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『珪藻美術館』(福音館書店) 好評発売中!
 



『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』
(たくさんのふしぎ傑作集)

 奥 修 文・写真
 福音館書店,48ページ,1300円+税 
もらったら嬉しい気持ちになる科学絵本です。大人でも子どもでも楽しんでいただけます。プレゼントにも最適です。全国の書店やネット書店,amazonさん などでお買い求めいただけます。





2021年1月31日




きのう掲載したものと同じ標本を位相差顕微鏡(いそうさけんびきょう)で覗くとこんなふうに見えます。珪藻は透明で,封入剤も透明ですから理屈の上では見えないと考えがちですが,実際には「屈折率」が少しでも異なれば,物体の境界面で屈折,散乱,回折などいろんな現象が起きるので目で見えます。

位相差法は屈折率の異なる物質の中を光が通過すると,光波の位相が変化することを利用した検鏡法で,透明なもののなかに透明な物体があっても,はっきりと明暗のコントラストに変換してしまいます。

この検鏡方法は,標本製作者にとってはあまりうれしくない(笑)ものでもあります。ごくわずかな欠陥,ゴミなども見えてしまうからです。パーフェクトな標本を作るように心がけていますが,何しろ顕微鏡でしらみつぶしに探されれば欠陥がないということはまずあり得ません。位相差であら探しをされるとじつにうれしくない気分になります…。

という事情があるので,位相差法でも欠陥が見つからない,という目標を掲げて気合いを注入して良いものを作ろうと努力することになったりもします。いったい何と戦っているんだろ,という気もしますが,「完璧」を追求するとあらゆるものが障害になってきて,「戦い」になるのです。

そんな筆者が制作する珪藻標本が『たかさき絵本フェスティバル』で展示されています。顕微鏡で本物を見ることができます。2月2日までです。会場は こちら です。

顕微鏡は順調に稼働しており,肉眼観察に加えてスマホ撮影も可能になっております。これが来場者には好評のようで,人気の展示になっているとのことでした。ぜひみなさま,たかさき絵本フェスティバルで現物をごらん下さいませ(画像/MWS)。








2021年1月30日








珪藻アートは珪藻のもつガラスの殻を並べたものです。珪藻の殻はかなり純粋なシリカ(ケイ酸)からできていて,ほんの少しのタンパク質を含んでいます。色素は含んでいませんので,無色透明です。その無色透明のガラスに色がついて見えるのは構造色によるのです。染色しているわけではありません。

『珪藻美術館』の読者のなかにも,珪藻の殻を染めていると誤解している人が少なからず存在しています。そんなことはどこにも書いてないのに,色がついているという事実から,着色していると思い込まれているようです。

そこできょうの画像をみていただきましょう。一昨日掲載した標本と同じものを撮影しています。違うのは照明です。

同じ標本を用いても光の当て方で色は大きく変化します。もし珪藻の殻が染色されたものなら照明によってそんなに色が変わることはないでしょう。

…ということで,珪藻がカラフルなのは構造色だよ,構造色って何?って思った人は調べてみてね,というのがきょうのお話しなのでした(画像/MWS)。








2021年1月29日




【お知らせ】

面白いニュースを紹介するwithnewsさんのサイトで当サービスの仕事が紹介されています(こちら)。いろいろな画像を見られますので,ぜひみなさまごらん下さい。記事中でも紹介されている『たかさき絵本フェスティバル』,2月2日までです。会場は こちら です。この展示では画像ではなく,本物の珪藻アートを顕微鏡で直接観察できます。ぜひ会場で「生の光」をごらん下さいませ。

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きょうの画像は『珪藻美術館』展示コーナーの一部。このような画像を見て,写真の専門家はどんなところに注目するのか,きょうはそれを書いてみましょう。

手前の透過照明台の光源,これは青っぽいですよね。一目で,安価な白LEDだとわかります。色温度は6500K〜10000Kまであります。目では白っぽく見えますがデジタル素子には青白い光です。

奥に見える顕微鏡の光源,これは青っぽくないですね。…ということは,3000K程度の電球色LEDを使っているのでは?,というように見えます。明らかに手前の透過照明台の光源とは違います。

さてより詳細に見ると,左の本格的な顕微鏡と,右の簡易液晶モニタ顕微鏡の光源も,色温度は似ています。しかし専門家なら,液晶モニタ顕微鏡が電球色や高演色のLEDを採用しているはずはない,ということも知っています。

すると…,この液晶モニタ顕微鏡の光源は,6500KクラスのLEDにフィルタをつけて色温度と演色性をいじっているのでは?というように推測することになるのです。そして実際,その通りです。

何気ない1枚の画像なのですけれども,それを読み解くと,奥深いいろんな情報が隠れていることがわかります。写真を眺めるというのは頭を使うことでもあります。面白いのです(画像提供:福音館書店)。








2021年1月28日






『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』はおかげさまで好評のようで,ぽつぽつと反響が届いたりもしています。伊与原新先生の『八月の銀の雪』で知ったという人もいて,本好き,文学好きの方々にも浸透してきているのが嬉しいですし,有り難いです。

ところで,読者の方々がどこで本書を手にしているかというと,かなり多くの方々が図書館で借りて読んでいます。きょうの画像二枚目は神戸市の図書館ネットワークの状況ですが,各分館に合計9冊入っている『珪藻美術館』が6冊貸し出しになっています。

