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ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します
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お知らせ
仕事が飽和しているため,3月中は受付済みの仕事に専念させて頂きます。問い合わせや標本以外の仕事メールはいつでもOKですが,新たな標本製作は4月以降になります。またメールも返信が遅れることがありますのでご承知下さい。
2018年3月31日
先日ひょんなことから,顕微鏡対物レンズ設計の第一人者である長野主税先生と筆者が,だいぶ昔に,同じ八王子西部に在住していたということが明らかになり驚きました。その頃の筆者は,裏山をさんぽしてきのこを採取,撮影したりしていたのですが,まさにその裏山近くに長野先生がお住まいだったのでした。なんというご縁でしょうか。長野先生とは超・ローカルネタで話ができることになったのです。こういうのは嬉しいですね。
そこでローカルネタ。100円ラーメンはみんなの心の中にある,のです…(画像/MWS)。
2018年3月30日
この書類には,会社名も,担当者名も,日付も入っていない。
それどころか,誰に「依頼」しているのかも書いていない。
この会社は,これ以外の書類を一切出さなかった。
つまり,筆者は,社名や担当者の署名が入った書類を,一度も受け取ったことがないのである。
書類,というのはもちろん,各種契約書類も含んでいる。
そして事前の連絡なしに不払いを喰らった。その後も連絡はなかった。
これでは最初から,裁判の証拠書類になるようなものは発行せず,筆者に不払いを喰らわして泣き寝入りさせるという意図があったと言われても仕方がないだろう。
もちろん違うかもしれない。
担当者が,署名や日付を入れるといったビジネスの基本を全く知らなかった可能性もある。契約書なんて必要ないと思っていたかもしれないし,黙って不払いにすればトラブルには発展しないと思っていたかもしれない。
真相は闇の中だけれども,明らかなことは,仕事としてはまともな作法ではなかったということ。
この会社は昨年,自社ビルと思われるところから引っ越ししている。不況の現在にあって引っ越しする理由は,自社ビル売却で現金を得るためか,賃貸に出してキャッシュフローを作るかのどちらかだろう。経営状態が悪いのは可愛そうだが,それを理由にこのような仕事をするのはいただけない。
よくこんないい加減な仕事につきあって,全力で最高の本を書き上げたものだと,我ながらバカげたお人好しに感心して,同時に情けなく,笑っちゃいますね。ハッハ。真面目すぎるのもよくねえよなぁーと思う今日この頃なのです(画像/MWS)。
(追記) ここで書いたことは筆者との個人的な関係のものであって,その会社が悪だというわけではありません。部分を全体と解釈しないようお願い致します。現在は,きっと,ちゃんとした仕事をしていると信じたいですね。
2018年3月29日
発送作業は遠くの郵便局へ。なぜなら桜が拝めるから。暖かな日の午後,まばゆいばかりの満開。木々はいっせいに芽吹き柔らかなみどり。ほっとするひとときです。さて次は応用光学研究センターの仕事です(画像/MWS)。
2018年3月28日
とにかくがんばる。これが年度末というものだ(画像/MWS)。
2018年3月27日
年度末というのが誰が考えたシステムなのか,ひじょうに非生産的で非合理で意味なく多量の人間を疲弊させているように思います。発注側は予算の使い切りで追いつめられて忙しく,受注側は前触れのない即納要求を突きつけられて消耗する,誰もトクしないシステムです。シンポジウムが終われば,翌日には珪藻をぐつぐつ煮ているのですから,何ともMADな日々です…。
