研ぎ特集記事

「本日の画像」コーナーに掲載した研ぎ関連記事のうち,主要なものを抜き出したものです。砥石にご興味ある方はこちらこちらもご覧下さい。



2010年12月18日


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忙しい日々が続いていて,全国203人の(^^;研ぎファンのことを考える余裕もなくなってきたなぁと思いながら,夕食の親子丼を作っていました。それで思いだしたました。その昔,筆者が研ぎの猛練習をしていたころ,身近な人から包丁をかき集めては研ぎの材料に使っていました。奥様方にはたいへん好評で,皆の感想は「お肉がよく切れる〜」でした。野菜よりも,切りにくい肉がスパスパと切れるのに感動したようです。筆者も,肉を切るときには研ぎあげた包丁を使います。上の画像は鶏もも肉を切ったところです。板前からは鼻で笑われそうですが,まぁそういう画像もたまにはいいかと。包丁は正本の使い古しを丸尾山の「合さ」で仕上げてあります。合さには,名倉として青砥を擦っておくのが早く研ぐコツです(撮影/MWS)。





2010年12月4日


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ハンドセクション法やハンドミクロトームなどで顕微鏡観察用の切片を作るときにはカミソリがよく利用されます。むかしはレザーも利用されたのですが,今は使い捨てのカミソリがが主流です。このカミソリ,どちらも革砥で研ぎ直しができます。レザーの場合,研磨剤をつけた革砥にカミソリをぴったりつけ,一方向に研ぎます。革砥の方向は毛羽が立たない向き,刃は絶対に切る方向に動かさないこと,守ることはそれだけです。切れ味が鈍った程度なら,これで復活します。研磨剤は最初は青棒,次はGCの#30000を使っています。刃こぼれがあるときは砥石を使って刃をつけ直してから,革砥にかけます。研ぎは人それぞれ方法が異なります。ここで紹介したのは,筆者が勝手にやっている我流の方法です(撮影/MWS)。





2010年11月20日


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骨董市で入手した鉋は,多いときには一日数回も合砥にのせて感触を確かめています。すべて掲載するとこのコーナーが埋まってしまいますので撮影していませんが,全国256人の研ぎファン(^^;のためにも,たまには画像を掲載しなければなりません。きょうの画像は丸尾山砥石の千枚→山不明の微細な巣板→山不明の深緑色コッパと研いだものです。明るく均一な仕上がりが魅力です。撮影にはマクロレンズを装着したコンパクトデジタルカメラ,蛍光灯に拡散板,レンズを使った照明を施しています。刃物は反射率が高く,輝度の高い部分と暗部とではうまく表現できません。撮影では主に照明テクニックを磨くということになりますが,光源の大きさや照射角度などで様々に絵が変化し,これは顕微鏡照明並みに奥が深そうです。上は反射光を撮影した例,下は反射光を逃がした例です(撮影/MWS)。

P.S. それにしても,この鉋の前の持ち主は,ノミと同じ部分を叩いて裏出ししていますねぇ。研ぎ落としたいような気もします。。





2010年11月15日


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骨董市で入手した鉋は,今ひとつ裏が気に入りませんでしたので,全国210人の研ぎファン(^^;のことも考え,すきなおしました。筆者はこれまで,小刀や包丁,鉋の裏すきを作り直したことが何度かありますが,いずれも砥石に手研ぎという原始的な方法でした。今回ははじめて電動工具(リューター)を使って削りました。電動工具は何となく邪道な気もしていたのですが,京都で会った宮大工さんが,リューターで削ってますよ,と言っていたのを聞いて考えを改めました。そういえば人類は,その時代に使えるものを使って生きてきたのでした。早速やってみると,効率がよいことこの上ありません。あまり奇麗にはできませんでしたが,入手時よりはずいぶんマシになりました(撮影/MWS)。





2010年10月29日


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天然砥石は道具としての価値もさることながら,観賞用としての価値も有すると筆者は思います。上の画像は丸尾山砥石の合さという層のかけらですが,何と美しい模様かと感嘆します。自然科学系を解するひとにとっては,砥石を買い求めるということは,道具を入手するということでもありますが,海底堆積物の化石を入手するということでもあります。この紫色の成分は何だろうか,どうやったら調べられるだろうかと考える時間が,また楽しいのです(撮影/MWS)。





2010年10月28日


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劇的ビフォーアフター楽しみにしております,とのお言葉を頂戴してしまいましたので,さっそく全国150人の(^^;研ぎファンのためにも骨董品カンナの備忘録を掲載します。この鉋,激しく丸刃になっていて,しかも角度が大切れを通り越して研ぎにくいほどに寝かせてありました。たぶん,前の持ち主にとっては,刃角を15度くらいに研いで丸刃になるとちょうど30度くらいになったのだろうと想像しました。それはそれで一つのやり方なのかもしれません。が,筆者にはそのような器用なワザはないので,平面が必要です。

ここまでひどい丸刃だと,砥石が減ってもったいないので,安価な砥石を使います。まずアルミナ#400の砥石をかまぼこ型の凸面に整形します。この凸面で鉋の凸面を凹ませるように研ぎます。こうすると面で研がずに線で研ぐことができますので早く仕上がります。刃先も凸面で研ぎ下ろすようにゾリゾリと減らし,刃先角度を鈍角にもっていきます。慣れると鉋のどこに砥石が当たっているかわかるので,平面近くに持っていくことができます。凸面砥石の良いところは,全面使え,面なおしが必要ないことです。作業が早くできます。