また,Bookmeterを見ると,多くの読者が図書館で借りて本書を評価してくださっています(こちら)。じつに有り難いことです。

そこできょうは少し,システムの話を書きましょう。

もちろん著者としては,本はご購入頂いた方がもっと有り難いです。その売り上げの10%が出版社を通じて,著作権使用料として戻ってくるからです。図書館で借りて読む場合は,最初の一人目の分は著作権使用料が支払われていますが,二人目以降は支払額はゼロになります。誰だって,仕事の評価がゼロになるのはつまらないでしょう。

では図書館で本を借りて読むのは悪いことなのか?というと,そんなことはまったくありません。誰でも本にアクセスできる公共のシステムがあり,市民生活に知的な娯楽を提供するサービスが目の前にあるわけで,これを利用するのは賢いことです。利用者には完全に何の問題もありません。

しかし著者や出版社から見ると,売り上げの減少に結びついている可能性があり,仕事の「本来の評価」が得られない事態になっている懸念があります。『珪藻美術館』はかなり活発に図書館で貸し出しされているので,販売開始から現在までの間ですでに1000回〜は閲覧されているものと推測されます。もしこれがすべて購入されていたならば出版社の在庫から1000部が出荷されていたわけで,在庫の消化が早くなり,重版に結びつく,あるいは次の重版までの時間が短くなります。

そんなに図書館の影響力はない,と思っている方々も多いですが,だいぶ前から,図書館の貸し出し部数は販売部数を超えているのです(こちら)。影響がないはずはありません。

さてここで,図書館で本を借りる人がどのような支出を行っているか見てみましょう。まず,図書館の在庫を調べてネット予約を入れます。通知が来たら図書館まで自転車,あるいは公共交通機関で出向いて本を借ります。読み終わったら図書館まで返却に行きます。

このとき,図書館の本の利用者は,スマホ代は支払っています。あるいはパソコン代金は支払っています。それを使ってネット予約しています。ネット回線のプロバイダ料金も支払っています。パソコンを動かす電気代も支払っています。図書館に出向くための交通機関にも代金を支払っています。もちろん自転車の人は自分で購入した自転車に乗るでしょう。そして,借りた本を入れるバッグにも代金を支払っています。公共図書館を支えるための税金も支払っています。

しかしコンテンツを提供して楽しませてくれた著者と出版社にだけは代金を支払っていません。「図書館を利用する」ということは,このような仕組みになっています。借りたい,見たい,楽しみたい,そのコンテンツを生み出してくれた人にだけ,対価は支払われないのです。

著者と出版社だけが不利益を被り,ほかのスマホメーカーやパソコンメーカー,電力会社,交通機関等が利益を得るのが図書館利用なのです。

もっとも,個人で買えないような高額な本もあり,そういった一冊数万円以上するような本は,出版社の方も最初から図書館や研究機関向けに出版しているという現状もあります。そういった本の場合は上記のことは当てはまりません。

さて,この現状で図書館で本を借りる人たちに「買え」というのは正しいでしょうか? 筆者は「間違っている」と考えています。タダで借りられるからこそ利用している図書館ユーザーさんは,もともと購買層とは重ならないと考えられますし,「借り」に来ている人に「買え」というのは訳のわからないことです。

これはシステムの問題と考えるべきですね。世の中の大多数が図書館利用するようになれば,出版文化は先細りでやがて滅び行くことになります。著者に仕事の対価が還元されず出版社の出版経費すら戻ってこないのでは,著者も出版社も弱って消えていくしかありません。コンテンツを無料消費する文化は,やがてコンテンツを生み出すものを消していくのです。

図書館ユーザーさんも,好きな作家に不利益を与えたいわけではないでしょう。末永く良質なコンテンツを提供して欲しいと思っているはずです。

ならばどうするか。システムを変えればいいのです。フィンランドでは,図書館で一回借りるごとに,国から著者に15円の著作権使用料が払われる仕組みになっています(こちら)。もちろん原資は税金です。これで図書館無料貸し出しによる著者の不利益は消え,正当な著作権使用料を受け取ることができます。

これを日本でも導入することは難しくないでしょう。現在図書館はほとんど電子化されたシステムを持っており,本の貸し出し回数などはすべて記録に残っています。年に一回,これらを集計して,著者の確定申告時に納税額から差し引き(あるいは還付)できるようにしておけば,著者の権利は保護されます。もちろん,著者だけでなく,その本を生み出した出版社にも還元すべきです。

原資は税金なので,これは税金を文化活動の保全に有効利用したということになり,国民の賛同も得られるでしょう。図書館ユーザーはますます胸を張って借りることができ,作家さんに向かっても,「図書館で借りて読んでますー」と堂々と言えるわけです。

このように解決法はあり,その気になればすぐにでもできることですが,たぶん国は動かないでしょうね。なぜって? 現在でも図書館への予算は減らされており,出版業界の改善にも取り組まないどころか,中小出版社を叩きつぶすようなことも平気で命じてくるからです(こちら)。

出版文化というのは一国を支える柱のようなもので,良質なコンテンツが安定供給されるような仕組みを維持することは国の役目でもあるはずです。この方面に明るい政治家が良い方向に導いてくれることを願いたいですね(画像:MWS,神戸市図書館のスクリーンショット)。








2021年1月27日






ほんの瞬間だけでも,夢を見させてくれる数字。これまで単著は3冊,共著も入れれば5冊の本を出しましたが,きょうの画像一枚目は,それらの中での最高順位です。旬報社さんから出した『珪藻美術館』が300位台まで到達したことがありましたが,それを上回りました。

