画像のご利用について





携帯顕微鏡H型(model H)

ミクロワールドサービス『本日の画像』に掲載した携帯顕微鏡H型(日本光学工業,当時)の記事を抜き出してまとめたページです。









2016年1月21日


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紫外線顕微鏡というと,なんだかおどろおどろしいムズカシイものというイメージをお持ちの方もおられるかもしれません。けれども,ぜんぜんそんなことはなくて,可視光の代わりに紫外線で見た,というだけのことです。学者先生の中には,ちょっと変わったことをしただけで,「これは特殊な方法」などと言って自分がいかに専門家であるかを振りかざそうとする人がいるので注意が必要です。いちいち「特殊な方法」などと言わずに,ふつーのことです,当たり前のことです,と言っていれば,ふーんそうなんだ,ということになって技術も知識も普及していくのです(*1)。

21世紀の現代では,紫外線LEDなど,容易に入手できますし,各種の光学データも揃っているのですから,それらを読み解いて,紫外線で使える機材を選んでイメージングすれば,紫外線の絵が得られる,ただそれだけのことです。紫外線顕微鏡は100年以上の歴史がありますし,可視光からほんの少し外れた程度の波長でイメージングする程度なら,特別な材料も必要ないので,特別視することもないでしょう。

きょうの画像は紫外線によるギョロメケイソウの絵。顕微鏡は携帯顕微鏡H型で,対物レンズは40倍(NA=0.65)のアクロマートです。コンデンサはアッベの乾燥系。照明は5mmφの紫外線LEDで波長ピークは371nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は20枚コンポジットで,背景減算,コントラスト調整をしています。約50年ものの古い顕微鏡でも,このような絵が得られます。もし現代の顕微鏡でこのような絵が得られないとすれば,それは何かが間違っているのです(画像/MWS)。



*1 むかし何かを読んでいたときに,暗視野法という特殊な照明法という記述にぶちあたったことがあって仰天しました。照明光が背景光にならないようにしているだけで,何も魔法を使ったわけでもありません。暗視野法というのは顕微鏡と同じくらいふるい歴史のある方法です。教科書にもふつうに書いてあります。メーカーさんも,むかーしから普通に暗視野コンデンサを販売してきました。アマチュアは自作するのが通例でしたし,筆者は大学院の頃から紙を丸く切ってコンデンサの下に置いて暗視野にしていました。こうするとバクテリアがよく見えるのです。何をどう考えると暗視野が特殊な照明法になるのか,よくわかりません。。




2016年1月20日


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顕微鏡は光学理論に基づいて作られた機器ですから,その理論にしたがって操作すれば,目的の絵が得られます。きのう,おとといと載せたギョロメケイソウ(Auliscus属)の目の部分を,携帯顕微鏡H型で,もっと解像しようとするならば,あと残された道はコンデンサを液浸にすることです。で,やってみたのがきょうの画像。そこいらへんに転がっていたツァイスのAcr-Aplコンデンサをグリセリンで液浸にしています。対物レンズはNA=1.25の油浸用をグリセリン浸で使っています。照明は紫外線LEDライトで波長ピークは365nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は5枚コンポジットで,最大エントロピー法で軽く画像復元をかけています。コンデンサ液浸の偏斜照明によって,きのう,おとといの絵よりも微細構造のコントラストが上がっていることが一目瞭然です。こうして,できることをやって欲しい像を得る,これが光学顕微鏡です(画像/MWS)。








2016年1月19日


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これはギョロメケイソウ(Auliscus属)の別の個体(被殻)の目の部分。何か構造があるぞという感じには解像していますが,完全に構造が見えているわけではありません。撮影は携帯顕微鏡H型で,乾燥系のアッベコンデンサ。対物レンズはNA=1.25の油浸をグリセリン浸で使っています。照明は紫外線LED5mmφで波長ピークは371nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は5枚コンポジットで,最大エントロピー法で軽く画像復元をかけています。顕微鏡を究めるには,こういった,その対物レンズでぎりぎり解像する寸法の構造を撮影して練習するのが効果的です。そのためには,珪藻はよい材料なのです。そんなマニアックなことをして何の意味があるの?と思う人もいるかもしれません。しかし顕微鏡を少し勉強するとすぐにわかるように,解像限界ぎりぎりを撮像できる人は,それより多少でも余裕のある寸法のものを撮像すると,すばらしい切れ味の画像を得られるのです。そのことは対物レンズのMTF曲線を見ても明らかで,これを理解していれば当たり前の練習ともいえるので,マニアックでも何でもないのです(画像/MWS)。








2016年1月18日


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これはギョロメケイソウ(Auliscus属)の目の部分。電子顕微鏡的には細かい孔が密集しているのですけど,光学顕微鏡でも限界的なイメージングを行えば見えます。きょうの画像では放射状の模様がうっすら見えている程度ですが,携帯顕微鏡H型で,乾燥系のアッベコンデンサしか使えない状況の絵と言えば,許してもらえるかもしれません。対物レンズはNA=1.25の油浸をグリセリン浸で使っています。照明は紫外線LED5mmφで波長ピークは371nmです。これをモノクロCMOSで撮像しています。画像は25枚コンポジットで,最大エントロピー法で軽く画像復元をかけています(画像/MWS)。








2016年1月16日


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携帯顕微鏡H型は,ひょっとすると,もっとも紫外線顕微鏡に適している機種かもしれません。コンデンサ油浸が簡単ではないことを除くと,あとはよい点が目立ちます。電球の口金をLEDの差し込み式にして,内部に定電流回路を仕込んでしまえば,あとは市販のLEDを交換して使うだけで,各種波長対応の先端的な顕微鏡に生まれ変わります。必要な工作技術は中学生レベルのハンダ付けくらいです。内部の長大なプリズムは,この時代のことですから,まずBK7でしょう。ならば365nm程度の波長であれば吸収は無視できます。

きょうの画像は多波長対応の携帯顕微鏡H型。これまでも,各種の単色LEDを使ってきましたが,先月の大学院集中講義で波長と分解能の関係を実演する必要があったので,より進化した形に作り替えました(*1)。主な変更点は波長範囲を広げたことと,市販のLEDを各種検討して,対物レンズBFPをなるべく満たすものを選んだこと,光強度のなるべく高いものを選んだこと,使用するCMOSで満足なS/Nを得られることを目的にチューニングしたものです。

画像上は使用する主な単色LED。波長はそれぞれ,370, 400, 470, 505, 526, 590, 610, 660nmです。これだけの波長範囲ですと,波長によって珪藻の微細構造が見えたり見えなかったりということを実演するのも容易ですし,LEDの発光色を直接確認してもらえるので教育上の効果も高くなります。画像下は紫外線LED(370nm)を点灯しているところ。このLEDは樹脂での封止ですが,樹脂自体が蛍光を発していて紫外線を吸収しています。ちょっともったいない感じがします。削っちゃいましょうかね…(画像/MWS)。