荒砥作業が終わったら,シャプトンオレンジ(刃の黒幕)#1000で平面に研ぎます。長い長い時間がかかります。刃の黒幕は,研いでいるときに曲がっていますので,精度の高い平面が出しにくいことがあります。そこで硬い台に貼り付けます。筆者は,べつの使い終わったシャプトンM5の素焼板に貼り付けています。刃先に力を入れ,全体が平面になるまで根気よく研磨します。#1000の研ぎが終わったら,シャプトン刃の黒幕#2000で数分研ぎます。きちんと平面が出ていれば,この砥石の研ぎはすぐに終わります。表が終わったら裏も研いで平面を出します。

最後は仕上げです。やはり丸尾山砥石の出番となります。まず黄色巣板にのせて研ぎます。この砥石は柔らかめで,ほんの少し弾力がある感じがありますので,全体を効率よく研磨できます。これで終わりでもよいですが,戸前色物に載せて研ぎ目を細かくしたあと,先頃購入した千枚で仕上げ研ぎを行います。千枚のほどよい硬さと研ぎ味はすばらしく,地鉄の明るい色も素晴らしいものがあります。こうして休日の午後は楽しく過ぎたのでした。2.5時間はかかったように思います。

きょうの画像はそうやって研ぎあげた鉋の姿です。この鉋は砥石によって地鉄の色がどのように変化するのかを確かめるために入手したものなので,切れ味はあまり問いません。その代わり,地鉄の美しいものが欲しかったわけです。画像にみられるように,何度も軟鉄を折り返した跡があり,ゴマも美しく,研磨のテスト用刃物としてはとてもよい買い物だったとニコニコです。千枚で研ぐと底光りするような鏡面になり,照明を背景に顕微鏡を反射させて見ましたが,その輪郭をはっきりとみることができます(撮影/MWS)。





2010年10月26日


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予定外に骨董市にぶつかり,ちょっと覗いてしまいました。新たに入荷した仕上砥石にちょうど良い鉋刃はないかと探してみると,手頃な刃がみえます。表は極度の丸っ刃になっていてお話になりません。裏はまぁまぁ使えそうです。じゅうぶん修理可能とみましたが,ちょっとお値段が高めでした。躊躇して元に戻そうとしたとき,『顕微鏡』と書かれているのが目に入りました。ふーむ。筆者の研磨趣味に顕微鏡の文字が刻まれているとなれば,心が動きます。全国150人の(笑)研ぎファンのために連れて帰ることにしました(撮影/MWS)。





2010年10月24日


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天然砥石で打ち刃物を研ぐと,地鉄の模様が浮き出てきて素晴らしい眺めになります。画像は丸尾山砥石(千枚層のもの)で研いだ寸八+αサイズの鉋ですが,地鉄が明るく曇り,鋼が輝いています。この美しさはなかなかカメラに収まりません。この画像を撮影するにも,クローズアップレンズ+マクロモード,三脚使用,背景用拡散板,直管蛍光灯,拡散板とコンデンサレンズによる照明,露出は0.3EVずつ変えて撮影するなど,いろいろ工夫していますが,目で見た階調とは異なるように見えます。キラキラ光るものは目で見るのがいちばんのようです(撮影/MWS)。





2010年10月23日


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天然仕上砥石には巣板とよばれる種類のものがあります。巣があるので巣板と呼ばれています。画像一枚目のような穴ぼこが,巣とよばれるものの一例です(拡大してあります)。これが研ぎ面にたくさんあると,研いでいるときに刃物に傷をつけることがありますので嫌われています。巣の部分を,堆積断面から見てみたのが画像の2,3枚目です。これを見ると,巣が集中している部分は,ひび割れに挟まれた領域であることがわかります。これをもとに巣の形成過程を想像してみましょう。

まず砥石の堆積層に平行なひび割れが生じ,そこに水が染みこみます。そのすぐ近くにもう一カ所平行なひび割れが生じ,そこにも水が染みこみます。すると,一つめと二つめのひび割れの間にも水が通るようになり,その水が通過したところで化学反応が起こって巣が成長していく,というプロセスが成立するように思います。地中深くの水は酸素を含んでいないので鉄が溶け込むことができます。その鉄が空気にさらさせると沈殿し,砥石に付着して茶褐色の染みを残します。

こんな感じでしょうか。画像2,3枚目を見ると,大きな穴があいていないきれいな部分にも,とても小さな穴があいていることがわかります。たぶん,この小穴(巣)が水の通り道になれば,巣がどんどん成長して大穴になり,鉄などが沈着していくのではないでしょうか。ちょっとした観察から想像が膨らみます(撮影/MWS)。





2010年10月22日


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訪問先の砥石販売店,砥取家では様々な砥石が並べてありました。どうやって運んだのだろうかという大きな砥石もありました。研ぎ台も用意されていて,いつでも試し研ぎができます。筆者は小刀を持参しましたので,これで試し研ぎをさせてもらいました。顕微鏡の良し悪しを判定するには珪藻プレパラートが欠かせません。それと同じように,砥石の良し悪し(というか,相性のようなもの)を判定するには刃物が欠かせないのです。好みを伝えて幾つか試し研ぎをさせていただくうちに,素晴らしい石がみつかり,東京まで連れて帰ることができました。砥石販売店で試し研ぎをさせてもらえるところは希有と言ってもいいでしょう。その中にあって,砥取家は異色の存在です。商品に自信がおありなのだと思います(撮影/MWS)。