画像二枚目は福音館書店さんのランキング。歴史ある大出版社でベストセラーも数多いのですが,ほんの一瞬だけでも,ベストセラーの数々と肩を並べられるのはうれしいことです。ぜひともこの本が,新しい世界を知るための定番となって,広く浸透することを願わずにはいられません(画像:amazonスクリーンショット)。








2021年1月26日




【お知らせ1】 26日の日本経済新聞・朝刊の文化面に珪藻アートのお仕事が掲載されます。どこでも入手できると思いますので,みなさまぜひお見逃しなく朝刊をゲットしてください。

それにしても,日本経済新聞の文化面といえば,名物人間を紹介する大変素晴らしい記事が掲載されるコーナーです(こちら)。エクストリームアイロニングを採り上げるなど(こちら),ほかの新聞社には簡単に真似はできないアンテナの指向性を感じます。

そんな名物コーナーに世の中の片隅でひっそりと暮らしている筆者が出てしまうなんて…恥ずかしいというかなんというか。紙面は顔写真入りの記事になっていますので,筆者の微妙に困ったような表情を見て皆さん笑ってやってください…



【お知らせ2】 現在開催中の「たかさき絵本フェスティバル」では,『珪藻美術館』コーナーが大人気で,顕微鏡展示も相変わらず好評とのことでした。上毛新聞の紙面では一面に珪藻アートが掲載されました。子どもたちも顕微鏡下のふしぎな世界に触れることができたようです。

現地に出向くことができない人は こちら の動画も参考にしてください。主催者の「時をつむぐ会」の方による撮影です。珪藻美術館コーナーのほんの一部ですが,顕微鏡や筆者が使っている道具まで展示されています(画像:MWS)。



*1 エクストリームアイロニング,めちゃめちゃかっこいいなぁ\(^_^)/。こういうの大好き。さすがユーモアを解する英国だなあ。こういうの見るとエクストリーム○○をやりたくなるなぁ。筆者的にはエクストリームミクロスコピーかな。居酒屋で見知らぬ客に暗視野顕微鏡で珪藻を見せたことあります(笑)。寿司屋で握りが出てくるまでの間に顕微鏡観察したことがあります。フレンチのお店で食後に顕微鏡観察したことも幾度か。新幹線の車内で顕微鏡観察は普通。在来線でも普通。うーんあんまりエクストリームではないな。

*2 そうだ,思いついた。エクストリームシャープニングだ! 砥石を刃物を持ってエクストリームをやるのだ。これはアイロニングに近い感じだな。よりハードで危険だけれども。





2021年1月25日




絵本の祭典,『たかさき絵本フェスティバル』初日が終わりましたが,『珪藻美術館』コーナーは大人気で,顕微鏡観察もスマホ撮影も皆さん楽しんでおられたとの報告が入ってきました。筆者としてはほっとしています。やはり,完璧な珪藻標本をパーフェクトに調整した顕微鏡で暗視野観察すれば,初見の人でも魅了するのです。

昨日も紹介しましたように群馬テレビさん上毛新聞さんでも『珪藻美術館』を採り上げて下さいました。珍しいのでニュースバリューがあるのでしょう。

たかさき絵本フェスティバル,2月2日まで開催中です。会場は こちら です。みなさま,ぜひごらん下さいませ(画像提供:福音館書店)。








2021年1月24日






絵本の祭典,『たかさき絵本フェスティバル』での展示がはじまりました(こちら)。さまざまな絵本の原画が展示されるという豪華なフェスティバルで,絵本に興味のある方はもとより,絵本を教材として利用する教育機関関係者の方々や,美術に関心のある方,美術系大学の方などにもオススメできる催しです。

例年ですとかなりの人数が押し寄せる大人気のフェスティバルですが,今年は例年よりは空いた状態でゆっくりと観覧できるかもしれません。物販もありますので,原画をみて気に入った本を買うことができます。

きょうの画像は展示会場の一部のようす。『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』の原画やほかの珪藻アートの原画とともに,顕微鏡で珪藻アートを直接見られる贅沢な展示となっています。画像だけだとCGか?と言われてしまいそうですが,顕微鏡で確かにそこに見える本物があれば,『珪藻アート』というものに関して『実感』がわくでしょう。

群馬テレビでも採り上げられています( こちら )。

上毛新聞社でも記事になっています( こちら )。

会場は こちら です。みなさま,ぜひごらん下さいませ(画像提供:福音館書店)。








2021年1月23日






きょう1月23日(土)から2月2日(火)までの日程で,絵本の祭典,『たかさき絵本フェスティバル』が開催されます(こちら)。毎年テーマを決めて絵本の原画を中心に展示する大規模なフェスティバルです。今年のテーマは福音館書店の科学絵本で,なんと筆者の『珪藻美術館』も展示作品に選ばれました。

絵本原画展ですから『珪藻美術館』の展示コーナーは珪藻アートの顕微鏡デジタル写真の展示が中心となります。しかし当サービスでは一歩進めて,原画の被写体,つまり珪藻アートそのものも展示することにしました。

当サービスの高度な顕微鏡運用技術により組み上げられた,防塵型暗視野の珪藻アート専用顕微鏡を設置し,来場者のどなたにも究極の,世界最高峰の珪藻アートを生の光でご覧いただけます。会場は静寂性を保つために写真撮影禁止ですが,珪藻アートについては自由に撮影が可能で,お手持ちのスマートフォン等に珪藻アートの顕微鏡写真を収めてお持ち帰りできるよう準備しております。

