画像のご利用について   サイトマップ





本日の画像

ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


【2018年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月
【2017年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2016年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2015年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2014年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2013年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2012年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2011年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2010年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2009年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2008年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2007年】  9月  10月  11月  12月

【今月にもどる】 




お知らせ
 

仕事が飽和しているため,納品等が遅れております。現在のところ解消の目処はたっておりません。すみませんが,短納期のご希望には添えないことがありますことをご承知下さい。






2018年10月31日




これは大型のクチビルケイソウ(Cymbella janischii)の中心部分の微細構造。油浸,対物NA=1.4での高解像DIC撮影。この珪藻は表面の開口形状が独特で,それより内部の構造と全く異なります。透過明視野絞り込みでは内部構造も表面構造も重なって見えるので,表面の構造を知ることはできません。しかし光学顕微鏡でも幾つかの方法で表面の開口形状を知ることはできます。きょうは高解像DICでの作例で,この珪藻の持つ独特の入り組んだスリット構造やひねくれたS字状の開口模様の様子が現れてきています。これらの構造の寸法は光学顕微鏡の解像限界付近なので,こういった構造を狙うには,NAobj/NAcod=1程度の条件をまず満たすことが重要で,そこからどうやって構造にコントラストを生じさせるかを考えるのです(画像/MWS)。








2018年10月30日




これは刃渡り0.5mmくらいのマイクロナイフ。これをどうやって作るのかという問い合わせがありましたので,簡単にご紹介。材料は太さ0.5mmのピアノ線かステンレス線を使います。ピアノ線は炭素鋼なので切れ味がよろしいですが錆びます。ステンレス線はピアノ線よりも柔らかいですが,顕微鏡下での切断では充分実用になります。

これらの線材は0.5mmのシャープペンシルにセットして,適当な長さを出します。プロクソンにダイヤモンド鋸をつけて回転させ,刃の部分ではなく,面の部分に線材をあてて平らにします。反対側も平らにして線材を薄板にします。このときシャーペンのロゴなどを見て角度に注意すればけっこう正確にできます。

薄板ができたら,そのままダイヤモンド鋸で荒刃をつける気持ちで研ぎます。形状は日本刀の先端のようになることを目指します。ダイヤモンド鋸ではかなり荒削りなので,だいたいの形ができたら終わりにします。次は石研ぎです。シャーペンにセットしたまま,先端をシャプトンオレンジで刃付けします。先端にきれいなアールをつけなくてはいけないので,先端を反り返らせるようにして曲線的に研ぎます。この段階で荒刃を出さないと,いつまでたっても刃がつかないので,先端が研ぎ減るくらいの感じで形を作ります。

アールがついたら耐水ペーパーで研ぎます。空研ぎで充分です。ペーパーはシリコン版や木の板の上に置いて,多少の弾力をもたせながら,蛤刃になるようにします。#2000,#5000と研いだら,実体顕微鏡で確認します。ゴム板の上でホコリの繊維一本を切ってみて,全く切れないようなら#2000または石研ぎからやり直し。切れるようなら,ラッピングフィルムで#8000,#20000で仕上げます。

ラッピングフィルムで仕上げても,微小なカエリが残っていることが多いので,コピー用紙に刃先を斜めにあててカエリを取り除きます。なお,慣れれば仕上げ研ぎは肉眼で行えますが,自信のない人は実体顕微鏡下で刃先が当たっている部分を確認しながら研いだ方が確実です。試し切りはホコリ一本。ゴム板やプラ板の上で,ポキポキと折れるように切れればOKということにしています。

このようにして作ったマイクロナイフは,シャーペンにセットして使いますが,シャーペンの銘柄によって使い勝手が激しく異なるので,いろいろ試してみるのがよろしいと思います。慣れれば蚊の羽根を外したり,蚊の口器を分解して針や細い管を取り出したりといった,0.1mmレベルの切断操作ができるようになります(画像/MWS)。








2018年10月29日






これは以前にも紹介したAuriculaと思われる珪藻の被殻。分解能検査に適していることも既に述べましたが,きょうは異なる対物レンズによる比較画像。上の画像はNA=0.75の位相差対物レンズ(ph3)。下の画像はNA=1.4の高解像DIC画像。対物レンズのNAによってどのように解像が異なるのかが,はっきりとわかる作例となっています。低NAの画像では,細線が分岐しているところの部分がダマのように太い組織として表現されていますが,高NAで見ればその部分は細線が細いまま分岐していることが明らかです。

このように,低NAの解像というのは,結像に関与する回折光をカットしてしまうので,ある意味,ウソの絵を吐き出します。ですので,低NAの観察結果だけを信用して構造を記述するのは宜しくないといえます。高NAで確認して,微細構造の再現性の信頼性を確保した上で,構造理解をすべきなのです。

もし貴方が使用している顕微鏡に油浸対物がついていて,それを使ったことがないなら,見逃している真の構造が存在している可能性を否定できないのです。もちろん,油浸対物レベルでも見えないものもありますが,それでも手持ちの機材で最善を尽くす姿勢は光学顕微鏡使いにとっては必要なものでしょう(画像/MWS)。








2018年10月28日




これはクリマコスフェニア(Climacosphenia)の微細構造。油浸,対物NA=1.4での撮影。この珪藻はクリスマスツリーを作るときの幹の部分によく使っていますが,それはこの珪藻が暗視野できれいな青色が出るからです。暗視野で鮮明なブルーが出るには,どうも200nmから300nmの間くらいの寸法で,ひじょうに整然とした周期構造があることが条件の一つかもしれず,この条件を満たす珪藻はきれいなブルーに発色しているようです。クリマコスフェニアの周期構造もじつに見事で,こういった整った構造を見ると,なぜかずっと眺めていたくなります(画像/MWS)。