2010年10月21日


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京都府は昔から天然砥石の産地として名高いところです。砥石は全国に産しますが,良質の仕上砥については産地が限られていて,京都がとくにすぐれているとのことです。市街地に近い山を散歩していても,砥石型ケイ質頁岩と思われるものがごろごろしています。まったく羨ましい限りです。亀岡方面は青砥の産地として有名ですが,工事現場などで,青砥と思われる砥石が顔を出していることがあります(上の画像)。露頭や地表に近いところでは風化が進んでいて,とても砥石には使えませんが,名倉としては使えそうです(撮影/MWS)。





2010年10月7日


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全面サビに覆われた鉄片があるのですが,これにも研ぎを施したくなり,ちょっと手がけてみました。盛大なサビとともに,紙の繊維が巻き付いていて,オイルが多量に付着しています。溶剤でオイルを拭き取り,まずは仕上砥石をかけてサビのようすを見ます。かなり深いサビであることは一目瞭然ですが,いきなり大村砥クラスをかけてしまうと,あとで傷落としにえらい苦労をすることになります,最初はうんと細かい砥石を当ててみて,サビの深さを探るのです。で,結果はかなりの深さなので,修復にはかなりの時間がかかりそうですね(撮影/MWS)。





2010年10月6日


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秋になるとモリモリと研ぎ意欲が湧いてきます(笑)。体調がよくなって気力が出てくることを示しているのかもしれません。昨年も10月頃は研ぎの毎日だったような気がします。そんなわけで7月に入手した切り出しをようやく研ぎ直ししました。この切り出しは,表は丸っ刃で刃裏も立てて研いであり,まったく使い物にならない状態で売られていたものです。ものは良さそうだったので値切って買い,修理法をあれこれ考えていました。きょうはその備忘録です。

刃裏に角度がついているのが致命的なので,まず表を急角度で研ぎ,裏がなくなるまで研ぎ下ろします(シャプトンモス#180)。裏が完全になくなったら,表をシャプトンオレンジ#10000で完全平面にします。これが完了したらシャプトンオレンジ#1000で裏押しします。中砥での裏押しなので削りすぎないように,バランスよく裏が出るように細心の注意を払います。一応の裏が出たらシャプトングリーン#2000で表,裏を研ぎます。表は多少波打つことがあるのでこの段階で完全に修正しておきます。裏は丁寧に,まんべんなく力をかけるように裏押しして#1000の傷を消します。

これで使うことができますが,観賞用に(笑),仕上げ研ぎを施します。丸尾山戸前(色物)で表を研ぎ,次に神前産の巣板で研ぎます。きれいな表になったら,化学仕上砥石(スエヒロ,GC竹色,#8000)で裏押しします。かなり長い時間丁寧に裏を出します。次に大平産の戸前で研いで研ぎ目を細かくし,最後に尾崎産の合砥に少しの白名倉をかけ,それで研ぎあげます。この段階まで来ると,刃裏を天然砥石では研がないことが多いです。人造砥石仕上げの方が錆びにくいからです。

こうしてできあがった切り出しがきょうの画像ですが,この買い物は正解でした。こんなに素敵な刃裏の切り出しは初めて見ました。安価な切り出しでは輪郭だけなぞったニセ裏の製品が多く,本物の刃裏が糸裏で平面が出ているなんてものは,滅多にお目にかかれません(撮影/MWS)。





2010年8月19日


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ここのところいろいろなものが入荷しているのですが,こんなスゴイものもあります。全国150人の(^^;研ぎファンのためにも砥石を当ててみたいものですが,いまは時間がありません。しかしコレ,眺めるだけで頭がぐるぐると回転し,時間が過ぎ去っていきます(撮影/MWS)。





2010年7月20日


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先日入手した青紙の切り出しはまだ全然手をつけていません。まったく時間がないことが原因ではありますが,攻め方が決まっていないというのも取りかかりたくない気分の原因です。ほとんど使っていない切り出しですが,刃裏をよくみると,深いサビが点々としていて,さらに悪いことに,少し立てて研いだ形跡があります。こういうものの修復はかなり難しく時間もかかるので,どうやってきれいな裏を作るべきか,いくつかの攻め方を考えておくのです。実際は研いでいる最中に方針が定まってきてしまうのですが,あれこれ手法をシミュレートしておくことは有意義だと思っています(撮影/MWS)。





2010年7月15日


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このところ研ぎ関係の画像がありませんが,全国150人の(^^;研ぎファンを忘れたわけではありまっせん。左手人差し指をケガしたので,切り出しの研ぎは控えていましたが,お勉強材料はちゃんと入荷しています。ワザの類は毎日手を動かしていないとだんだん心許なくなってきます。やはり定期的にお勉強をして,形の崩れた刃物を修復してあげねばなりません…。という言い訳をつぶやきながら,骨董市で面白そうなものがあるとついつい買い込んでしまいます。このところの入荷で面白そうなのは,青紙の切り出しと,その下の白引きでしょうか(使い方わかりませんが…)。一番下の肥後守は,珍しく,きちんと研いであります。大事に使って刃がだいぶ減っていますが,どうしてこれを手放したんでしょうね(撮影/MWS)。





2010年5月23日


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接着剤が硬化したら側面や砥面を研磨して完成です。コンクリートブロックにGC荒砥の粒を擦り付けて荒削りします。次に刃の黒幕(白)で修正研磨,さらに大村砥で修正します。これで形が出たらスエヒロの鎌砥石(赤レンガ相当)で大村砥の傷を取り,最後は凝灰岩系の中砥で仕上げます。砥面はシャプトンオレンジ,グリーンで修正の後,目の細かい巣板などを用いて表面の荒れをなくします。これで残り10ミリほどになった謎の合砥を最後まで使うことができます(撮影/MWS)。






