画像のご利用について   サイトマップ





本日の画像

ミクロワールドサービスが顕微鏡の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


【2021年】  1月  2月  3月
【2020年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2019年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2018年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2017年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2016年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2015年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2014年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2013年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2012年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2011年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2010年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2009年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2008年】  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
【2007年】  9月  10月  11月  12月

【今月にもどる】 




『珪藻美術館』(福音館書店) 好評発売中!
 



『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』
(たくさんのふしぎ傑作集)

 奥 修 文・写真
 福音館書店,48ページ,1300円+税 
もらったら嬉しい気持ちになる科学絵本です。大人でも子どもでも楽しんでいただけます。プレゼントにも最適です。全国の書店やネット書店,amazonさん などでお買い求めいただけます。





2021年3月31日




きょうの画像は気象庁が黄砂を確認した時刻の6分前のもの。文京区からスカイツリー方面をみています。これはだいぶ来ているかなぁという感じです。東京では10年ぶりの黄砂と発表されていますが,これは気象庁の定義でいう黄砂が東京で10年ぶりに確認されたということであって,黄砂自体は毎年,それもけっこう通年に近く来ています。

究極に透明な標本を製作するにあたって最大の障害は黄砂です。筆者は常時顕微鏡を覗いていますので,黄砂がきているかどうかはわかります。だいたい,2月の終わりから3月終わりのどこかで黄砂が降り始めます。多い日は締め切った部屋の中でも降ってきます。ひじょうに微細な粒子でどこからか入ってきます。

毎日降ってくるわけではなく翌日はなんともないこともあります。北風や北東気流が入り込むと一気に空気がきれいになります。

気象庁が黄砂を発表するような条件だと多くの粒子が降ってきていますので窓をあけることはできませんし,珪藻も扱うことはできません。今回の黄砂はかなり規模が大きいので過ぎ去るのを待つしかありません。

…というように黄砂はやっかいものなのですが,微量栄養素を含む粒子でもありますので,貧栄養の海域に落下すれば栄養の補給となります。そこに十分な日射があれば珪藻をはじめとした植物プランクトンの増殖を助けることになります。地球の元素循環では無視できないものです(画像/MWS)。








2021年3月30日




プランクトンをイメージングしていると単なる透過明視野では物足りないことがよくあります。それで偏斜照明,暗視野,位相差,微分干渉法,偏光法,蛍光法なども併用して望む絵を作っていくのですが,全部の装置をそろえると出費がえらいことになります。ので,筆者は顕微鏡の勉強を本格的に始めてから5年以上もの間,明視野,偏斜,偏光,暗視野くらいの照明法しか使えませんでした。

偏光法は偏光フィルターやフィルムを光路に配置するだけなので簡単に安価に行うことができます。直線偏光フィルターだけでなく円偏光フィルターもありますのでバリエーションもできます。

きょうの画像は円偏光(左円偏光,右円偏光のフィルターでサンドイッチ)で撮影した渦鞭毛藻の殻です。流氷下に存在していたものですでに抜け殻になっています。透過明視野でも見えますが,円偏光照明を行うと背景光を落とすことができて見やすい絵にできます。

多額の投資をして最初によいものをそろえてしまえばよい絵を撮影することに集中できますのでとてもよいです。しかし先立つものがありません…という場合は,とにかく手近でできそうなことを片っ端からやってみることもよいのではと思います。物体に対してどんな照明法がふさわしいのかは試してみないとわかりません。既存の方法以外にもよい技法が未発見で存在しているかもしれないのです(画像/MWS)。








2021年3月29日










このブリには「天然」シールが貼られているのだけれども,どこをどうみても「養殖」のブリにしか見えません。身の色は少し赤身がかかっているものの,身の脂,皮下脂肪,血合いの色,庖丁を入れたときの身質,すべてが養殖ブリと同じ感じです。食べてみても天然ブリの味がしません。

ブリは養殖ものの方が高値で取引され,脂を好む方々からは天然物よりもおいしいと評価されています。販売者が天然物をアピールする意味があまりありません。ので,養殖物を天然物に偽装したとは考えにくいですし,いまどき,そんなことをしている魚屋さんもいないような気もします。

すると三重県では養殖物と区別できない身質のブリが泳いでいる…のかな? それとも養殖いけすの周囲を泳いでいたブリなのか…謎なのです(画像/MWS)。








2021年3月28日








あたたかくなり都心は桜が満開。近所の公園では桜の下で上流階級の方々がワンコタイムです。17時頃から毎日はじまるワンコの時間。いち通行人の筆者はこれを楽しみに生きているのです(画像/MWS)。








2021年3月27日




のらぼうが数日分,冷蔵庫のチルド室にあるにもかかわらず,再びのらぼうが入荷。八王子の道の駅で購入したものとのこと。旬のものはいくらあってもよいでしょう。速攻で茹でてジップロックに入れてチルドに放り込みました。これで一週間はのらぼうが食える。ちょっとした小市民の幸せです。

『のらぼう』は五日市の特産品であり,3月には毎年「のらぼう祭り」が行われるほど郷土で愛されているものなのですが。もともとの栽培地域は五日市の山間部,あきる野市の平野部,八王子市の西部丘陵地帯などが主なところです。最近は埼玉県産や神奈川県産のものも確認されています。

