本日の画像
ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。 日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します 【2018年】 1月 2月 3月 4月 5月 6月
2018年6月30日
ここのところ大潮になると雨が降ったり,強風が毎日吹き荒れたり,不眠まつりで弱ったりとよろしくありません。今年はほとんどサンプリングに行けないまま,ずるずると時間が過ぎています。精神衛生上もよろしくないので何とかしたい今日この頃です。しかしそれにしても顕微鏡というのはよろしいです。サンプルを濃縮し,一滴とってみてみれば,様々な生き物の世界が広がります。これは自然そのものですから,自宅のデスクに向かいながらも,自然探訪のひとときを過ごすことができます。小さな生き物の姿に心を奪われる時間は,気分転換に最適です。風景というのは山や海だけにあるのでなく,顕微鏡下にも広がっています。きょうの画像はツヅミモとケンミジンコ。これも都区内の人工池サンプルに入っていたものです(画像/MWS)。 2018年6月29日
ぱっとしないサンプルに南アルプスの天然水を注いで放置した結果,なんとミジンコが沸いてきました。筆者はカイミジンコやケンミジンコはしょっちゅうみていますが,いわゆるミジンコとは縁遠く,サンプルに入っていた試しがありません。ので,手持ちのサンプルでミジンコを検鏡したのは,つくば市小野川の池から採取したサンプル以来で,13年振りになります。なんかうれしいですね。形からは,オカメミジンコでしょうか。 2018年6月28日
池の沈殿物や浮遊物を濃縮して持ち帰っても,あまりぱっとしないサンプルで生物に乏しく,そのまま用無しというものも多いです。そういったサンプルは,2Lのペットボトルをカットした容器に入れ,市販の天然水を注いで屋外に放置しておきます。一週間も経過すれば,最初に入っていたタネをもとに種々の生物が増殖して賑やかになります。きょうの画像もそんな感じで,人工池の沈殿物サンプルでしたが生物の遺骸や鉱物ばかりでぱっとしないものでした。それが一週間後にはいろいろな藻類が沸いてきて観察に適したものになっています。モデルになってもらったのはシアノバクテリアの間を漂う小型珪藻です(画像/MWS)。 2018年6月27日
きのう掲載したテストプレートは,対物レンズやコンデンサのを選んで適切な照明を施すと,きょうの画像のようにも表現できます。おおまかには,色を出すには低開口数の対物レンズに高開口数のコンデンサという具合になりますが,種によって色の出方が違うので実際にはそれほど簡単ではありません。珪藻といえば微細構造,というくらいのもので,解像限界に挑む材料として利用しているのは世界共通です。でも,色を表現する素材としても面白いものです。完全黒バックに抜けた闇夜に鮮やかな色で珪藻が浮かび上がれば,それは見飽きない眺めになることと思います(画像/MWS)。 2018年6月26日
これは細長い珪藻(羽状珪藻)を一列に並べた標本を暗視野で撮影したもの。入っている珪藻は河川,池,干潟,沿岸など様々です。珪藻のもつ周期構造の違いにより特徴的な色が見えています。こういった絵を何も知らない人が見ると,「これってCG?」という反応が返ってきます。ここ数年はそれが顕著で,「こんなことできるわけない,CGに決まってるだろ」という感じなのです。まぁ,それが一般的な反応なのかもしれません。 2018年6月25日
公園の人工池ではいい具合に珪藻が増殖中。コンクリートに石ころが並べてある池で,鉱物の流入が少ないというよい点もあります。増えた珪藻を吸い取って顕微鏡で見るだけで,けっこうきれいな珪藻群集がみられることもあります。この池は子どもたちが遊ぶこともあって,定期的に業者清掃が入ります。ブラシ掛けして水を流してきれいさっぱりにしてしまいます。しかし珪藻はどこかに生き残っているようで二週間もすれば復活してきます。出てくるのはきまってニッチアで,ここ10年変化がありません。最近はメロシラがみられるようになりましたが,ピンヌラリアはみたことがありません。 2018年6月24日
