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ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
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お知らせ
 

仕事が飽和しているため,納品等が遅れております。現在のところ解消の目処はたっておりません。すみませんが,短納期のご希望には添えないことがありますことをご承知下さい。






2018年7月31日




秋葉原の千石電商に出向いてキムワイプ(S-200)を補充。前回は旧製品でしたが,今回は,取り出しやすくなったNEW製品が店頭にありました。これ一箱で240円。とりあえず二箱買って当室の在庫にします。以前は段ボール箱でまとめ買いしていたこともあったのですが,あまりにも場所を取りすぎ,狭い狭い当室がキムワイプだらけの数年を過ごすこととなりました…。ので,深く反省し,こまめに店頭買いすることにしたのです。

近所では東急ハンズと千石電商にキムワイプがおいてあるので,それらのお店を「在庫の一種」と考えて,当室のスペースを確保するようにしています。こまめに買いに行くということは,運動不足の筆者にとっては貴重な運動機会にもなるので,有り難いのです。今回も,貴重な運動機会を逃さないように,秋葉原から当室まで32,3℃の暑い中を歩いて帰宅しました。ちょっと暑すぎましたが,久しぶりの運動にはなりました。何しろ今年の夏は連日35℃越えで,夜間でも30℃をなかなか切らず,運動どころではなかったのです。

キムワイプをもっとも大量消費するのは顕微鏡の分解清掃で,すぐに一箱使ってしまいます。標本製作では,散布スライド製作時には結構使います。Jシリーズでも使いますが,カットして小さくした紙片を使うので消費はそれほどでもありません。キムワイプはカバーグラスとの相性がよく,マツナミやツァイス,ソーラボから供給されているD263系のガラスであれば,乾拭きでも傷をつけることは,まずありません。青板でも,相当力を入れてもキムワイプを原因とした傷が入ることは希なので,安心して使うことができます(画像/MWS)。








2018年7月30日




大人も子どもも「夏休み」のある時期となりました。夏休みといえば自由研究です。小学校,中学校の頃に自由研究を提出させられた想い出は皆さんお持ちのことでしょう。自由研究というヤツは,子どもの頃はさほど「やりたい」とも思わずに取り組んでいたものですが,大人になるとあれもやりたい,これもやりたい,しかし時間がない!ということになるのです。なので,日頃から勉強を怠らず題材や知識を蓄積しておき,短い夏休みに集中的に取り組むのが賢い大人のやり方…ということになるのです。

きょうの画像はそんな貴方にお勧めする二冊。刊行時に紹介しましたが,大事なもの良いものは何度でも採り上げて人々に周知するのが教育というものです。この田所先生による二冊は,写真のお手本としても,光学入門書としても,光学実験の手引き書としても使えるじつに中身の詰まった本です。きれいな写真に癒されるのでストレス解消にも使えます。パラパラと眺めているだけで,日頃の忙しさで高まったよくない興奮状態が緩和されていく気がします。

写真撮影というのは光を自在に扱って結像させ記録することですから,光学の基礎知識があると,より深く活用できます。『光の科学』『光の実験』で位相や偏光や干渉や蛍光について学び,イメージングの訓練を行えば,知識が深まるだけでなく経験も蓄積するので,本物の力となることでしょう。採り上げられた題材は硬派の教科書の本流をいくような内容でありながら,数式を一切使わずに,直観的に理解させる写真表現,実験レイアウトは他にまねのできる人は,そうはいないでしょう。

現在も版元から供給が続いているのも有り難いことです。まだお持ちでないかたはぜひお手にとって中身を確かめてみることをお薦めします。自然科学書を扱う大型書店であれば,店頭に置いてあることがほとんどです(画像/MWS)。








2018年7月29日




『珪藻観察図鑑』に収録されているのは珪藻類のみで,ほかの水界微生物は一切入っていません。ですので,もし,珪藻以外の水界微生物が収録されている図鑑があれば,相補的で,とても便利だと思います。そしてそのような本が存在するのです。月井先生による『淡水微生物図鑑』です(こちら)。この2冊があれば,相当な数の分類群についての情報を得ることができ,それでいてコンパクトな書籍で,顕微鏡観察入門用にはとても向いていると思います。

残念なことに『淡水微生物図鑑』は現在,品切れのようです。版元が絶版を宣言したかどうかはわかりません。そしてさらに残念なことに,月井先生は,今年の2月に急逝されたのです(こちら)。月井先生といえば,原生生物情報サーバを構築した,原生生物の鬼のような方で,誰しも検索等でお世話になっている経験があるかと思います。先生がこの情報サーバを大学から個人運営に切り換えている最中に,不帰の人となってしまったのでした。じつに惜しい人を私たちは失いました。

このような経緯があるので,『淡水微生物図鑑』の増刷は難しいかもしれません。しかし関係者に連絡をとって著作権に関する権利関係を整理して,初版と同じ内容のまま増刷を行うことは不可能な話ではありません。『珪藻観察図鑑』が出版されたタイミングで,ぜひ誠文堂新光社さんには,『淡水微生物図鑑』の増刷を検討頂きたいと思っています。両者の書籍が同時に販売されているということは,日本の科学,あるいは文化活動の質を高める上でとても重要な,いわば公益性のあることでもあります。科学入門の世界をつねに大切にしてこられた誠文堂新光社さんだからできる仕事でもあるわけで,ぜひ,『淡水微生物図鑑』の復活をお願いしたいのです(画像/MWS)。








2018年7月28日




『珪藻観察図鑑』という書籍が刊行されました(こちら)。著者は国内の珪藻研究をリードしている南雲・鈴木・佐藤の各先生です。珪藻に関する書籍はとても少なく,また過去に出版されたものの大半は絶版になっていて入手が困難でした。専門家向けの本は現在でも市販がありますが,非常に高価で入門用にはとても手が出ないものでした。そのような中,わずか3,000円(+税)で珪藻観察に役立つ情報が満載の本書が出版されたわけですから,これはまさに待望の一冊といえるでしょう。

本書は顕微鏡観察で視野に現れた珪藻に名前を与えられるよう,「図鑑」として役立つように配慮されています。光学顕微鏡による画像に加えて,電子顕微鏡による被殻の高精細な画像,また生細胞のときの群体の様子,色素体の配列などもわかるようになっています。一部の種では光学顕微鏡と電子顕微鏡の両方の画像が対比的に掲載されており,それぞれの手法での見え方の違いを知ることもできます。

