報に希釈されて,一般の人が珪藻という情報にありつくチャンスは,むしろ昔よりも減っている可能性もあります。
一世紀前のプレパラートを見ながら,そんなことを思うのです(画像/MWS)。
2015年2月5日
先日入手した青LEDのテストをしてみました。プレパラートは当サービスのSKK-01です。対物レンズはNA=0.95,コンデンサはNA=0.65,130万画素のモノクロCMOSでの撮像です。画像をみてわかるように,十分な写りです。以前はこういったモノクロイメージングをするには,ハロゲン100Wの光源に干渉フィルタが必要で,波長別に干渉フィルタを揃えると費用がかさんで大変でした。それが,単色で光る光源ができ,しかも安価に入手できる時代になってしまいました。じつに有り難いことですね(画像/MWS)。
2015年2月4日
大洗アクアワールド水族館で,プランクトンに関する企画展示が行われています。画像は大洗水族館HPのスクリーンショットですが,国内のプランクトン専門家から集めた画像を展示している模様です。
こちら
企画展としてプランクトンに焦点があてられることは結構,珍しいのではないかと思います。少しばかり遠いところにありますが,お近くの方,付近でお仕事のある方,大洗−苫小牧航路に乗船の方など,立ち寄ってみても面白いかもしれません(画像/MWS)。
2015年2月3日
千石電商で購入した青3WLEDを,さっそく点灯試験。最近は素子だけ売っているので,放熱基板には自分でセットする必要があり,手間がかかるようになってしまいました。スター型の基板は,裏面を平面研磨して,表はエタノールで清拭します。これをシリコンゴムの上にのせて貼り付けます。中央部のLEDとの接触部分にシルバーグリスをほんの少しつけて,エタノールで拭いたLEDを載せて圧着します。そうしたら動かさないようにして,接点をハンダ付けします。両側ハンダ付けして固定できたら,今度はLED素子を基板に圧着しながら片方ずつ,ハンダを付け直します。これによって数μくらいの浮き上がりをなくします。
こんなことを日付も変わってしばらくした頃にやっているのですから,MADな感じもしますが,こういった作業は気乗りするときにさっさと片づけないといつまでもやらなくなってしまうので,MADでいいのです…。無事に点灯するとホットします。色を見て波長を予測し,鍛えられた筆者の目には,450nmを切っているように見えます。そこで分光測定すると,ピーク波長は443nm。すばらしい。これならg線(約436nm)用のバンドパスも使えそうです。
モノクロのイメージングでは各種の単色光光源を使い分けますが,g線くらいのもので良い光源がなかったので,これまではLumileds K2 emitterの白色にバンドパスフィルタを入れて使っていました。今回入手したものはフィルタなしでも十分な波長純度で,明るく,発光面積もそこそこ広いので,高倍率のモノクロイメージングに重宝しそうです。440nmという波長は,当サービスのリサーチグレードプレパラートで使える短波長側の端っこに近いのです。この波長で明るい光源があれば,より高解像に,より鮮明に,より滑らかな絵が得られる可能性も高まります(画像/MWS)。
2015年2月2日
土曜日は,東京郊外で用事を済ませたあとに,秋葉原でパーツを仕入れて帰りました。ここのところ電子工作関係の作業が続いているので,ひとまとめにしてしまいたい仕事があって,足りないパーツや今後必要になる部品を予め仕入れるのです。夕方にお茶の水に着いたので,そのまま歩いてまずは秋月電子。土日は混んでいるので遠巻きに眺め,買い物は平日。次は千石電商でLEDや電線。あとはマルツやヒロセテクニカルなどをちらっと見て,あきばおーを覗いて,用事終了というのがいつものパターンです。
今回は,ビーカーもついでに買おうかと覗いた鈴商の向かいの店で,ディスポの吸光度測定セルを発見してしまい,即買いとなりました。ポリの遠沈管も売っていて,これも即買い。通常は理化学機器の販売店から購入しますが,数百とか千個単位のものも多く,多すぎるのです。ばら売りは貴重で,見かけたら飛びついておいて,まず,損なことはありません。吸光度測定セルは,「何に使うのかわかりません」と言って売られていましたが,そりゃそうでしょう。でも,両面が並行平面で透明なプラ容器と考えて,それを何に使おうが自由です。使い途はいくらでも浮かびます(画像/MWS)。
2015年2月1日
東京郊外に用事があって中央線に乗ろうとしたら止まっている…。最近は,たまにしか乗らないのに,やっぱし筆者は運気のない人間なのだとうなだれていると,アナウンスが。
「先ほど,吉祥寺付近におきまして,線路内に障害物があったとの報告により中央線は運転を見合わせております。この電車,快速豊田行きはしばらく止まります。先ほど,吉祥寺におきまして,風で飛ばされた布団が線路内に落ちているとの通報があり,中央線は各駅に停車しております…」
まぁ,途中の線路まで駅員が走っていって,落ちている誰のものかもわからない布団をかついて駅まで戻り,安全確認して復旧。なかなか大変な作業です。ひょっとすると,布団は遺失物扱いで処理されるかもしれず,そうするとまた一段とご苦労なお話しになってしまいます。。などと考えていると,まぁ,仕方がないかと思えるようになり,新宿駅で抑止されている快速豊田行と快速高尾行を撮影したりもしたのでした。
で,何がいいたいのかというと,情報は大事だということ。『布団』のひとことがあるかないかで,待たされる方の気分はまったく異なるのです(画像/MWS)。
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