携帯顕微鏡H型(model H)
ミクロワールドサービス『本日の画像』に掲載した携帯顕微鏡H型(日本光学工業,当時)の記事を抜き出してまとめたページです。 2016年1月21日
紫外線顕微鏡というと,なんだかおどろおどろしいムズカシイものというイメージをお持ちの方もおられるかもしれません。けれども,ぜんぜんそんなことはなくて,可視光の代わりに紫外線で見た,というだけのことです。学者先生の中には,ちょっと変わったことをしただけで,「これは特殊な方法」などと言って自分がいかに専門家であるかを振りかざそうとする人がいるので注意が必要です。いちいち「特殊な方法」などと言わずに,ふつーのことです,当たり前のことです,と言っていれば,ふーんそうなんだ,ということになって技術も知識も普及していくのです(*1)。 2016年1月20日
顕微鏡は光学理論に基づいて作られた機器ですから,その理論にしたがって操作すれば,目的の絵が得られます。きのう,おとといと載せたギョロメケイソウ(Auliscus属)の目の部分を,携帯顕微鏡H型で,もっと解像しようとするならば,あと残された道はコンデンサを液浸にすることです。で,やってみたのがきょうの画像。そこいらへんに転がっていたツァイスのAcr-Aplコンデンサをグリセリンで液浸にしています。対物レンズはNA=1.25の油浸用をグリセリン浸で使っています。照明は紫外線LEDライトで波長ピークは365nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は5枚コンポジットで,最大エントロピー法で軽く画像復元をかけています。コンデンサ液浸の偏斜照明によって,きのう,おとといの絵よりも微細構造のコントラストが上がっていることが一目瞭然です。こうして,できることをやって欲しい像を得る,これが光学顕微鏡です(画像/MWS)。 2016年1月19日
これはギョロメケイソウ(Auliscus属)の別の個体(被殻)の目の部分。何か構造があるぞという感じには解像していますが,完全に構造が見えているわけではありません。撮影は携帯顕微鏡H型で,乾燥系のアッベコンデンサ。対物レンズはNA=1.25の油浸をグリセリン浸で使っています。照明は紫外線LED5mmφで波長ピークは371nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は5枚コンポジットで,最大エントロピー法で軽く画像復元をかけています。顕微鏡を究めるには,こういった,その対物レンズでぎりぎり解像する寸法の構造を撮影して練習するのが効果的です。そのためには,珪藻はよい材料なのです。そんなマニアックなことをして何の意味があるの?と思う人もいるかもしれません。しかし顕微鏡を少し勉強するとすぐにわかるように,解像限界ぎりぎりを撮像できる人は,それより多少でも余裕のある寸法のものを撮像すると,すばらしい切れ味の画像を得られるのです。そのことは対物レンズのMTF曲線を見ても明らかで,これを理解していれば当たり前の練習ともいえるので,マニアックでも何でもないのです(画像/MWS)。 2016年1月18日
これはギョロメケイソウ(Auliscus属)の目の部分。電子顕微鏡的には細かい孔が密集しているのですけど,光学顕微鏡でも限界的なイメージングを行えば見えます。きょうの画像では放射状の模様がうっすら見えている程度ですが,携帯顕微鏡H型で,乾燥系のアッベコンデンサしか使えない状況の絵と言えば,許してもらえるかもしれません。対物レンズはNA=1.25の油浸をグリセリン浸で使っています。照明は紫外線LED5mmφで波長ピークは371nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は25枚コンポジットで,最大エントロピー法で軽く画像復元をかけています(画像/MWS)。 2016年1月16日