どこのものがよいかというとダントツで五日市の谷沿いのものなのですが,これには朝露などの湿度が大きく関係しているように思えます。茎が太く育ってもまるでアスパラガスでも食べているかのようにみずみずしく柔らかく食べられます。これがあきる野市の平野部や八王子市の少し開けたところになってくると,やや筋っぽくなるのです。以前,埼玉県産の畑で作ったのらぼうが都内のスーパーで売られていましたが,全体の半分以上が繊維で食べることはできませんでした。ので捨てました。

よいものを買うこつは産地を選ぶことでもあるでしょう。どこでも植えれば同じ『のらぼう』になると思ったら大違い。山深い寒い五日市で飢えをしのぐための食べ物だったのですから,水気のある,谷沿いで,夜露や霜が降りるようなところのものなら,よい品質になるものと思います。神奈川県産なら,三浦半島産よりは,丹沢のふもとで育てた方が良好になるだろうと想像しています。

よくできたのらぼうは3分間ゆがいて水にとり,よく絞って切れば美味なおかずになります。さわやかな香りがあってほんのりとした甘味は春を感じさせます。何もつけなくてもついついつまんでしまいます。バターと釜揚げしらすで和えれば宮内庁御用達レベルの出会いものになります。

『のらぼう』が入手できない地方の方々は,「かき菜」を探してみてください。風味は若干ことなりますが雰囲気は味わえます。じつは『のらぼう』にも「のらぼうのかき菜」というものがあって,これは最近なぜか手に入らないので貴重品。かき菜になると味が濃くなるので滋養に富む味わいになるんです(画像/MWS)。








2021年3月26日




昨年は学会出張のない一年でした。地方の学会員出向くことは気分転換の旅行的な面もあって継続してきた習慣でしたが,新型コロナの関係でどこにも外泊しない一年になっています。いったい,いつ以来でしょうが。一年間どこにも自宅以外のところに宿泊しないという経験は,ひょっとすると人生初なのでは?と思ったりもしています。真相はわかりません。

きょうの画像はいつもお世話になっている東横インのロゴ。この16年くらい,学会出張は東横インのことが多いのですが,これだけ宿泊していると出先などでも東横インの看板?を見るとなんとなく安心したりもするのです。

そのむかし,京都の東横インに予約したときに,条例でこの看板がなくて,建物を発見できず,何度もホテルの周辺をぐるぐるしたことがあります。

次に東横インに宿泊できるのはいつになるでしょうか…。その日を楽しみに待ちたいと思います(画像/MWS)。








2021年3月25日












のらぼう探しの旅の二回目。のらぼうの旬は短く桜が咲く頃の前後わずかな期間です。朝どれの新鮮なのらぼうをもとめて秋川駅へ。野菜は肉や魚以上に鮮度が落ちやすく,特に新芽や伸び盛りの葉物などは時間が勝負です。朝どれの『のらぼう』を自宅まで急送して,直ちに水洗いしてゴミや虫を振り落とし,2分半から3分ほど湯がいて流水(水道水)ですすぎ,ざるにあけます。これをフリーザーパックに小分けしてチルドに放り込みます。作業中は手では触れずに滅菌作業的に取り扱います。これで一安心。数日間は鮮度と味が保たれた『のらぼう』が食卓にあがります。『のらぼう』の産地近くで育った筆者にとっては春の重要食糧で,毎年こんなことを繰り返しています(画像/MWS)。








2021年3月24日




きのう書いた粘液糸を可視化してみたのがきょうの画像。この粘液糸は観察時にはまったく見えませんでした。しかし珪藻がふわふわと動くのでおかしいなと思っていたのです。こういった糸を出している珪藻は沈んでくれずに,ガラス面から少し浮いているので止まってくれないのです。それでハタと思い立ち,ぎりぎりのイメージングをしてみたら,案の定,粘液の糸が見えたのでした。かなり細い糸で当室の微分干渉でも気づかないレベルです。きょうの画像は透過明視野と偏光の組合せです。20年近く前に発見?したのですが,偏光法はこのような極細の糸を可視化できることがあります。物質の境界面で起きる偏光を検出しているものと思われます(画像/MWS)。








2021年3月23日






本ページは毎日更新しているのですが,ときどき筆者のパソコンの中だけで更新が行われていることがあって,ここ2日もそうだったようです。すみません…。いつも更新作業は夜に行っているのですが,記事を書くと安心してしまってかアップロードを忘れてしまうことがあります。それでも2日連続でミスすることは滅多にないはずなのですが,昨日はたるんでいたらしくミスに気がつきませんでした。

きょうの画像は海氷の下にいたデトヌラの仲間。画面横幅は110μmなので小さな(細い)珪藻であることがわかります。こういった小さな生きた珪藻の撮影には気を遣います。液浸対物レンズを使うとごくわずかピントをずらしただけで珪藻が微妙に動きます。この珪藻はほとんど見えない程度の粘液糸を出していて,たとえ倒立顕微鏡を使って検鏡していてもうまく沈殿してくれません。わずかに浮いている珪藻の被殻の構造に狙いをつけてピントを合わせるわけです。

