MWS専門家向けプレパラート



テストプレパラート

生物研究者や光学専門家が各種テストに用いる検査板です。アマチュアの標準プレパラートとしても利用価値が高いです。いずれも受注生産品です。仕様に関する希望があれば事前に打ち合わせをお願いします。このページの製品は原則として割引適用外です。ご了承下さい。

【RL-TEST】 分解能検査板 油浸対物レンズの極限性能の検査に

【DL-TEST】 分解能検査板 乾燥系対物レンズの性能判定やリファレンス用に

【F-TEST】【F-TEST RGB】蛍光検査板 蛍光顕微鏡の照明調整・練習用に

【C-TEST】 コントラスト検査板 各種検鏡法の練習・調整用に







分解能検査板【RL-TEST】



油浸対物レンズの性能テスト用,顕微鏡照明法の試験用に開発された極めて繊細な刻印を持つ珪藻のプレパラートです。約3700本/mmと4800〜4900本/mmの低コントラストチャートに相当する格子模様が存在します。受注生産品です

珪藻Amphipleura pellucidaの全体像と部分拡大像です。

【RL-TEST】8,800円/枚


高解像画像取得料金(スケール付き)
 +16,500円/枚

Amphipleura pellucidaを用いた計測データ付きのテスト試料です。200nm〜210nmの周期構造(48〜50本/10μm)と,270nm程度(37本/10μm)の周期構造があります。

270nmの構造は開口数1.0以上の油浸対物レンズのテスト(熟練者は開口数0.95の乾燥系を含む),油浸検鏡の練習,0次光と1次回折光の干渉による像形成の実験などに適しています。205〜210nmの構造は油浸対物レンズの解像限界をテストする目的に用います。本製品は主に光学技術者,研究者,大学院生向けに制作していますが,レベルの高いアマチュアでも十分に使用可能です(270nmの構造は油浸対物レンズでNA=1.25であれば簡単に観察できます)。





【開発の経緯】

Amphipleura pellucidaは対物レンズの検査用に永年使われてきた珪藻です。正確で規則正しい直線により刻まれた条線は,油浸対物レンズの解像限界に近い空間周波数を持っています。ヨーロッパでは古くからこの珪藻を用いて油浸対物レンズのテストが行われ,それは顕微鏡の発展に大きく寄与してきました。カールツアイス社がアッベの指導により顕微鏡理論を完成させつつあった頃(1880年代〜),新しい設計の油浸対物レンズが完成するたびに,この珪藻によるテストにかけられました。1886年に新型のアポクロマートが完成したときも,Van Heurckによりこの珪藻が撮影され,200nm,270nmの格子構造が明瞭に写し出されました。MWSでは,顕微鏡の発展を支えたこの珪藻を用いて分解能検査板とすることを思い立ち,研究を重ねてきました。その結果,光学製品の検査用としてふさわしいグレードのテストプレパラートの製作が可能になりました。



【主な用途】

1 光学機器メーカーの製品開発用テスト試料
2 顕微鏡販売デモ用の実演試料に
3 小シャー高分解能微分干渉法のテスト用に
4 ビデオエンハンスコントラスト法の調整用に
5 顕微鏡メンテナンス後の実視テスト試料に
6 ハイアマチュアの練習用試料に
7 珪藻分類学研究者の顕微鏡写真撮影練習用に

RL-TESTは表面欠陥が少なく脈理のない青板スライドグラス(0.9mm厚),選別された約0.15mmのカバーグラス(または0.170±0.005mmのカバーガラスを用い,細心の注意を払って珪藻をマウントしてあります。穏やかな熱処理を行い封入剤の脈理を最小にしています。


縦条線が200〜210nmピッチ,横条線が270nmピッチです。このサイズの刻印はナノテクの領域です


このようにして制作した試料を検鏡し,コントラスト上問題がなく,封入剤由来による球面収差が最小の珪藻個体が選ばれてマーカーで記録されます。記録された珪藻は高分解能記録専用の顕微鏡画像記録システムにより条線密度が記録され,スケール入りの計測データ画像が作成されます。(同じ種類の珪藻がスライド上に含まれることがありますが,計測データはマーカーで記録された個体のみで有効です)。