*1 これまで,大学院集中講義等ではオプチフォトを輸送して分解能と波長の関係の実演をしていました。それにはLED照明やドライブ装置,さらには各種のバンドパスフィルタも必要だったので,準備も大変でしたし,それ以上に大変だったのが輸送でした。定価換算で400万円クラスの機材だと,クロネコさんが保険付きでも,なかなかOKを出さず,保険会社と連絡して納得してもらうのに時間がかかりました。送料も往復で一万円を超え,それらの経費は講義先から支給されないので困ったものでした。携帯顕微鏡H型で同じことができれば,輸送は簡単ですし,荷物も小さくなりますし,バンドパスフィルタも必要ありません。壊れてもバックアップがある点も安心材料です。改造はけっこう面倒なのですけれども,講義で使ってみると,わるくない感じでした。




2016年1月15日


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珪藻は同じ種なら被殻上の構造は同じなので,いつも同じような画像ばかりになってしまいます。新しい鮮度の高い画像でも,どこかで見たことのある絵だ,と思われてしまいがちです。きょうの画像の珪藻(プレウロシグマの一種)も,皆さんは何度も目にしているものです。けど,これを撮影するのに使った機材は『携帯顕微鏡H型』で,液浸対物レンズを使って,紫外線LED照明(λ=371-376nm)を施していると言ったなら,少しはふふんと思ってもらえるかもしれません…。9枚コンポジットしてレベル調整,ビニング以外は何もしていない絵です(画像/MWS)。








2015年8月31日


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きのう紹介した撮影システムから,Cマウントエクステンダーを外して撮影すると,一枚目のような絵が得られます。鏡筒長は合っているので,像質は問題ないのですが,もともと1/3インチ程度のCマウントカメラに投影するためのアダプタですので,Nikon1の一インチ素子ではケラレてしまいます。ケラレの感じも,顕微鏡を覗いている感があって味わいがありますが情報量的には損をしているのでもったいない気もします。画像二枚目はエクステンダーをつけて撮影したもので,Gチャンネルを取り出したものです。文句のない写りです。これだけ拡大すれば,画素に微細構造を十分のせることができ,サンプリングの定理的にも,分解能が犠牲になることはありません。しかし拡大しすぎると,視野が狭くなりますので,対物レンズが生み出している情報の一部しか利用していないということになります。それも情報欠損です。分解能を活かしつつ視野もある程度広く取れるようなバランスのとれた倍率を見つけて設定するのが腕の見せ所ともいえます(画像/MWS)。








2015年8月30日


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これまで携帯顕微鏡H型でカラー撮影するときは,ニコンクールピクス99x系でコリメート法を多用していました。モノクロ撮影ではCMOSのUSBカメラでパソコンを使って画像取得していました。しかし近年,手持ちの撮影用機材はNikon1系が増殖中ですので,これを携帯顕微鏡H型に使えるようにしなければなりません。方法はいろいろありますが,もっとも簡単で,コンパクトで,光学的にもエレガントな方法が良いのです。こたえの一つがきょうの画像。エドモンドの顕微鏡用Cマウントアダプタに,Cマウントのエクステンダー(リレーレンズ入り)を装着し,Cマウント経由でNikon1に持ち込んでいます。撮影結果が二枚目の画像で,H型は純正そのままでニップル球照明,ホワイトバランスプリセットで,40倍対物レンズを用いてリモコン撮影しています。標本はOTK-01。軸上色収差も,倍率色収差も,この機材としては完全に補正されており,移動用機材としては文句のない絵となっています(画像/MWS)。








2015年8月29日


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真夏の夜の夢…(画像/MWS)。








2015年1月15日


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昨年中頃から携帯顕微鏡H型の一台が点灯しなくなってきて修理待ちだったのですが,時間がなく,年越ししてしまいました。ようやく作業の合間にメンテナンスしたので備忘録を記します。修理したのはDC-DCコンバータ(20mA)を内蔵してLED化してあるもので,本ページの2010年11月で電池室の電気接点の修理について記しています。このとき修理した部分と反対側の電池室の調子が悪いようで修理となりました。

まず新品の電池を用意して,LED発光部にはテスターを差し込んで,接触不良の様子をみます。摺動部分を何度動かしても,ほとんど通電せず,たまに気がついたようにパッパッと通電します。しかし20mAは流れず,数ミリアンペアという感じです。これはサビで電気抵抗が大きくなっている症状と解釈し,分解することにしました。

最初にプリズムは外しておきます。次にマイナスドライバーを上下から差し込んで,真鍮の可動ピンを外します。このとき,リン青銅(と思われる)バネも出てきます。ばらした可動ピンは,全体を研磨して金属光沢を出します。可動ピンが収納される本体部分も真鍮でできているので,耐水ペーパーを丸めて差し込み,サビ取りを行います。リン青銅のバネは,接触部分を磨いてサビを落として金属面を出します。念のため両方の電池室についてこの作業を行います。

研磨作業が終われば,生じた細かい削りクズを清掃して,ピンを元に戻します。電池ボックスの深いところにあるので,そこにバネを仕込んで,バネを押さえつけながらネジを回すのはちょっとしたコツが要りますが,慣れれば一発でできる程度のものです。コツは,マイナスドライバーに両面テープを貼っておくことです。それでネジを拾い上げて操作すればいいのです。

電気接点が回復すれば,プリズムを拭いて戻し,カバーをネジ止めして作業は終了です。製造から四十数年たっているので,定期的なメンテナンスは必須です。いちばんよいのは頻繁に使うことなのですが,昨年は出番が少なく,メカにとってはあまりよくなかったかもしれません。それにしても,Nikon Fより一年先輩で,販売期間もNikon Fより長かった携帯顕微鏡H型。さすがはあの時代の造り込みで,今後もずっと使える耐久性は,プロ用機材の模範といえるかもしれません(画像/MWS)。



*1 画像の携帯顕微鏡は,左がニップル球(電球),中央が白LED+オレンジ色フィルタ+拡散板,右が電球色LED+拡散板を使っています。どれも目に優しい波長組成の照明を心がけていますが,写真にとってみると,ずいぶん違うものですね。




2014年9月29日


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LBB-12の重要な使い方を,きょうの画像で示しました。所有者には周知のように,ニコンの誇る携帯顕微鏡H型は光源として2.2V,0.25Aのニップル球を使っているのです。これはもちろん,タングステンランプですから,フィラメント温度に応じた黒体輻射に近い連続スペクトルで,やや赤みを帯びた光なのです。これに富士フィルムのLBB-12を装着すれば,きわめて良好な色温度の補正ができます。じつに素晴らしい白色光になるので,いつまでも覗いていたい気がします。本ページをご覧頂いている方々であれば,携帯顕微鏡H型の一台や二台は持っている方がおられるでしょう。高価なH型を所持している方々なら,LBB-12は紙切れ一枚くらいの価格で買えます。素晴らしい色補正でH型を使えるのですから,プロショップへ急げ急げ(画像/MWS)。








2014年9月6日


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携帯顕微鏡H型をLED化していることはこれまでも述べてきましたが,昨年からは電球色LEDも導入しています。本ページでは繰り返し述べているように,白色LEDの強い光は,その青成分が特に目に悪いのです。顕微鏡は,光源を直接のぞくような光学配置なので,網膜を傷めるような光源は極力避けなければなりません。安全に覗く方法は,まぶしさを決して感じないようにすることと,青色光をある程度カットすることです。