携帯顕微鏡H型は,ひょっとすると,もっとも紫外線顕微鏡に適している機種かもしれません。コンデンサ油浸が簡単ではないことを除くと,あとはよい点が目立ちます。電球の口金をLEDの差し込み式にして,内部に定電流回路を仕込んでしまえば,あとは市販のLEDを交換して使うだけで,各種波長対応の先端的な顕微鏡に生まれ変わります。必要な工作技術は中学生レベルのハンダ付けくらいです。内部の長大なプリズムは,この時代のことですから,まずBK7でしょう。ならば365nm程度の波長であれば吸収は無視できます。 2016年1月15日
珪藻は同じ種なら被殻上の構造は同じなので,いつも同じような画像ばかりになってしまいます。新しい鮮度の高い画像でも,どこかで見たことのある絵だ,と思われてしまいがちです。きょうの画像の珪藻(プレウロシグマの一種)も,皆さんは何度も目にしているものです。けど,これを撮影するのに使った機材は『携帯顕微鏡H型』で,液浸対物レンズを使って,紫外線LED照明(λ=371-376nm)を施していると言ったなら,少しはふふんと思ってもらえるかもしれません…。9枚コンポジットしてレベル調整,ビニング以外は何もしていない絵です(画像/MWS)。 2015年8月31日
きのう紹介した撮影システムから,Cマウントエクステンダーを外して撮影すると,一枚目のような絵が得られます。鏡筒長は合っているので,像質は問題ないのですが,もともと1/3インチ程度のCマウントカメラに投影するためのアダプタですので,Nikon1の一インチ素子ではケラレてしまいます。ケラレの感じも,顕微鏡を覗いている感があって味わいがありますが情報量的には損をしているのでもったいない気もします。画像二枚目はエクステンダーをつけて撮影したもので,Gチャンネルを取り出したものです。文句のない写りです。これだけ拡大すれば,画素に微細構造を十分のせることができ,サンプリングの定理的にも,分解能が犠牲になることはありません。しかし拡大しすぎると,視野が狭くなりますので,対物レンズが生み出している情報の一部しか利用していないということになります。それも情報欠損です。分解能を活かしつつ視野もある程度広く取れるようなバランスのとれた倍率を見つけて設定するのが腕の見せ所ともいえます(画像/MWS)。 2015年8月30日
これまで携帯顕微鏡H型でカラー撮影するときは,ニコンクールピクス99x系でコリメート法を多用していました。モノクロ撮影ではCMOSのUSBカメラでパソコンを使って画像取得していました。しかし近年,手持ちの撮影用機材はNikon1系が増殖中ですので,これを携帯顕微鏡H型に使えるようにしなければなりません。方法はいろいろありますが,もっとも簡単で,コンパクトで,光学的にもエレガントな方法が良いのです。こたえの一つがきょうの画像。エドモンドの顕微鏡用Cマウントアダプタに,Cマウントのエクステンダー(リレーレンズ入り)を装着し,Cマウント経由でNikon1に持ち込んでいます。撮影結果が二枚目の画像で,H型は純正そのままでニップル球照明,ホワイトバランスプリセットで,40倍対物レンズを用いてリモコン撮影しています。標本はOTK-01。軸上色収差も,倍率色収差も,この機材としては完全に補正されており,移動用機材としては文句のない絵となっています(画像/MWS)。 2015年8月29日
真夏の夜の夢…(画像/MWS)。 2015年1月15日
昨年中頃から携帯顕微鏡H型の一台が点灯しなくなってきて修理待ちだったのですが,時間がなく,年越ししてしまいました。ようやく作業の合間にメンテナンスしたので備忘録を記します。修理したのはDC-DCコンバータ(20mA)を内蔵してLED化してあるもので,本ページの2010年11月で電池室の電気接点の修理について記しています。このとき修理した部分と反対側の電池室の調子が悪いようで修理となりました。 2014年9月29日
LBB-12の重要な使い方を,きょうの画像で示しました。所有者には周知のように,ニコンの誇る携帯顕微鏡H型は光源として2.2V,0.25Aのニップル球を使っているのです。これはもちろん,タングステンランプですから,フィラメント温度に応じた黒体輻射に近い連続スペクトルで,やや赤みを帯びた光なのです。これに富士フィルムのLBB-12を装着すれば,きわめて良好な色温度の補正ができます。じつに素晴らしい白色光になるので,いつまでも覗いていたい気がします。本ページをご覧頂いている方々であれば,携帯顕微鏡H型の一台や二台は持っている方がおられるでしょう。高価なH型を所持している方々なら,LBB-12は紙切れ一枚くらいの価格で買えます。素晴らしい色補正でH型を使えるのですから,プロショップへ急げ急げ(画像/MWS)。 2014年9月6日