そんな日々にひそかに活躍しているのはニコンS型。珪藻の処理中には頻繁に顕微鏡をのぞきます。そのときに,手になじんだ,惚れ惚れする機器ならば作業も滞りなく進むというものです。ピンセットでも顕微鏡でも,日常的に使うものは,良い道具がよろしいですね(画像/MWS)。
2018年3月26日
日本プランクトン学会シンポジウムが終了しました。筆者はコンビーナーとして運営側に回り,講演者でもありましたが,多くの皆様に助けられました。シンポジウムにはとても多くの方々がご参加下さったようで,本ページをみて駆けつけた方もいらしたようです。ほんとうに有り難いことで,心より感謝申し上げます。画像は会場となった東京海洋大学の建物と,その2階で行われた石丸先生による顕微鏡の展示。シンポジウムがうまくいったかどうかは皆様の判断に委ねるしかありませんが,シンポジウム終了後もいつまでも立ち話を続けるひとが大勢で,懇親会終了後も多くの人が残って情報交換しておられました。その姿をみて,人々が集うシンポジウムの目的の一つは果たせたのかな,と少しだけ安堵しています。今回は藻類学会と日程がかぶってしまい,当然参加される人の多くが欠席されて残念な面もありました。そのうちに誰かが第二ラウンドをやってくれることと期待しましょう(画像/MWS)。
2018年3月25日
年度末の極度の忙しさにより一歩も家から出ない生活が続いた結果,どうも外は満開になっているらしいとの情報。一歩くらいは外に出ようと,ほんの少しの時間だけぐるっと近所を一周。久しぶりに外の空気を吸い,花見でどんちゃん騒ぎをしている現場を見て,別世界に来たような印象…。桜は7〜8分咲きといったところでしょうか。まだ花びらが散っていなくて見頃です。仕事の合間に,できれば平日に,もう一度くらいは桜を拝みたいところです(画像/MWS)。
2018年3月24日
今年もそろそろ春の大潮シーズンです。が,まだサンプリングには一度もいっていない…。そればかりか,海山川に遊びにいったのはいつ以来か。。慢性的に仕事病にやられていけません。個人事業主は,仕事がなければどこまでも堕落できますが,仕事が舞い込むと天井知らずのブラックな職場です。ここのところ真っ黒な状況が継続しています。
この状況を打破するには,海にサンプリングに行くに限ります。いいんですよ。何もとれなくても。筆者の仕事場は海,川,池。水のあるところどこにでも広がっています。現場に足を運ぶことが大事なのです。現場感覚とでもいいましょうか。人生を振り返るに,いちばん「現場感覚」が優れていたのは小学校中学校の頃でした。飽きもせず毎日川に通って,魚,水生昆虫など,あらゆる現場情報を吸収しました。
そういう贅沢な時間は減ってきたわけですけど,しかし世の中には「干潟ベントスしたじき」という優れものがあります。こういったツールを持って,海で遊べば,現場感覚も維持できるというものです。「干潟ベントスしたじき」はとくに子どもにはお勧めです。このくらいの分量なら,たぶん全部記憶してしまうでしょう。そしてそれが後の人生の「力」になるのです(画像/MWS)。
2018年3月23日
やっと都内にもホタルイカが入荷…。シーズン入りすると都内ではまず,冷凍物が店先に並び,一年前のものを食わされるのです。今年は延々と冷凍物ばかりで,どうしたものかと思っていたところようやく新物が入ってきたというわけです。これのウマイ食べ方は,目玉を取り除いてキッチンペーパーの上に並べ,電子レンジの解凍キーを使い人肌くらいに温めるのです。そうすると釜揚げっぽい感じになり,冷えているよりもずっとよく味がわかります。海産物というと冷たいまま食べる人が多いのですが,ボイルしてあるイカ,エビ,カニなどは少しだけ温めた方がうまいですよ。物事に深くこだわる本ページの読者にはお勧めしたいところなのです(画像/MWS)。
2018年3月22日
