画像のご利用について





ニコンS型顕微鏡(model S)

ミクロワールドサービス『本日の画像』に掲載したS型顕微鏡(日本光学工業,当時)の記事を抜き出してまとめたページです。









2013年8月31日


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今月は依頼作業を優先的に進めたため,ニコンS型のメンテナンスに集中することとなりました。最初は拭き拭き作業の連続で修行のような日々,そして珪藻プレパラートを検鏡しながらの調整の日々,そのあとはベストの光源を求めて昼は秋葉原,夜ははんだ付けの日々。何か一つの作業に集中する,というのはいろいろなことを生み出すもので,最近のLED事情もリサーチできましたし,昔は見当たらなかった電流レギュレータなども発見できて,筆者の研究用顕微鏡にフィードバックできる情報も多々得られたのでした。じつに有り難いことと言わざるを得ません。

そしてその副次的な効果として,S型の記事を多く掲載することとなりました。良い機会でもありますので,S型の記事をまとめました。こちらを参照頂ければ幸いです。

ニコンS型には熱心なファンがいます。明視野や位相差のみならず,偏光顕微鏡や干渉位相差,微分干渉,蛍光顕微鏡などを収集している方もおられます。そのような方をさしおいてS型の記事をまとめるのは気が引けるのですが,この機種のギヤ修理が可能なうちに一台でも多くのS型を救済したいと思いましてS型特集といたしました(画像/MWS)。



*1 なぜニコンS型を贔屓するのかというと,この機種は顕微鏡光学の基本に忠実で各部の調整が可能だからです。シンプルな構成ながらも電球フィラメントの心出し,フォーカスが調整でき,コンデンサまたはフィールドレンズで心出しができて,コンデンサは明視野/偏斜/暗視野/偏光/位相差/干渉位相差/微分干渉が可能で,透過蛍光もできます。低倍/高倍のの照明切り替えもあり,三眼鏡筒も単眼鏡筒もあります。この自由度が,最良の像を得るために必要なのです。現代の顕微鏡は照明心出しが省略され,フォーカスもないものが大半です。そんなものは研究用顕微鏡とは呼べませんね。検鏡者の手足を縛ってしまうのですから不自由顕微鏡とでも呼ぶべきものでしょう。




2013年8月27日


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この顕微鏡はいっけんニコンS型(SFR-Ke)に見えますが,L型(LFR-Ke)といいます。相違点は少なく,レボルバがクランプ一つで外れて交換可能なこと,ステージについても同様です。またS-Ke型では視野絞りの心出しはフィールドレンズで行いましたが,L-Keではコンデンサの心出しができるようになっています。S型の上位機種という位置づけですが現場ではあまり見かけることがなかったように思います。機種名こそ違いますが,S型ファミリーの一つとしての位置づけでよいのではないかと思います。筆者がL型を所有していないことを嘆いていたら,ある方から,「L型なんてどこにでも,あるじゃん」と言われてしまったのですが,その言葉を聞いてから半年程度でL型をメンテナンスしているのですから巡り合わせというのは不思議です。中年オヤジになると欲しいものがある日突然に転がり込んでくる,その有り難さを感じるきょうこの頃です。部品も足りないし動作上の不具合もあるのですが,そんなことは気になりません。在りし日の日本光学が設計した顕微鏡をとくと眺めることにいたしましょう。

それにしても,ニコンの略称には謎が多い気もします。カメラでも同名がありますがS型って何の略でしょうか。シンプルか,素敵か,素晴らしいか。L型に至っては想像できないですね。携帯顕微鏡H型はハンディタイプなので略称も納得いくのですが(画像/MWS)。








2013年8月25日


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ニコン顕微鏡S-Keを各部点検清掃をするにあたって,どこが最も難しいかと聞かれれば,「Keの部分」と答えます。S-KeはS型にケーラー照明装置(Ke)がついたものですが,この『Ke』の清拭が大変なのです。数十年経過した本機種はとうぜん照明光学系も曇り,カビが発生し,チリも積もっています。これらの汚れは,適切に照明を施せる人にとっては,光学的な意味で分解能には影響しません。しかし照明ムラやゴミの原因となるのです。特に低倍対物レンズでの観察時ではピント深度が深いので,視野絞りの近くに存在するゴミが見えます。そこでこれを取り除く必要があるのですが一筋縄ではいきません。