ダイヤモンド針によってカバーグラスに直接マーキングしています。照明上問題が生じないように十分に大きな円で記入しています。

本製品の観察可能波長は436nm(g線)〜750nmです。カットオフは420nm付近です。封入剤のpleuraxはフェノールと硫黄が重合したもので,短波長領域の光には安定ではありません。光源に超高圧水銀灯を用いる場合は必ず紫外線をカットして下さい。また,g線付近で観察する場合も照明は最小限に止め,できるだけ半値幅の狭い干渉フィルタを使う,こまめにシャッタを閉じるなどの対策を施して下さい。100Wハロゲンランプ光源の場合,最大出力で(油浸コンデンサ検鏡下)フィルタを用いない場合,連続10時間以上の照射で屈折率が低下する場合があります。ご注意下さい。

本製品の封入剤はnd=1.70〜1.74程度,珪藻はnd=1.43〜1.45程度,カバーグラスとスライドグラスはnd=1.52程度です。したがって均質液浸系にはなりません。

保管条件が悪いと封入剤が失透します。湿り気の少ない,薬品等の蒸気が当たらない暗所に保管下さい。

本製品は散らし試料(Strew Slides)です。英国のK.D.Kemp氏が提供するような並べスライドではありません。氏の並べスライドは芸術的に美しくレイアウトされ,目的の珪藻が一通り揃っていて使いやすいのです(MWSにも一枚あります)。しかしカバーグラスと珪藻の間に僅かな封入剤(Zrax, nd=1.7)の層があり,これが原因で油浸検鏡の際に球面収差が発生することがあります(所有のスライドでも,8種のうち5種に問題がありました)。このことによるコントラスト低下は非常に深刻な問題で,対物レンズの性能を正しく評価できません*1。良いスライドかどうかは購入後に,封入剤由来の球面収差が判別できる人にのみしかわかりません。この経験から,光学的に十分な性能を持つテストスライドの必要性を感じ,製品化いたしました。当サービスでは,封入剤厚みの影響を最小限にするために,カバーグラス上に散らした珪藻を高屈折率封入剤で直接封じ,さらに一枚一枚検品しています。

*1 Kemp氏のスライドの価値を否定したいのではありません。氏のスライドは一見に値するものです。

【使用上の注意】

本スライドの200〜210nm構造を見るためには十分な技量が必要です。ふつうの検鏡技術では最高級のレンズを使っても見えません。専門家でも照明法を勉強しなければ見ることができません。見えない構造を見ようとするところに価値があるのですから,「見えない」ことを不良品と思いこまないようにご注意下さい。MWSでは,独自に開発した特殊検鏡法で,出荷するすべてのテスト試料に対して構造が見えることを確認しています。



【RL-TESTの使用例】

RL-TESTは種々の使い方がありますが,最も普通には270nm構造を利用した油浸対物レンズの性能検査です。照明の仕方によって種々の検査ができますが,代表的な一例を示します。

油浸対物のテスト例


上の画像は油浸対物レンズをRL-TESTの270nm構造で比較したものです。GIFフィルタでコンデンサ油浸,偏斜照明です。差が出やすいようにコントラストが低くなるように照明してあります。テストしたレンズは左がアクロマート(偏光用,NA=1.30),右がプランアクロマート(微分干渉用,NA=1.25)です。左の方がコントラストが高く素直な像で,条線の像質に締まりがあります。明らかに左のレンズが優れていることが判別できます。この差は,200nm〜270nm付近の検鏡では像質に決定的な違いをもたらすものとなります。







分解能検査板【DL-TEST】



主に乾燥系対物レンズの性能テスト用,顕微鏡照明法の試験用に開発された珪藻のプレパラートです(油浸系にも使えます)。各種の空間周波数を持つ珪藻を並べ低コントラストになるように封入しています。大手光学機器メーカ等でも採用されているきわめて信頼性の高い珪藻テストプレートです。受注生産品です