スライドグラス上に残った油浸オイルをさっと拭いて延ばしてみたものがきょうの画像。金属顕微鏡にセットして,DICモードにして,λ板を入れて撮影。大きな油滴の間にも,かすれたような油の段差が走っていることがわかります。紙でこすっても油膜が薄くなるばかりで,ペーパーに吸わせて完全にぬぐい取るには技術が必要です。ので油の拭き取りには溶媒が使われることが多いわけです。溶媒に油が溶解して拭き取られ,次の新鮮な面の溶媒と繊維でワイプされれば速やかに油が減少してなくなるでしょう。そうはいっても,溶媒で拭くときでも完璧にやろうとすると多少の技術も必要になるのですが…(画像/MWS)。
2018年3月21日
きれいに拭いたスライドグラスに,べたつきを感じない程度にきれいな指先を押し当てると,薄く指紋がつきます。これを金属顕微鏡にセットして,DICモードにして,λ板を入れて撮影。大量の油滴が見られます。この油滴はとうぜん,光の波長よりも十分に大きなサイズなので,ここを通過した光は波面が乱れます。カバーグラス,接眼レンズ,カメラレンズ,メガネ,撮像素子などに指紋がつけば表面はこんな感じになっているわけで,性能の低下は免れません。
指紋には油分のほかに塩分も含まれますので,筆者はこれを拭き取るときには,水と溶剤の両方を使うことが多いです。対物レンズのバレルなども素手で扱えばこのように油が付着していますので,長期保管のときなどは,指紋を拭って乾燥させてからケースに仕舞うことをお薦めしています(画像/MWS)。
2018年3月20日
昨日ご案内致しました日本プランクトン学会春季シンポジウムに合わせて,同じ建物の2階で,日本プランクトン学会・元会長の石丸 隆先生により,顕微鏡観察のミニ展示が行われます。予約等は不要で,自由に誰でもご覧いただけますので,興味ある方はシンポジウムと合わせてぜひごらん下さい。
【古い顕微鏡を活用した教育・啓発活動に関する展示について】
日時: 3月25日11時半より13時
場所: 白鷹館2階オープンスペース
内容:
・出前授業で使用する簡易顕微鏡の展示と生きた動植物プランクトンの観察
・1960年代の顕微鏡と水浸対物レンズによる植物プランクトン細胞映像
・暗視野や微分干渉による珪藻・放散虫プレパラート(MWS製作)の観察
東京海洋大学 石丸 隆
(葛西臨海・環境教育フォーラム)
先生は豊富な機材をお持ちで顕微鏡にも詳しく,出前授業のご経験を蓄積されています。一般の方々へ顕微鏡の世界を紹介したいとお考えの方には,よいお手本になるかもしれません。筆者も拝見させて頂くつもりです(画像/MWS)。
2018年3月19日
【再掲】来週,3月25日に,東京・品川にある東京海洋大学において2018年度 日本プランクトン学会春季シンポジウム「プランクトン研究、感性への原点回帰と新たな価値の創出」 が開催されます( こちら )。プランクトン研究の黎明期には,顕微鏡を通して初めて認識された数々の驚異の世界があったはずです。当時の人々の感性をくすぐったプランクトンたちの姿は,現代の人々にも目に新しいものかもしれません。
今回のシンポジウムでは,それぞれの分野において先端的な活動を行っている方々を招いて,プランクトンの魅力ある世界について語って頂きます。サイエンス&アート系のシンポジウムは,水産海洋系ではとても珍しいもので貴重な機会になっていると思います。事前予約不要で,一般の方々も聴講可能です。報道の方々顕微鏡業界の方々も歓迎しています。ご興味のある方は,覗いてみるのもよいかもしれません(画像/MWS)。
2018年3月18日
きのうのコガネムシの羽は,ちょっと照明を変えるだけでこんな具合になります。画像一枚目は表面のようす。こんな感じに薄膜っぽい構造があることが分かります。こういう薄膜があると,きっと光学素子なんだろうなとついつい考えてしまいます。画像二枚目は同じ場所のちょっと内部?に存在する粒々構造。白色光を当てるとグリーンになって帰ってくるという見事な素子。照明光はハロゲンランプでNCBフィルタは入れていませんが,この鮮やかさ。やはり道ばたのコガネムシは拾って帰るべきなのです…(画像/MWS)。
2018年3月17日