視野絞り直上には断熱ガラスが載っています。このガラスはたいてい曇っていて,筆者の研磨技術をもってしても完全に透明にはなりません。しかし薄く曇っている程度であれば,傷がなければ,ほとんど目立たないので害はありません。ところがこのガラスを本体に戻すときに,どれほど注意しても小さなチリが紛れ込みます。これが視野内に影となって見えるのです。また視野絞り直下にはミラーがあって,このミラーにもチリが積もっています。これの清拭も困難を極めるのです。裏面鏡なのはニコンの良心ですが,ミラー直上に光彩絞りがあるので,長年のうちには何かが落下するのです。下手すると清拭したばかりなのに整備を終えたら大きなゴミが視野中央に…などということもあります。そして照明切り替えレバー『H』のときに使う小さなリレーレンズの中にチリが落ちていると,低倍観察時に視野絞りと共役の位置になり,鮮明に見えてしまいます。

『H』の位置は低倍観察では使わないのでゴミが見えてもいいじゃないか,という意見もあるかもしれませんが,ゴミがあるとわかっている以上,清掃したくなってしまいます。なぜなら,筆者は極限までクリアーに封入された珪藻標本を製作しているからです(画像/MWS)。








2013年8月24日


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これはカミツキガメをひっくりかえしたところ…ではなくて,ニコンS-Keの底部です。筆者の所有する顕微鏡のほとんどには,この画像のような『カグスベール』を貼り付けています。ゴム足の径を測って,その径と同じテンプレートでカグスベールにしるしをつけて,ハサミでチョキチョキ。じつに簡単な作業です。ゴム足は水拭きのあとにエタノールで繰り返し拭いておきます。そこにカグスベールをペタリ。カグスベールにはコルク層があるので古い顕微鏡のへたったゴム足を補完する上でも好都合です。

こうして机の上を楽々すべる顕微鏡の出来上がりです。いちいち持ち上げなくてよいので大変便利です。また顕微鏡の位置を微調整しやすいので,検鏡時に素早く最適なポイントに移動することができます。欠点はあまり思いつきませんが,大地震のときに顕微鏡が机の上を動き回ったことは忘れられません。それ以降は机を離れるときは,カグスベールの一つの足に薄いシリコン板を挟んでいます。これであまり動かなくなります。机の上に何台も顕微鏡が載っていて,取っ替え引っ替え使用している方は,『カグスベール』を貼ってみるのもよいかもしれません(画像/MWS)。








2013年8月23日


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黒いボディでおなじみのニコンS型顕微鏡は,いくつかのタイプがあるようです。よく知られているのは先日紹介した一軸粗微動タイプですが,きょうの画像のように粗微動が別々の2軸タイプも存在します。こちらの方が古いのですが,微動と粗動の耐久性はよく,現在でも現役の機種が存在します。画像のタイプは照明切り替えをフィールドレンズのin/outで行うというものです。ハネノケコンデンサなき時代には,ハネノケフィールドレンズとでもいうべきもので照明切り替えを行い,先玉の大きなコンデンサで照野を確保したようです。なかなかの工夫だと思います。こうして画像に撮るとそんなに古くは見えない気もしますが,この顕微鏡が販売されていた頃は,まだ多層膜コートも一般的ではない時代です。薄いモノコートがついていれば良い方で,レンズやプリズムはノンコートに見えるものもあります。そんな時代のものが現役で動くのは大したものです。なお,このS型は後期のものより重い感じがします。軽量化よりは耐久性第一で作ったように見えます(画像/MWS)。








2013年8月21日


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今月半ばから取り組んでいたS型メンテンナンスがおおむね終わりました。何十年もホコリを被った状態でしたのでメンテナンスは相当に面倒なものでした。劣化した部品も多く,ストック機材の中からネジやレンズなどを追加しての修復となりました。状態がよかった部品も多く,コンデンサは十分使用可能な状態で,これはラッキーでした。断熱ガラスは白濁していましたが,これも研磨である程度きれいになりました。プリズムは手の届かないところが濁っていましたが,細く折ったレンズペーパーを差し込んで清拭しました。この作業は効率がわるく一面拭くのに80枚くらいのペーパーを使いました…。ステージの汚れもひどいものでしたが,主にグリスとちりの混合物でしたので,EE-3310で溶かしながら清掃可能でした。粗微動のハンドル,ステージのハンドルは各種のブラシとアルカリ洗剤で汚れを落とします。古い顕微鏡の掃除は,言ってみれば,台所の換気扇の掃除みたいなものです。やる気がしないけどいつかはやらなければならないところまで似ています(笑)。