ここのところ文京区方面でよくハクビシンが歩いている。22,23日と連続して至近距離で遭遇した。近づくと一応は逃げるんだけれども,人慣れしているのか,ネコと違って,あまり慌てない感じがします。ここ数年の経験的には,都内で夜見かける動物といえば野良猫かハクビシン,というくらいの感じ。ネコは夜にエサをあげにくるバカ人間が多数生息していて,たぶんそのせいもあって数が減らないんだろうけど,ハクビシンはネコのエサを食べることはないような気がする。あるいはどこかで毎晩果物をハクビシンに献上している奇特な人間が存在するのか…。 2018年6月23日
顕微鏡写真撮影では,様々なコントラスト法に対応する機材を所有していれば,さぞかし素晴らしい絵がとれるだろうと思っている方が多いかもしれません。それは確かに一面の真理ではありますが,それ以上に大事なのは,物体の性質を見抜いて最適な手法で撮影することです。 2018年6月22日
一般的な微分干渉法では解像に方向性がありますので,見たい構造に対して適切な方向からのシャーをかけて観察することが大事です。ごく弱い段差などは,シャーの方向を変えるだけで見えなくなることもあります。ので,むかしの微分干渉顕微鏡には回転ステージがついていました。近年ではこれが省略されたものも多く,微分干渉顕微鏡は高感度の検出装置というよりは,高コントラストで観察する定性的な装置として販売されているような気もします。 2018年6月21日
これはSpyrogiraの一種。ありふれた藻類で緑色の糸状のものです。池や沼,河川敷の水たまりなどでみられます。同じ糸状の藻類でもMelosira variansという珪藻もいて,こちらは茶褐色をしています。シリカの多いゆるやかにながれる水の場合は珪藻が優占することが多いですが,シリカが枯渇したり,水に動きがない場合はSpyrogiraが出てくる傾向があります。同じ糸状でも,茶色と緑色という違いがありますので,肉眼でも何となく,ここはメロシラだな,ここはスピロギラだな,と予想ができることがあります。筆者はいつも水辺に来ると,そんな感じでそこの生物群集組成を気にしつつ,水の流れや藻類の色などを観察するのです(画像/MWS)。 2018年6月20日
きのうのEunotiaが群体からばらけたところがきょうの画像。細胞表面にピントを合わせると,淡いながらも珪藻被殻の微細構造が見えます。内部にピントを合わせると核の領域が透明に抜けて,周囲をべったりと色素体が覆っている様子がわかります。NA=1以上の領域でこのレベルの絵をたくさん掲載した図鑑があれば,生サンプルだけでも珪藻の同定がけっこうできるはずですが,まだ時代はそこまで進んでいないようですね。本ページの皆様の活躍に期待することにしましょう(画像/MWS)。 2018年6月19日
珪藻は二つの殻がシャーレのように組み合わさっていて,その中に細胞内容物が入っている…というのが教科書的な説明ですが,実際の珪藻はシャーレのようなぶかぶかしたものではなく,NC旋盤で超精密加工した金属筒がぴったりはまるくらいの超高精度なケースになっています。その様子は光学顕微鏡をもってしても,そんなに簡単に写せるものではないといった感じです。 2018年6月18日
久々にみたミドリムシ。動き回るので撮影がむずかしい…(画像/MWS)。 2018年6月17日
顕微鏡とデジタル写真技術の組み合わせは,まるでソーダガツオと手打ち蕎麦が出会ったかのような完璧なものかもしれません…。様々な画像処理ができるようになったので,顕微鏡対物レンズで補正しきれていない収差を画像処理で消すことも可能になりました。しかも,怪しいインチキな画像処理で収差を無理矢理消すのではなく,レンズに残存する収差を,光学的な理論に沿った形で処理することが可能なので,倫理上の問題もありません。 2018年6月16日
