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『珪藻美術館』(福音館書店) 好評発売中!
 



『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』
(たくさんのふしぎ傑作集)

 奥 修 文・写真
 福音館書店,48ページ,1300円+税 
もらったら嬉しい気持ちになる科学絵本です。大人でも子どもでも楽しんでいただけます。プレゼントにも最適です。全国の書店やネット書店,amazonさん などでお買い求めいただけます。





2020年12月31日








なぜ当サービスが光学顕微鏡の限界に挑み続けるのかということを簡単にいえば,機材の性能をきっちり出し切って使いたい,ということになるのかもしれません。いろんな道具には限界的な性能があります。そして多くの人はそれを知らずに使っています。

代表的なものは「包丁」でしょうか。世界中で何十億本と使われているものですが,限界性能を出し切って使っている人は一万人に一人もいないのではないでしょうか。一般の方々は「研ぎ」もできませんし,「使い方」も習ったことがありません。切れない包丁で鶏肉を引きちぎり,硬くて切れないゴボウやカボチャやニンジンは敬遠して,完熟トマトをぐちゃぐちゃに潰しながら悪戦苦闘しているという人はむしろ普通です。

そんな人の包丁でも,正しくメンテナンスして,包丁さばきを知る人が使えば,鶏肉は薄造りのように切ることができ,ゴボウは魔法のように透けるような薄切りにできて,カボチャは天ぷら用にさくさくと薄切りにでき,にんじんの千切りはむしろ楽しい,といったことになります。この楽しさを知ってしまうと後戻りはできなくなります。

顕微鏡も似たようなもので,何も知らない人がコンデンサの扱いも知らず,対物レンズの種類も知らず,適したコントラスト法も知らず,カメラについての知識もなく画像処理もできない。それでおもちゃの顕微鏡でも撮れるような画像を量産して研究者を名乗っている…などという例はごくふつうにあります。

顕微鏡光学がある程度わかり,機器を正しく扱えて,物体に対して最適なマウント法や照明を施すことができ,高S/Nとなる条件を見つけて撮影し,適切な画像処理を施せば,解像限界の範囲内で,そこいらへんの電子顕微鏡画像と比較しても「同じ構造が写っている」程度の追い込まれた極限的な絵を撮ることができます。そこではじめて自分の持っている機材の限界性能を知ることになります。

顕微鏡の限界性能というのは,光の波長の半分の値を1.4で割ったくらいまで到達できます。500nmの青緑色の光なら理論限界としては180nm程度まで解像できるのです。実際には理論限界を達成するのは厳しいにしても,200nmなら見えます。これはアッベをはじめとする先人が築きあげてくれた結像論に基づきます。

先人が血の出るような苦労の末に築きあげてくれた有り難い「理論」があるのですから,光学顕微鏡は「理論値」を目指して使用するのは何らおかしなことではありません。いつも解像限界付近のイメージングができる人は,いつも究極の切れ味で和食を提供できる料理人みたいなものです(画像/MWS)。








2020年12月30日


























『驚異の珪藻世界』という本には電子顕微鏡による珪藻被殻の微細構造が多数収録されていて大変有り難いものなのですが,収録されている種が限られているので,メジャーな珪藻でも載っていないものがあります。ピンヌラリアの仲間がその一つです。ピンヌラリアは池や湖の泥の上を探すと見つかることが多く,小型から大型までバリエーションも豊富で目につきやすい珪藻です。しかしピンヌラリアは『驚異の珪藻世界』には107ページの04番の図版で示された透過電顕画像が一つあるだけです。そこには条線内部の胞紋が映し出されています。

そこできょうの画像は,ピンヌラリアまたはピンヌラリアタイプの条線と胞紋を持つ珪藻の画像。いっけん何もなさそうに見える条線内部には点紋の列があります。これを高分解能撮影(といってもλ=443nm程度)で撮影したものです。通常は走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察する構造ですが,光学顕微鏡でも検出可能なものもあり,一部の種は解像も可能なことがわかります。

次回改訂版が出るとしたら,ぜひ,ピンヌラリアのようなどこにでもいる種は収録して欲しいものです。サンプルがない,というのでしたら当室の在庫から提供できるかもしれません(画像/MWS)。








2020年12月29日




ニトリなどの珪藻土製品がアスベスト混入による回収騒ぎになっていますが,この件に関して,人気ユーチューバーの市岡元気先生が早速実験して動画を配信しています。市岡先生は大学時代に珪藻が専門で,シラフィンタンパクを研究していたという筋金入りの珪藻学者でもあります。アスベストは身体に良くないけれども,珪藻土や珪藻は悪くないんだよという先生の珪藻愛が感じられる動画になっていて筆者にはとても好ましく感じました。動画は こちら です。

今回の騒ぎは残念なことではありますが,「珪藻」を知ってもらうチャンスでもあります。世の多くの方々は「珪藻土バスマット」や「珪藻土コースター」を知っていても,「珪藻」が何なのか知りません。回収騒ぎで珪藻土製品に注目されている今こそ,「珪藻」を知っていただく機会でもあるのです。そこを突いた市岡先生の動画はさすがです。

きょうの画像は筆者の手元にある珪藻土コースター。これを顕微鏡で見ても珪藻被殻は見えません。代わりにセルロースの繊維がたくさん見えます。原料は珪藻土,石灰,パルプとなっていて,粉砕した珪藻土に石灰粉末を混ぜ,パルプ(セルロースの繊維)で割れに対する強度をもたせているものと思われます。観察した感じでは焼成していないので,圧縮成形か,圧縮成形に加えて微量の接着剤を添加しているかもしれません。このように固結したものでは,そのまま観察しても珪藻はほぼ見えません。

昨年の珪藻学会でも珪藻土製品を顕微鏡で見ても珪藻が見えない,といった質疑応答がありましたが,筆者が確認したところ,きちんと手順を踏んで観察していなかっただけのことでした。削って粉末にして水で細かく分散させて,適当な封入剤で封じて光学顕微鏡で透過観察すれば珪藻は見つかります。

