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ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
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新刊書のご案内
 

『たくさんのふしぎ2019年6月号 珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』を出版しました!! 各方面から絶賛の声が届いております。本の紹介についてはこちら をご覧下さい。






2019年6月30日




むかしよく見かけて今はあまり見なくなったものの一つに5倍接眼レンズがあります。当室では使用頻度がそれほどでもない割には,入荷数が多く,多量の5倍接眼レンズの在庫が転がっています。不勉強でまじめに調べたことがないので,なぜむかしは5倍接眼レンズが作られていて今は見かけないのか理由は知りません。鏡筒倍率が二倍になる装置が多用されていたのであれば,10倍接眼レンズの半分の倍率の接眼レンズが(無効拡大を避けるために)必要になるので,5倍接眼レンズが作られた,ということになるでしょうが,そのような使い方もほとんどなかったような気がします…。

現代でも考えようによってはつかいみちはあります。5倍接眼レンズを使えば,対物レンズの開口数に対して倍率が抑えられるので,まるでアポクロマートを覗いているかのようなシャープな像を味わうことができます。それに倍率が低くなるということは像が明るくなるということでもあります。明るさが必要な暗視野や蛍光ではけっこう効果を感じられる場面もあります。

まぁでもそうは言っても筆者には目玉が二つしかありませんので,たぶん20本近くある5倍接眼レンズはなかなか有効に使い切ることはできません…。何かほかに効果的な利用法はないものですかね? (画像/MWS)。








2019年6月29日




魚の塩焼きは意外に難しい。都会のマンションでは七輪などという贅沢なものは使えないばかりか,ガスコンロの上に網をのせて焼くこともはばかられる。大量の煙がでるからだ。本来さかなを焼くには下からの熱で焼くのが正解で本当は七輪のような放射熱源だけで焼きたいところであるのだけれども,仕方なくグリルで焼くことになる。

グリルは上からの熱で下は冷えているので,熱の通り方がのろい。放射熱で表面はけっこう焼けるのだけれども,対流の熱が弱いので魚の内部まで火が通るのにタイムラグがある。そこでどうするかというと,きょうの画像のように両面,包丁を入れるのである。これで焼けば包丁を入れたところが広がり,内部に素早く熱が入りうまく焼ける。

この焼き方はだいぶ昔に「専門いけす 城」のホームページに書いてあったもの。なかなか合理的に思い真似してみたところ,身の厚い魚でも上手に焼けたので,それ以来の定番となっています。焼けた〜と思ったら生焼けだったという失敗に悩まされている方には,よい方法かもしれません(画像/MWS)。








2019年6月28日






きのう改造がおわった電源をランプに接続して,ニコン・オプチフォトに装着して,カメラをのせて試験撮影してみました。試験内容はフリッカーの有無です。蛍光灯の明かりで撮影すると画像に横縞が入ることは多くの方がご存じだと思います。蛍光灯が高速で点滅していて,それとカメラの素子の走査の関係で明るい領域と暗い領域ができてしまうのです。顕微鏡のハロゲンランプでも,古い電源回路の場合は電源周波数でランプが明滅していて,高速シャッター時にフリッカーが出てしまいます。

きょうの画像一枚目はニコン・オプチフォトの電源回路でランプを点灯させた場合のフリッカー。カメラはNikon1J5でシャッター速度は1/13000秒です。撮影画像はヒストグラムを処理して強調しています。一目瞭然の明るさのムラが出てしまっています。画像二枚目は昨日紹介した電源回路で点灯した場合のもの。輝度は同じにしてありシャッター速度も同じです。画像処理もしていますが,照明は均一で,周辺減光が見えているだけです。じつに素晴らしい。

ということで,この安価な電源は12V50Wのランプハウスに最適なものなのでした。水中の微生物を撮影するときに,べん毛や繊毛の動きを止めたいことがあります。このときに1/10000クラスの高速シャッターを使いたいわけですが,早いシャッターを切ると古い顕微鏡では著しいフリッカーが出てとても実用にはならなかったのです。それがこの安価な電源で一挙に解決してしまいました。こうして機材の改良が進むとじつに気分がよいですね(画像/MWS)。








2019年6月27日




お世話になっている先生からきょうの画像の電源を紹介いただきました。こんな小さなボディで12V5Aを出力するという恐るべき製品です。出力側のプラグがそこいらへんの5Wクラスの安価なAC-DCアダプタのものとほとんど同じで,こんな小さなプラグで60Wを連結するのかと思うと不安がよぎりますが,製品として成立しているわけなので大丈夫なのでしょう。出力は安定しているらしく,オシロは持っていないので波形はわかりませんが,デジタルマルチメータで周波数をはかっても特定の周波数が出力されているようなことは観察されませんでした。…ということは,この小さな電源は,12V50Wのハロゲンランプ用に使って,フリッカーのない照明ができるということですね。

そうとわかれば早速工作。プラグを作り,ランプハウス側のコンセントも工作して接続。スイッチオン。陽性かくにん! よかった。

安定化電源を導入しようかと悩んでいた矢先に転がり込んできたこの品物。使えるかどうかのテストはこれからですが,もし使えればこれは本当に驚嘆すべき品物。安価で,0.1V単位で読み取りができる定電圧で,場所をとらない小型。プラスチック封止ということは発熱は弱いはずで,そうだとすると変換効率は非常に高いと予想されます。出力60Wの20%が熱損失だとしても12Wになりますから相当発熱してしまいます。もっと効率がよいのでしょう。

欠点ぽいところもあって電源側に盛大なノイズが入ります。同じタップにスピーカーなどが接続してあると出力に依存したブーンという大きな音が聞こえます。これが消せればよいのですが,まぁ当面はこのまま使ってみます。

それにしても,昔なら60Wもの出力となれば大きなトランスの入った重たい電源だったわけですが,時代が進めばいろんなものが進化するものです。光学系については追いかけていますが,電源などはまったく無知で,今回は勉強になったのでした。教えて頂いた先生には感謝感謝なのです(画像/MWS)。