こうしてメンテナンスが済んだ顕微鏡はSUR-Ke-PhのLED電球仕様として生まれ変わりました。LEDは電池駆動で,CRDを用いて60mAで3チップの白色LEDを点灯させています。そしてLEDのレンズは平行研磨,さらに発光面にテフロンの完全拡散板を載せてあります。顕微鏡は光源のサイズをもとに各部の設計がなされているので,LED電球にするにしても,光学設計上の用件を満たすようにしないといけません。ここはこだわりのところですので,秋葉原を3往復していろいろ試しました。

運用の結果は良好で,コンセント不要で単三乾電池による駆動にもかかわらず,以前の重いトランス−6V30W電球以上の輝度と,照明の均一性を達成しています。修理した微動も調子よく,位相差での見えは格段に明るくなり,位相差コンデンサによる暗視野照明も抜群の明るさで可能になりました。しかも照明切り替えはLの位置のみで低倍から高倍まで対応可能です。よいものができました。あとはもういちど内部清掃して組み上げ,外部清掃してホコリを払い,パッキングして終わりです(画像/MWS)。








2013年8月19日


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ニコンS型をメンテナンス中です。この顕微鏡の一軸粗微動タイプは,デルリン樹脂製のギヤが破損して使用不能になるという運命を辿るのですが,ギヤを真鍮製のものに交換してくれる専門家がおられるので,修理してもらいました。樹脂製ギヤが真鍮製になる気分は,レンズ付きフィルムからニコンFに換わるくらい快適な気分です。シャフトに組み込まれたギヤを本体に戻せば,スムースに動く一軸粗微動の復活です。バンザイ三唱の気分です。

この顕微鏡は約40年を経過しているので,各部に手を入れる必要があります。三眼鏡筒部を分解してプリズム面を清拭して,底部をあけてクリックストップの不具合を治し,曇ったミラーを拭き,曇った断熱フィルタを研磨して透明にして,ステージを清掃し,コンデンサを清拭して…と,光が通過するところはメンテナンスが必要です。カビや腐食がなければ復活し,耐久性の高い真鍮製ギヤの効果もあいまって,手に馴染む使いやすい顕微鏡となります。まだ使える可能性のあるものは,できるだけ無駄にしないようにしています(画像/MWS)。








2013年8月18日


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顕微鏡を末永く利用するためには日頃のメンテナンスが大事です。乾燥した南側の部屋で,机の上などに保管し,ホコリよけをかけて,ときどき使用するというのがもっとも理想的な維持方法かもしれません。顕微鏡の大敵はいろいろありますが,湿気,薬品,それに水試料などが一般的なものです。化学系の実験室では,薬品庫から遠いところに顕微鏡を保管することを推奨します。硝酸や塩酸は徐々に蒸発して部屋を漂っていますから,長い時間のうちには顕微鏡を腐食します。試料の場合は,酢酸系の標本や海水試料が特に腐食性が高く注意を要するものです。これらの酸類や塩分を含む標本を検鏡したら,ステージやベース部分を水拭きして乾燥させ,対物レンズは蒸留水を染みこませたレンズペーパーで清拭して付着している可能性のある塩分などを除去しておきましょう。きょうの画像は悪い例です。海水試料をベースにこぼして,それが下部に染みこんで腐食が進行したものと想像されます。堅牢さが売りのニコンS型でも,取扱が悪ければひとたまりもありません(画像/MWS)。








2012年7月2日


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ニコンS型の光源内蔵型のベース部分には,照明切り替えレバーがあります。L,M,Hとレバーを切り替えると,低開口数広視野から高開口数/限定視野に照明を切り替えできます。Lでは内部に拡散板も入っていて,低倍対物レンズで観察するときもムラのない照明ができるように工夫されています。この機構により,ハネノケコンデンサがなくても,4倍〜油浸までの照明がレバーひとつでできるようになっています。なかなか便利なのですが,照明法をきちんと理解していないと,特に高開口数対物レンズ使用時に性能を低下させてしまう恐れもあり,完璧に使いこなす人はちょっとした玄人かもしれません。そのためか当時ニコンでは,このレバーの使い方や照明の調整について記した下敷きを配布していました(画像/MWS)。