【DL-TEST】11,000円/枚(標準品の価格です)

レンズテスト用として使いやすい珪藻を中心に12-13被殻をマウントします。主な種はNitzschia, Pleurosigma, Stauroneis, Pinnulariaなどです。種については基本,お任せで製作致しますが指定種の在庫があればそれを並べることもできます。

本製品は低倍対物レンズから油浸領域まで広く対応します。開口数1.4の高倍対物レンズの限界性能チェックにも対応します。本製品は屈折率がやや低い封入剤でマウントしていますので,低コントラストで,検鏡技術の訓練用途にも最適です。本製品ではレンズテスト用珪藻として名高いAmphipleura pellucidaはマウント致しませんので,Amphipleura pellucidaが必要な方は【RL-TEST】をお求め下さい。【DL-TEST】と【RL-TEST】を両方そろえると幅広い用途に対応できます。





【開発の経緯】

珪藻テストプレートはヨーロッパを中心に古くから利用されてきました。しかしこれらの伝統的なプレパラートを光学的な観点から検証すると,カバーグラスの厚さや,封入剤の厚さ,珪藻の高さ違いによるピントズレ,封入剤の夾雑物や失透により微分干渉法のリファレンスに利用できないなど,多くの問題を含んでいたことも事実です。検査板に欠陥があると正しい検査ができないので,顕微鏡光学的に品質の揃った検査板が供給されることが望ましいのは言うまでもないことです。当サービスではこれらの諸問題を検討し,カバーグラス面に珪藻を並べて直接封入する手法を開発し,まったく新しい品質のテストプレートの製作が可能になりました。


珪藻Amphipleura pellucidaの全体像と部分拡大像です。



上の画像は海外製品(上)との比較です。同じ倍率・露出で撮影していますが【DL-TEST】(画像下)の方が格段に視野が澄んでおり,夾雑物の少なさを示しています。


珪藻微細構造の例。



DL-TESTに用いられる珪藻の微細構造の一例を示しています。間隔の狭い細線,様々なピッチの点紋があります。これらの珪藻が一列に並んでいてピント面が揃っているので使いやすさは最高です。


【主な用途】

1 教育機関における実習用試料
2 顕微鏡販売デモ用の実演試料に
3 微分干渉法やビデオエンハンスコントラスト法の調整用に
4 顕微鏡メンテナンス後の実視テスト試料に
5 アマチュアの練習用試料に
6 光学機器メーカの開発用に
7 光学機器生産現場のテスト試料に

DL-TESTは表面欠陥が僅少な青板スライドグラス(0.9mm厚),0.170±0.005mmのカバーグラスを用い,細心の注意を払って珪藻をマウントしてあります。







蛍光検査板【F-TEST】



40倍対物レンズ落射蛍光イメージ(V励起) 【F-TEST】蛍光顕微鏡検査板
 \3,300(一枚)受注生産

バクテリアサイズまで粉砕した畜光粒子をカバーグラスに貼り付けています。無機系で極めて耐久性に富むため,退色の心配はありません。このため,蛍光顕微鏡の照明心出し/調整,写真撮影の練習などに,安心してご利用いただけます。励起波長は幅広く,365nm〜490nmまでOK(短波長側で効率がよい)ですから,UV,V,BV,B励起が使えます。下図のように発光波長は520nm付近をピーク(UV励起の場合)としていますが比較的幅広です。透過蛍光/落射蛍光の両方に対応しています。
 本製品は畜光現象を蛍光観察に利用していますので,照明から発光までに100ミリ秒以上のタイムラグがあります。レーザースキャン顕微鏡の調整には使えません。
 超低輝度版も製作できます。暗順応した目でようやく確認できる程度の明るさです。暗い蛍光を必要とする場合はご指示下さい。



395nm紫外線発光ダイオードで励起したときのスペクトルです。縦軸は発光強度,横軸は光の波長(nm)です。395nm付近のピークが励起光で520nm付近のなだらかな山が発光体のスペクトルです。









蛍光検査板【F-TEST RGB】



20倍対物レンズ落射蛍光イメージ(V励起)