2019年6月26日




現在の状況について

『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』につきまして現在の状況を報告申し上げます。

6月25日朝に,アマゾンさんの在庫がなくなりました。福音館書店さんの出荷可能在庫も前日に底をついた状況でした。その後,福音館書店さんの各部署が,流通ルートに乗らずに返却されてくる書籍について,全力で在庫登録をしてくれました。その結果,再度,出荷の見込がたったということです。

したがいまして6月25日正午現在,出版社の倉庫には在庫がございます。おそらく,アマゾンさんにも再度の入荷が可能と思います。まだ本書をお持ちでない方は書店注文,アマゾンさんで予約してください。

在庫が復活したといっても,売り切れが迫っていることには変わりありません。本書は子どもたちへの夏休み前のプレゼントにも最高ですし,好事家へのちょっとした「おっ」と思うような話題提供としても最適です。ぜひ売り切れる前に早めに注文をお願いいたします。

きょうの画像は25日午前中のアマゾンさんのスクリーンショット。まだまだ売れ行きは衰えておらず,多くの方が本書を必要としていることがわかります。再登録された在庫が新たな読者を得て,顕微鏡下の世界へ誘うきっかけになればと思います(画像/MWS)。



*1 出版社さんからは,返却分があるということも,そういった書籍を在庫に再登録するということも聞かされていませんでした。ので,まもなく在庫切れとの誤った情報を結果的に流すことになってしまいました。入手できるのかできないのかというのは大きな問題ですので,正確な情報をお願いしたいところではありますが,出版社さんも流通に載らずに返却される本の数は完全な不確定要素でもあるので,数字として知らせようがなかったという事情があるのだろうと思います。難しいものですね。

それにしても流通ルートに乗らずに返却というのはどんなものなのか,出版業界を趣味で眺めてきた筆者には興味があります。傷ものとして返却されてきた中に無傷のものがあればそれは再登録できるでしょうが,そんなに数があるとも思えません。書店さんに配本するはずが,書店さんが倒産してしまった場合は返却扱いになるのでしょうか? そうだとするとこれはある程度の数がまとまりそうですね。毎月のように書店さんが消えてしまっているので…。定期購読等の解除分,というのもあるのかしら。はたまたこれ以外の謎の返却があるのか,ぐるぐると想像が巡ります。





2019年6月25日




2015年12月にも『珪藻美術館』という書籍を上梓したのですが,この本は2016年11月15日付けで絶版になっています。出版社さんとのご縁が続かなかったことが原因で,この書籍は筆者にとって不要と判断して版権を引き上げて廃版にしています。原稿・画像・入稿したデータも全て廃棄しています。このため,この本は復刊することがありません。

復刊ドットコムの方にも投票を頂いているのですが(こちら),残念ながら対応できません。

アマゾンの方もひどいことになっていて,その一例がきょうの画像なのですが,税込1,404円の本が3万円はあり得ません。少し前は24,000円で一冊出ていたのがなくなっているので何方かが購入されたのでしょうか…。4月初旬頃までは5,000円くらいで推移していたのですが,『たくさんのふしぎ2019年6月号』が発売になってから価格が急上昇して現在に至ります。

確かに,内容的にも,とても洗練された感じでまとまった格調高い本ではあります。全力を投入して最高の本を作ろうと努力したので…。

でも,『たくさんのふしぎ2019年6月号』の方が,はるかに充実している内容で,使用した画像枚数も多く,画像品質も向上しています。両者を読み比べた方々からは,『たくさんのふしぎ2019年6月号』の方がより素晴らしいとのお言葉も頂いております。

どうか,復刊はあきらめていただき,『たくさんのふしぎ2019年6月号,珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』をご利用いただきますよう,お願いいたします。多くの方にご迷惑をおかけすることになり,著者としてお詫びいたします。ごめんなさい(画像/MWS)。








2019年6月24日






アクロマート補正の対物レンズは軸上色収差が残っていますので物体周囲に青ハロが出ます。この青ハロは物体像のデフォーカス像そのものなので,フォーカスを青色に合わせて撮影して,RGB合成を行えば青ハロは消すことができます。軸上色収差は対物レンズに固有の値ですので,補正量を予め調べておけば,効率的に撮影して画像修正できます。

きょうの画像は修正例。R,Gにピントのあった像が一枚目。青ハロがよくわかります。二枚目は別に撮影したB画像を使いRGB合成したもの。青ハロが消えてアポクロマートで撮影したような,色ズレのない鮮明な画像になっています(画像/MWS)。








2019年6月23日




『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』の後半にある「珪藻いろいろ」のコーナーでは,それぞれの珪藻のとなりに高分解能の画像を添えています。丸く切り抜いたモノクロの絵がそれです。この高分解能の画像も最高レベルのものを用意しなければいけませんので,筆者が独自に開発した高分解能微分干渉法を用いて,紫色の光を用いて撮影しています。顕微鏡の理論分解能は0.2μmとよく言われますが,その分解能をきちっと出すことができるのは顕微鏡ユーザーのなかのほんの一握りです。当サービスは開業当初から,クラシックな光学における解像限界を追求してきましたので,0.2μmをきちっと解像できます。

そのような模範的な絵を全国の子どもたちに示さなくてはいけませんので,入魂のイメージングで高分解能の撮影を繰り返したのです。

きょうの画像はクモノスケイソウに添えた高分解能画像。印刷ではかなり小さくなってしまい目を近づけないとよく見えません。子どもは目がよいのでよく見えることでしょうが,老眼には厳しいと思います。ご年配の方は凸レンズの助けを借りてごらんになってください。ギョロメケイソウの目玉の部分も点紋列があることがわかると思います。

このような細かい情報は印刷だと消えてしまうことも多いので,電子ブックにして,原画の解像度そのままで提供したら微細なところも全て見えて面白いかと思います。でも,電子ブックにすると,一冊の本できちんと物語になっている「パッケージ感」がなくなってしまい,少なくとも,「絵本としてのまとまり」は弱くなります。データとしてまとまっていればよいというものではなく,両手で誌面をしっかり押さえ興味の赴くがままにページをめくり没入する感覚は,紙でしか味わえないでしょう。落としどころはたぶん,ないでしょうね。子どもには今まで通り,紙の本がよろしいかと思います(画像/MWS)。