2012年7月1日(2)


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ニコンS型の鏡基にはコンデンサの下にフィルタ受けがついています。これがけっこう絶妙な位置にあって重宝します。画像のようにアクロマートコンデンサの直下に丸い遮光板を置けば,暗視野コンデンサのできあがりです。遮光板の大きさを変えれば輪帯照明も可能です。もちろん偏斜照明もできますが,偏斜照明装置はコンデンサ組み込みなので,変形偏斜照明が必要な時に限られますが…。このほか,このフィルタ受けに凹レンズを置けば,コンデンサのパワーを弱めたLWDコンデンサのできあがりです。3mmの台ガラスに試料を載せなければならなかったときにこの方法が活躍しました。大学院時代は,このS型を使いこなすことによって,じつに色々な勉強になったのでした(画像/MWS)。








2012年6月30日


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ニコンS型のステージについている標本押さえにプラスチック製のカバーを作って取り付けました。昔からの謎なのですが,古今東西の高級顕微鏡において,プレパラートやスライドグラスはガラス製がふつうで,標本押さえは金属製,それもステンレスや鋼鉄+クロムメッキなどがふつうです。この組合せは最悪で,スライドグラスの角が欠けてしまうのです。いいや,オレはていねいに扱っているから欠けたことがない,という方は,ぜひスライドグラスの角を顕微鏡で覗いてみましょう。微小に欠けていることがあるのです。当サービスでは,顕微鏡ももちろん大切なのですが,標本がもっとも大切にすべきものです。二度と作ることのできない貴重なものも多いですし,特注品で一枚しか製作できないようなものは,それはそれは気を遣います。標本押さえにストッパーをつけたり,クレンメルにストローでカバーをつけたりする工夫はこれまでも本欄で掲載してきました。今回はニコンS型ですが,書類挟みのプラスチックをカットしてカバーを作りました。これを両面テープで接着してあります。動作も問題なく,スライドグラスの角が欠けることもなくなりました。小さな工夫ですが,効果は大きいのです(画像/MWS)。








2012年6月28日


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ニコンS型の時代の顕微鏡には,偏斜照明装置が標準で付属しているものもたくさんありました。偏斜照明装置とは,コンデンサを中央に向かって絞り込む代わりに,周辺に向かって絞り込む機構のことです。コンデンサ絞りを絞り込むと物体のコントラストが上がることは誰でも知っていますが,これは,コンデンサの中央に向かって絞ったからコントラストが向上した,と,ひと言で片づけるような現象ではありません。コンデンサを周囲に向かって絞り込んでもコントラストは向上するのです。この偏斜照明装置は,低倍率では物体に陰影をつけて立体感のある作画をするために利用価値がありますし,高倍率では,分解能を低下させない照明法として大切なものです。現在では偏斜照明装置は,ひっくり返るほど高価な価格設定になっていて,何も知らない人はそれを買うわけですが,顕微鏡光学を知っている人なら,紙一枚で偏斜照明を実現したり,あるいは旧式のニコンS型で満足したりしています。画像はS型で撮影した放散虫で,偏斜照明を施しています。ガラス細工の質感が美しいですね(画像/MWS)。








2012年6月27日


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現在市販の白LEDは青色発光体と黄色蛍光体の蛍光で白色としていますから,スペクトル成分としては青色を多く含んでいます。肉眼の視感度からみても青色の感度は悪いので,多くする必要があるわけです。このことが顕微鏡のイメージングには有利にはたらきます。適当なフィルタで緑〜赤色光をカットしてやると青色光成分が残るわけですが,白LEDにはもともと青色成分が豊富なので,暗くならないのです。タングステンランプでこのようなことをすると,極端に暗くなります。タングステンランプは熱で発光していて黒体輻射的な光成分で,青よりは赤,赤よりも赤外を多く出しているからです。

青色光は可視光の中でも波長が短い方ですから,撮像に使えば分解能が向上します。また光の波長が揃っていることで,コントラストもよくなります。きょうの画像はニコンS型顕微鏡に白色LED(NSPWR70AS)を使い,ショートパスフィルタで青色光だけを通して撮像したものです。画像一枚目は35年以上前の短頸のPlan40(0.65),二枚目は同じ年代のApo40(0.80)でいずれも乾燥系です。DDM-STDに入っている優美なヒシガタケイソウ,Frustulia amphipleuroidesの条線と点紋列が分解されている様子がわかります(画像/MWS)。