これはコガネムシの羽。正確には鞘翅と呼ぶべきなんだろうけれども,本ページ的には深入りしない方針で,羽と書くことにしましょう。種類はおそらくアオドウガネと思います。マンションのバルコニーに,なぜか羽だけ落ちているのです。たぶん鳥が運んできて,いらない羽だけを落としておくようなのです。昨年8月25日頃に,全ての羽を拾い集めたはずなのに,今月みてみれば,ちゃんと落ちているのです。。
この羽を金属顕微鏡にセットして,DICモードにして,λ板を入れて,ニコンのコンテストの審査委員が喜びそうな派手な色彩効果を得ることもできますが,コガネムシの羽はDICモードよりも,偏光を適当に操った方がはるかによろしい。ので,きょうの画像は適当に偏光をいじって写したもの。コガネムシは円偏光であるというのは,こちらのサイトのお陰でずいぶん有名になりました。
アオドウガネは照明方向によっては鮮やかな緑色に発色して見事なものです。ほかの色があまり入ってこないので,アクロマート対物レンズで撮影してもくっきりはっきり写りやすい,というところもグッドです。道ばたにコガネムシが落ちていたら拾って持ち帰れるように,皆さんも,チャック付きビニール袋はいつも携帯しましょう(画像/MWS)。
2018年3月16日
これはいつもオススメしている光栄堂さんの拡散板EB-04の拡大画像。物体をセットして,DICモードにして,λ板を入れて,ニコンのコンテストの審査委員が喜びそうな派手な色彩効果のところで撮影。以前も書きましたが,この拡散板は,細かな構造が実はマイクロレンズになっているのです。それでとてもきれいに拡散してくれる上に,オパールグラスのようには暗くならない,という優れものなのです(画像/MWS)。
2018年3月15日
これはリチウムバッテリー(ボタン電池)CR2032を撮影したもの。直径2cm厚み3.2mmのこの電池には,ぶつぶつ構造があるのでDICモードでλ板を入れ,ニコンのコンテストの審査委員が喜びそうな派手な色彩効果のところで撮影。等間隔に研磨痕があります。二枚目はその研磨痕の拡大。こんな工夫により,この金属のざらざら部分で電池や電極との接触が保たれ,電子が動いていくのかと,メーカーさんの工夫に感心しました。でも,同じCR2032でも,つるつるの電池もあるので,実際の効果はどうなんでしょう(画像/MWS)。
2018年3月14日
金属顕微鏡のメンテナンスが一応済んだのでテスト。透過光学系ではないので,生物顕微鏡用の珪藻プレパラートでチェックというわけにはいきません。そこで日本国民によく知られている物体でテスト撮影をしました。テストというのは大げさで,動作チェックといった方が正しいかもしれません。物体をセットして,DICモードにして,λ板を入れて,ニコンのコンテストの審査委員が喜びそうな派手な色彩効果のところで撮影。特に不満のない写りで,レンズもプリズムもフィルタもミラーも清拭した甲斐があったようです(画像/MWS)。
2018年3月13日
顕微鏡部品自動増殖の法則により,幾らかの部品が転がり込んできました。その一部がきょうの画像。いつもお世話になっている方の包丁を研いで,修理して差し上げたら,研ぎ賃としてDICプリズムが支払われました。さすがに筆者の好みを把握されているようで,じつに有り難い入荷なのでした。世の中,お金で支払うというのはいちばん手軽な方法ではあるのですが最善とも言い切れません。過去にも労働がUV-LEDやガラスや対物レンズに化けたこともあります。人件費の支払いという面倒な作業をなくし,お金という中間プロセスを飛ばして物品にたどり着けるわけで,こういった「消耗品払い」という手法も悪くないのです(画像/MWS)。
2018年3月12日
中古品を集めると安価にプロ用機材が入手できるわけですが,プロがまともに使えるものを放出するわけがないので,大抵はどこかに不具合が見つかります。一番多いのは光学面の劣化で,これはメンテナンス可能なものと不可能なものがあります。後者に当たれば無駄な出費だったわけで,入手はカケでもあります。