2019年6月22日




きょうの画像は『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』に収録してある一コマ。クモノスケイソウの暗視野画像です。これと同じような暗視野画像を多数収録してありますが,イメージングのエキスパートの方は,この絵を見て不思議に思ったことと思います。どうみても40倍対物レンズを使ったように見える拡大率なのに,たとえばクモノスケイソウの全面にピントがあっている,それでいて軸上色収差が感じられないという画像なのです。

クモノスケイソウは湾曲していて真ん中が凹んでいます。もしプラン対物レンズの40倍を使うとピントが全面には合いません。ならばとアクロマートを使うと,こんどは色収差補正が不十分で,軸上色収差の青ボケが残ります。フルオールを用いても同じです。ならば40倍のプランでないアポクロマートを使えばよさそうですが,そのようなレンズは大昔にあったのみです。

ではどうやったのかというと,この画像はRGB別々にピントを合わせて撮影しているのです。LWDの40xで開口数が0.55補正環つきというレンズを選び,このレンズの深いピントと像面湾曲を利用した上で,残る軸上色収差はRGB分解撮影で消去したというわけです。このようなテクニックによって,色収差のない,解釈に疑念を生み出さない画像を得ているのです。

撮影後に画像合成が必要ですので,たくさんの珪藻を撮影するとなると手間が大変ですが,全国の子どもたちに可能な限り最高レベルの画像を見せてあげなくてはいけません。当サービスの技術力を惜しみなく投入して画像をつくったのでした。

使っている顕微鏡も対物レンズも三十数年は経過しているだろう古いもの。しかしレンズの特性を知った上で適切な使い方をすれば,無限遠補正系に生まれ変わった現代の顕微鏡に匹敵する絵を作ることは可能です。『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』は,中古顕微鏡を使ってここまで仕事ができる,というお手本にもなっています(*1)。顕微鏡愛好家の方は,そんな目で本書を眺めてみるのも面白いかもしれません(画像/MWS)。



*1 p.13-p.14は無限遠補正系の現代の顕微鏡を使った画像も含まれています。しかし画像が小さいのでその真価はわかりません。この画像サイズなら古い顕微鏡でも同じレベルの絵を得ることは容易でしょう。




2019年6月21日




再びのお知らせ

『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』のアマゾン在庫が復活しました(こちら)。

福音館書店さんからの情報によれば今回の入荷が最後になるようです。現在のアマゾンの在庫がなくなれば,アマゾン経由で新品を定価で買うルートはなくなります。

出版社さんの在庫も客注分に対応するための残りがあるだけのようです。こちらも書店注文等はしばらくできますが,在庫が尽きればお仕舞いになります。

すでに他の通販各社は在庫切れになっています。

アマゾンさんと出版元の在庫がなくなれば,最後は書店店頭での売れ残りを地道に探すしか入手法はなくなります。

このようなことから,現在,本書入手の最後のチャンスになりつつあります。SNS界隈ではだいぶ認知されたようですが,一般の方々のほとんどはまだ本書の出版を知りません。どうかひとりでも多くの方に,珪藻の世界を紹介頂きたく,皆様のご協力をお願いする次第です。

きょうの画像は表紙候補に撮ったものから一枚。表紙のサンプルと同じものを撮影しているのですが,印象はまったく異なります。撮影テクニック次第でいろんな絵を作れるのも珪藻の面白いところです(画像/MWS)。








2019年6月20日






筆者の主要な仕事は何か?と問われたら,標本製作もそうなのですけれども,でも,「ゴハンづくり」が正解のような気もします…。毎日二人分の夕飯を休むことなく年中作っています。品数は少なくても5品,通常7,8品は並ぶのがふつうです。そういう生活を長い間続けていると,主婦というのは大変な労働を一手に引き受けているんだなあと実感します。世の男性諸君で,夕飯は奥様に任せっきりという方もおられるかもしれませんが,それ,大変な負担をかけていることになるのです。自覚はしておきましょう。

さてその重労働であるところの料理ですが,労働を軽減させさらに楽しい時間にする方法が一つあります。それは「研ぎ」を覚えることです。これほど文明が進んで誰もが情報機器を携帯して使いこなしている世の中になったのに,「研ぎ」がきちんとできる方は珍しい部類です。たいていは切れない包丁で肉を引きちぎるようにしながら,あるいは千切りのつもりでも口の中でこわごわと感じる厚切りキャベシを製造しながらと悪戦苦闘しています。

もし「研ぎ」を覚えて全ての食材がはじけ飛ぶようにさくさくと切れると,包丁を扱う作業は引きちぎる悪戦苦闘の時間から楽しみの時間に変化します。切れるというのは「快感」を生み出すのです。

そんなわけで筆者は,世の重労働を引き受けて下さっている女性の方々に「研ぎ講習」を続けているのです。先日の集まりでも,料理が得意な後輩が,包丁研ぎはダンナにまかせているとのことで,台所に呼び出して研ぎ講習となりました。研ぎのような技術を身につけるというのは喜びでもあり,また料理人には大事なことです。短い時間でしたが,「切れるというのはどういうことか」を理路整然と実演実習を交えて伝授しました。

筆者の研ぎ講習を受けて研ぎが身につかなかった人はこれまで発生していません。それは独自の理論とステップによって,確実に切れ味が体得できるような構成にしてあるからです。切れるというのはどういうことか,切れ味の実感,研げたときの感触,視覚や触覚では判断できないことの処理方法,研げたかどうかを確実に判定する方法,使うべき砥石,メンテナンスなどいろいろなことがシステマチックに組み込まれて一つの流れになっています。今回の研ぎ講習でも,たぶん受講者2名は独りで十分な刃付けができるようになっていることでしょう。

そしてお肉を引きちぎる苦行の時間が,さくさく切れる喜びの時間に変わり,ゴハン作りの労働が少しでもラクに,楽しくなればいいな,と思っています。

きょうの画像はそんな話題と少しは関係のある刻みもの。レタスを細かく刻んで,刻んだニャマハムと混ぜ混ぜしただけでおいしいおかずになります。切れない包丁では作れない一品です。こういったものをシャキシャキとほお張りながら,筆者は一日の疲れを癒やすのです…(画像/MWS)。








