画像のご利用について





本日の画像

MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


【サイトトップ】 【9月】 【10月】 【11月】 【12月】 【2008年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2009年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2010年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】【2011年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】   【7月】   【8月】   【9月】 【10月】 【11月】 【12月】  【2012年1月】  【2月】  【3月】  【4月】  【5月】  【6月】  【7月】  【8月】  【9月】  【10月】  【11月】  【12月】  【2013年1月】  【2月】  【3月】  【今月】

2008年5月31日






ふつうの生物顕微鏡はステージの下から照明を行って標本を通過した光を対物レンズでとらえます。これをふつうの風景写真に即して考えると,常に正面に太陽がある逆光撮影ということになります。したがって,生物顕微鏡で物体の質感を表すには若干の工夫が必要になります。たとえば珪藻や放散虫,海綿骨針,石英などの鉱物は,ガラスのような質感を持っていますが,完全な逆光撮影にすると,平面的な,輝きのない,ガラスの質感が失われた画像が得られます(上の画像)。ではガラスっぽく見せるにはどうするかというと,順光撮影に近くなるような照明光を混ぜるということになります。私たちがガラスをガラスだと思うのは,単に透明であるというだけでなく,反射によって背景光よりも明るく輝く部分があるからです。ですから珪藻をガラスっぽく見せるには,対物レンズの開口数よりもコンデンサを開いて,暗視野光束を入れ,珪藻の輪郭を輝かせます。そしてコンデンサ中央部は適当に遮閉して,逆光となる照明光を減らします。するとガラスの質感が出てきます(下の画像)。このような工夫はふつうの生物顕微鏡でも,紙を使ったり拡散板を入れてみたり,軸外し照明を行ったりする操作で実現できます。このような練習には珪藻プレパラートや鉱物を封じたプレパラートが最適です。きょう用いた材料はMWS珪藻プレパラートの【COS-01】です(BF/oblique,撮影/MWS)。





2008年5月30日






きょうは日本海側からの珪藻土が入荷しました。知人の研究者が親切にも恵送されたのです。本当にありがたいことで,こうして多くの方々の支援のおかげで試料も徐々に増えてきています。さて,この珪藻土は約1100万年前程度の海底堆積物由来だそうです。実体顕微鏡で見ると縞々構造になっているのがよくわかりますが,この縞々一本が年単位かそれ以上の時間がかかって降り積もった珪藻です。少し倍率を上げると鱗片状の構造が見えますが,この鱗片一枚一枚が珪藻で,間を粘土鉱物や火山灰が埋めています。上手に処理すればここから珪藻を取り出せるはずなので,煮たり焼いたりの工夫をしてみる予定です(DF,撮影/MWS)。





2008年5月29日




海でも川でも,新しい試料が入荷して検鏡すると,そこには知らない生物が入っていることが多いのです。原生生物は非常に種類が多い上に,まとまった図鑑類があまりありませんので,調べるのも一苦労です。きょうの画像も何じゃコリャ?の世界の住人で,イカを思わせる足のような構造に剛毛らしい毛,眼点のような赤い点が胴体の両側についています。相模湾沿岸の海藻から出てきたこの生き物には見覚えがなく,この時点ではお手上げですね。とりあえず撮影して画像だけは残しておきます。ところで,この画像は微分干渉像ににていますが,偏射照明による像です。拡散板などをうまく使い,コンデンサ中心部を通る光束を弱く残しながら偏射照明を行い,物体の輪郭が少し輝く程度に暗視野光束を混ぜます。するとエッジが光って強調され,それでいて透過照明の特徴も残り(細胞内容物が透けてよく見えます),微細構造もある程度コントラストが向上します。ちょっとした工夫だけなのですが,できあがりの雰囲気はずいぶん変わります(oblique,撮影/MWS)。





2008年5月28日












顕微鏡を持ち歩かねばならない作業がいくつかあります。生きている珪藻の採取などでは,とりあえず採取して持ち帰り,試料処理後に検鏡することで間に合うことがほとんどです。しかし化石の採集となるとそうはいきません。珪藻化石に見えても,石英が主体の鉱物だったり,火山灰だったりということがよくあるのです。筆者も何度か,珪藻化石と間違えて火山灰を持ち帰ったことがあります。珪藻化石の採取には顕微鏡が欠かせません。