珪藻は生息環境別に整理されており,観察者に使いやすいものとなっています。掲載種もかなり多く,比較的メジャーな種が選ばれているので,この図鑑で探してみればけっこう種名,属名が判明すると期待されます。種の説明には,殻長,殻幅,条線密度といった基本的なデータが記載され,専門家でも役立つものになっています。

本書を利用する上で注意すべき点の一つは色再現性です。カラーの顕微鏡画像の品質が一定でなく画像処理法もまちまちなので,正しい色再現が確保されていない画像があります。黄色みが強かったり,赤色が出過ぎていたりしています。実際に生きている珪藻を顕微鏡で覗いても,それらの画像と同じような色彩・コントラストには見えません。ですので掲載画像は「画像処理済みの強調画像」であることを念頭におくとよいと思います。もう一つは,注意すべき点ではありませんが,「珪藻観察図鑑」という書名であるからには,顕微鏡に関するページも欲しかったところです。本書で利用している顕微鏡はほとんど研究用顕微鏡で中には100万円〜300万円の高級機もあります。本書を手に取った中高生が,顕微鏡を欲しいと思ったときにどのようにすべきなのかをガイドしてあげることが必要だと思います。

このような点があるにせよ,本書は特別にユニークな,顕微鏡観察者の味方であることに間違いありません。この一冊があるだけで,これまで調べる気も起きなかった珪藻の名前がわかるようになり,世界が広がることでしょう。顕微鏡を覗かない日でも,つい手にとってパラパラめくって眺めていたい魅力のある本でもあります。珪藻の本もついに一般書店で販売される時代が来たかと感慨深いものがあります。ぜひ皆様もお手にとってその内容を確かめてみてください(画像/MWS)。








2018年7月27日






透過明視野による検鏡では,物体は光に透かして観察することになります。写真撮影でいえば逆光条件そのものです。なので自動露出で撮影すると,コントラストの高い物体などはアンダーになってしまいます。そこで露出補正をプラス側に振るわけですが,その加減がけっこう難しいのです。きょうの画像は簡易顕微鏡での撮影で,照明,露出補正(+1.7)を同じにして撮影したものですが,視野が変わっただけで露出補正の度合いが狂っているのがよくわかります。オート露出で露出補正をかけているのが原因の一つですが,マニュアル露出で対応したとしても,場所によって標本の透過率が変わったりすることもあるので完全ではありません。いくつかの露出で撮影してよいものを選ぶという旧来(フィルム時代)からの方法は,現在でも有効だと思います(画像/MWS)。








2018年7月26日




なめこ3パックはどんぶりに移して電子レンジで加熱(600W,5分)します。これとは別に,ぶなしめじ1株をばらして,電子レンジで加熱(600W,4分)。いずれのきのこも洗いません。加熱処理が終わったら両者をあわせ,しょうゆをぐるぐると入れて,酒少々を加えよくかき混ぜます。これを電子レンジで加熱(600W,6分)します。加熱が終わったら清潔なスプーンなどでよくかき混ぜて出来上がり。当室の常備菜,増量なめこの出来上がりです。

増量に使うきのこは,エノキダケでもヒラタケでも構いませんが,微妙に風味が変わります。なめこ本来の風味を壊さずに増量したい場合は,ブナシメジが一番です。ヒラタケを加えると,市販の,「ミックスきのこ」に近い感じの風味が出てきます。エノキダケは風味的にはOKですが,食感がだいぶ違うので,刻んで加える必要があります。

この増量なめこの使い方はいろいろ。大根おろしと和えてもいいですし,なめこおろしそば/うどんでもいいし,ごはんのお供でもバッチリ。インスタントのタマゴスープに加えればきのこ玉子スープに早変わり。市販の味付けきのこには砂糖をはじめとしていろいろな調味料が入っていて,けっこう「くどい」感じがしますが,自家製なら酒としょうゆだけなのですっきりです。熱燗の時期なら日本酒のお供にも最適なのです(画像/MWS)。








2018年7月25日




試料の処理中は頻繁に検鏡して,酸化処理や洗浄が進んでいるか確認します。通常は少量の試料をとってニコンS型で検鏡するのが常です。このとき検鏡した試料は捨てるか,量が多い場合は回収します。たまに,貴重で捨てられない試料があって,さらに回収が難しい試料というものがあります。炭酸カルシウム系のものでそのようなものが多く,処理が進むにつれて,表面張力で浮いてしまい回収もできない…ということがあったりします。

そのような試料は処理しつつ,その容器のまま検鏡できれば理想。そこで登場するのが千代田の倒立顕微鏡です。これできょうの画像のようにして沈殿している試料を検鏡します。ざっと見れば大体のことはわかるので,この程度の検鏡でもOKなのです。もちろん,ダイアフォトを持ち出して検鏡してもいいわけですが,あまりにも大きく重たく,準備に手間を食います。小さいことは正義なのです。

どこかのメーカーさんが,うんと精密な携帯型倒立顕微鏡を開発してくれないかしら。もちろん,パワーLED内蔵で,偏光もDICも蛍光も可能なもの。現在の技術であれば難なく作れるはずなので,ニコンさん辺り,やってくれないかしら。プラスチックをほとんど使わないメタルっぽいやつを(画像/MWS)。








2018年7月24日




サブカル系に強い出版社,アスペクトの周辺が騒がしくなっている。

アスペクト、作家が印税未払いを告発…一斉に出版契約解除、オーナーはあの有名起業家?  −Business Journal

出版業界では印税未払いはしばしば聞く話で,それだけなら珍しくないのかもしれませんが,「一斉に出版契約解除」というのは聞いたことがありません。そうとう珍しい気がします。どんな具合のことが起きているのかと調べてみると,

初めての自分の本で体験したある出来事。 −情景師アラーキーの ジオラマでショー

という報告を見つけました。

情景師アラーキーさんは,筆者とほとんど同世代。仕事の内容も細かなものを製作するということでよく似ています。Web経由で出版オファーがきて本を出版したこと,その本の内容が,自分の作品を自分で撮影してエッセイをつけたもの,という点まで一緒です。おまけに印税不払いを喰らったところまで似ています。ので,他人事のように思えず,じっくりと読んでしまいました。

情景師アラーキーさんの話のポイントは,担当編集者が退職したという部分です。この編集者は,自分が担当した著者に対する,会社の計画的な印税不払いを知っていて,それに耐えられずに退職したと想像することもできます。債務が完全履行されていない段階で編集者が退職するというのは一般的に不払いの兆候とみて差し支えないように思います。

出版社アスペクトは,初版4000部,増刷12500部の出版を行ったとのこと。初版は利益なしと仮定しても,初版以外の12500部に関しては,増刷なので利益率は高く,六掛けで計算すれば概算で1500万円になります。自分たちはこれだけの利益を情景師アラーキーさんの著作物から得ているのに,著者に対してたった200万円程度に過ぎない正当な利益の分配(=著作権使用料金の支払い)を行わなかったのです。