2010年5月22日


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割れた砥石は結局,ほかの薄くなった砥石の台として使うことにしました。合砥などは木に接着して使うことも多いですが,砥石が薄くなると木の反りに負けて折れることがあります。やはり石は石に貼り付けるのがいちばんです。上の画像は作業中の様子です。出所不明の,ひじょうに細かく硬い砥石を割れた砥石に貼り付けています。裏になる面には,きちんと平面が出るように,欠けている部分に青砥を整形して貼り付けています。接着剤はアラルダイトです(撮影/MWS)。






2010年5月20日


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天然砥石(丸尾山天上戸前色物)の側面にヒビがみられましたので二つに割りました。割ると言っても手でヒビを広げるように引っ張るだけです。しばらくすると音もなく二つに分かれます。砥石の側面にヒビが取り巻いていて,使用後もその周囲がなかなか乾かないときは,すでに二つに割れているといったら言い過ぎでしょうか。割れた面をよくみると,周囲から泥水が染みこんだ後があり,くっついていた面はわずかであることが分かります。また泥水の痕跡も新しいもので,せいぜい数年以内に入ったヒビではないかと思います。この砥石は筋の多いコッパで,良好に使える厚さは10ミリほどでしたので,ちょうどよい位置から割れて得した気分です。残りの40ミリはひじょうに硬い筋が邪魔で,ふつうの研ぎ物には使えませんが,小さく割って欠片を作り,サビ取りや磨き用の砥石にしようかと思案中です(撮影/MWS)。






2010年5月18日


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これは握り鋏(和鋏)の刃裏です。ハサミというのはよく知られているように,刃裏と刃裏が点で交わる刃物です。ハサミは微妙に捻れていて,絶妙な角度で刃裏同士が合わさります。上の画像は横幅0.57mmですが,刃裏についている小刃がひじょうに幅の狭いものであることがわかります。これだけ幅が狭ければ,下手な裏研ぎによって縁ダレを起こしてしまったらまったく切れなくなってしまうでしょう。一般的には裏研ぎ厳禁な意味がよくわかります。一般的に,と書いたのは,上の画像のハサミは(見ればわかるように)裏研ぎしてあるからです。捨てられる直前で拾われたこの握り鋏は,刃裏がぼろぼろにサビて腐蝕孔が深かったので裏研ぎして削ったのでした。縁ダレを起こさず裏研ぎできれば,捨てるような鋏でも切れ味が復活することが多いのです。それでもダメなら裏すきを作るしかありませんが…(撮影/MWS)。






2010年5月17日


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きのう掲載した2枚の画像間で減算処理(バイアス+50)すると上の画像になります。刃物の銘がひじょうにくっきりと見えるようになります。減算処理は顕微鏡写真でもよく使われますが,もちろん普通撮影でも使える場面があります。デジタル時代の恩恵です。減算に興味のある方はきのうの画像2枚を使って試してみると,画像の変化がわかって勉強になるかもしれません(撮影/MWS)。






2010年5月16日


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刃物の銘などはコントラストが低くなかなか写しにくいものです。表面の反射光を利用して撮影するわけですが,黒皮の部分であってもぎらつきのある見づらい画像になりがちです(上の画像)。そんなときは偏光板を利用して偏光で照明します。そして表面で偏光を反射させ,カメラ側でそれをカットします(下の画像)。こうすると銘の部分が際だってよくみえるようになります。

画像の鉋刃は身幅72mm,刃幅58mm程度で,寸八サイズではないかと思います。骨董市で購入して修理したものですが(2009年10月11-12日付け画像参照),よく切れてお気に入りです。しかし作者がわかりません。『白頭巾』と書かれ独特のマークが左下に入っています。この鉋の作者をご存じの方はぜひ,こちらまでご連絡をいただけると有り難いです(撮影/MWS)。






2010年5月15日


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研ぎ物をするたびに,研ぎの急所は中研ぎだと感じます。#1000程度で平面出しが済んでいれば,#2000は1〜2分,そのあとの青砥は1分くらい,次の合砥も数分で済みます。ごくわずかでも狂いが認められたら,それを合砥で修正するのは大変です。面倒と感じても#1000〜1500に戻った方が早く作業が終わります。上の切り出しはそのようにして仕上げたもので,合砥には丸尾山の誇る名砥石,合さを使っています。下の画像では偏光をカットしています(撮影/MWS)。






2010年5月14日


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望む画像を得るためには照明や撮影法を工夫しなければなりません。このことは顕微鏡写真でも普通撮影でも同じです。きょうの画像は筆者所有の切り出しの例です。刃物は金属光沢面に写り込みが起こるので,これを防ぐために,大型拡散板などで四方から柔らかな光が当たるようにセットします。光の向きや反射面のカメラに対する角度も重要です。また,金属面や金属酸化物からの反射光はある程度偏光していますので(*1),これを制御することも好みのコントラストを得る上で有効です。下の画像は偏光をカットした例ですが,地鉄が際だち,黒皮が引き締まります(撮影/MWS)。