2019年6月19日




『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』は現在,アマゾンさんで取り扱いができなくなっていますが,一週間以内程度に再入荷の予定です。最後の入荷になりますので,本書の入手をお考えの方は早めに注文していただくようお願いいたします。

出版社在庫の方も少なくなっておりますが,まだ発注は可能な模様です。全国の書店で注文ができますので,お早めにお手続きをお願いいたします。

本というものは,認知されずに倉庫に眠っていてはもったいないし,在庫がなくなって必要な人に行き渡らないと残念ですし,バランスがなかなか難しいところです。本書は一人でも多くの読者のもとに届き,新たな世界を覗いて頂ければと思っております。まだ珪藻の世界を知らない,珪藻なんて聞いたこともない,そういった方々にもぜひお手にとって頂き,世の中を解釈し直す時間を過ごして頂きたいと願っています(画像/MWS)。








2019年6月18日




過去を振り返ると6月はレンズの修理をしていることが多く,その理由は不眠祭りがひどくなって大した作業もできなくなり仕方なく機材のメンテナンスを行っているという感じでした。今年はしかし,不眠祭りらしいものはまだありません。ぼーっと寝付きの悪い日もありましたが,入眠困難の日でも最低でも4時間くらいは寝られているので,これは快挙といってよいくらいです。しかしなぜか,レンズの修理は6月前後に多いのです。。

きょうの画像は低倍対物レンズ。先端レンズが白濁していて向こうが見えない状態。このような劣化はしばしば見ますが,まるでフッ化水素でも塗ったのか?と思うような白濁です。そんなレンズが治るはずはありませんが,まぁでもやってみないことには,何が起きているのかもわからないので,出先から預かり修理にトライしてみたのです。

研磨してみてびっくり。白濁層はひじょうに硬く,そこいらへんのもので磨いてもびくともしません。ガラスそのものを研磨しないと白濁層はとれない感じです。そこでWAで研磨してみますが,細かい粒子だとさっぱり反応がありません。それで,ごりごりと音がするような粗いWA研磨剤で磨いてみると,ゆっくりと白濁層が落ちます。しかし手研磨ではどうしようもなく,研磨パッドを電動工具につけての作業です。

あらかた白濁がとれれば,研磨材を順次細かくして表面を仕上げます。いっけん透明にはなります。しかしガラス表面を見るとまるでエンボス加工でもしたかのような凸凹が残っていて,平均的な曲率は維持されているので像は出るでしょうが,フレアがひどいことになるでしょう…という作業結果になりました。

ということで修理はできなかったわけですが,経験としては悪くないものでした。レンズも,実戦投入は厳しいですが,透明にはなったので,レボルバの飾りくらいには昇格しました…(画像/MWS)。








2019年6月17日




ヤフーオークションには顕微鏡というカテゴリーがあって,日々,さまざまな顕微鏡とその関連機材などが出品・落札されています。多くのものは産業用や研究用の廃棄品などですが,コレクター向きの商品などもたまには出ていて,見ていると勉強になることもしばしばです。きょうは標本関連で飛び抜けて珍しいものが出ていて驚きました。

一つは『放散虫プレパラート用バルバドス産サンプルset スライドグラス,カバーグラス,高屈折率封入剤付属 微化石顕微鏡標本 小学生の夏休み研究にも』との見出しがついたオークションで,バルバドス産の放散虫(処理済み)のものと封入剤(Pleurax)のセットです。放散虫の状態は,筆者が持っている最上級のものと同等レベルで,放散虫の保存もよく,種もそこそこ多様で,これは貴重なサンプルです。そう簡単に入手できるものでもありませんので,お好きな方はぜひ落札を目指してみることをオススメします。正直,筆者も欲しいです…。

放散虫はあまり高屈折率の封入剤で封じてしまうとコントラストがつきすぎてかえって観察しにくくなります。Pleuraxは不向きだと思います。また,Pleuraxは通常,劇物扱いなので,これをそのまま小分けにするなどして販売することは薬品の再販にあたりますので法的には少し気になる案件です。解釈の仕方によっては大丈夫かもしれませんが,通常のPleuraxはフェノールを含んでおり,どう考えても「小学生の夏休み研究」に小学生が単独で使う薬品ではありません。せめて,安全管理ができるような詳しい説明書をつけるなりして,健康に有害な事象が発生しないよう配慮して頂きたいと思います。

もう一つの驚くべき出品物は『C.Baker作 珪藻プレパラートRealger封入 Surirella gemma(Olympus BH-2での撮影例を掲載)』と題したものです。珪藻を鶏冠石As4S4で封入したものです。珪藻の屈折率は約1.43,鶏冠石は2.4ですので,屈折率差が1にもなり,ひじょうに高いコントラストが生じます。鶏冠石はヒ素を含む毒物ですし,封入には高温が必要で,400度程度には熱しないといけません。封入過程でのトラブルも多く,加熱,冷却によるガラスのひび割れや鶏冠石の収縮によるヒビなども起こりやすく,製作はやや面倒です。しかし過去には高いコントラストを追求した時代があり,その頃の名残の製品がオークションに出ているのです。

筆者も過去に鶏冠石封入はやりましたが,確かに,その高いコントラストに驚いたものでした。ただ,鶏冠石の厚い膜は短波長を通してくれないのでせいぜい530nmでの検鏡がよいところで,470nmではほとんど無理かもしれません。となると,高分解能を追求するならば,鶏冠石は不向きということになり,個人的には鶏冠石封入の必要性を感じなくなっています。

しかしそれでも,このような過去歴史を語る品物がオークションに出ていると,「おおっ」と欲しくなってしまいますねぇ(画像/MWS)。








2019年6月16日




15日は神奈川県内で『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』出版記念パーティーでした。いつもひきこもりでひとりぼっちで仕事をしている筆者にも,こんな素敵な集まりを施してくれる方々がおられるのです。本当に有り難いことです。スーパー能力をもつ学校の先生,お料理研究人,化学屋さん,ガチャガチャ屋さん,博物画やさん,プロのイラストレーターさん,ピアノの先生,鉱物・砂金収集人,理科大好きで食べることが大好きな女の子,黄色いお花が大好きな女の子,スーパーメンバーが集結し,手料理と酒が並べられてほんとうに楽しいひとときを過ごさせていただいたのでした。