そこで常用している携帯顕微鏡H型では,電球色LEDに交換し,さらに拡散度の高い拡散キャップをつけています。これによって青色光は減り,さらに輝度が落ちるので目に優しくなります。メリットはこれだけでなく,拡散キャップが二次光源になるので,光源の面積が広がり,コンデンサの隅までむらなく光が入るようになります。高開口数の検鏡では,明らかに像質が改善します。さらに低倍率の観察では照明ムラが減ります。光学的にちゃんと考えた,よいことばかりの改造なのです(画像/MWS)。








2014年9月5日


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常用している携帯顕微鏡H型(ニコン)のミラーがゆるくなってきたので困っています。カシメのようなのですが,締め方がわかりません。一人で見る分には何の問題もありませんが,多人数で顕微鏡を回して,供覧顕微鏡的な使いかたをするときは,ずれると見えが悪化するので困ります。当面の処置として,薄いシリコン板を金属板との間に挟みました。これで見栄えも悪くなく,普通に使えます。コレクター気分的には完全修理したいところですが,筆者は実用機として使っているので,まぁこれでもいいか,そんな気分です(画像/MWS)。








2014年3月21日


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20日は若い研究者の訪問を受けました。写真集『マイクロスコープ』も持っているという顕微鏡大好きな方でしたので,当然,顕微鏡の午後となったのでした。滞在時間は短かったのですが,顕微鏡の話はツーカーで通じますので,話に無駄が生じず,とても楽しい時間を過ごしました。ここのところあまりの忙しさに追いつめられており,体調も急低下してきたところだったので,久々の顕微鏡談義は願ってもないカンフル剤となったのでした。画像は携帯顕微鏡を紹介したときのもの。顕微鏡に深い愛をお持ちの方には,こういった貴重な機材も自由に使ってもらっています(画像/MWS)。








2014年3月3日


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微化石研究集会MRC2014に出席してきました。招待講演で,内容はどんな話をしてもよい,約30分の講演時間という贅沢な依頼を拝受しまして,それだけでも有り難いのに,ポスター会場でもボード一つをご用意いただき,さらに机一つと,顕微鏡(BX51P),28インチプラズマディスプレイを用意しますので販促に活用下さいとの,最上級の待遇を受けまして,久しぶりに本気で口頭発表する気になり,2月は準備に明け暮れたのでした。

もちろん標本も持って行かねばなりません。自慢のJシリーズを微化石系研究者に紹介できる最高の機会です。皆さんに喜んでもらえそうなデザインのものを急遽6枚作成して,ほかの標本もあわせて会場に持ち込みました。標本とBX51Pだけでは展示効果が薄いので,千代田MKQの展示用スペシャルチューン+『自然光ショートランチャー9』も持ち込んで,カラフルな暗視野検鏡も楽しんで頂くことにしました。

講演内容はエルンスト・アッベが顕微鏡対物レンズを開発するにあたって,あるいはそれ以後の顕微鏡法の発展にとって,珪藻がいかに重要であったかという1800年代から現代に至る歴史物語と,珪藻の持つ教育効果を最大限に引き出す方法をミクロワールドサービスの販売経験から,多数の画像(Jシリーズ)を交えてお話しさせていただきました。

講演は午前中のトリにしていただき,次の講演者のことを考えずに存分にお話しができましたので,大変有り難く思いました。毎日顕微鏡を使っている微化石系の研究者でも,光学の歴史に関しては分野外なのでご存じない方も多かったようで,講演は大変好評だったように思いました。質疑応答では多数の手が上がり,おなじみの「後継者は作らないんですか?」をはじめとして,「製作時間は?」「注文できるの?」「値段は?」「どうやって並べるの?」「年間生産数は」「やっていけるの?」などなど,楽しいディスカッションが続きました。

昼食をはさんで,ポスターの時間でしたが,そこではこれまで発表してきたイメージング技術を駆使して得られた画像の紹介とともに,Jシリーズを明視野と暗視野で展示して,プラズマディスプレイでスライドショーを流しました。多くの人にJシリーズをご覧頂くことができて,種々の会話も弾み,にわか顕微鏡教室も開いて,さんぽに連れ出したワンコがくるくる回転するような,弾む楽しさとなったのでした。

午後の講演ではマニアックな内容を勉強でき,鳴き砂の話や,コノドントの話が面白く,多少の質問もさせていただきました。この研究集会では,通常の学会であるような,時間厳守の雰囲気がまるでなく,ベルも用意されていません。当然,どんどん時間はオーバーしますが,それを吸収するバッファが用意されているので,何とかなるのです。自由な議論を大切にする素晴らしい方法と思いました。

MRC研究集会にははじめての参加でしたが,懇親会にも出まして,そこでは適当なタイミングを狙って,懇親会用に持ち込んだニコン携帯顕微鏡H型(DC-DCコンバータ搭載)に放散虫標本をセットして,懇親会参加者約50名弱の全員にJシリーズ放散虫とH型のすばらしさを味わっていただくことに成功しました。さすがに研究者集団だけあって,セットした標本をずらすことなく,顕微鏡が一巡して返ってきました。

そういうわけで本日の画像は,この研究集会のために特別製作した微化石標本(珪藻,珪藻休眠胞子,放散虫,海綿骨針,珪質鞭毛藻)と,筆者のデモスペース,そして懇親会会場に鎮座する携帯顕微鏡H型です。H型でしかできないことがある。それをやる。そこが大事です。筆者にとって携帯顕微鏡H型は飾り物ではなく,野山に持ち歩き,講義で学生に回し,寿司屋で取引先に見せて,懇親会で話題作りをするための機材なのです(画像/MWS)。








2013年9月15日


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ニコン携帯顕微鏡H型はフィールドで使われることも多いので汚れやすいのです。この個体は海水検鏡をしたあとにそのまま放置されたようで,ガイドレールが錆びてしまい,クロムメッキが浮き上がっています。これでは標本が引っかかって検鏡上問題があるので分解修理です。慎重に慎重にネジを外し,ガイドレールを外します。真鍮にクロムメッキの精密な部品です。これを砥石で研磨してサビを落とし,うまくいかない部分は耐水ペーパーで錆を落としてから水洗いします。ネジ用の孔はこよりで掃除してきれいにします。

よく乾燥したら組み付けです。まず仮組みしてからプレートを差し込みます。プレートがきちんとスライドすることを確認してネジを締め,最後にもう一度動作確認して作業はおしまいです。一部はメッキが剥がれてしまいましたがこまめに手入れすれば問題なく使えることでしょう。画像はレールを外したところです(画像/MWS)。








2013年9月14日


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電池室の修理が終われば,次はプリズムの清拭が待っています。さすがに40年も経過すると完全にきれいな状態のものはほとんどなく,うっすらと曇っていたり,ホコリは入り込んでいたり,カビが生えたりしていることが多いのです。この個体の場合はかなりきれいな状態でしたが,チリはいくつも見えましたので外して整備となりました。プリズムを押さえつけている金属プレートを外そうとネジを回すと,ネジがポロリ…。