メンテナンス可能なものを入手しても,バンザイというわけにはいきません。顕微鏡のメンテナンスというのは大変な重労働ですし,経験がものをいう世界でもあります。筆者もまだ,メンテナンス歴は20年に満たないので知らないことばかりですし,顕微鏡メーカーが持っているような専門の角度だしの治具や心出し対物などの特殊器具は持っていません。できることに限りがあります。唯一救いなのは珪藻プレパラートを持っていることで,これの完全な像を記憶しているので,メンテナンスを施しながら,機器をチューニングして,最終的に正しい状態に持ち込めることがあります。もちろんダメなこともあります。
30年を経過したような機材はいろいろな劣化が見られ,その中でも恐ろしいのが,光学素子の接着が劣化していて,プリズムなどがぽろっと落ちてしまうことです。今回手入れ中の機材でも,DICプリズムが取れかかっているものが一カ所,NDフィルタが落ちる寸前だったものが一カ所ありました。偏光光学系などで歪みを嫌うものは,最小限の接着剤で軽く留めてあるだけ,というものがあります。新品時にはそれでよくても,劣化が進むと恐ろしいことになります。
そういった弱点を探しつつ,時には接着をやり直すなどの細かな工作を行いながら,顕微鏡の寿命を延ばすのです(画像/MWS)。
2018年3月11日
毎日のように震災を振り返って生きている筆者にとっては,何だかつい最近の出来事のような気もするし,ずいぶん時間が経ったような気もします。でも,実際はだいぶ時間が経って物事が落ち着いてきたのでしょう。地震後しばらくは,本を読んでも活字が頭に入らなかったし,音楽をきくこともできませんでした。そういった精神状態が回復するのに,だいぶ長い時間が必要だったのです。
被災地でも建設関係の方々が仕事を続けていて,住宅が増えたり,新たな施設ができたりして,街の様子が少しずつ変化しています。その移り変わりの有様をこれからも眺めていきたいと思います。
きょうの画像は昨年夏の気仙沼。画像二枚目は防潮堤の計画を示すもの。海岸を+5mのコンクリートで隠してしまおうというこの計画は,筆者には正しいものとは思えません。いつでも海が見えること,海とともに暮らすことが沿岸の人々にとって大事なことなんじゃないかと思うのです。しかし津波に呑み込まれ火の海になった気仙沼の,住民の方々の要望であるならば,建設の方向に向かうのも仕方がない気もします。難しいことですが,現状を眺めて,自分なりの考えを持つよう努力することが,遠くに住む人間が精一杯できることなのかもしれません(画像/MWS)。
2018年3月10日
当サービスは主にニコン系の機材をメインに使っています。正確に書けば,日本光学工業(株)の顕微鏡群です。ニコンS型,バイオフォト,フルオフォト,ダイアフォト,オプチフォト(X)が高倍率検鏡用の主力機材です。これらの旧型機材を使う理由はあるのか?というと,ちゃんとあるのです。
その最大の理由は,まともな照明ができる,ということです。これに尽きると言ってもいいかもしれません。どの機種も,光源とコレクタレンズの間隔を調節できます。これにより,低倍率広視野と高倍率高開口数の照明を両立できます。このことが大事なのです。
解像限界の像を得ようとすれば,高NAのコンデンサの最外周に十分な光を入力しなければなりません。このような場面ではコレクタレンズとランプフィラメントの間隔調整を行い,コンデンサの最外周の全周すべてを光源像が覆うようにしなければなりません。上に掲げた機種群は,そのような調節が可能なように設計されているのです。最も優秀なのはバイオフォトですが,オプチフォトでも実用上十分です。S型はタングステンランプで輝度が落ちますがランプの調節は完全にできます。
これがプリセンタの機種になると,調節機構が省略され,まともな照明ができなくなります。中途半端な照明状態を,強めの拡散板を入れることによりごまかしています。姑息な手段です。対物レンズBFPを見ても,高NAの場合は中央部分だけが明るく照明されていて,事実上,コンデンサを絞っているのと同じことになります。この状態でイメージングすると,コンデンサ最外周の照明光が結像に寄与しなくなり,解像限界が著しく低下します。