きょうの画像は会場に設置した珪藻アート専用顕微鏡。ベースの顕微鏡は古いものですが,最高度のチューニングを施し,最適なレンズの組み合わせと暗視野コンデンサ,LED照明のバランスをとることにより,高精細でカラフルな,超高品質の像をたたき出します。

ぜひみなさま,たかさき絵本フェスティバルにお越し下さい。そして滅多に見ることのできない,MWS Jシリーズの輝きをごらん下さい。一部の自治体では緊急事態宣言下ではありますが,飲食を伴う会場ではなく,移動も自家用車か空いている新幹線を利用すれば安全です。会場は こちら です。

珪藻アートの実物展示は滅多に行われません。今回は,2019年11-12月に行われた『ケイソウ展』(東京・武蔵小金井)以来です。今後の実物展示はまったく予定はありません。

伊与原新先生の『八月の銀の雪』をお読みになって珪藻アートに興味を持たれた方,『珪藻美術館(旬報社)』『珪藻美術館(福音館書店)』をお読みになって実物をみてみたいと思った方にはぜひともご覧頂きたく思っています。

SNSをお使いの方は,ぜひこの情報を拡散していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします(画像/MWS)。








2021年1月22日




トリケラチウムの六角形のハニカム構造の中にはたまに五角形があってその隣には7角形が存在しているらしい,ということに気がついたのはたったの数日前。ほんと,自分の目のフシアナ加減に驚くのですが,その一方でこんなことは大昔から知っていた,というお方もおられます。 こちら の管理人さんがそうで,なにやら難しい高尚な理論が述べられています…。

管理人さんのお話しでは,四角形の珪藻でも同じような現象が見られるということです。トリケラチウムには三角形,四角形のものもいるので,同じ現象が見られても全く不思議ではありません。観察眼のある人は大したものだなあと感心します。

きょうの画像はトリケラチウムの六角形型。やはりこの中にも五角形と七角形が共存しています。ほんと,ふしぎだなぁと思うのです(画像/MWS)。








2021年1月21日








珪藻の殻は二枚一組でカプセルになっていて,それぞれ外殻,内殻と呼ばれています。ほとんどの種はどちらも同じ形態をしています。しかし一部の種では,内殻と外殻で形が異なっています。有名なところではコッコネイスやアクナンテスですが,じつはクモノスケイソウ(アラクノイディスクス)も殻の構造が内殻と外殻で異なっています。そのことを示したのがきょうの画像です。中心部の放射模様が片方はスリット,もう片方はくさび型になっています(画像/MWS)。








2021年1月20日










これも京都の会社の社長さんから頂いた品物。見た目はしらす干しみたいです。あまりの貴重品に思えて,人類はこれを食べていいのだろうかと迷うほどです。しかし琵琶湖ではこの稚魚をながねん利用してきたわけですし,漁業としても成立しているわけですので,資源管理ができているうちは食べて良いのでしょう。

で,この手の釜揚げの稚魚は鮮度が命です。よくしらす干しを冷蔵庫に何日も入れているという人がいますが,あれはダメです。カチカチに干したものならまだわかりますが,釜揚げのしらすなどは,あれは「煮魚」なのです。煮魚であるならば,せいぜい翌日には消費すべきなのです。

…ということで,この貴重な稚魚の釜揚げは,着荷した夜には直ちに消費されたのでした。遠くに苦みを感じ,これが全体の味を引き締めていて,最上級の釜揚げしらすとも対抗できる味です。酢飯の軍艦巻きにしてわさびをのせれば脳天がしびれるようなうまさになることでしょう。

でも,ほんと,ちょっとした罪悪感がありますね。この稚魚は春から河川を遡上して石についている珪藻を食みながら成長するお魚なのです。その稚魚をこんな贅沢に食べていいのでしょうか…。まぁ人生に一回くらいはいいかな。貴重な経験をさせていただいた京都の会社の社長さんには再度,感謝感謝です(画像/MWS)。








2021年1月19日






たまに当サービスにはとんでもないものが送られてくるのですが,先日もとてつもないものが来ました。それがきょうの画像。琵琶湖の魚詰め合わせセットだったのですが,そのなかに「刺身用のビワマス」が入っていたのでした。人生50年以上生きてきたけれども,ビワマスは焼き物しか食べたことがありません。刺身は未体験ゾーンです。

ヤマメ,アマゴ,サクラマス系の魚は大変身質もよくて美味なのでさぞかし美味しかろうと包丁を入れると,ひじょうに緻密できめのこまかな繊維を感じます。包丁の重さから脂がのっていることもわかります。初体験なのでどのくらいの厚みに切るべきか悩みましたが,これは薄造り向けではないのは明らかでしたので厚切りにしました。

一切れをしょうゆ(宮城県産)でつまんでみると驚きの味。これはあらゆる魚の刺身でも最上級クラスといって過言ではありません。テクスチャ,風味,脂,コク,そして色合い,申し分ありません。身にしっかりとした味があるのです。コチ,ホウボウ,スジアラなどはやはり身にしっかりとした味がありますが,全く引けを取らない主役級の味わいです。

身の繊細な風味に対して,しょうゆは少し強い感じがしました。煮きり酒でしょうゆを半割くらいにした方がより洗練された味になるかもしれません。

藻塩でも試してみました(秋田県産)。これも文句ない味わいでした。塩で十分と思わせるくらい身に味があるのです。

当然,ポン酢しょうゆも合うだろうと試してみました(ゆずの村,高知県産)。これもさっぱりとして申し分ありません。ただ調味しすぎ,味のつけすぎで,少しもったいない気もします。