少し注釈を加えれば,むかしの七輪などでは,そのまま観察しても珪藻が見えるものもあります。それは珪藻豊富な鉱区から坑道堀で珪藻土のブロックを切り出して,それをそのまま焼成した製品が存在したからです。これは珪藻土をただ焼いたものですので,珪藻含量が多い珠洲市の珪藻土のようなものなら珪藻は見えます。

現在ではこのようなブロックを切り出して七輪にするような会社は一社残っているだけだと聞いています。ほかはバインダーを混ぜて成形して,あるいは圧縮成形して焼成しているものと思われます。珪藻の殻を見つけるのは簡単ではないでしょう。

もし自宅に古ーい七輪があるという方は,ぽろぽろになった部分を採取して水に溶き,顕微鏡観察してみるのも面白いかもしれません。一千万年前くらいの海にいた珪藻たちの殻が見られるかもしれません(画像/MWS)。








2020年12月28日














『驚異の珪藻世界』という本の出版によって珪藻の造形美が国内でも広く知られるようになり目出度いことと思っています。しかしこの本の出版以前にも,『The Diatoms』という金字塔のような本が1990年に出版されており,これと比較すると日本は30年遅れ…といえないこともありません。このほか『小林弘 珪藻図鑑』という力作も2006年11月に出版されていましたが,税別34,000円という価格設定より,ほとんどの方々には縁のないものでした。

きょうの画像はみんな大好きクモノスケイソウです。この珪藻はかなり大型でありながらけっこう繊細な構造を持っていて,しかも中央部が凹んでいて,顕微鏡写真撮影はけっこう難しい対象です。全景がみごとなのですが,微細構造もあり,その例は『驚異の珪藻世界』にも掲載されています。被殻によって模様のあるなしがあって,また模様のパターンも変わるので撮影に適した被殻を選ぶのが一つのテクニックといえます。

『驚異の珪藻世界』では,走査型電子顕微鏡の画像なので,基本的に不透明体の表面部分だけが見えているような像になります。これに対して光学顕微鏡の像では,光が被殻内部にも透過するので,表面付近の画像も得られますし,内部構造の絵も得られます。それらの中間の絵も得られます。光の操り方によって異なる情報を抽出できるわけで,これは強みでもありますが,解釈の難しい重なった絵を得ることにもなるので,注意が必要なところでもあります。

むかしから,電子顕微鏡を扱う人は光学顕微鏡で仕事をする人をどことなくバカにするという雰囲気がありました。「オレの方が高級なことをやっている」という気分なのでしょうか。その一方で,光学顕微鏡は研究者よりもトップクラスのアマチュアの方が上手いということもむかしからいわれてきました。

これが何を示しているのかというと,単に研究者が光学顕微鏡をわかっていない,ということだけです。電子線を使うのと可視光線を使うのでは得られる情報が違うのは当たり前のことです。両者はまったく異なるものなので比較してバカにするようなものではありません。

光学顕微鏡と電子顕微鏡の両刀遣いはけっこういらっしゃいますが,両方とも究極のチューニングで使いこなしておられる方は希少です。たいてい,光学顕微鏡では見えないとあきらめてすぐに電顕に移行する方が多い印象です。

しかしごく一部のプランクトン研究者は,光学顕微鏡でも究極のイメージングを追求し,その上で電子顕微鏡も活用しています。両者で得られる情報は異なるので,このような姿勢は研究者として模範といえるのではないかと考えています(画像/MWS)。








2020年12月27日






数年ぶりにヒラスズキが入荷。小躍りして喜んで刺身を食したのだけれども,味が薄い…。ヒラスズキの持ち味であるところの甘味がごく淡いものになっている。身のうまみもものたりません…。うーんこれはどうしたことか。ヒラスズキは常時高値の高級魚なんだけれども,そして筆者が最も好む魚の一つなのだけれども,こんなに味の変動があるとは思いませんでした。旬を外したということか。それとも産地の問題か。あるいは流通過程に問題があったのか。魚の評価というのは難しいものです(画像/MWS)。








2020年12月26日




ツイッター連動クリスマスプレゼント企画では60冊の『珪藻美術館(福音館書店)』を応募者にお届けできました。応募して下さったみなさま,プレゼント企画の情報を拡散して下さったみなさま,ありがとうございました。本を受け取ったみなさまはぜひ,ツイッターをはじめとしたSNS上で本書の出版情報を広めていただければ幸いです。もちろん友人知人に直接紹介していただくのもうれしいことです。

件数が多かったのでこちらではツイッターをフォローできていません。筆者はツイッターのアカウントは持っていませんので,ツイッターはもっぱら検索窓として利用しています。検索に引っかかるものは有り難く読ませていただいております。

こちら とか こちら とか こちら とか こちら とか こちら など,いろいろあります。 こちら や こちら などの記事もあります。みなさまありがとうございます。

この20年で街の本屋さんは半減しました。大型書店は生き残っているものが多いので,消えていった本屋さんは個人経営の小さなお店とか,商店街にあった中規模書店とか,そんな身近なお店が中心です。つまり,気軽に行くことができた本屋さんがなくなっていったのです。そしてそれに追い打ちをかける新型コロナの感染拡大。人々はますます本屋さんから遠ざかります。

本というのは出会いものです。目的の本を買いに出かけても,「ほかになんかいい本ないかな〜」と店内を一周するのが本好きの習性です。そしてかなりの頻度で,「おおっ」と思うものに出会うことができ,知りもしなかった本を連れて帰ることになったりします。amazonさんでもオススメなどが出てきますが限られた数です。本屋さんに行けば,わずか数分で数千冊の本をざっと見回ることができます。

その本屋さんが減ってしまった…。地方などでは本屋さんのない街,というところも出現しています。

このような,「本との出会い」が極端に減った2020年にあって,本の出版情報を皆さんに知っていただくのは至難のことになっています。残された数少ない方法は,SNSで広めていただき,皆さんがお持ちの液晶画面に出版情報が表示されることです。そこに読後の感想などが添えられていればさらによいです。