携帯顕微鏡は現在でも生産されている機種がありますが,半世紀前頃には今よりも本格的な機種がいくつかありました。日本でも,オリンパス,千代田光学,日本光学などが製品を供給していました。それらの中でも,日本光学(現ニコン)の携帯顕微鏡H型は倒立顕微鏡という構成で異色の存在でした(画像1枚目)。

この顕微鏡は小型のボディにたくさんの機能が詰まっており,もちろん現在でも実用性の高さはトップクラスといっていいでしょう。三脚のねじ穴が切ってあるので,手持ちだけでなく,机や床において楽な姿勢で検鏡できます(画像2枚目)。

この機種は電球による照明が可能ですが,電球の寿命が短い上に色温度も低く,赤っぽい照明しかできませんでした。補正しようとフィルタを入れると暗くなりました。電池はすぐになくなるのです。携帯顕微鏡H型の唯一ともいえるこの欠点は,白色発光ダイオードの出現によって取り除かれました(画像3枚目)。明るい白色照明が実現し電池交換も一年に一回程度になりました。

アイピースはねじ込み式ですが,スリーブは23.2mmの通常のものが使えますので,広視野アイピースに取り替えればメガネを利用している人は楽に観察できますし,またデジタルカメラを用いた撮影も簡単にこなすことができます(画像4枚目)。コンデンサはアッベコンデンサでしかもスライド式です。ハネノケコンデンサが最初から装着されていると考えてよいでしょう。コンデンサの機能を生かして照明ができますし,コンデンサを外して自然光による暗視野照明も可能です。

そしてレンズの性能にも妥協はなく,とても鮮明な像を結びます。携帯顕微鏡H型は,下から覗く倒立顕微鏡の構成となっていて,ボディーの下部に長い光路長のプリズムが組み込まれています。確かめてはいませんが,対物レンズはこのプリズムと合わせて色収差の補正が行われているように感じ,通常の正立型生物顕微鏡と比較しても何ら優劣のない上質な像を結びます。40倍対物レンズを用いて放散虫を撮影した画像を見ても,そのことがおわかりいただけるかと思います。

残念なことは,この顕微鏡は中古でしか入手できず,しかも数が少ないのです。どこかの顕微鏡メーカが,現代の光学技術を用いて,これを超える顕微鏡を作ってくれることを期待しているのですが…(撮影/MWS)。





2008年5月27日




これは海産の付着珪藻ですが,非常に微細な周期構造を持っており,点紋の間隔は約300ナノメートルです(300ナノメートルというのは,3ミリメートルの一万分の一です)。この珪藻では縞々構造が二カ所で乱れています。珪藻の周期構造はふつう,非常に一定していますが,たまにはこの画像のように乱れた構造を持つ個体もいて,奇形とされています。筆者の観察では,この奇形細胞はアラクノイディスクス(海産)やディアトマ(河川)などではよく見られますが,フルスツリア(河川・湖沼),アンフィプレウラ(湖沼)ではまだ見たことがありません。奇形細胞を生じやすい種があるように思います(BF,撮影/MWS)。





2008年5月26日




これはフズリナ(紡錘虫類)を実体顕微鏡で撮影した画像です。フズリナとは太古に生息していた有孔虫(の化石)のことで,石灰質の,特徴的な形態の殻を持っていますから,容易に発見できます。主に石灰岩中に産し,石灰岩を研磨して平面を出してやるとよくみえます。肉眼でも見えますから,大きさ的には顕微鏡を持ち出すまでもないのですが,コントラストが低いために細部が見づらいのです。そこでデジタルイメージングを行い,画像処理でコントラストを強調すると格段に見やすくなります。このフズリナ,デパートなどの床や柱に使われている大理石によく入っていますので,新宿を歩いていても見つかります。そしてきょうの画像の素材は,近所で買い求めた,3枚100円の大理石タイルなのでした(epiDF,撮影/MWS)。





2008年5月25日
カイコの幼虫(1枚目)
カイコの幼虫(2枚目)
カイコの幼虫(3枚目)