しょうゆは味の方向性としては間違っていないのだけれども,すこし角の強さがあるので,味噌はどうだろうかと試してみました。ジョウセンの仙台味噌です(宮城県産)。それが画像二枚目。わさびをちょっとのせて頂きました。

これが得も言われぬ味わいで大正解に感じました。しょうゆのように強すぎず,身のうまみと塩味がしっかりと調和して,ビワマスの持つ明るい風味を活かした味わいでした。最高にうううううまい。

食味試験の結果,刺身は,今回の場合は12mm幅に切るのが正解の感じでした。

これを送ってくれた京都の会社の社長さんによれば,時期が良ければもっとうまいとのこと。確かに理論的には産卵期のものよりも回遊しているときのものの方が良いだろうとは思います。鮭児のように。でも,筆者の絶対味覚によれば,頂いたものですでに最上級の味わいでしたので満足です。

緊急事態宣言が出ている東京で,琵琶湖の魚の刺身が食べられるなんて,本当に有り難いことです。京都の会社の社長さんには感謝感謝です(画像/MWS)。








2021年1月18日






暗視野コンデンサがなくても暗視野での観察はできます。いろんな人から,暗視野ってどうやるの?と聞かれて答えてきたのだけれども,どうにもストレートに伝わる方法がなくて困った日々でした。照明を斜めからあてて物体を光らせて,照明光はレンズに入らないようにすれば暗視野になります,と説明しても聞いている方は混乱するだけといったことが多かったです。

それで説明方法を変えて,雪の降る夜にヘッドライトで降雪を照らせば雪は白いでしょ? これが暗視野です。昼間に空を見上げて降る雪を見ると,雪は空よりも黒っぽく見えるでしょ,これが明視野。こうやって説明すると,聞いている人はますます混乱するようでした。

そこでここ5年くらいは,背景に黒い紙を置き,手前にある物体を照らして光らせて,照明の光はレンズに入らないようにすると,バックが黒く,その手前で物体が明るく輝きます,という説明をすることにしています。これでだいぶ理解度があがったような感じです。

きょうの画像はおもちゃの液晶パネル顕微鏡の照明装置を改造して作った暗視野照明装置。分解したらLEDのリングライトが出てきたので,これをペットボトルのキャップに収納して,中央部には黒の植毛紙を置きました。LED部分には色補正用のフィルタと拡散板EB-04をかぶせてあります。物体はペットボトルのキャップの上にのせます。

このような工作により,「背景に黒い紙を置き,手前にある物体を照らして光らせて,照明の光はレンズに入らないようにすると,バックが黒く,その手前で物体が明るく輝く」ことになります。理屈がわかっていれば簡単なものです(画像/MWS)。



* 深夜まで査読のお仕事をしていたら更新しそびれました。一日遅れてしまいすみません。




2021年1月17日












きょうの画像は同一視野でクモノスケイソウの最表面からピントを変えていったもの。画像一枚目は最表面で格子構造となっています。ほんの少し送ると胞紋のスリット構造が出てきます。さらに少し送ると格子構造の裏側が見えています。さらに送ると全く異なる別の構造が出てきます。これは鉄筋で全体を補強するかのようです。さらに送ると放射状に太い骨組みが見えてきます。ビルの鉄骨のような役割に見えます。

このように光学顕微鏡では表面から裏側まで,ピントを変えるだけで珪藻の構造に関する情報を得ることができます。これは電子顕微鏡にない強みです。走査電顕では表面しか見えないので,内部の構造はわかりません。表側と裏側がわかるだけです。

光学顕微鏡で透明体をスライスして見るときには微分干渉顕微鏡も便利ですが明視野でもみえます。このとき,珪藻の屈折率と封入剤の屈折率をある程度近づけると,コントラストは低くなるものの,前後の像の重なりが薄くなり,解釈しやすい像にできます。きょうの画像は珪藻の屈折率1.43に対して,封入剤は1.52を使っています(画像/MWS)。








2021年1月16日






筆者の仕事が紹介されたYahoo!ニュースのコメント欄には,新たな書き込みがなされていて喜んで読ませていただいたのでした(こちら)。ながねんメールを通じて仕事をしてきた経験からいうと,このコメントが,誰が書いたのか分かる気がします。たぶん,こんな人です。

何でも自力解決するパワフルな人で,もとバイク乗りで,車中泊を厭わず,ワンコ多頭飼いもへっちゃらで,砂金掘りに行ったと思えば水晶拾いにも出向き,寄生虫に詳しくて,顕微鏡もカメラも扱える。スモークサーモンを自作し,ブログも可能な限り毎日更新してツイッターには毎日のお弁当をアップしている,宴会が大好き。まんじゅうこわい。高温に弱く夏は標高の高い別荘に逃げる。そんな感じの方の気がします。

たぶん当たっているだろうと。ありがとうね。

きょうの画像はそんな話題と少し関係のある,福音館書店さん。久しぶりの打ち合わせで出向きました。ふつうは出版が完了すれば編集者さんとは接点もないものですが,筆者専属の編集者さんはじつに細やかなに種々の対応を頂いています。今回は たかさき絵本フェスティバル というイベントでの展示に関する打ち合わせでした。