そのようなわけで,プレゼント企画を発案し,60名もの応募者にプレゼントすることにしたのです。本が倉庫に眠って人に知られない状況では出版した意味がありません。『珪藻美術館』は年齢性別を問わず,誰が読んでも良いものに仕上げられています。ぜひ,出版情報を広めていただき,たくさんリツイートしていただき,多くの方に認知いただければと思います。『珪藻美術館』を知った上で,それをどう思うか,買うか買わないか,それは情報を知った人の自由です。現在の問題は出版されていることにすら気づかない,という構造的問題です。この現状に少しでも風穴を開けられればと思っております。

みなさまどうぞ今後もよろしくお願い申し上げます。

きょうの画像は山猫だぶさんによる『結晶美術館』です。化学と科学と歴史学と民俗学と美術と科学写真を高次元で融合させ,一冊の教養系写真美術書として仕上げています。とてつもない経験と知識と技術と努力がないと決して到達できない領域です。このような良質な本の出版情報こそ,多くの方に広めるべきものです。みなさまこの本の情報もぜひ拡散してください。自費出版なので通販での入手となります。 こちら のお店が便利かと思います(画像/MWS)。








2020年12月25日






珪藻土製品の回収騒ぎで本ページがよく参照されていたようなので更新を一日休んで記事をトップにあげておきました。

なぜ珪藻土の製品にアスベストが混入したのか謎ですが,出回っている製品は焼成してあるのでそのままではアスベストは出てきません。通常利用の分には何のリスクもないと想像されます。

ただ,表面が変色したから削ろうとか,そういった物理的破壊を行うとアスベストが出てくる可能性はあります。削らずに使えばいいでしょうし,気になるのでしたら回収に出すか廃棄すればいいでしょう。

珪藻土は様々な製品として世の中の役に立っていますが,製品と同等かそれ以上に大きな社会を変える力ももっていたりします。有名な話なのですが,そのむかし,ノーベルという人が爆薬のニトログリセリンという液体をどうにかして安定にしたいと実験していたのです。ニトログリセリンは衝撃で爆発しますので取り扱いを誤れば死傷者が出ます。ノーベルはニトログリセリンを珪藻土に吸わせることを思いつき,ニトロセルロース3.5に対して珪藻土1の割合の混合物を開発しました。これで安定化することができて爆薬を安全に輸送できるようになったのです。これが初期のダイナマイトです。

ノーベルは珪藻土に吸わせたニトログリセリンの爆発力が弱いことにも気づいていました。そこで彼は珪藻土型爆薬から進化させて,硝酸ナトリウムと木屑を混ぜたものにニトログリセリンを吸わせたり,それ自体が爆薬になるニトロセルロースにニトログリセリンを吸わせたりしてさらに強力な爆薬を開発しました。これにより莫大な蓄財を成すことになり,そのお金がノーベル賞の創設の原資となったと伝えられています。

きょうの画像は古い珪藻土の本,1930年発行のものですが,珪藻土とは何かから説き起こして,各国の産地,利用法などとても詳細にまとめられています。日本についても触れられており,北海道,本州,九州で珪藻土の産地があり,自国消費に必要十分な量を産するであろうと述べられています。

実際この通りで,現在でも珪藻土の採掘は行われており,建材,耐火ボード,濾過材など多様な製品が生み出されています。国内製品は信頼性も高く,アスベストが混入するようなこともないでしょう(画像/MWS)。








2020年12月23-24日




ニトリの珪藻土マットの回収がニュースになっていたので,珪藻土にまつわる話を少し。

これまで何人かの珪藻の「専門家」から,珪藻土を顕微鏡でみたけれども珪藻が見えない,という相談を受けたことがあります。昨年の日本珪藻学会でもそんな質疑応答がありました。そんな方々に,「どうやって見たの?」と聞けば,珪藻土の塊を実体顕微鏡などで外側からみたのだという。しかも筆者の体験では珪藻がよく見えない地方のサンプルを覗いている…。

それでは見えないのが普通なのです。珪藻土といえど,ある程度の圧縮の力がかかって固結しているので,隙間もくまなく微細な粘土鉱物や珪藻の破片が埋め尽くしていて珪藻の面影を見ることはできません。これは放散虫でも同じで,チャートを眺めても,表面がつるつるの石に見えて放散虫そのものは見えません。

でも,珪藻土でもチャートでも,その石を化学処理してドロドロにすれば,そこから大量の珪藻被殻や放散虫骨格が得られます。それらを高倍率で検鏡すれば珪藻や放散虫の細かな破片が大量に入っていることもわかるでしょう。

ここいらへんの話は,想像と感覚で話をしてはいかんのです。実体験あるのみです。珪藻の専門家でも,珪藻土のぱっくりと割った断面をつぶさに観察している人はごく少数です。ほとんどの人は,水でドロドロに溶いて,分散してから観察するのです。両者の光景は想像では補えない違いがあります。

そして一部の風化の進んだ珪藻土,佐渡の中山層,珠洲市の珪藻土,北秋田市の一部,松島沿岸の一部,岡山の一部,大分の珪藻土などでは,珪藻土の圧縮度合が緩く,ぽっくり割った断面を顕微鏡で見れば珪藻被殻を拝むことができます。そういったものを覗いていれば,「専門家」の印象もまた異なったものであったことでしょう。

珪藻土の製品ではまた事情が異なります。珪藻被殻そのものはいくら焼いても固結しません。ので,ボードなどを作ることはできません。したがって固めるために,バインダーを混ぜる必要があります。粘土鉱物を混ぜて(あるいは天然で含有しているものを利用して)焼結することもあるでしょうし(一例は珠洲市の切り出し七輪),混ぜ物をして焼くこともあるでしょう(珪藻土コースターなど)。