ピントをどこに合わせるかも重要で,できあがりの絵をイメージしながらの撮影です。きょうの絵では被殻の接合部の鋸歯のような構造と,表面の鱗片状の薄い被殻が作る模様を狙っています。背景減算してからヒストグラムをいじると構造が浮き出たコントラスト強調画像ができあがります(画像/MWS)。








2021年3月22日




大学非常勤講師というのはとてもふしぎなポジションです。大学で講義をするだけの人材はそれなりのステータスにあるはずで,それなりの評価があってもよいのですが,極東の島国ジパングではそんな感じにはなっていないように見受けられます。

まず不思議なのは,大学非常勤講師というのは常勤ではないのにもかかわらず,採用にあたって「教歴」を求められることがあることです。大学側の立場にたてば,いろんな大学で講義をしてきた人気講師を採用できればこんなに有り難い話はなく,「教歴」を求めるのも理解できます。

しかし博士課程に在籍中の院生や,博士を終了したODの研究生などに「教歴」を求めても,そんなものはあるはずはありません。では,この「教歴」のない人たちはどうやって「教歴」を入手するのでしょう。その答えは簡単で,「コネ」,これだけです。どこかの先生のコネで話が流れてくれば教歴の有無に関係なく採用が決まります。

筆者はもともとレクチャラーを希望していたのでどこかの大学で講義したいと(かつては)思っていました。しかし約22,3年前の世の中は非常勤の公募は見当たらないし,どうやったら大学での教歴を身につけることができるのかわからないほどのブラックボックスでした。公募と称するものもほとんどは偽公募で,偽公募の場合はそれがバレて応募倍率が2,3倍の恥ずかしい公募も散見されたようです。

そんなある日,研究所の上席に位置する先生から,おっくん私立大なんだけれども非常勤できる?という話が(確か)昼食中にあって,聞けば環境論なので,瞬時にOKしました。そのときの上席研究員の表情が忘れられません。『私立やぞ,本当にいいの!』といった感じでした。つまり,手に余る大変な学生たちだぞ,ということでした。筆者はもちろんOKしました。

驚くべきことに,この短いやりとりだけで採用は決まりました。次に連絡が来たのは,来期のシラバス原稿を提出して下さいというものです。

そんなことはお安いものです。学部生時代に,まともな講義ができない先生方をみて,日本中の大学で多大な損失が起きていることを察知して,学部時代から講義ノートの材料集めをしてきた蓄積があります。講義設計やシラバスはホイホイと提出しました。

きょうの画像は最初にお世話になった非常勤先のシラバス。千葉県にある私立大学ですが,偏差値的には低いと言わざるを得ないところですけれども,教員のレベルはぶっ飛んでいて,教員レベルの価値を理解できない学生さんは毎日遊んで無駄な暮らしをしていましたが,教員の価値を見抜いた学生はとんでもないレベルに到達して我が道を歩んでいます。

大学非常勤講師というと,それなりの給与をもらっていると思うかもしれませんが,残念ながら単に時給で支払われるだけです。えらい先生でも時給6000円くらいかな,という相場なので,90分の講義で9000円。週一で4コマで36000円。安い大学なら24000円くらいかな。資料代や準備時間を含めれば『大赤字』の世界です。

いい加減,こんな消耗的な教育業界の伝統はやめたほうがよいと思うのですが。採用時に,これまで読んだ本の一覧と所持している本のデジタル画像を提出させれば,阿呆を採用する可能性は減るでしょう。

たった5年間ほどでしたが,この大学で講義を担当させていただいた経験は,「世の中を知る」ためのとても重要なベースになっていると感じます。有り難いことです(画像/MWS)。








2021年3月21日




いつも使っているNikon1J5が一ヶ月くらい前から動作がおかしい。撮影モードダイヤルをAにしても,MになったりAになったりめまぐるしく変化して,その間は一切ほかのボタンを受け付けません。撮影できないのです。。しばらく置いておくと,どこかのモードになるので撮影すると,そのとたんにまた動作不安定になりシャッターが切れない…。

動作不良の内容からは微少なリーク電流か何かで動作不安定を引き起こしているような気もします。とても個人で修理できる気がしません。かといって修理に出して高額になるのもどうなのか…という気もします。デジタルカメラはこの辺りがよくないんですよね。フィルムカメラ時代のNikonのカメラは未だに動くのですが。

ところで,東北でまた大きな地震が。本ページでは2/14日に東北地震の話を採り上げていますが,今回の地震で気になることは,前回の地震とほぼ同じ深さで生じているということ。震源もかなり近いので,50〜60km深さのところでの歪みが開放されているのかもしれません。

M7前後の地震が連続したので,付近,あるいは遠くでも,蓄積していたエネルギーの開放があるのかもしれません。東北では地震が連続していますが,これで休止となる保証はなく,またほかの地域でもいつ地震が起こるかわかりません。少しでも被害が少なくなるように,一般市民レベルでも減災に結びつくように準備を心がけなくてはなりません(画像/MWS)。








2021年3月20日










じつに10ヶ月ぶりに都区内から外側に出ました。昨年5月に緊急サンプリングで神奈川県に出向いた以来です。筆者は引きこもっていてもメンタルや体調が悪化したりはしないので遠出の必要は必ずしもないのですが,サンプリングや,現地でなければ入手できないものがある場合は出かける理由が発生するわけです。