顕微鏡写真撮影にはたくさんの知識と経験が必要です。顕微鏡の基本的な取扱はもとより,各種の照明技術や,光路上をきれいに保つメンテナンス技術,カメラ操作,振動/ブレ対策,フィルターワーク,画像処理などが主なところで,それぞれの項目について深い世界が広がっています。 2018年6月15日
これは別のクモノスケイソウ。きのうの被殻よりもずっと小型のものです。これをNA=0.7で撮影。珪藻の殻のもつ微細構造は小さいので,全体の姿と微細構造の両方を画面に収めるには小型の被殻が適しています。というわけで小型の被殻をいくつかマウントしてよい個体を撮影したものです。この個体を撮影した画像は昨年の国際珪藻シンポジウムにも利用されました。が,あのときより技術的には,ちょっと進歩している気がします。ちょっとした機材の差とか,設定とか,画像処理でいくらでも絵は変わるのですが,たまーに,この方法は間違いなく有用,という手法や組み合わせを思いつくことがあって進歩に結びつきます。残念なのは,そのひらめきがいつやってくるのか分からない…ところです(画像/MWS)。 2018年6月14日
このクモノスケイソウを覗き続けて7年以上になります。たった一個の珪藻の殻なのですがじつに奥深く,まだ試していないレンズや照明条件などがたくさんあります。時々おもいついたように試して,たまに一歩前進の感覚が得られます。きょうはNA=0.55の領域であまり分解能を重視せずに仕上げてみたもの。10年間にはできなかった仕上がりです。たくさんの対物レンズ,コントラスト法,照明条件,カメラ,画像処理の組み合わせを考えれば,一つの珪藻の殻を撮影するにも無数の組み合わせがあります。初心者は1回覗いて「もう見た」と言って飽き飽きしてお仕舞いになることもありますが,上級者になると一個の殻を何年も見続けるのです。何度も見る,確かめてみる,この繰り返しが生み出すものは大きいと言わざるを得ません(画像/MWS)。 2018年6月13日
これは浮遊性有孔虫の殻。外洋の堆積物サンプルから分離したものです。炭酸カルシウム系のバイオミネラルは,ある深さ以上になると溶解する性質があるので,そんなに深くない堆積物から分離します。アルカリへの抵抗性は大したものなので,珪藻などを溶解除去してしまうこともできます。この画像に写っているものは結構な大きさなので沈降分離も容易です。 2018年6月12日
微化石にはシリカ系,炭酸カルシウム系,リン酸カルシウム系,有機物などいろいろあります。これらの化学的な性質は異なりますので,試料処理の方法も変えなくてはいけません。海のサンプルにはシリカ系も炭酸カルシウム系も両方入っていますが,シリカ系は強酸でも大丈夫ですが炭酸カルシウムは跡形もなく溶けてしまいます。強アルカリで処理すれば有機物の溶解に有利ですが珪藻はまもなく溶けてしまいます…。こういったことがあるので,同じ試料でも2つの処理をして,シリカ系と炭酸カルシウム系を分けなくてはいけません。なかなか手間がかかるのです。 2018年6月11日
ヒモイカリナマコとトゲイカリナマコとでは骨片のサイズが全然違います。きょうの画像は同じ倍率でそれぞれを写したものですが,トゲイカリナマコは画面に入り切りません。。しかしサイズが異なっていても同じ形態のものを同じ成分(炭酸カルシウム)で作るのですから,この形が海底でナマコ的に生きていくためには何らかの重要な意味を持つのでしょう。シルトの底質で生活するのにイカリが重要なのだとすると,シルトの粒径とイカリの大きさに関係があるのかしら…などとついつい研究モードの想像を巡らせたりもします。とっくの昔に誰か調べていそうだけれども(画像/MWS)。 2018年6月10日
これはコアミケイソウ,Coscinodiscus属の一種です。数千万年前から存在する海の珪藻で,今なお主役です。水温が低いところに多く,高緯度の沿岸では大量に発生することもあります。日本沿岸でもふつうで,東京湾でプランクトンネットをひけば本種が入っています。ハニカム構造のような繊細なガラスの殻ですが,このハニカム構造の穴の中には,もう一つ同じような極微の網目構造があり,透過電顕でやっと見えるような小さな構造です。このためか,粘性の高くなった封入剤などは浸透しないことがあり,封入に苦労する種でもあります。でも,ばっちりきれいに封入できればこの画像のように,何とも言い難い立派な姿なのです(画像/MWS)。 2018年6月9日