珪藻アートの実物展示をしたい,という,頼む方は気楽で,頼まれる方は蟹工船に乗せられるような気分のお仕事です(笑)。じっさい,この一言で筆者の時間がとてつもなく奪われました。しかし協力しないわけにもいきませんので,個人事業主の強み「賃金ゼロを受け入れればいくらでも時間は作れる」を発動し,ただ働きでみなさまに娯楽を提供しようとのこととなっています。

実際に展示ができるかどうかは未知数ですが,一応は,常設展示可能なJシリーズ専用顕微鏡は作りました。これから詳細を詰めて,うまくいけば,フェスティバルの会場でJシリーズの鮮明な像を見ることができるかもしれません。設置が完了できれば,続報でお知らせしたいと思います(画像/MWS)。








2021年1月15日




コゲラ工房さんのサイトに驚くべき画像が掲載されていた(こちら)。トリケラチウムのハニカム構造を拡大した画像なのだけれども,よくみると,ハニカム構造の六角形に混じって五角形が見える。五角形は六角形と組み合わせることはできないから,どこかで破綻が生じているはず…とよく見てみると,五角形のとなりに七角形があり,これにより平均値は6角形となり,破綻を回避している。

素晴らしい。珪藻の微細構造はエラーコレクション回路が組み込まれているのか。

そこで手持ちのトリケラチウムの画像を調べてみたのがきょうの画像。確かに五角形の隣は七角形になっている。そして周辺部は全部六角形でそろっている。中心部分の整合性をつけるために,わざと五角形と七角形を混ぜてサイズ調整しているのかもしれません。恐るべき自然の奥深さ。

それにしても,こんなことに今まで気づかなかったとは,自分の目のがいかに節穴だったかということで,うなだれるしかありません。少なくとも10年以上トリケラチウムをいじってきて,ずっと純粋な六角形によるハニカム構造と思い込んでいたのですから…。反省反省(画像/MWS)。








2021年1月14日(2)


【お知らせ】 本日1月14日の朝日新聞夕刊(全国版)にて,当サービスの仕事が紹介されます。文章はデジタルで配信された記事とほぼ同一と思います。紙面で入手したい方は,朝日新聞の販売店などでお買い求め下さい。 (文責/MWS)。








2021年1月14日




おもちゃの顕微鏡と格闘中…。この種の顕微鏡は低倍率領域の簡易観察には大変便利で,たとえば指にとげが刺さった,などというときにモニタを見ながら精密ピンセットでとげを抜くなどということもできるでしょうし,老眼には厳しいケシ粒サイズの電子部品をチェックなどというときにも威力を発揮するでしょう。

しかし…,珪藻観察に要求されるスペックは別次元なのです。しかもガラス板に封入されているのでガラス表面の反射光がレンズに入射しないような工夫も必要。照明を誤れば珪藻は全く見えません。ので,格闘中…となるのです。

新品で入荷したものですがこのままではとても使えませんので分解してしまいます。照明をどう改造できるかが勝負所です(画像/MWS)。








2021年1月13日






珪藻は大変種類が多く,最低でも数万種,ひょっとすれば十万種以上の種が存在するとみられています。このため,珪藻観察を永年つづけている人でも,「まだ見たことのない珪藻」はたくさんあります。そして高解像検鏡などで丹念にプレパラートをチェックしていくと,「はじめて見る珪藻」に出会えたりします。

きょうの画像がそんな例で,昨年末に検査板のチェックをしていて,ついでに手持ちの標本を精査したときに見つけたもの。初めて見ました。名前は調べていません。セラフォラとピンヌラリアを足して割ったような形態です。まだ一つの殻だけを見つけただけですが,比較的良い状態で封入されていたのでまともな絵にできました。画像横幅は約33μmです。小型といって良いサイズですね。

このような出会いがあるので,顕微鏡観察というのは継続すればするほど楽しいものになります(画像/MWS)。








2021年1月12日




解像限界の構造をイメージングするなら,まず均質液浸で検鏡できる標本を作り,できるだけ短波長で,それに対応した対物レンズを使い,高NAの対物・コンデンサの組み合わせで使い,コンデンサの照明側NAを構造に最適化することが必要です。もちろん,短波長での撮影ですから単波長で,モノクロのイメージングとなります。

しかしこのようなことができるのは,理想的な光源があり,理想的なカメラがあり,理想的な光学系を持っている場合の話で,現実にはそんな贅沢はできませんし,物理的に無理なこともあります。また,写そうと思っていた構造が案外大きく,解像限界まではいかない,というケースもあります。

このようなときは,画像のS/Nが最大になるように「バランスをとる」のです。露出時間を変えてみたり,白色光でカラーで撮影してみたりすれば,光量子量の増加に伴ってS/Nが改善するケースは珍しくありません。光量子量が増加すればISO感度を落とすこともでき,粒状性が改善してさらにS/Nが改善することもあります。そこのバランスを見極めるのです。

きょうの画像はクチビルケイソウの一種,Cymbella janischiiの被殻表面のスリット構造の再現を目標に,「バランスをとる」ことを意識してイメージングしてみたもの。標本は均質液浸にしています。『驚異の珪藻世界』をお持ちの方なら,走査型電子顕微鏡での観察像と何ら遜色のない画像になっていることが一目瞭然かと思います。

できあがった画像は,それまでの技術の積みたいなものです。像を結ぶ様々な要素があって,それらのパラメータを高次元で操ったときに最終的に優良な画像ができます。標本が悪ければダメですし,レンズが汚れていたらダメですし,ランプの心出しがおかしければダメですし,露出がジャストでないとS/Nが落ちますし,画像処理が適正でないと見苦しくなります。一つ一つの要点を確実に押さえていくと,最終的には,きちんとコントロールされた良い絵ができます。