*1 写真の教科書的には金属面からの反射光は非偏光ということになっています。しかし実際調べてみると,多少偏光しているケースが多く見受けられます。






2010年5月13日


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上の画像は収差が残っているレンズで撮影したコノドントです。まず像面湾曲が目立ちます。コノドントに不自然な青紫色がまとわりついており,軸上色収差が残存していることがわかります。物体の細部構造が霞んでいることから,球面収差があるのか,または無効拡大がかかっていると推測されます(実際は両方です)。像の解釈ができるようになると,画像を一目みれば原因がどこにあるのかを推測できるようになります(DF,撮影/MWS)。





2010年5月12日


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これは天然砥石の表面に存在するコノドントで,大きさは0.6ミリほどです。検鏡に用いた砥石は出所不明のものですが,きめ細かい梨地の合砥です。コノドントについては,丸尾山砥石のものを多数掲載しましたが(2009年9月),丸尾山の場合はコノドントの実質が抜けてできた穴が見えます。きょうの砥石では,コノドントの中身が保存されているようにみえ,大変おもしろい眺めになっています。コノドントの形態と保存度合いを指標にすれば,この合砥の出所が推測できるかもしれません(DF,撮影/MWS)。





2010年4月22日


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その肥後浮丸特級の切れ味ですが,申し分ありません。たぶん値段からしてSK鋼クラスだろうと思いますが,炭素鋼ですからよく切れます。上の画像は革砥で仕上げて毛髪に切り込みを入れた例で,画像中段はその拡大像です。一本の毛髪が3つに切れていることがわかると思います。カミソリと同等の切れ味です。念のために申し上げますと,これは,それなりに研ぎができる人には普通のことで,筆者にはパソコンの向こうから「ぜんぜん大したことねぇよ」という声が聞こえてきそうなくらいです。その通りで,刃線がカーブの刃物は蛤刃に仕上げるのが定石なので,刃先が合いやすく,鋭さが出やすいのです。もしも鉋や切り出しで完全平面を出し,同じだけの鋭さを出そうとしたらちょっと難しくなります。

面白いのは画像三枚目で,一度毛髪を切った刃先には油が付着しています。髪の毛が油っぽいことは誰でも知っているわけですが,切った刃先に0.001mmクラスの油滴が付着することは筆者は知りませんでした。また刃先にはコンマ数μメートルのカエリのようなものが見えています。単なる汚れかもしれませんが,毛髪は銅線なみに硬いですから,鋭い刃先は徐々に鈍っているという可能性もあります(epiDF,撮影/MWS)。





2010年4月21日


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肥後守(肥後浮丸特級)もすっかり仕上がり生き返りました。捨てられる運命だったところ危うく命拾いといったところでしょうか。安価な利器材ということもあって,刃は薄く,修理はとてもやりやすいですね。荒砥で刃線を決め,耐水ペーパーで峰を磨き,中砥で切刃を研ぎ,しのぎをきちっと出します。それからもう一度中砥で丁寧に本刃付けして仕上砥にかけます。上の画像は尾崎合砥+研磨剤で鏡面仕上げにした様子です。下の画像はその一段階前で,丸尾山合さの後に新田産巣板で内曇り効果を出したものです。割込の名のとおり,軟鉄の間にハガネが割り込んであるのがよく見えます。鞘は鉄製で,そのまま刃を収納すると刃先の一部が鞘に当たってしまい傷みます。そのため鞘の幅をペンチで絞り込み,ちょうど挟まるくらいにしますが,刃先が心配ですし,抜けにくくもなります。そこで鞘の中にV字のプラ板を仕込んで刃先を守ります(撮影/MWS)。





2010年4月17日


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廃棄品になっていた肥後守を引き取ってきました。『登録割込 肥後浮丸特選』とありますから,本家の肥後守のコピー品みたいなものでしょうか。下の画像に見られるように,刃は大欠けし,先端はこじった跡があり捻れています。サビがひどいのは見た目にもわかりますが,顕微鏡で見ると,大きな錆粒子が成長している様子や,地鉄に深い腐蝕穴があいていることがわかります。小さな黒い点々も,虫歯のようにかなり深く浸食しているのです。この肥後守は子どもの教材用の安価なものかと思いますが,一度も研がれたこともなく,ドライバーのようにこじるように使われ,全体がサビ,やがて捨てられるとすれば,道具としてあまりにも不運なものと言わざるを得ません。この刃物は道具としても優秀で,価格からはまったく想像できないほどの切れ味を有するのです(撮影/MWS)。





2010年4月16日


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小刀が研ぎ上がって喜んでいても切れなければ意味がありません。適切な対象で切れ味をチェックしなければ,その刃物が本当に鋭く切れるのかどうかは不明です。そこで有名な切れ味試験,ティシュー吊るし切りを行います。方法は簡単で,二枚重ねのティッシュペーパーを一枚ずつに剥がし,吊るし切りしてみます。一枚はたて,一枚は横に切ります。ティッシュは繊維方向がありますから,切れやすい方向があります。どの向きでも下端の部分まで吊るし切りができれば鋭い刃がついているといえます。少なくとも毛を剃るのには不自由しない程度になっているでしょう。上の画像は切りにくい方向の吊るし切りの結果ですが,何度やっても5/5でパーフェクトです。下の画像は切りやすい繊維方向の結果ですが,楽々切れます。骨董市の買い物は大正解だったようです(撮影/MWS)。