何ということでしょう。恐らくは締めるときに締め付け過ぎたのだと思います。締めるときにねじ切るならわかりますが外すときに起こるとは何とも不運です。ま,起きたことは仕方がないので,作業を続けます。反対側のネジも外してプレートを取り去り,プリズムを抜き取ります。プリズムはガイドに沿って差し込まれているので,そっと,ぶつけないように抜き取り,レンズペーパーなどの上に置きます。プリズムと本体の間にスペーサーが挟んであることがあるので,それは外さずにそのままにしておきます。

さて,折れたネジの処理です。携帯顕微鏡H型で使用しているネジはほとんどが真鍮ネジをクロムメッキしたものです。このためネジが変形しやすく取扱も注意が必要ですが,ねじが折れた場合の対処は相対的には簡単です。今回のネジは1.7mmでしたので,まず折れたネジをプロクソンに装着したダイヤモンドで削り,ネジの中央を凹ませます。そうしたら1.1mmの鉄鋼ドリルでネジに穴を掘っていきます。十分な穴が掘れたら,注油して,こんどは1.4mmの鉄鋼ドリルで穴をさらうようにして残渣を取り除きます。次に本来ならタップを通せばよいのですが,ピッチの合うタップを持っていませんでしたので,筆者のネジコレクションからステンレスネジを探し,これをそろりそろりと通して穴の掃除をします。スムースにネジが回るようになったら,穴に油をつけた細い紙を差し込んで金属かすをきれいに掃除します。これで完了。

プリズムはブロワで吹いたあとにまずは水拭きです。今回は程度がよく,水拭きで十分きれいになったので溶剤拭きはせずに清拭はおしまいです。本体はブロワのちに掃除機をかけてきれいにして,プリズムを戻し,金属プレートをセットしてネジでとめます。金属プレートの厚みと弾力に比較して真鍮ネジは弱い感じがしたので,ネジは両方ともステンレスに交換しました。もとのネジはテープで封じられ,H型プリズムと書いて,ネジコレクションに加えました。これで無事にネジ折損修理完了,プリズムメンテナンス完了!です(画像/MWS)。



*1 筆者の修理ポリシーは「前より良くなる」ことです。今回の修理では強度アップしたので前より良くなったと感じています。いいぞいいぞ。




2013年9月13日


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日本光学の誇る名機,携帯顕微鏡H型は昭和30年代から50年代にかけて販売された機種が未だに中古で高値取引されています。未使用のものは滅多になく,ほとんどが酷使されて使用を終え,廃棄の運命にあったものを拾われてというパターンかと思われます。表で見えるところでは,拾われたあとでオークションへという流れが多いでしょう。この顕微鏡は単三乾電池を使用しますので,これを入れっぱなしにしたことによる液漏れが頻発し,電池室には液漏れの形跡があるものがかなり多いことは以前にも書きました。この液漏れにも色々なパターンがあって,横に寝かせたまま液漏れしたものは電池室内部を広く汚損,縦置きしたまま液漏れしたものは電池室から下部にかけて端子を汚損,といったことになります。

今回修理を試みる個体は画像一枚目に示すように電池室の下部がやられているケースです。電池が入ったまま液漏れして,端子が押し込まれたまま固着して,錆が噴き出しているという代物です。錆は見る限り,電池から移った鉄さびが多く,緑青は少ないように見えます。さて,作業開始です。

まず底部のカバーを外します。すると画像二枚目のように見えます。この画像に写っている一つのネジが電池側から押し込まれたままになっていますので,底部から押してみて元に戻るか試します。もしもとに戻れば軽い修理で済みます。戻らないなら底部をみんな分解しての大修理です。きちんと合ったドライバーを差し込み,プリズムに触れないように注意しながら押し込んで見ると,最初は動きませんでしたが徐々に動くようになりました。摺動面をよく見ると緑青が出てきているのが見えます。サビの程度は軽そうですが,電池室のバネでスムースに戻る程ではない状態なので,100回ほど摺動して動作を軽くします。多少は良くなった感じがあります。

この部分はシリンダーと筒の摺動ですから油を一滴させば話は早いのですが,電気接点なので注油は禁物なのです。また下手な油は長期的にはプリズムを曇らせることもあります。そこでこの摺動面には炭素粉末を使い滑らせるようにします。0.9mmのシャープペンシルで摺動面を黒く塗り,カシャカシャ動かすことを繰り返します。これで動きはすっかりよくなりました。

次は電池室の接点磨きです。この大きな真鍮接点はネジ式になっていて取り外しができるのですが,かなり硬く固着していて外すのが難しかったので(特殊パーツなので破損も恐ろしい),そのまま磨くことにしました。ダイヤモンドヤスリを突っ込み大きな錆をがしがし削って行き真鍮の光沢が見えるようにします。狭くて作業性が悪くなかなか手間がかかります。全面から金属光沢が見えるようになったら,鉛筆の尻に耐水ペーパー(#1000程度)を貼り付けたものを突っ込んで傷取りです。これもなかなか面倒ですが,やればいつかは終わる作業なので気が楽です。きれいになったら水で濡らした綿棒で何度も清掃を行い,電池室の修理はおしまいです。画像三枚目に見えるように,接点もすっかりきれいになり,動きも軽やかで,これでまた末永く使えるようになることと思います(画像/MWS)。








2013年8月20日


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携帯顕微鏡は野山に持ち出して使うので,手入れを怠れば劣化が進むことになります。特に海水の検鏡に使ったあとは,入念に水拭きをしておかないと,数年後に後悔することになります。海水試料の検鏡では,海水を汲む必要がありますし,容器に入れる必要がありますし,沈殿をピペットでとって検鏡する必要もあります。海水の飛沫が顕微鏡に飛ぶのは必然で,顕微鏡を操作する手も海水が付着していることが珍しくありません。したがって目で見てなんともなくても,水拭きして手入れをしておくことが大事なのです。きょうの画像は海水試料を検鏡した後に放置されたと推測される携帯顕微鏡H型です。ステージの部分が相当に腐食していてメンテナンスを要する状態です。このH型にはニップル球の変わりに豆電球が装着されていました。使用説明書すら読まない人が使うと,高価な道具もこのようになってしまうという見本なのかもしれません。道具はときどき取りだして使い,メンテナンスして良好な状態を維持することが最も望ましいのですが,そのために大事なことは,最低でも使用説明書を繰り返し読んで理解することです。ニコンのこの時代の使用説明書はとてもよく書かれていて,手抜きが感じられません。繰り返し読む価値はあります(画像/MWS)。








2013年7月26日


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忙しくて更新の時間がとれません…。そういうときには画像だけでも面白いものを。少し前に携帯型の顕微鏡が集結したので記念撮影したのです。どれも道具として使い込まれている感じで,いまにも動き出しそうな風格があります。特に携帯顕微鏡H型は出航を待つ軍艦のような面構えです(画像/MWS)。