2018年10月27日




これはクラチキュラ(Craticula)の中心部を油浸で撮影したもの。この珪藻特有の整然とした周期構造が鮮明に写っています。使用したプレパラートはJシリーズ,J074です。封入時に不具合が生じたので販売は見合わせたものです。画像を見ると,現在制作しているJシリーズと完全に同じレベルであることがよくわかります。既に10年近く前の製作物ですが,この頃のものも現在のものと同じ,顕微鏡光学に基づいた設計なので,ハイレベルであるのは当然なのですが,でもこうやって現物で振り返ることができるのは,うれしいことでもあります(画像/MWS)。








2018年10月26日




珪藻は同じ種なら同じ形態なので,同じ画像を掲載しない方針の本ページとしてはつらい被写体でもあります。別の被殻を撮影したところで,見た目は同じ画像になってしまうのです。そこでいろいろと工夫するわけですが,その一つが検鏡法を変えること。きょうの画像は当サービス独自技術の高解像微分干渉法によるディプロネイス。既に数年前から2,3回くらい登場しているような気もしますが,この検鏡法では初登場。こうやって少しずつでも「同じことをしない」努力は,「一日一ミリの進歩」にも結びつくわけで,つらい面もありますが,何かを生み出すという面ではよいこともあるのだろうと思っています(画像/MWS)。








2018年10月25日




24日の竜王戦第二局も大変な戦いでした。第一局も高次元で芸術的な対局だったのですが,第二局も霧中を進むような細い攻めで,クモの糸を相手の首に巻き付けながら,気がついたら真綿になっており,その真綿に締め付けられて窒息するような,理解できない高度な将棋でした。一日目に羽生竜王が角を切ったときには何ごとかと思いましたが,そのまま攻めをつないで勝ちきるとは,何かとんでもないものを見た気がしました。

広瀬八段もひじょうに正確な差し回しでなかなか隙を与えず,150手に及ぶ手数になりましたが,終始受けに回り,最後は突き落とされました。たとえていえば,終着駅が地獄の列車で,停止させる方法が見つからない状況で,最後は地獄に放り込まれたという感じの戦いでした。これは堪えるでしょうね。将棋の価値観を粉々に粉砕されてしまうかもしれません。

筆者は駒の動かし方がわかるだけで,将棋は全くできないと言っていいくらいです。でも主な棋戦はチェックしています。それは,第一線で命を賭けて思考している人の姿に学ぶところがあると思うからです。どんな分野でも,頂点に位置し続けることができる人は,その人自体が教科書であり,多くを学べると思っています(画像/MWS)。








2018年10月24日




久しぶりに暗視野での登場,Frustulia amphipleuroidesです。淡水産の珪藻で,けっこういろいろなところに出ますが,この画像のものは渓流の流れで他の珪藻群集と混じっていました。かなり整然とした格子構造があり,NA=0.55の暗視野でもきれいな青色が出ます。昔からお気に入りの珪藻です。きょうは2018年現在機材・撮影技術によっての再登場でした(画像/MWS)。








2018年10月23日




近所の住宅街を破壊するように建設されたタワーマンション20階建て。道路新設工事に伴って大通りに面した場所になるため,高い容積率が認可されたものと思われるが,まだ道路はできていないのでフライング気味である。そしてこのマンションから数十メートルも離れていないところに9階建てのマンション工事が始まっている。さらにここから100〜200メートルくらい離れたところに36階建てのタワーマンション。そこから歩いて数分のところに14階建ての事務所が建設…。そこから近くにある造幣局跡地にも建設建設建設ラッシュである。

こういった再開発事業にGOサインを出す人の脳みそはどうなっているんだろうと,毎年の熱地獄に苦しめられている中年オッサンは本当にふしぎに思うのです。

ちなみに,20階建てのタワーマンションは平均価格1億円で132邸。だいたい130億円規模になるとこの程度の再開発事業が動くようだ。そしてこの一億円のマンションを買う人がいるのだから,再開発事業のうま味は消えないし,一極集中も終わりがないし,ほんと日本の都市政策の無能ぶりにはいつでも幻滅させられます…(画像/MWS)。








2018年10月22日






刺身用の魚は水洗いしてはいけないというのが一般的なお作法です。でもこのお作法,けっこう怪しいのです。同じ品質のブリを購入しても,店舗によって微妙に風味が違うのです。そうなる原因は魚の取扱法に原因があって,おそらくまな板の水洗い回数や,魚の皮の処理などによって,風味の悪化をまねいているのです。お料理というのは一にも二にも風味が大事。どんなに新鮮でも風味が悪かったらおいしくありません。

そこで筆者はむかしから,刺身でも必要なときは洗ってしまいます。きょうの画像のブリなど,新鮮でとてもよいものでしたが,さらにおいしく食べるために,流水で歯ブラシをかけて全体をごしごし洗ってしまいます。そのあとにキッチンペーパーで水気を完全に吸い取って,それから刺身なり漬けなりにするのです。表面の劣化層が取り除かれ,ワンランクアップした味になります。経験的には,ブリには効果が大きいですね。洗えそうもない魚は,キッチンペーパーでごしごしと拭き取り,劣化層がありそうな場合は薄く削って廃棄します。魚にこだわる中年おっさんの知恵なのです(画像/MWS)。