著者がフリーランスで弱い立場であるので,そこをねらい打ちにして,相手からの催促があるまでは黙っていて増刷分の印税の支払いを行わず,印税分までも出版社の運営資金に充てているという点も,この手の報酬不払い案件にはよく見られることです。たくさんの売上金をつくってくれた著者に対して,支払い遅延をひた隠しにする。誠実さも何もなく,恩を仇で返すような仕打ちです。アスペクトという出版社は,すでに書籍を出版するという事業活動を行う経営体力がないのに,著者を食い物にしながら会社の存続を図っているように見えます。

報酬不払い−債権回収の話は,なかなか表面化しにくく,細かい経過を知ることができません。情景師アラーキーさんの報告は債権回収までこぎ着けたやや希有な事例ですが,印税未払いを行う出版社の振る舞いと,債権回収がいかに重労働かということが漏れなく記されており,一読をお薦めします。

それにしても,こういった報告を読むと,出版社が著者を殺していることがよくわかります。情景師アラーキーさんがどれほど苦しみ,時間を費やし,無駄な怒りを発生させられ,この希有な才能を活かす時間を失ったかと思うと,このアスペクトという出版社の罪深さは,単に印税不払いに止まるものではありません。優秀なクリエイターの仕事を妨害したことに対して,損害賠償請求してもよいと思うほどです。

ただ,このアスペクトという出版社は,完全な悪党でもないような気がします。そう判断する理由は,まず出版契約書を交わしていること。そこには契約金も印税支払いも支払期日も書かれているわけです。いちおうは,まともな仕事です。初版の印税は,部分履行になりますが一部は支払われています。再版についても隠さずに知らせています。交渉後は,支払い遅延が続くものの,少なくとも会話成立しているように見えます。筆者がかつて経験したような,出版契約書が存在しないかのように振る舞い,印税も支払期日もこちらが催促するまで一切,文字にせず,初版の印税から完全不払いで,出版から約一年経過しても不払いで沈黙したまま,という某出版社の振る舞いよりはマシに見えます。

興味深いのは,情景師アラーキーさんのケースでも筆者のケースでも,どちらの出版社も不動産の売却を行っているらしいこと。経営が行き詰まるとビルを売却して運転資金を確保するためなのでしょうが,そんな状態になれば,終わりへのカウントダウンでしょう。そんな状態の出版社は,著者に迷惑をかけるだけの存在に過ぎないので,はやく終わってしまった方が新たな被害者が減るのでよいと思いますが…。

それにしても情景師アラーキーさんの文章,行間に悔しさがにじみ出ていて,本当に大変な,不愉快な経験だったろうと同情します。人生で初めて出版できた本。せっかくのチャンスを活かそうと人生を賭けて渾身の力で書き上げた本。素晴らしい反響で売れ行きも上々。次々と増刷。

なぜこういった仕事の最中に,全てを吹き飛ばすような不愉快な経験をしなければならないのか。

なぜせっかくの処女作を絶版にしなければならないほど精神的に追いつめられなければならないのか。

なぜ人生を賭けて制作した最高の自著を見るたびに悲しい気持ちにならなくてはいけないのか。

結果的に債権回収に成功はしましたが,そんなものとは引き替えにならないほど大きなものを失ったのではないかと心配します。というのは,債権回収しても書籍は絶版のままだからです。最高の評価をもらっている自著を自分で絶版にするのは,心がえぐられるような,引きちぎられるような判断を必要とします。それでも決断したのは,出版社との信頼関係が完全に崩壊しており,人を欺した,詐欺師のような会社に,ご自身の著作物から利益を取られるのは耐え難いとの思いがあったからでしょう。信頼できない不誠実な人間に利益を与えるよりも,自著を自分で殺めた方が,まだ気が楽だという究極の判断を迫られたに違いありません。

担当編集者が早々に退職してしまったことにより,著者と出版社の関係は「出版」ではなくて「債権回収」をどうするかの一本に絞られてしまっています。出版社というのは,担当者が不誠実であれば,たちまちにしてこのような事態に陥るので,特にフリーランスの人は注意と覚悟が必要です。





画像は,そんな話題とは完全に関係のない,プランターのシソ。毎日せっせと水をやっていることもあり,今年は好調です。茎から切り離されれば30分もせずに灼熱の日光に焼かれて生命活動を停止するほど脆弱なのに,わずか1〜2ミリの茎に支えられて,ここを通過するわずかな水分を均等に蒸散させて温度管理を行い,化学結合を切断するほどのエネルギーを持っている光量子を葉緑体でとらえて素早く還元エネルギーの流れとして最終的には炭素固定する。植物というのは驚嘆するほど困難なプロセスを日々淡々と行っていて,すげえなあといつも関心しているのです(画像/MWS)。








2018年7月23日




7月23日00:00の気温は,本駒込気象台によると32℃でした。グラフをみると平衡温度に近く,明け方まであと2℃下がるのは難しそうに見えます。最低気温が30℃を超える夜のことを超熱帯夜と呼んでいるヒートアイランド学者がいましたが,とうとうその日がまたやってきてしまうのでしょうか。

もっとも,超熱帯夜は東京都区内の西部,北部では,実質的にはたびたび起こっているような気がします。コンクリートやアスファルトの蓄熱体が夜間に熱放散を行いますが,湿度が高く放射冷却が起こりにくいような条件では蓄熱体に毛布が被さっているようなもので冷却が進みません。それで局部的には最低気温が30℃越えのところは,今月も多々あったことと思います。

当室も例外ではなく,コンクリートが蓄熱して32℃ほどあるので,空調を止めれば室内の熱源の効果もあいまって33℃越えになります。換気をすればよいかというと,そんなに甘くなく,当室も含む周囲からの廃熱の影響で,バルコニー周辺は高温になっています。これを書いている23日0時現在のバルコニー温度は,35℃です。湿度も高く,沖縄かアフリカか,どこか涼しいところに逃げたい気分です…。遮光カーテンで日射を遮っているバルコニーなのに,22日の昼の最高温度は39℃までいきました。

今年の夏がひどい高温であることは鉢植えへの水撒きでわかります。例年では,8〜10リットル/日のペースでしたが,今年は,12-16リットル/日のペースで水やりしないと植物が枯れてしまいます。撒いた水が全て蒸散に使われるとすると,熱的には例年よりも約1.5倍のエネルギー入力が行われている,ということになります(画像/MWS)。