高い技量をお持ちの方は,そういうことがさっさとできるのです。当サービスのお客様には,そんな方々がたくさんおられます。web上で素晴らしい顕微鏡イメージングを披露されている方の多くは,当サービスのお客様なのです。なぜか,きのこ関係者が多いのですが〜(画像/MWS)。








2021年1月11日




朝日新聞デジタルのサイトで当サービスの仕事が紹介されています(こちら)。Yahoo!ニュースでも紹介されています(こちら)。こちらはコメント欄がありますので,何か書き込んでいただければそれを眺めさせていただきます…。

文章と絵の選び方はさすが記者さんという感じで,長時間にわたる取材で得られた情報を見事に凝縮しているように感じます。細々と続けてきた仕事ですが,みなさまに新鮮な驚きを提供できれば幸いです。ぜひ,友人知人にも広めて下さいますと有り難いです(画像/MWS)。

追記:Yahoo!ニュースのコメント欄に書き込みをいただきました。たぶん顕微鏡を扱えて,ミジンコが好きで,研究者で,女性の書き込みに見えます。有り難いことです(^_^)。うれしいです。








2021年1月10日






クモノスケイソウの微細構造で画像処理の練習。いじるべきパラメータの数が多く組み合わせは膨大になるので,効果がありそうなものに絞ってちょこちょこ検討しています。原画が異なれば処理も変わるので,決まった設定というのはありません。見たい構造を抽出するような設定を考えるしかありません。ので,正解にたどり着くことはなさそうですが,十分な絵を作ることはできます。きょうの絵は,うーん,まぁまぁかな(画像/MWS)。








2021年1月9日






昨年の今頃は,こんな素敵な会場でヨコハマ海洋市民大学の講師をやっていたのです。筆者は講演,講義などは専門家の育成を中心に取り組んでいるので,一般市民向けの講演や講師は基本引き受けません。にもかかわらずヨコハマ海洋市民大学の講座を引き受けたのは,すこしの気まぐれと,申し込んできた人が「軽い気持ち」で打診してきたのではないことがすぐにわかったからです。

引き受けたからには全力投球するのが筆者流です。「重い気持ち」で申し込んできた人に失礼のないように,「想像以上の成果」をお土産にできるように頑張るしかないのです。

当日はなかなか良い雰囲気で,講演もこれなら合格点かな,と自己評価していましたが,他者評価はあまり聞こえてきません。事務局からは絶賛に近いお言葉をいただきましたが…。

それで一年前の出来事に感傷に浸っていると, こちら のようなページを見つけました。それによると,筆者の講演は「あっという間」だったとのことです。2時間の講演があっという間であったのなら,少なくとも苦行の時間ではなかったはずで,まぁよかったかなと安堵しました。

特別講義でも集中講義でも必ず匿名の授業評価アンケートを行っているのですが,10コマの講義でも15コマの講義でも,「時間を忘れた」「あっという間」「もっとやって欲しい」などという感想が必ず入っています。それは少なくともその方々にはプラスの成果があるはずで,筆者的には安心する言葉です。

「おもしろい」「つまらない」という言葉はそのまま信じるには軽すぎますが,「時間を感じなかった」という感想は「没頭できた」「興味深くて集中力が持続した」ということを意味しているので,筆者的にはよい判断材料になっています。

あれから一年,リアルの講演はむずかしい世の中になっていますが,まぁその間に力を貯めて,次の何かに向かって修行を続けることとしましょう(画像/MWS)。








2021年1月8日








珪藻の殻に刻まれている微細構造は顕微鏡を使えば誰でも簡単に見えるものから最高級の技量を必要とするものまでさまざまです。このため,初心者時代にはまったく見えなかったものが,年々,だんだんと,「こんな構造があったんだ」と見えてくる,イメージングできるようになります。百数十年以上前から,珪藻は顕微鏡の限界テストに使われてきましたが,これは,ユーザーの「技量テスト」でもあるのです。

永年,珪藻の微細構造を検鏡してきた筆者でも,つい最近見えるようになった構造もあります。どの構造にはどの方法を使えば良いのかは未知の世界なので,実験してみるより他はないのです。

きょうの画像は十数年前に作った標本を現在の技術でイメージングしてみたもの。製作時には見えなかった構造を見ることができ,標本をさまざまな方法ですみずみまで検鏡することの大事さを教えられた気がしました…。まだまだ修行が足りません…(画像/MWS)。








2021年1月7日






きょうは超小型の珪藻の例。画像一枚目の珪藻(の殻)は長さ5.5μmです。言い換えれば,0.0055mmです。1mmを100分割してさらにその半分です。バクテリアのサイズに近い大きさです。

画像二枚目の珪藻はさらに小さく4.8μmです。こんなに小さな生き物が,ガラスの殻を作る能力を持ち,分裂しつつ増殖しているということに自然の奥深さを感じます。生き続けるために必要な遺伝情報というのは,案外単純なものなのかもしれません。

それにしても,ここまで小さい生き物がガラスの殻を作る理由はどこにあるのでしょう。アメーバや原生生物にはひとたまりもなく食べられてしまいますし,ガラスの殻で身を守るシーンが思い浮かびません…(画像/MWS)。