建材に使う場合は接着剤を混ぜるでしょうし,ある程度均一な組成が求められるときには珪藻土も粉砕したものを使うでしょう。それらの製品の表面を顕微鏡でみたところで,珪藻被殻を認めることは,まず,ないですね。では,それらの製品の珪藻含有率が低いかというと,それはそうとも言えません。

要はどれだけの空げき率と吸水性を持たせつつ,安定した固結状態に持って行けるかということが問題です。珪藻被殻の含有率を測定するより,吸水性,断熱性,吸着性などの製品に求められる指標を計測して,それを満たしていればそれはよい製品と言えるのだろうと考えます。表面から珪藻が見えないからといって問題視するよりも,製品そのものの機能に目を向けた方が健全です。

ニトリさんの珪藻土マットには石綿(アスベスト)が混入していたとのことですが,これは主に吸入したときに問題になるもので,濡れた足をのせたり,猫が夏に涼んだりといった程度で吸入されるものでもなく,焼結もしっかりしているはずなので,リスクから見れば,乾燥したものを割って遊んだり粉末にして吸い込んだりしないかぎり,まず問題はないものと想像しています。

きょうの画像は大分県産の珪藻土から出てきた珪藻。こんなにきれいな保存状態の珪藻土もあるんですね。昭和化学工業さんの鉱区のものです(画像/MWS)。



*1 筆者は1984-87年頃に高校の化学部に所属していたのですが,「石綿金網」「石綿ボード」などはごくふつうの器具でした。合成実験などでバーナーを使う場面で何度も使いましたし,ぼろぼろになった石綿金網に手を触れて手が白っぽくなるのも日常でした。ですから筆者の肺に石綿の鋭い破片が刺さっているのはほとんど必然ですが,それから35年経過してまだ生きています。工事現場などで日常的に粉じんに曝される方々でなければ,足ふきマット程度心配するには及ばないだろうと思います。

*2 ただ,世の中には奇特な人がいて,ニトリの足ふきマットを粉にして吸い込むのが趣味,ニトリの足ふきマットを粉にして塗料を作る,土に混ぜて栽培する,なんてこともひょっとしたらありうるわけで,まぁ念のため回収した方がいいのかも,というのはわかります。でも,これ,どのくらいの石綿含有率なんだろう。

*3 珪藻土,として世の中に流通しているものの中で,珪藻がほとんど見えない,というものも希にはあります。筆者の経験ではある海外の珪藻土といわれたサンプル2個がそれに該当し,ほぼ珪藻を含有していません。これはさすがに詐欺だな,と思いました。しかしそれ以外では,多かれ少なかれ,珪藻は入っていました。

*4 ニトリさんの珪藻土マットはどこの製品なのか知りませんが,社内の品質管理部門で(あるいは外注で),珪藻土マットをドロドロに溶かすなり粉砕するなりして,分析にかけてから製品化したら,今回の事態は防げたでしょうね。

*5 石綿の検鏡は分散染色という手法で偏光顕微鏡による分析が可能です。いまから約15年ほど前に開発された手法で,ニコンが先駆けて分散染色の顕微鏡を発売しました。当時,出入りの業者さんに聞いてみたのですが,「ニコンが何かうまくやったらしい」という『噂』が聞こえてきました。懐かしい昔ばなしです。





2020年12月22日




『木星と土星の大接近』 2020年12月21日17時半頃。対物レンズ:Nerius127EDT,鏡筒:ボーグ125,カメラNikon1J5,MWS天体イメージングセンターによる作例。惑星の衛星は画像処理により補強(ガンマ+2.2)。少し大きな画像は こちら 。

きわめて珍しい天文現象であり,ニュースでも中継画像が流れているので皆さん見飽きたかもしれませんが,天文趣味の人たちにとってこれは本当に驚くべき現象なのです。望遠鏡で高倍率にして狭い視野になっても土星と木星が両方見える。この目で見ても信じがたい気がします。

どのくらい接近しているのがイメージがわかない人も多いことと思います。ぜひ こちら をクリックしてみてください。月の視直径よりもずっと狭い視野角に木星と土星とその衛星たちが並んでいるのです。ほんとうに驚嘆すべき現象です。当室でふだんは眠っている望遠鏡も,ここぞという機会を与えられ大活躍です。

きょうの画像には木星の衛星,土星の衛星も写っています。部屋の明かりを消して全画面表示で大きな画像を見れば,宇宙空間に浮かぶ惑星といった雰囲気で眺めることができるかもしれません(画像/MWS)。








2020年12月21日






















『驚異の珪藻世界』に掲載されている走査型電子顕微鏡画像と同等に近い表現力が光学顕微鏡にもあることの例示。もちろん,解像限界範囲内との但し書きつきですが,筆者のイメージング技術を投入すると,このくらいは簡単に見えます。もうちょっと真面目にやるとさらに解像限界は少しあがります。

珪藻研究者が珪藻の形態を詳しく調べるときは電子顕微鏡を使います。光学顕微鏡で解像限界を追求するようなことは普通はしないので,このような構造を直接目で見た人はほとんどいないと想像されます。

でも,がんばるとここまで見えちゃうんです。

そして光学顕微鏡のよいところは,表も裏も見えること。走査型電子顕微鏡の場合は表面しか見えません。『驚異の珪藻世界』をごらんになった方は電子顕微鏡が欲しくなってしまったかもしれませんが,研究用光学顕微鏡で微細構造のイメージングに挑戦するのも,なかなか趣のある世界ですよーと申し上げておきます(画像/MWS)。








2020年12月20日




ことし手に取った専門書の新刊で,いちばんうれしかったのがきょうの画像の本,『海岸動物の生態学入門』です。この本,著者の一人である木村妙子先生から恵送されたものです。有り難いことです。

木村妙子先生は4,5年くらい前にウチに遊びにきてくれて,一緒に顕微鏡覗いたり包丁研ぎなどをして遊びました。そのときに日本ベントス学会で本を作るという企画があるという話を聞いていたのでした。それから長い時間をかけてやっと完成したわけです。