(追記) その後の朝の最低気温は,本駒込気象台によると30.0℃でした。北東の風が入り,予想よりは下がりました。なお当室の最低気温は33.2℃でした。22日の最高気温は39.1℃でした。この温度を利用して何かできないものか…。




2018年7月22日




あついと冷やしが食いたくなりますね…。筆者の作る冷やしは,水道水で麺を締めただけなので冷やしていないのですが,それでも十分うまいです。よく氷水で麺を締めているのを見かけますが,そういう胃腸に暴力をふるうようなことは,20代で終わりにしました。慣れると30℃の冷やしでも何の問題もありません。というか,お腹に優しいです。

タレは中華ごまだれ一択なのだけれども,困ったことに,このごまだれが年々糖度が増していて,現在市販のものはアイスクリームと同等かさらに甘い感じです。たれ一袋に砂糖が茶さじ2,3杯は入っているだろう甘さです。タレそのものを飲むのが趣味な人にはよいのだろうけれども,野菜や具材を味わって食べたい人にはとても許容できない無駄な味付けです。本当にうまい食材はゴテゴテの砂糖やアミノ酸などで味などつけなくても,十分うまいのですから。

そこでどうするかというと,選択肢は2つくらい。ひとつは,このごまだれを1/3だけかけます。あとは,ごま油を垂らし,しょう油を追加して混ぜ混ぜ。ひじょうにまともですっきりとした味になります。もう一つの方法はごま油,しょうゆ,穀物酢,柑橘酢を合わせたものをかける方法。単純だけれどもじゅうぶん食えます。

困るのは,あまったタレをどこに捨てるべきかということ。紙に吸わせて生ゴミか。それとも下水に流すべきか。環境負荷を考えると一長一短あって,そう簡単に結論が出るものではありません。現在のところは,下水に流しています。こういった高塩分のものは土壌処理ができないですし,そもそも都会には露出した「土」がほとんどありません(画像/MWS)。








2018年7月21日




暑いのでクールな画像を。アスコルビン酸(ビタミンC)結晶の顕微鏡画像。NCF PlanApo4x, Nikon1J2, 電球色LED照明。円偏光コントラスト使用。黒十字が出ないので個人的にはこの方が好み(画像/MWS)。








2018年7月20日




梅雨明けして猛暑となった辺りから,カラスを見かけなくなった。全然いない。どこ行ったんだろう。

連年なら,そこいらへんに巣を作って,そろそろ子カラスが成長してきて,それを見守る親カラスは周囲の人間を蹴飛ばしてやりたい放題の頃なのだけれども,今年はまったく見ません。気温35℃,路面温度50℃を超えると,さすがのカラスも屋根にはとまれないし道路も歩けないし,電線にとまっても暑いだけだし…ということなのでしょうか

カラスはいなくなったけど,スズメはふつうに遊んでいる。ピヨドリも特に問題なく飛び回っていて,近年は当室のブルーベリーが熟れると片っ端から食べてしまい大害鳥となっています(画像/MWS)。








2018年7月19日












これが文京区/豊島区境界付近の路面温度。18日13時-13時半頃の測定です。もよりの本駒込気象台による気温は37℃のときに測定しました。いろいろなところを測定しましたが,日照が少ないところでも日なたであれば50℃を超えており,日当たりのよいところでは60℃を超えています。マンホールでも,アスファルトでも,透水性ブロックでも,表面温度はあまり変わりませんでした。

当然のことながら,地上1.5メートル付近の路上気温(顔面にあたる風の温度)は軽く40℃を超えている感じでした。大通り沿いは43℃くらいはあってもおかしくない感じでした。熱風が吹き付けてきます。しばらく歩いていると靴の音が変わりました。60℃越えのアスファルトを歩くとゴムが柔らかくなるようでフニャフニャした感じの靴音に変化しました。

これが都区内の西側,北側の実態なのです。しかし気象庁発表の気温は,周囲が緑に囲まれて蒸散により潜熱輸送されている条件のもと,芝生を広く敷き詰めたところにつくった風通しのよいところの地上1.5mくらいのところに設置した,熱的に絶縁された強制通風筒に観測機器を入れて,可能な限り低い気温が測れるようにして,得られたデータなのです。実生活とはまったく乖離したデータです。

もし気象庁がアスファルトの「路面温度」「路上50cmの気温」を発表してくれたなら,それは熱中症,熱射病の予防に役立つ情報となり,多くの方が倒れずに,死なずに済むようになるかもしれません。

実際に必要なのは,昼間にお買い物に行くお年寄りが,いったい何度の高温にさらされながら手押し車を押して歩くのかということです。あるいは建設現場,配達業などのお仕事をしている方々が,どれだけの高温にさらされて長時間の労働をしなければならないかということです。

過去の政権が一貫して建設業優先の政策を維持してきて,都会/地方を問わずあらゆるところをアスファルトで塗り固め,コンクリートの蓄熱体を増やしてきました。内陸部の高温(特に夜間の温度上昇)は,これら蓄熱体が生み出す熱が滞留することによってもたらされている,人工的に作られた気象条件です。政府にはヒートアイランドを抑制する姿勢はまったくみられず,元に戻すことは絶望的です。

ならば気象庁が正しく路上予想温度を発表し,多くの人が死んでしまう可能性を警告しなければならないと思うのです。

個人的な見解かもしれませんが,これだけの高温であれば,「死」はそぐそこにあります。無理をすれば死ぬことは解りきっています。その解りきったことを無視して,見ないふりをして,無理をして死んでしまう,あるいは人を死なせてしまう…,これほどバカらしいこともないかと思っています(画像/MWS)。








2018年7月18日




ペットボトルをカットしただけのミジンコ飼育水槽はバルコニーにおいてあります。遮光布で直射日光がほぼ当たらないようにして,温度変化が大きくなりすぎないように,バルコニーの床の上にブロックを置いてその上に置いてあります。エサは一切やらない代わりに,数日に一度の割合で天然水を注ぎます。こうすることで天然水中の栄養塩類が補給され,それらをすばやく藻類が利用して増殖し,その藻類をミジンコが利用するというわけです。

水温が30℃を超えるような悪条件?にもかかわらす,現在のところは維持できています。給餌しないので水質の悪化を防ぐことができ,とつぜん全滅するようなことがおきにくくなると思っています。室内においていないので,人工化学物質の暴露によってミジンコが全滅することもおきづらいと思います。エサをやらないのですから,大量に増えることもありませんが,増えてきた藻類の間でちょこちょこ動くミジンコをみていると,なんか,自然のものをみている感が発生します。