2010年4月15日


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件の小刀はさっそく勉強材料に供され,実用品に生まれ変わりました。備忘録がてら作業を記します。まず裏が出やすくなるように,しのぎの少し下を叩いておきます。次に耐水ペーパー#2000〜5000で裏を磨きます。錆取りをかねて,裏すきが深くなるように祈りながら磨きます。次に荒砥で刃線を決めます。元よりも短くしています。刃線がある程度決まったらダイヤで切刃を磨いて肉を落とします。だいたい切刃の面が出てきたらシャプトンモス(#180)で切刃をつけます。体力と忍耐の作業です。次にシャプトン刃の黒幕オレンジ(#1000)で切刃を完全な平面にします。これがなかなか大変な作業です。平面崩れしないように,天然大村砥でシャプトンオレンジを頻繁に面直しします。切刃の平面が出たらシャプトン刃の黒幕グリーン(#2000)で切刃を滑らかにします。

ここまでできたら裏を付けます。シャプトンオレンジで強く裏を押し,バランスよく裏がつくように力を加減します。一カ所でも浮いていると刃がつかないので刃線全体に裏刃がつくように注意します。裏がついたらシャプトングリーン,丸尾山戸前で仕上げます。

裏が概ねできあがったら表を研ぎ直しします。まずシャプトンオレンジから始め,グリーン,丸尾山合さ,戸前,神前産巣板の順に研いでいきます。裏は研ぎません。仕上げ研ぎの段階になると,整形段階,中研ぎ段階の欠点が浮き上がってくるので,その部分を修正するためにシャプトングリーン,丸尾山天上戸前,鳴滝巣板などを使って整形していきます。整形するときは砥石の組合せが大事です。研磨痕の具合を見ながら早く作業ができる砥石を見極めます。2種の砥石で済まそうとするよりも4種の砥石を使った方が早く作業ができることもあります。

形ができあがったら,先端を切り落とします。好みの重心と強度を確保するためです。換気扇の下でプロクソンを使います。切り落としたら赤レンガ(キング砥石)と新田巣板でバリ取りをしておきます。

最後は仕上げ研ぎです。スエヒロ#8000で丁寧に裏押しして,表も研ぎます。次に鳴滝巣板をかけてから,尾崎産合砥をかけます。尾崎にはスエヒロ#8000の砥汁をつけておきます。これでそろりそろりと表裏を研いでできあがりです。言葉で書くと大したことないですが,なかなか時間のかかる作業です(撮影/MWS)。





2010年4月14日


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小刀を骨董市で買うのには理由があります。むかし新品の小刀(青紙一号)を購入して研いでみたところ,裏の平面が出ませんでした。ねじれているのです。輪郭にきれいに裏が出ているように見えたのは偽物たったのです。思いっきり研いで裏をつけたらベタ裏になってしまいました。筆者はベタ裏の研ぎが苦手なので我慢ならず,裏を砥石で掘って平面を付けなおしましたが,言語に絶する手間を要しました。その後,白紙の小刀を複数購入しましたが,これもダメでした。数千円程度の品物ですから仕方がない面もあるのですが,ニセ裏をつけるくらいなら何もしない方が有り難いですね。

新品でも刃裏を付け直す作業が必要なのですから,それなら安価な骨董市の鉄屑を再生する方が楽しいのです。きょうの画像は新たに入荷した骨董小刀ですが,何と刃裏を研いだ形跡がありません。表は研いでありますが,研ぎといえるレベルではなく,バターナイフ以下です。研ぎが好きな人ならわかると思いますが,これは素材としては最高です。やり甲斐があります(撮影/MWS)。





2010年4月13日


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週末は勉強材料を仕入れに行きました。ふだんはあまり物欲が湧かない筆者も,ついついサイフのヒモが緩むのが骨董市です。道具箱をひっくり返して品定めする時間が楽しいですね。古い鉄屑を買って本当に鉄屑だったり,とても良い刃物だったりと,予想を確かめる時間もまた楽し。使えないものが使えるものに変化してゆくその工程がまた面白いのです。今回もまた,たくさん勉強できそうです(撮影/MWS)。





2010年4月8日


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硬く締まったヒノキの赤身にカビが生えてきたので削りものをしました。ひじょうに鋭く刃付けした切り出しを使い,15分ほど木口を削りました。刃先先端の変化を顕微鏡で確かめると,小さな刃こぼれが発生しているのがよくわかります。画像の横幅は約6ミリなので,この刃こぼれは肉眼でも何とか見えるサイズです。このくらいの欠けでもよく切れますが,刃先の滑らかな状態を保つためには小刃を入れた方がよさそうです(DF,撮影/MWS)。





2010年4月7日


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また砥石を買ってしまいました。。丸尾山の「合さ」という砥石です。この山の砥石は各層揃えましたので大体の性質は判明しましたが,そうなるとお気に入りの一本が欲しくなるわけです。小学校に入る前から石ころを拾うのが趣味だった筆者にとっては,砥石は眺めるだけでなく,実用性も換え備えた一粒で何度もおいしい存在です。今回の石は30〜40切りのサイズで堂々たる風格があります。一本だけ上の画像に見られるような,石英が詰まっている筋が走っていることもあってか,お手頃な価格で購入させて頂きました。筋の石英は硬くて,針で掘ると周囲が掘れて石英が浮かび上がってきますが,筆者は顕微鏡を見ながら作業できるので,砥石面を予め良好に保てます。なお,この筋は画像では太く見えますが,髪の毛よりも細いものです(DF,撮影/MWS)。