2012年6月26日


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改造記事ばかりではいけませんので,結果も掲載しましょう。ニコンS型にNSPWR70AS(白色LED)を光源として使用したときのデジタル画像です。鏡基も対物レンズも接眼レンズも35年以上経過した古いものです。しかし1970年代にもなりますと,顕微鏡は理論分解能を満たすように設計製作されているものがほとんどで,レンズはコーティングされ,像のキレも悪くありません。標本は,当サービスのプレパラート群の中でもクリアだとの評価の高いDDM-STDです。

30mAで点灯したLEDでも明るさは十分で,暗視野照明も可能です。NA=0.4の20倍対物レンズと乾燥系暗視野コンデンサを用いた条件で,カメラ感度ISO100設定で1/15のシャッターが切れます。白色に発光していますからホワイトバランスを気にする必要もなく,じつに快適に観察できます。明視野ではややまぶしいくらいに照明できますので,偏斜照明でもじゅうぶんな明るさを確保できます。発光面積もそこそこあるので,照明ムラもそれほどはなく,高倍率であれば気になりません。視野内に次々と現れる珪藻の姿が美しく,ついつい電源を入れて顕微鏡をのぞいてしまいます(画像/MWS)。








2012年6月25日


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結局のところ,ニコンS型(SFR-Ke)顕微鏡のLED載せ替えは,DC-DCコンバータの定電流電源を廃止して,乾電池電源とする案を採用することにしました。この方が持ち運びに便利で,コンセントを必要とせず,LED側で電流制御できるので自由度が増すからです。電流制御はCRDで行うこととして,フィラメントの面積と同等の発光面積を持つような(持たせられるような)LEDを選んで使うこととしました。できあがりが上の画像です。一つはNSPWR70ASでこれは発光部が一つで輝度が高いタイプです(定格40mA)。CRDを2個並列で30mA定電流としています。もう一つはNSDW570GS-K1で,これは発光部が2つで輝度が低いのですが,全光束は大きいので,拡散板をかぶせることにより面光源としています。これの定格は70mAなのですが,CRDを4本並列で60mA定電流としています。いずれのLEDも6V30Wタングステンランプを割って作った台座に固定していますので,ニコンS型の電球ソケットがそのまま使えます。

電球の口金は単独でも市販品がありますが,筆者は電球を割って使っています。というのは,フィラメントの位置がLEDの発光部の位置になるので,工作するときの目安がつけやすいからです。もちろん,はんだ付けするまえにガラスを砕いて取り除き,ガラスの破断面にはすべてヤスリ掛けをして,さらにホットボンドで埋めておきます。こうすれば手を傷つけることがありません。運用の結果は良好で十分な明るさで広視野を照明できます。特に拡散板を用いた方のLEDでは,発光部のフォーカスを一切変えることなく,4倍から油浸まで,きわめて均一な照明を実現できています。これはタングステンランプ時代にはできなかったことです。フィールドレンズのL,M,Hを切り替えると,厳密にはフォーカス調整が必要になったのです(画像/MWS)。








2012年6月23日


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現在市販でもっとも高効率な明るいLEDは日亜化学のNSDW570GS-K1ということで定評がありますが,まだ使ったことがなかったので,顕微鏡照明用に購入してきました。さっそく点灯して光強度を簡易測定すると,確かにこれまでのLEDよりもはるかに強い光が出ています。さっそくLED電球を製作して組み込み顕微鏡観察してみると明るくない。アレレ。光源をのぞき込むと青白い励起光発光体が二つ見えます。なるほど,このLEDは単に一個のパッケージに2個の白LEDを組み込んだものだったのでした。ルーペで拡大してみれば,配線が二組あります。顕微鏡で明るい照明を行いたいときは輝度が高いことが必要です。全光束が大きくても輝度が低ければ明るい照明はできません。このLEDは発生する光の総量は多いけれども,単位立体角あたりからの放射束はそれほど強くなかったのでした。LEDを並べていろいろ調べてみると,最新のものでなくても,ひじょうに輝度の高いものがあります。要注意なのです。ちなみに,この日亜のNSDW570GS-K1ですが,全光束の値は比較的大きいので,この特性を活かすならば,拡散板組み込みですね(画像/MWS)。