筆者も何かをしないといけませんので,お土産の本などを持ち込み,回覧用の携帯顕微鏡H型2台,メンテナンスセットに標本,No.3系の精密ピンセット群のテイスティング,包丁研ぎ用のシャプトンオレンジ,緑,丸尾山砥石(合さ),酒(浦霞),顕微鏡ガチャなど,十数キロになろうかという荷物を担いでの参加となりました。約5時間のパーティーでしたが,もう本当にあっという間の時間でした。

最後は手打ちそばに自家製つゆが出てきて,これがまたおいしいのです。何が素晴らしいって,砂糖果糖ブドウ糖を添加した味がしないのです。市販のだしつゆでも甘くて我慢がならない筆者には最高の相性でした。持ち込んだ砥石で研ぎ講習もでき,少しだけ「仕事」をすることもできて,大変満足な一日でした。

このパーティーが今後もしっかりやれよというメッセージかどうかはわかりませんが,活力を注入されたことには間違いがありません。何か筆者の人生に足りなかったものを補ってもらった気がします。ご参加頂いた皆様に心より御礼申し上げます。またできるといいなぁという感じなのです(画像/MWS)。








2019年6月15日




14日は都内で顕微鏡関係の作業でした。内容は古い蛍光顕微鏡の動作確認で,作業には専門的な技能が必要になるので出向きました。高級機と言われるタイプのものでしたが,ランプハウスが劣化しており,ランプの心出しができない状態でした。どこがおかしいか見抜くのに時間がかかり,さんざん試行錯誤しているうちに固着部分が自然に外れ,無事に心出しをすることができました。顕微鏡の像形成は照明に大きな制約を受けます。ランプの心出し一つで像が変わります。ので,この部分はパーフェクトに調節しないといけないのです。

ランプの心出しは,ランプハウスさえ芯出しできればいいと思ったら大間違いで,光学系全体の問題です。まず物体を観察状態にして,コンデンサの心出しをして,視野絞りの機能正常を確認し,コンデンサ高さや,各部の固定ねじの締め付けを確認して,ランプ以外の心出しを完全に調節します。そのあとでランプハウスの心出しにかかります。つねに対物レンズBFPを見ながら,ランプのフィラメントが完全に対物レンズBFPを覆えるようにして輝度ムラが最小の位置にして,物体を検鏡して最終確認。なかなか気を遣う仕事です。

きょうの画像はそんな話題とはあまり関係のないもの。でも,きちんと仕事をできて少しはお役に立てたかな,という感じがあれば,気分よく横になれるというもの。そんな充実感をワンコで表現してみました…(画像/MWS)。








2019年6月14日




重要なお知らせ

『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』は現在好評発売中ですが,出版元の在庫が少なくなっていて,このままの売れ行きで推移すれば,まもなく出荷終了になる見込です。アマゾンさんの方の在庫も減ってきていて,近日中に在庫切れになった場合,あと一回程度の最終入荷になる見込です。これらの在庫がなくなれば,あとは各地の書店さんがお持ちの在庫(売れ残り)のみが入手ルートとなります。

まだ入手していない方,迷っている方,夏休みの子どもへのプレゼントを考えていた方,至急お買い求め下さい。本書は「雑誌(定期刊行物)」の形態で売り切れれば再版はありません。入手できる最後のチャンスとなっています。1〜2冊が必要な方はアマゾンさん,それ以上の数が欲しい方はすぐに書店注文をかけて下さい。

現在のペースで売れていきますと夏の終わりまで在庫が残っていることはまずないだろうという状況で,場合によってはもっとずっと早く売り切れてしまう可能性も出てきています。買わずにあとで後悔するよりも,770円と安いのでまずは買ってみることをオススメします。

とにかく,一人でも多くの方に本書を手にとってもらえるよう,著者として心より願っております。どうかこの情報を周囲に広めて下さい。よろしくお願いいたします。

そして,こんなに早く在庫切れが迫ってきたのは皆様のご協力のおかげに他なりません。良いもの・美しいものを広めようとして下さった皆様,どうもありがとうございます! (画像/MWS)。








2019年6月13日




拾い出しのむずかしさを述べてきたわけですけれども,もちろん,並べるのも簡単ではありません。でも,珪藻を拾うのは,並べる練習にもきっとなっていることと思います。長さ0.03mm,幅0.01mmなどという小さな珪藻を拾い出すときには,とうぜん,指先がその精度で動いていないとダメなわけで,集中的な拾い出しは指先の精度を出す訓練にもなっているというわけです。

『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』にも書いたとおりに,指先を安定させるには体をつくることが大事です。のどが渇いたといってコーラやジュースを飲んで,小腹が減ったからと甘い菓子をつまみ,暑いからとアイスクリームを食べているような人には,高精度の操作は難しいかもしれません。定期的に砂糖を飲み込む人は多かれ少なかれ血糖値の乱高下が起きており,その過程でアドレナリンが出ることがあるらしく,ほんのわずか,顕微鏡で見える程度ですが,指先が震えるようになるのです。

そんなわけで,筆者はこの12年間,砂糖入りの食品を食べていません。標本を作るときだけ食べないのではなく日頃から一切食べないようにしています。自宅に砂糖を置いていないので料理にも砂糖は使いません。甘みは日本酒や大根などをうまく使って補ったりもしています。果物は食べますが,あまりにも糖度が高すぎるもの(ぶどうなど)や干しぶどうなどのドライフルーツは食べません。

ご飯が基本でパンは一切食べません。パンはお菓子を食べるのとほぼ同じだからです。甘くないからといって,スナック菓子の類いもまず食べません。食事は野菜を多用し,海藻やきのこも豊富にしています。食事のはじめにまず野菜や海藻などを食べて,お米は後半に食べます。

などという食生活上の工夫をすることによって血糖値はたぶん乱高下することはなくなるのだろうと思います(測ったことはありませんが)。指先はつねに安定し,着席してすぐに精密な拾い出しの操作に移ることができます。