2010年3月30日


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きょうの画像は砥石表面の拡大像です。丸尾山砥石「合さ」の表面を撮影しています。この砥石にはときどき,鮮やかな赤紫色〜あずき色の斑点や模様があります。上の画像は鮮やかな斑点の例,下の画像は斑紋の例です。化学屋のセンスからいえば紫色はマンガンが定番ですが,この石もマンガンにより着色しているのでしょうか。砥石は海底堆積物が原料ですから,無酸素状態に曝されてマンガンイオンが溶出し,それが再び酸化されて濃縮された層ができることはあってもよさそうです。しかしそれは海底でのお話です。プレートに乗って京都の山の上まで運ばれたこの砥石は,なぜこんなにも鮮やかな色が出ているのか,説明は難しそうです(DF,画像/MWS)。





2010年3月21日


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これはミクロトーム替刃の画像です。ひじょうに硬く粉末特殊鋼の感じです。きわめて精密な刃がついており,もちろん抜群の切れ味です。画像でわかるように,小刃を付けて刃先の直線性を出しているようです。剃刀をこのレベルで研ぐのは容易でなく,標本の切片作成に使い捨ての替刃を使う意味がよくわかります(epiDF,画像/MWS)。





2010年3月19日


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きょうの画像も西洋剃刀(レザー)の刃ですが,きのうの画像とは違うものです。生産国は不明で,研いだ感触からはハイカーボンステンレスだと思います。上の画像は革砥(青棒付き)で研いだときの刃先です。1/1000ミリメートルほどのカエリが出ています。下の画像はそのカエリを革で取り去ったものです。直線の刃がついています。画面横幅は0.095ミリメートルです。このレベルのカエリは目で見ることはできません。指先でもわかりません。確認するには切れ味で確かめるか,顕微鏡でみるか,どちらかです(epiDF,画像/MWS)。





2010年3月18日


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上の画像は革砥で研ぎ上げた西洋剃刀(レザー)の刃です。かなり古いものでドイツ製です。鋼材は不明ですが鋼(ハガネ)の研ぎ味で,スゥエーデン鋼かもしれません。丸尾山の戸前で中研ぎを行い,尾崎産のひじょうに硬い仕上げ砥石で刃をつけたあとに,きのうの画像で紹介した革砥で研いでいます。仕上げに,別の軟らかい革砥で,研磨剤なしで数回研いでいます。画面上の倍率で500〜800倍になるかと思いますが,高い精度で直線の刃がついていることがわかります(epiDF,画像/MWS)。





2010年3月17日


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上の画像は革砥です。きのうの革とは違う種類で,撮影倍率はきのうの3倍です。繊維に研磨剤(酸化クロム)が絡んでいますが,研ぎによって平面になっているのがわかります。革砥は刃物の仕上げに使われます。上の画像のものは,カマボコ板に鉋をかけて平面を出し,同じ大きさに切った革を,正確に敷きつめた両面テープに密着して貼り付けたものです。カマボコ板の裏側にはゴム板を接着しておきます。革砥の面には青棒(酸化クロムをワックスで固めたもの)をこすりつけてあります。両刃の刃物を仕上げるのに便利に使っています(epiDF,画像/MWS)。





2010年3月12日


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これは鋼と地鉄の接合面です。鉋や包丁,切り出しなどでは軟鉄に鋼を合わせてありますが,その境目の部分です。刃境ともいいます。肉眼的にはくっきりと刃境が見えるものですが,顕微鏡的にはあいまいな境界のようです。地鉄に鋼を合わせて鍛造したときに,お互いの成分が行き来するわけですが,それが顕微鏡的にも見えるということかもしれません。しかし遠目に見ると,傷の付き方がまるで違うので刃境だということがわかります(epiDF,画像/MWS)。





2010年3月8日


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切刃を目の細かい仕上砥で研磨すると鏡のように輝き出します。研ぎにこだわる方々は鏡面仕上げのできる砥石などにも詳しいようです。この「鏡面仕上げ」という言葉は,どこからが鏡面でどこからが曇りなのかが曖昧でよく議論になるところです。筆者はレンズやミラーを日常扱っていますので,鏡面というと散乱光による曇りがないものをイメージしてしまいます。上の画像はそのように研ぎ上がった切り出しで蛍光灯を反射させた像です。梅ヶ畑尾崎産の仕上砥石を使っています。下の画像は丸尾山敷戸前で仕上げた切り出しで同じようにして撮影しましたが,こちらは散乱光がだいぶ出ています。両者の違いは散乱光の多寡だけでなく,刃境の反射率がまるで異なります(画像/MWS)。





2010年3月7日


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きのうの画像は裏刃でしたが,きちんと裏を出すには叩く必要がありました。幅5ミリほどの間を叩くのでけっこう気を遣います。骨董市で購入したこの切り出しは,裏のサビがひどく,相当に裏押ししないと鋼が出てきませんでした。しかしベタ裏になってしまうとまともに研げませんので,叩く必要が出てきたということです。最近,裏に不満があると,鉋でも包丁でも切り出しでも,叩いてしまいます。地鉄と鋼が合わせてあるということは,叩いても良い,ということを示していると勝手に解釈しています。ちゃんと糸裏になります。教科書的には良くないのかもしれませんが,やってみて確かめるということが大事だと思っています(画像/MWS)。





2010年3月6日


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これは切り出しの刃先(裏)です。たぶん炭素鋼です。京都梅ヶ畑尾崎産の仕上砥石で研いだものです。画面横幅が0.092ミリメートルほどなので,パソコンのモニタ上の倍率は1000倍〜1500倍くらいになるのではないかと思います。包丁など,立て気味に研ぐ刃物は直線の刃先を作るのが簡単ですが,切り出しや鉋など,面で研ぐ刃物は刃先がきれいな直線になかなかなりません。上の画像でも1/1000ミリメートルレベルの鋸歯になっていることがわかります。切刃/裏刃は鏡面で,反射を利用して活字が読めるほどですが,顕微鏡レベルでは細かな傷が残っているのがわかります(epiDF,画像/MWS)。