携帯顕微鏡H型をLED化していることはこれまでも述べてきましたが,昨年からは電球色LEDも導入しています。本ページでは繰り返し述べているように,白色LEDの強い光は,その青成分が特に目に悪いのです。顕微鏡は,光源を直接のぞくような光学配置なので,網膜を傷めるような光源は極力避けなければなりません。安全に覗く方法は,まぶしさを決して感じないようにすることと,青色光をある程度カットすることです。 2014年9月5日
常用している携帯顕微鏡H型(ニコン)のミラーがゆるくなってきたので困っています。カシメのようなのですが,締め方がわかりません。一人で見る分には何の問題もありませんが,多人数で顕微鏡を回して,供覧顕微鏡的な使いかたをするときは,ずれると見えが悪化するので困ります。当面の処置として,薄いシリコン板を金属板との間に挟みました。これで見栄えも悪くなく,普通に使えます。コレクター気分的には完全修理したいところですが,筆者は実用機として使っているので,まぁこれでもいいか,そんな気分です(画像/MWS)。 2014年3月21日
20日は若い研究者の訪問を受けました。写真集『マイクロスコープ』も持っているという顕微鏡大好きな方でしたので,当然,顕微鏡の午後となったのでした。滞在時間は短かったのですが,顕微鏡の話はツーカーで通じますので,話に無駄が生じず,とても楽しい時間を過ごしました。ここのところあまりの忙しさに追いつめられており,体調も急低下してきたところだったので,久々の顕微鏡談義は願ってもないカンフル剤となったのでした。画像は携帯顕微鏡を紹介したときのもの。顕微鏡に深い愛をお持ちの方には,こういった貴重な機材も自由に使ってもらっています(画像/MWS)。 2014年3月3日
微化石研究集会MRC2014に出席してきました。招待講演で,内容はどんな話をしてもよい,約30分の講演時間という贅沢な依頼を拝受しまして,それだけでも有り難いのに,ポスター会場でもボード一つをご用意いただき,さらに机一つと,顕微鏡(BX51P),28インチプラズマディスプレイを用意しますので販促に活用下さいとの,最上級の待遇を受けまして,久しぶりに本気で口頭発表する気になり,2月は準備に明け暮れたのでした。 2013年9月15日
ニコン携帯顕微鏡H型はフィールドで使われることも多いので汚れやすいのです。この個体は海水検鏡をしたあとにそのまま放置されたようで,ガイドレールが錆びてしまい,クロムメッキが浮き上がっています。これでは標本が引っかかって検鏡上問題があるので分解修理です。慎重に慎重にネジを外し,ガイドレールを外します。真鍮にクロムメッキの精密な部品です。これを砥石で研磨してサビを落とし,うまくいかない部分は耐水ペーパーで錆を落としてから水洗いします。ネジ用の孔はこよりで掃除してきれいにします。 2013年9月14日
電池室の修理が終われば,次はプリズムの清拭が待っています。さすがに40年も経過すると完全にきれいな状態のものはほとんどなく,うっすらと曇っていたり,ホコリは入り込んでいたり,カビが生えたりしていることが多いのです。この個体の場合はかなりきれいな状態でしたが,チリはいくつも見えましたので外して整備となりました。プリズムを押さえつけている金属プレートを外そうとネジを回すと,ネジがポロリ…。 2013年9月13日
日本光学の誇る名機,携帯顕微鏡H型は昭和30年代から50年代にかけて販売された機種が未だに中古で高値取引されています。未使用のものは滅多になく,ほとんどが酷使されて使用を終え,廃棄の運命にあったものを拾われてというパターンかと思われます。表で見えるところでは,拾われたあとでオークションへという流れが多いでしょう。この顕微鏡は単三乾電池を使用しますので,これを入れっぱなしにしたことによる液漏れが頻発し,電池室には液漏れの形跡があるものがかなり多いことは以前にも書きました。この液漏れにも色々なパターンがあって,横に寝かせたまま液漏れしたものは電池室内部を広く汚損,縦置きしたまま液漏れしたものは電池室から下部にかけて端子を汚損,といったことになります。 2013年8月20日