【注意】毛虫・幼虫の画像が嫌いな人はクリックしないで下さい。

月曜日に殻を破って出てきた毛子も,金曜日の夜にはこんなに大きくなりました。クワの葉を供給すると一斉に集まってきて,あっという間に葉がボロボロになるほどです。普段,毛虫や幼虫が食い荒らした樹木を見ると何となく,気味悪い感じがしますが,カイコがわしわしと葉を食べる様子は何となく,いいぞいいぞ,元気に大きくなれよ,という感じがするから不思議です。見慣れているからでしょうか(epiDF,撮影/MWS)。





2008年5月24日












昨日のクワの葉が気になり,きょうは蛍光顕微鏡で覗いてみました(紫外線LED)。健康なクワの葉裏は,よくあるように,葉緑体の自家蛍光で真っ赤に見えます(1枚目)。ところが,昨日の菌が寄生した葉では,ところどころ斑入りのように青緑〜黄緑色を発しています(2枚目)。棍棒状の細胞は鮮明な青色蛍光を発します(3枚目)。この菌が寄生したところでは,葉脈付近で非常に強い青の蛍光が見られ,葉肉の部分では黄緑色の蛍光となり,まるで炎症を起こしているのを知らせているかのようです(4枚目)。さらに倍率を上げると,蛍光を発しているのは細胞内部ではではなく,葉の細胞壁付近が青く光っていることがわかります。これらの蛍光は非常に強く,市販の蛍光灯型ブラックライトで明瞭に認められますので,クワに寄生する菌をライト一本で判別できそうです。人間でも一部のガン細胞が紫外線で赤色蛍光を発することは広く知られていますが,植物の病原体と蛍光現象は筆者にとって未知の領域で,とても面白いと思いました(epiFL,撮影/MWS)。





2008年5月23日






クワの葉の裏側に白い毛のようなものがついているので見て欲しいという依頼がありましたので,実体顕微鏡でみてみたところ,かなり細い繊維上の構造が葉裏を走り,ところどころに棍棒状の物体が見えます(上の画像)。しかし実体顕微鏡レベルではよくわからないので,生物顕微鏡に落射照明の組み合わせで観察してみたところ,明らかにカビのような構造をとらえることができました。健康な葉にはこのようなものは見られないので,おそらく病原性の菌類が寄生したものと思われます(DF,撮影/MWS)。





2008年5月22日






アポクロマート対物レンズを使えば,色収差のないキレのいい絵が撮れることがわかっていても,ピント深さや,封入剤の厚みによる球面収差の関係でアクロマート対物レンズを使わなければならない場面があります。モノクロで撮ればいいのですが,しかしカラーで鮮明に撮りたい。そういう要求があるときには,カラーバランスは犠牲になりますが,色収差を発生しやすい波長をフィルタでカットして照明し,カメラのプリセットホワイトバランスで強引にホワイトを合わせて撮影してしまうという手があります(これができないカメラもあります)。カラーの再現性を求められる場合は使えない手法ですが,高倍率のアクロマート対物レンズでカラーの再現性を求めること自体が難しいですから,この強引な方法が役に立つこともあるでしょう。上の画像はLED照明でアクロマート対物レンズ利用の画像,下の画像は市販のカメラ用フィルタを用いてホワイトバランスをプリセットした例です(BF,撮影/MWS)。





2008年5月21日




珪藻は光合成を行って増殖しますので,どの種でもクロロフィルを持っています。しかしこのクロロフィルの形態は種により違いがあり,種の査定時に参考になります。被殻の形態がよく似ていて,同じ種に見えるものでも,葉緑体の数が異なれば違う種として区別されることもあります。たとえばきょうの画像はプレウロシグマ属珪藻の葉緑体自家蛍光ですが,その形態は,5月11日付けのプレウロシグマと比較すると全然違うことがわかると思います。このような場合は別種として扱われることがほとんどです(この画像については,詳しいことは調べていません)。なお,この画像は紫外線LEDを用いて,励起フィルタを外し,ダイクロイックミラーのみで励起光漏れを生じさせ,それを背景光として珪藻の輪郭を写しているものです。背景光は減算して消しています(BF,撮影/MWS)。