最高級のプランアポ100x(1.40)を使っていても,照明系の設計が手抜きだと実際の性能が低下します。当サービスのイメージングレベルですと,照明系の調整ができない顕微鏡は,まったく使い物になりません。そのようなわけで,細かな調整ができる旧型機材を使っているのです。ニコンに限らず,1980年代後半から最近までの機種で,プリセンタのランプハウス,フォーカス機構なしのものは多いので,そういった機種はほとんど例外なく,当サービスの仕事には,そのままでは使えないものとなります。
ニコンでは2000年代になってエクリプスの後継機から,フライアイレンズを入れて中間の光源像サイズを大きくして,対物レンズBFPを満たす設計にしました。これはステッパーの照明技術の応用でしょうが,根本的な解決法の一つで,一応は評価に値するものです。しかしバイオフォトのランプハウスではランプフィラメントとバックミラーの像を重ねてムラをなくし,拡散板を入れなくても明るくムラの少ない,高NAの照明が可能だったわけです。時代が進むに連れて顕微鏡がいったん劣化し,その後,またまともな照明ができるようになっただけのことです。
最近の顕微鏡は鏡基に縦に電源を入れるようになったので,熱による膨張も無視できないものとなります。この現象も数社の顕微鏡で確認していますが,困ったものです。油浸レベルでの画像のつなぎ合わせができないのです。
このような事情を考慮すれば,古い顕微鏡ではあるものの,バイオフォトやフルオフォトなどはとても良くできています。直接焦点ができないなど,撮影系の不満もあるのですが,まだ当面は手放すことができそうにありません。
筆者はもともと水環境系の研究畑にいたので,工学とも光学とも無縁でした。光学など習ったこともありません。それでもこのような記事が書けるのは,珪藻をイメージングしているからです。珪藻ほど,顕微鏡の照明状態を表す物体はありません。最新式の顕微鏡を組み立て,珪藻をセットして検鏡し,さぞかし良く見えるだろうと期待して,「あれ?おかしい…」から「なんだこの設計不良は!」となるのに時間はかかりません(画像/MWS)。
*1 記事を書いていて,「奥さん! こんどのニコンの顕微鏡,フライアイが入ったんですよ!」「えっ,ついにフライアイ入れたの? それはいいね」「でもフライアイだけのために顕微鏡買い換えるわけにはいかないよなー」「じゃニコンにフライアイだけ入手できるか聞きましょうか?」といった懐かしい話を思い出しました。今から15年近く前の話です。三啓つくば営業所には,こんなやさしい営業マンがおられるのでした。当時いろいろ勉強させていただきました。
2018年3月9日
顕微鏡は照明や光学素子を操ることによって目的の像を作る装置ですので,種々の像を得たければ,それだけ機材を増やさなければなりません。
最初は透過明視野中央絞り,そこから暗視野,偏斜照明と進んでいきます。そして簡易偏光,偏光,位相差,蛍光と進みます。軸外落射は簡単にできます。病状が進行する知識が増えて技術が向上すると,透過微分干渉が欲しくなり,水浸対物にも目移りします。
乾燥物体の表面検鏡にも対応しなければと同軸落射明視野,暗視野と必要になり,落射微分干渉,2光束干渉まで揃えれば病状も末期的一通りのことができるようになります。
これらの機材を新品で買い漁ると,都市部でなければ家が一軒建ちます…というくらいの出費になるかもしれません。しかし顕微鏡のようなプロ用機材は中古市場もある程度あって,がんばれば高級乗用車一台分くらいの出費で揃うこともあるかもしれません。筆者は顕微鏡機材を集め続けて20年弱なのですが,ようやく一通りのことができるようになってきた気がします。