2010年1月3日


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知人から安い出刃を一本欲しいと頼まれましたので早速整形に取りかかっています。安価な出刃は刃付けがいいかげんで,不良品といっても良いほどです。この包丁も表は鈍角の二段刃,裏は波打ち,裏押ししても切っ先付近で裏が砥石に当たりません。さらに裏からも鈍角に切刃がつけてあり,切刃が減るまでの当分の間は裏押しの効果が出ません。しのぎは丸く,霞はニセモノで,部分的に鎬を越えて霞がかかっています。切刃は手間がかからないように直線的につけられていて,その表面は波打っています。こういうクセを見抜き,叩いて裏を正確に出し,切刃を滑らかに仕上げるのは実に楽しい作業です。けっこう忙しい日々が続いていたのですが,久々のガス抜きになりました(撮影/MWS)。





2009年10月28日


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現場の石をタガネで割って整形し,それを面だしして作ったのがこの砥石です。長径約30センチメートルで,堆積面がうまく出ています。10年近く前にも作ったことがあるのですが,そのときは小振りのもので質も今ひとつでしたので,今回は硬めで緻密な物を作ってみました。早速研いでみると,中砥〜中仕上げといった粒度で,研磨力はかなり弱めです。砥石よりも置物として活用した方がよいかもしれません。難しいものです(撮影/MWS)。





2009年10月27日


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このサンプリング地点は小仏層という地層が走っていて,その昔は海の中だったということです。それを傍証するかのように,露頭は斜めになった頁岩となっています。海で堆積した頁岩は堆積面から剥離するように割れますので,地層を見ても判別しやすいものの一つです。ここに珪藻を取りに来た理由は,河川上流部の流水性珪藻を採取するという目的もさることながら,久しぶりにこの頁岩で砥石を作ってみたくなったのです(撮影/MWS)。





2009年10月15日


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これは切り出しの切刃付近です。右が鋼(ハガネ),左側が地鉄です。研磨痕を消して模様が浮き出るようにな仕上砥石(出所不明,大平山?)で研いであります。鋼は均一な組織のように見えますが,地鉄は不均一で模様が見えます。よくみると波状の模様があり,また黒い粒々があります。これは純度の高い鉄を何度も折り返して打った証でしょう。この模様は刃物好きの間では特別な意味を持ち,これを美しく見せるための特殊な研ぎも存在します。日本の伝統文化というのは,どんな些細な部分にも手抜きせず,工夫を重ね,美の領域にまで踏み込みます。刃物の模様一つでも,それを表現するための技術が連綿と受け継がれているのです(epiDF,撮影/MWS)。





2009年10月13日


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骨董市で買い求めた勉強材料はもう一つありました。古い鉄の切り出しが欲しくて探していたのです。真っ赤に錆びた鉄くずだらけの箱をひっくり返して探してみると,切り出しに似た形の鉄くずが2本あります。両方とも原形をとどめていないので,刃物として再生できるかどうかは微妙です。早速購入して研ぎ出してみると,両方とも裏刃の再生がむずかしく手こずりました。切刃をつけて試し切りしてみると,一本は刃が鈍っていて使い物になりません。もう一本は非常によい刃がつき,あまり堅くない木をすかっと削るのによさそうです。この刃物,相性のよい合砥をかけると地金に美しい模様が浮かび上がります(撮影/MWS)。





2009年10月12日


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きょうは勉強の備忘録です。件の鉋は順調に?裏を掘り進み,表もガンガン叩いて何とか裏出しすることができました。裏刃は広いところで7ミリ近くあり,あまり好ましいものではありませんが,昨日の凸面裏刃よりもずっとマシです。裏を叩き出すときは裏押しと同時進行で,叩くべき所を裏押しで確かめながら叩いていきます。裏押しは(推奨されませんが)合砥石で行い,顕微鏡のスライドグラスが空気膜で滑走するくらいに平面にしておきます。この鉋は裏金も変形していて裏刃が凸面でしたので,これも叩き出して平面の裏刃をつけました。あとは表の刃研ぎですが,シャプトン#1000→#2000→青砥→丸尾山天上戸前で仕上げました。丸尾山の砥石は研磨力が強く使いやすいですが,サビの発生が早いのが気になります。このため筆者は重曹水で研いでいます(撮影/MWS)。





2009年10月11日


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10日は骨董市をはしごしてたくさんの店を覗いてきました。目的は勉強材料を見つけるためです。古道具の中には非常によいものがあり,それらを安価に買い求めて,分解したり修理したりすると,とても勉強になるのです。それで勉強用の鉋を仕入れてきました。安価に入手したのはいいものの,刃を取りだしてみると見事なベタ裏になっており,裏刃付近はわずかに凸に(!)なっています。手放した理由がわかりました。このままでは使えませんので,修理する必要があります。上の画像は荒砥とダイヤモンドでうらすきを掘り直しているところです。そう簡単に掘れるものではありませんが,凹面鏡を作るような気分で少しずつ削っては光の反射をみて,修正研磨しています。果たしてうまくいくでしょうか。たいへんなお勉強になりそうですが,このような学び方は道具関係には特に有効だと思います。顕微鏡も同じで,筆者は,自分で分解して組み立てるところから勉強したのです(撮影/MWS)。






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