うれしい誤算は,この飼育水槽に珪藻が沸いてきたこと。少しは期待していたのですが水温が高すぎて,小型珪藻が少し出ればよい方かなと思っていました。ところがきょうの画像のような状態で,ロパロディアばかりが大量発生しています。じつに珍しいです。当室の高温バルコニーの悪条件では,スフェロイドボディが役に立つのでしょうか。一滴とっただけでたぶん数十〜100細胞くらいのロパロディアが入っていて,じつに興味深い眺めだったのでした(画像/MWS)。








2018年7月17日




国鉄が民営化することによってどうなるのか。当時の政府は次のように説明していました(こちら)。



国鉄が…あなたの鉄道になります。

民営分割 ご期待下さい。

○全国画一からローカル優先のサービスに徹します。
○明るく、親切な窓口に変身します。
○楽しい旅行をつぎつぎと企画します。

民営分割 ご安心下さい。

○会社間をまたがっても乗りかえもなく、不便になりません。運賃も高くなりません。
○ブルートレインなど長距離列車もなくなりません。
○ローカル線(特定地方交通線以外)もなくなりません



民営化後30年を過ぎてどうなったか。確かによくなった面はあります。筆者がいちばん評価しているのは「トイレ」ですね。民営化してから,「いったいこれは何なの」というトイレは少なくなっていきました。職員の対応も,国鉄時代よりは少しだけ,まともになった気がします。

でも本業の鉄道部門において,ローカル優先のサービスになったとは思えないし,窓口が明るく親切になったとしても,その窓口自体を次々と閉鎖しているのですから国鉄時代よりもサービスが低下したことは明白です。旅行は企画されているのかもしれないけど,割引切符の使い勝手が著しく悪くなって,余計な出費が増えた気がします。

ローカル線は長距離列車が減り,ダイヤもぶつ切りにされて,じつに使いにくくなりました。国鉄時代は,急がなければ上野から仙台まで鈍行で乗り換えなしに安くいけたのですが,民営化後はぶつ切りダイヤで,まるで新幹線に乗れ,といわんばかりの状態になっています。

会社間をまたがったら乗り換えがふつうになりましたし,ブルートレインはすべて廃止。そして民営化後の各社はローカル線を廃止したくてうずうずしています。。

ふしぎなのは,なぜ政府がこんな,国民に期待を持たせるような約束事をばらまいたのでしょうか。完全民営化してしまえば,ローカル線を切り捨てようが,みどりの窓口を潰そうが,ブルートレインを廃止しようが企業の勝手です。各社が自社の都合で運営するのですから,政府がそこに介入する権限はないはずです。ですから当時の政府は,本当は,民営化後はどうなるか知ったことではないが,とりあえず希望を持たせるような内容の空想をばらまいたような気がするのです。

国鉄当時,確かに駅員の質は悪かった記憶があります。しかしサービス全般で考えれば,車内販売はふつうにあったし,寝台列車も多数走っていたし,そこいらへんの特急にも食堂車があったりして便利なものでした。時刻表が読めない人でも窓口に並べば遠距離割引キップが買えましたし,青春18きっぷは安くて使い勝手がよかった上に,長距離の各駅停車が多数走っていて秋田,岩手くらいならそれほどの苦痛もなく一日で帰ってくることもできた。

いすみ鉄道の元社長が こちら でとてもいいことを書いています。まさにその通りで,なんというか,当時の国鉄は,旅客(人間)の輸送ということに対してとても真剣だったような気がするのです。現在のJRは,旅客は単なるモノで,キャッシュフローの一部と考えているだけのような感じが少しします。

みどりの窓口で働いている人たちの中には,契約社員が数多くいるそうです。なるほど契約社員ということは切ることができるわけで,コストカットにはちょうどよい部分,というのが経営層の考えなのかもしれません。みどりの窓口に並ぶ旅客は,自動券売機も使えない迷惑な客だから,そんな人たちのために窓口を残して収益性が悪くなることは許し難い。窓口を廃止して券売機を設置すれば,契約社員に払うカネも必要ないし,旅客はほかに選択手段がないから券売機で勝手に発券するだろう。

そんなふうに考えているとすれば,一日数万人が利用する駅でさえも,みどりの窓口を次々と廃止するという選択になるんだろうと思いました。そうやって経常利益を増すことがこの会社にとっての「サービス」なのでしょう。日本人が全てこのサービスに飼い慣らされれば,誰もそれを疑問に思わなくなります。そして大切な何かが人知れずに失われていきます。さて次はどのような「サービス」が展開されるのか,民営分割した会社に,ご期待しちゃいましょう(画像/MWS)。



*1 まじめにサービスを考えれば,こんな感じ になるよなあと。




2018年7月16日




そのむかし永年利用した西八王子駅のみどりの窓口が閉鎖されていて驚きました。八王子駅と高尾駅の中間にあるこの駅は,小さな橋上駅なのだけれども利用者は多く,客層も通勤,通学がメインで朝夕はかなり混雑します。みどりの窓口もいつも人が並んでいて,筆者もここの窓口で通学定期を購入したりしたものでした。

人が人を案内するというのは交通業務の基本形だと思います。それはキップの発券でも乗車経路の提案でも,移動しやすい列車や接続の案内でも同じことで,旅客に対してプロが情報提供するところに仕事の価値があるわけです。それが自動券売機をおいて,窓口を廃止するというのですから,呆れて,呆れて,あきれ果ててしまいます。

JR東日本は「松本」を東京近郊区間にして途中下車できなくしてしまい,旅の魅力を一気に半減させた前科があり,使い勝手のよい割引切符はほとんど廃止してと,この会社の経年的なサービスの低下はもはや定評があるといえる部類ですが,こんどはみどりの窓口もどんどん廃止して,券売機を正確に使いこなせる人だけが正しく列車に乗車できる世の中を作るのでしょうか。

西八王子駅からは高校,大学に通う人が多数いるのですが,学生割引は窓口でなければ適用できないはず。するとこの駅を利用している学生さん生徒さんは,学割の適用一つ受けるだけで,八王子か高尾に行かなくてはならず,著しいサービスの低下となります。しかも高尾駅の窓口は営業時間が短く,八王子駅の窓口は慢性的に混んでいるように見えます。

自動券売機を使うにしても,ごくふつうの人が乗り継ぎ割引なども含めて正しく列車と経路を指定して,座席指定をして発券するにはかなり時間がかかります。勝手がわからず新幹線のきっぷ一枚を買うのに延々と時間がかかっている人など,何度でもみたことがあります。困っている本人はもとより,うしろに並んでいる人もたまったものではないでしょう。いままでは券売機を操作できない人でもみどりの窓口に並べばよかったのですが,西八王子駅ではそれもできなくなりました。