手にとって何がうれしかったのかと言えば,この本が,しっかりと中身の詰まった硬派な専門書に仕上がっていたのが一目でわかったからです。最近の本は教科書でも「わかりやすい=内容が薄い」と誤解しているのではないかと思うようなものが大量に出回っています。違うのです。初歩からはじまって高度な内容まで,最先端の内容まで導いてくれる分厚い本が,最終的には「使える知識」になりますし,「深く理解」できるのです。

執筆陣は日本ベントス学会の総力を結集したようなメンバーとなっており,引用文献一覧も記載されていて,まさに専門書の風格が漂います。にもかかわらず,ところどころに,じつにポイントを突いたマンガやコラムが挿入されており,読後の記憶が強化されるように設計されています。さすがです。

この本は,海と海の生き物について学びたい人の強力な味方となるはずです。そしてこの246ページもあるオールカラーの専門書がわずか2000円程度(税込)で買えるのですから驚きです。著者らへの印税支払額は事実上ゼロのはずです。執筆陣の熱い思いが感じられます。

皆さん,専門家が力をあわせて作ったこの素晴らしい本をぜひお手にとってみて下さい。 amazonさんは こちら です。

あ,そうそう,この本,表紙がまた素晴らしいのです。きのしたちひろ先生による絵ですが,これ,「わかっている人でないとかけない絵」なんです。この表紙をじーっと眺めているだけでも楽しめます(画像/MWS)。








2020年12月19日




ことし読んだ本の中でいちばん心を揺さぶられたのがきょうの画像の本,『八月の銀の雪』です。今年に限定せず,人生を通じての読書でもこんなにドキドキする体験は滅多にありません。

いったい何が書かれているのかというと,「珪藻アートを作る男の話」が小説化されているのです。ひじょうに偏屈な男がひっそりと暮らしながら珪藻をいじっている…,これ,オレのことじゃないですか。自分が小説化されちゃったの? 

…というわけで,そこにはどのような内容が書かれていたとしても,筆者は心拍数が高鳴りながら読むことしかできません。こんな素敵な体験ってあるのでしょうか。伊与原新先生から頂いた,もう一つの人生,という気分です。伊与原先生本当にありがとうございます。

先生がどんな資料を読み,調べ物をして小説を書き上げたか手に取るように分かる立場にいますので,先生のお仕事の作法までもが理解できて,その点でも素晴らしい読書体験でした。

中身は読んでのお楽しみ。果たしてどんな物語が展開されているのか?  こちら をチェックしていただいてゴーゴーです。

そしてなんとなんと,先生の『八月の銀の雪』が第164回直木賞候補作にノミネートされました!! こちら をごらん下さい。ドキドキしてきました。それだけ素晴らしい本なのです(画像/MWS)。








2020年12月18日




いやーもう最高です。ほぼ言うことなし。世界的珪藻学者三人による素晴らしいお仕事。約五千円というのは一般的には気安く払える額ではないのかもしれないけれども,筆者は「安い!」と感じました。

主に走査型電子顕微鏡による図版を中心にした写真集ですが,拡大率がそれほど高くないので,この本に記載されている珪藻の微細構造の約半分は光学顕微鏡でも見えます。但し,最高級の腕前が必要です。…ということは解像限界に挑戦する方々の,構造に関する最高のお手本になるわけです。素晴らしい。

すこしだけ疑問を書いておくと,37ページの04と05は本当にビドゥルフィアかしら? 39ページの03はヒドロセラなのかしら? 40ページの画像はどう見てもアンフィテトラスの典型的な被殻とは異なります。違う種にも見えます。42ページの画像はどうみてもトリケラチウム・ペンタクリナスに見えますが,いつからトリゴニウム属に移されたのでしょう?

著者の三人とも,世界的珪藻学者なのでたぶん筆者の勘違いかとは思うのですが,ぱっとみて変だなと思ったので記した次第です。

しかしそんなことは些細なことで,この世界最高の珪藻の入門書が出版されたことをたいへん喜ばしく思います。ぜひみなさま, こちら をチェックして,お財布と相談して,えーいと買っちゃって下さい。きっと紙幣1枚と引き替えに,幸せがやってくるでしょう(画像/MWS)。








2020年12月17日




クリスマスプレゼント企画には多数のご応募をいただきましてありがとうございます。好評につき,追加で在庫を投入して引き続き大募集中です。

なんと,あの泣く子も黙る福音館書店さんの公式ツイッターでも紹介していただきました( こちら )。みなさまどんどんリツイートして広めていただければ幸いです。

ツイッターアカウント(公開)をお持ちの方,ぜひこの機会に『珪藻美術館』クリスマスプレゼント企画にご応募下さい。応募の詳細は こちら です。どうぞよろしくお願いいたします。

きょうの画像は視野中になかよく並んでいた珪藻。画面横幅は26.2μm,別の書き方をすれば,0.0262mmです。とても小さな世界です(画像/MWS)。








2020年12月16日






このところ深夜に油浸検鏡。すっかり油浸の面倒さは消えました。昨日は15年ちかく前に作った標本を覗いていたのですが,見たこともない珪藻が現れました。うーん該当する属がまったく思い浮かびません。主要164属の珪藻で似ているものはないように思います。なんだろうこれは。画面横幅は26.2μmです。

この標本は封入時にさんざん検鏡したはずなのですが見落としというのはあるものです。みなさまも手持ちのスライドを油浸でくまなく検鏡すると新たな発見があるかもしれません(画像/MWS)。








2020年12月15日






フルスツリアのきれいな被殻。Frustulia crassinerviaだろうと思います。池などにいる珪藻で整然とした格子構造があります。画像一枚目の横幅は52μm,画像二枚目の横幅は26.2μmです。ここまで整然と無機的だと,なにか工芸品を見ているかのような感じがします(画像/MWS)。








2020年12月14日




クリスマスプレゼント企画には多数のご応募をいただきましてありがとうございます。そろそろお手元に本が届いた方もいらっしゃることと思います。ごゆっくり楽しんでいただき,またクリスマスプレゼントとしてご活用いただければと思います。