きょうの画像はオアマル湾の珪藻化石破損品のテスト封入品。携帯顕微鏡H型による撮影です。かなり大きな珪藻の破片で,このくらいのサイズであればフリーハンドで並べてしまいます。治具の類いは一切使わずに,シャープペンシルにセットしたまつげの毛先で,レイアウトを考えながら珪藻を次々に落としていきます。何事も経験。簡単ではありませんが,できない作業でもありません(画像/MWS)。








2019年6月12日




きょうの画像はトリゴニウムという三角形の珪藻の殻。画像のもので大きさは約0.1mmくらいでしょうか。この材料は宝石デザインなどで多量に消費するので同じ大きさのものを大量に揃えておく必要があります。画像に写っているだけで50個以上ありますがこんなものでは足りません。状態のよさそうな殻を探してひたすらため込んでいくのです…。顕微鏡でしか見えないこんな小さなものを偏執的に収集するなんてのはマッドな世界と言われても仕方がありません。

でもそんな狂った世界にもよいことがあります。それは珪藻が小さいということです。小さいので場所をとりません。この珪藻を千個集めたとしても,10mm×10mmの面積があれば保管できるでしょう。事務所も借りることなく,都内の狭い狭いマンションの自室でちまちまと仕事をする筆者にとっては,珪藻が小さいというのは,大変ありがたいことなのです(画像/MWS)。








2019年6月11日




ひたすら試料をかき分けて珪藻を探して,たとえば1分に1個の殻を確保できたとして,一時間作業しても60個にしかなりません。そのまま同じ効率で6時間作業しても360個です。これは100個並べたプレパラートの1〜2枚分にしかなりません。数の上では3.6枚できるはずですが,実際には種に偏りがあったり大きさのバランスがとれなかったりして,使える数が限定されます。すると,一つの産地の試料から,100個並べたプレパラートを5枚程度作りたいときには,たぶん3,000個近くは拾い出します。

きょうの画像はオアマル湾の珪藻化石試料から拾い出したものですが,試料の山をひっくりかえして二巡目くらいのようす。人間の目には見落としがあるので,8巡目〜30巡目くらいまでしつこくつつきまわしますが,だいたいの様子は最初の二巡目くらいでわかります。で,この程度の収量ということは,このサンプルからはプレパラートはいくらもできない,という悲しい結論が導かれてしまいました。。この試料はある程度処理済みのものが入荷したものですが,ラクしようと思ったのが間違い。そう簡単に宝の山は手に入りません。

未処理の試料がたくさんあるので,これからは,珪藻土の粉末をぐつぐつ煮てほぐし,粘土鉱物などを分離して,珪藻を破壊せずにきれいに洗う日々が待っていることになります。これもまた先の見えない作業で,きれいになるまでいくらでも続けなくてはならない耐久的な時間消費となります。でも,そのサンプルの中に宝物が入っているだろうことはわかっています。やるしかないのです(画像/MWS)。








2019年6月10日




きのうの化石珪藻はどんな試料から拾い出したのかというと,きょうの画像の如くです。拾い出した画像だけを見ればどんな素敵な試料なのだろうと思うかもしれませんが,じっさいは大量の海綿骨針に壊れた珪藻の破片と放散虫の混在する,保存性の悪いサンプルです。このくらい壊れてしまっていると,完全な無傷の個体を拾い出すことはあきらめるよりほかなく,多少の傷,欠けなどは許容範囲として拾い出しを行います。

珪藻を並べた標本を見ると皆さん,並べる技に感心してくれるのですけれども,どんなに並べる技があったとしても,じゅうぶんな量の良質な珪藻の殻を拾い出していなければまともな標本はできません。拾っている時間と並べている時間を比較すれば,明らかに拾っている時間の方が遙かに長いはずで,拾い出す技の方がひょっとすると高等なのかもしれません。産地ごとにサンプルに目を慣らし,きょうの画像のようなガラクタの山状態の中から使える珪藻の殻を一瞬で見抜き,わずかな毛先操作で分離して,毛先に吸い付け,きれいなガラス基盤上に落としてストックする…,そのような作業を何千回も繰り返すのです(画像/MWS)。








2019年6月9日




珪藻はガラスの殻を持っているので,細胞が死んで有機物が分解消失しても,ガラスの殻は分解せずに残ります。海水はガラスを溶かす作用があるので珪藻の殻は徐々に溶けていきますが,海底に沈んで温度が低かったり,たくさんの珪藻の殻が積み重なっていたりすると,殻の溶解は遅くなり,長い年月残ります。珪藻がたくさんいて,たくさんの殻が降り積もったところだと,たくさんの珪藻の殻が化石となって残ります。残された珪藻化石のなかの珪藻の種類を見ると,その海域の環境を反映し種がたくさん残されています。

このようなことから,珪藻化石を顕微鏡で観察すると,産地が分かることがあります。その一例がきょうの画像で,写っている珪藻化石を見ると,詳しい人が見れば,これはニュージーランドのオアマル湾(Oamaru湾)周辺の珪藻化石だなと,見た瞬間にわかってしまうのです。

このように,指標として優れているので,珪藻の化石は,過去の環境がどのような条件であったかを調べるための有用なツールにもなっています(画像/MWS)。








2019年6月8日








この人はたぶんニセウチワヒゲムシの仲間。とても小さくて長さ0.03mmくらいでしょうか。葉緑体がちりばめられた緑色の細胞に赤色の眼点。細胞表面にピントを合わせると縞模様が見えます。コンデンサを絞り込んでいくと眼点の方向からべん毛が出ています。見た目の形は違いますが,細胞の基本的な構造はミドリムシそのものに見えます。じっさい,DNAで比較するとミドリムシの仲間としても不思議ではないそうです。きょうの画像も携帯顕微鏡H型を用いて油浸での撮影です(画像/MWS)。








2019年6月7日




たくさんのふしぎ2019年6月号には『珪藻美術館』というタイトルがついています。筆者は2015年の暮れにも『珪藻美術館』という書籍を上梓しており,同じタイトルの印刷物が世の中に2つ出回ることとなっています。古い方の『珪藻美術館』は出版社さんとのご縁が続かなかったので筆者個人の判断で絶版にしています。その絶版にしたはずの本と同じタイトルの雑誌が刊行されることとなり,読者の方々はいろいろなことをお考えになったのかもしれません。ある人からは,「珪藻美術館というタイトルに思い入れがあるのだろうと受け取りました」とのこと。もっともなご意見です。