2021年1月6日




まいにち珪藻の微細構造ばかり掲載しているのもアレなので,きょうは当室の鳥類調査員Aが撮影してきたメジロの画像。身近な鳥でよくみかけますが,こんな絵を撮るのは簡単ではありません。Nikon1J1でここまで写す調査員Aの忍耐に感心したのでした。鳥を写すのは技術もあるけれどもチャンスをものにする忍耐が大きいのです(画像/MWS)。








2021年1月5日






顕微鏡で解像限界ぎりぎりの構造を狙うというのがどういうことか,知っている人は少ないと思います。顕微鏡の像は光波の干渉によりコントラストが生成される世界であることは肉眼の世界と同じですが,解像限界付近になると,コントラストが失われていくのです。構造が限界に近づくにつれて,その構造のコントラストが低くなり,ついにコントラストがゼロになる点が解像限界となります。

すると自ずと重要なことは画像処理,ということになります。人間の目のコントラスト認識には限界があります。しかしデジタル素子であれば,そこに入射する光子数の違いとして数値化できます。数値化された像に数値上の違いがあれば,適当な演算をすることによってその違いをいくらでも引き延ばせます。

きょうの画像は解像限界付近の微細構造(コアミケイソウの一種の被殻,表面の構造)を対象に,画像処理の有効性を示したものです。画像一枚目は撮影画像の縮小のみ。画像二枚目は微細構造の抽出とレベル補正,シャープ処理を行っています。みたところ何もなさそうな画像からこれだけの構造を抽出できます。

この方法を行うのに問題となるのは,撮影時に構造がほとんど見えないので,どこにピントを合わせるかが迷うことです。ピントの移動量も当然0.5μ以下になりますので機材を扱い慣れていることはもちろん,温度管理など様々な配慮が必要になります。しかしそういったことは日常のことでもあるので,慣れていればそんなに難しいことでもありません(画像/MWS)。








2021年1月4日








光学顕微鏡で珪藻被殻を観察すると殻の表も裏側も見えます。光が透過するから当たり前のことですが,これは情報量としては有利なのです。きょうの画像一枚目はコアミケイソウ(Coscinodiscus)の一種ですが,画面中央から右側にかけて,この仲間に特有の殻表面にある微細な構造が見えています。画面左側は殻の内部構造が見えています。走査型電子顕微鏡では決して見ることのできない風景ですが,内部構造と表面構造が同時に見えているので,分解能の問題は別として,Z軸方向の情報も得られているという点では光学顕微鏡の方が情報が多くなっています。

画像二枚目はプレウロシグマの仲間の表面構造。中央付近の縦溝の表面を撮影しています。ここからピントをわずかに殻の内部に合わせると画像三枚目になります。殻の内部では表面とは異なる縦溝の末端処理がなされていることがわかります。電子顕微鏡では一方向からの表面しか見えませんので,このような風景は見ることができません。

光学顕微鏡でみた殻の裏側は,裏面から見た場合の鏡像になっています。現代では簡単に画像処理で鏡像にできますから,裏面から見たような形で表現もできます。こういったことも頭に入れて顕微鏡観察やイメージングを行うと,いろいろな気づきがあるかもしれません(画像/MWS)。








2021年1月3日










クチビルケイソウ近縁種とか,フナガタケイソウ近縁種はいろんなタイプがあって,全体の形態が似ていても微細構造を見るとまるで違うということもあります。通常,このような細かな違いは電子顕微鏡で調べるのです。でも光学顕微鏡でも十分に違いが解像できる例も多いです。『驚異の珪藻世界』には走査電顕での微細構造がたくさん掲載されていますが,筆者には過去20年ちかく光学顕微鏡で見てきた構造が数多いです。きょうの画像はそれらの一例を示すことにします(画像/MWS)。








2021年1月2日




元旦は持ち運び用の顕微鏡整備の一日でした。中古機材を利用してLEDによる暗視野照明可能な顕微鏡を一台作り上げます。全分解整備に匹敵するので丸一日かかりました。。正月らしいことは何一つしないふつうの一日でした。

きょうの画像はクモノスケイソウの胞紋構造。きのう掲載した絵はヒストグラムを引き延ばした程度の絵ですが,それを素材にいろいろ画像処理を施して細部がよく見えるようにしてみたものです。ふしぎな形にうねうねするスリット構造が解像されていて,『驚異の珪藻世界』で答え合わせをしてみても,うん,OKだねといった感じの絵になっています。

この画像は可視波長での撮影(λ=443nm)で,機材も顕微鏡は研究用ですがカメラは民生品です(Nikon1J5)。これを出発点として光源やカメラを工夫すればさらに解像できます。が,ちょっとした出費になるので,当室ではこの程度の機材で限界を追求することが多いです(画像/MWS)。








2021年1月1日
































クモノスケイソウ(Arachnoidiscus)は大きく厚みがあり複雑な構造をしています。内側の殻と外側の殻で構造に違いがあります。胞紋もいろいろなバリエーションがあります。きょうの画像はクモノスケイソウの殻をたくさん集めて表裏にマウントしたサンプルで高解像検鏡を行い,『クモノスケイソウ探検』を行ってみた結果です。

東京では新型コロナの感染が激増している状況ですが,こんなときこそ顕微鏡観察はまことによろしいものです。家から一歩も出ずに小さな小さなガラスの世界を探検しているとすぐに一日が暮れてしまいます。そして新たな発見があり,技術の確認にもなり,珪藻の構造を観察することにより日常のストレスも和らぐのです(画像/MWS)。









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