企業が営利を追求するのは当然であるにしても,人々が必要としているサービスまでも切り捨てるというのはいかがなものでしょうか。納得いきませんね(画像/MWS)。



*1 なお こちら の情報が重要かもしれません。みどりの窓口のない駅を利用している人はごらん下さい。




2018年7月15日




36℃越えの気温をたまには感じみようと,気温がピークにさしかかったのを見計らって30分ほど自転車にのりました。文京小石川郵便局までの往復です。そのまま外にいるだけで生命の危険があるような温度で,日なたの路上温度は場所によっては40℃くらいかと思われました。熱風が吹き付けてきます。交差点で信号待ちをするだけで生命力が低下していく感じがします。

しかし驚くべきことに,こんな気温でもたくさんの人が外出していました。特にお年寄りが多く,買い物に出向いている方を多く見かけました。数百メートル歩いただけで死んだりすることはないので,あまり気にすることもないかもしれませんが,それでも,道路を歩いているだけで焼かれるような暑さで,体によいことはたぶん何もありません。ので,いちばん暑いときに出向くこともないだろうにと思います。

犬の散歩をしている人も見かけました。路面温度はどうみても45℃を超えていて,場所を選んで歩かないとワンコが死んでしまう可能性もあるほどですが,飼い主さんは何も気にしていないようでした。可哀想…。

だらけずにペダルを踏み続けて帰宅。生きて帰りました。下着はシケシケ状態。30℃の室内に入ると,まるで高原に着いたかのような涼しさを感じました。ま,そりゃ40℃の路上温度からすればマイナス10℃だから涼しく感じるわけです。しかしそれにしても35℃越えはつらい。筆者は室内作業の毎日ですが,温度順応のために朝から夕方までは空調を入れていません。それで〜32℃くらいの気温なら何とかなるように訓練しているのですが,35℃を超えるとどうにもなりません。みるみる活力が低下します。皆さんも体力を過信せずにご自愛ください。ホント,今年の暑さもやばいです。

画像は筆者が信頼している 本駒込気象台 のスクリーンショットです。気象庁発表の東京の気温は,北の丸公園の涼しいところに設置されていて,都内で働く方々の環境温度とは全く異なります。練馬のアメダスも付近でいちばん温度が上がりにくい石神井公園に移設されました。こういった,情報としては「嘘」の役に立たないデータと異なり,本駒込気象台のデータは現実をそのまま示しているように感じます。素晴らしいお仕事にいつも感謝しているのです(画像/MWS)。








2018年7月14日




ラベル貼りは地道な作業です。数多くある品番通りに印刷し,ハサミでチョキチョキと一枚ずつカットしてラベルを作ります。プレパラートはキムワイプで両側を拭いて,きれいな紙の上に置きます。ラベルの裏紙を剥がして,Fontax Taxalのピンセットを使って慎重に平行をあわせて貼り付け,上から紙で押さえて密着させます。こういった細々とした作業にも人件費はかかっているはずですが,そんなものをカウントしていると単価があがってしまうので,考えないことにしています。悲しい現実です…。でもこういった作業にFontaxのTaxalを使うことで,良い道具を使うことの感動が生まれ,作業自体はつまらなくはありません。その辺りで何とか心のバランスを保っているのです(画像/MWS)。








2018年7月13日




日本列島が非常に高温状態になりつつあり,体調管理に気を遣わないといけないシーズンです。冷房の効いているところに逃げ込むこと,水分,塩分の補給をすることが大事で,これを誤ると死に直結することもあります。皆さんこのことの重要性はわかっているものの,それでも,毎年数多くの方が日射病や熱中症で亡くなります。恐ろしいことです。

水分は水を飲めば補給できますが,塩分(電解質)は水には微量しか入っていないので加えてやることが大事です。大量に摂る必要はなく,少し塩気が感じられる程度で十分かと思います。スポーツドリンクは糖分が入りすぎていて常飲するには適していないような気がします。

きょうの画像は塩分補給用のインスタントスープ。午前中から午後にかけてはデカフェ紅茶(豆乳入り)やデカフェコーヒー(豆乳入り)などを飲んで過ごし,おやつの時間帯に玉子スープを1.5から2倍に希釈して飲んでいます。たいてい冷蔵庫には調理済みのきのこが入っているのでこれを加え,きのこ玉子スープにするのが定番です。少し塩分が入っていた方が飲んだあとの体がらくな気がします。昼間は空調を止めて作業することも多いので,水分塩分の補給には気をつけています(画像/MWS)。








2018年7月12日




顕微鏡結像では,肉眼コントラストを越えた時点で解像しなくなるわけではなく,肉眼コントラスト以下でも解像が続いています。そこで,その見えない部分を電気信号に変えて増幅し,目で見えるようにしてやろうというのがビデオエンハンス法です。現在ではデジタルイメージングでも同じことができますが,1980年代〜1990年代では映像信号をビデオ記録しながらコントラストや輝度をいじるという感じの手法でした。

きょうの画像は,このビデオ顕微鏡法を手軽にできるように開発された機器です。浜松ホトニクスのアルガス20で,型番はC5510です。専用カメラをつないでビデオエンハンスできますし,Watec社などの高感度CCDカメラを接続して使うこともできます。画像の減算や平均化,演算などの高度な機能も備えていて,細胞生物系や医科学系でよく使われていたようです。

当サービスにも手持ちがあるのですが,春に故障が発覚し,まったく無反応になりました。内部のニッカド電池を交換してもだめで,筆者には完全にお手上げ。そこで,いつも頼りにしている電子工学系の大先輩にお願いしたところ,修理を引き受けてくださいました。内部は大量のメモリとLSIの山で,いったいどうやったら故障箇所を発見できるのかと思いましたが,やり方はあるとのこと。機器を持ち込んで簡易診断してもらいましたが,電源系と接触不良は排除できそうとのこと。あとは重修理になりそうなのでお預かりということで,お願いして引き揚げてきました。

で,C5510は修理が可能だったとのことで,無事になおって帰ってきました。古い機器ではありますが,リアルタイム処理ができることは大きく,フレーム蓄積のできるカメラと併用すると現在でも(視野の狭さを除けば)強力な武器といえます。しばらく眠っていた機器ではありますが,また活用が始まります。

修理の様子については,大先輩がレポートを書いてくださったので,皆様にも紹介したいと思います。B級ラボとご謙遜なさいますが,本業が電子工学系のエキスパートエンジニアさんなので,腕前は一流です。