2018年10月21日




珪藻の画像を表示するときに決まったルールというのを聞いたことがないのですが,でも,たぶん収まりのいい向きというものはある気がします。丸い珪藻ならば方向性はないのであまり悩む必要はないのですが,例えばクチビルケイソウのようなものは困ります。どのような向きでも,それなりに見えてしまうので,どの方向がいいのかよくわかりません。きょうの画像は,あまり宜しくないと思われる向きで表示したものですが,でもそれなりに見えてしまいます…(画像/MWS)。








2018年10月20日




19日は技術研修の一日。顕微鏡を使って商売していても顕微鏡をまともにのぞけない日々が続くのが日常になりつつあり,そうすると技術が日々低下するので,強制的にでも課題を作って撮像や画像処理,機器の点検などの作業を行います。習熟運用といってもよいかもしれません。検鏡技術というのは細かい技術の寄せ集めの体系であって個々人の属性的なものでもあります。その人が努力をやめれば消えてしまう類のものです。だから日々の習熟が必要なのです。

デジタル時代になって撮像は容易になりカネもかからなくなりましたが,その一方で,「画像処理」に時間をとられるようになりました。このことについては一度真面目に考えた方がいいような気もしています。フィルム時代であれば,仕上がりの大雑把な指定をしてフィルムを渡して,プリントの仕上がりをみて,改善点があればそれを伝えて再度,焼き増ししてもらえばよかったわけです。それが現在は全て自分でパソコン上でやることになりました。大変です。

一日撮影すると多量の画像が得られますが,それをまともに画像処理すると,たぶん数日かかります。むかしならプロラボにフィルムを出せばよかったことが,何日も拘束されて延々とパソコン作業になります。その分,画像品質の向上もあるのですが,出力画像を得るまでの作業量はかなり増えているようにも思います。もちろん撮影枚数も増えていて,それによる作業量増大もあります。

落としどころは難しいのですが,顕微鏡写真では,撮影してそのままでよいことはむしろ希で,何らかの処理を施すのが普通なので,これからも時間は奪われることと思います。今後に向けて,作業効率の改善を考える段階に来ていると思います(画像/MWS)。








2018年10月19日




煮付用とかかれた千葉産のサワラの半身が入荷した。さっそく身を押してみると品質良好。魚屋が刺身にするのが面倒なので,二枚におろして半身ずつをパックして,煮付用のシールを貼り付けたのだろう。だいたい,市場にいけば,転がっている魚に刺身用とか煮付用などとは書いていない。大きなメカジキのブロックを売っているお兄ちゃんに,「これ刺身でいけますか?」などと聞いたら口もきいてくれないだろうから,男は目利きして黙って買うのである。

それと同じで,パックの中身を目利きすれば,このサワラ,どうみても刺身にしてくれと言っているので,骨付きのまま皮目に切れ込みを入れて皮を剥ぎ,それから中落ちを外して,身は骨抜きして,適当にトリミングして,あとは本焼きのふぐ引きで切ってお仕舞い。適度に脂がのっていて,もっちりとした感触もすてきで,大変すばらしい夕飯のおかずでした。

数年前に近所の方から岡山の刺身用サワラを頂いて以来,よさげなサワラを見つけると刺身にしてきましたが,今回の千葉産は文句なく上位にランキングするもので,近県でこんなサワラが泳いでいるのかと認識を新たにしました。残念なのは,当室周辺のスーパーにはまず入荷しないこと。練馬区のオオゼキにはとても良い魚がたくさんだけれども買い物に行くにはちょっと遠い。近所の人が羨ましい(画像/MWS)。








2018年10月18日




本ページをご覧の読者でも,顕微鏡をお持ちでない方はいらっしゃるかと思います。それらの方々でも,デジタルカメラはお持ちのことと思います。もしデジタル一眼レフなどのレンズ交換式カメラをお持ちでしたら,そこにマクロレンズを加えるだけで,低倍率の実体顕微鏡と同等の分解能を手に入れることができ,大型の動物プランクトンならじゅうぶんに判別が可能になります。つまり,マクロレンズとデジタルカメラがあれば,プランクトン研究ができるということです。

実際,本職のプロがマクロレンズを用いた資源調査手法を考案し,大きな成果を上げています。生サンプルを時間をかけて延々と種別計数するよりも,サンプルが新鮮な状態で高解像の画像を次々と取得し,その画像を使ってプランクトンの出現調査をするのです。じつに合理的でエレガントな方法と思います。この方法を開発した北水試の嶋田先生のレポートが一般向けに公表されましたので,ぜひ,こちら をご覧になってくださいませ。きっと本ページの読者の方々なら,いろいろな応用的な手法を思いつくことと想像しています(画像/MWS)。








2018年10月17日






きょうの画像ははじめて蛍光顕微鏡を手にして最初に運用した日に撮影した画像。いまから17年半も前のことです。フルオフォトの廃品を譲ってもらい,必要なものは油浸暗視野コンデンサだけだったのですが,いじってみると蛍光顕微鏡としても使えそうなことがわかり,簡易メンテナンス後にハロゲン光源で観察してみたのです。

サンプルは海産のプランクトン試料で,画像一枚目は珪藻でステファノピキシス属,二枚目は渦鞭毛藻です。暗視野のグリーンで細胞の輪郭を表現して,葉緑体の自家蛍光の赤と区別できるようにしています。人生初の蛍光顕微鏡運用がこんな具合で,現在でも全く同じことをしていることに気づき,これは頭を抱えた方がいいのかどうなのか,あまりの進歩のなさに呆然とするのです…(画像/MWS)。