携帯顕微鏡は野山に持ち出して使うので,手入れを怠れば劣化が進むことになります。特に海水の検鏡に使ったあとは,入念に水拭きをしておかないと,数年後に後悔することになります。海水試料の検鏡では,海水を汲む必要がありますし,容器に入れる必要がありますし,沈殿をピペットでとって検鏡する必要もあります。海水の飛沫が顕微鏡に飛ぶのは必然で,顕微鏡を操作する手も海水が付着していることが珍しくありません。したがって目で見てなんともなくても,水拭きして手入れをしておくことが大事なのです。きょうの画像は海水試料を検鏡した後に放置されたと推測される携帯顕微鏡H型です。ステージの部分が相当に腐食していてメンテナンスを要する状態です。このH型にはニップル球の変わりに豆電球が装着されていました。使用説明書すら読まない人が使うと,高価な道具もこのようになってしまうという見本なのかもしれません。道具はときどき取りだして使い,メンテナンスして良好な状態を維持することが最も望ましいのですが,そのために大事なことは,最低でも使用説明書を繰り返し読んで理解することです。ニコンのこの時代の使用説明書はとてもよく書かれていて,手抜きが感じられません。繰り返し読む価値はあります(画像/MWS)。 2013年7月26日
忙しくて更新の時間がとれません…。そういうときには画像だけでも面白いものを。少し前に携帯型の顕微鏡が集結したので記念撮影したのです。どれも道具として使い込まれている感じで,いまにも動き出しそうな風格があります。特に携帯顕微鏡H型は出航を待つ軍艦のような面構えです(画像/MWS)。 2013年7月4日
日本光学の誇る携帯顕微鏡H型は堅牢そのもので一世紀に渡って使用可能な機種と考えています。しかしこの機種にも泣き所があって,それは乾電池を使うことにより,液漏れが起きて,本体が腐食してしまうことです。きょうの画像は腐食の一例です。ふだんは底部のカバーに隠れていて見えない部分なのですが,カバーを外せばご覧の通りです。H型には,一説には5層とも言われるきわめて上質な塗装が施してあって,その仕上げはとても素人が真似のできるものではありません。筆者が取得したときにはすでにこの状態で,補修は難しいのでそのまま使っています(特に問題はありません)。携帯顕微鏡H型をお持ちの方は,使用後は電池を外して保管することを強く推奨致します(画像/MWS)。 2013年6月22日
携帯顕微鏡H型は比較的メンテナンスしやすい機種ですが,レボルバ周りは巧妙な設計で調整がかなり難しい気がしています。レボルバ全体は2本の並行バネによって本体に固定されていますが,この固定部分は隠しネジになっていて,シボ革をはがさなければなりません。じつに厄介な作業です。しかもネジが深部にあり,電池室に液漏れの履歴などがあると,まともにネジが回る保証もありません。大事な機種に一か八かの作業をしたくないものですが,光軸ズレなどの故障が発生した場合はやるしかありません。竹を削ってヘラを作り,シボ革を少しずつ伸びないように,傷めないように注意しながらはがします。隠しネジが見えたらドライバーを突っ込んでみて,ネジに適合しているかどうか感触をみます。深いところにあるので目視の確認はできません。感覚で勝負の世界です。じつに気を遣う作業です。画像は隠しネジに到達するための孔です(画像/MWS)。 2013年5月27日
製造から四十数年を経ても調子よく見えるニコン携帯顕微鏡H型ですが,何カ所か経年による動作の変化が出やすい場所があります。きょうの画像がその一つで,採光用のミラーの付け根にあるヒンジです。これがゆるくなってきて,ミラーがカクカクと動くようになってしまうことがあります。ヒンジのピンは両側ともに中央が凹んでいるだけです。ミラーを動かしてもピンは動きません。このヒンジのピンはどうやって締めるのでしょう。筆者にはまったく思いつきません。誰か知っている方,いませんかー(画像/MWS)。 2013年5月24日