…ということで今年も『のらぼう』をゲットしました。のらぼうを食べて健康維持することが何よりの新型コロナ対策になると考えてのことです。

例年だと桜が咲く頃にのらぼうを買うのですが,今年は桜の少し前。2月から冷え込みが緩んだ関係でのらぼうが伸びているのです。のらぼうは氷点下でも枯れない冬場に強い植物なのでもともとは飢饉のようなときに利用されるものでした。少しでも気温が上がり日射があれば伸びてしまうのです。遅い年にくらべると一ヶ月も早いのらぼうでしたが,けっこう伸びていました。

のらぼうは花芽を摘み取ってから出てくる脇芽をかき菜のように収穫したものが味わい深いのですが,最近は脇芽を売っているのを見かけません。脇芽はこれからのシーズンなのですが,果たして巡り会えるのでしょうか。

今年のものも薫り高くのらぼうの風味を楽しめましたが,少しだけ,「急に育った」感じのあじがしました。もう少し厳しい条件で育った方が味が濃いのです。単に糖度が高いというならば促成でもいいですが,苦み,渋みがあると格段に美味しさが増すので,のらぼうを買うときにはいつも気象条件とにらめっこです(画像/MWS)。








2021年3月19日




海氷下から採集されたアイスアルジーサンプルを受け取って約2週間になります。冷蔵庫で保冷袋に入れて保管して,さらに毎日氷を交換して維持しています。思っていたよりも珪藻の状態が維持できるようで,バクテリアが増えてこないことにちょっとした驚きです。きわめて細菌数の少ない初期状態だったこと,いつも氷温保存していること,微量存在する繊毛虫がバクテリアを摂食しているかもしれないこと,などの要因が考えられそうです。きょうの画像のように,珪藻群体の多くでバクテリアが見られない状態が維持されています(画像/MWS)。








2021年3月18日




すばらしい絵本が入荷しました。仮説社発行の『わかめ』です。日本人なら知らない人はいないわかめですが,では貴方はわかめの何を知っていますか?と聞かれたらどう答えるでしょうか。そんな質問に出会う前に,本書をこっそり読んでおいて,わかめのことなら何でも聞いてくれ,というステータスに上昇しておきましょう。

本書の見所は随所にあるのですが,筆者は,これほどわかめに対する深い愛情を感じる本を読んだことがありません。わかめに関するあらゆる情報が愛情というスパイスによって「ほんとうに楽しく読める」ようになっているのです。絵本を読みながら軽やかな音楽が頭の中を流れているような,よく晴れた新緑の森の中を散歩しているかのような読後感です。

子ども向けの絵本ですからとてもていねいに説明しているのですが,一冊を通じた内容は,大学初年級の「藻類学概論」の副読本として通用する内容になっています。このことが何を示しているのかというと,子どもたちの「知りたい」「知る喜び」を決して裏切ることのない,大事なことをもれなく収録した,誠実な作りになっているということです。小学生低学年の児童が本書をよめば,そこいらへんの大人を遙かに上回る知識を「たのしく」得られます。

読み終わった後は,実験テキストにもなり,夕飯作りの参考にもなります。生物学と生態学の基本的事項が盛り込まれているので,数年後に,中学・高校で学ぶときに『わかめ』で得た知識が役立つときがやってきます。じわじわと知識の底上げをしてくれるのです。

絵は上等です。本書は科学的な内容に絵が付随するようなタイプの本になりがちなところを,見事な画風の使い分けで回避しています。じつに適切な線画のイラストと,どうやって描いたのかわからない本文の絵(水彩色鉛筆?)が「わかめの物語」に没頭するように調和しています。

一つだけ現代的な観点から意見を述べておくと,税別1800円を高いと思う人はいるだろうな,ということ。でも,監修者を含めて三人の著者でこれだけの内容のものを出版してくれたのですから,著者の方々や出版社(それに印刷所やデザイナーさん)の努力に敬意を表して,このくらいは「安い」と思った方がいいと個人的には思います。

読者の皆さんの時給が900円/時間として,二時間インターネットでわかめの勉強をすれば,1800円の機会費用を投じたとも解釈できますが,では,この本と同等の知識を得られるかというと,それはほぼ不可能だと思います。

インターネット上の情報は離散的です。それを統合するには読者の予備知識と知識の系統構築が必要です。ただいろんなページをみていてもいっこうに知識が増えないことは,多くの方々が経験してきたことだろうと思います。

他方,本当によく練り上げられた「絵本」は,情報のパッケージになっていて,丸ごと使用可能な活きた知識が入手できるのです。それも短時間で。そして繰り返し同じパッケージを利用できるので記憶は強固なものとなります。その土台の上に人生が構築されていくので,子どもの頃の良質な知識は想像以上に大事なものです。

さて最後に述べたいことは,この本は,全国の出版業界の方々のお手本・テキストになる内容を持っているということです。特に編集者の方々はこの本を手元に置いて教材にすべきです。著者というのは本作りにおいて素人ですから,プロの編集者の適切な導きが欠かせません。このときに,単に「売れる本が作りたい」といった動機で粗製濫造の本を作ってしまうと,ありきたりのものになってしまいます。