2008年5月20日




サンプリング時に海水を汲んで帰ることがよくあります。ペットボトルに汲んで持ち帰り,しばらくするとプランクトンが沈殿しますので,少量分取し,そのままマウントして検鏡します。すると大抵,浮遊珪藻が入っています。この画像の種類はレプトシリンドラス属の珪藻で,相模湾では普通に見られます。それどころか,世界中に広く分布しているのです。浮遊珪藻は光の届く範囲で浮いていますので,ケイ酸の殻は薄くなっている種が多いです。この画像の珪藻も非常に薄い被殻で,コントラストをほとんど生じませんので,注意深く撮影する必要があります(BF,撮影/MWS)。





2008年5月19日






これはカイコの卵です。実体顕微鏡で観察すると,空豆のように見えてつまんで食べられそうです。現在では養蚕農家はすっかり減りましたが,筆者が幼少の頃にはまだ,たくさんの桑畑があり,ガチャコンガチャコンという織機の音を聞いたものです。カイコはいまでも教材としては人気があり,学校教育の場で飼育を試みる例は多いようです。試験研究機関などから,この画像のような卵の産み付けられたシートを分けてもらうことができます。ところでこの卵,もう毛子が出てくる直前なのがわかるでしょうか。画像を心眼で眺めて見て下さい。卵の中に幼虫が寝そべっている姿が透視できることでしょう(DF,撮影/MWS)。





2008年5月18日






モノクロ撮影を行うときには照明光の制御が大切になってきます。上の画像はアクロマート対物レンズ(40倍,NA=0.65)でマウスの卵巣(HE染色)を撮影したもので,白色LEDによる透過照明です(コンデンサ絞りNA=0.55)。下の画像は全く同じ試料とレンズで,照明光路にGIFフィルタ(緑色)を挿入して撮影したものです。一見して,下の画像の方が締まりがあり,コントラストがよく,細部が再現されていることがわかります。このようになる理由はいくつかあります。まず一つは,アクロマート対物レンズの性能が最も発揮されるのが緑〜黄色にかけての波長だということ(球面収差極小)。二つめは,フィルタにより色収差がなくなるということ,もう一つは,HE染色のピンク色に対して緑色の照明が最もコントラストが付くということです。たった一枚のフィルタを光路に挿入するだけで画質が改善するのですから,ぜひとも最適条件を探して実行してみて下さい(試料作成/H.Tohyama,BF,撮影/MWS)。





2008年5月17日






生きている有孔虫を蛍光顕微鏡で観察すると,葉緑体の自家蛍光特有の赤色発光が見られます。一部の種では,珪藻を体内に共生させていて,珪藻が生産する光合成産物を栄養として摂取していることが知られています。一方で,有孔虫は珪藻を摂食しますから,体内には餌として取り込んだ葉緑体も存在します。今回の有孔虫がどちらのタイプなのかは,この観察だけではわかりません。珪藻自体がかつて,何らかの原生生物が藻類を取り込んで誕生したものと言われています。有孔虫と珪藻の共生も,新しい生物が誕生する過程なのかもしれません。それにしても,有孔虫に共生している珪藻がやがて珪藻としての機能を失い,有孔虫の細胞内器官となるならば,生物の進化(分化)とは何と不思議なことでしょう(epiFL,撮影/MWS)。





2008年5月16日




この画像の生き物は有孔虫で,相模湾から採集した試料に入っていたものです。まだ生きています。貝のような殻を持ち,アメーバ状の細い偽足を出しで這い回ります。形態は様々で検鏡観察しても楽しい生物です。ところで,有孔虫の殻成分は炭酸カルシウムですから,珪藻の被殻洗浄を行うときに酸を使うと溶けてしまい跡形もなくなります。アルカリと過酸化水素を組み合わせて気長に処理すると,比較的良好な有孔虫の殻を得ることができます。これも将来的には集めて並べてみたいですね(BF,撮影/MWS)。