2013年7月4日


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日本光学の誇る携帯顕微鏡H型は堅牢そのもので一世紀に渡って使用可能な機種と考えています。しかしこの機種にも泣き所があって,それは乾電池を使うことにより,液漏れが起きて,本体が腐食してしまうことです。きょうの画像は腐食の一例です。ふだんは底部のカバーに隠れていて見えない部分なのですが,カバーを外せばご覧の通りです。H型には,一説には5層とも言われるきわめて上質な塗装が施してあって,その仕上げはとても素人が真似のできるものではありません。筆者が取得したときにはすでにこの状態で,補修は難しいのでそのまま使っています(特に問題はありません)。携帯顕微鏡H型をお持ちの方は,使用後は電池を外して保管することを強く推奨致します(画像/MWS)。








2013年6月22日


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携帯顕微鏡H型は比較的メンテナンスしやすい機種ですが,レボルバ周りは巧妙な設計で調整がかなり難しい気がしています。レボルバ全体は2本の並行バネによって本体に固定されていますが,この固定部分は隠しネジになっていて,シボ革をはがさなければなりません。じつに厄介な作業です。しかもネジが深部にあり,電池室に液漏れの履歴などがあると,まともにネジが回る保証もありません。大事な機種に一か八かの作業をしたくないものですが,光軸ズレなどの故障が発生した場合はやるしかありません。竹を削ってヘラを作り,シボ革を少しずつ伸びないように,傷めないように注意しながらはがします。隠しネジが見えたらドライバーを突っ込んでみて,ネジに適合しているかどうか感触をみます。深いところにあるので目視の確認はできません。感覚で勝負の世界です。じつに気を遣う作業です。画像は隠しネジに到達するための孔です(画像/MWS)。








2013年5月27日


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製造から四十数年を経ても調子よく見えるニコン携帯顕微鏡H型ですが,何カ所か経年による動作の変化が出やすい場所があります。きょうの画像がその一つで,採光用のミラーの付け根にあるヒンジです。これがゆるくなってきて,ミラーがカクカクと動くようになってしまうことがあります。ヒンジのピンは両側ともに中央が凹んでいるだけです。ミラーを動かしてもピンは動きません。このヒンジのピンはどうやって締めるのでしょう。筆者にはまったく思いつきません。誰か知っている方,いませんかー(画像/MWS)。








2013年5月24日


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「いつかは手に入る」と念じ続けると,まったく予想もしなかった方面から光が射してきて,ついには手元に転がり込んでくる,ということを昨年10月19日に本欄で強調したところでありましたが,あれから半年以上を経て,また光が射してきました。だいぶ昔のレンズで,当時の販売価格も大したことはなかった代物なのですが,なぜか縁がなく,欲しいと思ってから十数年の月日が経ったのでした。これが突然,レンズの方から筆者のところまでやってくるのですから巡り合わせというのは不思議です。やや濁っていて,拭いてみても濁りが少し残りますがそんなことは全然構いません。まずは入手できたことを喜びたいと思います。お取り計らいを頂きました方には心より感謝を申し上げたいと思います(画像/MWS)。








2013年1月17日


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16日夜は近所の大学でサイエンスカフェの講師でした。サイエンスコミュニケーションの講義の一環として,受講生がサイエンスカフェを企画して実践する一コマがあるのですが,その受講生からお呼びがかかりました。できるだけ珪藻を見せて欲しい,という注文でしたので,十数名の参加者に4台の顕微鏡を用意して,それぞれに特徴的な標本をセットしました。左から順に,千代田MKQ(暗視野照明,CF Plan 10x, CF Plan 20x, CFW10x)でJシリーズ二枚(ツリー,多種類),エリザ簡易顕微鏡(MWSよくみえる改造,CFW10x)二台でクチビルケイソウ,クモノスケイソウ,携帯顕微鏡H型(HKW8xセット)で生きている淡水付着珪藻をご覧頂きました。時間が限られるイベントのときには,全ての準備を整えて,メガネを外さなくても楽に観察できるハイアイポイント接眼を揃え,可能な限り鮮明に見えるレンズの組合せで標本をご覧頂くのです。実際に覗いてもらえるのは長くても数十秒でしょうから,その間に印象に焼き付くような像を準備するのです(画像/MWS)。








2012年11月7日


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携帯顕微鏡H型の記事をまとめたのですが,リンク切れでしたので修正しました。

こちら

携帯顕微鏡H型は特に海外で評価が高く,web上には相当前から賞賛の記事をみかけます。「"model H" Nikon」で検索すれば詳しいPDFとMICSCAPEの記事が出てきますので未見の方はぜひご参照下さい。英語ですが,顕微鏡の用語がわかっていれば何となく意味はわかるものと思います。

日本語の文献としては,この顕微鏡の設計者である加藤さんが書いたものが「Nikon Tech J」という雑誌に「携帯顕微鏡H型・H3型」というタイトルで掲載されています。また日本光学工業(当時)の社内報「光友」にも携帯顕微鏡H型の紹介記事があります。前者の記事は文献取り寄せも可能なようなので(こちら),マニアさんの方は,参考にしてみてはいかがでしょうか。設計者本人が書いているのですから,ぜひとも目を通すべきものかと思われます。 きょうの画像はそれらの文献です。著作権上の問題がありますので電子化して掲載することはできません。悪しからずでございます(画像/MWS)。








2012年10月30日


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ミクロワールドサービスはあまりにもマイナーな存在なので,一般の人はまったく認知していないことと思います。しかしながらインターネットの時代ですから,検索などで『本日の画像』をみつけて,それ以来,あまりの素晴らしさに毎日見ているという方もおられるかもしれません。どんな検索用語で飛んでくるのかは筆者には想像もつきませんが,一部の方々については判明しています。けっこう多いのが「丸尾山砥石」ですね。砥石のページに反響があったりします。ほかには「珪藻」は普通として,「携帯顕微鏡H型」などというものもあります。

携帯顕微鏡H型は筆者も永らく愛用しています。このページでも何度が採り上げましたので,このタイミングで

こちら

に記事をまとめておきました。コンパクトなのに高性能で,タフで,そして像質がよいのです。現代のデジタルカメラの多くが50年後には存在していないであろう耐久性かと思われますが,携帯顕微鏡H型は1958年からあるのです。筆者が使用しているのはたぶん筆者の年齢と同じくらいの代物です。世界中で人気があり,今なお高価で取引されています。時代を超えて愛される価値を有しているのです。すばらしい製品を作りますね,ニコンは。

携帯顕微鏡H型は倒立顕微鏡の構成となっていて,ボディ底部には長大な台形プリズムが入っています(きょうの画像)。なぜミラーとせずにプリズムを採用したのか,ながねんの謎だったのですが,きょうからちょうど二年前に,ニコン本社で,携帯顕微鏡H型の設計者に3時間以上にわたって話を伺うという機会があり,この問題を真っ先に質問して謎が氷解しました。それは物理的な要請で,結像点をどこに配置するかという問題を解決するためだったのでした。あまりにも当たり前のことに聞けば瞬時に納得し,自らの知識を活用できないことを思い知らされることにもなりました。。

筆者はこの顕微鏡を良く理解した上で使い倒している自覚がありましたので,山のように質問させていただき,設計者や同席者からたくさんの答えをもらいました。この日のミーティングで得られた情報量は恐るべきもので,携帯顕微鏡H型以外にも倒立顕微鏡や無限遠補正系,倍率色収差補正,無限遠補正系の特殊対物などに関して多くの収穫がありました。ネット時代といえども,決してネットなどに上がることのない,リアルな,同時代の人間関係も含んだ情報に触れることの有意義さを感じたものでした(画像/MWS)。