「いつかは手に入る」と念じ続けると,まったく予想もしなかった方面から光が射してきて,ついには手元に転がり込んでくる,ということを昨年10月19日に本欄で強調したところでありましたが,あれから半年以上を経て,また光が射してきました。だいぶ昔のレンズで,当時の販売価格も大したことはなかった代物なのですが,なぜか縁がなく,欲しいと思ってから十数年の月日が経ったのでした。これが突然,レンズの方から筆者のところまでやってくるのですから巡り合わせというのは不思議です。やや濁っていて,拭いてみても濁りが少し残りますがそんなことは全然構いません。まずは入手できたことを喜びたいと思います。お取り計らいを頂きました方には心より感謝を申し上げたいと思います(画像/MWS)。 2013年1月17日
16日夜は近所の大学でサイエンスカフェの講師でした。サイエンスコミュニケーションの講義の一環として,受講生がサイエンスカフェを企画して実践する一コマがあるのですが,その受講生からお呼びがかかりました。できるだけ珪藻を見せて欲しい,という注文でしたので,十数名の参加者に4台の顕微鏡を用意して,それぞれに特徴的な標本をセットしました。左から順に,千代田MKQ(暗視野照明,CF Plan 10x, CF Plan 20x, CFW10x)でJシリーズ二枚(ツリー,多種類),エリザ簡易顕微鏡(MWSよくみえる改造,CFW10x)二台でクチビルケイソウ,クモノスケイソウ,携帯顕微鏡H型(HKW8xセット)で生きている淡水付着珪藻をご覧頂きました。時間が限られるイベントのときには,全ての準備を整えて,メガネを外さなくても楽に観察できるハイアイポイント接眼を揃え,可能な限り鮮明に見えるレンズの組合せで標本をご覧頂くのです。実際に覗いてもらえるのは長くても数十秒でしょうから,その間に印象に焼き付くような像を準備するのです(画像/MWS)。 2012年11月7日
携帯顕微鏡H型の記事をまとめたのですが,リンク切れでしたので修正しました。 2012年10月30日
ミクロワールドサービスはあまりにもマイナーな存在なので,一般の人はまったく認知していないことと思います。しかしながらインターネットの時代ですから,検索などで『本日の画像』をみつけて,それ以来,あまりの素晴らしさに毎日見ているという方もおられるかもしれません。どんな検索用語で飛んでくるのかは筆者には想像もつきませんが,一部の方々については判明しています。けっこう多いのが「丸尾山砥石」ですね。砥石のページに反響があったりします。ほかには「珪藻」は普通として,「携帯顕微鏡H型」などというものもあります。 2011年8月4日
今回の出先では,試料を顕微鏡で確認したかったので,日本光学の誇る携帯顕微鏡H型を持ち出しました。この顕微鏡には手製のホールスライドグラスや交換式のLED照明,コリメート撮影用レンズを装備していて,現場での顕微鏡写真撮影にも対応しています。東京湾の青潮発生直前の現場から,表層海水を2リットルほど汲んだのですが,これを目の細かい洋服の布地で1リットルほどろ過して濃縮した試料を検鏡してみました。珪藻がたくさんいるのは当然として,今回は鞭毛藻も活きのよいのがたくさんみられました。どちらかといえば鞭毛藻は夏場がシーズンです。上の画像は携帯顕微鏡H型を用いて出先で撮影したプランクトンです。真ん中のカッコイイ奴は,プロトペリディニウムという名の鞭毛藻だと思います(画像/MWS)。 2011年8月6日
紫色レーザーは405nm±10nm程度の波長純度なので,蛍光顕微鏡のV励起に最適な感じです。この波長では,多くの植物の葉緑体を効率的に励起することができ,クロロフィル由来の赤色蛍光を観察することができます。この赤色蛍光を検出すれば,いっけん生物がいないように見える試料の中に隠れている藻類などを簡単に見つけることができます。そこで,入手した100mW紫色レーザーと,日本光学の誇る携帯顕微鏡H型を使って,蛍光顕微鏡の配置で撮影してみました。レーザーは対物レンズの開口数よりも大きな開口角で照射して斜光暗視野の配置とします(上の画像)。接眼レンズの中には420nmのシャープカットフィルタを仕込んで,多少残存するレーザーの光を遮断します。透過蛍光顕微鏡の基本的な配置ですが,使ってみてびっくりです。下の画像のように,ひじょうに鮮明な赤色蛍光が確認できました。 2011年1月8日