2008年5月15日




きょうの画像は前日にアップした傷の状態から22時間後の様子です。すでに上皮化が完了しており,ある程度の厚みもあるようです。これで湿潤療法は終了として良いことになります。ただ,まだ新生細胞が弱いので,傷が開く方向に力を加えると損傷が起きるおそれもあります。そこでここから絆創膏の出番です。傷の走っている方向と直角に絆創膏を貼り付け,張力を和らげるようにして保護します。しばらくすれば,気づかないうちに直っていることでしょう(DF,撮影/MWS)。





2008年5月14日






先週のサンプリング初日(5月5日),石に指をひっかけて右手中指に傷を作ってしまいました。幅2〜2.5mm,長さ32mmでやや深く,けっこう大きな傷です。上の画像はその傷口が治りかけている様子で,受傷から8日後です。31mmの部分で上皮化が見られ,あと1mmを残すのみです。この画像の傷の部分にカバーグラスを軽く当てて採取した液体を検鏡すると,上皮化の途中なのか,細胞がたくさん採取でき,同時に多数の細菌コロニーが見られました(下の画像)。きょうはこの経験についてやや詳しく記します。

この傷がなぜこんなに早く治るのかというと,「湿潤療法」を行ったからです。湿潤療法とは,傷口を洗い,一切の殺菌消毒を行わず,傷にラップを巻き付けて傷がつねに浸出液で覆われて濡れている状態を保つ処置のことです(web上に詳しい情報があります)。この方法により,傷が閉じるまでの速度は飛躍的にアップ(数倍)します。具体的にどのように処置をしたのかは次に記す通りです。

干潮時の岩場で負傷,原因となった石は泥や貝殻などが付着したもの。

→指で押さえながら一時的に止血。
→ペットボトルの新鮮なお茶で傷口を洗浄。負傷後3分以内。出血中。
→チリ紙を巻いて止血
→水道水で傷口を洗浄。負傷後約1時間。まだ出血あり。チリ紙を巻いて止血。
→水道水で傷口を洗浄。負傷後約3時間。ポリエチレンラップを巻いて湿潤療法開始。
→以後3〜8時間に一度,傷を水道水で洗浄。洗浄後にポリエチレンラップで巻く。
→干物のような臭気が出るので3時間置きに洗浄・ラップ巻き。
→6日後から臭気が急に弱くなる。4〜5時間置きに洗浄・ラップ巻き。

と,こんな具合です。上に記したように,一度も殺菌消毒剤を塗布していませんし,処置は水道水を細く絞って傷口に直接当て(こすったりしてはいけません),あとはラップを巻くだけなので簡単です。何より良いことは,痛くないのです。痛かったのは負傷時にお茶で洗ったときと,垂れ下がった皮膚をハサミで切ったときだけです。そのおかげで,翌日以降のサンプリングにも支障はありませんでした。

傷からは絶えず組織液が出てきて,放置すると干物のような,絆創膏が古くなったような独特の臭気を発生します。これを「傷口が化膿した」と解釈してはいけません。痛みがないのであれば,傷は治癒途上にあって,洗ってラップを巻いていればじきに直ります。もしここで判断を誤って,傷口をイソジン消毒などしようものなら,回復は確実に遅れることでしょう。上の画像で示したように,上皮化途中の傷は細胞が容易に剥がれる状態になっており,角質で保護されていません。そこにポピドンヨードなどが振りかけられ,綿などによる摩擦が加わったら,増殖途中の細胞が損傷を受け,上皮化が遅れることが容易に想像できます。

(数年前に小手術を受けたとき,毎日イソジン消毒&ガーゼ交換され,いつまでたっても閉創しなかったことを思い出します。そのころは湿潤療法を知らなかったのです。)

人体表皮からバクテリアを排除することは,まずできません。特に傷などは,組織液という培養液が供給され人体の熱で適度な暖かさが保たれ,常在菌などにとっては増殖に適した環境にあります。上の画像に示したように,傷口からは常に細菌が検出されます。しかしこの細菌が感染症を引き起こしたり傷の治癒を遅らせているという証拠もありません。逆に,積極的な消毒やガーゼ交換が傷の治りを遅らせているという証拠は揃いつつあります。このような経緯から,傷が膿んだり,痛んだり,熱を持ったりしていないのであれば,細菌の存在は容認して,せっせと洗い,湿潤療法を行うと,皮膚細胞が正常に増殖する環境が保たれ,細菌は悪さもせず,速やかに治癒するという理論が生まれてきたというわけです。