『わかめ』は,売れるかどうかなんて考えていません。著者・編集者の信じるがままに突っ走ってできた本です。「こんなことを知って欲しい」という情熱の塊でできたような本です。この本の作り込みは,編集者の「あれも入れたい?」「これも入れたい!」という熱意の表出です。これはたぶん筆者の想像ですが,編集者さんはわかめについてほとんど知らなかったのでしょう。本作りの過程でわかめのなんたるかを知って面白くなり,とにかくこの面白さを読者に伝えたい!と情熱がほとばしったのだろうと思います。

そうでなければ,こんなレイアウトの絵本ができあがるはずはありません。全国の出版関係者さんは,ぜひ,この本を教科書/テキストにして,これまで以上に「自由な本作り」をしていただき,「伝えるということ」と「伝わるということ」の狭間を埋めて頂きたいと思います。

いやーそれにしても,渾身の力作をみた気分です。『わかめ』はamazonさんでは こちら です(画像/MWS)。








2021年3月17日




ひっさしぶりに時刻表を買いました。前回は上野東京ラインの複雑怪奇を解読するために買ったので2015年です。結局あまりの複雑さに解読をあきらめて来た電車に乗るという乗り鉄にはあるまじき行動になっています…。

今回の購入理由は,全国レベルで終電時刻が変化したことによるもの。時刻表を読み物と見なしている人にとっては終電時刻というのは自然に覚えてしまうものなのです。それで京浜東北線が朝早いし夜遅いとか,高崎線も遅いとか,明石方面もうんと遅いとか,中央線は山手線よりも遅くまで走っているとか,みんな覚えていますし,具体的な時刻まで頭に入っています。

そんなの覚えていても意味ないじゃん,と思う方もおられるかもしれません。でも,だいたいの目安がつくということは大きいですよ。かつてぷーままの家で大宴会して飲み過ぎたときに,終電乗り継ぎの荒技で01:20過ぎに帰宅したこともあるのです。山手線に駆け込み乗車した瞬間にドアが閉まったのには心臓ドキドキでしたが。

こんどのダイヤ改正では,筆者の関係するところでは,中央線方面の終電があまりにも大きな変化があって残念な気分です。これまでは新宿0時40分頃までは帰れた高尾方面が,0時00分が最終になります。中央線の終電はいつも混んでいて需要大ですし,沿線人口も巨大なので今回の改正はやり過ぎのような気がします。

でもJR東さんは,次々と緑の窓口を廃止するなどしてサービス低下を断行して人員削減,コストカットをしてきましたし,ホームライナーを廃止して特急化して値上げして,自由席を廃止して,座席未指定券という理解の難しいサービスを導入して利便性をカットしてきました。その流れから言えば,いつまでも駅を開けておく終電をカットしてさっさと店仕舞いができるようにした方が経費節減になる,という判断なのでしょう。

不況の世の中になるといろんなものが失われていきますが,今回の終電時刻変更は,筆者にとってはとても大きなインパクトだったのでした。時刻表を四十数年前から読んできた立場からは,人生初レベルでの大きな変化でしたから(画像/MWS)。








2021年3月16日






やっと確定申告の書類を発送して少しほっとした気分。ので,夕飯後にぼーっと顕微鏡観察。こういうときは珪藻の殻もいいけれども,たくさんの藻類とか原生生物を眺めるのも安らぐ時間になります。こんなこともあろうかとバルコニーにはヒキガエルが出没する秘密の池の水を2リットルほど,少し日光をあてながら維持しています。

視野に出現したのはミドリゾウリムシ。せわしなく動き回るのでフレームぴったりに収めるのは至難の業ですが,ノートリミングでこんな感じにおさまりました。透過明視野の絵としてはかなり優れているレベルですが,気分的にはここからが始まりだな,という感じ。改善点は山ほどある感じがします。

上の画像は細胞表面,下の画像は細胞内部です。クロレラっぽい藻類をたくさん抱え込んでいて,これがぐるぐると細胞内を回転するのです。画像の横幅は0.11mmです(画像/MWS)。








2021年3月15日




こんな魅力的なミドリムシの緑色が今ひとつ再現できない…。デジタルカメラには苦手な色があるらしく,当室の主力機材のNikon1系も,ある種の藻類の緑色がよろしくありません。ミドリムシとかウチワヒゲムシが特にダメな感じがしています。少し前にOM-Dを通して見たミドリムシはまともでした。iPadも良いようですが…。緑色ひとつのために機材を買うか,それとも照明や画像処理で対応するか…悩みはつきません(画像/MWS)。








2021年3月14日






なんと春雷のさなかに『いわいどり』のから揚げが自宅に届くという,ウーバーイーツもびっくりのサービスが知人からもたらされたのでした。いやー有り難いことです。からあげと引き替え?に5枚ほどのスライドを差し上げて,当ラボの状況をざっとご覧いただいて知人はご帰宅となりました。知人は遠くにお引っ越しするので,次に会えるのは何年後かな,という感じです。

本ページをごらんの皆様は奥州いわい(こちら)のことはよくご存じでしょう。ブロイラーといえど品質はピンキリ。『いわいどり』は『つくばどり』や『大山どり』と並んでひじょうに品質の高いものと思っています。