2012年6月22日


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ニコンS型顕微鏡のLEDを更新しました。これまでは6V30W電球を壊して作った台座に日亜化学のNSPW510DSに拡散板をつけたものを使用していました。今回はFlux系のLEDにしてみました。NSPWR70ASというやや古いタイプなのですが,在庫豊富なLEDをひっくり返してみて,いちばん適当な形状でした。発光部の面積がそれなりにあって,S型のコレクターレンズでも問題なく高NAの照明ができることが条件です。それから,駆動回路を新規に作るのは面倒なので,常用の20mA定電流回路で使えることも条件です。一度はんだ付けを行い,鏡基に装着して心出しを行い,フォーカスを調節してみます。フォーカスが出なかったのではんだ付けをやりなおして再度調整。こんどはうまくいきました。発光部の位置決めは1mm単位の精度で行う必要があります。

電球をLEDに交換するのは簡単ですが,きちんと性能を出すには照明系を理解している必要があります。相性の悪いLEDに交換すると,とんでもなくひどい像になることもあります。照明系を理解している,と,ひと言でいうのはたやすいのですが,結局それは照明の変化に伴う像質の変化を熟知しているということです。つまり,珪藻プレパラートなど,照明の変化に敏感な標本をいつも覗いて,パーフェクトな状態の像を知っていることが前提になります。ですから,手持ちの顕微鏡をLED化するにあたって,最初にやるべきことは何かというと,珪藻などの微細構造を持つ標本で練習を積んで顕微鏡照明法の勉強をすること,が答えになります(画像/MWS)。








2012年5月13日


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ここのところ知人研究者が使用予定の機材をメンテナンスしているのですが,その関係で,頭がメンテナンスモードに入ってしまいました。さういうときには(笑),自分の機材も勢いにまかせてメンテナンスします。ニコンS型一軸粗微動が真鍮ギアにより復活してしまったので,ニコンS型(二軸)にも復活の可能性がでてきました。そこで故障中だったステージをバラして組み上げたら生き返ってしまい,あとは,もう一つのステージ(固着している,ストッパのピンが折損)を修理すれば部品は揃ってしまいます。そこでさっそく修理作業となったのでした。

固着しているステージはたいていグリスが固くなっているだけなので,きれいに拭き取ってグリス交換すれば問題ありません。今回は固さを残しておきたかったので,ややいい加減に拭き取ってから新しいグリスを塗布しました。これで好みの固さになりました。さて問題はネジ穴の中に留まっているピンですが,少し削ってみると真鍮製のM2のようです。そこでダイヤモンドで注意深く中央を掘り,そこに1.5mmのドリルを突っ込んで掘り下げます。時々ダイヤモンドで中央を掘り,またドリルに変えます。最後はゆっくりとドリルを貫通させ,穴に残っていた真鍮ピンを中空にします。次にM2のタップをたててゆっくりとねじ込みます。真鍮のクズがたくさん出てきます。行きつ戻りつしながら,最後はねじ込みます。これで折損したピンの除去はおしまいです。あとは適当な長さのネジとワッシャとナットでピンの代用とします。わーい。直った。

後は組み立てです。ベースに鏡基を取り付け,鏡筒を取り付け,ミラーをつけて,コンデンサをはめ込み,対物レンズをつけて,接眼レンズを入れれば作業はおしまいです。かわいらしいミラー採光式のS型がよみがえりました(画像/MWS)。



*1 右側が新たに組み立てたS型です。両者でステージのストッパのピンが異なることがお判りかと思います。左側は真鍮にクロムメッキ。右側はM2の黒色ネジにナットの組合せです。

*2 ニコンS型を使い始めて20年になりますが,出会ったときがいちばん状態が悪くて,とても使えるものではありませんでした。そこから顕微鏡の勉強をはじめて,メンテナンスも行うようになり,S型は年々,状態がよくなっていきました。そしていま現在が,ここ20年で最良のコンディションです。道具というのはこうでなきゃいけません。