深い刺し傷や,傷の汚れがひどい場合などは,無理して自分で湿潤療法を行わずに,医療機関に診てもらう必要があります。いちばん良いのは,湿潤療法を取り入れている病院を探して受診することでしょう。

湿潤療法のオマケは,ラップで傷を巻いただけなので,毎日観察できることです。どんどん回復していく様子を見るのは,けっこう楽しいものです(DF/DIC,撮影/MWS)。





2008年5月13日




何の説明もなければこれはUFOですね。UFOの底面を見ているように,円盤から4つのコブが出ています(アダムスキー型ではコブは3つ)。もちろんこれはUFOではなく珪藻土(=珪藻の化石)から見つかった珪藻なのですが,こんな形態のものもあるという一つの例です。海産の付着珪藻は小石,砂,砂利,岩,海藻,海草,動物プランクトンなど,様々な器物に付着するので,形態は非常に多様性に富んでいます。この画像はコブと本体の網目模様にピントを合わせた二枚の画像を合成しています(BF,撮影/MWS)。





2008年5月12日




テスト画像

firefoxの表示がおかしいのでテスト中です。上はテスト用の画像で特に意味はありません。(ヤコウチュウ赤潮ですが,表示されていないかもしれません)。(撮影/MWS)。





2008年5月11日




これは5月8日付けの画像で紹介したプレウロシグマという珪藻の画像です。生きている試料を偏射照明と落射蛍光(紫〜紫外)の同時照明で撮影しています。珪藻被殻にある刻印模様は生きているサンプルや水封プレパラートではよくみえない,と書いてある本もありますが,それは条件次第です。微分干渉法や位相差法でよく見える場合もありますし,特別な機材を使わなくても暗視野法や偏射照明で観察できることもあります。上の画像でも,クロロフィルの赤色蛍光は落射蛍光装置が必要ですが,珪藻被殻の周期構造は偏射照明だけで十分に観察可能です。デジタル撮影し,コントラスト強調を行えばさらに明瞭に表現することができます。見たければまずやってみる,というのが顕微鏡観察では良いようです(epiFL+oblique,撮影/MWS)。





2008年5月10日






9日の相模湾も穏やかな晴天で採集日和でしたが,前日や前々日よりも潮が引かないので採集時間は短くなります。そのためピークの2時間前に現場に入り,適したポイントを探しながら歩きます。場所が決まったらオニギリを食べながら潮が引くのを待ちます。ふと目の前の岩場を見ると,途中に取り残されたウミウシ君が困っていました。そっと岩から外して海水に浸すと傷もないようで元気にエラを広げました。ブルーの斑点がきれいですね(撮影/MWS)。





2008年5月9日






8日の相模湾は薄曇りの晴天で風は弱く,ベストの採集条件でした。大潮で通常の低潮線よりも潮が引くために,海藻繁茂帯が水面から顔を出し,乾燥ストレスと直射日光の影響で白化しています(上の画像)。これは光漂白(photobleaching)といって,可視光の短波長から紫外線が照射された色素が分解して色を失う現象です。近寄ってみると紅藻類の色が抜けて白っぽくなっていることがわかります(下の画像)。市販の寒天やテングサなどは,この現象を利用して,繰り返し日光に当てて白くしたものです(撮影/MWS)。





2008年5月8日






7日の相模湾は快晴で風も弱く採集日和でした。列車が遅れたためバスに間に合わず,目的地を数キロ変更しての採集となりました。海藻類はきれいに洗われていて(上の画像),付着珪藻は少なく,たくさん集めるには引き潮の時間内では短すぎましたが,得られた試料はよさそうです。プレウロシグマ,アラクノイディスクス,ビドゥルフィアなどが結構はいっていました。下の画像は,まだ生きているプレウロシグマの葉緑体を蛍光顕微鏡で撮影したものです。プレウロシグマにもたくさんの種類があり,条線密度や葉緑体の形が異なります(epiFL,撮影/MWS)。