*1 物理的要請とはいえ,ミラーを使わずにプリズムを採用したことがこの顕微鏡の評価を高めたと思っています。理由はいくつかあります。ニコンは伝統的に裏面鏡やハードコートのミラーを使っていますが,それでもプリズムの耐久性にはかなわないと思います。それにプリズムであれば軸出しの必要がなくなります。もう一つの理由はサイズです。結像点を最適な位置に配置したことによりホールディング性がよくなり,大人が両手で持ってしっくりくる大きさになったのだと思います。実際,かなり使いやすいです。プリズムは内面反射が大きいので長い光路長には使いたくないものですが,それをあえて採用し,側面を丁寧なつや消しとして実用可能にした開発陣には拍手を送りたい気分です。




2011年8月4日


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今回の出先では,試料を顕微鏡で確認したかったので,日本光学の誇る携帯顕微鏡H型を持ち出しました。この顕微鏡には手製のホールスライドグラスや交換式のLED照明,コリメート撮影用レンズを装備していて,現場での顕微鏡写真撮影にも対応しています。東京湾の青潮発生直前の現場から,表層海水を2リットルほど汲んだのですが,これを目の細かい洋服の布地で1リットルほどろ過して濃縮した試料を検鏡してみました。珪藻がたくさんいるのは当然として,今回は鞭毛藻も活きのよいのがたくさんみられました。どちらかといえば鞭毛藻は夏場がシーズンです。上の画像は携帯顕微鏡H型を用いて出先で撮影したプランクトンです。真ん中のカッコイイ奴は,プロトペリディニウムという名の鞭毛藻だと思います(画像/MWS)。








2011年8月6日


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紫色レーザーは405nm±10nm程度の波長純度なので,蛍光顕微鏡のV励起に最適な感じです。この波長では,多くの植物の葉緑体を効率的に励起することができ,クロロフィル由来の赤色蛍光を観察することができます。この赤色蛍光を検出すれば,いっけん生物がいないように見える試料の中に隠れている藻類などを簡単に見つけることができます。そこで,入手した100mW紫色レーザーと,日本光学の誇る携帯顕微鏡H型を使って,蛍光顕微鏡の配置で撮影してみました。レーザーは対物レンズの開口数よりも大きな開口角で照射して斜光暗視野の配置とします(上の画像)。接眼レンズの中には420nmのシャープカットフィルタを仕込んで,多少残存するレーザーの光を遮断します。透過蛍光顕微鏡の基本的な配置ですが,使ってみてびっくりです。下の画像のように,ひじょうに鮮明な赤色蛍光が確認できました。

試料は東京湾海水で,プランクトンが増殖して活性を失い,沈殿したものです。珪藻をはじめとして多くのプランクトンが死滅していますが,中には生きているものもいて,それらの保持する葉緑体が鮮明な赤色蛍光を放っているのが見えます。対物レンズはアクロマート10倍(NA=0.25),接眼レンズは10倍,これをデジタルカメラのコリメート法で撮影しています。水銀灯も使わず,フルオール対物レンズも使わず,これだけの蛍光画像が簡単に得られるのは,レーザーの輝度が高いお陰です。有り難いことです。

なお,老婆心ながら付け加えると,このような実験は,それなりの知識と経験がある方が,それなりの準備と覚悟をもって行うことが望ましいと筆者は考えます。高出力レーザーは,取扱を誤れば,簡単に回復不可能な傷害を引き起こします。ガラス面に照射すると言うことは危険な反射光が生じることでもあります。試みるときはじゅうぶんに注意してください。また,お子様のおられる家庭などでは,レーザーは,電池を抜くだけでは不十分で,ダイオード部分だけでも取り外して持ち歩くなど,時空間的に手の届かないところに保管すべきです。こんなピカピカ光って楽しそうなものは,ダメと分かっていても覗いてみたくなるものです。筆者が子どもの頃にこんな楽しいものがあったら,一瞬だけでも,目で覗いたことと思います。子どもの好奇心とは,そんなものだと思います(画像/MWS)。








2011年1月8日


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秋頃から慢性的に忙しく,いろいろな作業が並行して進んでいる関係もあって,机の上がすぐにゴチャゴチャになってしまいます。普段は実体顕微鏡と蛍光顕微鏡を取っ替え引っ替え使っているのですが,どちらも大きいので机を整理しないことには使えません。こんな時に活躍するのが携帯顕微鏡です。えーとこのプレパラートは何だっけ?というときに,30kgもある顕微鏡を覗くのはちょっと面倒ですし,ラベル貼りの作業中などは大きな顕微鏡が置けません。でも,携帯顕微鏡H型であれば,書類に埋もれた机でも検鏡ができます。じっさい,外出時に持ち出すよりも,部屋の中のあちこちで使う方が遙かに多いのです。皆さんも小型顕微鏡を活用してみてはいかがでしょうか(撮影/MWS)。






2010年11月14日


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顕微鏡はヒトの網膜やフィルムやCCDに像を投影する光学系ですので,とうぜん,紙やスクリーンにも像を投影できます。光源が明るく,部屋が暗ければ,白い紙などに投影された像が鮮明に見え,皆で観察できます。上の画像は携帯顕微鏡H型に超高輝度白LED(NSPW500GS-K1)をセットして,紙に像を投影したところです。もちろん,ふつうの生物顕微鏡でも同じことができます。プリズムやミラーなどを使って光路を曲げれば観察もしやすいでしょう。こういう遊びをまだやったことのないひとは,早速やってみましょう。白い紙を用意して,部屋を暗くして,ピントを合わせてみてください(撮影/MWS)。





2010年11月8日


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顕微鏡の性能を検査するには珪藻プレパラートが便利です。きちんと設計され調整された顕微鏡であれば,収差の除去された気分のよい絵を見ることができ,照明法を工夫して解像限界付近の撮像を試みればレンズの性能もわかります。と,いうことで整備が済んだ携帯顕微鏡H型に青緑色LED(505nm)を装着し,モノクロCCDで珪藻プレパラートを撮像しました。上の画像が撮像の様子で,下の画像が等倍切り出し(無加工)です。短波長・単色光照明とモノクロCCDの効果,それに顕微鏡の設計の良さから,すばらしい像が得られます(撮影/MWS)。





2010年11月7日


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携帯顕微鏡H型のクレンメルねじ折損は,にわかに筆者の人生を暗くしました。やはり大事なものが壊れるのは,目の前が暗くなるのです。しかし壊れた瞬間から対策は始まっています。ネジコレクションから適当なネジを探すことから始まり,それが無駄だと判明すると,どうにかして修理できないか,できることなら,元通りにならないかを考え続けます。きょうはその備忘録です。

結局,真鍮ネジが削り出しの特殊なものなので,これを活かす方向で考えます。オスネジ部分を削り落とし,そこに穴を掘ってメスネジを切り,袋ナットにします。プレート側からネジを入れ,袋ナットでプレートを押さえつけるようにします。テフロン製?ワッシャが入っていますので,テンションはそれで調節可能です。鉄製ネジを使えば強度確保にも好都合です。これが最終的な結論でした。