いっぺんに投資して一気に揃えた方が効率がよいですが,その時その時で必要なものは異なるので,必要になったら買うという方針で積み上げるのも悪くない気がします。いつでも何かしら欲しい光学機材がある,というのは,興味関心が続いている証拠で,人生が楽しく過ごせていることを意味しているのかもしれません。これを読んでいるお若い方,毎年ン十万円くらい機材投資すれば,10年後,20年後にやりたいことがいろいろできるようになっているかもしれません…(画像/MWS)。
2018年3月8日
来客時などに,予定外にちょっとプレパラートをご覧頂く…などという場面がよくあるのですが,そんなときに,直ちに取り出してスイッチオンで使える顕微鏡があれば便利です。そしてその顕微鏡が,ケーラー照明はもちろんのこと,偏斜や暗視野もできれば文句ありません。そんな用途にニコンS型は最適で,LED照明に改造したものでお客様にご覧頂く,などということが毎月一度くらいのペースでやってきます。
最近は放散虫をご覧頂くことも多く,低倍率でムラのない視野が求められるので,光源は発光面積の大きなものにしています。使用しているLEDは千石電商で売っている3W電球色(こちら)です。これに銅板をカットした放熱板を気休めにつけています。本年1月21日の記事で紹介した通りです。
先日お越し頂いた世界的顕微鏡メーカーの幹部の方,顕微鏡映像の方にもお見せしましたが,特に問題もなく動作し,珪藻等をご覧頂き無事に仕事を果たしました。さすがは専門家の方々で,偏斜や照明切り換えなどを自由に操作して像を調節しておられました。微動の手触りがよかったようで,何度も微動ハンドルを回している姿が印象的でした。
検鏡に使ったレンズはオリジナルのショートバレルのプランアクロマートとHKWの組み合わせにアクロマートコンデンサ偏斜付きです。現在でも必要十分な組み合わせで像も申し分なく,おそらく40歳は越えたであろうニコンS型は,当室ではまだまだ現役としてがんばるのです(画像/MWS)。
2018年3月7日
これは最近入荷したピンセット。プラスチックのピンセットはRubisのものを所有していますがTRUSCOは初めてです。使ってみると,筆者にとってはRubisよりもずっと使い勝手がよい…。知らなかった。。これはセラミックの薄板とか電子部品とかには,確かにむいているように思えます。カバーグラスもじゅうぶんいけそうな感じもします。
ではJシリーズの作業に使えるかとなると,しばらくの間は検討が必要な感じです。先端の剛性がないので不安なのです。ホウケイ酸ガラスに傷をつける可能性は低そうですが,ハンドリングを誤ってぽろっと落とす可能性は高そうな気もします。落下事故は致命傷です。Fontax Taxal No.3は高い剛性と硬度があるので,硬いガラスでもきっちりホールドします。ガラスに傷がつきますが,落下事故が防げるなら,管理された条件下で指定の場所に傷が入ることはまったく問題ないので,Fontaxを使っているのです。
逆に言えば,落としてもいいから傷がついてはまずい,という場面なら,このTRUSCOのピンセットが活躍するはずです。注意深く出番を探すこととしませう(画像/MWS)。
2018年3月6日
珪藻を並べるのはうんと面倒な作業です。その手順の細かさや守るべき事項は膨大なものです。手順や作業の難易度からいえば,確定申告の方がはるかに簡単なはずなのですが,筆者にとっては,確定申告の書類作成の方が猛烈に面倒に感じるからふしぎです。ふしぎふしぎ。ほんとうにやりたくない…。
所得から控除せずに○%を申告して,申告過納税を行えば面倒な計算が不要,というようにしてもらえないかしら。筆者は細かい計算をして一円でも節税しようという考えは皆無です。何にもしないで適当に払ってお仕舞いだと,ホント助かるんですけど…と税務署に言ったところで聞いてくれるはずもなく,仕方なく領収書の山と格闘するのです(画像/MWS)。
2018年3月5日
S-Kplは欲しくて探していたのです。ebayには転がっていますがけっこうなお値段で,でもまあ6万円くらいで仕事機材になるならいいかとも思っていました。恐れ多くもZEISSさんに問い合わせたりもしていました。でも在庫のどこかで見た気もしていて,機材箱をひっくり返して発掘すると出てきました…。