ゴロちゃんLAB

こちらの,家電修理のカテゴリーの5月19日更新分にC5510の修理記録が掲載されています。ほかの記事も大変参考になるので,ぜひごらん下さい(画像/MWS)。








2018年7月11日




今回の西日本の大水害で我々が認識をあらためなくてはいけないことの一つは,情報の意味だろうと思います。気象庁は,今回の豪雨が危険なものであることを早い段階から予察し,大きな災害が起こる前に大雨特別警報を出しています。この「特別警報」という情報の意味がきちんと実感されていたのなら,結果は少しは違ったかもしれないような気がします。

現在,「大津波警報」が出されたら,沿岸の人々は迷わずに避難するでしょう。大津波がどれほど恐ろしいことか,まだ多くの人の記憶に残っているからです。大雨特別警報というのも,こちら に示すように,大津波警報に匹敵するもので,土砂災害,大水害が高い確率で起こることを警告するものです。

大雨特別警報が出たら,大津波警報が出たのと同じような心構えで対処するべきものです。

大雨特別警報は表現としては「数十年に一度の降雨量となる大雨」となっていますが,これでは実感がわかない人が多かったかもしれません。大津波と同等の災害が起こる危険,といった方がよいかもしれません。日本ではかつて山津波という言葉もあったくらいで,この言葉は被害の規模も内包する表現だったように思います。しかし土石流という言葉が定着してから山津波という表現は使われなくなりました。

政府関係者は大雨特別警報が出た夜に,飲めや歌えの大宴会で遊んでいたそうです。閣僚が懇親を深めて情報交換することが大切なのは当然ですが,「大津波警報」が出ていたら果たして遊んでいたでしょうか。この人たちは,「特別警報」の意味がまったく分かっていなかった,そのように思えてなりません。

大雨特別警報は大津波警報に匹敵する警報です。大災害が起きる可能性を正確に見抜き,早い段階で特別警報を発した気象庁は正しい,よい仕事をしたと評価できます。しかしその警報を政府,自治体幹部などが正しく解釈して防災に結びつけなければ,警報を発した意義が薄くなってしまいます。

これからも災害は起こります。日本は堤防などがかなり贅沢に整備され,大規模な水害などが起こりにくくなりました。そのため,本来は氾濫源で宅地にむかないようなところまでも宅地化されて多くの人が住んでいます。そこに,数十年に一度規模の豪雨が起こり,設計上の排水能力を超えた降雨があれば,みたこともないような災害が起こる可能性もあります。「特別警報」の意味をよく理解して,緊急時の行動を日頃から考え,訓練しておくことが重要と思います(画像/MWS)。



* 画像は,きょうの話とは関係ありませんが,塩竃付近の海の様子。震災前ののどかな時期に撮影したものです




2018年7月10日






西日本の大水害は目を覆う惨状でつらいです。当サービスのお得意様も広島や岡山,兵庫方面にもおられ,大丈夫なのかと心配になります。まずは一人でも多くの方が救出されることを祈ります。そして追い打ちをかけるような災害が決して起こらないよう祈念したいと思います。

関東地方は6月の梅雨明け以降厳しい暑さが続いており,高温に弱い筆者は日に日に元気がなくなってきています。この土日は夏を乗り越えるために空調の清掃を行いました。毎回,冷房や除湿運転のあとは送風を一時間以上行って内部を乾燥させてから停止していますが,それでも,シロッコファンにはチリが堆積し,そこが定期的に結露しては乾燥を繰り返す状況なので,湿度が高い時期にはカビが発生している可能性があります。これが室内にばらまかれると健康によくない上に,光学機器等にも多数のカビの胞子が降り注ぐことになりかねません。

まずは中性洗剤でフィンやファンなどに堆積していた汚れを落とし水洗いします。本当は外して丸洗いしたいのですが無理なので,取り付けたままの面倒な作業です。ブラシや水鉄砲を活用してなるべくきれいにします。次の日は,80%エタノールで清掃。これでカビを一時的には不活性化できます。エタノールは可燃性なので事故が起きないように十分な対策を施した上で清掃し,3時間以上乾燥させました。清掃後は若干冷房効率が上がったような感じで,これでこの夏も何とか生きていけそうです。

きょうの画像は処理中の珪藻試料。空調の清掃でパワーを使い果たし,細かい仕事をする気が起きなかったので,底生珪藻の試料処理で仕事をした,ということにしました。手持ちの珪藻在庫から星形のトリケラチウムや,ディプロネイスなどが減ってきており,アンフィテトラスも足りなくなってきたので在庫調整用の試料処理です。さて,どのくらい拾える試料ができるか,ちょっと楽しみです(画像/MWS)。








2018年7月9日






顕微鏡写真では,微細構造を無理に拡大するとぼやけた感じになって見苦しくなります。微細構造を無理に拡大しても対物レンズのNA以上のものが見えてくるわけではなく,物体は拡大されますがコントラストは低くなり,眠い感じの絵になります。しかし微細構造がそれほど存在していない物体の場合はどうでしょうか。この場合,すでに見えている粗大な構造がそのまま拡大されるだけなので違和感が生じにくいような気もします。

このことを利用して撮影してみたのがきょうの画像。対物レンズはショートバレルのPlan4x。対物レンズNAに対して粗大な構造を持つ放散虫を選び,これを無効拡大したもの。このようにすると被写界深度を大きくすることができるので,厚みのある放散虫を一枚の絵でそれなりに表現できることもあるかもしれません。レイメイのRXT203や300が無効拡大気味に作られていて,その観察像をみて思いついた方法です(画像/MWS)。








2018年7月8日




これはKQ2100系のカーテンですが,得も言われぬデザイン,色彩でお気に入りです。こういうデザインをつくるセンスというのはどうやって育つのでしょうと感心します。この色,個人的には,水たまりに広がった油膜の干渉色を思い起こします。小中学生の頃,雨の下校時に水たまりの油膜を眺めていた場面をいまでも思い出すことができます。あのころから無意識ながらも,光学現象に興味があったんだなあと,そんなことに中年になってから気づくのです…(画像/MWS)。








2018年7月7日




海岸にはいろいろなものが漂着するのだけれども,時化のあとには厄介な大物がうちあげられていたりします。きょうの画像はドラム缶。中身が入っているのです。サンプリングに適当な地点を探して歩いていたら重油の匂いが立ちこめていて,はて,この辺りで石油が染みだしているところがあったかしら?と歩いていったら,ドラム缶が打ち上げられていて重油がそこいらへんにまき散らされていたのでした。片づけようにもどうしようもなく,現場の状況を視察して通り過ぎましたが,周辺数十メートル四方程度の生態系はほとんど壊滅状態と思われました。船舶から落下したドラム缶かと思いますが,たった一個でも油が漏れれば影響は大きいです。細菌による分解が進み,はやくもとに戻ることを祈りたいと思います(画像/MWS)。