2008年5月7日






6日の相模湾は快晴でしたが風が強く,付着珪藻の採集条件としてはあまりよくありませんでした。そこで堆積物(海底の泥)を採取しました。うまくいけば珪藻や海綿の骨針などが採集できるからです。ここ数日は,平均的な干潮よりもずっと潮が引きますので,普段は海面下にある部分がわずかな時間,陸上になります。海藻が繁茂している岩にそっと足をおろせば,海底散歩をしていることになるのです(撮影/MWS)。





2008年5月6日






5日の相模湾は天気も下り坂でやや荒れていました。しかし波が回り込まない良いポイントを見つけ(上の画像),珪藻探索ができました。紅藻類にはたっぷりと汚れがついており(下の画像),運がよければ大量の珪藻かもしれません。喜び勇んでいろいろなところから大量の汚れを採集し,持ち帰って検鏡してみると,ううむ,ほとんどが微細な鉱物の凝集物で,そこにこれまた微細な珪藻が大量に動いているのでした。どどっと疲れが出ましたが,帰路で見つけたヒラマサ君のおかげで明日への活力が沸いてきたところです(撮影/MWS)。





2008年5月5日






そば(乾麺)のかけらがありましたので検鏡してみました。千葉県のS製麺がお気に入りですが,いくつか種類があります。検鏡したのは比較的安価な品です。総合倍率100倍程度で検鏡すると,透明ガラス玉のようなデンプン質がよく見えます(上の画像)。試しに蛍光観察を行うとけっこうカラフルです。そば粉の成分が紫外線で蛍光を発するようです。今度,高級な乾麺と比較して何が違うのかを見てみることを宿題としましょう(DF/epiFL, 撮影/MWS)。





2008年5月4日




これはゴンフォネマという珪藻の仲間です。池や沼に普通にいますので,岸近くで水に沈んでいる枝や茎などを採取すると一緒に入っていることが多いです。総合倍率200倍程度でこのような形態がわかります。もちろん,きれいに洗浄した被殻を油浸で検鏡すれば上の画像のように詳しい形態を観察することが可能です。この珪藻,それにしてもどうしてこんな形になったのか,何の意味があるのか,見れば見るほど不思議ですね(oblique, 撮影/MWS)。





2008年5月3日




MWSでは珪藻プレパラートを扱っているわけですが,珪藻? 何じゃソレ? と,ピンと来ない方々もおられることと思います。いや,珪藻など観察したことのない人の方がむしろ普通でしょう。珪藻というのはガラス質の殻を持った藻類の一種で,殻の表面には芸術的な刻印があります。その美しさゆえに人気があり,海外などでは収集家もたくさんおられます。さて,この珪藻ですが,とても小さいのです。どのくらい小さいのかをこれまで撮影していませんでしたので,米粒と並べた画像をアップしてみました。米粒の横にあるちいさな粒が珪藻ですが,これでもけっこう大きな種類なのです(DF,撮影/MWS)。





2008年5月2日




並べスライド(Jシリーズ)では,海産の大型珪藻を中心に用いていますが,海綿骨針,放散虫も並べることができます。いずれも数が少ないので量産はできませんが,並べられるほど見つかればマウントする予定です。きょうの画像は珪藻,珪藻のガードルバンド,海綿骨針,放散虫を一度に並べてみたものです。生物ケイ酸(生物が作るガラス質)の見本セットとして考案した試作品です(DF,撮影/MWS)。





2008年5月1日




捨て忘れた清美オレンジの皮にカビが生えていたので検鏡してみました。マウントしようとピンセットで少量つまむと煙が出るほどに分生子(胞子)が大量にできているようでした。少量の水でカバーグラスをかけ,40倍対物レンズ(開口数0.95),偏射照明で検鏡しましたが,小さくてコントラストが低く,なかなか見づらい対象です。なるほどこれだけ小さければ,空気中に常に漂い,あらゆる食品に付着してカビを生やすのも納得できます。きのこの胞子は大抵,種により大きさが揃っていますが,この分生子はサイズがまちまちです。この分野は無知なのですが,そういうものなんでしょうか。あるいは複数種の分生子が混じっているのでしょうか(oblique,撮影/MWS)。






Copyright (C) 2007 MWS MicroWorldServices All rights reserved.
(無断複製・利用を禁じます)



トップに戻る



.