そこでちょっときょうはタイトルのお話です。

古い方の『珪藻美術館』というタイトルは筆者がつけたものでなく編集者が最初から用意していたものです。一度もタイトルについての議論を交わすことなく,そのまま用意していたタイトルが採用されて書名になりました。本を出したことのある人はご存じのことと思いますが商業出版物では書籍は出版社の「商品」ですので,魅力的な商品に見えるようなタイトルを付ける必要があります。そのため,著者がタイトルを提案してもそのまま採用されることは少なく,たいていは編集者や営業担当さんの意見が入り「売れそうな」タイトルに決定されます。

さて今回の「たくさんのふしぎ」については,粗稿を書き上げて画像とともに納品するときに,筆者は仮タイトルとして『小さなガラス』という作品名をつけました。内容はタイトルに沿って書き下ろさないと統一感がとれないので,仮にでもタイトルを決めないと原稿を書きづらいのです。そして編集過程でもとりあえず『小さなガラス』というタイトルには手を付けずに内容についての編集作業が続きました。そして原稿の形ができあがってきたときにタイトルのご相談,というやつがやってきて,『珪藻美術館』を提案されたのでした。

個人的には,自ら廃版にした旧著のタイトルをつけることは気分のよいものではありません。…といいますか,他のタイトルなら何でもいいけれども,このタイトルだけはよくないなあと思うほどのもの。でもそれはあくまでも個人の感情です。編集者さんや営業さんが客観的に原稿を見たら,最適なタイトルというのは自動的に決まってくるもので,『珪藻美術館』がよいだろうということになったのです。筆者は自分の作品といえど,それが出版社の「商品」であることは深く理解していますので,ひじょうによくない気分でありながら,にこやかにOKしたというのがコトの真相です。ということで,『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』というタイトルは,出版社さんが(筆者と相談の上で)つけてくださったのです。

結果的には,(筆者以外の)万人を納得させるよいタイトルになったのだろうと思っています。

これまで三冊の単著を出しましたが,自分でタイトルを決められたことはありません。本の名付け親は多くの場合は編集者さんなのです(画像/MWS)。








2019年6月6日










先月に油浸対物レンズの分解清掃を行ったところですが,じつは同じレンズでメンテナンス待ちのものがもう一件あったのでした。先玉の裏側が薄く曇っており像は出ますがフレアが気になるという代物です。油浸対物レンズの分解清掃は気が重く5年間も放置していました。しかし前回のオイル漬け対物レンズを復旧できたことにより,今回のレンズも元に戻せそうだとの見込ができてついにやってしまったのです。たった8面のガラスを拭く作業ですがたっぷり一時間半はかかりました。とても小さなレンズなので実体顕微鏡を見ながらの作業になります。

組み込んで外部清掃を済ませたら携帯顕微鏡H型に装着して油浸のテスト撮影。通常は珪藻テストプレートを使いますが,今回は原生生物の生細胞でテストを行いました。画像三枚目はミドリムシの眼点にピントを合わせたところ。画像四枚目は細胞表面の縦縞にピントを合わせたもの。コンデンサは乾燥系で絞り開放。さすがは油浸対物の分解能です。像をみてもおかしなことは起きておらず,メンテナンスは無事に成功のようです。こうしてまた機材が一つ,蘇りました。

それにしても,てのひらの上に乗るサイズの顕微鏡で油浸で倒立検鏡とは愉快なものです。数滴の水のなかにいる微生物たちの世界が,大水槽でも置いてあるかのように,奥行きをもって楽しめます。緑藻あり,ミドリムシあり,珪藻あり,シアノバクテリアあり,アメーバーも繊毛虫もいて,見飽きません(画像/MWS)。








2019年6月5日








ウチワヒゲムシ(Phacus gigas)は緑色のウチワ型をしていて赤い眼点をもち,眼点側の先端からべん毛をチョロチョロ出しながらべん毛方向に進行します。細胞はウチワと同じくらいとはいえませんが,かなり薄っぺらい感じです。そのことを示したのがきょうの画像。1.2mmもの水深でサンプルを封じ込めているので,ウチワヒゲムシは自由に泳げます。ので,一つの細胞を追いかけて正面,斜め,横から撮影しました。雰囲気を感じ取って頂けるかと思います。画像は携帯顕微鏡H型を用いてNikon1J5での撮影です(画像/MWS)。








2019年6月4日




先週末に行われたNHK放送技術研究所一般公開で,カールツァイス社の協力による8K顕微鏡システムの展示が行われました。筆者は参加しなかったのですが,ありがたいことに,カールツァイス社から展示の報告をいただきました。それがきょうの画像。なんと当サービスの誇る珪藻クリスマスツリーをハイエンドのツァイス顕微鏡にセットして暗視野での8K展示というこれ以上は望むことも不可能な豪華なものです。さらに,『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』まで添えて下さるという素晴らしい配慮。きっと見学に訪れた方々は,ツァイスの誇る広視野高解像対物レンズと8Kカメラの威力を,あの微少な珪藻を通じて体験できたことと思います。大きな画像は こちら に置きましたのでぜひご覧下さい。社内・社外のトレーニングマネジャーが本気を出してきたプロの展示法からは学ぶところが多いです。ツァイス本社方向には足を向けて寝られません(画像/カールツァイス社,T.Tanaka)。








2019年6月3日










携帯顕微鏡H型にセットしたサンプルを片付けるのが面倒なので机の上に出したまま放置しました。そのサンプルを撮影してみたのがきょうの画像。3滴くらいしか入らない小さな空間に閉じ込めて三日目ですが,微生物たちは元気です。珪藻は条件が悪くなると弱るのが早いですが,活発に滑走運動していました。ウチワヒゲムシも健在です。この時期,室温もちょうどよく,室内の弱光条件でちょうどよいくらいですね。数時間くらい窓際の光を当ててやるだけで十分です。