2012年5月10日


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いろいろな作業の合間に顕微鏡の修理を行いましたので備忘録的に記します。修理したのはニコンS型です。この機種は本格的に顕微鏡の勉強をはじめた1992年頃に使っていたもので,思い出深い顕微鏡でもあります。これの一軸粗微動タイプは,偏心ギヤにデルリン樹脂製のものが使われており,これが経年劣化で割れて使用不可能になります。手持ちのS型もそのような運命を辿りましたので,壊れたギアを使ってギアのコピーを作って(エポキシ)使っていた話は2012年2月23日の記事に書きました。しかしながら,手製のギアは少量のバックラッシュがあり,フィーリングも今ひとつで具合がよくなかったのです。それで2軸粗微動のアームを載せ替えて使っていました。ここのところ暖かい日が続いて作業がやりやすく,サンプリングの合間に工作の時間ができたので,ふるいギアを除去して新しい真鍮ギアの載せ替えとなりました。以下は備忘録です。

まずエポキシのギアを外します。ニッパーでパチンと切れば簡単です。すると真鍮のリングが残りますので,これを除去します。このリングは焼き嵌めだろうとの教示を得ていましたが,半信半疑でした。しかしどうみても接着の形跡がないので,100℃程度に加熱して外そうとしましたが無理でした。それでヤスリで切断して外してみれば,やっぱり焼き嵌めだったのでした。このリングは,ステンレス製のベアリングの外枠にはめてあるのです。製作工程で高精度研磨をしないと焼き嵌めは無理です。こういうところがむかしの日本光学だなぁと,驚嘆したのでした。でもそれなら,樹脂の経年劣化にも気がついてほしかったですが…。

ギアの付け替えは簡単です。接着面をエタノールで清拭し,接着剤を極薄く塗布します。直ちにギアをはめ込み,作動上問題のない位置まで移動して固定します。ギアが動かなくなったら鏡基に組み込みます。組み込みが完了すれば,鏡基の載せ替えです。2軸のアームを外し,一軸粗微動のアームに付け替えます。このとき,光軸がずれますので,フィールドレンズを外した状態で光軸合わせをします。

調整が済んだらテスト検鏡します。もちろんこのときは,低開口数(NA=0.1)から高開口数対物レンズ(NA=0.7以上)を使います。視野範囲の確認と,分解能の確認が重要です。物体は珪藻プレパラート(DL-TESTなど)を使います。凹凸があり微細構造で覆われている珪藻被殻は,これ以上ないテスト標本だからです。

結果は満足いくものでした。右側(ギアのない側)の粗動にコンマ数ミリのがたつきがありますが,これは最初からあったような気もします。左で粗動を操作するとまったくガタはありません。そして右でも左でも,微動のバックラッシュは皆無です。NA=0.8レベルで繰り返し検鏡しましたがまったく感じることができません。これなら油浸も何ら問題ないです。素晴らしいとしかいいようがありません。

これまで使っていた2軸粗微動の鏡基は4レボだったのです。多種類の対物レンズを頻用する場合には不便で困っていたのです。一軸粗微動の鏡基は5レボでしたが,微動の不具合で眠っていたのでした。それが,奇跡の復活を遂げ,5本の対物レンズが装着され,いまここに蘇りました(画像/MWS)。




2012年2月23日


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ニコンの黒い名機,S型顕微鏡はアマチュアの間でもよく使われている機種です。よく見え,スタイルもよくて,また塗装の質が極上です。しかしこれの一軸粗微動タイプは経年劣化が出やすく,デルリン樹脂製のギヤが割れて破損してしまうことがあります。最初はごろつきがある程度ですが,完全に破損すれば微動も粗動もきかなくなり,顕微鏡としての用を果たさなくなります。筆者のS型も10年以上前にギヤが破損しましたので,そのときに破損ギアを用いてシリコンで型取りし,その型にエポキシ樹脂を流し込んで硬化させ,ギアのコピーを作って修理しました。面倒な作業の割りには効果が芳しくなく,粗微動は機能するようになったものの,強度的に不安があり,油浸ではバックラッシュも気になります。

宜しくないなと思っていたら,S型顕微鏡のギア修理を個人でやっている方を見つけました。なんと真鍮ギアを特注しているとのこと。手頃な価格なのでお願いしてギアを3個作ってもらいました。きょうの画像はその真鍮ギアと,筆者がむかし作ったエポキシ製ギアです。樹脂製の部品を金属パーツで代替できるというのは,じつに嬉しい気分です。ひまができたらメカいじりをやりたいと思う今日この頃です(画像/MWS)。



*1 ギア破損問題はほかの機種でもみられます。バイオフォトの初期型,アポフォト,一部の倒立顕微鏡でもデルリン樹脂製のギアが使われています。









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