今回の企画には多数の在庫を準備いたしましたので,まだまだ対応可能です。ツイッターアカウントをお持ちの方,ぜひこの機会に『珪藻美術館』クリスマスプレゼント企画にご応募下さい。応募の詳細は こちら です。どうぞよろしくお願いいたします(画像/MWS)。








2020年12月13日




Hippodonta capitataがなかなかいい感じに撮れた。なにげない本ページの一コマですけれども,これは世界最高峰の画像なんですよ。どれだけ光学顕微鏡が上手に扱える方でも,このような絵を得ることは簡単ではないのです。光学顕微鏡は「光を操る機械」なのです。見たい構造に最適な照明を施し,物体の特徴を浮かび上がらせるようにして撮影するのです(画像/MWS)。








2020年12月12日




『珪藻美術館(福音館書店)』は出版から三ヶ月が経過しましたが実店舗での売れ行きは堅調なようです。その一方で,SNS方面での周知が遅れており,世の中のまだほんの一部の方々しか本書の出版に気づいていない現状があります。特にツイッター方面に情報が流れません。

そこでツイッターアカウントをお持ちの方を対象に,『珪藻美術館』クリスマスプレゼント企画を思いつきました。読了後に何かをつぶやくだけで本をもらえるという企画です。先着順で早い者勝ちです。ぜひみなさま応募をご検討下さい。そして本書の出版情報をweb上に流して拡散させ,筆者を助けてください。

応募の詳細は こちら です。どうぞよろしくお願いいたします(画像/MWS)。








2020年12月11日














10日も高解像検鏡の習熟運用としました。昨日に運用したときにある種の「面倒くささ」を感じてしまい大変まずいと思いました。ある目的を達成するための技法は決まっているのに,それを面倒くさいと感じてしまったら目的達成を放棄することを意味します。手順になれて「面倒くささ」を消去し「楽しい」までに昇華しないといけません。

きょうの画像は習熟運用で撮影したものから,Hippodonta capitataの画像を抜き出したもの。ウマノハケイソウ属という和名がありますがそんなに馬の歯に似ているかしら? 画像の横幅は26.2μmなので小さな珪藻であることがわかります。

この珪藻のように頑張ればやっと見える微細構造が小さな殻にみっしり詰まっているものは筆者の好物です。高解像イメージング技法を駆使して,この珪藻の構造を攻めていきます。珪藻の世界では電子顕微鏡観察(SEM)が一般的ですが,光学顕微鏡でも同じ情報を得られることも多いです。きょうの画像と, こちら のページを比較してみてください。当サービスの誇る高解像光学顕微鏡画像には,SEMで得られる情報のほとんどが詰まっていることがわかるでしょう(画像/MWS)。








2020年12月10日








9日はRL-TESTのデータ取りの日だったので,あわせて高解像検鏡の習熟運用の日としました。当室の高解像検鏡技法はすでに15年前に確立したものですが細かなチューニングの数々から構成されます。習熟運用を怠ると使う道具の組み合わせや手順を忘れることになり,同じ結果を出すのに時間がかかることになります。ので練習は大事なのです。

また,機材は日々進歩しているので少しずつでも改良していくことが重要です。15年前は干渉フィルター+ハロゲンランプが現在は高輝度LEDです。どちらでも同じ結果が出ますが,消費電力は格段に小さくなり熱の影響が軽微になりました。輝度も少し上がったので熱ノイズを軽減できている可能性もあります。

きょうの画像はそんな運用結果の一部。上から順にAmphipleura pellucida, Navicula sp., Anomoeoneis sp.です。和名では上から順に,アミバリケイソウ,フナガタケイソウの一種,サミダレケイソウの一種,となります。画面横幅は26.2μmです。いすれの珪藻もかなり小さく,また繊細な構造を持つことがわかります。

A.pellucidaの少し大きめの画像を こちら に置いておきます。この珪藻の殻が全身繊細な格子構造であることが理解されるでしょう。これを見つけてレンズのテスト物体に使った19世紀半ばの人々は,慧眼というかなんというか,神様レベルの観察眼を持っていたのかもしれません(画像/MWS)。



* FTPのトラブルがあったらしく,ここ数日の更新ができていなかったようです。すみません。本ページは毎日更新で,筆者のパソコンの中では毎日更新されているのですが,アップロードを忘れることはしばしばあります。記事を書くと安心してしまうのかもしれません。が,この数日は更新作業をした覚えがあるのに,なぜかファイルが消えていました。操作を間違えたのかもしれません。すみません。




2020年12月9日




久しぶりに顕微鏡のステージを削りました。むかしの顕微鏡はコンデンサ油浸にしたときに,ステージとスライドグラスが油で貼り付いてしまう現象を回避するために溝付きステージというものが用意されていました。しかし1980年代を最後に,国内の製品では溝付きステージを見かけなくなった気がします。研究者のみなさま,コンデンサ油浸のときはどうしているのでしょう。

当サービスではコンデンサ油浸,液浸はごくふつうのことなので,バイオフォト系の溝付きステージやS型の蛇の目リング外しなどによって対応してきました。しかしここ数年,オプチフォトも頻用することになり,DICコンやDCコンで液浸にすることも増えました。そのたび,スライドがステージに貼り付いてじつに不愉快な気分でした。ステージに溝を掘るか,開口部の面積を広げるかどちらかの改造が必要でした。

きょうは試しに通常のXYステージを削りました。スライドグラスをセットしてケガキを入れて,リューターで浅く削り,そのあとに手ヤスリで深く削ります。なんでこんなことしてるんだろと怒りも沸いてきますが,顕微鏡メーカーが怠慢なのを怒ったところで,彼らも売れないものを作っても仕方がないので,それこそほんとうに仕方のないことなのかもしれません。けっきょく検鏡まではたどり着くことなく,夕飯の支度の時間になってしまいました。