このS-Kplを持っていることはわかっていたのです。でも画像一枚目のような状態で専用のホルダと一体化しており,顕微分光か何かの特別な機材の仕様かと思っていました。それでお蔵入りになったのです。ところがZEISSさんから頂いた資料にはS-Kplの番号が書いてあり,その番号は手持ちのものと同じだったので,もしやと思い力任せにねじってみました。すると固着していたのが引っこ抜けるではないですか…。
必要なものは知識であることを痛感しました。こんなことに気づくのに入手から何年もかかるのですから,我ながら情けないものです。でも,宝物を発掘した気分もあって,ZEISSさんありがとう! なのです(画像/MWS)。
2018年3月4日
暗視野法にはいろいろありますが,きょうの画像は対物レンズ,コンデンサともに液浸の暗視野。対物レンズは40年ものに近い像面湾曲が盛大なレンズ。この像面湾曲をクモノスケイソウの凹みに合わせています。得られた画像を見るとバックの抜け方が乾燥系の暗視野とは異なる感じがします。液浸暗視野だとクモノスケイソウの繊細でエレガントな感じがよく出るような感じがするのですが,気のせいでしょうか…(画像/MWS)。
2018年3月3日
位相差顕微鏡は回折光と照明光の位相を調節して干渉時(像形成)に明暗のコントラストが出るようにしたものですが,これを図示しようとするとなかなかエレガントな方法がないようにも感じていました。よく見るのはサインカーブのグラフを使った説明で,これは現象の説明にはいいですが,光学系の配置に書き込むのにはあまりむいていない気がします。ところが最近,
こんな
図が転がっているのをみつけて,なんか,目から鱗が落ちる,という感じになっています。この図はどちらかといえば玄人向けの気もしますが,位相を白/黒で表現することにより,上手に光路上に表現できています。考えた人,頭いいなあと感嘆するのです(画像/MWS)。
2018年3月2日
これは海産のコッコネイス,コメツブケイソウ属と呼ばれている仲間です。表と裏で殻の格好が異なります。とても薄っぺらくてコントラストが弱く,暗視野でもなかなかきれいに見えませんが,対物レンズとコンデンサ,光源の組み合わせによっては鮮明なブルーが出ることもあります。こうなると見飽きません。。
筆者は珪藻並べの専門家みたいに思われているらしいのですが,そしてそれはもちろん正しいのですが,完成予想図を描きながら珪藻を並べるという作業ですから,先に「完成予想図」がないといけないのです。完成予想図とは豊富な検鏡経験の蓄積からうまれるものですから,並べる専門家である前に,検鏡のエキスパートでなければならないのです。そうしないと,コメツブケイソウがこんなふうに見えることもある,などと言うことは想像できないのです。
最近,珪藻を徹底して覗く時間が少なくなっており,その部分の脳みそが劣化する恐れがあります。強制的にでも時間を作って技術維持に努めなくてはなりません(画像/MWS)。
2018年3月1日
3月25日に,東京・品川にある東京海洋大学において2018年度 日本プランクトン学会春季シンポジウム「プランクトン研究、感性への原点回帰と新たな価値の創出」 が開催されます( こちら )。プランクトン研究の黎明期には,顕微鏡を通して初めて認識された数々の驚異の世界があったはずです。当時の人々の感性をくすぐったプランクトンたちの姿は,現代の人々にも目に新しいものかもしれません。今回のシンポジウムでは,それぞれの分野において先端的な活動を行っている方々を招いて,プランクトンの魅力ある世界について語って頂きます。サイエンス&アート系のシンポジウムは,水産海洋系ではとても珍しいもので貴重な機会になっていると思います。事前予約不要で,一般の方々も聴講可能ですので,ご興味のある方は覗いてみるのもよいかもしれません(画像/MWS)。
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