2018年10月16日




日本古生物学会によれば10月15日は「化石の日」ということになったらしい(こちら)。ということで,一日遅れになってしまいましたが,微化石の画像を。微化石にはいろいろな成分のものがありますが,きょうの画像のものは炭酸カルシウムでできているものを拾い出して並べたもの。ナマコ骨片,貝形虫,有孔虫,稚貝,正体不明の破片などを並べてあるものです。現生のものも混じっていますが,いずれは化石になるので,まぁそれらも微化石です(画像/MWS)。








2018年10月15日




昨日,審査委員が低レベルなニコンの顕微鏡写真コンテスト,と書きましたが,検鏡レベルを度外視して貴重な画像も全部省いて単に見た目のけばけばしさだけを基準に画像を選んで良いのでしたら,むしろ審査委員は優秀と言い換えることもできます。画像は一般公開されるわけで,微細構造が潰れていようが,画像処理でゴテゴテになっていようが,ぱっとみてきれいなら一般受けするのでそれでよい,という考え方です。

でもそれなら,顕微鏡写真コンテストでなくてもよいのでは?という気がします。機材として顕微鏡を使うからには,その結像特性があるわけで,結像特性そのものが落選の要素になるのなら,応募要項にそう書いた方がよい気がします。透過明視野は応募不可,とか。

より理想的には,分野別のコンテストにするべきでしょうね。高解像部門,低倍率部門に分けて,総合特選,技術特選,入選,佳作などとすればすっきりすると思います。でも歴史あるコンテストなので,たぶんそういったことはやらないかな。動画部門ができたのは良い方向なのですけれども,静止画でもぜひ良い方向に向かって欲しいところです。

さてこういったこと以外にも,審査委員が低レベルかもしれないという感じのこともあります。過去の入選作を見ていると,同一人物によるほぼ同じ作品で2回入選している例があります( こちら と こちら )。日本のフォトコンテストなどでも,ほぼ同じ作例で別々のコンテストに入選しているなどの例はたまに見かけますが,同一コンテスト内でほとんど同じものが入選というのはちょっと見た覚えがありません。

このコンテストは常連が毎年のように投稿して,毎年入選している傾向があることは審査委員も知っていたはずです。にもかかわらずこのようなことが起こるのは,審査基準の問題か,または審査委員の勉強不足のように思えます。

きょうの画像はイカリナマコの骨片。先ほどのリンク先の画像よりも遙かにハイレベルな標本製作技術と画像の仕上がりですが,見映えの問題でニコンスモールワールドでは即,落選でしょう。無理矢理にでも色を付けてカラフルにしないといけません(笑)。筆者はニコンのコンテストに応募する気はまったくなく,審査委員なら参加してもいいかなと半ば冗談で10年前に書きましたが,その気持ちは今でも全く変化のないところです。日々ハイレベルな絵を本ページに載せる方が個人的には遙かに有意義と思っています(画像/MWS)。








2018年10月14日




けばけばしい被写体のFocus Stacking画像ばかりが入選する,審査委員が低レベルなニコンの顕微鏡写真コンテストとは異なり,藤原ナチュラルヒストリー振興財団が主催するナチュラルヒストリーフォトコンテストは,とってもまともです。顕微鏡写真コンテストではないところが残念ではありますが。

もはや秋の風物詩となったナチュラルヒストリーフォトコンテストも,第10回となり,今年も応募受付が始まっています(こちら)。自然の美しさやすばらしさを表現した作品で,「自然史」を感じさせる作品 であれば分野は限定しないという,わかったようなわからないような募集内容も魅力的です。

ケバケバしくなくても,Focus Stackingほかの画像処理でゴテゴテにしなくても,審査委員の先生方が公正な視点で,写真に表現された自然史を読み解いてくれます。このような分野のフォトコンテストはとても貴重なもので,今後も末永く継続していただけるよう,多くの応募が望ましいことと思います。本ページの読者であれば写真のレベルは相当なものでしょう。この一年の活動を振り返り,「自然史」を感じさせる一コマを応募してみてはいかがでしょうか(画像/MWS)。








2018年10月13日




ニコンの顕微鏡コンテスト,写真部門が公開になっています(こちら)。今年も色鮮やかな世界が満載になっています。

しかし,このコンテストの画像全てを見た筆者の読後感は複雑なもので,ちょっと言葉にできません。目で見えない世界を顕微鏡で覗いて,そこに見つけた新鮮な驚きや喜びに満ちているのがスモールワールドです。ニコンのコンテストはスモールワールドと銘打っていますが,掲載された画像を見ると,顕微鏡を見たままのイメージはほとんどなく,多くが高度な画像処理を施した作り物の絵です。特に今年は低倍対物レンズによるFocus Stacking画像ばかりで,それらの画像はもちろん美しくはあるのですが,なんか見ていて辟易とします。

一つ一つの作品は素晴らしいのに,見ていてうんざりとするのは,審査委員の資質に問題があり偏った作品ばかりを入選させたからのように,個人的には思えます。審査委員が顕微鏡対物レンズの結像特性を知らないわけはないと思いますが,入選作を見ると,空間周波数のカットオフとなる領域を含まない作例を好んで選んでいる印象があります。このため,サンプルの区間周波数分布と,撮影機材と照明法の選択で自動的にふるい分けにかけられてしまいます。透過明視野で高NA対物レンズを用いて位相物体の高分解能を狙っただけで落選になります。

逆に見れば,サンプルは可能な限りカラフルなもので,使用する対物レンズの半分の性能で充分に解像できる空間周波数の粗いものを選び,落射暗視野照明を施し,執拗なFocus Stacking処理をして,彩度を上げればいいわけです。昆虫などはこういった条件を満たしやすいサンプルですし,入手も手軽でしょう。