2018年7月6日






当サービスの誇るJシリーズには,カールツァイス社から供給されているハイパフォーマンスカバーグラス(0.170±0.005mm)を採用しています。そのまま使うと大きすぎるので,約9mm角にカットしています。このカバーグラスは製造に伴う品質の劣化が非常に少なく,脈理をみることはほとんどなく,これまで気泡を2回みただけです。しかし表面にごく浅いスレがあることがあって,これが悩みのタネでした。きわめて浅い傷なので,暗視野照明でも,傷に垂直に照明しないと全く見えません。それで気づかずに珪藻をマウントしてからがっかり…ということを繰り返していました。

そこでカールツァイス社のハイパフォーマンスカバーグラスを検鏡してみたのがきょうの画像一枚目。非常に荒れた切断面で,カバーグラス表面にもガラスの粉が飛び散っています。こういうものが挟まったまま出荷されているわけで,これを取り扱う際に,ガラスの粉によって擦り傷が発生しているものと考えられました。じつによろしくありません…。

画像二枚目はマツナミのNo.1です。マツナミのガラス切断技術は非常にハイレベルで,欠陥のみられないシャープな切断面です。どうやってカットしているのか想像できないほどです。多少,ガラスの粉が散っていることもありますが全体的にはかなり少ないです。この品質管理レベルで,0.170±0.005mmのD263を供給してくれれば有り難いのですが。

この観察結果から,カールツァイス社のハイパフォーマンスカバーグラスをカットするときには,予め両面を清拭してガラス粉を完全に除去する必要があることがわかりました。そのあとにカットして,再び清拭となるので,工程数がまた増えることになってしまいました。完璧を目指すとどこまでも作業が続くJシリーズ製作ですが,ガラスの傷を許すわけにはいきませんので,うんざりした気分を酒とともに飲み込んで,必要な作業として日常に組み込まなくではいけません…

なお筆者がカバーグラスをカットするときには,片面にわざと荒れたスコアが入るようにカットしています。これは,そうした方がカットの歩留まりがよいことと,荒れたスコアを封入側に使うことで封入の接着強度を上げる狙いがあるためです。このため,オイルカッターなどは使わず,ダイヤのチップでスコアを入れています(画像/MWS)。








2018年7月5日




当サービスのオリジナルマスコットは材料によっていろいろなパターンがありますが年々少しずつ進化しています。最新のものではHantzschiaという珪藻を用いて,腕や脚の筋肉のふくらみと関節を表現しています。材料がなければできないわけで,このわずかな進歩の陰には小型珪藻を集めるつらく苦しい日々があったりします。。Hantzschiaの仲間は干潟の砂上にいることが多く,見つけることはできるのですが,採集した試料はもれなく泥だらけ,鉱物まみれというおまけがついており,きれいな被殻が得られないのです…。今回の試料は東京湾でカロネイスと一緒の群体に出会い,ダメ元でカロネイスを分離したら一定割合でHantzschiaが残ってくれたので,そこから拾いました(画像/MWS)。








2018年7月4日




世の中には密着という現象があります。きれいな平面ガラス板二枚が吸い付いてしまったら,並みの力では剥がすことができません。そういった現象です。これが珪藻とガラス板の間でも起こります。被殻の平面度が高い珪藻ではガラスに密着してしまい取れなくなるのです。そこで珪藻在庫を増やすときは,密着が起こりやすい珪藻については,立てて保管することにしています。このくらい小さなものの世界では,静電引力などの弱い引力でも十分に重力に打ち勝つので,一度立てて保管したものは,そう簡単には倒れません(画像/MWS)。








2018年7月3日




いろいろなものが値上がりしているのだけれども,そのやり方は様々な感じ。素炒りの落花生は価格据え置きのまま,だんだん内容量がが減っていき,昔に比べて三割くらい少なくなった感じがします。蕎麦も似た感じで,一束120gあったものが110gになり100gになり,最近は90gになった。まぁ飽食の時代でもあるので,そのくらいの減量はそのまま受け容れて,健康にはよいよねと思いこむのも一法かもしれません。

しかし納得いかないのは豆腐です。ここ20年の経過を見ていると,証拠は持っていませんが,量を減らす代わりに水増ししている気がするのです。「これ,豆腐じゃない。水だ水!」というような製品をしばしば見かけるようになって久しいです。水は水を飲めば十分なので,豆腐を食うときには豆腐を食いたい。水増し豆腐は食いたくないのです。

そこで登場するのが丸尾山の砥石。水増し豆腐に100円ショップなどで売っている茶碗のフタをかぶせて砥石をのせます。じっとがまんの30分。ときには一時間。大量の水が絞れます。こうすると水増し豆腐も,味の濃いまともな豆腐に変身します。夏の暑いときに冷やし豆腐は欠かせません。こうして水絞りした豆腐をサイコロ大に切って,そのまま何も付けずに食したり,キムチを載せたり,わさび漬けと一緒にさっぱりと食べたりして,厳しい都心の夏を過ごすのです(画像/MWS)。








2018年7月2日




浮遊性有孔虫は入手も面倒で封じるのも難しく,あまり取り扱いたくないもの。何とか封入することはできますが,珪藻や放散虫のようにきれいに表現することは筆者にとっては困難な道のりです。しかし微化石としてみれば有孔虫は比較的メジャーなものなので避けて通るのも不本意です。Jシリーズのような「完璧」は目指さずに,そこそこの個体がまあまあの状態でマウントされていればOK,というところで妥協して作業をすすめるしかないようです…(画像/MWS)。








2018年7月1日




珪藻を消化しつつ前進するアメーバ。珪藻の細胞内容物は被殻の中に閉じこめられているので,上下の被殻を外して中身を消化した方が手っ取り早いと思いますが,そういった現象をみたことがありません。するとアメーバは,珪藻を丸ごと消化酵素に漬け込んで,漏れ出てくる栄養分を利用している,ということになります。珪藻表面に開いている孔は非常に小さく,そんなに簡単に内容物を吸い取れない気がしますが,実際のところはどうなんでしょう。原生生物の中には珪藻を非常に好むものがいて,腹一杯に珪藻を詰め込んでいたりします。まったく消化しないガラスを一緒に飲み込んでなお,利用価値の高い栄養物なのでしょうか(画像/MWS)。









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