20倍対物レンズ落射蛍光イメージ(V励起)



【F-TEST RGB】蛍光顕微鏡検査板
 \6,600(一枚)受注生産

青,緑,黄,橙,赤に発光する無機系粒子を混合貼付した検査板です。無機系で極めて耐久性に富むため,染色標本のような退色の心配はなく,永くご利用いただけます。UV励起では主に青,緑が,V励起では画像一枚目に見られるように全ての色が,B励起(画像二枚目)では緑,黄,橙,赤,G励起では橙,赤が利用可能になっています。このため,本プレート1枚で多くのフィルタブロックに対応し,蛍光顕微鏡の照明心出し/調整,写真撮影の練習などにご利用いただけます。粒子は比較的大きなサイズをマウントしていますので鮮明な蛍光が見られます。透過蛍光/落射蛍光の両方に対応しています。
 本製品は畜光現象を蛍光観察に利用していますので,照明から発光までに100ミリ秒以上のタイムラグがあります。共焦点顕微鏡の調整には(たぶん)使えません。また,狭帯域の励起で観察波長が接近している場合にも対応していません。











コントラスト検査板【C-TEST】



【C-TEST】コントラスト検査板 価格 - (一枚)生産休止 再開未定

一枚のスライドグラス上に,珪藻が三種の封入剤で封じられたコントラスト検査板です(小型のカバーグラスが3つ並んでいます)。微細構造を持つ珪藻を使用し,高コントラスト(HC),低コントラスト(LC),超低コントラスト(ULC)の封入剤で封じられています。HCは明視野検鏡可能,LCはやや困難で,ULCは暗視野,微分干渉,位相差などのコントラスト法で検鏡する必要があります。いずれの封入条件も,物体(珪藻)の屈折率が封入剤の屈折率を下回るように製作されており,d線における屈折率差は0.31(HC),0.13(LC),0.07(ULC)です。

C-test検鏡法によるコントラストの違い


この画像はC-TESTを利用して明視野(BF),微分干渉(DIC),位相差(Ph)の各方法により得られた珪藻像です(すべての画像で対物NA=0.65)。いずれの検鏡法でもULCで超低コントラスト,HCで高コントラストになっていることがわかります。ULCは非常にコントラストが低く,いずれの検鏡法でも高度な技量が求められます。水封試料で無染色の生物試料を覗く場合と似通った光学条件になっていますので,生細胞を検鏡する方のテストプレパラートに最適です。LC,HCについても機器の状態確認や照明技法の練習用に有用です。






本製品は次の用途を想定しています。

1)顕微鏡取扱業者のテスト用プレパラートとして
2)各種コントラスト法を駆使する研究者の標準試料として
3)封入剤とコントラストの関係を学ぶための教材として

とくに1)の用途が重要と考えています。一部の業者は顕微鏡納入時の確認用に染色プレパラートを用いています。透過明視野の性能確認の場合はこれでも使えるのですが,微分干渉やホフマン,暗視野法,またプランクトンを水試料で検鏡する場合の顕微鏡などは,染色標本では正確な評価はできません。コントラストの低い透明体試料が必要です。微分干渉等のコントラスト効果実演用試料としても有用です。

推奨観察波長は440nm〜(HC),410nm〜(LC),400nm〜(ULC)です。

また,ビデオ顕微鏡法使用時の標準試料や,教材としても適しています。LC,ULCにおいて肉眼で確認できない微細構造がビデオコントラストで浮き上がるのを確認できます。お手持ちの機器をチューニングする際の標準試料としても最適です。

可視透過率データが必要な方は+\2,000で実測データ(一枚,400nm〜700nm付近)をCDROMで同封いたします。予めお知らせ下さい。

本製品は受注生産です。使用する珪藻はCoscinodiscus属が標準品ですが,Nitzschia属,Stephanodiscus属でも製作できます(特別に指定下さればそれで製作します)。他の珪藻では製作しません。納期は20日程度を見込んで下さい。特注でHC,ULCだけの組合せ品も製作します(\6,000)。










トップに戻る