これまでもそういった傾向が顕著でしたが,今年は特にひどいと思います。朝からシリアルを胃に流し込み,コーラをキングサイズで飲んで,昼にはハンバーガーにかぶりつき,夜は山ほどチーズをトッピングしたピザを腹一杯になるまで食べる。そんな生活をした人たちは濃い味になれて和食など理解できないでしょう。それと似たように,強い明暗,不自然なほどの彩色,作り物のような深度合成に慣れてしまった審査委員たちは,もはや高NA対物を限界まで使用した,解像限界まで余すことなくとらえたコントラストの低い絵は,理解できない脳みそになってしまっているかのようです。

ニコンのコンテストは顕微鏡写真というマイナーな分野なのに継続してくれている貴重なものなので,筆者としても悪く言いたくないのですが,スモールワールドのコンテストというにはあまりにもひどく,Focus Stackingコンテスト・画像処理大会とでも言うような状況になってしまっていることは,指摘しないわけにはいきません。

きょうの画像はそんな話題と少しは関係のある,蚊の羽根。微分干渉で撮影したものです。なんの変哲もない素朴な絵ではありますが,こういった風景がスモールワールドでもあります(画像/MWS)。








2018年10月12日




プランクトンハンドブックのamazon順位が上昇中です(23位→5位)。このような本が売れ筋の常連となり,国内に顕微鏡ユーザーが増え,素敵な顕微鏡ライフを送ることになればこんなに目出度いことはありません。ぜひともどんどん売れて生物学ランキング1位になり,首位をキープして欲しいものです(画像/スクリーンショット,10/11,19:30)。








2018年10月11日




毎日webを更新していて十年以上が経過しましたが,最近悩むことは,手持ちの画像で掲載済みかどうかを覚えていられないこと。本ページは原則として画像の使い回しはしない方針で日々更新していますが,むかし撮影したストック画像が掲載済みかどうかを確定できないのです。でも頭の片隅には,たぶんこれは使っていないとか,これは何年か前に使ったとか,そんな漠然とした感覚があって,ほとんどの場合はその感覚が正しいので,それに従えばほとんど間違えません。悩むときは,珪藻や放散虫などを大量にまとめて撮影し,そこから少しずつ画像を使っていった場合です。残り物がどれなのか曖昧になるのです。

そんなわけで,きょうの画像は一度使ったかもしれない放散虫の画像。この放散虫,先端に鉱物等が詰まっていることが多く,きれいにするのが難しいのです。先っぽのシリカが重たそうで,その直下の空間を支える球部はとても薄いシリカでできています。強度的にはここが弱点。さらに全体は長細く,固有の振動モードがありそうです。少しでも強く超音波処理をすれば,先端が折れて飛んでいきます。東日本大震災のときに東京タワーの先端が曲がりましたが(こちら),似た感じのことが起きているのかもしれません…(画像/MWS)。








2018年10月10日




図鑑やハンドブックの効果的な使い方の一つは,「目的もなく眺める」ことかもしれません。「目的もなく」というのがどういうことかというと,覚えようとしない,ということです。ぼーっと眺めて,きれいだなあー,面白いなあー,こんなプランクトン見てみたいなあーと,パラパラと何度も眺めるのです。これを数ヶ月も繰り返すと,ふしぎなことに,けっこうな情報が自然と頭の中に入っています。ただ,その情報はバラバラで,写真と生物の名前が対応していなかったり,思い違いがあったりして,使える状態の知識にはなかなか到達していません。

しかし,そののちに顕微鏡観察をしているときに,「おっ,これはハンドブックのあそこらへんに載っていたやつと同じだ」という「見覚え」が発生します。そしてハンドブックを開いてみて,「これだー!」となると,その生き物の特徴も名前も一気に頭に入ってしまいます。情報が頭の中で組み変わるのでしょう。

そういうわけなので,新刊の『プランクトンハンドブック』も,こうしてチャック付きビニール袋に入れてリュックにでも放り込んでおき,電車の中でパラパラ眺めていればいいのです。数ヶ月後には,きっと皆さんの顕微鏡ライフの強力な味方になっていることと思います(画像/MWS)。








2018年10月9日




この夏の熱地獄で運動不足になった結果,質量が増加し,よろしくないことになっていました。宇宙開発系のエキスパートエンジニアさんといつも意見が一致するのですが,「体重が60kgを越えたら人間ではない」という感覚を持っているのです。学生時代は52-53kgくらいでしたし。それが中年になって体重が増加し始めて,「人間ではない」領域すれすれで暮らすことになってしまっています。

しかしようやく涼しくなって体を動かすことができるようになったので,一日一回夕食後に3〜4kmくらいの早歩きを日課にしています。血糖値のピークカットと食べ過ぎ防止をねらってのことでもあります。食べ過ぎれば4kmの早歩きはキツくなりますからね。8月の運動不足で一キロちょいオーバーした体重は,現在ゆるやかに戻りつつあり,朝起きた体重は「人間」にもどりつつあります(^^;

ヒトの体は適度な運動をしたときに正常に働くことになっています。現代ではいろいろな病気が増えてきていますが,一つの原因は体を動かさない人が増えたことにもあるのだろうと思います。 こちら に示されているように,認知症になりたくないのなら,日々,軽い運動を継続することが大事です。身体の劣化は30代くらいにはすでに始まっているので,認知症対策は若い頃からやってもたぶんよろしいかと思っています。筆者も体重をコントロールして「人間」の状態を維持して,良好な仕事ができるように努めたいと思っています(画像/MWS)。