削りたいステージはこれだけではありません。微分干渉用の回転ステージも一つ,削り待ちです。DICなんていちばんコンデンサを液浸にするのに,なんであんなステージしかないのかと,本当に不思議な気分です。メーカーさんにリクエストしないユーザーにも問題がありますが,たぶんそれよりも先に,メーカーさんがユーザーの教育をしてこなかったところに,根本の原因があるような気がします(画像/MWS)。








2020年12月8日




きのうの胃痛は順調に回復し,一晩寝たら朝にはかすかな違和感が残るだけになり,優しい食事をとっていたら午後には完全に違和感も消えました。20時現在,まだ夕飯前です空腹状態ですがなんともありません(祝)。対処が早かったことがよかったです。若い頃は健胃生薬を飲むくらいしかできずに一週間くらい胃の調子が悪いまま過ごすこともありました。。中年オッサンは若者よりも進化したのです。。

数名の方からお声かけいただきましてとても有り難かったです。完全に復調しましたので大丈夫です。この感じだとすでに酒もOKですが,あまり胃粘膜を痛めつけてもいけませんので当面は禁酒ですね。酒をやめすぎても寝られなくなり体調低下することがあるので加減が難しいところですが…。

きょうの画像はそんな話題とは関係のない,ネイディウム。ハスフネケイソウ属という和名がついていますが由来は知りません。けっこうどこにでもいる種で,池の泥の上などでよくみつかります。大きなものから小さなものまでいます。きょうの画像に写っているのはけっこう小さめのサイズです (画像/MWS)。








2020年12月7日




きのうの夜,食後にぼーっとしているとお腹が張る感じがします。おかしいなぁと思って様子を見ていると胃痛に発展。胃全体がチリチリチリと痛くなるタイプの胃痛です。どんどんひどくなり,これは放置できないなぁと思ったのでまずは太田胃散を一服。予想通り効果なし。まだ胃内容物は残存しているので,スクラートは飲めません。ので,ファモチジンを1粒。胃の激痛をかかえながら本ページを更新(笑)。

ファモチジンは全く効果がありません。その後,胃が空になるのを待ってスクラートを一服して就寝23:15。ほとんど効きません。チリチリチリという強い痛みです。胃けいれんではないのでブスコパンは飲みません。そのまま寝ることもできずに朝になり,05:30に再びスクラートを一服。こんどはほんの少しだけ効果を感じました。06時過ぎから少し寝て,あまり寝られないまま09:30に起き,太田胃散を一服して再び就寝。ほとんど寝られないんだけれども,12時頃まで横になる。

そのあとはおかゆをすすり,空腹になればスクラートを一服の繰り返し。21時現在,沈静化に向かっていますがまだ胃下部の違和感は残っています。ひどい休日となりました。

毎日とても用心深く暮らしていますが,年に一回くらい胃痛をやってしまうことがあります。たいていは食品中に原因があります。今回の犯人を探ってみると…

めかぶ,しらす,ダイコンサラダ(ポン酢),カリフラワー,ブリのソテー,小松菜とひらたけのアーリオオーリオ,氷見のブリ刺身,ローストビーフ市販品,イワシの南蛮漬け(タマネギ・にんじん),鶏タマネギきのこ煮,ダイコンの葉と油揚げの煮物,落花生,日本酒二合(ぬる燗),以上が夕飯の内容でした。そのあとリンゴを半分。

もし胃痛が周期的な激痛だったらブリ刺身によるアニサキスも候補に入ったかもしれません。が筆者は日頃からアニサキスが見えるタイプの人間なので,まずそのまま食べることはないし,よく噛んで食べる人間なのでアニサキスにはかかりません。そうすると,メニューは身体に優しそうなものばかりです。

すると犯人は落花生,ということになります。劣化したピーナッツで胃を荒らした経験は若い頃から何度もあります。それでピーナッツは最上級品ばかりを選んで食べていますが,それでもたまにお腹が痛くなることがあります。今回はそれのひどいやつに当たってしまったのです…

とても不思議なことですが,このピーナッツによる胃痛は,個人的な経験の範囲では千葉県産のもののみで見られています。神奈川県産のものや中国産のものでは胃痛は起こりません。おそらくこれは品質管理上の問題なのかもしれません。千葉産のものは高級品を入手しても,その中に数粒,劣化した味のするものが入っていることが多く,それを誤って飲み込むと胃の調子が悪くなります。ので注意深く一粒づつ食べて,劣化したものをはき出しながら食べる,というのが筆者の千葉産ピーナッツの食べ方です。

今回は全体的に非常に良好な風味で,劣化したものも入っていましたが,そこまでひどい感じではなかったので飲み込んでしまいました。ごくわずかでも劣化を感じたらはき出すべきでした。。やられました。千葉半立というのはとても優れた品種で味も最高なのですが,筆者との相性はよくないのかもしれません。この機会におさらばしたほうが安全上はいいのかもしれません…。

でもなんで,千葉産のものだと,殻を割って黴びていたり,食べられないような風味のものが混入していたりするのでしょう。収穫後の乾燥工程に問題があるような気がします。中国産のものなどでそのようなものにあたったことがありません。良いもので比較すれば千葉産が勝りますが,異物混入という点で見れば中国産の方が上です。秦野も。それとも千葉半立という品種は一定の割合で劣化したものが混入するのが避けられないのでしょうか。難しいものですね。

きょうの画像はそんな話題とは関係のない,ピンヌラリア。池の泥の上などにふつうに見つかる珪藻です。河川でも見つかることがありますし,淡水に広く分布しています。生きているときは活発に動き回るので,顕微鏡で見ると乗り物が動いているかのように見えます。幅と長さの比が,鉄道車両くらいの感じなのです (画像/MWS)。