当サービスは顕微鏡で覗いて魅力的なものならどんなバイオミネラルでもマウントしてみようとの方針で日々暮らしています。しかし個人の力には限りがありまして,サンプル入手にはたくさんの専門家に助けてもらっています。ここ数年は放散虫の専門家に大変なご協力を頂いているのは皆様もご存じの通りです。 2018年6月8日
クロネコさんが玄関で筆者の機材をひっくり返し,玄関一面にSV-10がばらまかれたのは数年前の話。筆者はこの小瓶を高校生の頃から愛用しており,現在の仕事でも主力はSV-10なのでした。そのSV-10がぶちまけられて,一部は割れてしまいました。。 2018年6月7日
きのうの試料をつつき回して一日経過後の状態。足りなくなってきたヒドロセラとアクチノキクルスとディディモスフェニアを補充という感じになっています。 2018年6月6日
珪藻を並べたプレパラートを見た人からのお決まりの質問は,「これ,並べるのどのくらいかかるのですか?」というものです。いままでに何度聞かれたかわからないくらいです。きっと,どのくらい大変な作業なのかを時間に換算して聞きたいのでしょう。しかしまだ受けたことのない質問もあって,それは「材料集めにどのくらいかかるのですか?」というものです。 2018年6月5日
キムワイプはサイエンスの場でふつうに見かける優れた拭き取り紙です。が,これのS-200には大きな欠点が存在した過去があります。きょうの画像の右側が旧製品なのですが,このままキムワイプを取り出すと,箱ごと持ち上がってしまいスムースに取り出すことができません。そればかりか,キムワイプの両端が箱のボール紙でこすられて紙粉の発生につながります。製品の目的を考えるとじつに不思議な欠陥で,しかも,大変な長期間,欠陥製品のまま供給され続けました。 2018年6月4日
きょうの画像は海にいる珪藻でトリケラチウム属の一種です。沿岸にふつうに見られる種ですが,数は多くありません。大量のほかの珪藻に混じってぽつぽつと見つかる程度です。珪藻はガラスの殻に包まれた光合成生物で,シャーレのように2つの殻が合わさって,その中に細胞の実質が入っています…。というのが教科書的な珪藻の説明です。まあ,その説明はもちろん正しいのだけれども,でもこの形からシャーレを想像するのは無理かもしれません。画像の左側は殻を内側からみたもの。右側は外側から見たものです。同じ大きさの殻を探して表と裏にして並べてみた標本を撮影したものです(画像/MWS)。 2018年6月3日
先週,超高級プレパラート【J357】の捜索願を行いました(こちら)。その結果,大変多くの方のご協力を頂きました。情報拡散にご協力いただきましたうちの一人,秋山満夫様から,概況についてのご連絡を頂きましたので紹介致します。 2018年6月2日
これはドラヤキケイソウ属の一種。まるく見えますが膨らんだ球面でドラヤキのカーブに結構似ています。暗視野照明で見ると青色に輝き,暗い背景と相まって,宇宙的なものを感じます。被殻に刻まれている網目模様はとても細かいようで,相当きれいに洗わないと封入剤が入っていかないことがあります。この珪藻はどこにいるのかよくわからないのですが,珍しい種でもないようで,沿岸で付着珪藻のサンプリングをすると少数ながら入ってきます。その少数をコツコツ集めて大事に大事に使っています(画像/MWS)。 2018年6月1日
これはカザグルマケイソウ属の一種。和名は見たままの感じで,カザグルマに似ているからつけられたものでしょう。プランクトンとして普遍的に出現し,日本沿岸でもふつうです。が,どちらかというと底の方にいる感じがします。海が荒れて濁っているときの方が出現頻度が高い気がします。 Copyright (C) 2018 MWS MicroWorldServices All rights reserved. (無断複製・利用を禁じます) 本ページへの無断リンクは歓迎しています(^_^)/ トップに戻る |