2018年10月8日




この夏は熱地獄で外出することもできず,秋に入ればずっと同じパターンの仕事の連続で,何かがよくない気がします。筆者はストレスというものを自覚できないタイプの人間で,20代半ばの頃に大トラブルに遭遇したときも,まぁ何とかなるだろと気楽に過ごしていたら,頭髪が白くなり始めて,飲み仲間に「お前髪の毛,真白だぞ」と知らされて気づいたりしたのでした。ということで,ストレスが蓄積しているかどうかはまったく不明なのだけれどもガス抜きは必要かもしれず,7日は連休中日であることもあって,仕事は昼過ぎで切り上げて,海辺で夕飯を食べることにしました。

風が強いことで知られる現場に向かい,台風の影響もあって,遠くからも潮騒が聞こえるような状況でした。あかね色の空を眺めながら波の砕ける音以外が聞こえない海岸で夕飯をつまんでいると,何も考えなくてよい時間,というものに遭遇した気がしました。同時に,そんな時間はたまには必要な気もしました。

都会暮らしというのも仕事をする上では悪くないことが多いのですが,どうしても欠けているものがある気もします。郊外や田舎で暮らしていれば,忙しくても,川の流れを眺めたり,山の緑を眺めたり,紅く染まる夕焼けに足を止めたりといった日常があります。でも都心ではそれは望めないのです。多摩地区の山猿であった筆者には,水と緑と土がないと,たぶんダメなのだろうと,そんなふうにも思います。

夕飯を食べに行った海辺は,片道2〜3時間もかかるのです。なんでわざわざ夕飯を食べにそんな遠いところまでと,自分でも思います。そして,出かけるときには,面倒で,億劫で,決して喜んで出かけているわけではないのです。でも,実際に行ってみると,目から入ってくる情報,耳から入ってくる環境音,鼻から入ってくる空気,全てが違い,「そのまま都心にいた状態」とは何かが変容していることに気がつくのです。

その変容が良い方向なのか否かはわかりませんが,脳を上手に使いこなすには,強制的にある環境下に遭遇してみて,身体に起こる変容を感じて,そこからフィードバックをかけるのも一つの方法なのかも,と思いました。数十年治らない不眠治療に,何らかのヒントにならないかなぁなどとも思います(画像/MWS)。








2018年10月7日




暗視野照明と落射蛍光は同時にできるので,たまにそういった画像を見せてくれる方もおられます。しかしいままで見た全てのケースで,暗視野照明は白色光でした。白色光でなくてはいけない理由がある場合は別ですが,何も考えていないならちょっとそれはもったいないですね。デジタル撮影では一枚撮影しても,それはRGBの三枚撮影していることとほとんど同じですから,Rの蛍光を撮影するなら,Gの暗視野像を重ねれば,お互いのコントラスト低下を招くことなく独立して撮影できるのです。あとからRGB分離して,蛍光画像だけ,暗視野画像だけを取り出すことも可能です。筆者は自前の顕微鏡を購入して蛍光画像を初めて撮影したときから,蛍光と暗視野像の色を分けて撮影していましたが,それから20年弱。そういった知識は全然広まることもなく,時代は変わらないままのようです(画像/MWS)。








2018年10月6日




文一総合出版さんといえば,忘れられない本があります。それがきょうの画像で,『ブナ林をはぐくむ菌類』です。98年11月の出版ですから,いまから20年前になります。当時は八王子に住んでいて,学位取得後のオーバードクターで就職先も見つけられず,大学で研究生を続けながらいろんな勉強をしている毎日でした。時間は比較的余裕があったので,朝起きたら毎日裏山に出向いて菌類(きのこ)観察をして,帰宅してから大学の研究室に向かうような日々を送っていました。そんな頃に八王子駅前のくまざわ書店で本書の存在を知り面白そうだと即買いでした。

読んでみるとこれが大当たりで,過去の読書人生でもトップを争う素晴らしい体験でした。菌類はふだん菌糸として存在していて目に付かないものですが,森林の中で複雑なネットワークを形成し,物質循環に多大な影響を及ぼしているだけでなく,植物との菌根を介した相互作用によって栄養の授受も行っています。どちらかが単独で存在するよりも,両者が共生的な関係を保ちつつ壮大な生態系が維持されているかのようです。そうした内容が当時最先端の成果とともに,気鋭の研究者が書き下ろしており,臨場感あふれる記述は読書しつつも,しっとりとした森林のなかを散歩しているかのようでした。後半まで進んで残りが少なくなると読了するのが惜しく,ずっとこんな感じのストーリーを読んでいたい,と思わせる本でした。

この本の内容は,筆者の趣味でもあったきのこ観察と関係があっただけでなく,心のライフワーク的に取り組んできた環境科学,環境論とも深い関わりがありました。この本を読んでから8年後に,ある国立大学で生物地球化学を二年間講じたのですが,そのときに物質循環と微生物の役割で本書の図版を幾つか引用させてもらいました。聴講した学生さんからは「菌類の話をもっと聞きたかった」と,とても好評だったのです。

…というように,『ブナ林をはぐくむ菌類』は忘れられない本なのですが,話にはまだ続きがありました。この本の著者のお一人が,数年前に当サービスのユーザーさんになったのです。Jシリーズの最大級の大物のご注文を頂いたとき,最初は気づきませんでしたが,どこかで聞いたことのあるお名前だと思って記憶を辿ると,この本の著者のお一人だったのです。筆者がこの書籍についての感謝を申し上げたのは言うまでもありません。