*1 腹痛といえど原因は多岐にわたるので,最初から胃痛と決めてしまってはいけません。今回の筆者も胃痛とはわかっていましたが,たとえば胆管炎や急性膵炎,狭心症,心筋梗塞,腹部大動脈解離の可能性なども考えつつの対応でした。筆者は子どもの頃から胃が弱く,胃痛,胃けいれんなど経験してきましたので症状ごとに原因が推測できるだけの知識が集積されています。ので,こんなレポートもできるわけです。もし胃が丈夫でふだん腹痛などまったく起きない,という人は,急な腹痛の原因が何であるかわからないので,胃痛と決めつけないで対処することが大事です。もっとも,大動脈解離が見抜けない程度の医師は多く,腹痛で医者に通っていた人が数日後に急死,などという事例もあるので医者に行けば良いというものでもありませんが。




2020年12月6日




このところの一連の珪藻画像は同じ拡大率で掲載しています。ので,大きい珪藻もいれば小さな珪藻もいることがわかります。きょうの画像はLuticola属の珪藻です。淡水で,池のサンプルなどでよく見かけますがなかなか小さいです。しかし小さな割には,点紋列のピッチはそんなに細かくないので撮影は簡単な方です。タマスジケイソウ属という和名になっていますが,これはどんな意味なのかな? (画像/MWS)。








2020年12月5日




きょうは5件ほどの発送をこなしたのですがまだ(雑用も含めて)作業が終わりません。ので,昨日に引き続き,検品中に現れた珪藻を画像だけ。ゴンフォネマです。池などでよく見つかります。先日掲載したクチビルケイソウと同じように,柄の先に細胞がくっついていて,分離して移動することもできます。同じ池の同じ場所にクチビルケイソウもよく見つかるのですが,なぜ同じ環境で育っているのにこうも形態が異なるのか,不思議ですね(画像/MWS)。








2020年12月4日




きょうも一日テストプレートの検品でした。きょうの画像はその中に現れたなつかしの珪藻。Frustulia vulgarisです。そのむかし,まだ顕微鏡の扱いが下手くそだった20年ほど前のこと,この珪藻が視野に現れて最良の像を得ようと努力した日々を思い出します。当時でももちろんこの微細構造は見えましたがNA=1.3で覗いていました。きょうの画像はNA=0.95です。ちゃんと顕微鏡を扱えるようになると,液浸系でみていたものが乾燥系でも見えるようになる場合もあるのです。

好きな珪藻はなんですか? とたまに聞かれます。嫌いな珪藻なんていませんよ,と答えたいところですし,特定の珪藻だけうんと好き,ということもないので答えるのが難しいですが,Frustulia, Frickea, Amphipleura pellucidaは好みですね。うーんと繊細で,整然とした周期構造が視野にかすかに浮かび上がるのが,顕微鏡使いとしては面白みを感じるからです(画像/MWS)。








2020年12月3日




テストプレートの検品中に現れた珪藻。むかしはNavicula americanaという種名だったのが現在はSellaphora americanaという種名になっています。Naviculaを見慣れた目からは,なんでコイツがNavicula属だったの?と思うほど全然違う格好をしているのですが,当時は多くの雑多な種がNavicula属に放り込まれていたようです。Sellaphoraの和名はエリツキケイソウ属,本種は池や沼の泥の上で見かけますが,数は多くはありません。比較的大型の種なので拾うのは容易です。どこかにたくさん発生していると嬉しいのですが…(画像/MWS)。








2020年12月2日




1日は聞けば誰でも知っている新聞社の取材対応でした。この秋の取材攻勢は凄まじく,さすがの筆者も「ふーむ」という状態ですが,新型コロナの年でもありますし,今年は1月から連続して様々な厄災がおそってきて,神様が「仕事しないで休みなさい」とのメッセージを送っているような気もするので,ま,いいか,と流されるままに生きています。。

きょうの記者さんは,いわゆる文系出身の方で,自然科学系の素養はあまりないということでしたので,筆者が時間をかけてうんと丁寧にお仕事,珪藻,珪藻アート,顕微鏡などについて説明いたしました。どこかの国に「丁寧に説明」と言いながら何年も嘘をはき続け,不利な状況になってくるとお腹が痛くなって辞めてしまった総理大臣がいたらしいですが,そんな阿呆と比較すると,筆者の「丁寧な説明」というのは比較するのもばからしいほどレベルの違うものです。

ノリの良い記者さんも大喜びで話をきいてくれまして弾んだ取材になったのでした。5時間半経過したところで時間切れとなりました。ひょっとしてRound 2もあるのかな…という感じで,とても充実した時間を頂いて筆者としても感謝しています。

記者さんが帰れば直ちに室内を原状復帰にします。これがなかなか大変なのでして,大量の物品をもとの位置に配置し直して…となります。そして兼業主夫たる筆者のメインの仕事である晩ご飯作り。どんなに忙しくても食事に手を抜いてはいけません。自分の身体に合うおいしい食事を作り,ハラをへらして帰ってきたカミさんと食べるのです…(画像/MWS)。








2020年12月1日








クチビルケイソウの仲間は柄(stalk)の先っぽに細胞がくっついていて群体を形成するものがいます。きょうの画像がその一例でCymbella janischiiでよろしいかと思います。この細胞は柄から外れることもできて,そのときは単細胞で器物に付着して滑走しての移動ができます。おそらくそのようにしてこの珪藻は条件のよいところが見つかると,そこで細胞の端にある非常に細かなメッシュ状の穴ぼこ群から粘液を出して付着し,さらに粘液を出して柄を伸ばしていくものと推測されます。

きょうの画像1枚目は群体の一部。2枚目は柄の先に細胞がついている様子。細胞は分裂中に見えます。 画像3枚目は,生きている細胞が柄と接着している部分の高分解能画像。一つ一つの穴がノズルのようになっていて,そこから一本一本の繊維が分泌され,それが水を含んで膨潤して柄(stalk)を形成しているように見えます。一つ一つの穴の周期は恐ろしく細かく,ちゃんと測定していませんが,1mmに4000本くらいの細線をひいたくらいです。

なぜこんな細線を束ねたような粘液糸を分泌するのかわかりませんが,太い繊維一本よりも細線を束ねた方がずっと高い強度を出せるのかもしれません(画像/MWS)。









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