前日にも,最寄りのスーパーのから揚げをつまみに酒を飲んでいたのです。じゅうぶんに油を絞ってから食べましたが,「調味料の味」がするのですよね。味付けしすぎなのです。鶏肉食っているのか調味料食っているのかわからんような味付け。ジャンクフードが大好きな方々にはたぶん喜ばれる味付けだと思うので需要があることはわかります。でも筆者は調味料が食いたいわけではないのです。素材がよければさっと焼いて塩を振るだけでもじゅうぶんおいしいのが鶏肉です。

『いわいどり』のからあげはその点,さすがです。「からあげの味がする」のです。調味料が先行する味ではありません。バランスが取れた味で鶏肉の味わいが生きています。むね肉のから揚げが信じがたいほどウマイです。

グランプリをとったり金賞を受賞したりということは,この『いわいどり』の味がわかる方々が世の中にたくさん生息しておられるわけで,こうした高品質のものがまだまだ維持できる世の中であることを示している気もしていて,輸入鶏に負けるなよ,と中年オッサンはから揚げをかみしめながら『いわいどり』を応援したくなるのです(画像/MWS)。








2021年3月13日












きょうの画像はやっぱしコレですかね。個人的には185系はけっこう中途半端な車両でそんなに感慨はないのだけれども,都心でMT54の音を聞くことができなくなるという点では残念ですねえ。コイルバネの台車にMT54の組合せというのは,揺れに身を任せてまどろむにはとても良いのです。空気バネはダメなんです。

185系は大学時代に毎日のようにのりました。西八王子から品川という日本屈指の混雑通勤区間で大学に通っていた筆者は,混雑にうんざりして,講義に出席するために5時台に家を出たりしていたのでした。その頃,東京駅07:33発の伊東行き普通列車というのがあって,これが185系だったのです。だった10分弱だけれども特急車両のシートに着席して,毎日のうんざりする通学気分を和らげたりしていたのでした。

きょうの画像はサンプリング時に乗ったり見かけたりした185系。違う日にまったく同じアングルで撮影しているのには笑えます。通過駅なのでタイミングは0.1秒も違わないと思います。筆者の行動パターンが機械的に精密に同じことの繰り返しであることがよくわかります…(画像/MWS)。








2021年3月12日




カクテイシンコクという面倒くさい作業が迫っていて,でもやる気がしなくて無駄に時間が過ぎゆきます。2020年は1月からろくでもないことが起きて,その後も次々と運気のない最悪な日々が続きました。ので,休業の一年と思って仕事ものろのろとやっていました。その結果,目を覆うばかりの決算となっているわけです…。

でも,遊んでいたばかりではなくて,売り上げをあきらめる代わりに,『珪藻美術館』の宣伝をしたり,新聞取材にパワーを注いだり,絵本フェスティバルの顕微鏡を作ったり,新型コロナの防戦をしたりと,いろんな力試しをした時間でもありました。

その中でも小さくない仕事の一つは,5月から6月にかけての円石藻の騒ぎでした。25年ぶりの現象をJAMSTECの研究者からリアルタイムに連絡いただき,即応して各方面に系統構築して,現場観測とともにイメージングの毎日。実働時間としては一ヶ月くらいでしたが史上最高レベルの円石藻の画像を記録することができました。通常ならこの手の仕事は公的な研究機関や民間の研究機関がやる仕事なのです。そこに助成金ゼロで自腹運営の当サービスが出向いて,最高水準の光学顕微鏡画像を記録したのです。

きょうの画像はその一例ですが,このレベルの絵は,国費が投入されている国立研究機関でもそう簡単には得られないレベルのものになっています。「このレベルの絵はみたことがない」という連絡は複数いただきました。このレベルの絵を常時得ている話はまだ聞いたことがありません。

その意味では当サービスのイメージングのレベルは,「お遊び」ではなくて,「科研費」レベルなのですが,何しろ自腹ですのでやればやるほど時間とお金を失うということになってしまいます…。でも勝手にやるというのは,予算使途の縛りもないし,自由に動き回れますし,良い面もたくさんあります。円石藻騒動については小文にまとめて日本海洋学会のJOSニュースレターに投稿,掲載されました。昨年の仕事の記録ができてよかったです。

このニュースレター,たぶん数ヶ月後にはPDFで公開されると思いますので,そのときにはまた本ページでアナウンスできればと思っています(画像/MWS)。








2021年3月11日






さくねんは新型コロナの問題もあり東北復興支援旅行ができませんでした。ので,現場の移り変わりを見ることができていません。被災地では様々な公共事業的な工事が進行中で,どんなことが行われるのか見届けたい気持ちがあります。

きょうの画像は気仙沼港の護岸工事の様子。今頃はこの周辺では全部コンクリートに囲まれて,海辺の街なのに一切海が見えない海岸になっているはずです。かさあげの高さがそれほどでもないので,東日本大震災クラスの津波が来た場合は,数分程度の時間稼ぎにしかなりませんが,2〜3mの津波であればかなり効果を発揮することもあるかと思います。こういった防災効果と引き替えに海の見えない海岸線になるわけです。何ともいえない気分です。

あれからかなりの時間が経過しましたが,未だについ最近起きたことのような気がします。人生そのものがあの日を境にモードが変わってしまった感じでもあります。でも,それでいいのだろうとも最近は思います。戦争を経験すれば人生観が変わるように,震災もまたそれと似たようなものかもしれません。