というエピソードがあったわけなのですが,話はまだ終わりません。なんと驚くべきことに,『プランクトンハンドブック』を手掛けた編集者さんは,『ブナ林をはぐくむ菌類』を担当した編集者さんでもあったのです。そのお陰で,筆者はこの素晴らしい本を作ってくださった編集者さんにも感想を伝えることができ,じつにうれしかったのでした。

それにしても,良い仕事をする人というのは,良い仕事を「し続ける」のだなあと思ったことでした。きっと文一総合出版さんからは,これからもきらっと光る良書が生まれ続けることと思います。期待しましょう(画像/MWS)。



*1 編集者さんとは何度かやりとりをさせて頂きましたが,たった一枚の画像提供にもかかわらず,企画の提示からデザイン/レイアウト/キャプションの相談,支払い関係の細かいことまで,じつに的確に対応頂きました。見本が刷り上がれば,まずは連絡を入れて,発売前にもかかわらず,すぐに献本+支払い分を送付してくれました。恐縮でした。こういった誠実な仕事の作法は著作権者を大切にしていることの表出で,だからこそ著作権者との良好な関係を維持することができ,その結果として次々とオリジナリティあふれる成果物ができあがるのでしょうね。




2018年10月5日(2)




中山剛先生,山口晴代先生による『プランクトンハンドブック・淡水編』(文一総合出版)がまもなく販売開始になります。淡水プランクトンの主要なものを,属レベルで調べられるように構成された,顕微鏡写真満載のハンドブックです。税抜き価格1800円で,新書よりちょっと背が高いくらいの大きさで携行に便利な本です。

このハンドブックは,表紙のポップな可愛らしさとは裏腹に,その中身はひじょうに本格的な作りです。イラストの検索図が用意されており,大まかな形での判断がしやすくなっています。採用されている分類体系は最新のもので,このハンドブックで勉強した人が将来,専門の論文を読むことになったとしても,知識の接続が整合的に進むようになっています。

写真のレベルはかなり高いです。特に優れているのはカラー再現性で,一部の図鑑で見られたような,珪藻が真っ赤になっていたり,緑藻が信じられないくらい濃い青緑になっていたり,バックが不自然なオレンジ色になっていたりといった見苦しい図が皆無です。また培養株を撮影したと思われる作例が多数あり,そのような作例は単離培養の無菌株なので背景がすっきりして,藻類そのものの美しさがじゅうぶんに表現されています。天然サンプルをそのまま撮影したものも,構図やトリミングはよく考えられており,大変上質な仕上がりとなっています。珪藻類は生細胞だけでなく,高屈折率封入剤による封入も行い適切な条件下で撮影しています。油浸検鏡を煩うことなく採用し,分解能の高い作例をたくさん見ることができます。

写真には注目すべき観察ポイントについて説明が加えられ,写真をぱらぱらと見ているだけで専門用語の意味がなんとなくわかってくるように配慮されています。巻末にはそれらの用語の簡素な解説とともに,参考になる資料類が紹介されています。

本ハンドブックは,種小名まで記載することをやめ,属レベルでの分類資料としたところが大きな特徴で,これによりたくさんの属を掲載することができ,また多くの写真を掲載可能になっています。もし種小名まで記述しなければならないとしたら,珪藻のページだけでもすぐに頓挫してしまうくらい分類というのは面倒なものなのですが,属レベルならまとまった特徴があるのでひとくくりにできます。これは英断です。属レベルまでわかれば,あとはインターネット上で属名検索を行えば,そこからまた世界が広がりますから,まずは属レベルで判別可能なことが大切なのです。

本書は欠点らしいところがほとんど見受けられませんが,少しだけ注文をつけるとすれば,2,3の点があげられます。一つは,本書で撮影に用いている機材はほとんどが微分干渉顕微鏡ですが,微分干渉顕微鏡は一般には全く普及していません。このハンドブックを手にした読者がそれを知らずに顕微鏡を購入して,透過明視野でいくら覗いても,同じ像は見えません。本ハンドブックでは繊毛,鞭毛,珪藻の粘液糸といった構造が鮮やかに表現されていますが,透過明視野で同じコントラストで見ることは不可能です。しかしハンドブックというからには,顕微鏡を覗きながら手元に置いて使うわけで,「どんな機材ならこの絵と同じように見えるか」という情報はあったほうがよいと思います。(なお,珪藻については微分干渉法を使わなくても,封入標本を偏斜照明で観察すれば同等以上の分解能を達成できます。)

もう一点は,検鏡法に関する説明をもう少し加えて欲しいということ。濃縮した試料の色の濃さ,濁り具合,スライドグラスにマウントするときの具合,初級顕微鏡でも見える大型の緑藻などのイメージの紹介などがあれば,初学者にはより親しみやすくなることと思います。機材の入手法などにも触れてもよいと思います。

以上要するに,本ハンドブックは新書判程度のサイズに最新の分類知見と美麗な顕微鏡写真を詰め込んだ,属レベルで検索可能な世界水準の第一級資料といって過言ではありません。誰が持っていてもよい本ですので,顕微鏡ユーザーさんが手元に置くことはもちろんのこと,知人やお子様へのプレゼント用にも好適かと思います。このような素晴らしい本を作ってくださった著者の先生方に敬意を表するとともに,美しいデザインと適正な価格で世に出してくださった文一総合出版さんに御礼申し上げたいと思います。

出版社のページは こちら です(画像/MWS)。








2018年10月5日




毎日新聞の報道によれば,新しい内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)が「EM菌議連」幹事長であるらしい。試しにリアルタイム検索で「EM菌」と打ち込むと,この新しい大臣を揶揄するような書き込みが大発生しているようだ。まぁ,当然と言えば当然。先進国と言われている日本の,科学技術政策を担当する大臣が,EM菌信仰の側に属しているわけですからね。