秋頃から慢性的に忙しく,いろいろな作業が並行して進んでいる関係もあって,机の上がすぐにゴチャゴチャになってしまいます。普段は実体顕微鏡と蛍光顕微鏡を取っ替え引っ替え使っているのですが,どちらも大きいので机を整理しないことには使えません。こんな時に活躍するのが携帯顕微鏡です。えーとこのプレパラートは何だっけ?というときに,30kgもある顕微鏡を覗くのはちょっと面倒ですし,ラベル貼りの作業中などは大きな顕微鏡が置けません。でも,携帯顕微鏡H型であれば,書類に埋もれた机でも検鏡ができます。じっさい,外出時に持ち出すよりも,部屋の中のあちこちで使う方が遙かに多いのです。皆さんも小型顕微鏡を活用してみてはいかがでしょうか(撮影/MWS)。 2010年11月14日
顕微鏡はヒトの網膜やフィルムやCCDに像を投影する光学系ですので,とうぜん,紙やスクリーンにも像を投影できます。光源が明るく,部屋が暗ければ,白い紙などに投影された像が鮮明に見え,皆で観察できます。上の画像は携帯顕微鏡H型に超高輝度白LED(NSPW500GS-K1)をセットして,紙に像を投影したところです。もちろん,ふつうの生物顕微鏡でも同じことができます。プリズムやミラーなどを使って光路を曲げれば観察もしやすいでしょう。こういう遊びをまだやったことのないひとは,早速やってみましょう。白い紙を用意して,部屋を暗くして,ピントを合わせてみてください(撮影/MWS)。 2010年11月8日
顕微鏡の性能を検査するには珪藻プレパラートが便利です。きちんと設計され調整された顕微鏡であれば,収差の除去された気分のよい絵を見ることができ,照明法を工夫して解像限界付近の撮像を試みればレンズの性能もわかります。と,いうことで整備が済んだ携帯顕微鏡H型に青緑色LED(505nm)を装着し,モノクロCCDで珪藻プレパラートを撮像しました。上の画像が撮像の様子で,下の画像が等倍切り出し(無加工)です。短波長・単色光照明とモノクロCCDの効果,それに顕微鏡の設計の良さから,すばらしい像が得られます(撮影/MWS)。 2010年11月7日
携帯顕微鏡H型のクレンメルねじ折損は,にわかに筆者の人生を暗くしました。やはり大事なものが壊れるのは,目の前が暗くなるのです。しかし壊れた瞬間から対策は始まっています。ネジコレクションから適当なネジを探すことから始まり,それが無駄だと判明すると,どうにかして修理できないか,できることなら,元通りにならないかを考え続けます。きょうはその備忘録です。 2010年11月6日
電気系の調子がよくなった携帯顕微鏡H型の最終調整をしようと,標本押さえ部分のたわみを修正していたときのことです。力のかけかたを誤り,しまったと思った瞬間,ぽろりとクレンメルが落ちました。小学生のころ,大事な宝物を壊してしまったときのような残念な気持ちが全身を駆けめぐり,取り返しのつかないことをしてしまったことを教えてくれます。何が起きたのか見てみると,ステンレスのプレートにクレンメルを固定するためのネジが折れています。このネジは真鍮削り出しでクロムメッキされている凝ったもので,クレンメルの固定と摺動性の確保,クレンメル移動時の取っ手,外観の装飾も兼ねています。同じネジを入手することは不可能です。ステンレスのプレートに残ったネジは,超硬チップで中央にすり鉢型の穴を掘り,そこにマイナスドライバーを噛み付かせて回し,抜きとりました。しかし残った真鍮ネジをはめてみてもまったく固定できません。これまでどこも欠損のなかったH型なのですが…。絶体絶命の大ピンチです(撮影/MWS)。 2010年11月4日
一枚目の画像に示す照明装置も携帯顕微鏡H型とともに持ち歩いています。非常用照明?と思った方もおられるかもしれません。違うのです。画像二枚目,三枚目を見るとお分かりいただけるかと思いますが,これは偏斜照明用の光源です。顕微鏡のミラーに紙製のホルダを挟むと,ちょうどNA=0.65に対して偏斜照明の位置に光源を固定できます。このときの結像は画像に示した通りで,明視野光束と暗視野光束が混ざった偏斜照明になっています。この条件では対物レンズの分解能をフルに活かすことができ,また,微分干渉に類似の(しかし被写界深度は深い)上品な像を結びます。100円の簡易照明ですが,こういった工夫は価格以上の価値があると思います。 2010年11月3日