まず,広瀬テクニカルに走ります。筆者が頼りにしている工具店です。千石電商やマルツなどと比較しても,格段に品物が豊富で,ほかの店にない小物も店頭にあるのが魅力です。今回は,M1.4 P0.3のねじ穴を作る必要がありますので,そのサイズのタップと,1.1mmのハイスのドリルを購入しました。万一,穴あけに失敗したときのために,M1.7 P0.35のタップと,1.4mmのハイスのドリルもあわせて購入しました。

さて,体調がよいことを確認して作業開始です。まず,特殊真鍮ネジの折損部分をリューター(砥石付き)で研削します。ある程度平面に近くなったら,ダイヤモンドチップに変えて,慎重に中心軸を見極めながら浅く掘り下げます。この掘り下げた穴はドリルの最初の取っ掛かりになるので,センターが出ている必要があるわけです。この作業が終わったら,1.1mmのドリルで穴を掘っていきます。油はCRC5-56を使いました。時々注油しながら,何度も穴を洗い流して,ゆっくりと掘ります。貫通してしまうと困るので手前で止めますが,なるべく深く掘ります。そうしないとタップが立てられないからです。

所定の深さまで掘り下げたら,こんどは0.8mmのドリルで穴を少し掘ります。タップの先は細くなっていてネジが切れませんが,この部分の逃げをつくるためです。強度確保のために,ねじ穴はなるべく深くしたいのです。

穴あけが済んだら,穴を洗浄してふたたび注油し,タップをたてます。M1.4ですから細くて折れやすいですが,相手が真鍮なので掘りやすいです。進んでは後退し,進んでは後退してネジを切っていきます。行き止まりになるまで慎重に進みます。タップ作業が済んだら,ネジ穴周辺のバリをとるために,アルカンサス砥石で平面に研磨します。これでステンレスプレートとの密着が確保されます。

次はネジの加工です。ステンレスのプレートにはねじ穴が切ってありますので,空回りしてくれません。ネジそのままですと,真鍮ピンの組み付けが面倒です。そこで,ネジの頭近くの部分のねじ山を削ります。ここを空回りさせるわけです。プラスのドライバーで抑えながら,細いダイヤモンドチップで削ります。

いずれの作業も問題なく進み,組み付けた結果,完全に復元されました。見た目にも何の問題もありません。動作は完璧です。ネジ部分は真鍮から鉄製になったので,破損前よりも強度的にアップしました。修理というものはこうでなくちゃいけません。壊れてよかった,前より良くなった,そうなれば気分的にも良いのです。今回は,闇に打ち勝つ光の勝利で終わったのでした(撮影/MWS)。





2010年11月6日


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電気系の調子がよくなった携帯顕微鏡H型の最終調整をしようと,標本押さえ部分のたわみを修正していたときのことです。力のかけかたを誤り,しまったと思った瞬間,ぽろりとクレンメルが落ちました。小学生のころ,大事な宝物を壊してしまったときのような残念な気持ちが全身を駆けめぐり,取り返しのつかないことをしてしまったことを教えてくれます。何が起きたのか見てみると,ステンレスのプレートにクレンメルを固定するためのネジが折れています。このネジは真鍮削り出しでクロムメッキされている凝ったもので,クレンメルの固定と摺動性の確保,クレンメル移動時の取っ手,外観の装飾も兼ねています。同じネジを入手することは不可能です。ステンレスのプレートに残ったネジは,超硬チップで中央にすり鉢型の穴を掘り,そこにマイナスドライバーを噛み付かせて回し,抜きとりました。しかし残った真鍮ネジをはめてみてもまったく固定できません。これまでどこも欠損のなかったH型なのですが…。絶体絶命の大ピンチです(撮影/MWS)。

追記:11月3日記載の画像2枚目は,ネジコレクションから拾った真鍮ネジと削ってサイズを合わせたワッシャで仮止めした姿です。





2010年11月4日


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一枚目の画像に示す照明装置も携帯顕微鏡H型とともに持ち歩いています。非常用照明?と思った方もおられるかもしれません。違うのです。画像二枚目,三枚目を見るとお分かりいただけるかと思いますが,これは偏斜照明用の光源です。顕微鏡のミラーに紙製のホルダを挟むと,ちょうどNA=0.65に対して偏斜照明の位置に光源を固定できます。このときの結像は画像に示した通りで,明視野光束と暗視野光束が混ざった偏斜照明になっています。この条件では対物レンズの分解能をフルに活かすことができ,また,微分干渉に類似の(しかし被写界深度は深い)上品な像を結びます。100円の簡易照明ですが,こういった工夫は価格以上の価値があると思います。

ちょっと蛇足になりますが,こうした技術を活用できるのも,珪藻プレパラートがあるからだ,ということは覚えておくと良いと思います。珪藻プレパラートは,対物レンズの性能を判定し,照明法を勉強するための最良の標本なのです。顕微鏡ユーザーの多くは,主に染色標本を覗いていますが,この場合は対物レンズの開口数よりもちょっと絞り込んだくらいがよく見え,ほかのテクニックをほとんど必要としません。だから偏斜照明などのテクニックを覚えられないのです。横紋筋や脳細胞を専門に検鏡している方は別ですが…(撮影/MWS)。





2010年11月3日


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筆者の携帯顕微鏡は照明光源として各種の5mmφLEDが使用可能になっています。20mAの定電流駆動です。電球のソケットには,E10口金を改造してLEDソケットにしてあります。なんでこんな面倒なことをしているのかというと,まだE10口金のLEDが売り出されるよりもかなり前から,LED化の改造をしていたからです。現在では,電池2本で点灯可能な白LED(E10口金)も売っていますから,何の改造もなくLED化できます。

LEDソケットを使用すると,市販のLEDの多くが使えますから,好きな光源を選べます。526nmのLEDを使えば緑色の単波長照明によって,上質な像を結びます。470nmや505nmのLEDを使えば,短波長の効果によって分解能が上がることを確認できます。最高輝度の白LEDを使用すれば,絞り込んでも明るい照明ができます。広角の白LEDをうまく使えば,瞳を充足した光学的によい状態の照明にもなります。遊びで紫外線照明を施すこともできます。

50年以上前に生まれた携帯顕微鏡ですが,現代の発光素子を装着され,デジタル撮影に用いられるとは夢にも思わなかったことでしょう。しかし使用してみると便利で手放せません。性能も正立型顕微鏡と何ら遜色なく,基本設計の優れていることを感じずにはいられません(撮影/MWS)。





2010年11月2日


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携帯顕微鏡H型の修理をしましたので備忘録です。この機種を入手してからというもの,電池ボックスの接触不良にはずっと悩まされてきました。全分解して組み直せばいいのはわかっているのですが,数年以上が経過し,ついにきょう電源部分の分解修理を行いました。