新型コロナの問題が早めに落ち着きを見せて,また東北各地の様子を見て回れるようになればと願わずにはいられません(画像/MWS)。








2021年3月10日






いきている細胞を撮影するときは後で画像処理を行うことを前提にして,可能な限り高S/Nの絵を得るようにします。高S/Nの条件はいろいろありますが,適正な露出,低いISO感度,拡大率とノイズのバランス,照明輝度,コンデンサ絞りの選定,コントラスト法の選択などです。良好な原画があれば,画像処理によって原画に埋もれている情報を肉眼コントラストに引き上げることができます。

きょうの画像はその一例。氷の下で増殖していた中心珪藻の一種,おそらくタラシオシラの仲間ではないかと思います。肉眼観察では粘液糸は確認できませんが,画像処理によってヒストグラム調製を行うと,全体から放射状に細い粘液の糸が出ていることがわかります。

このような細い糸は暗視野法だと可視化しやすいことが多いですが,暗視野法では細胞本体の輝度が飽和して見づらい画像になってしまいます。明視野や微分干渉法,位相差法などでは細胞も粘液糸もあるコントラスト範囲に収められることがあるので,肉眼では可視化できていない画像を得て画像処理することで理解しやすい絵を作ることができます(画像/MWS)。








2021年3月9日




これは混ぜご飯の具です。お米3合に混ぜる具の分量はこんな具合です。きのこ4パック(ヒラタケ×2,マイタケ,エノキダケ),ニンジン,ゴボウ,こんにゃく,鶏もも肉,ずっしりと大量です。味付けは日本酒としょうゆのみで,フライパンで水気がなくなるまで煮詰めます。これを炊きたてご飯に混ぜて蒸らせばOK。炊き込みにはしません。具材が多すぎて溢れてしまうので…。

混ぜご飯にしろ炊き込みご飯にしろ具材が大量に入ってこそだと思うのですが,なぜかちまたで流通しているものはご飯にほんの少しの具材が入っていてお仕舞い,という代物が多いです。個人的には,たとえばきのこご飯なら,米1合にきのこ一パックくらいは入れたいところ。

そう思っていたら,ぷーままが3合のお米にきのこを5パック入れてきのこご飯を作っていた(こちら)。さすがはぷーままです。このくらい入れるときのこから良いダシが出て美味なのです(画像/MWS)。



* このくらい具材を入れるとお米との比率は1:1程度になります。茶碗一杯食べても,白米は茶碗半分であとはおかずなわけです。栄養バランス的にもよろしいし,何より美味しい。具が大量の混ぜご飯は当室の定番メニューなのです。




2021年3月8日






ようやく都区内にもホタルイカの新物が入荷するようになってきました。昨年は富山湾産の最高級品が一パック500円という許されない安値になっていて心配したのですが,今年は800円となっていて,少しは送料+αになっていればいいなと思ったりもするのです。

きょうの画像は富山湾のホタルイカ。塩茹で入荷するわけですが当然ながら冷蔵品です。これを冷たいまま食べるのが刺身的には普通の感覚ですが筆者はこれを温めて食べます。食べ物には美味しく感じる最適温度というものがあって,ホタルイカの場合は釜揚げがたぶんいちばんウマイのだろうと思っています。ので,このパックホタルイカは,目玉と軟骨を除去してキッチンペーパーの上に並べ,電子レンジの解凍キーで温めます。200Wなら90秒から180秒の間のどこかです。

ふつうに温め加熱してはいけません。ホタルイカが爆発してしまいます。たぶん。解凍キーでゆっくり加熱して,ほどよい温度になったところで取り出すのです。

きょうの画像は加熱前と加熱後のホタルイカ。加熱するとミミの部分が反り返ってぷるるんとします。この見た目と味がシンクロしていて,味わいもぷるるんとするのです。本ページでは何度も書いてきた技法ですが,まだ試したことのない人が大部分だろうと思います。好みは様々なので,冷たいままのホタルイカもよろしいですが,とびきり良い新物が入荷したなら,釜揚げ風の温かいホタルイカを試してみるのも一興かもしれません(画像/MWS)。








2021年3月7日




一週間ぶりに酒を飲んだら翌朝に頭がぼーっと。得も言われぬ不愉快な感じがします。こういった症状を治すには運動に限ります。水を飲みながら10kmも歩けば大抵は回復します。ということで,自宅から秋葉原まで歩いて買い物。往復二時間,約12kmの道のりです。いろんなものを見つけて散財しましたが,体調も回復して万々歳です。12km歩いて体重は300g減りました。水は400ml飲んでいます。ということは実質700gくらい減ったのでした。ほとんどが水分の蒸発でしょう。

きょうの画像は運動途中の一コマ。街中で『顕微鏡』という文字が見られ,顕微鏡群が展示されているなんて,ほんと素晴らしいですね。思わずカメラを向けていたら,後からやってきた人が筆者の後ろに立ってカメラを用意していました。この名物のお店を撮影する人は多いようです(画像/MWS)。








2021年3月6日




珪藻の葉緑体は紫色の光を照射すれば赤色の蛍光を発します。北国の流氷の下に繁茂していた珪藻も活発に増殖している最中なので,光合成活性は高く,葉緑体も鮮明な赤色蛍光を示します。東京都区内にいてこんなに新鮮な北国のサンプルを検鏡できるのは感激です(画像/MWS)。