筆者の携帯顕微鏡は照明光源として各種の5mmφLEDが使用可能になっています。20mAの定電流駆動です。電球のソケットには,E10口金を改造してLEDソケットにしてあります。なんでこんな面倒なことをしているのかというと,まだE10口金のLEDが売り出されるよりもかなり前から,LED化の改造をしていたからです。現在では,電池2本で点灯可能な白LED(E10口金)も売っていますから,何の改造もなくLED化できます。 2010年11月2日
携帯顕微鏡H型の修理をしましたので備忘録です。この機種を入手してからというもの,電池ボックスの接触不良にはずっと悩まされてきました。全分解して組み直せばいいのはわかっているのですが,数年以上が経過し,ついにきょう電源部分の分解修理を行いました。 2010年9月16日
サンプリング現場で,どうしても検鏡したいケースがあります。そんなときに活躍するのが簡易顕微鏡です。ふつうの正立型も使いますが,荷物を少なくしたいときには携帯顕微鏡を選びます。この顕微鏡(携帯顕微鏡H型)は倒立型の構成で,カバーグラスを対物レンズ側に向けて使います。そのため,スライドグラス中心部をくり抜き,そこにカバーグラスを接着した専用のチャンバーを使います。チャンバーに数滴の試料水を垂らして水面をほぼ平面にすれば,そのまま簡易検鏡が可能です。この現場でもそのように検鏡しました。顕微鏡を取りだして三脚に装着し,試料をセットして40x,100x,400xで検鏡し,チャンバを洗って収納し,顕微鏡を仕舞い込むまで約5分です。画像の携帯顕微鏡H型(日本光学製,当時)は中古品でも滅多に入手できないものですが,現在はダイコーサイエンス株式会社から本格的な携帯顕微鏡が販売されていますので,それを選ぶのも一つの選択かと思います(撮影/MWS)。 2010年2月7日
日本光学の誇る携帯顕微鏡H型の調子が悪くなったので分解修理しています。この顕微鏡はとても堅牢なのですが電気系の接点だけは経年変化を免れることはできず,時々メンテナンスしなければなりません。完全に直すには同じスイッチを入手して配線部分を全交換したいのですが,ちょっと手間がかかります。今回はその下準備ということで,白LED仕様に改造してあったものを元に戻し,光学系も清掃しました。筆者はこの顕微鏡を使うために入手したので,けっこう酷使されています。出始めのカビやホコリを払ってキレイになると,見えには関係なくとも気分がすっきりしますね(撮影/MWS)。 2008年5月28日
顕微鏡を持ち歩かねばならない作業がいくつかあります。生きている珪藻の採取などでは,とりあえず採取して持ち帰り,試料処理後に検鏡することで間に合うことがほとんどです。しかし化石の採集となるとそうはいきません。珪藻化石に見えても,石英が主体の鉱物だったり,火山灰だったりということがよくあるのです。筆者も何度か,珪藻化石と間違えて火山灰を持ち帰ったことがあります。珪藻化石の採取には顕微鏡が欠かせません。 2007年9月25日
ひとくちに光学顕微鏡といっても様々な種類があります。工業製品として人々の間に浸透してから約100年の月日がたちますが,その間には惜しまれつつ生産終了になったものもあります。画像は日本光学(現ニコン)が1958年に発売を開始した携帯顕微鏡H型です。ボディーに3本のレンズが内蔵されていて,下側から覗く倒立顕微鏡の構成になっています。コンデンサは開口絞り付きで,スライド切り替え式によりハネノケコンデンサと同等の機能を実現しています。専用レンズを使用すれば油浸も可能です。倒立型なので一般検鏡はもとより,プランクトンなどの水試料検鏡に向いています。生産中止からン10年,発売開始から50年になる現在でも,本機種は顕微鏡愛好家の間で高い人気を誇っています(撮影/MWS)。 Copyright (C) 2012 MWS MicroWorldServices All rights reserved. (無断複製・利用を禁じます) 本ページへの無断リンクは歓迎しています(^_^)/ トップに戻る |