この電池ボックスの接点は特殊な構造です。ふつうの電池接点はコイルバネを使うことが多いと思いますが,この顕微鏡では真鍮の可動式ピンが電池と接触するようになっています。この可動式ピンにはバネが仕込まれていて,バネの押す力によって電池と真鍮ピンの接触が保たれるようになっています。電池の液漏れなどにより,この可動ピン周辺が腐蝕すると接触不良を起こし,調子が悪くなるのです。

そこで問題の可動ピンを取り外すのですが,固着していて外れません。可動部の外側から外し,全体を超音波洗浄しますが,ビクともしません。仕方がないので,万力にゆるくセットして,ヤナギの木槌で叩きます。これでなんとか外れました。腐食部分は#2000の耐水ペーパーで磨き,可動ピンの接触部分をラッピングします。これでOKかと組み直して見ると,まだどことなく接触不良です。もう一度外し,電池と接触する部分も研磨します。それでも調子は今ひとつです。

そこでハタと気がつき,バネの錆(緑青)を落としてみました。するとその輝きの色から,リン青銅のようです。なるほど,導電部分は可動ピンだけではなく,リン青銅のバネも担っていたのでした。バネが真鍮部分に突き刺さり,導電性を保ったまま摺動性を確保していたというわけです。そこでバネと,真鍮ピンのバネに当たる部分を研磨したところ,復活しました。なんと巧妙な設計でしょうか。これならば,万一リン青銅のバネに寿命がきても,真鍮の可動ピンが生きていれば,バネ交換だけで修理ができます。

接点の問題が解決したので,小型のDC-DCコンバータ(定電流回路)を組み込み,各部点検清掃して,修理と改造は完了しました。これで,市販の5mmφLEDをすべて利用可能な携帯顕微鏡H型の完成です。以前からその仕様でつかっていたのですが,接触不良の問題で動作がうまくいかないこともあったのです。今度は完全に治った感じで,気分も爽快です(撮影/MWS)。





2010年9月16日


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サンプリング現場で,どうしても検鏡したいケースがあります。そんなときに活躍するのが簡易顕微鏡です。ふつうの正立型も使いますが,荷物を少なくしたいときには携帯顕微鏡を選びます。この顕微鏡(携帯顕微鏡H型)は倒立型の構成で,カバーグラスを対物レンズ側に向けて使います。そのため,スライドグラス中心部をくり抜き,そこにカバーグラスを接着した専用のチャンバーを使います。チャンバーに数滴の試料水を垂らして水面をほぼ平面にすれば,そのまま簡易検鏡が可能です。この現場でもそのように検鏡しました。顕微鏡を取りだして三脚に装着し,試料をセットして40x,100x,400xで検鏡し,チャンバを洗って収納し,顕微鏡を仕舞い込むまで約5分です。画像の携帯顕微鏡H型(日本光学製,当時)は中古品でも滅多に入手できないものですが,現在はダイコーサイエンス株式会社から本格的な携帯顕微鏡が販売されていますので,それを選ぶのも一つの選択かと思います(撮影/MWS)。





2010年2月7日


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日本光学の誇る携帯顕微鏡H型の調子が悪くなったので分解修理しています。この顕微鏡はとても堅牢なのですが電気系の接点だけは経年変化を免れることはできず,時々メンテナンスしなければなりません。完全に直すには同じスイッチを入手して配線部分を全交換したいのですが,ちょっと手間がかかります。今回はその下準備ということで,白LED仕様に改造してあったものを元に戻し,光学系も清掃しました。筆者はこの顕微鏡を使うために入手したので,けっこう酷使されています。出始めのカビやホコリを払ってキレイになると,見えには関係なくとも気分がすっきりしますね(撮影/MWS)。





2008年5月28日












顕微鏡を持ち歩かねばならない作業がいくつかあります。生きている珪藻の採取などでは,とりあえず採取して持ち帰り,試料処理後に検鏡することで間に合うことがほとんどです。しかし化石の採集となるとそうはいきません。珪藻化石に見えても,石英が主体の鉱物だったり,火山灰だったりということがよくあるのです。筆者も何度か,珪藻化石と間違えて火山灰を持ち帰ったことがあります。珪藻化石の採取には顕微鏡が欠かせません。

携帯顕微鏡は現在でも生産されている機種がありますが,半世紀前頃には今よりも本格的な機種がいくつかありました。日本でも,オリンパス,千代田光学,日本光学などが製品を供給していました。それらの中でも,日本光学(現ニコン)の携帯顕微鏡H型は倒立顕微鏡という構成で異色の存在でした(画像1枚目)。

この顕微鏡は小型のボディにたくさんの機能が詰まっており,もちろん現在でも実用性の高さはトップクラスといっていいでしょう。三脚のねじ穴が切ってあるので,手持ちだけでなく,机や床において楽な姿勢で検鏡できます(画像2枚目)。

この機種は電球による照明が可能ですが,電球の寿命が短い上に色温度も低く,赤っぽい照明しかできませんでした。補正しようとフィルタを入れると暗くなりました。電池はすぐになくなるのです。携帯顕微鏡H型の唯一ともいえるこの欠点は,白色発光ダイオードの出現によって取り除かれました(画像3枚目)。明るい白色照明が実現し電池交換も一年に一回程度になりました。

アイピースはねじ込み式ですが,スリーブは23.2mmの通常のものが使えますので,広視野アイピースに取り替えればメガネを利用している人は楽に観察できますし,またデジタルカメラを用いた撮影も簡単にこなすことができます(画像4枚目)。コンデンサはアッベコンデンサでしかもスライド式です。ハネノケコンデンサが最初から装着されていると考えてよいでしょう。コンデンサの機能を生かして照明ができますし,コンデンサを外して自然光による暗視野照明も可能です。

そしてレンズの性能にも妥協はなく,とても鮮明な像を結びます。携帯顕微鏡H型は,下から覗く倒立顕微鏡の構成となっていて,ボディーの下部に長い光路長のプリズムが組み込まれています。確かめてはいませんが,対物レンズはこのプリズムと合わせて色収差の補正が行われているように感じ,通常の正立型生物顕微鏡と比較しても何ら優劣のない上質な像を結びます。40倍対物レンズを用いて放散虫を撮影した画像を見ても,そのことがおわかりいただけるかと思います。

残念なことは,この顕微鏡は中古でしか入手できず,しかも数が少ないのです。どこかの顕微鏡メーカが,現代の光学技術を用いて,これを超える顕微鏡を作ってくれることを期待しているのですが…(撮影/MWS)。





2007年9月25日


model H

ひとくちに光学顕微鏡といっても様々な種類があります。工業製品として人々の間に浸透してから約100年の月日がたちますが,その間には惜しまれつつ生産終了になったものもあります。画像は日本光学(現ニコン)が1958年に発売を開始した携帯顕微鏡H型です。ボディーに3本のレンズが内蔵されていて,下側から覗く倒立顕微鏡の構成になっています。コンデンサは開口絞り付きで,スライド切り替え式によりハネノケコンデンサと同等の機能を実現しています。専用レンズを使用すれば油浸も可能です。倒立型なので一般検鏡はもとより,プランクトンなどの水試料検鏡に向いています。生産中止からン10年,発売開始から50年になる現在でも,本機種は顕微鏡愛好家の間で高い人気を誇っています(撮影/MWS)。










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