撮影は携帯顕微鏡H型にCマウントチューブと拡大用エクステンション(レンズ入り)をつけてNikon1J5での撮影。画像は縮小とアンシャープマスクのみで明度,色や彩度は一切いじっていません。対物レンズは40xの開口数0.65ですが,バクテリアも写ります。もしこの対物レンズがプランアポだったらさらによろしいのですけれども,そういえば携帯顕微鏡でアポクロマート補正のレンズをつけたものって見かけませんね。時代はあらゆるものが小型化に向かっているので,この辺りで顕微鏡メーカーさんも本気出して,プランアポ標準装備でデジタルイメージング可能な携帯顕微鏡を開発してくれませんかね。あまり高いと買えないけれども…(画像/MWS)。








2019年6月2日










携帯顕微鏡H型でイメージングするときはCマウントチューブ(投影レンズ入り)を介してNikon1に接続しています。これで鏡筒長も守られコンペンにもなっています。そのことを示したのがきょうの画像で,淡水の微生物を40倍対物レンズを用いて撮影したものです。撮影画像をみてわかるように,ケラレがあるものの,像品質に問題はありません。

携帯顕微鏡H型は倒立顕微鏡になっていて,対物レンズがボディ内部にあり,しかもこの対物レンズはカバーガラス厚さ0.17mmの設計なので,水試料を検鏡するときには注意が必要です。ふつうにスライドグラスに一滴の試料を落としカバーガラスをかけた状態でも検鏡できますが,カバーガラス側を下に向けなくてはいけないので,広範囲を見ようとするとカバーガラスの縁から水がステージに付着します。淡水ならいいのですが海水の場合はすぐに水拭きしないと腐食の原因になります。

このようなことを避けるためにもホールスライドの使用は有効です。これはスライドグラスに孔をあけカバーガラスを貼り付けたもので,カバーガラス貼り付け側を下に向けて使います。試料はホール部分に落とし,そのままでも検鏡できますが,水面の平面性を維持するためにカバーグラスをかけてもよろしいです。より気密を高めるにはシリコンゴムのパッキンを貼り付けます。そのようにして使用しているのが画像2枚目です。この状態で数日間程度,原生生物たちが活性を維持して生きています。

きょうの画像に写っているH型は,内部にDC-DCコンバータを仕込んであり,LEDは各種のものが交換可能になっています。きょうの撮影に使ったのはオプトサプライの砲弾型,ウオームホワイトのものです。超高輝度タイプですが,Nikon1J5でISO800の設定で,対物40xでコンデンサを絞り込み,1/640秒のシャッターが切れます。この速度だと手ぶれは起きないので,シャッターは手押しが可能で,しかもある種の動きの速い旋毛虫を写し止めることもできます。撮影の歩留まり向上にLEDがよい働きをしてくれています(画像/MWS)。








2019年6月1日




31日午後は携帯顕微鏡H型の講習でした。数年前にも似たようなことをやりましたが,今回も同じ系列の人脈です。新規入手で一通りのことを習いたいというリクエストに応じて,野外実習としました。木々に囲まれた公園のベンチで中年のおっさん二人が携帯顕微鏡H型を並べて検鏡している光景はさぞかし奇異に見えたことと思いますが,本人たちはめくるめく楽しい時間だったのでした。曇天で気温もちょうどよく,外の空気を吸いながら夕方のひとときを過ごせたことは筆者にとってもリフレッシュの時間となったのでした。その後はもちろん,室内実習となり,金色の液体をのどに流し込みながら顕微鏡談義が夜遅くまで続いたのでした。物好きのおっさんが本気を出してくると,顕微鏡ひとつの機種でも話題が尽きることがありません…(画像/MWS)。








2019年5月31日




今月の本ページは『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』の連動特集として更新して参りました。今回の本は雑誌ということもあってそれなりの部数を発行されているようで,多くの方に珪藻を紹介できるチャンスを作れたのはとてもよかったと思っております。

しかし本を出版しただけでは,珪藻を学ぶ材料が世の中に配置されただけです。いろいろな人にこの本を「発見」してもらわなければ,せっかく出版した本も存在しないことと同じで,何の意味もありません。

現在は書店が少なくなり,また人々も書店めぐりに費やす時間がなくなってきています。パソコンやスマホなどの情報機器にどうしても時間をとられてしまうからです。

この状況下では,せっかく出版した本も存在を知られることなく倉庫に眠り,廃棄されてしまう可能性が高くなっているのです。

『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』はとても大きな反響があり,皆様から絶賛されましたが,それでも多くの人に認知してもらうのは本当に大変な作業です。

皆様,本書をお読みになって価値のあるものだとお感じになりましたら,周囲の方々に出版情報と入手法を広めていただくようお願いいたします。本を人の手に渡すことにより,本来の機能をもたせてあげてください。どうか引き続きよろしくお願いいたします(画像/MWS)。








2019年5月30日




『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界(月刊たくさんのふしぎ2019年6月号)』発売からまもなく一ヶ月になろうとしています。多くの方々からご好評を頂いております。SNSの情報で入手した方,書店で表紙に一目惚れして入手した方,プレゼントにもらった方などがおられるようで,いろいろなシーンでご利用いただいていることに著者として大変うれしく思っております。アマゾンにもレビューを書き込んで下さった方々がおられます。一つ一つ,繰り返し拝読しております。様々なご感想に勉強になるとともに,心より感謝の念がわき上がってきております。ありがとうございます。

通常『月刊たくさんのふしぎ』シリーズは,しばらくの間はバックナンバーとして入手できることがほとんどで,アマゾンなどでも既刊のタイトルについて在庫が確認できます。しかし『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』は売れ行きが好調のようで,ほかの号と同じくらいの期間,在庫が保つかどうかわかりません。今後も人気が続くようなら,そう遠くない将来に在庫切れになることもあるかもしれません。月刊雑誌ですので在庫切れになったら増刷はありません。

入手しようと思いつつまだ手にしていない皆様,ぜひ早めにアマゾン,書店注文等で確保して下さるようにお願いいたします。

きょうの画像もボツ画像。カラフルに表現した珪藻の殻ですが,編集過程で自然と排除されました。筆者もこの絵はちょっとケバケバしい感じがしていて,『たくさんのふしぎ』よりはニコンスモールワールド向きかな,と思っていましたので,ボツにしてもらってホッとした感じもありました。編集者さんやデザイナーさんの美的センスと同じ方向性の感じがしたからです(画像/MWS)。









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