2021年3月5日






とつぜん生サンプルの検鏡の仕事が舞い込み直ちに着手中です。流氷の裏側(表側も)や,結氷した湖の氷などに付着している藻類をアイスアルジーといいますが,そんなサンプルが北国から直送されてきました。珪藻は低温にはめっぽう強く,海や湖のアイスアルジーといえば珪藻がメインです。珪藻は0゚Cでも問題なく増殖できる種が多数いるので,流氷の下ではそんな珪藻たちが氷に付着して繁茂していたりするのです。付着する相手が岩でも氷でも温度は変わりませんので,珪藻にとっては光が降り注ぐ氷に付着する方が都合がよいのでしょう。

アイスアルジーなので氷温冷蔵での配送です。のでサンプルは受け取ったら直ちに大量の保冷剤で氷温を保ちます。検鏡時もたくさんの氷にサンプルを浸して氷温を維持して,あまり室温の高くない部屋で検鏡します。

筆者はつねに暖房のない生活をしており,現在の顕微鏡デスクの温度は14-17゚Cくらいです。その温度で寒さに震えながら検鏡を続けます。きょうの画像は検鏡途中のもの。これからまだまだ深夜,明け方?まで検鏡は続きます。こういったサンプルの撮影は鮮度が第一です(画像/MWS)。








2021年3月4日




このところの散布スライド製作でマツナミのS1214を三箱使いました。。当サービスの散布スライドは1枚1枚手封入なので時間がかかります。工数も多く,それぞれの作業を短時間で済ませることが大事になってきます。もちろん,熱処理などは規定の時間を守らないと品質低下につながるので時間短縮はできません。

意外に手間取ってしまう繊細な作業の一つにラベル貼りがあります。ラベルをハサミでチョキチョキするところからはじまって,よく拭いたスライドに傾かないようにラベルを貼り付けます。このときにラベルの裏紙がすっと剥がれて貼り付けの位置調整がさっとできると有り難いのです。小学生でもできる作業ですが奥が深いです。

最初は手で貼り付けていたのですがあまりに効率が悪く精度も出ないのでピンセットを使うようになりました。最初は普及品を使っていましたが,あるときFONTAX taxalを使ってみると別次元の快適さでした。それからというもの,たかがラベル貼りとは思わずに超精密ピンセットを使っています。ここ数年のお気に入りはFONTAX taxla SSです。先端がとても鋭く,コシも弱いのでラベルを100枚貼っても疲れません(画像/MWS)。








2021年3月3日




ミズダコの足にはびろろーんとした水かきみたいなものがついていて,この部分は刺身にすると水っぽすぎてプニプニと噛みちぎるのも難しくなんだかなーと思っていました。それでキッチンペーパーにのせて水を吸い取らせてから食したりもしていました。しかしあるとき中年オッサンはひらめいたのです。脱水するなら電子レンジにかければよいと。

それでやってみたのがきょうの画像。水かき部分はぎゅーっと縮まって水分が抜けています。水分は加熱蒸発してうまみも凝縮。かみ切りにくい身も少しは柔らかくなっています。酒のつまみに最適です。中年オッサンはこんな小さなことを発見して日々喜んでいるのです…(画像/MWS)。








2021年3月2日






1日の夜になってどこからともなくヒキガエルの鳴き声が聞こえます。どこかに池があって産卵にきているようです。控えめなじつに可愛らしい声なのですがまさか自宅で聞けるとは思いませんでした。1日は南風が吹いて気温が上がりました。明日,2日の天気予報は雨で大荒れ,気温は高めです。ヒキガエルさんは気温が上がり雨が降るタイミングを知っているのでしょうか…。画像は約10日ほど前に別の場所で撮影したヒキガエルです。こちらの場所でも1日夜に再びヒキガエルさんが出てきたということです。タイミングを逃さない生物活動,本当にふしぎです(画像/MWS)。








2021年3月1日




これはトリゴニウムという珪藻。和名ではミスミケイソウともいいます。この珪藻はミスミと言いながらヨスミのものもゴスミのものもあって,きょうの画像はヨスミ(四隅)のものです。複雑な三次元構造をしていて,四隅を頂点として中央部に向かって窪むような形をしています。このため,大きく拡大すると一枚の画像でピントを全面に合わせることはできません。

きょうの画像は5枚のピントを変えた画像を合成したもの。深度合成は専用ソフトがいろいろあって,それらを使いこなすと良い結果がえられます。しかし専用でなくても,ふつうの画像処理ソフトでも合成はできます。きょうの画像は5枚の画像を比較暗合成をしたものです。透過明視野検鏡では,コントラストの出た部分は暗くなり,デフォーカスした部分は明るくなるので,比較暗合成によりピントのあった部分をつなぎ合わせることができます。

手軽にできる割には,けっこう自然な絵になるので,ちょっとだけでもピントを深くしたいときなどには試してみる価値があるかもしれない方法です(画像/MWS)。









Copyright (C) 2021 MWS MicroWorldServices All rights reserved.
(無断複製・利用を禁じます)
本ページへの無断リンクは歓迎しています(^_^)/


トップに戻る



.