しかし筆者には,問題の本質はそこにはないと感じられます。自民党がこのポストに科学技術を解する専門家を配置した例は,たぶん小泉内閣のときの尾身幸次くらいで,あとはずっと,科学とは遠いところで働いてきた人材を配置してきたように見えます。おそらく意図的でしょう。今回の問題もその延長線上にあることはこの新しい大臣の経歴を見ればわかります。英語学科を卒業して電通に勤め,放送関係の取締役といった経歴で,科学技術とは何の関係もありません。このような,下から上がってくる書類の内容も理解できないような人材を配置して,ハンコだけ押させるというのが,政権運営のコツなのかもしれません。

過去の担当大臣は こちら に載っているので見てみるのもよいかもしれません。民主党政権時には,あの短い期間の中で,2回,理系出身者を配置しています。少なくとも下から上がってくる書類の内容程度はざっと理解できていたはずで,今回のような「恥ずかしい人材配置」ではなかったように思えます。本来そうあるべきと思うのですが。

今回はEM菌騒動が話題になっていますが,歴代自民党の内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)だって,EM菌のことなど何も知らない人がほとんどでしょう。いままでだって,今回と同等に,科学など理解しない不適当な人材が配置されてきたのです。でも,いままでは,ふつうの人は,担当大臣の経歴までは調べないし,担当大臣が阿呆だというニュースも流れなかったので,不適当と思われる人材が配置されても気づくことができなかった。

それがEM菌報道のお陰で,国家の科学技術政策を指揮するトップが阿呆であり,不適当な人材ということが,今回に限り,たまたま明白になったわけです。我々は優れた指標を開発してくれたEM菌教祖に感謝しなくてはいけないのかもしれませんねぇ(画像/MWS)。








2018年10月4日








大方の予想通りに? 筆者はヘタレなので,こういった店に入ったことがない。いったい店内ではどのような痴態が繰り広げられているのであろうかと想像したところで,行ったことがないのでわからない。会社帰りのサラリーマン諸氏が,白衣の天使に囲まれてお酌してもらうのであろうか? それは楽しいんだろうか?

筆者なら,自分も白衣で入店し,顕微鏡も持っていって,脳切片や大腸のマッソントリクロム染色などのスライドを持参して,「○○ちゃんコレどう思う?」などと一緒に検鏡して,「コスチュームプレイ」をした方が楽しそうな気が(^^;  それって変態ですかね?

それにしても,白衣の天使とお酒が飲めるだけで,周囲の店舗が次々と消滅する中でも,20年間も営業継続できる。商売というのは思っていたよりも簡単なものなのかもしれない。なんでこんな七面倒くさい標本製作で商売をやろうとしているのかと思っても既に遅しだなあと,中年オジサンは遠い目でぼーっとするのです(画像/MWS)。








2018年10月3日




2日は業務打ち合わせ。一年以上前からの案件ですが全く進むことなく先延ばしになっていました。が,そのまま放置するわけにもいかないので,少しでも進めることとしました。Jシリーズの製作時期に重なるのが宜しくないところですが,まぁそれは毎度のこと。何とかやりくりいたしませう。筆者は珪藻と顕微鏡をいじくり回して生活しているだけなのですが,自然発生的に仕事が降りかかってきて,また毎年定期的に学会報告等を行うこともあって,いつも何かに追われている状態が続いています。これも皆様のお陰でありまして,ホント,感謝なのです(画像/MWS)。








2018年10月2日






Water Immersion水浸対物レンズは適切な厚さのカバーグラスを使用していれば(またはカバーグラス厚さに合わせて補正環を操作していれば),水で封入した試料に対して,ピントの合ったところで球面収差が補正されています。油浸対物レンズの場合はカバーグラス直下のみ球面収差が補正され,少しでも水に沈んでいると,例えば10μm厚さの水でも像が悪化します。しかし水浸対物レンズであれば,50〜100μmの水が存在していても良好な像を結びます。なので,きょうの画像のように細胞表面にピントを合わせても,細胞内部にピントを合わせても,ともに良く見えます。

でも,水浸対物レンズを使わなくても,開口数を落とせば同じようなことはできます。おおむねNA=0.7程度までのレンズで,補正環のついている長作動レンズを用いて,水に沈んでいる細胞のコントラストが最も高くなるように調整すれば,多くの場合で良好な像になります。開口数が落ちる分,分解能は低下しますが,油浸対物レンズを用いたときのように霞んで見えなくなるようなことはなくなります。

もっと極端にNA=0.4くらいにしてしまえば,200μm程度の水が存在してもどうということはありません。分解能が落ちますが細胞内部でもピントを合わせられます。…というように,使う対物レンズのNAを落として,高NAの対物レンズによる像よりも解釈しやすい像を得る。試料によってはそんなテクニックも有効なことがあります(画像/MWS)。








2018年10月1日




これはコノドントを封じたもの。封じていないコノドントはだいぶ昔に砥石画像とともに紹介していますが,封入品ははじめてだと思います。小さなリン酸カルシウムの破片ですが,億年単位を生き残ったことを考えると貴重です。今回は専門家から試料が入荷したので,当サービスにて洗浄,乾燥して封入が可能になったものです。石英粒子と混在している試料なので分別がとても面倒でしたが,一見してコノドントと判断できる破片を集めることができました(画像/MWS)。









Copyright (C) 2018 MWS MicroWorldServices All rights reserved.
(無断複製・利用を禁じます)
本ページへの無断リンクは歓迎しています(^_^)/


トップに戻る



.